特許第6273795号(P6273795)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6273795正帯電用乾式トナー、現像剤、現像剤カートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置および画像形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6273795
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】正帯電用乾式トナー、現像剤、現像剤カートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置および画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20180129BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
   G03G9/08 351
   G03G9/08 371
【請求項の数】6
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2013-243982(P2013-243982)
(22)【出願日】2013年11月26日
(65)【公開番号】特開2015-102738(P2015-102738A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大木 正啓
(72)【発明者】
【氏名】今井 彰
(72)【発明者】
【氏名】堀場 幸治
(72)【発明者】
【氏名】小林 孝子
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 義弘
(72)【発明者】
【氏名】吉野 大典
(72)【発明者】
【氏名】守屋 博之
【審査官】 廣田 健介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−122787(JP,A)
【文献】 特開2010−026236(JP,A)
【文献】 特開2007−094041(JP,A)
【文献】 特開平07−134444(JP,A)
【文献】 特開平02−006964(JP,A)
【文献】 特開昭63−180966(JP,A)
【文献】 特開昭63−301964(JP,A)
【文献】 特開昭63−304002(JP,A)
【文献】 特開2010−181595(JP,A)
【文献】 特開2013−174687(JP,A)
【文献】 特開2013−178315(JP,A)
【文献】 特開2009−244494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00−9/113;9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも結着樹脂と着色剤とを含み、
トナー粒子表面がポリアリルアミン類により表面改質されており、
前記ポリアリルアミン類が、下記式(1)で示されるポリアリルアミン、式(2)で示されるポリアリルアミン、式(3)で示されるポリアリルアミンおよび式(4)で示されるポリアリルアミンのうち少なくとも1つであり、
前記ポリアリルアミン類の重量平均分子量が1,000以上25,000以下の範囲であることを特徴とする正帯電用乾式トナー。
【化1】
(1)
(式(1)において、mは、2以上500以下の整数である。)
【化2】
(2)
(式(2)において、RおよびRは、それぞれ独立して水素原子または炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基を示し、RおよびRのうち少なくとも1つは炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基であり、m,nは、それぞれ独立して1以上20以下の整数である。lは、2以上20以下の整数である。)
【化3】
(3)
(式(3)において、m,nは、それぞれ独立して1以上100以下の整数である。lは、2以上200以下の整数である。)
【化4】
(4)
(式(4)において、m,nは、それぞれ独立して1以上100以下の整数である。lは、2以上200以下の整数である。)
【請求項2】
請求項1に記載の正帯電用乾式トナーを含むことを特徴とする現像剤。
【請求項3】
請求項に記載の現像剤が収容されていることを特徴とする、現像剤カートリッジ。
【請求項4】
請求項に記載の現像剤が収容されていることを特徴とする、プロセスカートリッジ。
【請求項5】
像保持体と、
前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
前記像保持体の表面に形成された前記潜像を、請求項に記載の現像剤により現像して、トナー像を形成する現像手段と、
前記像保持体の表面に形成された前記トナー像を被転写体に転写する転写手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成工程と、
