(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記手動操作用回動部材は、前記刃部材移動台が所定位置に移動した場合のみ、前記窓から外部に露出する請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の光ファイバ切断装置。
前記刃部材及び前記回動部材のうち少なくとも一つを所定の回動位置に保持する保持機構をさらに備える請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の光ファイバ切断装置。
前記刃部材及び前記回動部材、及び前記手動操作用回動部材のうち少なくとも一つを所定の回動位置に保持する保持機構をさらに備える請求項5から請求項8のいずれか一項に記載の光ファイバ切断装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る光ファイバ切断装置の一実施形態について、
図1−10を参照して説明する。
図1,2に示すように、本実施形態の光ファイバ切断装置1は、1対のクランプ11,12を有する基台10と、円板状の刃部材13を有する刃部材移動台14と、押し当て部材15と、を備える。基台10は、基部110と、蓋部17と、を備える。蓋部17は、基部110に対して回動軸16を中心として回動自在に取り付けられている。
【0020】
1対のクランプ11,12は、光ファイバ100の長手方向に間隔をあけて配されている。1対のクランプ11,12は、光ファイバ100を把持する。各クランプ11,12は、光ファイバ100を上下方向(
図1,2において上下方向)から挟み込む下クランプ11A,12A及び上クランプ11B,12Bを有する。下クランプ11A,12A及び上クランプ11B,12Bのうち相互に対向する部位(光ファイバ100を挟み込む部位)には、ゴム等の弾性パッドが設けられてよい。
【0021】
本実施形態において、1対の下クランプ11A,12Aは、基部110の上面10aに配されている。一方、1対の上クランプ11B,12Bは、蓋部17に設けられている。蓋部17を基部110に対して閉じることで、1対のクランプ11,12により光ファイバ100を把持することができる。
【0022】
刃部材移動台14(以下、刃台14と呼ぶ。)は、刃部材13を1対のクランプ11,12間で移動させて、光ファイバ100の表面を刃部材13の外周縁部に接触させて加傷する。刃台14は、刃部材13を1対のクランプ11,12間を通すように基台10に対して移動可能に設けられている。本実施形態において、刃台14は基部110に対して移動可能に設けられている。
刃台14の移動方向は、少なくとも刃部材13により光ファイバ100の表面を加傷できるように、1対のクランプ11,12に把持された光ファイバ100の長手方向に交差する方向であればよい。本実施形態において、刃台14の移動方向は、1対のクランプ11,12に把持された光ファイバ100の長手方向に直交する方向である。
【0023】
本実施形態において、刃台14は基部110の内部に収容されている。これに伴い、刃部材13の大半は基部110の内部に配され、刃部材13の一部だけが基部110の上面10aから突出している。そして、刃台14の移動方向は、基部110の上面10aに沿う方向である。
本実施形態の刃台14には、
図3に示すように、シャフト32が挿通されている。シャフト32は、基部110の内部に取り付けられ、刃台14を基部110に対して所定の直線方向に移動させるための軌道である。すなわち、刃台14は、シャフト32の長手方向に移動可能となっている。
【0024】
図1−3に示すように、上記した刃台14に備える円板状の刃部材13は、その円板平面が刃台14の移動方向に沿うように配されている。本実施形態において、刃部材13の円板平面は光ファイバ100の長手方向(1対のクランプ11,12の配列方向)に直交している。
刃部材13は、その移動経路の途中(移動途中)において刃部材13の外周縁部(刃先)が1対のクランプ11,12に把持された光ファイバ100の表面に接触することで、光ファイバ100の表面を加傷する。
【0025】
刃部材13は、光ファイバ100の表面に接触する外周縁部の位置を変更するために刃台14に対して回動可能に固定されている。具体的に、刃部材13は、刃部材13の軸線A1(
図2において紙面に直交する方向に延びる線)を中心に回動可能とされている。これにより、光ファイバ100に接触する刃部材13の外周縁部の位置が変更可能となっている。
光ファイバ100を加傷する際には、刃部材13の外周縁部のうち周方向の所定長さ(以下、刃部材13の接触長と呼ぶ。)が、光ファイバ100の表面に接触する。このため、光ファイバ100に接触する刃部材13の外周縁部の位置を変更する際には、刃部材13の接触長に対応する角度単位で、刃部材13を回動させるとよい。刃部材13の接触長は、刃部材13の外周縁部の全周を複数の領域に等分割した長さであるとよい。本実施形態における刃部材13の接触長は、刃部材13の外周縁部の全周を16等分した長さとなっている。
【0026】
図1,2に示すように、押し当て部材15は、刃部材13によって加傷された光ファイバ100の加傷部を押し曲げて光ファイバ100を切断する。本実施形態において、押し当て部材15は、前述した上クランプ11B,12Bと同様に、蓋部17に設けられている。蓋部17を基部110に対して閉じることで、押し当て部材15により光ファイバ100を押し曲げることができる。
本実施形態において、蓋部17の回動軸16は、刃部材13の軸線A1と平行している、すなわち、刃部材13及び刃台14の移動方向に直交している。
【0027】
本実施形態の蓋部17は、蓋部本体18と、1対の上クランプ11B,12Bが取り付けられたクランプ取付部19と、押し当て部材15が取り付けられた押し当て部材取付部20と、を備える。蓋部本体18、クランプ取付部19及び押し当て部材取付部20は、互いに独立して基部110に対して回動軸16を中心として回動自在に取り付けられている。クランプ取付部19及び押し当て部材取付部20は、蓋部17を閉じる方向において蓋部本体18よりも前側に位置している。
【0028】
蓋部本体18とクランプ取付部19との間には、第一バネ21が設けられている。第一バネ21の弾性力によって、光ファイバ100に対する1対のクランプ11,12の把持力を確保することができる。蓋部本体18と押し当て部材取付部20との間には、第二バネ22が設けられている。第二バネ22は、押し当て部材15の付勢により、光ファイバ100に対して押し曲げ力を印加することができる。
【0029】
クランプ取付部19は、蓋部本体18に形成された係止爪23によって蓋部本体18に係止されている。これにより、クランプ取付部19が第一バネ21の付勢力によって蓋部本体18から過度に離れることを防いでいる。また、押し当て部材取付部20は、クランプ取付部19に形成された係止部(不図示)によって、クランプ取付部19に係止されている。これにより、押し当て部材取付部20が第二バネ22の付勢力によって蓋部本体18及びクランプ取付部19から過度に離れることを防いでいる。
