特許第6273731号(P6273731)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6273731
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/136 20100101AFI20180129BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20180129BHJP
   H01M 2/16 20060101ALI20180129BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20180129BHJP
【FI】
   H01M4/136
   H01M4/62 Z
   H01M2/16 P
   H01M10/052
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-193708(P2013-193708)
(22)【出願日】2013年9月19日
(65)【公開番号】特開2015-60724(P2015-60724A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2016年8月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】尾形 大輔
(72)【発明者】
【氏名】佃 明光
【審査官】 近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−305574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/136
H01M 2/16
H01M 4/62
H01M 10/052
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ポリアミドを含む正極結着剤と、充放電時には2相以上の結晶相を有する正極活物質とを含む正極シートを具備してなるリチウムイオン電池。
【請求項2】
正極活物質100質量部に対して、芳香族ポリアミドを0.5〜10質量部含む、請求項1に記載のリチウムイオン電池。
【請求項3】
正極結着剤に含まれる芳香族ポリアミドの芳香環がパラ配向性を有し、かつパラ配向性を有している構成単位の占める割合が全芳香環の80%以上である、請求項1または2に記載のリチウムイオン電池。
【請求項4】
ポリプロピレンを含む多孔性フィルムをセパレータとして用いた、請求項1〜3のいずれかに記載のリチウムイオン電池。
【請求項5】
芳香族ポリアミドを含む多孔性フィルムをセパレータとして用いた、請求項1〜3のいずれかに記載のリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温使用時にも優れた電池特性を発現し、寿命特性にも優れ、特に電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、ハイブリット電気自動車等の高温で使用される用途に好適なリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は繰返しの充放電可能な高容量電池として、携帯電話やノートパソコンの高性能化や長時間作動を可能としてきた。最近では電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、ハイブリッド電気自動車等の環境対応自動車に搭載され、今後の需要拡大が見込まれている。
【0003】
また、リチウムイオン二次電池のさらなる高性能化のため、電池容量の高容量化、入出力特性、寿命特性、温度特性、保存特性、充電寿命耐性等、種々の電池特性の改良のための検討が各種材料においてなされており、リチウムイオン二次電池で用いる電極に欠かすことのできない活物質と結着剤についても鋭意検討がなされている。
【0004】
電気自動車等で用いられるリチウムイオン電池では走行距離を長くするために正極活物質として、Liイオンを含有するLiCoO2、LiNiO2、Li(Ni0.8Co0.15Al0.05)O2、LiMn2O4、LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2等のLi含有遷移金属酸化物が用いられる。また安全性を高めるために正極活物質としてLi含有リン酸塩化合物の検討も鋭意進められている。さらに、安全性と高容量化のためにLi含有ホウ酸塩化合物、Li含有ケイ酸塩化合物等の検討も現在活発に行われているが、高温・高圧時における安定性や、繰返しの使用の指標となる寿命特性は現在尚、いずれも大きな課題である。
【0005】
また、リチウムイオン二次電池の正極用結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン(特許文献1、2)などのフッ素樹脂系結着剤、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂(特許文献3)が用いられている。しかし、フッ素樹脂系結着剤では樹脂の耐熱性が低いため、使用環境の高温化に伴う高温保存特性に難があり、また充電時に酸化劣化が進むため更なる寿命特性の良化には難がある。また、ポリイミド樹脂やポリアミドイミド樹脂は優れた耐熱性を示す樹脂であるが、高温・高電圧時においては耐酸化性が充分ではなく、劣化が進みやすくなってしまい、寿命特性が問題となり、高温雰囲気における電池特性と、寿命特性の向上が可能な結着剤が必要となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−213337号公報
【特許文献2】特開2012−109143号公報
【特許文献3】特開2013−69466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、上記した問題点を解決することにある。すなわち、充放電を繰り返すことによる劣化を抑制した寿命特性の改善と、高温環境下における劣化を抑制したリチウムイオン電池を提供することにある。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、寿命特性と高温保存時の劣化を抑制したリチウムイオン電池を提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のリチウムイオン電池は、芳香族ポリアミドを含む正極結着剤と、充放電時には2相以上の結晶相を有する正極活物質とを含む正極シートを具備してなるリチウムイオン電池である。
【0010】
2相以上の結晶相が混在する正極活物質は、Li含有リン酸塩化合物として、LiFePO4、LiMnPO4、Li(Mn0.85Fe0.15)PO4、LiCoPO4、LiNiPO4、LiVOPO4、Li2FeP2O7、Li3Fe2(PO4)3、LiVPO4F、Li3V2(PO4)3などがある。Li含有ホウ酸塩化合物としてはLiFeBO3、LiMnBO3、Li含有ケイ酸塩化合物として、Li2FeSiO4、Li2MnSiO4などがあるが、これらに限定されるわけではない。
【0011】
また、本発明のリチウムイオン電池において、正極結着剤は芳香族ポリアミドを含んでいる。
【0012】
これらを組み合わせた正極、すなわち上記の正極結着剤と正極活物質とを含む正極シートをリチウムイオン電池に用いることで、優れた寿命特性と、高温環境下においても優れた電池特性を発現することができる。
【0013】
