(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の第一の目的は、顔料分散組成物において、顔料を均一に分散させるために有用な物質を提供することである。
また、本発明の第二の目的は、顔料分散組成物において、長期間にわたり顔料の分散安定性を高めるために有用な物質を提供することである。
さらに本発明の第三の目的は顔料と当該物質を含む、顔料が均一に分散された組成物を提供することである。
またさらに本発明の第四の目的は長期間にわたり顔料の分散安定性が高い顔料含有組成物を提供することである。
さらに本発明は当該物質の用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意研究の結果、特定のフィトステロールエステルにより前記の課題が解決されることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち本発明は以下の態様を含む。
[1]式(1)で表される、フィトステロールエステル:
【0008】
【化1】
【0009】
(R
1は炭素原子数7〜23の炭化水素基であり、R
2は炭素原子数1〜4の炭化水素基であり、破線は二重結合が形成されてもよいことを示す)。
[2]R
1が炭素原子数9〜13の鎖状炭化水素基であり、かつR
2が炭素原子数1〜4のアルキル基である、上記[1]に記載のフィトステロールエステル。
[3]
【0010】
【化2】
【0011】
から選択される上記[1]に記載のフィトステロールエステル。
[4]上記[1]〜[3]に記載のフィトステロールエステル、および顔料を含有することを特徴とする組成物。
[5]顔料が酸化チタンである上記[4]に記載の組成物。
[6]化粧料である上記[4]または[5]に記載の組成物。
[7]メイクアップまたはサンスクリーン用化粧料である、上記[4]〜[6]のいずれかに記載の組成物。
[8]顔料を分散させるための、式(1)で表される、フィトステロールエステル:
【0012】
【化3】
【0013】
(R
1は炭素原子数7〜23の炭化水素基であり、R
2は炭素原子数1〜4の炭化水素基であり、破線は二重結合が形成されてもよいことを示す)の使用。
【発明の効果】
【0014】
本発明のフィトステロールエステルは、顔料を分散させるために使用することができる。かくして、顔料を均一に分散させることができ、また分散安定性を付与することができる。さらにまた、当該フィトステロールエステルおよび顔料を含む組成物は、例えば、使用感(べたつき、きしみ、なじみ)において良好な化粧料として使用することができる。なお、本発明において「きしみ」とは、皮膚の上に手指をスライドさせて組成物を塗布していくときに、すべりにくく手指の動きが停止させられるような感触を言う。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[フィトステロールエステル]
本発明のフィトステロールエステルは、一般式(1)で表される。
【0017】
(式中、R
1およびR
2は前記と同意義)
【0018】
式中、R
1は炭素原子数7〜23の炭化水素基を示す。
R
1における「炭素原子数7〜23の炭化水素基」としては、
(i)炭素原子数7〜23のアルキル基、炭素原子数7〜23のアルケニル基、炭素原子数7〜23のアルキニル基等の炭素原子数7〜23の鎖状炭化水素基、
(ii)炭素原子数7〜23のシクロアルキル基、炭素原子数7〜23のシクロアルケニル基等の炭素原子数7〜23の脂環式炭化水素基、
(iii)炭素原子数10〜22のアリール基等の芳香族炭化水素基、
(iv)炭素原子数7〜23のシクロアルキルアルキル基等の鎖状炭化水素−脂環式炭化水素基、
(v)炭素原子数7〜23のアラルキル基等の鎖状炭化水素−芳香族炭化水素基、
等が挙げられる。
【0019】
炭素原子数7〜23のアルキル基は、直鎖または分岐鎖のいずれでもよく、例えば、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、tert−オクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、イソオクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリドコシル基等が挙げられる。中でも、炭素原子数7〜17のアルキル基が好ましく、炭素原子数9〜13のアルキル基がより好ましく、炭素原子数11のアルキル基(好ましくはウンデシル基)が特に好ましい。
【0020】
