(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A層、B層を最外層に有する少なくとも2層の二軸配向積層ポリエステルフィルムを基材フィルムとし、該基材フィルムのB層側表面に離型層を有するセラミックシート成形用離型フィルムであって、
前記A層は、固有粘度が0.55〜0.61dl/gのポリエステルを10〜70質量%含み、
前記A層は平均粒子径0.5〜3.0μmの粒子を200〜15000ppm含有し、
前記B層は、実質的に粒子を含有せず、B層の厚みはA層に含有している粒子の平均粒子径の2倍以上であり、
基材フィルムのA層側表面の三次元表面粗さは、SRaが15〜80nmであり、
基材フィルムのB層側表面の三次元表面粗さは、SRaが30nm以下かつSRzが200nm以下である、
セラミックシート成形用離型フィルム。
A層、B層を最外層に有する少なくとも2層の二軸配向積層ポリエステルフィルムを基材フィルムとし、該基材フィルムのB層側表面に離型層を有するセラミックシート成形用離型フィルムであって、
A層とB層の間に中間層(C層)を有し、A層及び/又はC層は、固有粘度が0.55〜0.61dl/gのポリエステルを10〜70質量%含み、
前記A層は平均粒子径0.5〜3.0μmの粒子を200〜15000ppm含有し、
前記B層は、実質的に粒子を含有せず、B層の厚みはA層に含有している粒子の平均粒子径の2倍以上であり、
基材フィルムのA層側表面の三次元表面粗さは、SRaが15〜80nmであり、
基材フィルムのB層側表面の三次元表面粗さは、SRaが30nm以下かつSRzが200nm以下である、
セラミックシート成形用離型フィルム。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルムを基材とし、その上に離型層を積層した離型フィルムは、粘着ラベル、粘着テープなどの台紙として一般的に広く用いられている。
【0003】
近年、携帯電話をはじめとする通信機器の急激な普及にともない、積層セラミックコンデンサーの需要が拡大してきている。積層セラミックコンデンサーは、一時的に電気を蓄える特性を使い電流を安定させる目的で電子回路に不可欠な部材であり、通信機器をはじめとする電子機器には数多くの積層セラミックコンデンサーが用いられている。
【0004】
積層セラミックコンデンサー用のセラミックシートを製造する際に、工程用キャリアフィルムとして、機械的強度、寸法安定性、耐熱性、価格などの点より、二軸延伸ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、シリコーン系皮膜を設けた離型フィルムが一般的に用いられてきている(特許文献1〜4)。
【0005】
前記セラミックシートは、チタン酸バリウム、アルミナなどのセラミック粉末を分散させた水系または有機系溶媒に、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコールなどの高分子バインダーと、可塑剤、分散剤とを加えたものを高速ミキサーやボールミルにより混合分散させ、次いでセラミックスラリーを離型フィルムの離型層面にドクターブレード法により、数百μm〜数十μmの厚さに塗布・乾燥させた後、離型フィルムから剥離して巻き取ることにより一般に製造されている。
【0006】
近年、積層セラミックコンデンサーの小型・高容量化のために、セラミックシート層の厚さをより薄膜化し、かつ多層に積層することが要望されている。セラミックシート層の厚みは、従来の7〜10μm程度から、現在では3〜5μm程度まで薄くなってきており、さらに1〜2μm程度の厚みのもの、更には1μm未満の厚みにまで、セラミックシートの薄膜化が進んできている。
【0007】
このような薄膜のセラミックシートを欠陥が無いように形成することが求められているが、セラミックシートと離型フィルムの剥離強度を小さくするだけでは不十分であり、平滑な離型層面が要求されている。例えば、特許文献5、6には、基材となるポリエステルフィルムとして、離型層に接する表面は平滑であり、その反対の表面は粗くした構成の積層フィルムが提案されている。
【0008】