【0030】
さらに、本実施形態の光ファイバ切断装置1は、光ファイバ100の把持、加傷、押し曲げ、切断の過程が蓋部17を基部110に対して閉じるだけで、一連の動作として実現するように構成されている。以下、この点について説明する。
【0031】
基部110の内部には、刃台14を弾性力により移動させるスプリング24が設けられている。スプリング24の一端は刃台14に保持され、スプリング24の他端は基部110に保持されている。スプリング24は、刃台14の移動に伴って刃台14の移動方向に伸縮する。
【0032】
基部110の内部には、蓋部17に一体に形成された押し込み突起部25が配されている。押し込み突起部25は、蓋部17を基部110に対して開く際に、蓋部17の回動軸16から離れる方向に刃台14を押し込んで移動させる。この際、スプリング24は、弾性的に収縮してもよいが、本実施形態では弾性的に伸長する。
【0033】
また、基部110の内部には、蓋部17を基部110に対して開いた状態において、刃台14に係止する係止部材26が設けられている。係止部材26は、刃台14に係止することで、刃台14を押し込み突起部25によって押し込まれた位置(
図1,2に示す位置)に保持する。
【0034】
一方、蓋部17には、解除突起部27が設けられている。解除突起部27は、蓋部17を基部110に対して閉じる際に、係止部材26に押し付けられて係止部材26による刃台14の係止状態を解除する。すなわち、蓋部17を基部110に対して閉じると、刃台14(及び刃部材13)が、スプリング24の弾性力によって、1対のクランプ11,12の間を通るように、刃台14が蓋部17の回動軸16に近づく方向に移動する。
【0035】
係止部材26による刃台14の係止状態を解除するタイミングは、蓋部17を基部110に対して閉じる際に、1対のクランプ11,12によって光ファイバ100を把持した後であればよい。これにより、光ファイバ100が1対のクランプ11,12に把持された状態で、刃部材13により光ファイバ100の表面を加傷することができる。
【0036】
また、刃台14及び押し当て部材取付部20には、蓋部17を基部110に対して閉じた際に互いに接触する位置決め凸部28,29が設けられている。刃台14及び押し当て部材取付部20の位置決め凸部28,29が互いに接触した状態では、押し当て部材15が光ファイバ100の上方に間隔をあけて位置する。
位置決め凸部28,29同士の接触状態を解除するタイミングは、前述した係止部材26による刃台14の係止状態が解除され、刃台14がスプリング24の弾性力によって1対のクランプ11,12の間を通るように蓋部17の回動軸16に近づく方向に移動した後、すなわち、刃部材13により光ファイバ100の表面を加傷した後であればよい。
【0037】
位置決め凸部28,29同士の接触が解除されることで、押し当て部材取付部20と蓋部本体18との間に配された第二バネ22の弾性力によって、押し当て部材15が光ファイバ100に押し付けられる。これにより、光ファイバ100の傷が成長して光ファイバ100が切断される。
【0038】
また、本実施形態の光ファイバ切断装置1は、基部110に対して蓋部17を閉じるまでの間に、光ファイバ100を1対の下クランプ11A,12A上に保持する構造を有する。具体的に、本実施形態の光ファイバ切断装置1は、光ファイバ100を挟持した状態に保持するファイバホルダ30を備える。ファイバホルダ30は、基部110の上面10aに形成された位置決め凹部31に収容可能とされている。ファイバホルダ30を位置決め凹部31に収容した状態では、ファイバホルダ30に保持された光ファイバ100を基部110や蓋部17(1対のクランプ11,12や刃部材13、押し当て部材15)に対して位置決めすることができる。
【0039】
具体的に、位置決め凹部31は、1対の下クランプ11A,12Aの配列方向に延びる溝状に形成されている。位置決め凹部31の幅寸法は、ファイバホルダ30の幅寸法に対応している。このため、ファイバホルダ30を位置決め凹部31に収容した状態では、ファイバホルダ30が基部110に対して位置決め凹部31の幅方向に移動することが規制される。これにより、ファイバホルダ30に保持された光ファイバ100を、位置決め凹部31の幅方向において、基部110や蓋部17(1対のクランプ11,12や刃部材13、押し当て部材15)に対して位置決めできる。
【0040】
1対の下クランプ11A,12Aの配列方向における位置決め凹部31の第一端31aは、一方の下クランプ11Aに隣り合わせて位置する。位置決め凹部31の第一端31aには、一方の下クランプ11Aに向くファイバホルダ30の前面30aが接触可能である。一方、位置決め凹部31の第二端31bは、基部110の側面10bに開口している。
このため、ファイバホルダ30の前面30aを位置決め凹部31の第一端31aに接触させることで、ファイバホルダ30に保持された光ファイバ100を、位置決め凹部31の長手方向(1対の下クランプ11A,12Aの配列方向)において、基部110や蓋部17(1対のクランプ11,12や刃部材13、押し当て部材15)に対して位置決めできる。
【0041】
本実施形態の光ファイバ切断装置1では、
図3−6に示すように、上記した基台10が回動部材42をさらに有する。回動部材42は、基台10に対して回動可能に固定される。また、回動部材42は、これを回動させることで動力を伝達して刃部材13を回動させる。刃部材13と回動部材42の間の動力伝達は、解除可能である。以下、この構成について具体的に説明する。
【0042】
刃部材13は、刃部材固定部材41(以下、固定部材41と呼ぶ。)を有する。固定部材41は、例えば刃部材13と一体に形成されてもよい。本実施形態において、固定部材41は刃部材13と別個に形成された上で、刃部材13に一体に固定されている。これにより、固定部材41は刃部材13と共に刃台14に対して回動可能に固定されている。
図4−7に示すように、本実施形態の固定部材41は、円板状に形成されている。軸方向から見た固定部材41の中心部分には、刃台14から突出する円柱状の刃軸43を挿通させる円形状の挿通孔44が形成されている。挿通孔44の内径寸法は、刃軸43の外径寸法に対応している。このため、固定部材41を刃台14の刃軸43に挿通させた状態では、固定部材41が刃台14に対して軸線A1を中心に回動可能となっている。
【0043】
刃台14の刃軸43は、固定部材41と同様に、刃部材13にも挿通される。これにより、刃部材13が刃台14に対して軸線A1を回動可能となっている。
【0044】
固定部材41及び刃部材13を刃台14の刃軸43に取り付けた状態において、刃部材13及び固定部材41は、軸方向に重ねて配される。軸方向に互いに対向する刃部材13及び固定部材41の対向面には、刃部材13及び固定部材41を相互に係止する凹凸部が形成されている。本実施形態において、凹凸部は、固定部材41の対向面に形成された凸部45と、刃部材13の対向面に形成されて固定部材41の凸部45が挿入される挿入部46と、によって構成されている。刃部材13の挿入部46は、例えば有底の凹部であってもよいが、本実施形態における刃部材13の挿入部46は、軸方向に貫通する貫通孔である。固定部材41の凸部45が刃部材13の挿入部46に挿入されることで、刃部材13及び固定部材41が刃台14に対して一体に回動可能となっている。
