特許第6273681号(P6273681)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6273681-道路橋用遮音部材 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6273681
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】道路橋用遮音部材
(51)【国際特許分類】
   E01C 11/02 20060101AFI20180129BHJP
   E01D 19/06 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
   E01C11/02 Z
   E01D19/06
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-47771(P2013-47771)
(22)【出願日】2013年3月11日
(65)【公開番号】特開2014-173350(P2014-173350A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2016年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】三瓶 一俊
【審査官】 西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−047004(JP,A)
【文献】 特開2009−155920(JP,A)
【文献】 特開2007−032165(JP,A)
【文献】 特開2004−029683(JP,A)
【文献】 特開2009−293248(JP,A)
【文献】 特開2005−290850(JP,A)
【文献】 特開2008−196242(JP,A)
【文献】 特公昭45−020344(JP,B1)
【文献】 米国特許第05756942(US,A)
【文献】 特開2002−155506(JP,A)
【文献】 実開昭50−092536(JP,U)
【文献】 特開2000−130043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 11/02
E01C 11/24
E01C 11/26
E01C 13/00
E01D 1/00
E01D 19/00
E01D 19/02
E01D 19/06
E06B 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路橋を構成する要素の互いに対向する2つの端面間の遊間に配置される道路橋用遮音部材であって、
前記道路橋用遮音部材は、前記2つの端面のうちの前記一方の端面の幅方向の全長にわたる幅を有する第1の吸音材と、前記2つの端面のうちの前記他方の端面の幅方向の全長にわたる幅を有する第2の吸音材とを含んで構成され、
前記第1の吸音材は、上下方向に間隔をおいた前記一方の端面の箇所から前記他方の端面に向かってそれぞれ突出する複数の第1の板部を含んで構成され、
前記第2の吸音材は、上下方向に間隔をおいた前記他方の端面の箇所から前記複数の第1の板部と上下方向に交互に重ね合わされ前記一方の端面に向かってそれぞれ突出する複数の第2の板部を含んで構成され、
前記複数の第1の板部と前記複数の第2の板部は、上下方向において常時重ね合わされ、かつ、前記2つの端面の接近、離間に際し、前記接近、離間する方向において互いに相対変位する重合部を含んで構成され、
前記複数の第1の板部の先端と前記他方の端面との間に、前記2つの端面の接近、離間に際して前記第1の板部の先端の前記他方の端面への圧接を回避する第1の隙間が確保され、
前記複数の第2の板部の先端と前記一方の端面との間に、前記2つの端面の接近、離間に際して前記第2の板部の先端の前記一方の端面への圧接を回避する第2の隙間が確保されている、
ことを特徴とする道路橋用遮音部材。
【請求項2】
前記第1の吸音材および前記第2の吸音材の上方において前記2つの端面の間にわたって設けられたシート状の第1の遮音材と、
前記第1の吸音材および前記第2の吸音材の下方において前記2つの端面の間にわたって設けられたシート状の第2の遮音材とをさらに備える、