本発明において用いる正極活物質は、充電反応において、Liが脱離される前の安定な結晶構造と、Liが脱離した後に準安定化した結晶構造とが相互に変化することで、Li脱離が起こっても熱的に安定な構造を維持し、安全性の高い電池とすることができる。このような充放電メカニズムのため、活物質自身は熱的に安定であるが、結晶相転移のために体積変化が生じ、正極活物質を塗布して作製した電極の構造は不安定となり、通常は電池としては劣化が生じることになる。また、価数の異なる金属が電極中に混在することで電気化学的に不安定な部分が生じ、電極構造が破壊されやすく、高温特性や寿命特性が悪化することが通例である。しかしながらこれら正極活物質と共に、芳香族ポリアミドを含む正極結着剤を用いることで、これら問題を解決し、優れた寿命特性と高温環境下における優れた電池特性の発現が可能となる。
【0014】
また、複数のLi(例えば、Li2FeSiO4、Li2MnSiO4など)を含む正極活物質においては、Liの脱離前の相、1つのLiが脱離した相、2つのLiが脱離した相、の3相の結晶構造をとることがあるが、これらにおいても結晶相転移による体積変化により、電極構造が不安定化するものの、芳香族ポリアミドを含む正極結着剤を用いることで、優れた寿命特性と高温環境下における優れた電池特性の発現が可能となる。
【0015】
一方、1相の結晶構造からなる正極活物質(例えば、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2など)と芳香族ポリアミドを含む正極結着剤を用いると、Li脱離が起こった際に熱的に不安定な構造となるが、芳香族ポリアミドの優れた耐熱性のために高温環境下でも優れた電池特性を発現できる。しかしながら、体積変化が小さいために正極活物質表面に付着している芳香族ポリアミドは変形せず、Liの運搬を担う電解液が入り込むことができず、充放電反応に関与できなくなる。すなわち、充放電反応に関与する活物質量が少なくなるため、繰り返しの充放電時には充放電反応に関与する活物質への負担が大きいために劣化が顕著となり、寿命特性は劣ることになり、優れた寿命特性と高温環境下における優れた電池特性の発現ができない。
【0016】
また、本発明におけるリチウムイオン電池中の芳香族ポリアミドは正極活物質100質量部に対して0.5〜10質量部であることが好ましい。好ましくは0.5〜5質量部であり、さらに好ましくは0.5〜3質量部であることが好ましい。結着剤が0.5質量部より小さくなると集電体と活物質、活物質同士の結着力が低下し、電池作製工程における電極の剥れが起こり、生産性を大きく低下させることがある。また、結着剤が10質量部より大きいと電池の抵抗が大きくなり、入出力特性や温度特性、寿命特性等の低下を引き起こすことがある。
【0017】
本発明で用いる芳香族ポリアミドとしては、例えば次の化学式(1)及び/または(2)で表される繰り返し単位を有するものを用いることができる。
【0018】
【化1】
【0019】
【化2】
【0020】
ここでAr、Ar、Arとしては、例えば式(3)〜(7)が挙げられ、X、Yとしては、−O−、−CH−、−CO−、−CO−、−S−、−SO−、−C(CH)−、等から選ばれる。
【0021】
【化3】
【0022】
さらに、これらの芳香環上の水素原子の一部が、フッ素や臭素、塩素等のハロゲン基(特に塩素)、ニトロ基、メチルやエチル、プロピル等のアルキル基(特にメチル基)、メトキシやエトキシ、プロポキシ等のアルコキシ基等の置換基で置換されているものが、吸湿率を低下させ、正極活物質の劣化を抑制するために好ましい。また、重合体を構成するアミド結合中の水素が他の置換基によって置換されていてもよい。本発明に用いられる芳香族ポリアミドは、上記の芳香環がパラ配向性を有しているものが好ましく、このパラ配向性を有している構成単位の占める割合が全芳香環の80モル%以上、より好ましくは90モル%以上を占めていることが好ましい。ここでいうパラ配向性とは、例えば芳香環上主鎖を構成する2価の結合手が互いに同軸または平行にある状態をいう。このパラ配向性が80モル%未満の場合、結着剤の剛性が不十分となり充放電時の電極構造変化を抑制できなくなる場合がある。
【0023】
次に正極結着剤の製造方法について、芳香族ポリアミドを例として以下に説明するが、これに限定されるものではない。まず、芳香族ポリアミドを、例えば、酸ジクロライドとジアミンを原料として重合する場合には、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性有機極性溶媒中で溶液重合により合成する方法や、水系媒体を使用する界面重合で合成する方法等をとることができる。ポリマーの分子量を制御しやすいことから、非プロトン性有機極性溶媒中での溶液重合が好ましい。
【0024】
溶液重合の場合、分子量の高いポリマーを得るために、重合に使用する溶媒の水分率を500ppm以下(質量基準、以下同様)とすることが好ましく、200ppm以下とすることがより好ましい。使用する酸ジクロライドおよびジアミンの両者を等量用いると超高分子量のポリマーが生成することがあるため、モル比を、一方が他方の95.0〜99.5モル%になるように調整することが好ましい。また、芳香族ポリアミドの重合反応は発熱を伴うが、重合系の温度が上がると、副反応が起きて重合度が十分に上がらないことがあるため、重合中の溶液の温度を40℃以下に冷却することが好ましい。重合中の溶液の温度は30℃以下にすることがより好ましい。さらに、酸ジクロライドとジアミンを原料とする場合、重合反応に伴って塩化水素が副生するが、これを中和する場合には炭酸リチウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウムなどの無機の中和剤、あるいは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、アンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン等の有機の中和剤を使用するとよい。
【0025】
本発明の芳香族ポリアミドが高い結着性を得るために、芳香族ポリアミドポリマーの対数粘度(ηinh)は、1.8〜3.5dl/gであることが好ましく、2.2〜3.0dl/gであることがより好ましい。対数粘度が1.8dl/g未満であると、ポリマー分子鎖のからみ合いによるポリマー鎖間の結合力が減少するため、靭性や強度などの機械特性の低下や、熱収縮率が大きくなることがある。対数粘度が3.5dl/gを超えると、溶媒への溶解性の低下や、芳香族ポリアミド分子が凝集し、結着性が著しく低下することがある。
【0026】
次に、本発明の正極結着剤として用いる結着剤原液について、芳香族ポリアミドを例として説明する。
【0027】
結着剤原液には重合後のポリマー溶液をそのまま使用してもよく、あるいはポリマーを一度単離してから上述の非プロトン性有機極性溶媒や硫酸などの無機溶剤に再溶解して使用してもよい。芳香族ポリアミドを単離する方法としては、特に限定しないが、重合後の芳香族ポリアミド溶液を多量の水中に投入することで溶媒および中和塩を水中に抽出し、析出した芳香族ポリアミドのみを分離した後、乾燥させる方法などが挙げられる。また、再溶解時に溶解助剤として金属塩などを添加してもよい。金属塩としては、非プロトン性有機極性溶媒に溶解するアルカリ金属またはアルカリ土類金属のハロゲン化物が好ましく、例えば、塩化リチウム、臭化リチウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウムなどが挙げられる。また再溶解時には、自転−公転型ミキサー(いわゆるプラネタリーミキサー)を用いて、せん断をかけながら溶解させても良い。
【0028】
