(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、出願人が上記の特許文献1に開示している冷却装置には、以下の改善すべき課題が存在する。すなわち、出願人が開示している冷却装置では、周囲温度が高いとき(凝縮器における冷媒の凝縮効率が低下するとき)に冷凍サイクル内の冷媒圧力が上限値に達して圧縮機が停止する事態を回避するために、凝縮冷媒温度が始動時温度監視値以下のときには圧縮機の回転数を段階的に増加させるものの、凝縮冷媒温度が始動時温度監視値よりも高いときには圧縮機を運転可能最高回転数で動作させる構成が採用されている。これにより、出願人が開示している冷却装置では、周囲温度が高くなる夏期等においても冷凍サイクルを好適に機能させて被冷却物を十分に冷却することが可能となっている。
【0008】
一方、この種の温度調整装置では、周囲温度が高いときだけでなく、周囲温度が低いときにも被冷却物に対して冷却水を供給して冷却する必要が生じることがある。この場合、出願人が開示している上記の冷却装置では、周囲温度が例えば−5℃程度の低温時においても冷凍サイクルを動作させて冷却水を冷却することが可能となっている。しかしながら、出願人は、周囲温度が−5℃を下回る極低温の環境下(例えば、周囲温度が−20℃程度の環境下)において、以下のような不都合が生じるおそれがあることを見いだした。
【0009】
例えば、極低温の環境下においては、冷却装置の運転開始時点(冷凍サイクルの全体が極低温となっている状態)において冷媒の多くが凝縮して液化した状態となっている。このため、圧縮機による冷媒の圧縮が開始されて冷凍サイクル内で冷媒が移動させられたときに液状の冷媒が圧縮機に吸入されることがあり、かかる場合には、流入した冷媒によって圧縮機内の潤滑油が洗い流されて潤滑不良(可動部品の摺動抵抗の増大)を招くおそれがある。また、圧縮機内に液状の冷媒が大量に吸引されたときには、この冷媒が潤滑油内に溶け込み、その状態で圧縮機の動作を継続させたときには、フォーミング現象(泡立ち現象)が発生するおそれがあり、これに起因して、圧縮機から潤滑油(潤滑油と液状の冷媒とが混じり合った泡状の混合物)が流出して、好適な潤滑が可能な状態を維持するのが困難となるおそれもある。
【0010】
したがって、極低温時の運転開始に際しては、冷凍サイクル内の液状の冷媒をできるだけ早く十分に気化させて液状の冷媒の量を減少させ、液状の冷媒が圧縮機に吸引されるのを回避するのが好ましい。しかしながら、出願人が開示している上記の冷却装置のように、周囲温度が高いときにも必要量の冷媒を好適に凝縮させ得る十分な凝縮能力の凝縮器を備えた冷凍サイクルでは、極低温の環境下において動作を開始させたときに、圧縮機から吐出された冷媒が凝縮器において短時間で凝縮されてしまうため、液状の冷媒の量を減少させる(十分な量の冷媒が気化した状態となる)のに長い時間を要することとなる。このため、液状の冷媒が圧縮機に吸引される可能性が高く、潤滑不良を招くおそれがあるため、この点を改善するのが好ましい。
【0011】
本発明は、かかる改善すべき課題に鑑みてなされたものであり、極低温の環境下における動作開始時に圧縮機に潤滑不良が生じる事態を好適に回避し得る温度調整装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成すべく請求項1記載の温度調整装置は、供給対象に供給する熱媒液の通過が可能に構成されて当該熱媒液の温度を調整する温度調整器と、圧縮機、凝縮器、膨張弁および蒸発器を有して当該蒸発器が前記温度調整器内に構成された冷凍サイクルと、前記冷凍サイクルの動作を制御する制御部とを備え、前記制御部が前記圧縮機を動作させることで前記凝縮器において凝縮された冷媒が前記膨張弁を通過して前記温度調整器内の前記蒸発器に吐出され、当該蒸発器内の冷媒と当該温度調整器内の前記熱媒液との熱交換によって当該熱媒液の温度が調整される温度調整装置であって、
前記圧縮機に吸入される前記冷媒の温度を特定可能な温度センサと、前記圧縮機に吸入される前記冷媒の吸入圧力を特定可能な第1の圧力センサと、前記圧縮機から吐出された前記冷媒の吐出圧力を特定可能な第2の圧力センサとを備え、前記冷凍サイクルは、前記圧縮機から吐出された前記冷媒を、前記凝縮器および前記膨張弁を通過させずに前記蒸発器に流入させるバイパス配管と、前記制御部の制御に従って前記バイパス配管を開閉する開閉弁と
、前記制御部の制御に従って前記凝縮器を冷却する送風機とを備え、前記制御部は、当該温度調整装置の運転開始時に、前記圧縮機の動作を開始させ、かつ前記開閉弁を閉塞制御すると共に、
前記送風機を予め規定された第1の回転数で動作させ、かつ予め規定された低温時処理開始条件Aが満たされているか否かを判別し、前記低温時処理開始条件Aが満たされているときに、前記送風機の回転数を前記第1の回転数よりも低い第2の回転数に低下させる低温時処理Aを実行し、前記圧縮機の動作を開始させてから予め規定された待機時間が経過したときに予め規定された
低温時処理開始条件Bが満たされているか否かを判別し、前記
低温時処理開始条件Bが満たされているときに、前記開閉弁を開口制御して前記圧縮機から吐出された前記冷媒を前記蒸発器に流入させる
低温時処理Bを実行する