【0045】
図4−6に示すように、本実施形態の刃部材13及び固定部材41は、軸方向において刃台14と押さえ部材47との間に挟み込まれることで、刃台14に保持される。具体的には、固定部材41及び刃部材13を刃台14の刃軸43に順番に取り付けた後に、ネジ48の軸部を刃押さえ部材47に通した上で、刃軸43に形成されたネジ孔49に螺着する。これにより、固定部材41、刃部材13及び押さえ部材47を、刃台14とネジ48の頭部との間に挟み込んで、刃部材13及び固定部材41を刃台14に保持することができる。
【0046】
図4に示すように、刃部材13と押さえ部材47との間には、ばね部材50が設けられている。ばね部材50は、上記したネジ48等によって押さえ部材47を刃部材13に向けて押し付けることで弾性変形し、刃部材13を固定部材41に向けて付勢する。これにより、刃台14に取り付けられた刃部材13が軸方向にがたつくことを防止できる。
【0047】
押さえ部材47には、刃部材13の挿入部46に挿入される凸部51が形成されている。これにより、刃部材13及び押さえ部材47を刃台14に対して一体に回動させることができる。
図3,5,6に示すように、押さえ部材47には、刃部材13の回動位置(特に光ファイバ100に接触する刃部材13の外周縁部の位置)を示す目盛52が形成されている。目盛52は、図示例のように、光ファイバ100に接触する刃部材13の外周縁部の16箇所の位置を数字で示してもよいが、これに限ることはない。目盛52は、図示例のように押さえ部材47の外周面に形成されてもよいが、これに限ることはない。
【0048】
回動部材42は、前述した固定部材41(刃部材13)に係合可能である。回動部材42が固定部材41に係合した状態では、回動部材42を回動させた際に固定部材41に動力を伝達して、刃部材13及び固定部材41を回動させることができる。本実施形態において、回動部材42は基部110の内部に配されている。
【0049】
刃部材13と回動部材42の間の動力伝達は、例えば回動部材42の回動位置(回動角度)に関わらず、解除されなくてもよい。すなわち、回動部材42は、回動部材42の回動位置に関わらず固定部材41に係合してもよい。
本実施形態において、刃部材13と回動部材42の間の動力伝達は、回動部材42の回動位置に応じて解除される。すなわち、本実施形態の回動部材42は、回動部材42の回動位置によって固定部材41に対して係合する係合状態と係合しない切り離し状態とに切り換えられるように形成されている。
【0050】
さらに具体的に説明すれば、本実施形態の回動部材42は、
図6,8に示すように、固定部材41に係合する係合部53と、固定部材41に係合しない非係合部54と、を有する。係合部53と非係合部54とは、回動部材42の回動方向に配列されている。すなわち、本実施形態の回動部材42では、係合部53が周方向の一部に形成されている。係合部53の数は、例えば1つであってもよいし、複数であってもよい。係合部53の数が複数である場合、複数の係合部53は、回動部材42の回動方向に等間隔で配列されているとよい。本実施形態における係合部53の数は2つである。これにより、回動部材42の回動位置に応じて、固定部材41と回動部材42とが係合する係合状態と、係合しない切り離し状態とに切り換えることができる。
【0051】
本実施形態の回動部材42は、電磁力によって回動させる。すなわち、本実施形態の光ファイバ切断装置1は、回動部材42を回動駆動するモータ55(駆動源)を備える。モータ55は、モータ本体56と、通電等によってモータ本体56に対して回転するモータ軸部57と、モータ減速機500と、を備える。モータ55は、取付部材58等を介して基部110(基台10)に固定されている。
本実施形態において、回動部材42は、モータ軸部57に取り付けられている。すなわち、本実施形態の回動部材42は、モータ55を介して基台10に対して回動可能に取り付けられている。
【0052】
本実施形態において、モータ55は、
図1に示すように基台10の外面(
図1において基部110の上面10a)に設けられた操作スイッチ59(例えば押しボタンスイッチ)を操作することで動作する。操作スイッチ59を操作した際、モータ55は、刃部材13が所定角度だけ回動するように回動部材42を回動駆動する。
【0053】
また、本実施形態の光ファイバ切断装置1は、
図6,8に示すように、回動部材42及びモータ軸部57の回動位置を測定する回動位置測定部60を備える。
本実施形態において、回動位置測定部60は、発光部61と、受光部62と、回動部材42及びモータ軸部57の回動位置に応じて発光部61と受光部62との間に位置する遮蔽板63と、を備える。遮蔽板63は、回動部材42、モータ軸部57の軸線A1を中心とする半円状に形成されている。回動位置測定部60において測定された回動部材42及びモータ軸部57の回動位置は、回動部材42を所定角度だけ回動させるモータ55の制御に利用される。
【0054】
さらに、本実施形態の光ファイバ切断装置1では、
図3,5,6,8−10に示すように、刃部材13と回動部材42の間の動力伝達が、刃台14が所定位置に移動した場合のみ可能である。以下、この点について具体的に説明する。
本実施形態では、前述したように、刃部材13及び固定部材41が刃台14に設けられ、回動部材42が基台10に設けられている。また、固定部材41と回動部材42とが、刃台14の移動方向(
図8において左右方向)に並ぶように配されている。これにより、回動部材42は、刃台14が所定位置に移動した場合のみ、固定部材41と係合状態となる。具体的に、刃台14は、
図3,5,6,8に示すように固定部材41及び回動部材42が互いに係合可能な第一位置P1と、
図9,10に例示するように固定部材41及び回動部材42が互いに係合しない第二位置P2と、の間で移動可能とされている。すなわち、刃台14を第一位置P1と第二位置P2との間で移動させることにより、固定部材41と回動部材42とが、互いに係合する係合状態と、互いに係合しない切り離し状態とに切り換えることができる。
図6,8,10においては、刃台14が省略されているため、刃台14に取り付けられた刃部材13によって刃台14の第一位置P1、第二位置P2を示している。
【0055】
刃台14の第一位置P1は、例えば蓋部17を基部110に対して閉じることで刃部材13によって光ファイバ100の表面を加傷するように刃台14が移動した後の位置であってもよい。本実施形態における刃台14の第一位置P1は、
図1,2に示すように、蓋部17を基部110に対して開くことで刃台14が移動した位置である。