炭素原子数7〜23のアルケニル基としては、直鎖または分岐鎖のいずれでもよく、例えば、1−ヘプテニル基、1−オクテニル基、1−ノネニル基、1−デセニル基、1−ウンデセニル基、1−ドデセニル基、1−トリデセニル基、1−テトラデセニル基、1−ペンタデセニル基、1−ヘキサデセニル基、1−ヘプタデセニル基、1−オクタデセニル基、1−ノナデセニル基、1−イコセニル基、1−ヘンイコセニル基、1−ドコセニル基、1−トリドコセニル基等が挙げられる。中でも、炭素原子数7〜17のアルケニル基が好ましい。
【0021】
炭素原子数7〜23のアルキニル基としては、直鎖または分岐鎖のいずれでもよく、例えば、1−ヘプチニル基、1−オクチニル基、1−ノニニル基、1−デシニル基、1−ウンデシニル基、1−ドデシニル基、1−トリデシニル基、1−テトラデシニル基、1−ペンタデシニル基、1−ヘキサデシニル基、1−ヘプタデシニル基、1−オクタデシニル基、1−ノナデシニル基、1−イコシニル基、1−ヘンイコシニル基、1−ドコシニル基、1−トリドコシニル基等が挙げられる。中でも、炭素原子数7〜17のアルキニル基が好ましい。
【0022】
炭素原子数7〜23のシクロアルキル基としては、例えば、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基、シクロトリデシル基、シクロテトラデシル基、シクロペンタデシル基、シクロヘキサデシル基、シクロヘプタデシル基、シクロオクタデシル基、シクロノナデシル基、シクロイコシル基、シクロヘンイコシル基、シクロドコシル基、シクロトリドコシル基等が挙げられる。
【0023】
炭素原子数7〜23のシクロアルケニル基としては、例えば、1−シクロヘプテニル基、1−シクロオクテニル基、1−シクロノネニル基、1−シクロデセニル基、1−シクロウンデセニル基、1−シクロドデセニル基、1−シクロトリデセニル基、1−シクロテトラデセニル基、1−シクロペンタデセニル基、1−シクロヘキサデセニル基、1−シクロヘプタデセニル基、1−シクロオクタデセニル基、1−シクロノナデセニル基、1−シクロイコセニル基、1−シクロヘンイコセニル基、1−シクロドコセニル基、1−シクロトリドコセニル基が挙げられる。
【0024】
炭素原子数10〜22のアリール基としては、ナフチル、ビフェニリル、アントリル、フェナントレニル、アセナフチレニル、ナフタセニル等が挙げられる。
【0025】
炭素原子数7〜23のシクロアルキルアルキル基としては、シクロヘキシルメチル基、シクロヘプチルメチル基、シクロオクチルメチル基、シクロノニルメチル基、シクロデシルメチル基、シクロドデシルメチル基、シクロテトラデシルメチル基、シクロヘキサデシルメチル基、シクロオクタデシルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘプチルエチル基、シクロオクチルエチル基、シクロノニルエチル基、シクロデシルエチル基、シクロドデシルエチル基等が挙げられる。
【0026】
炭素原子数7〜23のアラルキル基としては、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルプロピル基、1−フェニルブチル基、1−フェニルペンチル基、1−フェニルヘキシル基、1−フェニルヘプチル基、1−フェニルオクチル基、(1−ナフチル)メチル基、1−(1−ナフチル)エチル基、2−(1−ナフチル)エチル基、1−(1−ナフチル)プロピル基、1−(1−ナフチル)ブチル基、(2−ナフチル)メチル基、1−(2−ナフチル)エチル基、2−(2−ナフチル)エチル基、1−(2−ナフチル)プロピル基、1−(2−ナフチル)ブチル基等が挙げられる。
【0027】
R
1は、好ましくは炭素原子数7〜23の鎖状炭化水素基であり、より好ましくは炭素原子数7〜23のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素原子数7〜17のアルキル基であり、特に好ましくは炭素原子数9〜13のアルキル基である。
【0028】
R
2は炭素原子数1〜4の炭化水素基を示す。
R
2における「炭素原子数1〜4の炭化水素基」としては、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数2〜4のアルケニル基、炭素原子数2〜4のアルキニル基等の鎖状炭化水素基、およびシクロプロピルが挙げられる。
【0029】
炭素原子数1〜4のアルキル基は、直鎖または分岐鎖のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基およびイソプロピル基、ブチル基、イソブチル基などが挙げられる。中でも、メチル基、エチル基が好ましい。
【0030】