ことを特徴とする請求項1記載の道路橋用遮音部材。
【請求項3】
前記第1の吸音材は、前記複数の第2の板部の先端が対向する前記一方の端面の箇所に前記第2の隙間を確保して取着される複数の第1のスペーサを含んで構成され、
前記第2の吸音材は、前記複数の第1の板部の先端が対向する前記他方の端面の箇所に前記第1の隙間を確保して取着される複数の第2のスペーサを含んで構成されている、
ことを特徴とする請求項1または2記載の道路橋用遮音部材。
【請求項4】
前記第1の遮音材は、最も上方に位置する前記第1の板部とこの板部に対向する前記第2のスペーサとの間または最も上方に位置する前記第2の板部とこの板部に対向する前記第1のスペーサとの間にわたって設けられ、
前記第2の遮音材は、最も下方に位置する前記第2の板部とこの板部に対向する前記第1のスペーサとの間または最も下方に位置する前記第1の板部とこの板部に対向する前記第2のスペーサとの間にわたって設けられている、
ことを特徴とする請求項記載の道路橋用遮音部材。
【請求項5】
前記第1のスペーサは、対向する前記第2の板部と同一の厚さを有し、
前記第2のスペーサは、対向する前記第1の板部と同一の厚さを有している、
ことを特徴とする請求項3または4記載の道路橋用遮音部材。
【請求項6】
前記第1の板部と前記第2の板部とは、それらの厚さ方向の両端がそれぞれ平坦面で形成され、
前記重合部を構成し互いに重なり合う前記第1の板部の前記平坦面または前記第2の板部の前記平坦面の一方または双方に、重なり合う相手方の板部の平坦面に当接して前記第1の板部の平坦面と前記第2の板部の平坦面との間に間隙を確保する突起部が形成されている、
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項記載の道路橋用遮音部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は道路橋用遮音部材に関する。
【背景技術】
【0002】
高架の道路や橋梁(以下道路橋という)においては、温度変化などによる床版の伸縮を吸収するために、床版間の遊間や、床版と橋台との間の遊間を道路橋用伸縮装置を介して接続する。
そのため、道路橋上を走行する車両が、道路橋用伸縮装置を通過する際に発する騒音が、上記の遊間を下方へ伝播して拡散し、周辺住民に騒音被害を与えるという問題があった。
そこで、道路橋用伸縮装置の下方において、2つの主桁の互いに対向する端面間の遊間、あるいは、互いに対向する主桁の端面と橋台の端面との間の遊間に板状の発泡体を上下方向に積層してなる道路橋用遮音部材を設けることで騒音を遮蔽することが行われている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−293248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、道路橋の遊間は、環境温度の変化により伸縮するものであり、例えば、冬季には床版が収縮するため、遊間の寸法は大きくなり、夏季には床版が膨張するため、遊間の寸法は小さくなる。
したがって、端面間に設けられた道路橋用遮音部材は、夏季には長期間にわたって圧縮された状態となり、冬季には圧縮が開放されて圧縮される前の大きさに復元する。
しかしながら、道路橋用遮音部材を構成する発泡体は、伸縮性を有するものの、長期間圧縮された状態が続くと、圧縮される前の大きさに復元しにくくなる。
発泡体の大きさが復元しないと、道路橋用遮音部材と端面との間に隙間が生じることになり、遮音性能が低下することが懸念される。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、遊間の寸法変化に拘わらず遮音効果を確保する上で有利な道路橋用遮音部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、道路橋を構成する要素の互いに対向する2つの端面間の遊間に配置される道路橋用遮音部材であって、前記道路橋用遮音部材は、前記2つの端面のうちの前記一方の端面の幅方向の全長にわたる幅を有する第1の吸音材と、前記2つの端面のうちの前記他方の端面の幅方向の全長にわたる幅を有する第2の吸音材とを含んで