一方、刃台14の第二位置P2は、刃台14が第一位置P1から移動することで、固定部材41が回動部材42から離れた位置であれば任意であってよい。本実施形態における刃台14の第二位置P2は、蓋部17を基部110に対して閉じることで刃部材13によって光ファイバ100の表面を加傷するように刃台14が移動した後の位置である。
【0056】
固定部材41と回動部材42とは、例えば直接係合してもよいが、本実施形態では
図4−6,8に示すように中継部材64を介して係合する。中継部材64は、固定部材41と同様に、刃台14に対して回動可能に固定されている。すなわち、刃台14は、中継部材64をさらに有する。中継部材64の軸は、刃部材13の軸線A1と平行している。
中継部材64は、少なくとも回動部材42に対して刃台14の移動方向に並ぶように配されていればよく、固定部材41に対して任意の位置に配されてよい。本実施形態において、中継部材64は固定部材41の下方側に配されている。
【0057】
以上の構成においては、回動部材42が中継部材64に係合することで、回動部材42の回動が中継部材64に伝達され、中継部材64が回動する。さらに、中継部材64の回動が固定部材41に伝達されて固定部材41が回動する。すなわち、刃部材13が回動する。
【0058】
また、本実施形態の光ファイバ切断装置1では、刃台14が手動操作用回動部材65(以下、操作部材65と呼ぶ。)をさらに有する。操作部材65は、刃台14に対して回動可能に固定されている。操作部材65は、ユーザ(光ファイバ切断装置1を取り扱う作業者)による回動により動力を伝達して刃部材13を回動させる。すなわち、操作部材65は、刃部材13を手動で回動させるために、ユーザが手指で操作する部材である。操作部材65の軸は、刃部材13の軸線A1と平行している。
本実施形態において、操作部材65は、固定部材41(刃部材13)に係合することで固定部材41を回動させる。操作部材65は、例えば固定部材41や回動部材42に直接係合してもよいが、本実施形態では中継部材64を介して固定部材41や回動部材42に係合している。操作部材65は、回動部材42に干渉しないように、固定部材41や中継部材64に対して任意の位置に配されてよい。本実施形態において、操作部材65は固定部材41や中継部材64の下方側に配されている。
【0059】
操作部材65は、ユーザの手指で操作するための操作部66を備える。操作部66は、円板状に形成されている。操作部66の外周には、複数の窪み部67が形成されている。複数の窪み部67は操作部66の周方向に等間隔で配列されている。各窪み部67は、操作部66を軸方向から見て円弧状に形成されている。これにより、ユーザの指先を窪み部67にフィットさせることができ、操作部材65を手指によって簡単に回動させることができる。
【0060】
以上の構成においては、ユーザが操作部材65を操作して回動させることにより、操作部材65の回動が中継部材64に伝達され、中継部材64が回動する。さらに、中継部材64の回動が固定部材41に伝達されて固定部材41が回動する。すなわち、刃部材13が回動する。
【0061】
図2,8,10に示すように、操作部材65は、固定部材41や回動部材42と同様に、基部110の内部に配される。ただし、操作部材65(特に操作部66)は、基部110(基台10)の外部に露出する。すなわち、基部110は、操作部材65を基部110の外部に露出させる窓10Dをさらに有する。窓10Dは、例えば基部110の側面10bのみに設けられてもよいし、基部110の側面10b及び底面10cの両方に設けられてもよい。すなわち、操作部材65は、例えば基部110の側面10bのみに露出してもよいし、基部110の側面10b及び底面10cの両方に露出してもよい。本実施形態において、窓10Dは基部110の底面10cに設けられている。すなわち、操作部材65は基部110の底面10cに露出している。ここで、基部110の側面10bは基部110の上面10aに隣り合う基部110の面であり、基部110の底面10cは基部110の上面10aと反対に向く基部110の面である。図示例において、操作部材65の操作部66は、基部110の底面10c(外面)から突出していないが、例えば突出してもよい。
【0062】
本実施形態において、刃台14の操作部材65は、移動方向における刃台14の位置に関わらず、常に基部110の外部に露出する。すなわち、操作部材65は、刃台14が第一位置P1及び第二位置P2のいずれに配されていても、基部110の外部に露出する。
【0063】
本実施形態の光ファイバ切断装置1において、基部110(基台10)は、例えば
図8,10に示すように、窓10Dから外部に露出する操作部材65を覆う誤回転防止用のカバー68をさらに有してもよい。カバー68は、例えば窓10Dの一部だけを塞ぐように配されてもよいが、図示例では窓10D全体を塞ぐように配されている。カバー68は、基部110に対して着脱可能に取り付けられてもよいし、基部110に対して基部110の窓10Dを開閉するように取り付けられてもよい。
【0064】
また、本実施形態の光ファイバ切断装置1は、
図5,6,8,10に示すように、固定部材41(刃部材13)、回動部材42、操作部材65、及び中継部材64のうち少なくとも一つを、所定の回動位置に保持する保持機構70(ラッチ機構)をさらに備える。
本実施形態の保持機構70は、固定部材41を所定の回動位置に保持する。保持機構70は、所定値以上の可動トルクが固定部材41に作用した際に、固定部材41が所定の回動位置から回動できるように構成されている。
【0065】
保持機構70は、固定部材41の外周に形成された複数の係止部71と、固定部材41の外周に弾性的に押し付けられることで固定部材41のいずれか一つの係止部71に係止する被係止部材72と、によって構成されている。複数の係止部71は、固定部材41の周方向に等間隔で配列されている。係止部71の数は、光ファイバ100に接触する刃部材13の外周縁部の位置の数(外周縁部の全周を等分割した数)に対応している。本実施形態における係止部71の数は、16である。
【0066】
被係止部材72がいずれか一つの係止部71に係止することで、固定部材41が所定の回動位置に保持される。また、所定値以上の可動トルクが固定部材41に作用した際には、被係止部材72の弾性力に抗して被係止部材72が移動することで、係止部71と被係止部材72との係止状態が解除される。これにより、固定部材41が所定の回動位置から回動することができる。
【0067】
以下、本実施形態の保持機構70についてより具体的に説明する。
各係止部71は、例えば径方向において固定部材41の外側に突出する凸部であってもよいが、本実施形態では径方向において固定部材41の外側に開口する凹部73である。係止部71をなす凹部73は、固定部材41を軸方向から見てV字状に形成されている。
図7,8,10に示すように、凹部73の二つの内側面73a,73bは、固定部材41の径方向に対して固定部材41の周方向に互いに逆向きに傾斜している。固定部材41の径方向に対する凹部73の二つの内側面73a,73bの傾斜角度は互いに等しい。これにより、係止部71をなす凹部73の開口方向が、固定部材41の径方向に一致している。複数の係止部71は、係止歯車74を構成している。