炭素原子数2〜4のアルケニル基としては、直鎖または分岐鎖のいずれでもよく、例えば、エテニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基等が挙げられる。
【0031】
炭素原子数2〜4のアルキニル基としては、直鎖または分岐鎖のいずれでもよく、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基等が挙げられる。
【0032】
R
2は、好ましくは炭素原子数1〜3のアルキル基であり、より好ましくはメチル基またはエチル基である。
【0033】
本発明のフィトステロールエステルの例として、次の化合物が挙げられる。
【0035】
本発明のフィトステロールエステルの製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を組み合わせて容易に製造することができる。例えば、5−オキソピロリジン−2−カルボン酸のピロリジン環の1位の窒素をR
1CO−に対応する脂肪酸によりアシル化した後、p−トルエンスルホン酸等の酸触媒存在下で、対応するフィトステロールとエステル化することにより合成することができる。天然より得られるフィトステロールを原料として使用することができる。
【0036】
本発明のフィトステロールエステルは、顔料含有組成物において、顔料を分散させるために使用することができる。その場合、顔料の1質量部に対し、0.01質量部〜100質量部を配合することが好ましく、0.03質量部〜50質量部を配合することがより好ましく、0.1質量部〜10質量部がさらに好ましい。
【0037】
また組成物の全質量に対してフィトステロールエステルは0.001質量%〜40質量%配合することが好ましい。下限値は、0.01質量%がより好ましく、0.05質量%がより好ましい。
一方、組成物の感触の観点から、上限値は、35質量%がより好ましく、30質量%がさらに好ましく、20質量%がさらにより好ましく、15質量%が一層好ましく、10質量%が更より一層好ましく、5質量%が最も好ましい。
本発明のフィトステロールエステルは1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用して使用することもできる。前述した様に天然より得られるフィトステロールを原料として使用して本願発明のフィトステロールエステルを得た場合、2種以上のフィトステロールエステルが混在することとなる。
2種以上のフィトステロールエステルを併用した場合、上記の質量は、本願発明のフィトステロールエステルの合計質量とする。
【0038】
[組成物]
本発明において組成物は、顔料を含むものであれば、特に制限されない。該組成物としては、化粧料組成物、塗料組成物、樹脂組成物、インク組成物等が挙げられる。
【0039】
[顔料]
本発明に関して、組成物としては化粧料組成物が好ましく、顔料は、特に制限はないが、化粧料に用いられる顔料が好ましく、例えば、酸化亜鉛、酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄、γ−酸化鉄、黄酸化鉄、黄土、黒酸化鉄、カーボンブラック、低次酸化チタン、マンゴバイオレット、パルトバイオレット、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト、群青、紺青、酸化チタン(二酸化チタン)、酸化チタン被膜マイカ、酸化チタン被膜オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被膜タルク、着色酸化チタン被膜マイカ、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔、アルミニウム粉、銅粉、金粉、マイカ、タルク、カオリン、絹雲母(セリサイト)、白雲母、金雲母、合成雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、パーミキュライト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼きセッコウ)、リン酸カルシウム、フッ素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、金属石鹸(ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウムなど)、窒化ホウ素、ホトクロミック顔料等が挙げられる。好ましくは、二酸化チタン、酸化亜鉛が挙げられる。