結着剤原液100質量部中の芳香族ポリアミドの含有量は、2〜25質量部が好ましく、より好ましくは5〜15質量部である。結着剤原液における芳香族ポリアミドの含有量が2質量部未満であると、結着剤原液の粘度が低下し、正極活物質と混合した際に充分なせん断応力をかけることができずに分散不良が起こったり、正極活物質を混合して作製したスラリーの粘度が低く、スラリーの安定性が低下することがある。結着剤原液における芳香族ポリアミドの含有量が25質量部を超えると、結着剤原液の粘度が高くなりすぎ、正極活物質と混合した際に充分に攪拌できず分散不良となることがある。
【0029】
結着剤原液の溶液粘度は、E型粘度計を用いて25℃、10rpmにおいて測定される値が、1,000〜3,000mPa・sであることが好ましい。より好ましくは1,500〜2,500mPa・sである。溶液粘度が1,000mPa・s未満であると、正極活物質と混合した際に充分なせん断応力をかけることができずに分散不良が起こったり、正極活物質を混合して作製したスラリーの粘度が低く、スラリーの安定性が低下することがある。また、溶液粘度が3,000mPa・sを超えると、正極活物質と混合した際に充分に攪拌できず、分散不良となることがある。
【0030】
本発明のリチウムイオン電池に用いる正極(正極シート)には必要に応じて導電助剤を含有せしめることができる。導電助剤としてはアセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラフェン、炭素繊維などが挙げられ、これらのうちの1種類以上を用いることがきる。また、CVD法等を用いて正極活物質表面にカーボンコートを施した活物質を用いてもよい。
【0031】
本発明のリチウムイオン電池に用いる正極集電体は耐酸化性によりアルミニウムを用いることが好ましい。アルミニウムはカーボンコートしたものを用いてもよい。
【0032】
次に本発明の正極シートの作製方法について、活物質としてLiFePO4、導電助剤としてアセチレンブラックを用いた場合について記載するが、これらに限定されるものではない。ここで正極シートとは、正極集電体上に、正極活物質、正極結着剤に任意で導電助剤を添加し、分散媒中に分散させた正極スラリーを塗布・乾燥し、必要に応じて圧延工程を経て得たシートのことをいう。
【0033】
正極活物質としてLiFePO4100質量部に対して、アセチレンブラックを5質量部、芳香族ポリアミドを5質量部、分散媒としてN−メチル−2−ピロリドンを用いる場合を説明する。
【0034】
芳香族ポリアミド樹脂を含む結着剤原液にアセチレンブラックを添加し、プラネタリーミキサーを用いてせん断をかけて練合、分散させた後にLiFePO4と、N−メチル−2−ピロリドンを投入、分散させて正極スラリーを作製する。
【0035】
作製した正極スラリーをアルミからなる集電体上に、ドクターブレードとアプリケーターを用いて均一に塗布し、熱風オーブンで乾燥した後、圧延工程にて厚み・密度を調整して、正極シートとする。
【0036】
次に本発明のリチウムイオン電池の負極について記載する。
【0037】
負極用活物質としては活性炭、天然黒鉛、人造黒鉛、グラファイト、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャネルブラック、サーマルブラック、ソフトカーボン、ハードカーボン、メソカーボンマイクロビーズ、メソカーボンマイクロファイバー、メソポーラスカーボン、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラフェン、炭素繊維などの炭素材料、ケイ素や酸化ケイ素、スズ、酸化スズ等の合金系材料、リチウムチタン酸化物を用いることができ、これらのうちの1種類以上を用いることができる。炭素材料としては天然黒鉛、人造黒鉛、グラファイト、ハードカーボン、ソフトカーボンのうちの1種類以上を用いることが特に好ましい。
【0038】
負極用結着剤としては、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフッ化ビニリデンのうち1種類以上を用いることができる。負極用活物質として上記の合金系材料を用いる場合はポリイミド、ポリアミドイミドを用いることが好ましい。また、カルボキシメチルセルロース等の増粘剤の役割を有する結着剤を用いてもよく、これらと上記負極用結着剤を併せて用いてもよい。
【0039】
また、必要に応じて負極導電助剤を用いてもよい。負極導電助剤としてはアセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラフェン、炭素繊維などが挙げられる。
【0040】
負極集電体としては銅箔、アルミ箔、SUS箔が用いられるが、これらにカーボンを塗布したものを用いてもよい。
【0041】
次に負極シートの作製方法について、活物質に天然黒鉛を用いた場合について記載するが、これに限定されるものではない。ここで負極シートとは、負極集電体上に、負極活物質、負極結着剤、必要に応じて増粘剤、導電助剤を分散媒中に分散させたスラリーを塗布・乾燥し、必要に応じて圧延工程を経て得たシートのことをいう。
【0042】
天然黒鉛100質量部、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを1質量部、結着剤としてスチレン−ブタジエン共重合体1.5質量部を用い、分散媒として蒸留水を用いる。
【0043】
カルボキシメチルセルロース1質量部を水に溶解した水溶液に、天然黒鉛を投入し、プラネタリーミキサーを用いて混練して分散させた後、結着剤を添加して負極スラリーを作製する。これを負極集電体上にドクターブレードとアプリケーターを用いて均一に塗布した後、熱風オーブンで乾燥した後に圧延工程にて電極の厚み、密度を調整して負極シートとした。
【0044】
本発明において用いる電解液は、特に限定されることなく従来のリチウムイオン電池に用いられている有機溶媒を使用することができる。上記有機溶媒には、環状エステル類、鎖状エステル類、環状エーテル類、鎖状エーテル類等が用いられ、具体的には、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、γ−ブチロラクトン(γBL)、2メチル−γ−ブチロラクトン、アセチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,2−エトキシエタン、ジエチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ブチルプロピルカーボネート、プロピオン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、酢酸アルキルエステル、テトラヒドロフラン(THF)、アルキルテトラヒドロフラン、ジアルキルアルキルテトラヒドロフラン、アルコキシテトラヒドロフラン、ジアルコキシテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、アルキル−1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキソラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、蟻酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、リン酸トリエステル、N−メチル−2−ピロリドンなどの有機溶媒およびこれらの誘導体や混合物などが好ましく用いられる。
【0045】
電解液に含まれる電解質としては、アルカリ金属、特にリチウムのハロゲン化物、過塩素酸塩、チオシアン塩、ホウフッ化塩、リンフッ化塩、砒素フッ化塩、アルミニウムフッ化塩、トリフルオロメチル硫酸塩などが好ましく用いられる。例えば、過塩素酸リチウム(LiClO)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、4フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム[LiN(CF3SO22]などのリチウム塩(電解質)などの1種以上の塩を用いることができるが、六フッ化リンン酸リチウムが好ましい。