【0068】
図5,6,8,10に示すように、被係止部材72は、帯板状に形成された板ばねである。被係止部材72の長手方向の第一端部は、刃台14に固定されている。
図8,10に示すように、被係止部材72の長手方向の第二端部には、固定部材41の係止部71に係止する被係止部75が形成されている。
被係止部75は、例えば凸部である係止部71が挿入可能な凹部であってもよい。本実施形態の被係止部75は、凹部73である係止部71に挿入可能な凸部76である。被係止部75をなす凸部76は、板ばねに折り曲げ加工を施すことで形成されている。凸部76は、任意の形状に形成されてよいが、本実施形態では固定部材41に形成された凹部73に対応するV字状に形成されている。
【0069】
被係止部材72の凸部76は、被係止部材72が弾性的に撓み変形した状態で固定部材41の凹部73に挿入される。これにより、被係止部材72の被係止部75が、被係止部材72の弾性力によって固定部材41の外周に弾性的に押し付けられ、被係止部75が係止部71に係止する。この状態において、所定値以上の可動トルクが固定部材41に作用した際には、被係止部材72の弾性力に抗して被係止部材72の凸部76が固定部材41の凹部73から抜き出る。これにより、係止部71と被係止部75との係止状態が解除され、固定部材41は所定の回動位置から回動することができる。
【0070】
上記した保持機構70において、固定部材41が所定の回動位置から回動可能となる可動トルクの大きさは、例えば、被係止部材72の弾性力や固定部材41の凹部73の内側面73a,73bの傾斜角度などを変えることで調整できる。
【0071】
また、本実施形態の光ファイバ切断装置1では、
図4に示すように、刃台14に取り付けられた固定部材41、操作部材65及び中継部材64の上方が、カバー部80によって覆われている。本実施形態のカバー部80には、第一カバー部80Aと、第二カバー部80Bと、第三カバー部80Cと、がある。第一カバー部80Aは、固定部材41及び中継部材64の一部(特に後述する第一中継歯車84A)を上方から覆う。第二カバー部80Bは、中継部材64の残部(特に後述する第二中継歯車84B)及び操作部材65の一部(特に後述する操作部材65の歯車83)を上方から覆う。第三カバー部80Cは、操作部材65の操作部66を上方から覆う。カバー部80は、図示例のように刃台14に一体に形成されてもよいが、これに限ることはない。
【0072】
次に、本実施形態の光ファイバ切断装置1において、固定部材41(刃部材13)、回動部材42、操作部材65、中継部材64の係合構造について、
図4−10を参照してより具体的に説明する。
本実施形態において、固定部材41、回動部材42、操作部材65、中継部材64の係合構造(例えば、固定部材41と中継部材64とが係合する構造、回動部材42と中継部材64とが係合する構造、操作部材65と中継部材64とが係合する構造)は、歯車を利用して構成されている。すなわち、固定部材41、回動部材42、操作部材65、中継部材64は、それぞれ歯車81,82,83,84を備える。
【0073】
図4−7に示すように、固定部材41の歯車81(以下、回動伝達歯車81と呼ぶ。)は、回動部材42の歯車82や操作部材65の歯車83に直接係合してもよいが、本実施形態では、中継部材64の歯車84に係合する。回動伝達歯車81は、例えば前述した保持機構70の係止歯車74と別個に形成した上で一体に固定されてもよいが、本実施形態では、係止歯車74と一体に形成されている。回動伝達歯車81と係止歯車74とは、固定部材41の軸方向に配列されている。
回動伝達歯車81の歯数、係止歯車74の歯数は、任意であってよい。本実施形態において、回動伝達歯車81の歯数は、係止歯車74の歯数の整数倍となっている。図示例では、係止歯車74の歯数が16であり、回動伝達歯車81の歯数が32となっている。
【0074】
本実施形態の固定部材41では、回動伝達歯車81と係止歯車74との間に区画壁部85が形成されている。区画壁部85は、回動伝達歯車81に係合する中継部材64の歯車84が係止歯車74に干渉したり、係止歯車74に係止する被係止部材72(特に被係止部75)が回動伝達歯車81に干渉したりすることを防ぐ。
【0075】
本実施形態においては、
図6,8−10に示すように、回動部材42の歯車82が中継部材64の歯車84に係合する。回動部材42の歯車82は、例えば回動部材42の全周に歯を配列して構成されてもよい。本実施形態における回動部材42の歯車82は、回動部材42の周方向の一部に歯を形成して構成されている。すなわち、本実施形態における回動部材42の歯車82は、間欠歯車である。
回動部材42の歯車82のうち、歯が形成されている部分が前述した係合部53に相当し、歯が形成されていない部分が前述の非係合部54に相当する。同一の係合部53を構成する歯の数は、任意であってよいが、本実施形態では4つである。
【0076】
回動部材42の歯車82は、モータ55が停止している状態において、中継部材64の歯車84と係合しない。すなわち、回動部材42は、非係合部54が中継部材64の歯車84に対向するように配され、中継部材64と接触しない。回動部材42の歯車82は、モータ55によって回動駆動されているときのみに、中継部材64の歯車84と係合する。
【0077】
本実施形態の回動部材42では、前述したように2つの係合部53が回動部材42の周方向に等間隔で配列されている。このため、回動部材42は、操作スイッチ59を操作する毎に、モータ55の駆動力によって180度回動し、中継部材64と係合しない回動位置で停止する。なお、係合部53の数が1つである場合、回動部材42は、操作スイッチ59を操作する毎に、モータ55の駆動力によって360度回動し、中継部材64と係合しない回動位置で停止する。
【0078】
本実施形態においては、
図4,6に示すように、操作部材65の歯車83が中継部材64の歯車84に係合する。操作部材65の歯車83は、例えば前述した操作部66と別個に形成した上で固定されてもよいが、本実施形態では操作部66と一体に形成されている。操作部材65の歯車83と操作部66とは操作部材65の軸方向に配列されている。操作部材65の歯車83の歯数は、任意であってよい。
【0079】
中継部材64の歯車84(以下、中継歯車84と呼ぶ。)の数は、例えば1つであってもよいが、本実施形態では
図4,6,8,10に示すように2つである。2つの中継歯車84,84は、例えば一体に形成して構成されてもよいが、本実施形態では、別個に形成した上で互いに固定されている。2つの中継歯車84,84は、中継部材64の軸方向に配列されている。
【0080】
2つの中継歯車84,84の径寸法及び歯数は、互いに異なっている。2つの中継歯車84,84のうち第一中継歯車84Aは、固定部材41の回動伝達歯車81に係合する。第二中継歯車84Bは、互いに周方向の異なる位置において回動部材42の歯車82及び操作部材65の歯車83と各々係合する。本実施形態においては、第一中継歯車84Aの径寸法が第二中継歯車84Bの径寸法よりも小さく、第一中継歯車84Aの歯数が第二中継歯車84Bの歯数よりも少ない。