前記像保持体の表面に形成された前記潜像を、請求項に記載の現像剤により現像して、トナー像を形成する現像工程と、
前記像保持体の表面に形成された前記トナー像を被転写体に転写する転写工程と、
を含むことを特徴とする画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正帯電用乾式トナー、現像剤、現像剤カートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置および画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法など静電荷像を経て画像情報を可視化する方法は、現在様々な分野で利用されている。電子写真法においては、帯電、露光工程により像保持体上に潜像(静電潜像)を形成し(潜像形成工程)、静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」と呼ぶ場合がある。)を含む静電荷像現像用現像剤(以下、単に「現像剤」と呼ぶ場合がある。)で静電潜像を現像し(現像工程)、転写工程、定着工程を経て可視化される。乾式現像方式で用いられる現像剤には、トナーとキャリアからなる2成分現像剤と、磁性トナーまたは非磁性トナーを単独で用いる1成分現像剤とがある。
【0003】
正帯電用乾式トナーとしては、例えば、特許文献1には、金属キレート化されたバインダー樹脂(A)と、着色剤(B)と、荷電調整剤(C)とを必須成分としてなる粉体と、流動性付与剤(D)粉末とを含有し、流動性付与剤(D)がアミノ基を有するシランカップリング剤により表面処理された易正帯電性シリカである静電荷像現像用正帯電トナーが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、着色剤としてのカーボンブラックと結着樹脂とを含むトナー母粒子をポリアルキレンイミンで表面改質した、正帯電用の黒色トナーが記載されている。
【0005】
一方、特許文献3には、結着樹脂と着色剤とを混練する際に、ポリアリルアミン化合物の塩酸塩等の塩を混合する光定着用のトナーが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平08−262788号公報
【特許文献2】特許第5115379号公報
【特許文献3】特許第4961963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、正帯電性に優れる正帯電用乾式トナー、現像剤、その現像剤を含む現像剤カートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置および画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、少なくとも結着樹脂と着色剤とを含み、トナー粒子表面がポリアリルアミン類により表面改質されており、前記ポリアリルアミン類が、下記式(1)で示されるポリアリルアミン、式(2)で示されるポリアリルアミン、式(3)で示されるポリアリルアミンおよび式(4)で示されるポリアリルアミンのうち少なくとも1つであり、前記ポリアリルアミン類の重量平均分子量が1,000以上25,000以下の範囲である正帯電用乾式トナーである。
【0009】
【化1】
(1)
(式(1)において、mは、2以上500以下の整数である。)
【化2】
(2)
(式(2)において、RおよびRは、それぞれ独立して水素原子または炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基を示し、およびRのうち少なくとも1つは炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基であり、m,nは、それぞれ独立して1以上20以下の整数である。lは、2以上20以下の整数である。)
【化3】
(3)
(式(3)において、m,nは、それぞれ独立して1以上100以下の整数である。lは、2以上200以下の整数である。)
【化4】
(4)
(式(4)において、m,nは、それぞれ独立して1以上100以下の整数である。lは、2以上200以下の整数である。)
【0011】
請求項に係る発明は、請求項1に記載の正帯電用乾式トナーを含む現像剤である。
【0012】
請求項に係る発明は、請求項に記載の現像剤が収容されている、現像剤カートリッジである。
【0013】
請求項に係る発明は、請求項に記載の現像剤が収容されている、プロセスカートリッジである。
【0014】
請求項に係る発明は、像保持体と、前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、前記像保持体の表面に形成された前記潜像を、請求項に記載の現像剤により現像して、トナー像を形成する現像手段と、前記像保持体の表面に形成された前記トナー像を被転写体に転写する転写手段と、を備える画像形成装置である。