【0046】
電解質の非水溶媒に対する溶解量は、0.5〜3.0モル/Lとすることが望ましく、特に0.8〜1.5モル/Lが好ましい。
【0047】
また電解液には必要に応じて添加剤を用いてもよい。添加剤としては、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、エチレンサルファイト、1,4−ブタンスルトン、プロパンサルトン、2,4−ジフルオロアニソール、ビフェニル、シクロヘキシルベンゼン等が挙げられ、これらのうちの1種類以上を用いてもよい。
【0048】
本発明のリチウムイオン電池において、正極シートと負極シートの間に多孔性シートからなるセパレータを用いることができる。多孔性シートはポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン−1、ポリ4−メチルペンテン−1、ノルボルネン系誘導体を開環メタセシス重合することにより得た環状ポリオレフィン系樹脂や、ノルボルネン系誘導体とエチレン、プロピレン、ブテン、ペンテンなどのα−オレフィン類を共重合した環状ポリオレフィン共重合体樹脂などからなるポリオレフィン多孔性シート、ポリアミドからなる多孔性シート、ポリイミドからなる多孔性シート、ポリアミドイミドからなる多孔性シート、フッ素系樹脂からなるポリフッ化ビニリデン多孔性シート、ポリテトラフルオロエチレン多孔性シート、セルロースからなる多孔性シートなどが用いられる。特に本発明においては、ポリプロピレンを含む多孔性フィルムや、芳香族ポリアミドを含む多孔性フィルムをセパレータとして用いることが好ましい。
【0049】
セパレータの厚みは特に限定されるものではないが、8〜30μmであることが好ましい。また、セパレータの空孔率は30〜80%が好ましい。
【0050】
生産性や入手の容易性からするとポリエチレン、ポリプロピレンからなる多孔性シートを用いることが好ましい。
【0051】
耐熱性の観点ではポリプロピレンからなる多孔性シートが好ましく、さらなる耐熱性の付与のためにはポリアミド多孔性シートのうち、芳香族ポリアミドからなる多孔性シートを用いることが好ましい。
【0052】
ポリオレフィンからなる多孔性シートとして、ポリプロピレンを例にすると次の条件にて製造された多孔性フィルムを用いることができる。
【0053】
ポリプロピレン樹脂は下記のものを用いる。
【0054】
ポリプロピレン:住友化学(株)製ポリプロピレンWF836DG3・・・99.70質量部
添加剤:新日本理化(株)製N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカフボサミドNU−110・・・0.05質量部
酸化防止剤:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、IRGANOX1010・・・0.15質量部
熱安定剤:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、IRGAFOS168を0.10質量部
これらの混合物を二軸押出機にて供給して300℃で溶融・混練した後、ガット状に押出し、20℃の水槽にて冷却して、チップカッターで3mm長にカットした後、100℃で2時間乾燥する。
【0055】
得られたポリプロピレン樹脂を一軸押出機にて220℃で溶融・押出しし、200℃に加熱された口金から押し出し、120℃に加熱されたキャストドラムにキャストし、フィルムの非ドラム面からエアーナイフを用いて120℃に加熱された熱風を吹き付けて密着させながらシート状に成型し、未延伸シートを得る。
【0056】
得られた未延伸シートを120℃に加熱されたロール群に通して加熱し、ロールの周速差により縦方向に4倍延伸し、95℃に冷却する。引き続きこの1軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導入して135℃に加熱しながら横方向に6倍に延伸する。ついで、テンター内で横方向に5%の弛緩を与えながら150℃で熱固定をし、均一に徐冷した後、室温まで冷却して厚さ20μmの多孔性フィルムとする。
【0057】
またポリアミドからなる多孔性シートとしては、例えば次の化学式(1)及び/または(2)で表される繰り返し単位を有する芳香族ポリアミドを用いることができる。
【0058】
【化4】
【0059】
【化5】
【0060】
ここでAr、Ar、Arとしては、例えば式(3)〜(7)が挙げられ、X、Yとしては、−O−、−CH−、−CO−、−CO−、−S−、−SO−、−C(CH)−、等から選ばれる。
【0061】
【化6】
【0062】
さらに、これらの芳香環上の水素原子の一部が、フッ素や臭素、塩素等のハロゲン基(特に塩素)、ニトロ基、メチルやエチル、プロピル等のアルキル基(特にメチル基)、メトキシやエトキシ、プロポキシ等のアルコキシ基等の置換基で置換されているものが、吸湿率を低下させ湿度変化による寸法変化が小さくなるため好ましい。また、重合体を構成するアミド結合中の水素が他の置換基によって置換されていてもよい。また、芳香族ポリアミドは、上記の芳香環がパラ配向性を有しているものが、全芳香環の80モル%以上、より好ましくは90モル%以上を占めていることが好ましい。ここでいうパラ配向性とは、例えば芳香環上主鎖を構成する2価の結合手が互いに同軸または平行にあるい状態をいう。このパラ配向性が80モル%未満の場合、フィルムの剛性および耐熱性が不十分となる場合がある。さらに芳香族ポリアミドが式(8)で表される繰り返し単位を60モル%以上含有する場合、延伸性及び多孔質特性が特に優れることから好ましい。
【0063】
【化7】
【0064】
次に多孔性フィルムの作製方法について、芳香族ポリアミドを例として以下に説明するが、これに限定されるものではない。まず、芳香族ポリアミドを、例えば、酸ジクロライドとジアミンを原料として重合する場合には、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性有機極性溶媒中で溶液重合により合成する方法や、水系媒体を使用する界面重合で合成する方法等をとることができる。ポリマーの分子量を制御しやすいことから、非プロトン性有機極性溶媒中での溶液重合が好ましい。
【0065】
溶液重合の場合、分子量の高いポリマーを得るために、重合に使用する溶媒の水分率を500ppm以下(質量基準、以下同様)とすることが好ましく、200ppm以下とすることがより好ましい。使用する酸ジクロライドおよびジアミンの両者を等量用いると超高分子量のポリマーが生成することがあるため、モル比を、一方が他方の95.0〜99.5モル%になるように調整することが好ましい。また、芳香族ポリアミドの重合反応は発熱を伴うが、重合系の温度が上がると、副反応が起きて重合度が十分に上がらないことがあるため、重合中の溶液の温度を40℃以下に冷却することが好ましい。重合中の溶液の温度は30℃以下にすることがより好ましい。さらに、酸ジクロライドとジアミンを原料とする場合、重合反応に伴って塩化水素が副生するが、これを中和する場合には炭酸リチウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウムなどの無機の中和剤、あるいは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、アンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン等の有機の中和剤を使用するとよい。