更に近年においては基材となるポリエステルフィルムもコストダウンにより薄層化が進められており、フィルムの平滑性の維持や、セラミックシートの欠陥を少なくするためフィルムの引き裂き性を調整し、スリット時の切断面を良くすることにより、ロールの巻状態を安定化させるなどの課題がある。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のセラミックシート成形用離型フィルム(以下、離型フィルムという)は、少なくとも2層の積層構造からなる二軸配向積層ポリエステルフィルム(以下、基材フィルムという)の片面に離型層を設けてなるポリエステルフィルムである。
前記少なくとも2層とは、A層、B層のことであり、いずれも基材フィルムの最外層である。基材フィルムは、A層、B層の間にC層を有していてもよい。離型フィルムは、基材フィルムのB層側の表面に離型層を有する。
【0015】
基材フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、またはこれらの樹脂の構成成分を主成分とする共重合体からなるポリエステルフィルムが挙げられる。なかでも、力学的性質、耐熱性、透明性、価格などの点から、二軸延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
【0016】
基材フィルムにポリエステルの共重合体を用いる場合、ポリエステルのジカルボン酸成分としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸などの多官能カルボン酸が挙げられる。また、グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪酸グリコール;p−キシレングリコールなどの芳香族グリコール;1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール;平均分子量が150〜20,000のポリエチレングリコールが挙げられる。好ましい共重合体の共重合成分の重量比率は20重量%未満である。20重量%以上では、フィルム強度、透明性、耐熱性が劣る傾向がある。
【0017】
また、基材フィルムの製造において、B層に用いる樹脂ペレットの固有粘度は、0.58〜0.70dl/gの範囲が好ましい。固有粘度が0.58dl/gより低いと、耐スクラッチ性が悪化し、キズなどの欠陥によりセラミックシートの欠陥が増える。一方、固有粘度が0.70dl/gより高いと、濾圧上昇が大きくなり、下記で述べる高精度濾過が困難となる傾向がある。
【0018】
一方、A層及び/又はA層とB層の中間層(C層)に用いる樹脂ペレットとしては、固有粘度が0.55〜0.61dl/gのポリエステル原料を10〜70質量%含むことが好ましい。これによりスリット時のフィルム切断面の形状が安定し、ロールの巻状態がよくなることでセラミックシートの欠陥の減少につながる。
【0019】
基材フィルムは、少なくとも2層の積層構造を有し、A層は無機粒子を含有し、基材フィルムのB層側表面は極力平滑であることが好ましい。
【0020】
基材フィルムの一方の最外層であるA層は、平均粒子径0.5〜3.0μmの粒子を200〜15000ppm含有する。好ましくは200〜6000ppmである。基材フィルムのA層側表面の三次元表面粗さは、SRaが15〜80nmである。SRaが15nmより小さい場合は、基材フィルムは摩擦係数が大きく、ロール状に巻くことが困難であり、さらに巻き出した時に、大きな静電気が発生し、埃が付着しやすくなるという問題が発生する。SRaが80nmより大きいと、離型フィルムをロール状に巻いて保管しておいた場合、使用時に巻き出した際、離型層に対向する面の突起によって離型層が局部的に剥がれ、セラミックシートの加工性に著しい悪影響を与え問題となる。また、全光線透過率が低下し、離型フィルム上に形成されたセラミック層の欠点を透過光によって検出する場合の精度が低下する。
【0021】
A層の厚みは、全光線透過率や突起数の範囲を維持する範囲内であれば、特に限定されないが、1〜10μmが好ましい。
【0022】
基材フィルムの離型層を設ける側の最外層であるB層は、実質的に粒子を含有していない。基材フィルムのB層側表面の三次元表面粗さはSRaが30nm以下であり、SRzは200nm以下であることが好ましい。SRaが30nmより大きい場合、またSRzが200nmより大きい場合にはセラミックシートに凹凸が転写され、この部分がセラミックシートの形状欠陥となり問題となる。
【0023】