構成され、前記第1の吸音材は、上下方向に間隔をおいた前記一方の端面の箇所から前記他方の端面に向かってそれぞれ突出する複数の第1の板部を含んで構成され、前記第2の吸音材は、上下方向に間隔をおいた前記他方の端面の箇所から前記複数の第1の板部と上下方向に交互に重ね合わされ前記一方の端面に向かってそれぞれ突出する複数の第2の板部を含んで構成され、前記複数の第1の板部と前記複数の第2の板部は、上下方向において常時重ね合わされ、かつ、前記2つの端面の接近、離間に際し、前記接近、離間する方向において互いに相対変位する重合部を含んで構成され、前記複数の第1の板部の先端と前記他方の端面との間に、前記2つの端面の接近、離間に際して前記第1の板部の先端の前記他方の端面への圧接を回避する第1の隙間が確保され、前記複数の第2の板部の先端と前記一方の端面との間に、前記2つの端面の接近、離間に際して前記第2の板部の先端の前記一方の端面への圧接を回避する第2の隙間が確保されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、2つの端面が離間して遊間の寸法が大きくなった場合においても、また、2つの端面が接近して遊間の寸法が小さくなった場合においても、第1の吸音材および第2の吸音材が互いに摺動しつつ相対変位し、第1の吸音材および第2の吸音材が2つの端面で圧縮されることがない。
したがって、従来のように長期間にわたって第1、第2の吸音材が圧縮された状態が続くことによりこれら吸音材が圧縮前の大きさに復元しにくくなり、吸音材と各端面との間に隙間が生じて遮音性能が低下するといったことがなく、遊間の寸法変化に拘わらず道路橋用遮音部材の遮音効果を長期にわたって確保する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施の形態における道路橋用遮音部材10Aの設置例を示す断面図であり、(A)は遊間5が広くなった状態を示し、(B)は遊間5が狭くなった状態を示す。
図2】第2の実施の形態における道路橋用遮音部材10Bの設置例を示す断面図であり、(A)は遊間5が広くなった状態を示し、(B)は遊間5が狭くなった状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
次に本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1(A)に示すように、道路橋2は、橋脚によって支持された多数の主桁4が橋軸方向に並べられて構成されており、それら主桁4の上に路面を構成する床版6が設けられている。
対向する床版6の2つの端面6Aの間の遊間5、あるいは、対向する床版6の端面6Aと橋台の端面(壁面)との間の遊間5に床版6の伸縮を吸収する従来公知の道路橋用伸縮装置8が設置されている。
道路橋用伸縮装置8は、ゴムや鉄板などの部材が組み合わされて構成されており、この部分を車両が通過することによって衝撃騒音が発生する。
【0009】
道路橋用遮音部材10Aは、道路橋用伸縮装置8の下方で道路橋2を構成する要素の互いに対向する2つの端面間の遊間5に配置され、車両の道路橋用伸縮装置8通過時の衝撃騒音を遮音するものである。
ここで、道路橋2を構成する要素の互いに対向する2つの端面間の遊間5とは、2つの主桁4の互いに対向する端面4A、4B間の遊間5、あるいは、互いに対向する主桁4の端面4Aと橋台の端面(側壁)との間の遊間5である。
本実施の形態では、道路橋用遮音部材10Aは、2つの主桁4の互いに対向する2つの端面4A、4B間の遊間5に配置されている場合について説明する。
【0010】
道路橋用遮音部材10Aは、第1の吸音材12と、第2の吸音材14と、第1の遮音材16と、第2の遮音材18とを含んで構成されている。
第1の吸音材12は、2つの端面4A、4Bのうちの一方の端面4Aに端部が取着され一方の端面4Aの幅方向の全長にわたる幅を有して2つの端面4A、4Bのうちの他方の端面4Bに向かって突出している。
第2の吸音材14は、他方の端面4Bに端部が取着され他方の端面4Bの幅方向の全長にわたる幅を有して一方の端面4Aに向かって突出している。
第1の吸音材12および第2の吸音材14を構成する材料として例えばウレタンフォーム、あるいは、発泡クロロプレンゴム(クロロプレンゴムスポンジ)が使用される。