と共に、前記第1の圧力センサからのセンサ信号に基づいて特定した前記吸入圧力と前記第2の圧力センサからのセンサ信号に基づいて特定した前記吐出圧力との差が予め規定された圧力を下回っているときに前記低温時処理開始条件Aが満たされていると判別し、かつ前記温度センサからのセンサ信号に基づいて特定した前記冷媒の温度が予め規定された温度を下回っているときに前記低温時処理開始条件Bが満たされていると判別する。
【0014】
さらに、請求項
2記載の温度調整装置は、請求項
1記載の温度調整装置において、前記冷凍サイクルは、圧縮能力可変型の前記圧縮機を備えて構成され、前記制御部は、当該温度調整装置の運転開始時に、前記圧縮機を予め規定された第1の圧縮能力で動作させると共に、前記待機時間が経過したときに、前記圧縮機を前記第1の圧縮能力よりも高い第2の圧縮能力で動作させる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の温度調整装置によれば、制御部が、圧縮機の動作を開始させてから予め規定された待機時間が経過したときに予め規定された
低温時処理開始条件Bが満たされているか否かを判別し、満たされているときに、開閉弁を開口制御して圧縮機から吐出された冷媒を、バイパス配管を介して蒸発器に流入させる
低温時処理Bを実行することにより、極低温の環境下において、待機時間中の動作によって圧縮機から吐出される冷媒の温度がある程度上昇した時点において開閉弁が開口制御されるため、十分に温度上昇していない冷媒がバイパス配管を介して蒸発器に流入させられて冷凍サイクル内の冷媒温度が殆ど上昇しない事態を生じさせることなく、開閉弁が開口制御された後に、バイパス配管を介して蒸発器に流入させる冷媒の分だけ凝縮器および膨張弁を通過して蒸発器内に吐出される冷媒の量を好適に減少させることができる結果、冷凍サイクル内の冷媒の温度を短時間で上昇させて多くの冷媒を効率よく気化させることができる。これにより、液化した状態の冷媒が圧縮機に吸引される事態を好適に回避することができるため、圧縮機において潤滑不良が生じる事態を好適に回避することができる。
【0018】
この場合、制御部が、圧縮機に吸入される冷媒の温度が予め規定された温度を下回っているときに
低温時処理開始条件Bが満たされていると判別することにより、冷媒圧縮による温度上昇の影響が最も小さい吸入温度に基づいて、開閉弁を開口制御すべきか否かを判別することができるため、比較的簡易な構成であるにも拘わらず、
低温時処理Bを実行すべきか否かを的確に判別することができる結果、周囲温度がある程度高いときには開閉弁を閉塞状態に維持し、周囲温度が極低温のときには開閉弁を開口状態に制御する処理を確実に実行することができる。
また、制御部が、温度調整装置の運転開始時に、送風機を予め規定された第1の回転数で動作させると共に、予め規定された低温時処理開始条件Aが満たされているか否かを判別し、満たされているときに、送風機の回転数を第1の回転数よりも低い第2の回転数に低下させる低温時処理Aを実行することにより、周囲温度が極低温の環境下において凝縮器における冷媒の凝縮量を十分に減少させることができるため、冷凍サイクル内の冷媒の温度を一層短時間で上昇させて多くの冷媒を一層効率よく気化させることができる結果、液化した状態の冷媒が圧縮機に吸引される事態を一層好適に回避することができ、これにより、圧縮機において潤滑不良が生じる事態を一層好適に回避することができる。この場合、制御部が、冷媒の吸入圧力と吐出圧力との差が予め規定された圧力を下回っているときに低温時処理開始条件Aが満たされていると判別することにより、比較的簡易な構成でありながら、凝縮器における冷媒の凝縮量を低下させるべき状態であるか否かを的確に判別することができる。
【0019】
さらに、請求項
2記載の温度調整装置によれば、制御部が、温度調整装置の運転開始時に、圧縮機を予め規定された第1の圧縮能力で動作させると共に、待機時間が経過したときに、圧縮機を第1の圧縮能力よりも高い第2の圧縮能力で動作させることにより、動作開始直後から圧縮機を高速回転させることで液化した状態の冷媒が圧縮機に吸入されるのを回避することができると共に、長時間に亘って停止状態が継続した後の始動時であっても、圧縮機において油膜切れが生じるのを回避することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、温度調整装置の実施の形態について説明する。
【0024】
図1に示す温度調整装置1は、「温度調整装置」の一例である循環型の温度調整装置(チラー)であって、貯液槽2、冷凍サイクル3、ポンプ4、熱交換器5、圧力センサ6、温度センサ7、タッチパネル8および制御部9を備え、後述するように熱交換器5によって温度調整した冷却水Wを供給対象Xに供給することで供給対象Xの温度を調整することができるように構成されている。なお、本例の温度調整装置1では、「熱媒液」の一例である冷却水Wとして工業用蒸留水を供給対象Xに供給可能に構成されているが、工業用蒸留水に代えて、上水道水やエチレングリコール等の各種の液体を「熱媒液」として供給する構成を採用することもできる。
【0025】