また、B層の厚みは、A層に含有している粒子の平均粒子径の2倍以上であることが好ましい。B層の厚みが、A層に含有している粒子の2倍より薄い場合は、粒子の影響によりB層表面に微小な凹凸が生じ、セラミックシートの形状欠陥となるという問題が発生する。
【0024】
本発明の離型フィルムは、全光線透過率が88.0%以上であることが好ましい。全光線透過率が88.0%より小さいと、セラミックシートの欠点検査時に、微小な欠点が検出されにくくなるおそれがある。
【0025】
このため、最外層の粒子の含有量は、全光線透過率の前記範囲を維持できれば、特に制限されないが、巻き取り性、耐キズ性を確保しつつ高い全光線透過率を得るためには、例えば、平均粒子径2.5μmの凝集体粒子を用いる場合には、基材フィルムに対して、300〜1200ppm含有することが好ましく、500〜1000ppm含有することがより好ましい。また、例えば、平均粒子径0.6μmの粒子を用いる場合には、基材フィルムに対して、1000〜10000ppm含有することが好ましい。
【0026】
基材フィルムに粒子を配合する方法としては、公知の方法を採用し得る。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、またはエステル交換反応終了後、重縮合反応開始前の段階で、エチレングリコールなどに分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進めてもよい。また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行うことができる。
【0027】
なかでも、ポリエステル原料の一部となるモノマー液中に凝集体無機粒子を均質分散させた後、濾過したものを、エステル化反応前、エステル化反応中またはエステル化反応後のポリエステル原料の残部に添加する方法が好ましい。この方法によると、モノマー液が低粘度であるので、粒子の均質分散やスラリーの高精度な濾過が容易に行えると共に、原料の残部に添加する際に、粒子の分散性が良好で、新たな凝集体も発生しにくい。かかる観点より、特に、エステル化反応前の低温状態の原料の残部に添加することが好ましい。
【0028】
また、予め粒子を含有するポリエステルを得た後、そのペレットと粒子を含有しないペレットとを混練押出しなどする方法(マスターバッチ法)により、さらにフィルム表面の突起数を少なくすることができる。
【0029】
また、基材フィルムは、全光線透過率や突起数の好ましい範囲を維持する範囲内で、各種の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、帯電防止剤、UV吸収剤、安定剤が挙げられる。
【0030】
離型層を形成する離型剤の成分は、特に限定されることはなく、公知の材料を用いることができる。例えば、ポリオレフィン系樹脂、硬化性シリコーン樹脂、アルキッド樹脂が挙げられるが、軽い剥離強度を得るには、硬化性シリコーン樹脂が最も好ましい。
【0031】
離型剤に硬化性シリコーン樹脂を用いる場合、その種類としては、例えば、溶剤付加型、溶剤縮合型、溶剤紫外線硬化型、無溶剤付加型、無溶剤縮合型、無溶剤紫外線硬化型、無溶剤電子線硬化型が挙げられるが、いずれの硬化反応タイプでも用いることができる。
【0032】
離型剤に用いる硬化性シリコーン樹脂としては、例えば、信越化学工業(株)製のKS−774、KS−775、KS−778、KS−779H、KS−856、X−62−2422、X−62−2461、KNS−305、KNS−3000、X−62−1256;ダウ・コーニング・アジア(株)製のDKQ3−202、DKQ3−203、DKQ3−204、DKQ3−205、DKQ3−210;東芝シリコーン(株)製のYSR−3022、TPR−6700、TPR−6720、TPR−6721が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
離型層の形成方法は、特に限定されないが、離型剤を調製し、これを基材フィルム上に塗布、乾燥、熱処理する方法が好ましい。離型剤は、例えば、帯電防止剤、ポリオレフィン樹脂、必要に応じて架橋剤などを溶媒に加え、溶液または分散液として調製する。
【0034】