【0066】
芳香族ポリアミドの多孔性フィルムを得るために、芳香族ポリアミドポリマーの対数粘度(ηinh)は、1.8〜3.5dl/gであることが好ましく、2.2〜3.0dl/gであることがより好ましい。対数粘度が1.8dl/g未満であると、ポリマー分子鎖の絡み合いによる鎖間の結合力が減少するため、靭性や強度などの機械特性の低下や、熱収縮率が大きくなることがある。対数粘度が3.5dl/gを超えると、溶媒への溶解性の低下や、芳香族ポリアミド分子が凝集し、多孔性フィルムを製膜することが困難になることがある。
【0067】
多孔性フィルムの製造に好適な製膜原液(以下、単に製膜原液ということがある。)について、芳香族ポリアミドを例として説明する。
【0068】
製膜原液には重合後のポリマー溶液をそのまま使用してもよく、あるいはポリマーを一度単離してから上述の非プロトン性有機極性溶媒や硫酸などの無機溶剤に再溶解して使用してもよい。芳香族ポリアミドを単離する方法としては、特に限定しないが、重合後の芳香族ポリアミド溶液を多量の水中に投入することで溶媒および中和塩を水中に抽出し、析出した芳香族ポリアミドのみを分離した後、乾燥させる方法などが挙げられる。また、再溶解時に溶解助剤として金属塩などを添加してもよい。金属塩としては、非プロトン性有機極性溶媒に溶解するアルカリ金属またはアルカリ土類金属のハロゲン化物が好ましく、例えば、塩化リチウム、臭化リチウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウムなどが挙げられる。
【0069】
製膜原液100質量部中の芳香族ポリアミドの含有量は、2〜25質量部が好ましく、より好ましくは5〜20質量部である。製膜原液における芳香族ポリアミドの含有量が2質量部未満であると、靭性や強度などの機械特性の低下や、熱収縮率が大きくなることがある。製膜原液における芳香族ポリアミドの含有量が25質量部を超えると、多孔性フィルムの製造の際に芳香族ポリアミドポリマー同士の凝集が起こりやすくなり、空孔率やガーレ透気度が低くなりすぎることがある。
【0070】
製膜原液には孔形成能を向上させる目的で、親水性ポリマーを混合することが好ましい。混合する親水性ポリマーは製膜原液100質量部に対して0.5〜10質量部であることが好ましく、1〜6質量部であることがより好ましい。製膜原液における親水性ポリマーの含有量が0.5質量部未満の場合、多孔性フィルムを形成する過程において、芳香族ポリアミド分子が凝集し、多孔性フィルムを製膜することが困難になることがある。含有量が10質量部を超える場合、得られる多孔性フィルムにおいて、孔構造の粗大化や強度の低下が起きることがある。また、最終的に多孔性フィルム中の親水性ポリマーの残存量が多くなり、耐熱性や剛性の低下、親水性ポリマーの電解液中への溶出などが起きることがある。
【0071】
親水性ポリマーとしては、非プロトン性有機極性溶媒に溶解するポリマーのうち、極性の置換基、特に、水酸基、アシル基およびアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の置換基を含有するポリマーであることが好ましい。このようなポリマーとして、例えば、ポリビニルピロリドン(以下、PVPと記すことがある。)、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリエチレンイミン等が挙げられる。芳香族ポリアミドとの相溶性が良いPVPを用いることが最も好ましい。PVPの重量平均分子量は、50万〜300万であることが好ましい。重量平均分子量が50万未満であると、低分子量のPVPが多孔性フィルムに残った場合、多孔性フィルムの耐熱性が低下したり、電池用セパレータとして使用した際にPVPが電解液中に溶出したりする恐れがある。重量平均分子量が300万を超えると、製膜原液の溶液粘度が高くなり過ぎることで多孔性フィルムを製膜することが困難になることがある。親水性ポリマーは重合後の芳香族ポリアミド溶液あるいは再溶解した芳香族ポリアミド溶液中に投入しても、単離した芳香族ポリアミドとともに非プロトン性有機極性溶媒中に投入して混練してもよい。
【0072】
製膜原液には、得られる多孔性フィルムの表面に突起を形成して静摩擦係数を低減し加工性を向上させる目的で、無機粒子または有機粒子を添加してもよい。
【0073】
製膜原液の溶液粘度は、B型粘度計を用いて30℃、10rpmにおいて測定される値が、100〜800Pa・sであることが好ましい。より好ましくは200〜600Pa・sである。溶液粘度が100Pa・s未満であると、靭性や強度などの機械特性がの低下や、熱収縮率が大きくなることがある。溶液粘度が800Pa・sを超えると、多孔性フィルムを製膜することが困難になることがある。
【0074】
上記のようにして調製された製膜原液を用いて、いわゆる溶液製膜法により、多孔性フィルムの製造が行われる。溶液製膜による多孔性フィルムの製造の方法として、代表的には湿式法、析出法などが挙げられるが、凝固浴を用いる湿式法では、形成される孔の粗大化や厚み方向の孔形状の不均一化が起きやすかったり、孔間に隔壁が生じやすい場合がある。そのため、本発明に用いる多孔性フィルムを得るには、孔構造を微細かつ均一に制御しやすい析出法で製膜することが好ましい。
【0075】
析出法による多孔性フィルムの製造を行う場合、まず、製膜原液を口金やダイコーターを用いて、支持体上にキャスト(流延)し、製膜原液のキャスト膜を得た後、ポリマーを析出させて多孔性フィルムを得る。支持体の素材は、特に限定しないが、ステンレス、ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂などが挙げられる。キャスト膜からポリマーを析出させる方法として、調温調湿雰囲気下でキャスト膜を吸湿させてポリマーを析出させる方法、キャスト膜を冷却することによりポリマーの溶解性を低下させて相分離または析出させる方法、キャスト膜に霧状の水を吹き付けてポリマーを析出させる方法などが挙げられる。冷却する方法ではポリマーの析出までに時間を要し、孔形状の不均一化が起きやすかったり、生産性が低下することがある。一方、霧状の水を吹き付ける方法では、表面に緻密な層が形成されることがある。これらのことから、調温調湿雰囲気下でキャスト膜に吸湿させる方法が、水の供給速度および量を任意に制御可能で、均質な多孔質構造を短時間で形成させることができることから好ましい。
【0076】
本発明に用いる多孔性フィルムの製造工程において、調温調湿雰囲気の容積絶対湿度は10〜180g/mとすることが好ましい。より好ましくは30〜100g/m、さらに好ましくは40〜90g/mである。また、この絶対湿度を満たす範囲内で、雰囲気の温度は20〜70℃、相対湿度は60〜95%RHとすることが好ましい。より好ましくは、雰囲気の温度は30〜60℃、相対湿度は70〜90%RHである。調温調湿雰囲気下での処理時間は0.5〜5分とすることが好ましく、0.5〜3分とすることがより好ましい。
【0077】
次に、析出させた芳香族ポリアミドのシートを、支持体ごとあるいは支持体から剥離して湿式浴に導入し、溶媒、取り込まれなかった親水性ポリマー、および無機塩等の添加剤の除去を行う。浴組成は特に限定されないが、水、あるいは有機溶媒/水の混合系を用いることが、経済性および取扱いの容易さから好ましい。また、湿式浴中には無機塩が含まれていてもよい。湿式浴温度は、溶媒等を効率的に除去できることから、20℃以上であることが好ましい。浴温度の上限は特に定めることはないが、水の蒸発や沸騰による気泡の発生の影響を考えると、90℃までに抑えることが効率的である。導入時間は、1〜20分にすることが好ましい。さらに、湿式浴中でシートの長手方向(MD)および幅方向(TD)に延伸を施してもよい。