貯液槽2は、一例として、ステンレススチール等の板材を折り曲げ加工することによって冷却水Wを貯液可能な箱状に形成されると共に、図示しない筐体内に設置されている。この場合、本例の温度調整装置1では、一例として貯液槽2の上にポンプ4が取り付けられており、ポンプ4が吸水管P0を介して貯液槽2内の冷却水Wを汲み上げて配管P1を介して供給対象Xに圧送する(供給する)構成(吸水管P0および配管P1が相まって供給対象Xに冷却水Wを供給する「供給用配管」が構成されている例)が採用されている。また、貯液槽2には、供給対象Xに供給した冷却水Wを回収して貯液するための配管P2(供給対象Xから冷却水Wを回収する「回収用配管」)が接続されている。なお、この貯液槽2には、新たな冷却水Wを吸水するための吸水管や、貯液量に応じて吸水管を開閉するフロート弁等が配設されているが、温度調整装置1の構成に関する理解を容易とするために、それらについての図示および説明を省略する。
【0026】
冷凍サイクル3は、圧縮機11、凝縮器12、膨張弁13、蒸発器14およびファン15を備えている。この場合、本例の冷凍サイクル3における圧縮機11は、インバータユニット11aから供給される電力の周波数に応じた回転速で回転するモータ(回転数可変型のモータ)を動力源として備えて冷媒の圧縮能力を変化させることができるように構成されている(「圧縮能力可変型の圧縮機」を備えた冷凍サイクルの一例)。また、本例の温度調整装置1では、一例として、インバータユニット11aが圧縮機11に対して20z〜60Hzの範囲内で制御部9によって指定された周波数の電力を供給することができるように構成されている。
【0027】
また、本例の温度調整装置1(冷凍サイクル3)では、前述した筐体の側面に凝縮器12が取り付けられると共に筐体の天面にファン15(「送風機」の一例)が取り付けられている。これにより、この温度調整装置1では、ファン15によって筐体内の空気を排気することで筐体の周囲の空気が筐体内に取り込まれ、この際に、取り込まれる空気が凝縮器12を通過させられることによって凝縮器12(凝縮器12内の冷媒)が冷却される。この場合、本例の冷凍サイクル3におけるファン15は、インバータユニット15aから供給される電力の周波数に応じた回転速で回転するモータ(回転数可変型のモータ)を動力源として備えて凝縮器12の冷却能力(すなわち、凝縮器12による冷媒の凝縮能力)を変化させることができるように構成されている。また、本例の温度調整装置1では、一例として、インバータユニット15aがファン15に対して1Hz〜60Hzの範囲内で制御部9によって指定された周波数の電力を供給することができるように構成されている。
【0028】
さらに、この冷凍サイクル3では、一例として電子膨張弁で膨張弁13が構成されている。また、この冷凍サイクル3では、後述するように、蒸発器14が熱交換器5内に構成されている。さらに、冷凍サイクル3は、圧縮機11から吐出された冷媒を、凝縮器12および膨張弁13を通過させずに熱交換器5内の蒸発器14に流入させるバイパス配管16(「バイパス配管」の一例)と、制御部9の制御に従ってバイパス配管16を開閉する制御弁17(「開閉弁」の一例)とを備えている。この場合、本例の冷凍サイクル3では、バイパス配管16を通過する冷媒の量を任意に調整可能な電子膨張弁で上記の制御弁17が構成されている。
【0029】
また、冷凍サイクル3は、温度センサ18および圧力センサ19a,19bを備えている。この場合、温度センサ18は、「温度センサ」に相当し、圧縮機11に吸入される冷媒の温度を特定可能なセンサ信号S18を出力する。また、圧力センサ19aは、「第1の圧力センサ」に相当し、圧縮機11に吸入される冷媒の圧力(吸入圧力)を特定可能なセンサ信号S19aを出力する。さらに、圧力センサ19bは、「第2の圧力センサ」に相当し、圧縮機11から吐出された冷媒の圧力(吐出圧力)を特定可能なセンサ信号S19bを出力する。なお、冷凍サイクル3の動作原理についての理解を容易とするために、冷凍サイクル3における上記の各構成要素以外の構成要素についての図示および詳細な説明を省略する。
【0030】
ポンプ4は、前述したように貯液槽2内の冷却水Wを供給対象Xに圧送する。この場合、貯液槽2が吸水管P0および配管P1,P2を介して供給対象Xに接続されている本例の温度調整装置1では、ポンプ4が配管P1を介して供給対象Xに冷却水Wを供給する圧力によって供給対象Xから配管P2を介して冷却水Wが貯液槽2に回収される。
【0031】
熱交換器5は、「温度調整器」の一例であって、前述したように、その内部に冷凍サイクル3の蒸発器14が構成されると共に、冷却水Wの通過が可能に構成されて配管P1に配設されている。この場合、本例の温度調整装置1では、熱交換器5が配管P1におけるポンプ4と供給対象Xとの間に配設されている。この熱交換器5は、冷凍サイクル3の膨張弁13を通過させられて蒸発器14内に吐出される冷媒と、ポンプ4によって圧送される冷却水Wとを熱交換させることで、温度調整装置1から供給対象Xに向かって圧送される冷却水Wの温度を調整する(冷却水Wを冷却する)。また、本例の温度調整装置1では、貯液槽2に貯液されている冷却水W内に埋没するように熱交換器5が貯液槽2内に収容されている。
【0032】
圧力センサ6は、配管P1(配管P1における熱交換器5と供給対象Xとの間)に配設されてポンプ4によって配管P1内を供給対象Xに向けて圧送される冷却水Wの圧力を検出してセンサ信号S6を出力する。温度センサ7は、配管P1(配管P1における熱交換器5と供給対象Xとの間)に配設されてポンプ4によって配管P1内を供給対象Xに向けて圧送される冷却水Wの温度を検出してセンサ信号S7を出力する。タッチパネル8は、図示しない制御パネルに配設されて、温度調整装置1の動作条件を設定する動作条件設定画面、および温度調整装置1の動作状態を表示する動作状態表示画面を表示可能に構成されると共に(図示せず)、動作条件設定画面に表示される疑似操作スイッチのタッチ操作によって動作条件の設定操作が可能に構成されている。
