(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2に記載の加工方法は、端面に切れ刃を有する工具を用いて、工具を軸方向へ送ることによってラックの歯を切削している。そのため、次の歯を切削するためには、一旦、工具を軸方向の反対方向へ戻した後に、再び工具を軸方向へ送る。このように、工具を軸方向に往復移動させることにより、順次隣りの歯が切削される。そのため、ラックの各歯を連続して切削することができない。
【0006】
ところで、完成品の可変ギヤ比ラックは、ピニオンをある速度で回転させたときに、移動量が異なるものである。つまり、完成品において、ピニオンの回転速度が一定であった場合に、ラックの移動量が一定となることはない。
【0007】
特許文献3に記載の加工方法は、放電加工であるため、加工時間が長くなる。さらに、当該加工方法では、ピニオンに相当する工具の回転速度とラックに相当する素材の送り速度とを一定としており、工具の軸方向の送り速度を変化させている。つまり、工具と素材の動作は、完成品のピニオンとラックの動作とは異なる動作である。そして、放電加工ではなく、高速な加工を適用した場合に、上記動作を適用すると、所望の可変ギヤ比を得るのは容易ではない。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ラックの隣り合う各歯を連続して高精度に加工することができる可変ギヤ比ラックの加工装置および加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(可変ギヤ比ラックの加工装置)
(請求項1)本手段に係る可変ギヤ比ラックの加工装置は、棒状ワークに可変ギヤ比のラックを加工する装置であって、周方向に形成されるピニオン歯状の複数の突条部であり、前記ラックの各歯の歯すじ長さより長い所定長さを有するようにそれぞれ形成された前記複数の突条部を有し、ピニオン型工具の軸線方向を前記棒状ワークの軸線方向に対して交差角を有するように配置される前記ピニオン型工具と、前記ピニオン型工具の軸線回りに前記ピニオン型工具を回転させる手段と、前記ピニオン型工具と前記棒状ワークとを前記棒状ワークの軸線方向に相対移動させる手段と、前記ピニオン型工具の回転と前記ピニオン型工具と前記棒状ワークとの相対移動との関係を前記可変ギヤ比に応じて変化させるように、前記ピニオン型工具の回転と前記相対移動とを同期して動作させる手段と、を備え、前記ピニオン型工具の回転と前記相対移動との同期動作、および、前記ピニオン型工具の各前記突条部が前記所定長さを有することにより、前記棒状ワークに、前記棒状ワークの軸方向に向かって前記可変ギヤ比のラックの各歯を連続的に形成する。
前記ピニオン型工具は、転造用工具であって、各前記突条部は、連続的に前記所定長さを有し、前記加工装置は、それぞれ円筒状に形成され、前記ピニオン型工具の両端側のそれぞれを前記棒状ワーク側に押し付けると共に、前記ピニオン型工具の回転に同期しながら回転する押さえ部材を備える。
【0010】
このように、ピニオン型工具の回転と前記相対移動との同期動作と、突条部の長さを所定長さにすることで、確実に、ラックの各歯を連続的に形成できる。その結果、実際の動作を所望のギヤ比にすることができ、かつ、実際の動作を円滑にすることができる。また、ピニオン型工具の回転とピニオン型工具と棒状ワークとの相対移動との関係を可変ギヤ比に応じて変化させるように、同期して動作させる。つまり、完成品としてのピニオンの回転と完成品としてのラックの移動と同様の動作を、ピニオン型工具と棒状ワークとに付与している。従って、高精度にラックを加工することができる。