ウレタンフォーム、あるいは、発泡クロロプレンゴムは、吸音性能に優れた材料である。このような材料として、内部に含まれた気泡同士がつながっている連続気泡体であるもの、あるいは、内部に含まれる気泡同士が繋がっていない独立気泡体であるものなど従来公知の材料が使用可能である。
【0011】
第1の吸音材12の先端と他方の端面4Bとの間に、2つの端面4A、4Bの接近、離間に際して第1の吸音材12の先端の他方の端面4Bへの圧接を回避する第1の隙間S1が確保されている。
第2の吸音材14の先端と一方の端面4Aとの間に、2つの端面4A、4Bの接近、離間に際して第2の吸音材14の先端の一方の端面4Aへの圧接を回避する第2の隙間S2が確保されている。
第1の吸音材12および第2の吸音材14は、上下方向において常時重ね合わされ、かつ、2つの端面4A、4Bの接近、離間に際し、接近、離間する方向において互いに相対変位する重合部20を含んで構成されている。
本実施の形態では、2つの端面4A、4Bの接近、離間に際し、第1の吸音材12の重合部20と第2の吸音材14の重合部20とは接触しつつ接近、離間する方向において互いに相対変位する。
【0012】
第1の遮音材16は、シート状を呈し、第1の吸音材12および第2の吸音材14の上方において2つの端面4A、4Bの間にわたって設けられている。
第2の遮音材18は、シート状を呈し、第1の吸音材12および第2の吸音材14の下方において2つの端面4A、4Bの間にわたって設けられている。
第1の遮音材16および第2の遮音材18は、弾性変形可能でかつ遮音性能に優れた材料で形成され、このような材料として、例えば、クロロプレンゴムによって形成されたゴムシートが使用可能である。
ゴムシートは、布入ゴムシートであっても布が入らないゴムシートであっても遮音性能は変わらないが、布入ゴムシートを用いると、耐久性および強度を確保する上で有利となる。
【0013】
本実施の形態では、第1の吸音材12は複数の第1の板部1202と、複数の第1のスペーサ1204とを含んで構成され、第2の吸音材14は複数の第2の板部1402と、複数の第2のスペーサ1404とを含んで構成されている。
複数の第1の板部1202は、均一の厚さ、同一幅、同一長さで矩形板状に形成されている。
各第1の板部1202の厚さ方向の両面は平坦面で形成されている。
複数の第1の板部1202は、上下方向に間隔をおいた一方の端面4Aの箇所から他方の端面4Bに向かってそれぞれ突出し、複数の第1の板部1202のほぼ先半部は上下方向において第2の板部1402に重ね合わされる重合部20となっている。
複数の第2の板部1402は、均一の厚さ、同一幅、同一長さで矩形板状に形成されている。本実施の形態では、第1の板部1202と第2の板部1402とは同一の厚さ、幅、長さで形成されている。
各第2の板部1402の厚さ方向の両面は平坦面で形成されている。
複数の第2の板部1402は、上下方向に間隔をおいた他方の端面4Bの箇所から一方の端面4Aに向かってそれぞれ突出し、複数の第2の板部1402のほぼ先半部は上下方向において第1の板部1202に重ね合わされる重合部20となっている。
複数の第1の板部1202の重合部20と複数の第2の板部1402の重合部20とは、上下方向に交互に重ね合わされて配置されている。
【0014】
複数の第1のスペーサ1204は、各第2の板部1402の先端が対向する一方の端面4Aの箇所に第2の隙間S2を確保してそれぞれ取着されている。
複数の第1のスペーサ1204は、吸音材料からなり、対向する第2の板部1402と同一の厚さで形成されている。
第1のスペーサ1204と上下に隣接する第1の板部1202とは接着剤により接着され、一方の端面4Aに位置するそれら複数の第1の板部1202の端部および複数の第1のスペーサ1204の端部は平坦面として形成されている。
【0015】
複数の第2のスペーサ1404は、各第1の板部1202の先端が対向する他方の端面4Bの箇所に第1の隙間S1を確保してそれぞれ取着されている。
複数の第2のスペーサ1404は、吸音材料からなり、対向する第1の板部1202と同一の厚さで形成されている。