【0033】
制御部9は、温度調整装置1を総括的に制御する。具体的には、制御部9は、ポンプ4に制御信号S4を出力して温度調整装置1(貯液槽2)から供給対象Xへの冷却水Wの供給(圧送)を実行させる。また、制御部9は、インバータユニット11aに制御信号S11を出力することで圧縮機11に対して電力を供給させて冷媒の圧縮処理を実行させ、かつ膨張弁13に制御信号S13を出力することで必要量の冷媒を蒸発器14に吐出させると共に、インバータユニット15aに制御信号S15を出力することでファン15に電力を供給させて凝縮器12を冷却させ、必要量の冷媒を凝縮させる。
【0034】
この場合、制御部9は、後述するように、温度調整装置1の動作開始時に、
図2に示す動作開始時制御処理20を実行し、温度センサ18からのセンサ信号S18や圧力センサ19a,19bからのセンサ信号S19a,S19bに応じて冷凍サイクル3の圧縮機11やファン15の動作を制御することにより、周囲温度が−5℃を下回るような極低温の環境下から、周囲温度が50℃程度の極高温の環境下までの各種の環境下において温度調整装置1(冷凍サイクル3)を好適に始動させる。また、制御部9は、動作開始時制御処理20の実行中に、例えば温度センサ7からのセンサ信号S7に基づいて配管P1内の冷却水Wの温度を特定し、特定した温度が設定温度となるように膨張弁13の開度(蒸発器14内に吐出させる冷媒の流量)を調整するフィードバック制御を実行する。
【0035】
さらに、制御部9は、通常運転時(後述する通常運転時制御処理30の実行時)に、例えば温度センサ7からのセンサ信号S7に基づいて供給対象Xに供給している冷却水Wの温度(配管P1内の冷却水Wの温度)を特定し、特定した温度が設定温度となるように、圧縮機11の回転数(圧縮能力)、膨張弁13の開度、およびファン15の回転数(凝縮器12による冷媒の凝縮量)を調整するフィードバック制御を実行する。
【0036】
また、制御部9は、ポンプ4によって貯液槽2から供給対象Xに冷却水Wを圧送させているときに、一例として、圧力センサ6からのセンサ信号S6に基づいて配管P1内の冷却水Wの圧力を特定し、特定した圧力に応じて、利用者が設定した流量で温度調整装置1から供給対象Xに冷却水Wが圧送されるようにポンプ4の動作をフィードバック制御する。また、制御部9は、配管P1内の冷却水Wの圧力をタッチパネル8に数値で表示して報知する。
【0037】
この温度調整装置1による供給対象Xの冷却(供給対象Xに対する冷却水Wの供給)に際しては、図示しない電源スイッチを投入した後に、タッチパネル8の運転開始スイッチ(図示せず)をタッチ操作する。この際に、制御部9は、
図2に示す動作開始時制御処理20を開始する。この動作開始時制御処理20では、制御部9は、まず、ポンプ4にポンプ4に制御信号S4を出力して冷却水Wの圧送を開始させる(ステップ21)。次いで、制御部9は、後述するステップ22a以降の各処理と、ステップ22b以降の各処理とを並行して実行する。なお、動作開始時制御処理20の具体的な内容についての理解を容易とするために、以下、ステップ22a以降の各処理について説明した後に、ステップ22b以降の各処理について説明する。
【0038】
具体的には、制御部9は、まず、インバータユニット11aに制御信号S11を出力して圧縮機11の低速運転を開始させると共に(ステップ22a)、制御弁17に制御信号S17を出力してバイパス配管16を閉塞させる(「閉塞制御」の実行:ステップ23a)。この際に、インバータユニット11aは、制御部9からの制御信号S11に従い、一例として20Hz程度の電力を圧縮機11に供給する。これに伴い、圧縮機11が例えば1200rpm程度の低速での運転を開始する(「第1の圧縮能力」での動作の一例)。これにより、圧縮機11によって圧縮されることで温度および圧力が上昇した冷媒が圧縮機11から吐出され、冷凍サイクル3内の冷媒温度(主として、圧縮機11から吐出される冷媒の温度)が徐々に上昇する。
【0039】
次いで、制御部9は、上記のステップ22aにおいて圧縮機11の動作を開始させてから予め規定された「待機時間(一例として、60秒)」が経過したか否かを判別する(ステップ24a)。なお、この「待機時間」は、一例として、温度調整装置1の製造者によって予め規定されている。また、制御部9は、設定された「待機時間」が経過したときに、インバータユニット11aに制御信号S11を出力することによって圧縮機11の中速運転を開始させる(ステップ25a)。この際に、インバータユニット11aは、制御部9からの制御信号S11に従い、一例として50Hz程度の電力を圧縮機11に供給する。これに伴い、圧縮機11が例えば3000rpm程度の中速での運転を開始する(「第2の圧縮能力」での動作の一例)。
【0040】