【0015】
請求項に係る発明は、像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成工程と、前記像保持体の表面に形成された前記潜像を、請求項に記載の現像剤により現像して、トナー像を形成する現像工程と、前記像保持体の表面に形成された前記トナー像を被転写体に転写する転写工程と、を含む画像形成方法である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によると、トナー粒子表面がポリアリルアミン類により表面改質されていない場合と比較して、正帯電性に優れる正帯電用乾式トナーが提供される。
【0017】
請求項に係る発明によると、前記ポリアリルアミン類が、上記式(1)で示されるポリアリルアミン、式(2)で示されるポリアリルアミン、式(3)で示されるポリアリルアミンおよび式(4)で示されるポリアリルアミンのうち少なくとも1つではない場合と比較して、正帯電性に優れる正帯電用乾式トナーが提供される。
【0018】
請求項に係る発明によると、前記ポリアリルアミン類の重量平均分子量が1,000以上25,000以下の範囲ではない場合と比較して、正帯電性に優れる正帯電用乾式トナーが提供される。
【0019】
請求項に係る発明によると、トナー粒子表面がポリアリルアミン類により表面改質されていない場合と比較して、正帯電性に優れる現像剤が提供される。
【0020】
請求項に係る発明によると、トナー粒子表面がポリアリルアミン類により表面改質されていない場合と比較して、正帯電性に優れる現像剤が収容されている現像剤カートリッジが提供される。
【0021】
請求項に係る発明によると、トナー粒子表面がポリアリルアミン類により表面改質されていない場合と比較して、正帯電性に優れる現像剤が収容されているプロセスカートリッジが提供される。
【0022】
請求項に係る発明によると、トナー粒子表面がポリアリルアミン類により表面改質されていない場合と比較して、正帯電性に優れる現像剤を用いる画像形成装置が提供される。
【0023】
請求項に係る発明によると、トナー粒子表面がポリアリルアミン類により表面改質されていない場合と比較して、正帯電性に優れる現像剤を用いる画像形成方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0026】
<正帯電用乾式トナー>
本発明の実施形態に係る正帯電用乾式トナーは、少なくとも結着樹脂と着色剤とを含み、トナー粒子表面がポリアリルアミン類により表面改質されているものである。正帯電用乾式トナーは、必要に応じて、離型剤等のその他成分を含んでもよい。
【0027】
乾式トナーで使用される一般的な結着樹脂は、ポリエステル樹脂やスチレン/アクリル樹脂であるが、特に定着性や発色性が良好なポリエステル樹脂は負帯電性を帯びやすい傾向にある。正帯電用の帯電制御剤として市販されているものは、ニグロシン染料、例えば「ボントロンN−01」、「ボントロンN−04」、「ボントロンN−07」(以上、オリエント化学工業社製)、「CHUO CCA−3」(中央合成社製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料;4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP−51」(オリエント化学工業社製)、「TP−415」(保土谷化学工業社製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPYCHARGEPXVP435」(ヘキスト社製)等が挙げられるが、カラーに適用可能な荷電制御剤は無色な4級アンモニウム塩化合物だけであり、その他は着色しているためブラックにしか適用できない。このように、正帯電用の帯電制御剤の種類は非常に少なく、その効果としても限定的である。また、特に、カーボンブラックは負帯電になりやすいため、着色剤としてカーボンブラックを含む黒色トナーでは十分な正帯電性が得られにくい。従来は、トナーに帯電制御剤を外添したり、溶融混練時に添加しているため、帯電制御剤がトナー粒子表面から脱離したり、トナー粒子に埋め込まれてしまうことが多く、トナー粒子表層の帯電制御剤の配置を制御することは容易ではなかった。帯電制御剤がトナー粒子表面から脱離したり、トナー粒子に埋め込まれてしまうと、帯電安定性に欠け、特に、現像器内にトナーが長時間滞留した状態で新しいトナーが補給された場合にかぶり等の画像欠陥を生じやすい。
【0028】
本実施形態に係る正帯電用乾式トナーは、トナー粒子表面がポリアリルアミン類により表面改質されているため、正帯電性に優れる。本実施形態に係る正帯電用乾式トナーでは、酸性のトナー粒子表面にアルカリ性のポリアリルアミンが酸塩基反応により化学吸着していると考えられる。トナー粒子の表面に正帯電性が良好なポリアリルアミン類が強固に化学吸着しているため、脱離する可能性は極めて低く、安定した正帯電性が得られると考えられる。また、トナー粒子表面にポリアリルアミン類が略均一にコーティングされることにより、結着樹脂や着色剤が持っている帯電の影響を受けにくくなると考えられる。つまり、ポリアリルアミン類と樹脂を単純に混合したり、現像剤化する際にポリアリルアミン類を添加する等の方法では本実施形態のような効果は得られず、あくまでも水中でトナー粒子表面にポリアリルアミン類を化学吸着させる工程を経て初めて所望の正帯電性が得られるのである。