第2のスペーサ1404と上下に隣接する第2の板部1402とは接着剤により接着され、他方の端面4Bに位置するそれら複数の第2の板部1402の端部および複数の第2のスペーサ1404の端部は平坦面として形成されている。
【0016】
第1のスペーサ1204は第1の板部1202と同一の材料で形成され、第2のスペーサ1404は第2の板部1402と同一の材料で形成されている。本実施の形態では、第1のスペーサ1204と第2のスペーサ1404とは同一の材料であるウレタンフォームで形成されている。
なお、本実施の形態では、第1の板部1202、第2の板部1402、第1のスペーサ1204、第2のスペーサ1404は、全て同一の厚さで形成されている。
【0017】
なお、第1、第2の吸音材12、14としてウレタンフォームを用いた場合には、第1の吸音材12および第2の吸音材14の厚さ、すなわち、第1の板部1202および第2の板部1402の全板部の合計厚さまたは第1のスペーサ1204および第2のスペーサ1404の全スペーサの合計厚さは190mm以上700mm以下であることが、道路橋用遮音部材10Aのコストを抑制しつつ遮音性能を確保する上で好ましい。
また、第1、第2の吸音材12、14としてウレタンフォームを用いた場合には、第1の吸音材12および第2の吸音材14の密度は20kg/m以上35kg/m以下であることが道路橋用遮音部材10Aの軽量化を確保しつつ遮音性能を確保する上で好ましい。
【0018】
第1の遮音材16は、最も上方に位置する第1の吸音材12とこの吸音材12に対向する第2のスペーサ1404との間または最も上方に位置する第2の吸音材14とこの吸音材14に対向する第1のスペーサ1204との間にわたって設けられている。
第2の遮音材18は、最も下方に位置する第2の吸音材14とこの吸音材に対向する第1のスペーサ1204との間または最も下方に位置する第1の吸音材12とこの吸音材に対向する第2のスペーサ1404との間にわたって設けられている。
【0019】
本実施の形態では、第1の遮音材16および第2の遮音材18は、同一幅で同一長さを有し均一厚さの矩形板状のシート状を呈している。
第1の遮音材16は、中間部1602と、中間部1602の両側に位置する端部1604とを有している。
中間部1602は、最も上方に位置する第1の板部1202の上面に接着剤で取着される接着部分Bと、第1の隙間S1の上方に位置する非接着部分UBと、第1の板部1202に対向する第2のスペーサ1404の上面に接着剤で取着される接着部分Bとを有している。
中間部1602の両側に位置する端部1604のうちの一方の端部1604は、複数の第1の板部1202と複数の第1のスペーサ1204とを加えた第1の吸音材12の平坦面の上半部に接着剤で接着されると共に、一方の端面4Aに接着剤で接着されている。
また、中間部1602の両側に位置する端部1604のうちの他方の端部1604は、複数の第2の板部1402と複数の第2のスペーサ1404とを加えた第2の吸音材14の平坦面の上半部に接着剤で接着されると共に、他方の端面4Bに接着剤で接着されている。
【0020】
第2の遮音材18は、中間部1802と、中間部1802の両側に位置する端部1804とを有している。
中間部1802は、最も下方に位置する第2の板部1402の下面に接着剤で取着される接着部分Bと、第2の隙間S2の下方に位置する非接着部分UBと、第2の板部1402に対向する第1のスペーサ1204の下面に接着剤で取着される接着部分Bとを有している。
中間部1802の両側に位置する端部1804のうちの一方の端部1804は、複数の第1の板部1202と複数の第1のスペーサ1204とを加えた第1の吸音材12の平坦面の下半部に接着剤で接着されると共に、一方の端面4Aに接着剤で接着されている。
また、中間部1802の両側に位置する端部1804のうちの他方の端部1804は、複数の第2の板部1402と複数の第2のスペーサ1404とを加えた第2の吸音材14の平坦面の下半部に接着剤で接着されると共に、他方の端面4Bに接着剤で接着されている。
【0021】
次に、道路橋用遮音部材10Aの取り付け方法について説明する。
本実施の形態では、遊間5に配置する前に予め第1の吸音材12、第2の吸音材14、第1の遮音材16、第2の遮音材18を組み付けて道路橋用遮音部材10Aを完成させ、この道路橋用遮音部材10Aを遊間5に配置している。