【0078】
次に、脱溶媒を終えたシートに、テンターなどを用いて熱処理を施す。この時、含水状態のシートから水分を乾燥させる前に、シートの長手方向(MD)および幅方向(TD)への延伸を完了させた後、芳香族ポリアミドのガラス転移温度を上回る温度で熱処理を施すことが好ましい。
【0079】
延伸を施すことで、多孔性フィルムの孔形状が面方向に偏平形になり、厚み方向の圧縮に対しての変形弾性率が向上する。さらに、多孔性フィルムの孔経路が面内方向に広がり、液吸い上げ性が向上するため、電池用セパレータとして用いた際に液枯れなどによる電池出力やサイクル特性の低下を抑制できる。
【0080】
本発明のリチウムイオン電池の形態としては、コイン電池、ラミネート電池、円筒型電池、角型電池等の形態が挙げられる。電池の大容量化や複数の電池をつないだモジュール化するためにはラミネート電池、円筒型電池、角型電池が特に好ましい。ラミネート電池、円筒型電池、角型電池の場合、正極シート、セパレータ、負極シートの順に重ね合わせ、渦巻状に捲回した後それぞれの電池ケースに充填し、正極及び負極のリード体の溶接を行った後、電解液を電池ケース内に注入し、電池ケースの開口部を封口して完成する。ラミネート型や角型の場合は渦巻状に捲回せず、重ね合わせた状態で封口しても構わない。
【0081】
本発明のリチウムイオン電池は高温・高電圧下においても優れた電池特性を発現することができる。従って、本発明のリチウムイオン電池は、小型の電子機器を始め、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)などの交通手段、産業用クレーンなどの大型の産業機器の動力源として好適に用いることができる。また、太陽電池、風力発電装置などにおける電力の平準化やスマートグリッドのための蓄電装置としても好適に用いることができる。
【実施例】
【0082】
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
(電池部材の作製)
正極シートは、正極活物質としてリン酸鉄リチウム(LiFePO)100質量部、正極導電助剤としてアセチレンブラック5質量部、正極結着剤として芳香族ポリアミド樹脂5質量部を、プラネタリーミキサーを用いてN−メチル−2−ピロリドン中に分散させた正極スラリーを、アルミ箔上に塗布、乾燥、圧延して作製した。
【0083】
負極シートは、負極活物質として天然黒鉛100質量部、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを1質量部、負極結着剤としてスチレン−ブタジエン共重合体1質量部を、プラネタリーミキサーを用いて水中に分散させた負極スラリーを、銅箔上に塗布、乾燥、圧延して作製した。
【0084】
電解液はエチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート=3:7(体積比)の混合溶媒に、溶質としてLiPFを1モル/Lとなるように溶解させた溶液に、添加剤としてビニレンカーボネートを2質量部添加した電解液を作製した。
【0085】
セパレータは東レバッテリーセパレーターフィルム製のポリエチレン樹脂からなる多孔性フィルムF20BHEを用いた。
【0086】
(ラミネート型電池の作製)
上記のように作製した正極シートを5cm×4cmに切り出した。このうち、一辺4cm×1cmはタブを接続するための未塗布部であって、正極塗布部は4cm×4cmである。幅5mm、長さ3cm、厚み0.1mmのアルミ製の正極タブを正極未塗布部に長さ1cmで超音波溶接した。
【0087】
上記のように作製した負極シートを5.5cm×4.5cmに切り出した。このうち、一辺4.5cm×1cmはタブを接続するための未塗工部であって、負極塗布部は4.5cm×4.5cmである。タブと同サイズの銅製の負極タブを負極未塗布部に超音波溶接した。セパレータは6cm×6cmに切り出し、セパレータの両面に上記負極と正極を塗布部がセパレータを隔てて重ね、正極塗布部が全て負極塗布部と対向するように配置して電極群を得た。1枚の14cm×10cmのアルミラミネートフィルムに上記正極・負極・セパレータを挟み込み、アルミラミネートフィルムの長辺を折り、アルミラミネートフィルムの長辺2辺を熱融着し、袋状とした。ここに電解液1.5gを注入し、減圧含浸させながらアルミラミネートフィルムの短辺部を熱融着させてラミネート型電池とした。
【0088】
各試験項目毎にラミネート電池を5個作製し、各試験結果が最大、最小となる点を除去した3個の電池の平均値を試験値とした。
【0089】
(開回路電圧測定)
開回路電圧は(株)カスタム社製のデジタルテスターCDM−17Dを用い、正負極間の電池電圧を測定した。電池を25℃±5℃雰囲気下以外の雰囲気下に設置した場合は、25℃±5℃雰囲気下で2時間以上12時間未満放置し、電池温度が一定となった後に開回路電圧を測定した。
【0090】
(寿命特性)
寿命特性を下記手順にて試験を行い、寿命容量維持率にて評価した。
【0091】
〈1〜100サイクル目〉
充電、放電を1サイクルとし、下記条件を100回繰返し行った。
【0092】
充電:25℃、25mAの定電流充電で4.2Vまで充電し、充電容量を得た。
【0093】
放電:25℃、25mAの定電流放電で3.0Vまで放電し、放電容量を得た。
【0094】
〈寿命容量維持率の算出〉
(100サイクル目の放電容量)/(1サイクル目の放電容量)×100を放電容量維持率とした。放電容量維持率が60%未満を×、60%以上80%未満を○、80%以上の場合を◎とした。
【0095】
(保存特性)
保存特性を下記手順にて試験を行い、保存容量維持率にて評価した。
【0096】
〈1サイクル目〉
充電、放電の順に下記条件にて行った。
【0097】
充電:25℃、30mAの定電流充電で4.2Vまで充電し、充電容量を得た。
【0098】
放電:25℃、30mAの定電流放電で3.0Vまで放電し、放電容量を得た。
【0099】
〈2サイクル目〉
下記条件にて充電のみを行った。
【0100】
充電:25℃、30mAの定電流充電で4.2Vまで充電し、充電容量を得た。
【0101】
〈保存条件〉
2サイクル目にて4.2Vまで充電した電池を60℃雰囲気下に28日保存した。
【0102】
〈3サイクル目〉
60℃雰囲気下から25℃±5℃雰囲気下へと電池を移し、2時間以上12時間未満放置し、電池温度が一定となった後に下記条件にて放電のみを行った。
【0103】
放電:25℃、30mAの定電流放電で3.0Vまで放電し、放電容量を得た。
【0104】
〈保存容量維持率の算出〉
(3サイクル目の放電容量)/(1サイクル目の放電容量)=容量維持率とした。
【0105】
容量維持率が60%未満を×とし、60%以上80%未満を○、80%以上を◎とした。
【0106】
(耐熱特性)
耐熱特性を下記手順にて評価した。
【0107】
〈1サイクル目〉
充電、放電の順に下記条件にて行った。
【0108】
充電:25℃、25mAの定電流充電で4.2Vまで充電し、充電容量を得た。
【0109】
放電:25℃、25mAの定電流放電で3.0Vまで放電し、放電容量を得た。
【0110】
〈2サイクル目〉
下記条件にて充電のみを行った。
【0111】
充電:25℃、25mAの定電流充電で4.2Vまで充電した。充電終了から2時間以上12時間以上放置した後に開回路電圧を測定した。
【0112】
〈保存試験〉
2サイクル目にて4.2Vまで充電した電池を100℃雰囲気下に3時間保存し、25℃±5℃へ移して2時間以上12時間未満放置した後に開回路電圧を測定した。
【0113】