【0081】
具体的な第一中継歯車84Aの歯数、第二中継歯車84Bの歯数は、任意であってよい。本実施形態において、第二中継歯車84Bの歯数は、第一中継歯車84Aの歯数の整数倍となっている。図示例では、第一中継歯車84Aの歯数が16であり、第二中継歯車84Bの歯数が32となっている。
【0082】
次に、本実施形態の光ファイバ切断装置1において、光ファイバ100に接触する刃部材13の外周縁部の位置を変更する動作の一例について説明する。
本実施形態では、
図3,5,6,8に示すように、刃台14を第一位置P1に配した状態において、モータ55の駆動力を利用して刃部材13を回動させることができる。この場合、ユーザは、基台10に設けられた操作スイッチ59(
図1参照)を操作すればよい。
【0083】
ユーザが操作スイッチ59を操作した際には、モータ55が回動部材42を回動駆動する。モータ55は、回動部材42を右回り、左回りのいずれか一方に回動させればよい。本実施形態において、モータ55は回動部材42を180度回動させる。回動部材42の回動は、中継部材64を介して固定部材41に伝達される。ここで、固定部材41には所定値以上の可動トルクが作用するため、保持機構70による固定部材41の係止部71(一の係止部71)と被係止部材72との係止状態が解除される。これにより、固定部材41及び刃部材13が回動部材42の回動方向に対応する方向に回動する。
【0084】
ここで、中継部材64と係合する回動部材42の係合部53は、回動部材42の周方向の一部にのみ形成されている。このため、回動部材42の係合部53は、回動部材42が180度回動する間に、中継部材64と一時的に係合して、中継部材64及びこれに係合する固定部材41を所定角度だけ回動させる。この際、固定部材41が回動する所定角度は、刃部材13により光ファイバ100を加傷する際に光ファイバ100に接触する刃部材13の接触長に対応する。すなわち、回動部材42が180度回動することで、刃部材13の接触長に対応する角度単位で刃部材13を回動させることができる。
【0085】
上記のように固定部材41及び刃部材13が回動した後の状態では、保持機構70の被係止部材72が一の係止部71に隣り合う別の係止部71に係止する。すなわち、固定部材41及び刃部材13は、保持機構70によって回動しないように保持される。また、回動部材42は、中継部材64と係合しない回動位置で停止する。すなわち、回動部材42は、その非係合部54が中継部材64に対向するように配され、刃部材13と回動部材42の間の動力伝達が解除されている。
【0086】
また、本実施形態の光ファイバ切断装置1では、
図3,5,6,8−10に示すように、刃台14を第一位置P1及び第二位置P2のいずれに配しても、ユーザが操作部材65の操作部66を操作することで、刃部材13を手動で回動させることができる。操作部材65は、右回り、左回りのいずれにも回動させることができる。
ユーザが操作部材65を回動させた際には、操作部材65の回動が、中継部材64を介して固定部材41に伝達される。ここで、固定部材41に所定値以上の可動トルクが作用すると、保持機構70による固定部材41の係止部71(一の係止部71)と被係止部材72との係止状態が解除される。これにより、固定部材41及び刃部材13が操作部材65の回動方向に対応する方向に回動する。
【0087】
その後、刃部材13がその接触長に対応する角度単位で回動すると、被係止部材72が自身の弾性力によって一の係止部71に隣り合う別の係止部71に係止し、固定部材41及び刃部材13は、保持機構70によって回動しないように保持される。
ユーザは、被係止部材72が別の係止部71に係止する際に生じる振動や音を手指や耳で感じ取ることで、刃部材13がその接触長に対応する角度単位で回動したことを知ることができる。また、ユーザは、押さえ部材47に形成された目盛り52を視認することでも刃部材13の回動位置を知ることができる。すなわち、刃部材13を手動で回動させても、刃部材13の接触長に対応する角度単位で刃部材13を回動させることができる。
【0088】
上記のように刃部材13を手動で回動させる際、回動部材42は、前述したように中継部材64と係合しない回動位置で停止している。このため、
図6,8に示すように、仮に刃台14が第一位置P1に配されていても、操作部材65の回動は、中継部材64から回動部材42に伝達されない。すなわち、操作部材65を回動させても、モータ55に負荷がかかることを防止できる。
【0089】
また、本実施形態では、ユーザが、操作スイッチ59を連続して操作したり、操作部材65を回し続けたりすることで、刃部材13を接触長の整数倍(2倍、3倍等)の長さに対応する角度だけ回動させることもできる。これにより、刃部材13の外周縁部の所定領域に欠けなどの不具合がある場合、刃部材13の所定領域が光ファイバ100の加傷に用いられないように、刃部材13の所定領域を簡単にスキップすることができる。
【0090】
以上説明したように、本実施形態の光ファイバ切断装置1によれば、刃部材13が刃台14に対して回動可能に固定され、刃部材13を回動させる回動部材42が基台10に対して回動可能に固定されている。このため、刃部材13の回動をモータ55等の駆動源によって駆動する場合には、駆動源を基台10に設けられた回動部材42に接続すればよい。すなわち、駆動源を基部110(基台10)に設けることができる。したがって、駆動源に接続するための配線(電気配線)を短くできるなど、刃部材13を回動するための機構の簡素化を図ることができる。
また、モータ55等の駆動源を基部110(基台10)に対して移動する刃台14に設ける場合と比較して、駆動源や配線の劣化を小さく抑えることもできる。
【0091】
また、本実施形態の光ファイバ切断装置1によれば、駆動源の駆動力を回動部材42から伝達して刃部材13を回動させる機構(伝達機構)を、回動する部材のみによって構成することができる。本実施形態では、伝達機構が、回動する部材(固定部材41、回動部材42、操作部材65、中継部材64)のみによって構成されている。このため、例えば特許文献1のように、上記の伝達機構が、駆動源の回動運動を作動ピンの直線運動に変換する機構や、作動ピンの直線運動を刃部材の回動運動に変換する機構を含む場合と比較して、伝達機構に不具合が生じることを好適に抑制できる。また、上記した運動変換機構を含む場合と比較して、伝達機構をシンプルに構成することができる。
【0092】
また、本実施形態の光ファイバ切断装置1において、刃台14に設けられた刃部材13と基台10に設けられた回動部材42の間の動力伝達は、解除可能である。このため、刃部材13と回動部材42の間の動力伝達を解除することで、刃部材13を手動で回動させても、モータ55等の駆動源に負荷がかかることを防止できる。すなわち、駆動源の保護を図ることができる。
また、仮に、モータ55等の駆動源、駆動源を駆動するための電源(例えば電池)や制御回路等に不具合が生じたりしても、刃部材13と回動部材42の間の動力伝達を解除することで、刃部材13を手動で回動させることができる。