また、表面改質剤等で表面処理した顔料であってもよい。例としては、Nε−ラウロイルリジン、パーフルオロアルキルリン酸ジエタノールアミン、メタリン酸ナトリウム、アミノ酸、アシル化コラーゲン、レシチン、金属石鹸、アシルアミノ酸塩、メチルハイドロジェンポリシロキサン等のシリコーン、ポリアクリル酸、キトサン、ナイロンパウダー、着色顔料等で被覆した顔料等が挙げられる。表面処理により通常分散性が改善されるが、かかる表面処理された顔料であっても、本発明のフィトステロールエステルを用いることにより更に分散性を向上させることができる。これらの顔料は、使用する目的に応じて各々単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0040】
顔料を化粧料に配合する場合には、これらの顔料を組み合わせ、それに化粧料用の油性原料、水溶性原料、界面活性剤や香料、薬剤などが添加、分散される。化粧料における顔料の役割は大きく、着色顔料は製品の色調を調整し、白色顔料は色調のほかに隠蔽力をコントロールする。体質顔料は希釈剤として色調を調整するとともに、製品の使用性(伸展性、付着性)や光沢などを調整する。また、体質顔料は製品の剤形を保つためにも用いられる。真珠光沢顔料は製品に光輝性を与える。特殊機能性顔料は製品に配合して使用性や、メイクアップ効果を高めたり、紫外線散乱効果などを高めたりするために比較的最近開発された顔料である。
【0041】
顔料を化粧料以外に使用する場合としては、例えば、着色塗料の場合は、次の通りである。すなわち、透明塗料(展色剤)に着色顔料、体質顔料、特殊顔料(サビ止め顔料、発光顔料、毒性顔料、示温顔料など)の顔料を加えてロールミル、フラットストンミル、ボールミルなどで混練すると着色塗料が得られる。
【0042】
本発明における顔料含有組成物に含まれる粉体顔料のサイズ(粒度)には特別の制限はなく、それぞれの組成物に適するサイズとする。適当なサイズとするにも特別な制限はなく、組成物として配合される前に(事前に)サイズの調整を行っても、また上記着色顔料の調製に見られるように、目的とする組成物の原材料を加えてから混練をする際にサイズの調整を行うこともできる。もちろん事前にある程度調整をしておき、原材料の混練時にも必要に応じて更なる調整を行うこともできる。
【0043】
本発明のフィトステロールエステルおよび組成物は、顔料が使用される様々な化粧料に配合することができる。本発明の化粧料としては、形態には特に制限はなく、液状、乳化状、ペースト状、ゲル状、固体状、粉末状等の任意の形態をとることができる。本願の効果が最も顕著に表れるのは乳化状の化粧料である。
【0044】
本発明における化粧料の例としては、洗顔料、化粧水、乳液、クリーム、ジェル、美容液、パック、マスク、石鹸、ボディシャンプー、白粉、サンスクリーン、ファンデーション、口紅、チーク、アイライナー、マスカラ、アイシャドー、眉墨等の皮膚用化粧料、シャンプー、リンス、ヘアコンディショナー、ヘアスタイリング剤、ヘアトリートメント等の毛髪用化粧料が挙げられる。いずれの化粧料にもすることができるが、顔料がより多く使用される皮膚用化粧料がより好ましく、メイクアップ用(白粉、ファンデーション、口紅、チーク、アイライナー、マスカラ、アイシャドー、眉墨等)化粧料、サンスクリーンが好ましい。
【0045】
化粧料には、通常化粧料に添加してもよい成分を本発明の効果を阻害しない範囲で配合しても良い。具体的には、油剤、キレート剤、界面活性剤、粉体、アミノ酸類、ポリアミノ酸及びその塩、糖アルコール及びそのアルキレンオキシド付加物、低級アルコール、動植物抽出物、核酸、ビタミン、酵素、抗炎症剤、殺菌剤、防腐剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、制汗剤、色素、酸化染料、有機及び無機粉体、pH調整剤、パール化剤、湿潤剤等が挙げられる。これらは一例であり、勿論これ以外の成分を配合しても構わない。
【実施例】
【0046】
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
<製造例1:化合物1(式2)の合成>
【0048】
【化5】
【0049】
1−ドデカノイル−5−オキソピロリジン−2−カルボン酸5.00gをジクロロメタン40mLに溶解後、0℃で塩化チオニル6.7mLを滴下し、反応させた。濃縮乾燥後、再度ジクロロメタン40mLに溶解させ、スチグマステロール6.63g、トリエチルアミン2mL、N,N−ジメチルアミノピリジン0.97gを加えて終夜反応させた。濃縮後、カラムクロマトグラフィーにより精製を行い、1.00gを得た。
1H−NMR(400MHz,CD
