(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6273609
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】低融点合金の回収装置
(51)【国際特許分類】
C22B 9/02 20060101AFI20180129BHJP
【FI】
C22B9/02
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-31929(P2014-31929)
(22)【出願日】2014年2月21日
(65)【公開番号】特開2015-157368(P2015-157368A)
(43)【公開日】2015年9月3日
【審査請求日】2016年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】391061646
【氏名又は名称】株式会社流機エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100082647
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 義久
(72)【発明者】
【氏名】西村 章
(72)【発明者】
【氏名】田島 永善
【審査官】
祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−106231(JP,A)
【文献】
特開昭52−014501(JP,A)
【文献】
実開昭54−007209(JP,U)
【文献】
特開昭50−142404(JP,A)
【文献】
特開2012−224917(JP,A)
【文献】
特開昭50−032002(JP,A)
【文献】
米国特許第04029302(US,A)
【文献】
特開2006−206951(JP,A)
【文献】
特開平09−253532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスマス、スズ、鉛、インジウム、カドミウム、アンチモンからなる群から選ばれた少なくとも1つを含み、16℃〜183℃の温度範囲で溶融する低融点合金と、金属体との混合物から、前記低融点合金を分離し、前記低融点合金を回収する装置であって、
ケージと、
前記ケージ内に装入され、周壁面に篩が形成された、前記金属体と前記低融点合金との前記混合物が投入されるバスケットと、
前記バスケットを軸芯回りに回転させる回転手段と、
前記ケージ内に熱風を流通させ、前記低融点合金の溶融温度以上に高めて溶融を図る加熱手段と、を備え、
前記バスケットが傾斜して設けられ、
前記溶融した低融点合金が、前記バスケットの篩を通って、前記ケージの下部から回収される構成としたことを特徴とする低融点合金の回収装置。
【請求項2】
前記ケージの外部に設けたブロワーと、
前記ブロワーと前記ケージとを連絡し、前記ブロワーから前記ケージへガスが通る吐出側通風ダクトと、
前記ブロワーと前記ケージとを連絡し、前記ケージから前記ブロワーへガスが通る吸い込み側通風ダクトと、を備え、
前記吐出側通風ダクトおよび前記吸い込み側通風ダクトにより、通風の循環路が構成され、
前記循環路に、前記加熱手段としてのヒータが設けられ、
前記ケージに、前記循環路を流通するガスを外部へ逃す排気フィルタが設けられている請求項1記載の低融点合金の回収装置。
【請求項3】
前記ガスは不活性ガスであり、
前記循環路に前記不活性ガスを導入するガス導入手段を設け、
前記ガス導入手段から導入された不活性ガスによって、前記循環路および前記ケージ内の空気を押し出す構成とされた請求項2記載の低融点合金の回収装置。
【請求項4】
前記混合物は、
前記低融点合金で鋳込み一体化した成形物の切削屑である請求項1記載の低融点合金の回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低融点合金の回収装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
低融点合金は、特許文献1のように、樹脂成形において中子として用いることが知られている。この場合、低融点合金中子は、高周波加熱又は熱媒体による加熱により溶出させた後、高圧・高温液体を成形品内に噴射させ、低融点合金を除去して回収するようにしている。
他方、低融点合金は、タービンブレード、ジェットエンジン部品などの複雑な形状部品のチャッキング材として利用されることもある。さらに、複雑な形状部品の固定に際しては、低融点合金で鋳込み一体化することにより、締付応力変形や、熱変形を防止するようにしている。
しかるに成形後は、切削加工により複雑な形状部品を取り出すことが行われるところ、その切削屑には、低融点合金と金属部品とが混合した状態で廃棄されていた。
【0003】
しかし、低融点合金は高価であり、回収して再利用することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−167707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の課題は、上記の切削屑などに例示される、金属微小体と低融点合金との混合物(混合液)から、低融点合金を回収して利用することにより、製造コストの低減を図ることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