離型層の厚さは、塗工性の面から、0.01〜1μmが好ましい。離型層の厚みが0.01μm未満であると、塗工性の点で安定性に欠ける傾向があり、均一な塗膜を得るのが困難となることがある。一方、離型層の厚みが1μmを超えると、フィルム巻取り性が不十分となる傾向がある。
【0035】
基材フィルムに離型剤を塗布する方法としては、バーコート、リバースロールコート、グラビアコート、ロッドコート、エアドクターコート、ドクターブレードコートなどの従来より公知の塗工方式を用いることができる。
【0036】
本発明の離型フィルムの厚みは、好ましくは12〜60μm、より好ましくは15〜40μmである。厚みが12μm未満では、寸法安定性が低下し、セラミック層形成工程において支障をきたす傾向がある。一方、厚みが60μmを超えるとコスト高となる傾向がある。
【0037】
上述の離型フィルムは、例えば、ポリエステル原料の一部となるモノマー液中に無機粒子を均質分散させて濾過した後、ポリエステル原料の残部に添加してポリエステルの重合を行う重合工程と、そのポリエステルをフィルターを介してシート状に溶融押し出し、これを冷却後、延伸して、基材フィルムを形成するフィルム形成工程と、その基材フィルムの片面に離型層を形成する離型層形成工程とを経て、製造することができる。
【0038】
次に、離型フィルムの製造方法について、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記す)のペレットを基材フィルムの原料とした例、すなわちセラミック離型用PETフィルムについて詳しく説明するが、当然これに限定されるものではない。
【0039】
PETのペレットを所定の割合で混合、乾燥した後、公知の溶融積層用押出機に供給し、スリット状のダイからシート状に押し出し、キャスティングロール上で冷却固化させて、未延伸フィルムを形成する。すなわち、2台以上の押出機、2層以上のマニホールドまたは合流ブロック(例えば、角型合流部を有する合流ブロック)を用いて、各最外層を構成するフィルム層、中間層を構成するフィルム層を積層し、口金から2層以上のシートを押し出し、キャスティングロールで冷却して未延伸フィルムを形成する。
【0040】
この場合、溶融押出しの際、溶融樹脂が約280℃に保たれた任意の場所で、樹脂中に含まれる異物を除去するために高精度濾過を行うことが好ましい。溶融樹脂の高精度濾過に用いられる濾材は、特に限定されないが、ステンレス焼結体の濾材は、Si、Ti、Sb、Ge、Cuを主成分とする凝集物および高融点有機物の除去性能に優れるため好ましい。
【0041】
さらに、濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)は、20μm以下が好ましく、特に15μm以下が好ましい。濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)が20μmを超えると、20μm以上の大きさの異物が十分除去できない。濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)が20μm以下の濾材を用いて溶融樹脂の高精度濾過を行うことにより、生産性が低下する場合があるが、粗大粒子による突起の少ないフィルムを得る上で好ましい。
【0042】
具体的には、例えば、PETのペレットを十分に真空乾燥した後、押出し機に供給し、約280℃でシート状に溶融押し出し、冷却固化させて、未延伸PETシートを形成する。得られた未延伸シートを80〜120℃に加熱したロールで長手方向に2.5〜5.0倍延伸して、一軸配向PETフィルムを得る。さらに、フィルムの端部をクリップで把持して、80〜180℃に加熱された熱風ゾーンに導き、乾燥後、幅方向に2.5〜5.0倍に延伸する。引き続き、160〜240℃の熱処理ゾーンに導き、1〜60秒間の熱処理を行い、結晶配向を完了させる。この熱処理工程中で、必要に応じて、幅方向または長手方向に1〜12%の弛緩処理を施してもよい。
【0043】
得られた二軸配向PETフィルムに、離型剤を塗布、乾燥、熱処理することによりセラミック離型用PETフィルムが得られる。
【0044】