さらに、ピニオン型工具は、転造用工具であって、各突条部は、連続的に前記所定長さを有することにより、高速に加工することができる。そして、転造により高速な加工を行った場合であっても、上記動作を付与することにより、高精度な加工が可能となる。さらに、加工装置は、それぞれ円筒状に形成され、前記ピニオン型工具の両端側のそれぞれを前記棒状ワーク側に押し付けると共に、前記ピニオン型工具の回転に同期しながら回転する押さえ部材を備える。これにより、確実に、転造用工具を棒状ワークに転写することができ、高精度なラックを加工できる。さらに、ラックの軸方向全長に対して、押さえ部材の長さを短くできる。
【0011】
(請求項2)好ましくは、前記ピニオン型工具は、完成品の前記ラックに噛み合うピニオンと同じ諸元であり、前記交差角は、完成品のラック軸とピニオン軸との交差角である。このように、完成品であるラックとピニオンの使用態様と同一態様で加工するため、所望の可変ギヤ比ラックを加工できる。
【0019】
(請求項
3)好ましくは、前記押さえ部材の内周面は、円筒状に形成される。これにより、押さえ部材が容易な構成となる。
(請求項
4)好ましくは、前記押さえ部材の内周面には、内歯が形成される。押さえ部材がピニオン型工具に対して歯の噛み合いとなるため、ピニオン型工具を安定した状態で押し付けることができる。さらに、ピニオン型工具の長寿命化を図ることができる。
【0020】
(請求項
5)好ましくは、前記押さえ部材の回転軸線は、前記棒状ワークの軸線方向に直交する方向に平行である。つまり、押さえ部材が棒状ワークに平行に対向するように配置される。その結果、装置全体の小型化を図ることができる。
【0021】
(請求項
6)好ましくは、前記押さえ部材の回転軸線は、前記ピニオン型工具の回転軸線に平行である。これにより、押さえ部材がピニオン型工具に対して滑り動作することを抑制できる。その結果、突条部の長寿命化を図ることができる。
【0024】
(請求項
7)
本手段に係る可変ギヤ比ラックの加工装置は、棒状ワークに可変ギヤ比のラックを加工する装置であって、周方向に形成されるピニオン歯状の複数の突条部であり、前記ラックの各歯の歯すじ長さより長い所定長さを有するようにそれぞれ形成された前記複数の突条部を有し、ピニオン型工具の軸線方向を前記棒状ワークの軸線方向に対して交差角を有するように配置される前記ピニオン型工具と、前記ピニオン型工具の軸線回りに前記ピニオン型工具を回転させる手段と、前記ピニオン型工具と前記棒状ワークとを前記棒状ワークの軸線方向に相対移動させる手段と、前記ピニオン型工具の回転と前記ピニオン型工具と前記棒状ワークとの相対移動との関係を前記可変ギヤ比に応じて変化させるように、前記ピニオン型工具の回転と前記相対移動とを同期して動作させる手段と、を備え、前記ピニオン型工具の回転と前記相対移動との同期動作、および、前記ピニオン型工具の各前記突条部が前記所定長さを有することにより、前記棒状ワークに、前記棒状ワークの軸方向に向かって前記可変ギヤ比のラックの各歯を連続的に形成する。前記ピニオン型工具は、ブローチ加工用工具であって、各前記突条部は、前記所定長さの範囲において鋸状の複数の切刃を有する。このように、ブローチ加工を適用して、ラックの各歯を連続的に加工できる。
【0025】
(請求項
8)好ましくは、2個の前記棒状ワークを前記ピニオン型工具を挟んだ状態で配置し、2個の前記棒状ワークに対して前記可変ギヤ比のラックを同時に加工する。2個の棒状ワークを同時に加工して、2個の可変ギヤ比のラックを加工できるため、加工時間の短縮を図ることができる。
【0026】
(請求項
9)また、好ましくは、2個の前記棒状ワークを前記ピニオン型工具を挟んだ状態で配置し、一方の前記棒状ワークに対して前記可変ギヤ比のラックを加工すると同時に、他方の前記棒状ワークに対して不変ギヤ比のラックを加工する。
【0027】
このように、2個の棒状ワークを同時に加工する場合に、一方を可変ギヤ比のラックとし、他方を不変ギヤ比のラックとすることが可能である。つまり、ニーズに応じて、適宜加工対象を変えることができる。
【0028】
(可変ギヤ比ラックの加工方法)
(請求項