この場合、前述したように、周囲温度が−5℃を下回る極低温の環境下においては、冷凍サイクル3内の冷媒の多くが液化した状態となっている。したがって、そのような状態において温度調整装置1の動作開始時点から圧縮機11を高速運転(高い圧縮能力)で運転させたときには、冷凍サイクル3内における冷媒の移動に伴って液状の冷媒が圧縮機11に吸引され、前述したように、圧縮機11において潤滑不良が生じるおそれがある。また、温度調整装置1(圧縮機11)を長時間に亘って停止させていたときには、圧縮機11内の潤滑油が流下して油膜切れが生じ易い状態となっていることがある。したがって、本例の温度調整装置1では、動作開始時点においては前述したように低速で圧縮機11を運転させ、圧縮機11による圧縮によって冷媒温度がある程度上昇し、かつ、流下した潤滑油が圧縮機11内の摺動部における全域に十分に行き渡った時点(「待機時間」が経過した時点)において圧縮機11の回転数を上昇させることで、圧縮機11の動作不良(液状の冷媒の吸引や油膜切れの発生)が生じるのを回避する構成が採用されている。
【0041】
続いて、制御部9は、温度センサ18からのセンサ信号S18に基づき、圧縮機11に吸入される冷媒の温度(冷媒の吸入温度)を特定すると共に、特定した温度が予め規定された温度(「第1規定温度」:一例として−5℃)を下回っているか否かを判別する(「
低温時処理開始条件Bが満たされているか否か」の判別の一例:ステップ26a)。この際に、温度調整装置1の周囲温度が高い夏期などにおいては、温度調整装置1の動作開始以前から冷凍サイクル3内の冷媒の温度が高い状態であり、さらに、動作開始から上記の「待機時間」が経過するまでの圧縮機11による圧縮処理によって冷凍サイクル3内の冷媒温度が徐々に上昇させられている。したがって、周囲温度がある程度高いときには、温度センサ18からのセンサ信号S18に基づいて特定した冷媒の吸入温度が規定温度(この例では、−5℃)を超えた状態となるため、制御部9は、この動作開始時制御処理20を終了して、後述する通常運転時制御処理30に移行する。
【0042】
一方、温度調整装置1の周囲温度が低い冬期などにおいては、温度調整装置1の動作開始時点における冷凍サイクル3内の冷媒の温度が低い状態であり、動作開始から上記の「待機時間」が経過するまでの圧縮機11による圧縮処理では、冷凍サイクル3内の冷媒温度を十分上昇させるのが困難となる。したがって、周囲温度が例えば、−5℃を下回る極低温の環境下においては、温度センサ18からのセンサ信号S18に基づいて特定した冷媒の吸入温度が規定温度(この例では、−5℃)以下となる(「
低温時処理開始条件Bが満たされているとき」の一例である「温度センサからのセンサ信号に基づいて特定した冷媒の温度が予め規定された温度を下回っているとき」との状態の一例)。
【0043】
この場合、この種の装置に搭載される「圧縮機」は、好適な動作が可能な冷媒圧力範囲が規定されており、規定範囲を外れた冷媒圧力下での動作時には、正常な動作が困難な状態となるおそれがある。また、冷媒圧力が規定範囲を下回る状態のとき、すなわち、周囲温度が極低温のときには、前述したように、冷凍サイクル3内の液状の冷媒の量が多くなっているおそれがある。したがって、センサ信号S18に基づいて特定される冷媒の吸入温度が規定温度以下の状態(すなわち、冷媒圧力が規定範囲を下回っている状態)において圧縮機11による圧縮処理を継続したときには、規定範囲を外れた冷媒圧力下での動作に起因して圧縮機11に各種のトラブルが生じるおそれがあり、また、液状の冷媒が圧縮機11に吸入されて潤滑不良を招くおそれもある。
【0044】
このため、本例の温度調整装置1では、冷媒の吸入温度が規定温度以下のときに、制御部9が、制御弁17に制御信号S17を出力してバイパス配管16を開口させることにより、圧縮機11から吐出された冷媒の一部を、バイパス配管16を介して熱交換器5内の蒸発器14に流入させる状態に制御した後に(「
低温時処理B」の一例:ステップ27a)、この動作開始時制御処理20を終了して、後述する通常運転時制御処理30に移行する。
【0045】
この場合、制御弁17を開口制御した状態では、圧縮機11によって圧縮されることで圧力および温度が上昇した冷媒の一部が、凝縮器12および膨張弁13を通過することなく、蒸発器14内に直接流入する。したがって、制御弁17を閉塞状態に制御していたとき(圧縮機11から吐出された冷媒のすべてが凝縮器12を通過させられる状態)よりも、圧縮機11から吐出されて凝縮器12によって凝縮される冷媒の量が減少する分だけ冷凍サイクル3内の冷媒温度の上昇率が高くなる(冷媒の温度が短時間で上昇する)。
【0046】
また、前述したように、本例の温度調整装置1(冷凍サイクル3)では、温度センサ7からのセンサ信号S7に基づいて特定される冷却水Wの温度に応じて制御部9が膨張弁13の開度を調整する構成が採用されている。この場合、周囲温度が極低温の環境下では、温度センサ7からのセンサ信号S7に基づいて特定される冷却水Wの温度も低い状態となっており、制御部9によって膨張弁13が低開度の状態(凝縮器12および膨張弁13を通過して蒸発器14内に吐出される冷媒の量が少なくなる状態)に制御されている。このため、圧縮機11から吐出された冷媒の大半が凝縮器12を通過することなくバイパス配管16を介して蒸発器14に流入する結果、比較的短い時間で必要十分な量の冷媒が気化した状態となる。
【0047】
この場合、周囲温度が極低温の環境下では、温度調整装置1の動作停止状態において冷凍サイクル3内の冷媒の温度が低い状態となっており、これに起因して、冷凍サイクル3内の冷媒圧力が低い状態となっている。したがって、極低温の環境下においては、温度調整装置1(圧縮機11)の動作開始時点において圧縮機11による冷媒の圧縮効率が低い状態となっているため、動作開始直後においては、圧縮機11から吐出される冷媒の温度が低い状態となっている。