3OD,r.t.):δ5.39(1H, br), 5.17(1H, dd, J=8.6, 15.1Hz), 5.03(1H, dd, J=8.4, 15.1Hz), 4.69(2H, m), 2.99(1H, m), 2.88(1H, m), 2.74(1H, m), 2.58(1H, m), 2.34(3H, m), 2.10-1.80(6H, m), 1.80-0.78(54H, m), 0.71(3H, s)
ESI-MS(positive):m/z 728 [M+H]
+
【0050】
<顔料分散性の評価>
直径約9cmの乳鉢で、酸化チタン(TiO
2「TTO−55N」、石原産業社製)9g、および下記に示した油性成分1gをよく混合した。次に、粉体が一塊にまとまるまで、流動パラフィン「SILKOOL P55」(松村油脂研究所社製)を約0.1gずつ添加しスパチュラで混練した。粉体が一塊にまとまるまで繰り返し、要した流動パラフィンの量を測定し、湿潤点を計算した。湿潤点は油性成分10質量%を含む粉体混合物100質量部に対し粉体が一塊にまとまるまでに要した流動パラフィンの質量部数で表した。
さらに流動パラフィンを約0.1gずつ添加し、スパチュラで混合し、均一に混合した後、乳鉢を約90度傾け、流動性を示すかどうか確認した。流動性を示すまで繰り返し、要した流動パラフィンの量を測定し、流動点を計算した。流動点は油性成分10質量%を含む粉体混合物100質量部に対して流動性を示すようになるまでに要した流動パラフィンの累積質量部数で表した。
【0051】
湿潤点と流動点の差が小さいほど、分散性がよいことを示す(「香粧品科学」フレグランスジャーナル社1990年発行390頁)ことから、顔料分散性の指標は、湿潤点と流動点との差で判定した。すなわち、湿潤点と流動点との差が、〜15の場合を○で、16〜30の場合を△で、そして31〜の場合を×で表示した。
【0052】
【表2】
【0053】
表2から明らかなように、本発明のフィトステロールエステルは、他の油剤と比較して顔料分散性に優れていることが明らかになった。
【0054】
<使用感の評価>
各油相成分25質量%、前記TiO
2を25質量%および前記流動パラフィン50質量%をTiO
2が均一になるように混合して顔料含有組成物を調製した。5名の専門パネラーにより、調製した組成物を手の甲に塗った際のべたつき、きしみ、なじみについて評価した。
【0055】
[評価1:塗布時のべたつき]
塗布時のべたつきについて、下記の基準により評価を行った。
4点:べたつきが全く感じられない
3点:べたつきがほとんど感じられない
2点:かすかにべたつきが感じられる
1点:べたつきを感じる
0点:べたつきを強く感じる
専門パネラーの平均点が3.5点以上を◎、2.5点以上3.5点未満を○、1.5点以上2.5点未満を△、1.5点未満を×とした。
【0056】
[評価2:塗布時のきしみ]
塗布時のきしみについて、下記の基準により評価を行った。なお、予め専門パネラーに対して、「きしみ」とは、皮膚の上に手指をスライドさせて乳化組成物を塗布していくときに、すべりにくく手指の動きが停止させられるような感触であることを確認した。
4点:きしみが全く感じられない
3点:きしみがほとんど感じられない
2点:きしみがかすかに感じられる
1点:きしみを感じる
0点:きしみを強く感じる
専門パネラーの平均点が3.5点以上を◎、2.5点以上3.5点未満を○、1.5点以上2.5点未満を△、1.5点未満を×とした。
【0057】
[評価3:塗布時のなじみ]
塗布時のなじみについて、下記の基準により評価を行った。
4点:なじみが非常に良い
3点:なじみが良い
2点:なじみが普通(良くも悪くも感じられない)
1点:なじみが悪い
0点:なじみが非常に悪い
専門パネラーの平均点が3.5点以上を◎、2.5点以上3.5点未満を○、1.5点以上2.5点未満を△、1.5点未満を×とした。
【0058】
【表3】
【0059】
表3から明らかなように、本発明のフィトステロールエステルを含む組成物は、他の油剤を含む組成物と比較してべたつき、きしみ感、なじみに優れていることが明らかになった。
【0060】
以下に各種化粧料の作成例を示す。
【0061】
処方例1 リキッドファンデーション
【0062】
【表4】
【0063】
Aを加熱溶解後、Bを加熱溶解し、Aに加える。AにCを加え、ロールで混練する。再び加熱して溶解しDを加えディスパーで分散する。脱泡し、ジャー容器に流し込んで室温まで冷却して製品とする。
【0064】
処方例2 サンスクリーン
【0065】
【表5】
【0066】
Aを撹拌後、Bを80℃に加熱して融解した。室温でAを撹拌しながらBを徐々に加え、さらにCを徐々に加えた。Dを混合し、撹拌しながら徐々にAに加えて製品とした。