10)本手段に係る可変ギヤ比ラックの加工方法は、棒状ワークに可変ギヤ比のラックを加工する方法であって、周方向に形成されるピニオン歯状の複数の突条部であり、前記ラックの各歯の歯すじ長さより長い所定長さを有するようにそれぞれ形成された前記複数の突条部を有し、ピニオン型工具の軸線方向を前記棒状ワークの軸線方向に対して交差角を有するように配置される前記ピニオン型工具を用いる。
【0029】
前記加工方法は、前記ピニオン型工具の軸線回りに前記ピニオン型工具を回転させ、前記ピニオン型工具と前記棒状ワークとを前記棒状ワークの軸線方向に相対移動させ、前記ピニオン型工具の回転と前記ピニオン型工具と前記棒状ワークとの相対移動との関係を前記可変ギヤ比に応じて変化させるように、前記ピニオン型工具の回転と前記相対移動とを同期して動作させる。
さらに、前記加工方法は、前記ピニオン型工具の回転と前記相対移動との同期動作、および、前記ピニオン型工具の各前記突条部が前記所定長さを有することにより、前記棒状ワークに、前記棒状ワークの軸方向に向かって前記可変ギヤ比のラックの各歯を連続的に形成する。
前記ピニオン型工具は、転造用工具であって、各前記突条部は、連続的に前記所定長さを有し、それぞれ円筒状に形成された押さえ部材によって、前記ピニオン型工具の両端側のそれぞれを前記棒状ワーク側に押し付けると共に、前記押さえ部材を前記ピニオン型工具の回転に同期しながら回転させる。
これにより、上述した加工装置と同様の効果を奏する。
(請求項11)本手段に係る可変ギヤ比ラックの加工方法は、棒状ワークに可変ギヤ比のラックを加工する方法であって、周方向に形成されるピニオン歯状の複数の突条部であり、前記ラックの各歯の歯すじ長さより長い所定長さを有するようにそれぞれ形成された前記複数の突条部を有し、ピニオン型工具の軸線方向を前記棒状ワークの軸線方向に対して交差角を有するように配置される前記ピニオン型工具を用いる。
前記加工方法は、前記ピニオン型工具の軸線回りに前記ピニオン型工具を回転させ、前記ピニオン型工具と前記棒状ワークとを前記棒状ワークの軸線方向に相対移動させ、前記ピニオン型工具の回転と前記ピニオン型工具と前記棒状ワークとの相対移動との関係を前記可変ギヤ比に応じて変化させるように、前記ピニオン型工具の回転と前記相対移動とを同期して動作させる。
さらに、前記加工方法は、前記ピニオン型工具の回転と前記相対移動との同期動作、および、前記ピニオン型工具の各前記突条部が前記所定長さを有することにより、前記棒状ワークに、前記棒状ワークの軸方向に向かって前記可変ギヤ比のラックの各歯を連続的に形成する。
前記ピニオン型工具は、ブローチ加工用工具であって、各前記突条部は、前記所定長さの範囲において鋸状の複数の切刃を有する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<第一実施形態>
(完成品としてのラックアンドピニオンの説明)
本実施形態により加工されるラックは、例えば、ステアリング装置などに適用されるラックアンドピニオンを構成する。完成品としてのラックアンドピニオンについて
図1を参照して説明する。
【0032】
ピニオン1は、軸方向先端側(
図1の下側)の外周面に螺旋状の複数の歯1aを有し、軸方向基端側(
図1の上側)をステアリングホイール側に連結される。つまり、ステアリングホイールの回転に伴って、ピニオン1がその軸回りに回転する。
【0033】
ラック2は、可変ギヤ比ラックであり、複数の歯2aが形成されている。ピニオン1の軸とラック2の軸とは、
図1に示すように、交差角θを有している。さらに、ラック2の各歯2aの歯すじ方向が軸方向位置に応じて異なる。つまり、ピニオン1がラック2の軸方向中央部の歯2aに噛み合っている状態では、ラック2の軸方向移動量が小さくなり、ピニオン1がラック2の軸方向両端部の歯2aに噛み合っている状態では、ラック2の軸方向移動量が大きくなる。このように、ピニオン1の回転に対して、ラック2の移動量が可変となる。
【0034】
(ラックの加工の概要)
次に、
図1に示すラック2の加工の概要について、