本発明の離型フィルムは、セラミックシートを製造する際に、キャリアフィルムとして用いられるものである。一般に、積層セラミックコンデンサーなどに用いられるセラミックシートは、チタン酸バリウム、アルミナなどのセラミック粉末を分散させた水系または有機系溶媒に、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコールなどの高分子バインダと、可塑剤、分散剤とを加えたものを、高速ミキサーやボールミルにより混合分散させ、得られたセラミックスラリーをキャリアフィルム上に、ドクターブレード法により、1μm〜数十μmの厚さに塗布し、これを乾燥させて巻き取ることにより製造される。
【実施例】
【0045】
本発明を以下の実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。本発明における特性値の測定方法および効果の評価方法は次の通りである。
【0046】
(1)平均粒子径
不活性粒子を走査型電子顕微鏡(日立製作所製、S−51O型)で観察し、粒子の大きさに応じて適宜倍率を変え、写真撮影したものを拡大コピーした。次いで、ランダムに選んだ少なくとも300個の粒子について各粒子の外周をトレースし、画像解析装置にてこれらのトレース像から粒子の円相当径を測定し、これらの平均を平均粒子径とした。
【0047】
(2)積層厚み
フィルムをエポキシ樹脂に包埋し、フィルム断面をミクロトームで切り出した。該断面を走査型電子顕微鏡で5000倍の倍率で観察し、積層各層の厚みを求めた。求めた積層比率とフィルム厚みから各層の厚みを算出した。
【0048】
(3)三次元表面粗さSRa、SRz
触針式三次元粗さ計(SE−3AK、株式会社小阪研究所社製)を用いて、針の半径2μm、荷重30mgの条件下に、フィルムの長手方向にカットオフ値0.25mmで、測定長1mmにわたり、針の送り速度0.1mm/秒で測定し、2μmピッチで500点に分割し、各点の高さを三次元粗さ解析装置(SPA−11)に取り込ませた。これと同様の操作をフィルムの幅方向について2μm間隔で連続的に150回、すなわちフィルムの幅方向0.3mmにわたって行い、解析装置にデータを取り込ませた。次に解析装置を用いて中心面平均粗さ(SRa)、十点平均粗さ(SRz)を求めた。
【0049】
(4)セラミックシートのピンホール
溶媒(トルエン)、セラミック原料(BaTiO
3、富士チタン製)、結合剤、可塑剤などを混合し、ペースト状にした後、ボールミルで分散させ、セラミックスラリーを得た。離型フィルムの離型層の表面にドクターブレード法にて、上記セラミック厚みが乾燥時1μmとなるようにコートし、100℃の雰囲気温度のオーブン中に5分間で乾燥し、セラミックシートを得た。このシート10cm
2の面積の範囲にシートの反対面から光をあて、ピンホールの発生状況を観察し、下記基準により評価した。
○:ピンホールなし。
△:ピンホールはほとんどなし。
×:ピンホールが多数あり。
【0050】
(5)スリット性
得られたフィルムロールをスリッターによりスリットしたときの切断加工の切り口、
すなわちテープ両端部を光学顕微鏡で観察し、以下の基準で評価した。
○:断面に盛り上りがなく、スリット屑も認められない。
△:断面に盛り上りがあり、粉状あるいは細長いスリット屑が少量認められる。
×:断面に盛り上りがあり、粉状あるいは細長いスリット屑がかなり明確に認められる。
【0051】
実施例1
(ポリエチレンテレフタレートペレット(a)の調製)
エステル化反応装置として、攪拌装置、分縮器、原料仕込口および生成物取り出し口を有する3段の完全混合槽よりなる連続エステル化反応装置を用い、TPAを2トン/hrとし、EGをTPA1モルに対して2モルとし、三酸化アンチモンを生成PETに対してSb原子が160ppmとなる量とし、これらのスラリーをエステル化反応装置の第1エステル化反応缶に連続供給し、常圧にて平均滞留時間4時間で255℃で反応させた。次いで、上記第1エステル化反応缶内の反応生成物を連続的に系外に取り出して第2エステル化反応缶に供給し、第2エステル化反応缶内に第1エステル化反応缶から留去されるEGを生成ポリマー(生成PET)に対し8重量%供給し、さらに、生成PETに対してMg原子が65ppmとなる量の酢酸マグネシウムを含むEG溶液と、生成PETに対してP原子が20ppmのとなる量のTMPAを含むEG溶液を添加し、常圧にて平均滞留時間1.5時間で260℃で反応させた。次いで、上記第2エステル化反応缶内の反応生成物を連続的に系外に取り出して第3エステル化反応缶に供給し、さらに生成PETに対してP原子が20ppmのとなる量のTMPAを含むEG溶液を添加し、常圧にて平均滞留時間0.5時間で260℃で反応させた。上記第3エステル化反応缶内で生成したエステル化反応生成物を3段の連続重縮合反応装置に連続的に供給して重縮合を行い、さらに、ステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度5μm粒子90%カット)で濾過し、極限粘度0.630dl/gのポリエステルペレット(a)を得た。