道路橋用遮音部材10Aの組み付けは、図1(A)または図1(B)に示すように、複数の第1の板部1202、第2の板部1402、第1のスペーサ1204、第2のスペーサ1404を重ね合わせ接着剤により取着する。
そして、それらの上半部に第1の遮音材16を接着剤により取着し、それらの下半部に第2の遮音材18を接着剤により取着する。
【0022】
このようにして道路橋用遮音部材10Aが完成されたならば、道路橋用遮音部材10Aの第1の遮音材16を上に第2の遮音材18を下に向け幅方向を橋軸方向に向けて2つの端面4A、4B間の遊間5に挿入する。
この際、予め道路橋用遮音部材10Aの幅が遊間5の寸法よりも小さい寸法となるように第1の吸音材12および第2の吸音材14の相対的な位置を調整しておく。
このように道路橋用遮音部材10Aの幅を遊間5の寸法よりも小さい寸法とすることにより、道路橋用遮音部材10Aを圧縮しつつ遊間5に挿入するといった作業が不要となるため、道路橋用遮音部材10Aの遊間5への挿入作業の容易化が図られている。
そして、第1の遮音材16および第2の遮音材18の各端部と、2つの端面4A、4Bとの間に接着剤を充填し、第1の遮音材16および第2の遮音材18の各端部1604、1804が2つの端面4A、4Bに当接するように第1の吸音材12および第2の吸音材14の相対的な位置を調整して道路橋用遮音部材10Aを2つの端面4A、4Bに取着する。
以上で道路橋用遮音部材10Aの遊間5に対する取り付けが完了する。
なお、道路橋用遮音部材10Aの下方に落下防止用の金具を設けるなど任意である。
【0023】
次に、作用効果について説明する。
本実施の形態によれば、第1の吸音材12および第2の吸音材14は、上下方向において常時重ね合わされ、かつ、2つの端面4A、4Bの接近、離間に際し、接近、離間する方向において互いに相対変位する重合部20を含んで構成されている。
そして、第1の吸音材12の先端と他方の端面4Bとの間に、2つの端面4A、4Bの接近、離間に際して第1の吸音材12の先端の他方の端面4Bへの圧接を回避する第1の隙間S1が確保され、第2の吸音材14の先端と一方の端面4Aとの間に、2つの端面4A、4Bの接近、離間に際して第2の吸音材14の先端の一方の端面4Aへの圧接を回避する第2の隙間S2が確保される。
そのため、図1(A)に示すように、冬季に床版6が収縮して2つの端面4A、4Bが離間して遊間5の寸法が大きくなった場合においても、また、図1(B)に示すように、夏季に床版6が伸長して2つの端面4A、4Bが接近して遊間5の寸法が小さくなった場合においても、第1の吸音材12および第2の吸音材14が互いに摺動しつつ相対変位し、第1の吸音材12および第2の吸音材14が2つの端面4A、4Bで圧縮されることがない。
その結果、従来のように第1、第2の吸音材12、14が圧縮された状態が長期間にわたって続くことによりこれら吸音材12、14が圧縮前の大きさに復元しにくくなり、吸音材12、14と端面4A、4Bとの間に隙間が生じて遮音性能が低下するといったことがない。
したがって、遊間5の寸法変化に拘わらず道路橋用遮音部材10Aの遮音効果を長期にわたって確保する上で有利となる。
【0024】
また、本実施の形態では、第1の吸音材12および第2の吸音材14の上方において2つの端面4A、4Bの間にわたって設けられたシート状の第1の遮音材16と、第1の吸音材12および第2の吸音材14の下方において2つの端面4A、4Bの間にわたって設けられたシート状の第2の遮音材18とを設けた。
したがって、第1の吸音材12および第2の吸音材14による遮音効果に加えて第1の遮音材16および第2の遮音材18による遮音効果が奏されるため、道路橋用遮音部材10Aの遮音効果を確保する上でより有利となる。
【0025】
また、本実施の形態では、第1の吸音材12は、重合部20が形成された複数の第1の板部1202を含んで構成され、第2の吸音材14は、重合部20が形成された複数の第2の板部1402を含んで構成され、第1の板部1202の重合部20と第2の板部1402の重合部20とは、上下方向に交互に重ね合わされて配置されている。
したがって、上下方向における吸音材12、14の厚さの総和を大きく確保し、遮音効果を確保する上でより有利となる。