図2を参照して説明する。ピニオン型工具Tにより、ラック2の素材としての棒状ワークWを加工することにより、可変ギヤ比のラックの歯Waを形成する。ここで、ピニオン型工具Tは、転造用工具であり、周方向に形成されるピニオン歯状の複数の突条部Taを有する。複数の突条部Taは、完成品としてのラック2の各歯2aの歯すじ長さLより長い所定長さを連続的に有するようにそれぞれ形成される。
【0035】
さらに、ピニオン型工具Tの突条部Taの諸元は、
図1に示す完成品としてのピニオン1と同じ諸元である。具体的には、両者において、歯厚、歯の高さ、モジュール、ピッチ角、ねじれ角などが同一である。さらに、ピニオン型工具Tの軸線方向T
x−yは、棒状ワークWの軸線方向(X軸方向)に対して交差角θを有する。この交差角θは、
図1に示したように、完成品のラック2の軸とピニオン1の軸との交差角θと同一である。
【0036】
そして、ピニオン型工具Tをその軸線回りに回転させながら、棒状ワークWを棒状ワークWの軸線方向(X軸方向)に送ることにより、ピニオン型工具Tの各突条部Taが棒状ワークWを加工して、ラックの歯を形成する。このとき、ピニオン型工具Tの回転速度は、一定としながら、棒状ワークWの送り速度は、実際のラック2の移動速度に対応するように変化させる。つまり、棒状ワークWの送り速度は、軸方向両端部において速くし、軸方向中央部において遅くする。また、本実施形態においては、上記動作に対して、ピニオン型工具Tをその軸線方向へ送る動作を同期させる。
【0037】
(加工装置および加工方法の詳細)
加工装置の構成について、
図3〜
図5を参照して説明する。加工装置10は、
図3に示すように、棒状ワークWと、ピニオン型工具Tと、押さえ部材11と、ワーク直動装置12と、工具回転装置13と、工具直動装置14と、押さえ部材用移動装置15と、制御装置16とを備える。
【0038】
棒状ワークWおよびピニオン型工具Tは、上述したとおりである。押さえ部材11は、
図3および
図4に示すように、平板状に形成されており、ピニオン型工具Tを挟んだ状態で棒状ワークWに対向するように配置され、ピニオン型工具Tの突条部Taの外面を棒状ワークWに向かって押し付ける。つまり、押さえ部材11は、転造する際にピニオン型工具Tが棒状ワークWから離れようとする力に抗する力を発揮する。その結果、押さえ部材11は、ピニオン型工具Tの突条部Taを棒状ワークWに対して確実に転写させる。ここで、押さえ部材11は、棒状ワークWに対する突条部Taによる加工部位に対して、ピニオン型工具Tの径方向反対側の部位を、棒状ワークWに向かって押し付ける。従って、押さえ部材11は、ピニオン型工具Tが撓むことを抑制し、加工精度を良好にできる。
【0039】
ワーク直動装置12は、棒状ワークWをその軸線方向(X軸方向)に直動させる装置である。ワーク直動装置12は、例えば、ボールねじと回転モータにより構成される場合や、リニアモータにより構成される場合がある。
【0040】
工具回転装置13は、ピニオン型工具Tをその軸線回りに回転させる。工具回転装置13は、例えば、回転モータにより構成される。本実施形態においては、工具回転装置13は、ピニオン型工具TをT
x−y軸回りに回転させる。工具直動装置14は、ピニオン型工具Tをその軸線方向(T
x−y方向)に直動させる装置である。
【0041】
押さえ部材用移動装置15は、押さえ部材11を所定方向に移動させる装置である。本実施形態においては、押さえ部材用移動装置15は、押さえ部材11を棒状ワークWの軸線方向(X軸方向)に直動可能である。具体的には、押さえ部材11は、棒状ワークWの直動方向(Xプラス方向)とは反対方向(Xマイナス方向)へ直動する。
【0042】
制御装置16は、ワーク直動装置12、工具回転装置13、工具直動装置14および押さえ部材用移動装置15を同期して動作させるように制御する。つまり、制御装置16は、棒状ワークWの直動と、ピニオン型工具Tの回転と、ピニオン型工具Tの直動と、押さえ部材11の直動とを同期して動作させる。