【0029】
ポリアリルアミン類はカチオン性が高い物質であり、この材料がトナー粒子の表層に存在すると、正帯電性を帯びやすい窒素基が帯電制御剤として機能することからトナー粒子が正帯電化しやすくなると考えられる。
【0030】
ポリアリルアミン類としては、下記式(1)で示されるポリアリルアミン、式(2)で示されるポリアリルアミン、式(3)で示されるポリアリルアミンおよび式(4)で示されるポリアリルアミン等が挙げられる。
【0031】
【化5】

(1)
(式(1)において、mは、2以上500以下の整数であり、25以上450以下の整数が好ましい。)
【0032】
【化6】

(2)
(式(2)において、RおよびRは、それぞれ独立して水素原子または炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基を示し、m,nは、それぞれ独立して1以上20以下の整数であり、1以上10以下の整数が好ましい。lは、2以上20以下の整数であり、2以上10以下の整数が好ましい。)
【0033】
およびRは、水素原子または炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基であり、炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基が好ましい。炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、直鎖または分岐のプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等が挙げられ、メチル基が好ましい。
【0034】
【化7】

(3)
(式(3)において、m,nは、それぞれ独立して1以上100以下の整数であり、1以上50以下の整数が好ましい。lは、2以上200以下の整数であり、2以上100以下の整数が好ましい。)
【0035】
【化8】

(4)
(式(4)において、m,nは、それぞれ独立して1以上100以下の整数であり、1以上50以下の整数が好ましい。lは、2以上200以下の整数であり、2以上100以下の整数が好ましい。)
【0036】
トナー粒子に対するポリアリルアミン類の量は、例えば、トナー粒子100質量部に対して0.1質量部以上、3質量部以下の範囲であることが好ましく、0.2質量部以上2質量部以下の範囲であることがより好ましい。トナー粒子に対するポリアリルアミン類の量がトナー粒子100質量部に対して0.1質量部未満であると、正帯電性に劣る場合があり、3質量部を超えると、高温高湿環境下で帯電性が悪化し、低温低湿環境下で帯電量が多くなりすぎる場合がある。
【0037】
ポリアリルアミン類の重量平均分子量は、1,000以上25,000以下の範囲であることが好ましく、3,000以上15,000以下の範囲であることがより好ましい。ポリアリルアミン類の重量平均分子量が1,000未満であると、正帯電性が弱く、目的とする現像性が得られない場合があり、25,000を超えると、正帯電性が強過ぎて転写性が悪化する場合がある。また、ポリアリルアミン類の重量平均分子量が25,000を超えると、トナーの転写性が悪化する場合がある。よって、ポリアリルアミン類の重量平均分子量を上記範囲内とすることで、より効果的に正帯電性に優れたトナーが得られる。
【0038】
ポリアリルアミン類は、アルカリ性のものであることが好ましい。ポリアリルアミン類がアルカリ性のものであれば、酸性になっているトナー粒子表面と酸塩基反応を起こしやすくなり、化学吸着が起こると考えられる。これとは逆にポリアリルアミン類が塩酸塩等になっている酸性のタイプであると、トナー粒子表面も酸性になっていることから、酸塩基反応はほとんど起こらず、トナー粒子表面にポリアリルアミン類が化学吸着されない可能性が高い。さらに、ポリアリルアミン類はほぼ無色透明であるため、カラートナーに適用してもよい。
【0039】
ポリアリルアミン類としては、例えば、市販されているPAA−01、PAA−03、PAA−05、PAA−08、PAA−15、PAA−15C、PAA−25、PAA−1112、PAA−N5000、PAA−U5000(以上、ニットーボーメディカル社製)等が挙げられる。
【0040】
(結着樹脂)
結着樹脂は、主成分としてポリエステル樹脂を含む。ポリエステル樹脂は、酸(多価カルボン酸)成分とアルコール(多価アルコール)成分とから合成されるものであり、本実施形態において、「酸由来構成成分」とは、ポリエステル樹脂の合成前には酸成分であった構成部位を指し、「アルコール由来構成成分」とは、ポリエステル樹脂の合成前にはアルコール成分であった構成部位を指す。主成分とは、トナー粒子中の結着樹脂100質量部に対して50質量部以上のことをいう。