【0048】
このため、本例の動作開始時制御処理20とは異なり、圧縮機11による冷媒の圧縮を開始した直後から制御弁17を開口制御して圧縮機11から吐出された冷媒を蒸発器14に流入させたときには、圧縮機11から吐出される十分に温度上昇していない冷媒が冷凍サイクル3内を循環させられる状態が長時間に亘って継続される結果、冷凍サイクル3内の冷媒温度を短時間で上昇させる(液化した状態の冷媒を短時間で十分に気化させる)のが困難となる。
【0049】
これに対して、本例の温度調整装置1では、温度調整装置1(圧縮機11)の動作を開始してから上記の「待機時間」が経過するまで制御弁17を閉塞状態に制御し、この「待機時間」中の圧縮処理の実行によって冷凍サイクル3内の冷媒の温度がある程度上昇して圧縮機11による冷媒の圧縮効率がある程度上昇してから制御弁17を開口制御することにより、「待機時間」を設けることなく制御弁17を開口制御したときと比較して、冷凍サイクル3内の冷媒温度を短時間で上昇させる(液化した状態の冷媒を短時間で十分に気化させる)構成が採用されている。
【0050】
一方、前述したように、この動作開始時制御処理20では、制御部9が、上記のステップ22a〜27aの一連の処理と並行してステップ22b〜26bの各処理を実行する。具体的には、制御部9は、まず、インバータユニット15aに制御信号S15を出力してファン15の通常回転数での動作を開始させる(ステップ22b)。この際に、インバータユニット15aは、制御部9からの制御信号S15に従い、一例として47Hz程度の電力をファン15に供給する。これに伴い、ファン15が通常時の回転数(「第1の回転数」の一例:一例として800rpm程度)で動作して筐体内の空気を筐体外に排気する、これにより、新たに筐体内に導入される空気が凝縮器12を通過させられて凝縮器12が冷却される。
【0051】
次いで、制御部9は、温度センサ18からのセンサ信号S18に基づき、圧縮機11に吸入される冷媒の温度(冷媒の吸入温度)を特定すると共に、特定した温度が予め規定された温度(「第2規定温度」:一例として、0℃)を下回っているか否かを判別する(ステップ23b)。この際に、温度調整装置1の周囲温度が高い夏期などにおいては、前述したように、温度センサ18からのセンサ信号S18に基づいて特定される冷媒の吸入温度が高い温度となり、規定温度(この例では、0℃)以上となるため、制御部9は、この動作開始時制御処理20を終了して、後述する通常運転時制御処理30に移行する。
【0052】
これに対して、温度調整装置1の周囲温度が低い冬期などにおいては、前述したように、温度センサ18からのセンサ信号S18に基づいて特定される冷媒の吸入温度が低い温度となり、規定温度(この例では、0℃)を下回った状態となる。この際に、制御部9は、まず、圧力センサ19aからのセンサ信号S19aに基づいて圧縮機11に吸入される冷媒の圧力(吸入圧力)を特定すると共に、圧力センサ19bからのセンサ信号S19bに基づいて圧縮機11から吐出される冷媒の圧力(吐出圧力)を特定する(ステップ24b)。次いで、制御部9は、ステップ24bにおいて特定した冷媒の吐出圧力と吸入圧力との差(具体的には、吐出圧力から吸入圧力を差し引いた圧力)が予め規定された圧力(一例として、0.2MPa)を下回っているか否か(「
低温時処理開始条件Aが満たされているか否か」の判別の一例:ステップ25b)。
【0053】
この際に、周囲温度が低いことに起因して温度センサ18からのセンサ信号S18に基づいて特定した冷媒の吸入温度が規定温度以下(この例では、0℃以下)の状態であっても、温度調整装置1の周囲温度が例えば−5℃以上のとき(−5℃を下回る極低温の環境下ではないとき)には、冷凍サイクル3内の液化した状態の冷媒量が過剰に多い状態ではないことに起因して、圧縮機11による圧縮効率が大きく低下することがないため、圧縮機11から吐出される冷媒の吐出圧力が十分に高くなる。このため、冷媒の吐出圧力と吸入圧力との差(吐出圧力から吸入圧力を差し引いた値)が規定圧力以上の十分に高い圧力となるため、制御部9は、この動作開始時制御処理20を終了して、後述する通常運転時制御処理30に移行する。
【0054】
これに対して、温度調整装置1の周囲温度が例えば−5℃を下回る極低温の環境下では、圧縮機11による圧縮効率が大きく低下した状態となっているため、圧縮機11から吐出される冷媒の吐出圧力が十分に高くなるのにある程度の時間を要する。この結果、冷媒の吐出圧力と吸入圧力との差(吐出圧力から吸入圧力を差し引いた値)が規定圧力を下回った状態となる。したがって、制御部9は、吐出圧力と吸入圧力との差が規定圧力を下回っているときに(「
低温時処理開始条件Aが満たされているとき」の一例である「吸入圧力と吐出圧力との差が予め規定された圧力を下回っているとき」との状態の一例:ステップ25b)、インバータユニット15aに制御信号S15を出力してファン15の回転数を低下させた後に(「
低温時処理A」:ステップ26b)、この動作開始時制御処理20を終了して通常運転時制御処理30に移行する。
【0055】