【0043】
ここで、
図3〜
図5を参照して、時間経過に対する各装置12〜15の動作について説明する。
図5の第一、第二段目に示すように、ピニオン型工具Tの回転速度および送り速度は、一定である。このとき、
図5の第三段目に示すように、棒状ワークWの送り速度は、棒状ワークWの一端部付近にて所定の一定速度で移動させ、中央部付近にて一端部のときより遅くした一定速度で移動させ、他端部付近にて再び一端部と同じ一定速度で移動させる。つまり、棒状ワークWの直動、ピニオン型工具Tの回転および直動の関係を可変ギヤ比に応じて変化させるように、棒状ワークWおよびピニオン型工具Tを同期して動作させる。
【0044】
ここで、押さえ部材11は、
図5の第四段目に示すように、ピニオン型工具Tの回転速度に応じて移動させる。すなわち、本実施形態においては、押さえ部材11は、一定速度で、Xマイナス方向に直動させる。詳細には、押さえ部材11は、ピニオン型工具Tの突条部Taの先端部のX軸方向成分の速度に一致するように直動する。これにより、押さえ部材11による突条部Taに対する摩耗をできるだけ少なくできる。
【0045】
以上の加工方法により、以下の効果を奏する。棒状ワークWおよびピニオン型工具Tの同期動作、並びに、ピニオン型工具Tの各突条部Taが所定長さを有することにより、棒状ワークWに、棒状ワークWの軸方向に向かって可変ギヤ比のラックの各歯2aを連続的に形成することができる。つまり、棒状ワークWとピニオン型工具Tの上記動作によって、各歯2aが一度に形成される。換言すると、ピニオン型工具Tをその軸線方向に往復移動させる必要がない。このような動作による加工を実現することによって、実際の動作を所望のギヤ比にすることができ、かつ、実際のラックアンドピニオンの動作を円滑にすることができる。ただし、押込量(加工深さ)を段階的に複数回に分ける場合には、上記動作を複数回行うようにしてもよい。
【0046】
また、棒状ワークWおよびピニオン型工具Tの動作の関係を可変ギヤ比に応じて変化させるように、棒状ワークWおよびピニオン型工具Tを同期して動作させる。つまり、完成品としてのピニオン1の回転と完成品としてのラック2の移動と同様の動作を、ピニオン型工具Tと棒状ワークWとに付与している。従って、高精度にラックを加工することができる。
【0047】
さらに、ピニオン型工具Tは、完成品のピニオン1と同じ諸元であり、交差角θは、完成品のラック軸とピニオン軸との交差角θと同一としている。このように、完成品であるラック2とピニオン1の使用態様と同一態様で加工するため、所望の可変ギヤ比ラックを加工できる。
【0048】
また、押さえ部材11が、棒状ワークWの軸線方向(X軸方向)に向かって直動させている。つまり、両者の駆動軸の方向を平行に形成することができる。これにより、機械構成の容易化を図ることができる。さらに、押さえ部材11を棒状ワークWと同方向に延びるように配置できるため、機械構成の小型化を図ることができる。
【0049】
なお、上記実施形態においては、ピニオン型工具Tをその軸線方向(T
x−y方向)に直動させたが、ピニオン型工具Tをその軸線方向(T
x−y方向)に対して動かさないようにしてもよい。この場合、ピニオン型工具Tの回転速度と棒状ワークWの送り速度との関係を適宜調整する。
【0050】
<第二実施形態>
次に、第二実施形態の加工装置および加工方法について
図6を参照して説明する。本実施形態は、第一実施形態と相違する点のみについて説明する。
図6に示すように、押さえ部材11は、一方面にラックの歯が形成されているラックとする。そして、押さえ部材11の各歯11aが、ピニオン型工具Tの各突条部Taに噛み合った状態で、各突条部Taを棒状ワークWに向かって押し付ける。そして、押さえ部材11の送り速度は、ピニオン型工具Tの回転速度に同期される。
【0051】