次に150℃雰囲気下にて3時間保存し、25℃±5℃へ移して2時間以上12時間未満放置した後に開回路電圧を測定した。
【0114】
最後に200℃雰囲気下にて3時間保存し、25℃±5℃へ移して2時間以上12時間未満放置した後に開回路電圧を測定した。
【0115】
各温度雰囲気下で保存した電池の開回路電圧が2.7V未満のものを×、2.7V以上のものを○とし、200℃雰囲気下で2.7V以上のものを高温安定性が(A)、200℃雰囲気下で2.7V未満、かつ150℃雰囲気下で2.7V以上のものを(B)、150℃雰囲気下で2.7V未満、かつ100℃雰囲気下で2.7V以上のものを(C)、100℃雰囲気下で2.7V以下となるものを(D)として高温安定性の評価を行った。100℃、150℃、200℃の順に試験を行い、×の評価結果が出た試験温度より高温では試験を行わなかった。
【0116】
(実施例1)
正極活物質、正極結着剤、及びセパレータの構成について表1に示す。正極活物質としてLiFePO4を100質量部、導電助剤としてアセチレンブラックを5質量部、結着剤として下記手順で作製した芳香族ポリアミド樹脂を5質量部からなる正極シートを作製した。
【0117】
芳香族ポリアミド樹脂は脱水したN−メチル−2−ピロリドンに80モル%に相当する2−クロルメタフェニレンジアミンと20モル%に相当する4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとを溶解させ、これに98.5モル%に相当する2−クロルイソフタル酸クロリドを添加し、2時間攪拌により重合後、炭酸リチウムで中和を行い、ポリマー濃度が11質量部の芳香族ポリアミド溶液を得た。この溶液を水で再沈してポリマーを取り出し、芳香族ポリアミド樹脂を得た。
【0118】
負極活物質として天然黒鉛100質量部、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを1質量部、負極結着剤としてスチレン−ブタジエン共重合体1質量部からなる負極シートを作製した。
【0119】
電解液はエチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート=3:7(体積比)の混合溶媒に、溶質としてLiPFを1モル/リットルとなるように溶解させ、添加剤としてビニレンカーボネートを2質量部添加した電解液を作製した。
【0120】
セパレータは東レバッテリーセパレーターフィルム製F20BHEを用い、ラミネート型電池を作製した。
【0121】
作製した電池評価結果を表2に示す。寿命容量維持率は64%で寿命特性は△、保存容量維持率は66%で保存特性は○であった。耐熱特性は100℃保存後の開回路電圧は3.9V、150℃保存後の開回路電圧は0.8Vであり、評価は△であった。
【0122】
(実施例2)
正極活物質、正極結着剤、及びセパレータの構成について表1に示す。実施例1において、2−クロルイソフタル酸クロリドの代わりに2−クロルテレフタル酸クロリドを用いたこと以外は同様とした。
【0123】
これを用いて作製した電池の評価結果を表2に示す。寿命容量維持率は72%で寿命特性は○、保存容量維持率は81%で保存特性は◎であった。耐熱特性は100℃保存後の開回路電圧は3.9V、150℃保存後の開回路電圧は0.8Vであり、評価は△であった。
【0124】
(実施例3)
正極活物質、正極結着剤、及びセパレータの構成について表1に示す。実施例2において、2−クロルテレフタル酸クロリドを101.5モル%に相当する量を添加したこと以外は同様とした。
【0125】
これを用いて作製した電池の評価結果を表2に示す。寿命容量維持率は78%で寿命特性は○、保存容量維持率は83%で保存特性は◎であった。耐熱特性は100℃保存後の開回路電圧は3.9V、150℃保存後の開回路電圧は0.8Vであり、評価は△であった。
【0126】
(実施例4)
正極活物質、正極結着剤、及びセパレータの構成について表1に示す。実施例2において、下記方法にて作製したポリプロピレン製多孔性シートを用いた以外は同様とした。
【0127】
ポリプロピレン樹脂は下記のものを用いた。
【0128】
ポリプロピレン:住友化学(株)製ポリプロピレンWF836DG3・・・99.70質量部
添加剤:新日本理化(株)製N,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカフボサミドNU−110・・・0.05質量部
酸化防止剤:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、IRGANOX1010・・・0.15質量部
熱安定剤:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、IRGAFOS168を0.10質量部
これを二軸押出機にて供給して300℃で溶融・混練した後、ガット状に押出し、20℃の水槽にて冷却して、チップカッターで3mm長にカットした後、100℃で2時間乾燥した。
【0129】
得られたポリプロピレン樹脂を一軸押出機にて220℃で溶融・押出しし、200℃に加熱された口金から押し出し、120℃に加熱されたキャストドラムにキャストし、フィルムの非ドラム面からエアーナイフを用いて120℃に加熱された熱風を吹き付けて密着させながらシート状に成型し、未延伸シートを得た。
【0130】
得られた未延伸シートを120℃に加熱されたロール群に通して加熱し、ロールの周速差により縦方向に4倍延伸し、95℃に冷却した。引き続きこの1軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導入して135℃に加熱しながら横方向に6倍に延伸した。ついで、テンター内で横方向に5%の弛緩を与えながら150℃で熱固定をし、均一に徐冷した後、室温まで冷却して厚さ20μmの多孔性フィルムを得た。
【0131】
これを用いて作製した電池の評価結果を表2に示す。寿命容量維持率は74%で寿命特性は○、保存容量維持率は84%で保存特性は◎であった。耐熱特性は100℃保存後の開回路電圧は4.0V、150℃保存後の開回路電圧は3.7V、200℃保存後の開回路電圧は0.6Vであり、評価は○であった。
【0132】
(実施例5)
正極活物質、正極結着剤、及びセパレータの構成について表1に示す。実施例1において下記方法にて作製した芳香族ポリアミド製多孔性シートを用いた以外は同様とした。
【0133】
芳香族ポリアミド多孔性シートの作製方法を下記に記す
脱水したN−メチル−2−ピロリドンに80モル%に相当する2−クロルパラフェニレンジアミンと20モル%に相当する4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとを溶解させ、これに98.5モル%に相当する2−クロルテレフタル酸クロリドを添加し、2時間攪拌により重合後、炭酸リチウムで中和を行い、ポリマー濃度が11質量部の芳香族ポリアミド溶液を得た。この溶液を水で再沈してポリマーを取り出した。
【0134】
このポリマーを2質量部、N−メチル−2−ピロリドン70質量部、ポリエチレングリコール(平均分子量200)28質量部となるように量り取り、ポリマーをN−メチル−2−ピロリドンに溶解させた後ポリエチレングリコールを加え、均一に完全相溶したポリマー溶液を得た。
【0135】
このポリマー溶液を、バーコーターを用いてガラス板上に約100μmの膜状に形成し、20℃、相対湿度80%に調整されたオーブン中に1時間静置し、析出を行い多孔質フィルムとした。この多孔質フィルムをガラス板上から剥離し、50℃の水浴にて1時間、溶媒と不純物の抽出を行った。その後アルミ製の枠に固定し、3時間風乾後、320℃にて1分間の熱処理を行い、多孔性フィルムを得た。