[請求項1]
ビスマス、スズ、鉛、インジウム、カドミウム、アンチモンからなる群から選ばれた
少なくとも1つを含み、16℃〜183℃の温度範囲で溶融する低融点合金と、
金属体との混合物から、前記低融点合金を分離し、
前記低融点合金を回収する装置であって、
ケージと、
前記ケージ内に装入され、周壁面に篩が形成された、前記
金属体と前記低融点合金との
前記混合物
が投入されるバスケットと、
前記バスケットを軸芯回りに回転させる回転手段と、
前記ケージ内に熱風を流通させ、前記低融点合金の溶融温度以上に高めて溶融を図る加熱手段と
、を備え
、
前記バスケットが傾斜して設けられ、
前記溶融した低融点合金が、前記バスケットの篩を通って、前記ケージの下部から回収される構成としたことを特徴とする低融点合金の回収装置。
【0007】
<請求項2記載の発明>
前記ケージ
の外部に設けたブロワーと
、
前記ブロワーと前記ケージとを連絡し、前記ブロワーから前記ケージへ
ガスが通る吐出側通風ダクト
と、
前記ブロワーと前記ケージとを連絡し、前記ケージから前記ブロワーへ
ガスが通る吸い込み側通風ダクト
と、を備え、
前記吐出側通風ダクトおよび前記吸い込み側通風ダクトにより、通風の循環路
が構成
され、
前記循環路に
、前記加熱手段としてのヒータが設けられ、
前記ケージに、前記循環路を流通するガスを外部へ逃す排気フィルタが設けられている請求項1記載の低融点合金の回収装置。
<請求項3記載の発明>
前記ガスは不活性ガスであり、
前記循環路に前記不活性ガスを導入するガス導入手段を設け、
前記ガス導入手段から導入された不活性ガスによって、前記循環路および前記ケージ内の空気を押し出す構成とされた請求項2記載の低融点合金の回収装置。
<請求項4記載の発明>
前記混合物は、
前記低融点合金で鋳込み一体化した成形物の切削屑である請求項1記載の低融点合金の回収装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、金属微小体と低融点合金との混合物(混合液)から、低融点合金を回収して利用することにより、製造コストの低減を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳説する。
【0011】
〔低融点合金について〕
本発明は、ビスマス、スズ、鉛、インジウム、カドミウム、アンチモンからなる群から選ばれた、16℃〜183℃の温度範囲で溶融する低融点合金の回収を目的とするものである。特には、ビスマス及びスズが主体で、必要によりインジウムを添加する低融点合金である。
この種の低融点合金は、大阪アサヒメタル工場製の「Uアロイ」シリーズが代表的なものである。融点は16℃〜183℃の範囲内で多種類販売されている。
本発明に係る金属微小体との分離を行う場合、融点が90℃〜150℃の範囲内の低融点合金が特に対象とすることができる。
【0012】
〔回収形態の概要〕
本発明の回収装置は、ケージ10と、このケージ10内に装入され、周壁面11aに篩が形成された、前記金属微小体と前記低融点合金との混合物を投入されるバスケット11と、前記バスケット11を軸芯回りに回転させる回転手段12と、前記ケージ10内に熱風を流通させ、前記低融点合金の溶融温度以上に高めて溶融を図る加熱手段とを備えている。
【0013】
さらに、ケージ10外部にはブロワー20が設けられ、ケージ10との連絡が図られている。ブロワー20からケージ10への吐出側通風ダクト21、ケージ10からブロワー20への吸い込み側通風ダクト22が設けられ、通風の循環路が構成され、その循環経路内にヒータ(図示せず)が設けられ、前記低融点合金をその溶融温度以上に高めて溶融を図る熱風の加熱手段とされている。
【0014】
かかる装置においては、ケージ10の蓋10aを開いて、バスケット11内に金属微小体と低融点合金との混合物を投入した後、蓋10aを閉める。
次いで、ブロワー20の循環路の適宜の位置から窒素ガスを導入し、循環路及びケージ10内の空気を追い出す。
【0015】
続いて、回転手段12の回転駆動モータ12aを起動し、チェーン12bを介してバスケット11の回転軸12cを回転させ、バスケット11を回転させる。
この回転の初期では遅い回転とし、ヒータ(図示せず)をオンし、ケージ10内の温度を高める。たとえば、大阪アサヒメタル工場製
の低融点合金(「Uアロイ−138」)を回収する場合、180℃以上の昇温するのが好ましい。
この昇温の後期又は終了後に、バスケット11の高速回転と低速回転とを繰り返し、低融点合金の遠心分離と撹拌を行う。
【0016】
バスケット11を通る遠心分離された低融点合金は、たとえばケージ10の最下部から回収容器30内に回収する。
【0017】
ここで、流通させるガスは膨張するので、たとえばケージ10の蓋10aに排気フィルタを設け(図示せず)、ガスを逃がすようにするのが望ましい。
【0018】
上記例において、空気をパージして窒素などの不活性ガスを循環させるのは、低融点合金の酸化を防止するためである。また、切削屑中に残存する切削油が昇温によってヒュームとなり、気散する分を排除するためでもある。
他方、低融点合金の酸化を防止すると、金属微小体との分離性が高まることの知見に基づいている。
【0019】
(実施例)
大阪アサヒメタル工場製
の低融点合金(「Uアロイ−138」)で鋳込み一体化して成形した後の切削屑を、本発明装置により回収処理した。その結果、問題なく、高収率をもって回収できることが判明した。