この際に、インバータユニット15aは、制御部9からの制御信号S15に従い、一例として1Hz程度の電力をファン15に供給する。これに伴い、ファン15が通常時の回転数(「第1の回転数」:この例では、800rpm程度)よりも低い低速運転時の回転数(「第2の回転数」の一例:一例として、20rpm程度)で動作して筐体内の空気を筐体外に排気する。これにより、筐体外に排気される空気の量が、通常回転数でファン15を動作させていたときよりも減少し、新たに筐体内に導入される空気の量、すなわち、凝縮器12を通過させられる空気の量が減少する結果、凝縮器12による冷媒の凝縮量が減少する。
【0056】
一方、動作開始時制御処理20における上記のステップ22a以降の各処理、および22b以降の各処理を完了して(動作開始時制御処理20を終了して)通常運転時制御処理30に移行した状態では、ポンプ4によって圧送されている冷却水Wと蒸発器14内の冷媒とが熱交換器5において熱交換させられて冷却水Wが設定温度まで冷却された後に配管P1を介して供給対象Xに圧送される。この結果、熱交換器5において冷却された低温の冷却水Wによって供給対象Xが冷却される。また、供給対象Xを冷却することで温度上昇させられた冷却水Wは配管P2を介して貯液槽2に回収されて貯留される。さらに、制御部9は、予め設定された温度で、かつ予め設定された流量の冷却水Wが供給対象Xに供給されるように、一例として、圧力センサ6からのセンサ信号S6、および温度センサ7からのセンサ信号S7に基づくフィードバック制御を実行する。
【0057】
具体的には、冷却水Wの温度に関しては、まず、温度センサ7からのセンサ信号S7に基づき、温度調整装置1から供給対象Xに供給している冷却水Wの温度(配管P1内の冷却水Wの温度)を特定する。次いで、制御部9は、圧縮機11による冷媒の圧縮量、膨張弁13から蒸発器14内への冷媒の吐出量、および凝縮器12における冷媒の凝縮量(ファン15による送風量)を予め規定された手順に従って変化させることにより、熱交換器5における冷却水Wの冷却熱量を調整し、冷却水Wの温度を設定温度に調整する。これにより、温度センサ7からのセンサ信号S7に基づいて特定される冷却水Wの温度が設定温度となる。
【0058】
この場合、極低温の環境下であっても、供給対象Xから回収した冷却水Wは、供給対象Xを冷却することで温度上昇させられるため、通常運転時制御処理30に移行して供給対象Xに対する冷却水Wの供給を開始してからある程度の時間が経過したとき(供給対象Xから回収した高温の冷却水Wが貯液槽2内に貯液されたとき)には、温度センサ7からのセンサ信号S7に基づいて特定される冷却水Wの温度が設定温度よりも高い温度となる。したがって、制御部9は、まず、制御弁17に対して制御信号S17を出力して開度を低下させる(または、閉塞状態にする)ことにより、圧縮機11からバイパス配管16を介して蒸発器14に流入させる冷媒の量を減少させる(または、流入を停止させる)。これにより、熱交換器5において冷却水Wを十分に冷却することが可能な状態となり、設定温度まで冷却した冷却水Wを供給対象Xに供給することが可能となる。
【0059】
一方、冷却水Wの流量に関しては、まず、圧力センサ6からのセンサ信号S6に基づき、配管P1内を供給対象Xに向かって圧送されている冷却水Wの圧力(冷却水供給圧力)を特定する(「圧力特定処理」の実行)。次いで、制御部9は、特定した圧力をタッチパネル8に数値で表示する(「圧力報知処理」の実行)。これにより、利用者に対して温度調整装置1から供給対象Xに供給されている冷却水Wの圧力を容易に把握させることができる。続いて、制御部9は、上記の「圧力特定処理」によって特定した圧力に応じて、利用者によって設定された流量(温度調整装置1から供給対象Xに単位時間あたりに供給すべき冷却水Wの量)を維持するためにポンプ4の回転数を微調整する。これにより、設定された流量で温度調整装置1から供給対象Xに冷却水Wが継続的に供給される。
【0060】
このように、この温度調整装置1によれば、制御部9が、圧縮機11の動作を開始させてから予め規定された待機時間が経過したときに(ステップ24a)予め規定された「
低温時処理開始条件B」が満たされているか否かを判別し(ステップ26a)、満たされているときに、制御弁17を開口制御して圧縮機11から吐出された冷媒を、バイパス配管16を介して蒸発器14に流入させる「
低温時処理B」を実行する(ステップ27a)ことにより、極低温の環境下において、「待機時間」中の動作によって圧縮機11から吐出される冷媒の温度がある程度上昇した時点において制御弁17が開口制御されるため、十分に温度上昇していない冷媒がバイパス配管16を介して蒸発器14に流入させられて冷凍サイクル3内の冷媒温度が殆ど上昇しない事態を生じさせることなく、制御弁17が開口制御された後に、バイパス配管16を介して蒸発器14に流入させる冷媒の分だけ凝縮器12および膨張弁13を通過して蒸発器14内に吐出される冷媒の量を好適に減少させることができる結果、冷凍サイクル3内の冷媒の温度を短時間で上昇させて多くの冷媒を効率よく気化させることができる。これにより、液化した状態の冷媒が圧縮機11に吸引される事態を好適に回避することができるため、圧縮機11において潤滑不良が生じる事態を好適に回避することができる。
【0061】
また、この温度調整装置1によれば、制御部9が、圧縮機11に吸入される冷媒の温度が予め規定された温度を下回っているときに「
低温時処理開始条件B」が満たされていると判別する(ステップ26a)ことにより、冷媒圧縮による温度上昇の影響が最も小さい吸入温度に基づいて、制御弁17を開口制御すべきか否かを判別することができるため、比較的簡易な構成であるにも拘わらず、「