【0052】
(シリカ粒子含有ポリエチレンテレフタレートペレット(b)の調製)
平均粒子径が2.5μmのシリカ粒子(富士シリシア社製)をエチレングリコール中に仕込み、さらに95%カット径が30μmのビスコースレーヨン製フィルターで濾過処理を行ない、炭酸カルシウム粒子のエチレングリコールスラリーを得た。シリカ粒子含有ポリエチレンテレフタレート(b)を次の方法で得た。エステル化反応缶を昇温し、200℃に到達した時点で、テレフタル酸を86.4重量部およびエチレングリコールを64.4重量部からなるスラリーを仕込み、攪拌しながら触媒として三酸化アンチモンを0.03重量部および酢酸マグネシウム4水和物を0.088重量部、トリエチルアミンを0.16重量部添加した。次いで、加圧昇温を行いゲージ圧3.5kgf/cm
2、240℃の条件で、加圧エステル化反応を行った。その後、エステル化反応缶内を常圧に戻し、リン酸トリメチル0.040重量部を添加した。さらに、260℃に昇温し、リン酸トリメチルを添加した15分後に、上記シリカ粒子のエチレングリコールスラリーを、生成ポリエステルに対して、10000ppmとなるよう添加した。15分後、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、280℃の減圧下で重縮合反応を行った。重縮合反応終了後、95%カット径が28μmのナスロンフィルター(日本精線(株)製)で濾過処理を行い、固有粘度が0.63dl/gのシリカ粒子含有ポリエチレンテレフタレートマスターペレット(b)を得た。
【0053】
(ポリエチレンテレフタレートペレット(c)の調製)
ポリエチレンテレフタレートペレット(a)と同様の方法にて極限粘度を0.580dl/gに調整し、ポリエチレンテレフタレートペレット(c)を得た。
【0054】
上記のポリエチレンテレフタレートペレット(c)を50重量%、マスターペレット(b)を粒子を含有しないポリエチレンテレフタレートのペレット(a)で所定割合にて希釈し、180℃で8時間減圧乾燥(3Torr)した後、押出機1に、粒子を含有しないポリエチレンテレフタレートのペレット(a)を押出機2にそれぞれ供給し、285℃で溶解した。この2つのポリマーを、それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、矩形積層部を備えた2層合流ブロックにて、積層し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作った。この未延伸フィルムを長手方向に85℃で3.4倍に延伸した。この一軸フィルムをステンタを用いて幅方向に4.2倍延伸し、220℃にて5秒間熱処理し、シリカ粒子を含有する層(A層)の厚み及び実質粒子を含有しない層(B層)の厚み、またシリカ粒子を含有する層(A層)の粒子含有量を表1に示す通りとし、積層フィルムを得た。次いで、紫外線カチオン硬化型シリコーンレジン(東芝シリコン社製、UV9315)を溶剤(ノルマルヘキサン)中に樹脂固形分濃度が2重量%となるように分散させ、シリコーンレジン100重量部に対し、1重量部のビス(アルキルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートを硬化触媒として添加し、シリコーン樹脂を含む塗布液を作成した。上記シリコーン樹脂を含む塗布液を積層フィルムのB層の表面に、ワイヤーバーを用いて、塗布液を塗布し、100℃×30秒で乾燥後、紫外線照射装置で紫外線照射(300mj/cm
2)し、セラミックシート成形用離型フィルム(シリコーン離型層の乾燥後塗布量0.10g/m
2)を得た。評価結果を表2に示す。
【0055】
実施例2
A層のシリカ粒子添加濃度を変更した以外は実施例1と同様の方法で、セラミックシート成形用離型フィルムを得た。評価結果を表2に示す。
【0056】
実施例3、4