【0136】
これを用いて作製した電池の評価結果を表2に示す。寿命容量維持率は66%で寿命特性は△、保存容量維持率は69%で保存特性は○であった。耐熱特性は100℃保存後の開回路電圧は4.1V、150℃保存後の開回路電圧は4.0V、200℃保存後の開回路電圧は3.7Vであり、評価は◎であった。
【0137】
(実施例6)
正極活物質、正極結着剤、及びセパレータの構成について表1に示す。実施例2において、実施例5のセパレータを用いたこと以外は同様とした。
【0138】
これを用いて作製した電池の評価結果を表2に示す。寿命容量維持率は76%で寿命特性は○、保存容量維持率は82%で保存特性は◎であった。耐熱特性は100℃保存後の開回路電圧は4.1V、150℃保存後の開回路電圧は4.0V、200℃保存後の開回路電圧は3.7Vであり、評価は◎であった。
【0139】
(実施例7)
正極活物質、正極結着剤、及びセパレータの構成について表1に示す。実施例4において、芳香族ポリアミド樹脂を3質量部とした以外は同様とした。
【0140】
これを用いて作製した電池の評価結果を表2に示す。寿命容量維持率は81%で寿命特性は◎、保存容量維持率は85%で保存特性は◎であった。耐熱特性は100℃保存後の開回路電圧は4.0V、150℃保存後の開回路電圧は3.7V、200℃保存後の開回路電圧は0.6Vであり、評価は○であった。
【0141】
(実施例8)
正極活物質、正極結着剤、及びセパレータの構成について表1に示す。実施例6において、芳香族ポリアミド樹脂を3質量部とした以外は同様とした。
【0142】
これを用いて作製した電池の評価結果を表2に示す。寿命容量維持率は86%で寿命特性は◎、保存容量維持率は83%で保存特性は◎であった。耐熱特性は100℃保存後の開回路電圧は4.1V、150℃保存後の開回路電圧は4.0V、200℃保存後の開回路電圧は3.7Vであり、評価は◎であった。
【0143】
(実施例9)
正極活物質、正極結着剤、及びセパレータの構成について表1に示す。実施例6において、芳香族ポリアミド樹脂を1.5質量部とした以外は同様とした。
【0144】
これを用いて作製した電池の評価結果を表2に示す。寿命容量維持率は88%で寿命特性は◎、保存容量維持率は88%で保存特性は◎であった。耐熱特性は100℃保存後の開回路電圧は4.1V、150℃保存後の開回路電圧は4.0V、200℃保存後の開回路電圧は3.7Vであり、評価は◎であった。
【0145】
(実施例10)
正極活物質、正極結着剤、及びセパレータの構成について表1に示す。実施例7において、正極活物質にLiMnPO4を用いた以外は同様とした。
【0146】
これを用いて作製した電池の評価結果を表2に示す。寿命容量維持率は85%で寿命特性は◎、保存容量維持率は83%で保存特性は◎であった。耐熱特性は100℃保存後の開回路電圧は4.0V、150℃保存後の開回路電圧は3.7V、200℃保存後の開回路電圧は0.6Vであり、評価は○であった。
【0147】
(実施例11)
正極活物質、正極結着剤、及びセパレータの構成について表1に示す。実施例7において、正極活物質にLi(Mn0.85Fe0.15)PO4を用いた以外は同様とした。
【0148】
これを用いて作製した電池の評価結果を表2に示す。寿命容量維持率は83%で寿命特性は◎、保存容量維持率は81%で保存特性は◎であった。耐熱特性は100℃保存後の開回路電圧は4.0V、150℃保存後の開回路電圧は3.7V、200℃保存後の開回路電圧は0.6Vであり、評価は○であった。
【0149】
(実施例12)
正極活物質、正極結着剤、及びセパレータの構成について表1に示す。実施例7において、正極活物質にLi3V2(PO4)3を用いた以外は同様とした。
【0150】
これを用いて作製した電池の評価結果を表2に示す。寿命容量維持率は81%で寿命特性は◎、保存容量維持率は84%で保存特性は◎であった。耐熱特性は100℃保存後の開回路電圧は4.0V、150℃保存後の開回路電圧は3.7V、200℃保存後の開回路電圧は0.6Vであり、評価は○であった。
【0151】
(実施例13)
正極活物質、正極結着剤、及びセパレータの構成について表1に示す。実施例7において、正極活物質にLiFeBO3を用いた以外は同様とした。
【0152】
これを用いて作製した電池の評価結果を表2に示す。寿命容量維持率は82%で寿命特性は◎、保存容量維持率は86%で保存特性は◎であった。耐熱特性は100℃保存後の開回路電圧は4.0V、150℃保存後の開回路電圧は3.7V、200℃保存後の開回路電圧は0.6Vであり、評価は○であった。
【0153】
(実施例14)
正極活物質、正極結着剤、及びセパレータの構成について表1に示す。実施例8において、正極活物質にLiMnPO4を用いた以外は同様とした。
【0154】
これを用いて作製した電池の評価結果を表2に示す。寿命容量維持率は80%で寿命特性は◎、保存容量維持率は82%で保存特性は◎であった。耐熱特性は100℃保存後の開回路電圧は4.1V、150℃保存後の開回路電圧は4.0V、200℃保存後の開回路電圧は3.7Vであり、評価は◎であった。
【0155】
(実施例15)
正極活物質、正極結着剤、及びセパレータの構成について表1に示す。実施例8において、正極活物質にLi3V2(PO4)3を用いた以外は同様とした。
【0156】
これを用いて作製した電池の評価結果を表2に示す。寿命容量維持率は84%で寿命特性は◎、保存容量維持率は86%で保存特性は◎であった。耐熱特性は100℃保存後の開回路電圧は4.1V、150℃保存後の開回路電圧は4.0V、200℃保存後の開回路電圧は3.7Vであり、評価は◎であった。
【0157】
(比較例1)
正極活物質、正極結着剤、及びセパレータの構成について表1に示す。実施例1において正極活物質をLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2、正極結着剤をポリフッ化ビニリデンとしたこと以外は同様とした。
【0158】
これを用いて作製した電池の評価結果を表2に示す。寿命容量維持率は56%で寿命特性は×、保存容量維持率は48%で保存特性は×であり、電池特性の劣る結果であった。また、耐熱特性は100℃保存後の開回路電圧は3.9V、150℃保存後の開回路電圧は0.8Vであり、評価は△であった。
【0159】
(比較例2)
正極活物質、正極結着剤、及びセパレータの構成について表1に示す。実施例1において正極結着剤をポリフッ化ビニリデンとしたこと以外は同様とした。
【0160】
これを用いて作製した電池の評価結果を表2に示す。寿命容量維持率は48%で寿命特性は×、保存容量維持率は55%で保存特性は×であり、電池特性の劣る結果であった。また、耐熱特性は100℃保存後の開回路電圧は3.9V、150℃保存後の開回路電圧は0.8Vであり、評価は△であった。
【0161】
(比較例3)
正極活物質、正極結着剤、及びセパレータの構成について表1に示す。実施例1において正極活物質をLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2としたこと以外は同様とした。
【0162】
これを用いて作製した電池の評価結果を表2に示す。本例で用いた正極活物質のLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2は1相の結晶構造を有し、相転移による体積変化が起こらないため、寿命容量維持率は54%で寿命特性は×、保存容量維持率は62%で保存特性は○であり、寿命特性の劣る結果であった。また、耐熱特性は100℃保存後の開回路電圧は3.9V、150℃保存後の開回路電圧は0.8Vであり、評価は△であった。
【0163】
【表1】
【0164】
【表2】