ここで、押さえ部材11のラックは、不変ギヤ比のラックとしてもよいし、完成品のラック2と同様の可変ギヤ比のラックとしてもよい。不変ギヤ比のラックを適用する場合には、押さえ部材11の送り速度は、一定速度となる。このように、押さえ部材11をラックとすることにより、ピニオン型工具Tに対して歯の噛み合いとなるため、ピニオン型工具Tを安定した状態で押し付けることができる。さらに、ピニオン型工具Tの長寿命化を図ることができる。
【0052】
<第三実施形態>
次に、第三実施形態の加工装置および加工方法について
図7を参照して説明する。本実施形態は、第一実施形態と相違する点のみについて説明する。
図7に示すように、押さえ部材11は、ピニオン型工具Tの軸線方向(T
x−y方向)に直交する方向P
x−yに向かって直動する。これにより、押さえ部材11がピニオン型工具Tに対して滑り動作することを抑制できる。その結果、ピニオン型工具Tの突条部Taの長寿命化を図ることができる。
また、本実施形態における押さえ部材11を、第二実施形態における押さえ部材11のようにラックを適用することもできる。この場合は、両者の効果を奏する。
【0053】
<第四実施形態>
次に、第四実施形態の加工装置および加工方法について
図8および
図9を参照して説明する。本実施形態は、第一実施形態と相違する点のみについて説明する。
図8および
図9に示すように、押さえ部材11,11は、それぞれ円筒状に形成される。特に、押さえ部材11,11の内周面は、円筒内周面形状に形成される。押さえ部材11,11は、ピニオン型工具Tの両端側それぞれの突条部Taの外面を棒状ワークW側に押し付けると共に、ピニオン型工具Tの回転に同期しながら回転する。ここで、本実施形態において、
図3に示す押さえ部材用移動装置15は、各押さえ部材11,11を回転させる装置となる。
【0054】
そして、押さえ部材11,11の回転軸線は、ピニオン型工具Tの回転軸線T
x−yに平行である。これにより、押さえ部材11,11がピニオン型工具Tに対して滑り動作することを抑制できる。その結果、突条部Taの長寿命化を図ることができる。さらに、上記構成により、棒状ワークWの軸方向全長に対して、押さえ部材11,11の長さ(外径)を小さくできる。また、押さえ部材11,11を回転駆動にすることで、装置構成の小型化を図ることができる。
【0055】
<第五実施形態>
次に、第五実施形態の加工装置および加工方法について
図10を参照して説明する。本実施形態は、第四実施形態と相違する点のみについて説明する。
図10に示すように、押さえ部材11,11は、円筒状に形成されている。ただし、押さえ部材11,11の内周面には、内歯11bが形成される。そして、押さえ部材11,11の各歯が、ピニオン型工具Tの各突条部Taに噛み合った状態で、各突条部Taを棒状ワークWに向かって押し付ける。従って、押さえ部材11,11がピニオン型工具Tに対して歯の噛み合いとなるため、ピニオン型工具Tを安定した状態で棒状ワークWに押し付けることができる。さらに、ピニオン型工具Tの長寿命化を図ることができる。
【0056】
<第六実施形態>
次に、第六実施形態の加工装置および加工方法について
図11を参照して説明する。本実施形態は、第四実施形態と相違する点のみについて説明する。
図11に示すように、押さえ部材11,11の回転軸線は、棒状ワークWの軸線方向(X軸方向)に直交する方向(Y軸方向)に平行である。つまり、押さえ部材11,11が棒状ワークWに平行に対向するように配置される。その結果、装置全体の小型化を図ることができる。
【0057】
<第七実施形態>
次に、第七実施形態の加工装置および加工方法について
図12および
図13を参照して説明する。本実施形態は、第四実施形態と相違する点のみについて説明する。
図12および
図13に示すように、押さえ部材11は、ピニオン型工具Tの突条部Taの外面に当接可能な凹状湾曲面11cを有し、かつ、直動する棒状ワークWに干渉しないように窓部11dを有する。
【0058】