【0093】
また、本実施形態の光ファイバ切断装置1において、刃部材13と回動部材42の間の動力伝達は、刃台14が所定位置(第一位置P1)に移動した場合のみ可能となっている。このため、刃台14を所定位置以外の位置(第二位置P2)に配することで、モータ55等の駆動源に負荷をかけることなく、また、駆動源等に不具合が生じても、刃部材13を手動で回動させることができる。
【0094】
また、本実施形態の光ファイバ切断装置1において、刃部材13と回動部材42の間の動力伝達は、回動部材42の回動位置に応じて解除される。具体的には、回動部材42が、固定部材41に係合する係合部53と、固定部材41に係合しない非係合部54と、を回動部材42の回動方向に配列して構成されている。このため、刃台14が第一位置P1に配されていても、回動部材42の回動位置に応じて、固定部材41と回動部材42とが係合する係合状態と、係合しない切り離し状態とに切り換えることができる。すなわち、刃台14が第一位置P1に配されていても、回動部材42に接続された駆動源に負荷をかけることなく、また、駆動源等に不具合が生じても、刃部材13を手動で回動させることができる。
【0095】
また、本実施形態の光ファイバ切断装置1によれば、モータ55等の駆動源が停止している状態において、刃部材13と回動部材42の間の動力伝達が解除されている。具体的に、回動部材42は、非係合部54が中継部材64や固定部材41に対向するように配される。このため、回動部材42が中継部材64や固定部材41と接触することはない。これにより、固定部材41と回動部材42とを係合状態から切り離し状態に切り換える動作(例えば刃台14を第一位置P1から第二位置P2に移動させる動作)を行うことなく、手動、駆動源による駆動のいずれでも刃部材13を回動させることができる。
また、刃台14を第二位置P2から第一位置P1に移動させた際に、回動部材42と、中継部材64や固定部材41とが衝突することも防止できる。したがって、回動部材42や中継部材64、固定部材41の保護を図ることができる。
【0096】
また、本実施形態の光ファイバ切断装置1によれば、刃台14は、ユーザによる回動により動力を伝達して刃部材13を回動させる操作部材65を有する。また、基台10は、内部に収容した刃台14の操作部材65を外部に露出させる窓10Dを有する。このため、刃部材13から離れた位置において手動で刃部材13を回動させることができる。これにより、手動で刃部材13を回動させる際に、ユーザの手が刃部材13に触れることを抑制できる。
また、刃部材13が露出する基部110の上面10aと異なる方向に向く基部110の底面10cや側面10bに、操作部材65を露出させる場合には、手動で刃部材13を回動させる際に、ユーザの手が刃部材13に触れることをさらに抑制できる。
【0097】
また、本実施形態の光ファイバ切断装置1において、基台10が、内部に収容した刃台14の操作部材65を覆う誤回転防止用のカバー68を有する場合には、不意に操作部材65に外力が作用して刃部材13が意図せず回動してしまうことを防止できる。
【0098】
また、本実施形態の光ファイバ切断装置1は、固定部材41を所定の回動位置に保持する保持機構70を備える。これにより、刃部材13が不意に回動してしまうことを抑制できる。
【0099】
また、本実施形態の保持機構70は、固定部材41の外周に配列された複数の係止部71と、固定部材41の外周に弾性的に押し付けられることでいずれか一つの係止部71に係止する被係止部材72と、を備える。さらに、所定値以上の可動トルクが固定部材41に作用した際に、係止部71と被係止部材72との係止状態が解除される。これにより、所定値以上の可動トルクを固定部材41に作用させることで、固定部材41及び刃部材13を回動させることができる。また、刃部材13を複数の回動位置において保持することができる。
【0100】
さらに、ユーザは、刃部材13を手動で回動させる際に、被係止部材72が別の係止部71に係止する際に生じる振動や音を手指や耳で感じ取ることができる。これにより、ユーザは、刃部材13の回動位置が変わったことを手指の感触等で認識することができる。
上記した保持機構70に関連する効果は、保持機構70が回動部材42、操作部材65、中継部材64を所定の回動位置に保持するように構成されても、同様に奏し得る。
【0101】
また、本実施形態の光ファイバ切断装置1では、固定部材41における回動伝達歯車81の歯数が係止歯車74の歯数の整数倍であり、かつ、中継部材64における第一中継歯車84Aの歯数が第二中継歯車84Bの歯数の整数倍である。このため、回動部材42の歯車82と第二中継歯車84Bとが常に係合していなくても、被係止部材72が係止歯車74の係止部71に係止している状態では、第二中継歯車84Bを、回動部材42の歯車82と第二中継歯車84Bとが正しく係合する回動位置(回動部材42の歯車82の歯が第二中継歯車84Bの歯の間に滑らかに入り込むことができる位置)に配することができる。
【0102】
これにより、回動部材42の歯車82が回動した際に、回動部材42の歯車82の歯及び第二中継歯車84Bの歯の先端同士が衝突することを防止できる。回動部材42の歯車82の歯及び第二中継歯車84Bの歯の先端同士が衝突することで、回動部材42及び中継部材64が回動できなくなってしまうことを防止できる。
また、仮に、モータ55が停止している状態において回動部材42の係合部53が中継部材64の歯車84に対向するように配されていたとしても、刃台14を第二位置P2から第一位置P1に移動させた際に回動部材42の歯車82の歯及び第二中継歯車84Bの歯の先端同士が衝突することも防止できる。
したがって、回動部材42の歯車82及び第二中継歯車84Bの保護を図ることもできる。
【0103】
また、本実施形態の光ファイバ切断装置1によれば、刃台14に取り付けられた固定部材41、操作部材65、中継部材64の上方が、カバー部80によって覆われている。このため、異物が、固定部材41、操作部材65、中継部材64に到達することを好適に抑制できる。特に、固定部材41、操作部材65、中継部材64の上方において刃部材13によって光ファイバ100の表面を加傷する際に発生するファイバ屑が、固定部材41、操作部材65、中継部材64に到達することを好適に抑制できる。これにより、ファイバ屑等の異物に基づいて、固定部材41、回動部材42、操作部材65、中継部材64の相互の係合状態に不具合が生じることを抑制できる。したがって、回動部材42や操作部材65から固定部材41への回動の伝達が、異物によって阻害されることを抑制できる。
【0104】
以上、本発明の詳細について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
【0105】
本発明の光ファイバ切断装置において、操作部材は、例えば刃台が所定位置に移動した場合のみ、基台の窓から外部に露出してもよい。例えば