【0026】
また、本実施の形態では、第1の吸音材12は、吸音材料からなり対向する第2の板部1402と同一の厚さの複数の第1のスペーサ1204を含んで構成され、第2の吸音材14は、吸音材料からなり対向する第1の板部1202と同一の厚さの複数の第2のスペーサ1404を含んで構成されている。
そのため、道路橋用遮音部材10Aの橋軸方向における両端部をそれぞれ平坦面にすることができ、道路橋用遮音部材10Aを遊間5に簡単に配置する上で有利となる。
また、本実施の形態では、第1の遮音材16は、最も上方に位置する第1の板部1202とこの板部に対向する第2のスペーサ1404との間にわたって設けられ、第2の遮音材18は、最も下方に位置する第2の板部1402とこの板部に対向する第1のスペーサ1204との間にわたって設けられている。
そのため、図1(B)に示すように、2つの端面4A、4Bが接近した場合、第1の遮音材16は第1の板部1202とこの板部1202に対向する第2のスペーサ1404との間で撓んで屈曲し、第2の遮音材18は第2の板部1402とこの板部1402に対向する第1のスペーサ1204との間で撓んで屈曲する。
また、図1(A)に示すように、2つの端面4A、4Bが離間した場合、第1の遮音材16は前記の撓みが解消され、第2の遮音材18は前記の撓みが解消される。
したがって、2つの端面4A、4Bの接近、離間に際して第1の遮音材16および第2の遮音材18は撓むことで、あるいは、撓みが解消されることで遊間5の寸法の変化を吸収でき、第1の遮音材16および第2の遮音材18に過大な力が作用しないため、道路橋用遮音部材10Aの耐久性を確保する上で有利となる。
【0027】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について説明する。
なお、以下の実施の形態では、第1の実施の形態と同様の部分、部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
上述のように第1の板部1202と第2の板部1402とは、それらの厚さ方向の両端がそれぞれ平坦面で形成され、図2(A)、(B)に示すように、第2の実施の形態の道路橋用遮音部材10Bは、重合部20を構成し互いに重なり合う第1の板部1202の平坦面と第2の板部1402の平坦面との間に間隙S3を確保するようにした点が第1の実施の形態と相違している。
すなわち、図2(A)、(B)に示すように、重合部20を構成する第1の板部1202の平坦面および第2の板部1402の平坦面の一方または双方に、重なり合う相手方の板部の平坦面に当接して第1の板部1202の平坦面と第2の板部1402の平坦面との間に間隙S3を確保する突起部22が形成されている。
また、第1のスペーサ1204の厚さおよび第2のスペーサ1404の厚さは、それぞれ間隙S3を加えたものとなっている。
【0028】
このような第2の実施の形態においても第1の実施の形態と同様の効果が奏される。
さらに、第2の実施の形態では、2つの端面4A、4Bの接近、離間に際し、重合部20を構成する第1の板部1202の平坦面と、重合部20を構成する第2の板部1402の平坦面との間に間隙S3が確保された状態で相対変位する。
そのため、第1の板部1202の重合部20と、第2の板部1402の重合部20との間に生じる摩擦抵抗を低減することができ、道路橋用遮音部材10Bの耐久性を確保する上でより有利となる。
【0029】
なお、実施の形態では、第1の吸音材12が複数の第1の板部1202を有し、第2の吸音材14が複数の第2の板部1402を有している場合について説明したが、第1の吸音材12が単一の第1の板部1202を有し、第2の吸音材14が単一の第2の板部1402を有するものであっても本発明は無論適用可能である。
【符号の説明】
【0030】
2……道路橋、4……主桁、4A、4B……端面、5……遊間、10A、10B……道路橋用遮音部材、12……第1の吸音材、1202……第1の板部、1204……第1のスペーサ、14……第2の吸音材、1402……第2の板部、1404……第2のスペーサ、16……第1の遮音材、18……第2の遮音材、20……重合部、22……突起部、S1……第1の隙間、S2……第2の隙間、S3……間隙。
図1
図2