低温時処理B」を実行すべきか否かを的確に判別することができる結果、周囲温度がある程度高いときには制御弁17を閉塞状態に維持し、周囲温度が極低温のときには制御弁17を開口状態に制御する処理を確実に実行することができる。
【0062】
さらに、この温度調整装置1によれば、制御部9が、温度調整装置1の運転開始時に、圧縮機11を予め規定された「第1の圧縮能力」で動作させると共に(ステップ22a)、待機時間が経過したときに、圧縮機11を「第1の圧縮能力」よりも高い「第2の圧縮能力」で動作させる(ステップ25a)ことにより、動作開始直後から圧縮機11を高速回転させることで液化した状態の冷媒が圧縮機11に吸入されるのを回避することができると共に、長時間に亘って停止状態が継続した後の始動時であっても、圧縮機11において油膜切れが生じるのを回避することができる。
【0063】
また、この温度調整装置1によれば、制御部9が、温度調整装置1の運転開始時に、ファン15を予め規定された「第1の回転数」で動作させると共に(ステップ22b)、予め規定された「
低温時処理開始条件A」が満たされているか否かを判別し(ステップ23b〜25b)、満たされているときに、ファン15の回転数を「第1の回転数」よりも低い「第2の回転数」に低下させる「
低温時処理A」を実行する(ステップ26b)ことにより、周囲温度が極低温の環境下において凝縮器12における冷媒の凝縮量を十分に減少させることができるため、冷凍サイクル3内の冷媒の温度を一層短時間で上昇させて多くの冷媒を一層効率よく気化させることができる結果、液化した状態の冷媒が圧縮機11に吸引される事態を一層好適に回避することができ、これにより、圧縮機11において潤滑不良が生じる事態を一層好適に回避することができる。
【0064】
さらに、この温度調整装置1によれば、制御部9が、冷媒の吸入圧力と吐出圧力との差が予め規定された圧力を下回っているときに「
低温時処理開始条件A」が満たされていると判別する(ステップ25b)ことにより、比較的簡易な構成でありながら、凝縮器12における冷媒の凝縮量を低下させるべき状態であるか否かを的確に判別することができる。
【0065】
なお、「温度調整装置」の構成は、上記の温度調整装置1の構成に限定されるものではない。例えば、温度センサ18からのセンサ信号S18に基づいて特定した冷媒の温度(圧縮機11に吸入される冷媒の温度:吸入温度)が予め規定された温度を下回っているときに「
低温時処理開始条件B」が満たされていると判別して「
低温時処理B」を実行する構成の温度調整装置1を例に挙げて説明したが、「
低温時処理開始条件B」は上記の例に限定されず、圧縮機11から吐出された冷媒の温度(吐出温度)や、凝縮器12によって凝縮された冷媒の温度(凝縮温度)などの各種の冷媒温度が予め規定された温度を下回っているときに「
低温時処理開始条件B」が満たされていると判別する構成を採用することができる。
【0066】
また、冷媒の吸入圧力、吐出圧力、および吸入圧力と吐出圧力との差などの各種の冷媒圧力が予め規定された圧力を下回っているときに「
低温時処理開始条件B」が満たされていると判別する構成を採用することもできる。さらに、冷媒温度や冷媒圧力に限らず、冷却水Wの温度、温度調整装置1の周囲の空気の温度、および筐体内の空気の温度などが予め規定された温度を下回っているときに「
低温時処理開始条件B」が満たされていると判別する構成を採用することもできる。
【0067】
また、圧力センサ19aからのセンサ信号S19aに基づいて特定した吸入圧力と圧力センサ19bからのセンサ信号S19bに基づいて特定した吐出圧力との差が予め規定された圧力を下回っているときに「
低温時処理開始条件A」が満たされていると判別して「
低温時処理A」を実行する構成の温度調整装置1を例に挙げて説明したが、「
低温時処理開始条件A」は上記の例に限定されず、圧力センサ19aからのセンサ信号S19aに基づいて特定した吸入圧力が予め規定された圧力を下回っているときに「
低温時処理開始条件A」が満たされていると判別する構成や、圧力センサ19bからのセンサ信号S19bに基づいて特定した吐出圧力が予め規定された圧力を下回っているときに「
低温時処理開始条件A」が満たされていると判別する構成を採用することもできる。
【0068】
また、吸入温度、吐出温度および凝縮温度などの各種の冷媒温度や、冷却水Wの温度、温度調整装置1の周囲の空気の温度、並びに筐体内の空気の温度などが予め規定された温度を下回っているときに「
低温時処理開始条件A」が満たされていると判別する構成を採用することもできる。
【0069】
さらに、「
低温時処理A」および「
低温時処理B」の双方を並行して実行する構成の温度調整装置1を例に挙げて説明したが、「
低温時処理B」だけを実行する構成を採用することもできる。また、供給対象Xから配管P2を介して冷却水Wを回収する循環型の温度調整装置1を例に挙げて説明したが、「温度調整装置」の構成はこれに限定されず、「供給対象」に対して「熱媒液」を供給するだけの「温度調整装置」(「熱媒液」を回収しない構成)において、「
低温時処理B」などを実行する構成を採用することもできる。なお、「熱媒液」を回収しない構成を採用する場合には、「貯液槽」(「供給対象」に圧送する「熱媒液」を貯液するための構成要素)を不要とすることもできる。