図11,12に示すように、操作部材65は、刃台14(刃部材13)が第一位置P1に配された状態で基部110(基台10)の窓10Eから外部に露出せず、刃台14(刃部材13)が第二位置P2に配された状態で基部110の窓10Eから外部に露出してもよい。また、操作部材65は、例えば刃台14(刃部材13)が第二位置P2に配された状態で基部110の窓10Eから外部に露出せず、刃台14(刃部材13)が第一位置P1に配された状態で基部110の窓10Eから外部に露出してもよい。
【0106】
上記のように操作部材65を基部110(基台10)の窓10Eから外部に露出させるためには、例えば基部110の窓10Eの大きさを調整すればよい。具体的には、刃台14の移動方向における基部110の窓10Eの長さ寸法を、
図8,10に例示した上記実施形態の基部110の窓10Dよりも短くすればよい。また、上記のように操作部材65を基部110の外部に露出させるためには、例えば
図8,10に例示した基部110の窓10Dの一部だけを覆うカバーを基部110に設けてもよい。
【0107】
刃台14が所定位置に配されたときのみ、操作部材65が基台10の窓10E(窓10D)から外部に露出する場合、刃台14が所定位置以外に配されたときに、不意に操作部材65に外力が作用して刃部材13が意図せず回動してしまうことを防止できる。
また、固定部材41及び回動部材42が互いに係合しない第二位置P2に刃台14が配されたときのみに、操作部材65が基部110の外部に露出する場合には、操作部材65を操作することで刃部材13を回動させる際に、回動部材42が回動してモータ55等の駆動源に負荷がかかることを確実に防ぐことができる。
【0108】
本発明の光ファイバ切断装置は、例えば、回動可能とされた刃部材(固定部材)、回動部材、操作部材、中継部材の少なくともいずれか一つの部材(回動可能部材)の一方の回動方向(第一回動方向)への回動を規制し、他方の回動方向(第二回動方向)への回動を許容する回動規制機構(ラチェット機構)を備えてもよい。
回動規制機構は、例えば保持機構と別個に設けられてもよいし、例えば
図13に示すように保持機構70Fに含まれてもよい。
【0109】
図13に例示する保持機構70Fでは、係止歯車74Fの係止部71Fをなす凹部73Fの開口方向が、固定部材41F(回動可能部材)の径方向に対して第一回動方向RF1(
図13において左回りの方向)に傾斜している。具体的には、V字状に形成された凹部73Fの二つの内側面73Fa,73Fbのうち第一回動方向RF1の前側に位置する前側内側面73Faが、固定部材41Fの径方向に対して第一回動方向RF1側に大きく傾斜している。凹部73Fのうち第一回動方向RF1の後側に位置する後側内側面73Fbは、例えば固定部材41Fの径方向に対して傾斜せずに固定部材41Fの径方向に延びていてもよい。また、後側内側面73Fbは、例えば固定部材41Fの径方向に対して、前側内側面73Faよりも小さな傾斜角度で第一回動方向RF1側に傾斜してもよい。すなわち、保持機構70Fの係止歯車74Fは、ラチェット歯車91Fを構成している。保持機構70Fにおいて被係止部材72Fの被係止部75Fをなす凸部76Fは、係止部71Fをなす凹部73Fに挿入可能であれば任意の形状に形成されてよいが、図示例では凹部73Fの形状に対応するV字状に形成されている。
【0110】
以上のように構成される保持機構70Fでは、刃部材13の第二回動方向RF2(
図13において右回りの方向)への回動が許容され、第一回動方向RF1への回動が規制される。すなわち、
図13に例示した保持機構70Fは回動規制機構90Fを含む。
光ファイバ切断装置が上記した回動規制機構90Fを備えることで、光ファイバ100の表面を加傷して消耗した刃部材13の外周縁部の所定の領域が、誤って再び光ファイバ100の加傷に用いられることを抑制できる。
【0111】
本発明の光ファイバ切断装置において、刃部材(固定部材)、回動部材、操作部材、中継部材の相互の係合構造は、歯車を利用して構成されることに限らず、例えば摩擦車やベルトなどを利用して構成されてもよい。
【0112】
本発明の光ファイバ切断装置において、刃部材(固定部材)や操作部材と回動部材の間の動力伝達は、例えば刃部材や操作部材に作用するトルクが所定位置以上となった場合に解除されてもよい。すなわち、本発明の光ファイバ切断装置は、例えば、刃部材や操作部材に作用するトルクが所定位置以上となった場合に、刃部材や操作部材と回動部材の間の動力伝達を解除するトルクリミッタ部を備えてもよい。トルクリミッタ部は、例えば、摩擦力を利用したものであってもよいし、磁力を利用したものであってよい。
【0113】
トルクリミッタ部が摩擦力を利用したものである場合、トルクリミッタ部は、例えば回動部材と中継部材や刃部材(固定部材)とを摩擦力によって係合する構成、操作部材と中継部材や刃部材(固定部材)とを摩擦力によって係合する構成であってよい。また、刃部材(固定部材)と操作部材とがこれらに巻回されたベルトによって連結されることで係合する場合、摩擦力を利用したトルクリミッタ部は、例えば回動部材とベルトとが摩擦力によって係合する構成であってもよい。
トルクリミッタ部が磁力を利用したものである場合、トルクリミッタ部は、例えば刃部材(固定部材)や操作部材、回動部材、中継部材に設けられる磁気カップリングであってもよい。
【0114】
光ファイバ切断装置が上記したトルクリミッタ部を備える場合には、仮に、刃台が第一位置に配され、かつ、刃部材(固定部材)や操作部材と回動部材とが係合していても、刃部材(固定部材)や操作部材に作用する可動トルクが所定値以上となった場合に、刃部材(固定部材)や操作部材の回動が回動部材に伝達されることを防止できる。これにより、刃部材(固定部材)や操作部材を手動で回動させた際に回動部材に接続されるモータ等の駆動源にかかる負荷を軽減して、駆動源の保護を図ることができる。特に、上記所定値をモータ等の駆動源の軸部(モータ軸部)の回転に要するトルク以下とすることで、刃部材(固定部材)や操作部材を手動で回動させた際に駆動源の軸部が回転することを防止できる。したがって、駆動源を確実に保護できる。また、駆動源等に不具合が生じても、刃部材を手動で回動させることができる。
さらに、光ファイバ切断装置がトルクリミッタ部を備える場合には、刃部材(固定部材)や操作部材と回動部材との動力伝達を解除する動作(例えば刃台を第一位置から第二位置に移動させる動作)を行うことなく、手動及び駆動源による駆動のいずれでも刃部材を回動させることができる。
【解決手段】光ファイバ100の長手方向に間隔をあけて配された1対のクランプを有する基台10と、円板状の刃部材13を有し、刃部材を1対のクランプ間で移動させて、光ファイバの表面を刃部材の外周縁部に接触させて加傷する刃部材移動台と、光ファイバの加傷部を押し曲げて光ファイバを切断する押し当て部材と、を備え、刃部材は、光ファイバに接触する外周縁部の位置を変更するために刃部材移動台に対して回動可能に固定され、基台は、基台に対して回動可能に固定された回動部材42を有し、刃部材と回動部材を係合させることが可能であり、刃部材と回動部材を係合させた状態で回動部材を回動させることで、刃部材を回動可能であり、刃部材と回動部材の係合が解除可能である光ファイバ切断装置を提供する。