A層のシリカ粒子添加濃度およびA、B層の厚みを表1に示すとおりとした以外は実施例1と同様の方法で、セラミックシート成形用離型フィルムを得た。評価結果を表2に示す。
【0057】
実施例5
(炭酸カルシウム粒子含有ポリエチレンテレフタレートペレット(d)の調製)
平均粒子径が0.6μmの炭酸カルシウム粒子(丸尾カルシウム社製)をエチレングリコール中に仕込み、さらに95%カット径が30μmのビスコースレーヨン製フィルターで濾過処理を行ない、炭酸カルシウム粒子のエチレングリコールスラリーを得た。炭酸カルシウム粒子含有ポリエチレンテレフタレート(d)を次の方法で得た。エステル化反応缶を昇温し、200℃に到達した時点で、テレフタル酸を86.4重量部およびエチレングリコールを64.4重量部からなるスラリーを仕込み、攪拌しながら触媒として三酸化アンチモンを0.03重量部および酢酸マグネシウム4水和物を0.088重量部、トリエチルアミンを0.16重量部添加した。次いで、加圧昇温を行い、ゲージ圧3.5kgf/cm
2、240℃の条件で、加圧エステル化反応を行った。その後、エステル化反応缶内を常圧に戻し、リン酸トリメチル0.040重量部を添加した。さらに、260℃に昇温し、リン酸トリメチルを添加した15分後に、上記炭酸カルシウム粒子のエチレングリコールスラリーを、生成ポリエステルに対し、10000ppmとなるよう添加した。15分後、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、280℃の減圧下で重縮合反応を行った。重縮合反応終了後、95%カット径が28μmのナスロンフィルター(日本精線(株)製)で濾過処理を行い、固有粘度が0.62dl/gの炭酸カルシウム粒子含有ポリエチレンテレフタレートマスターペレット(d)を得た。
【0058】
(ポリエステルフィルムの製造)
ポリエチレンテレフタレートペレット(c)を50重量%と上記のマスターペレット(d)を粒子を含有しないポリエチレンテレフタレートのペレット(a)で所定割合にて希釈し、180℃で8時間減圧乾燥(3Torr)した後、押出機1に、粒子を含有しないポリエチレンテレフタレートのペレット(a)を押出機2にそれぞれ供給し、285℃で溶解した。この2つのポリマーを、それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、矩形積層部を備えた2層合流ブロックにて、積層し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて、表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化させて、未延伸フィルムを形成した。この未延伸フィルムを長手方向に85℃で3.4倍に延伸し、次いで、この一軸フィルムをステンタを用いて幅方向に4.2倍延伸し、220℃にて5秒間熱処理し、炭酸カルシウム粒子を含有する層(A層)の厚みおよび実質粒子を含有しない層(B層)の厚み、また炭酸カルシウムを含有する層(A層)の粒子含有量を表1に示す通りとし、積層フィルムを得た。次いで実施例1と同様の方法で離型層を形成しセラミックシート成形用離型フィルムを得た。評価結果を表2に示す。
【0059】
実施例6,7
A層とB層の間に中間層C層を設け、それぞれの粒子種類、濃度、厚みを表1に示すとおりとした以外は実施例1と同様の方法でセラミックシート成形用離型フィルムを得た。評価結果を表2に示す。
【0060】
実施例8
A層においてポリエチレンテレフタレートペレット(c)を用いなかった以外は実施例2と同様の方法でセラミックシート成形用離型フィルムを得た。評価結果を表2に示す。
【0061】
比較例1
単層構成とし、ポリエチレンテレフタレートペレット(c)を用いず、粒子種類、濃度、厚みを表1のとおりとした以外は実施例1と同様の方法でセラミックシート成形用離型フィルムを得た。評価結果を表2に示す。
【0062】
比較例2
A層、B層の厚み、粒子の種類、濃度を表1のとおりとた以外は実施例1と同様の方法でセラミックシート成形用離型フィルムを得た。評価結果を表2に示す。
【0063】
比較例3
シリカ粒子の平均粒子径を3.2μm、粒子添加量と厚みを表1のとおりとした以外は実施例1と同様の方法でセラミックシート成形用離型フィルムを得た。評価結果を表2に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】