この押さえ部材11は、棒状ワークWに対するピニオン型工具Tの突条部Taによる加工部位に対して、ピニオン型工具Tの径方向反対側(
図13の上側)の部位を、棒状ワークWに向かって押し付ける。このとき、押さえ部材11は、位置決めされており、ピニオン型工具Tが回転することに伴って、突条部Taの外面を摺動させる。
【0059】
このように押さえ部材11を位置決めするため、押さえ部材11を安定した状態にできる。さらに、凹状湾曲面11cは、加工部位に対してピニオン型工具Tの径方向反対側の部位を棒状ワークWに向かって押し付ける。これらにより、押さえ部材11がピニオン型工具Tを確実に押し付けることができる。
【0060】
<第八実施形態>
次に、第八実施形態の加工装置および加工方法について
図14および
図15を参照して説明する。本実施形態は、
図14に示すように、ピニオン型工具Tが、転造用工具ではなく、ブローチ加工用工具である。すなわち、ピニオン型工具Tの各突条部Taは、鋸状の複数の切刃Ta1,Ta2,Ta3,・・・を有する。そして、各突条部Taは、第一実施形態と同様に、ラック2(
図1に示す)の各歯の歯すじ長さより長い所定長さを有する。
【0061】
この場合、棒状ワークWの直動、ピニオン型工具Tの回転および直動を同期させることにより、突条部Taの各切刃Ta1,Ta2,Ta3,・・・が棒状ワークWを切削する。その結果、棒状ワークWにラックの歯Waが形成される。このとき、本実施形態においても、上記実施形態と同様に、ラックの各歯Waを連続的に加工できる。
【0062】
<第九実施形態>
次に、第九実施形態の加工装置および加工方法について
図16および
図17を参照して説明する。本実施形態は、第八実施形態と相違する点のみについて説明する。
図16に示すように、本実施形態では、2個の可変ギヤ比のラックを同時に加工する。つまり、2個の棒状ワークW1,W2をピニオン型工具Tを挟んだ状態で配置し、2個の棒状ワークW1,W2に対して歯W1a,W2aを形成する。
【0063】
このとき、
図17に示すように、ピニオン型工具Tの回転速度および送り速度は、一定とし、第一棒状ワークW1の送り速度と第二棒状ワークW2の送り速度は、最初と最後が早く、中間が遅くなるようにしている。ここで、第一棒状ワークW1の直動方向と第二棒状ワークW2の直動方向とは、
図16に示すように、逆方向である。このようにして、2個の可変ギヤ比のラックを加工する。従って、2個の可変ギヤ比のラックを同時に加工できるため、加工時間の短縮を図ることができる。
【0064】
<第十実施形態>
次に、第十実施形態の加工装置および加工方法について
図18および
図19を参照して説明する。本実施形態は、第九実施形態と相違する点のみについて説明する。
図18に示すように、第一棒状ワークW1に対して可変ギヤ比のラックを加工し、第二棒状ワークW2に対して不変ギヤ比のラックを加工する。このとき、
図19に示すように、ピニオン型工具Tの回転速度および送り速度は、一定とし、第一棒状ワークW1の送り速度は、最初と最後が早く、中間が遅くなるようにし、第二棒状ワークW2の送り速度は、一定としている。
【0065】
このように、2個の棒状ワークW1,W2を同時に加工する場合に、一方を可変ギヤ比のラックとし、他方を不変ギヤ比のラックとすることが可能である。つまり、ニーズに応じて、適宜加工対象を変えることができる。
【0066】
なお、上記実施形態において、ピニオン型工具Tは棒状ワークWの軸線方向(X軸方向)に直動させることなく、棒状ワークWをその軸線方向(X軸方向)に直動させた。この他に、ピニオン型工具Tを棒状ワークWの軸線方向(X軸方向)に直動させて、棒状ワークWを直動させないようにしてもよいし、両者を直動させるようにしてもよい。このとき、ピニオン型工具Tの回転とピニオン型工具Tと棒状ワークWとの相対移動との関係を可変ギヤ比に応じて変化させるように、ピニオン型工具Tの回転と前記相対移動とを同期して動作させればよい。