【0041】
[酸由来構成成分]
酸由来構成成分は、特に制限はなく、脂肪族ジカルボン酸、芳香族カルボン酸が好ましく用いられる。脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼリン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸など、あるいはその低級アルキルエステルや酸無水物が挙げられるが、これらに限定されない。また芳香族カルボン酸としては例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族カルボン酸類の低級アルキルエステルや酸無水物が挙げられる。また、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸類等が挙げられる。さらに良好な定着性を確保するため、架橋構造あるいは分岐構造をとるためにジカルボン酸とともに3価以上のカルボン酸(トリメリット酸やその酸無水物等)を併用することが好ましい。また、前述のアルケニルコハク酸類の具体的なものとしては、ドデセニルコハク酸、ドデシルコハク酸、ステアリルコハク酸、オクチルコハク酸、オクセニルコハク酸等が挙げられる。
【0042】
[アルコール由来構成成分]
アルコール由来構成成分としては特に制限はないが、脂肪族ジオールとして、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオール等が挙げられる。また、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリンなどや、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族ジオール類が用いられる。また、良好な定着性を確保するため、架橋構造あるいは分岐構造をとるためにジオールとともに3価以上の多価アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール)を併用してもよい。
【0043】
ポリエステル樹脂の製造方法としては特に制限はなく、酸成分とアルコール成分を反応させる一般的なポリエステル重合法で製造すればよく、例えば、直接重縮合、エステル交換法等が挙げられ、単量体の種類によって使い分けて製造すればよい。前記酸成分とアルコール成分とを反応させる際のモル比(酸成分/アルコール成分)としては、反応条件等によっても異なるため、一概には言えないが、通常1/1程度である。
【0044】
ポリエステル樹脂の製造は、例えば、重合温度180℃以上230℃以下の間で行えばよく、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合時に発生する水やアルコールを除去しながら反応させてもよい。単量体が、反応温度下で溶解または相溶しない場合は、重合反応が部分的に早くなったり、遅くなる場合があり、無着色粒子を多く発生する場合があるため、高沸点の溶媒を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。重縮合反応においては、溶解補助溶媒を留去しながら行ってもよい。共重合反応において相溶性の悪い単量体が存在する場合はあらかじめ相溶性の悪い単量体と、その単量体と重縮合予定の酸またはアルコールとを縮合させておいてから主成分と共に重縮合させてもよい。
【0045】
ポリエステル樹脂の製造時に使用してもよい触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属化合物;亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物;亜リン酸化合物、リン酸化合物、およびアミン化合物等が挙げられる。この中でも、例えば、スズ、ギ酸スズ、シュウ酸スズ、テトラフェニルスズ、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシド等のスズ含有触媒を用いることが好ましい。
【0046】
本実施形態においては、静電荷像現像用トナー用の樹脂として共重合可能なものであれは、親水性極性基を有する化合物を用いてもよい。具体例としては、仮に用いる樹脂がポリエステルである場合、スルホニル−テレフタル酸ナトリウム塩、3−スルホニルイソフタル酸ナトリウム塩等の芳香環に直接スルホニル基が置換したジカルボン酸化合物が挙げられる。
【0047】
ポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは5,000以上であることが好ましく、5,000以上50,000以下の範囲であることがより好ましい。このポリエステル樹脂を含むと、擦摺性に優位である。ポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwが5,000を下回ると、場合によっては分離しやすくなることから、遊離した樹脂に由来する問題(フィルミング、脆さによる微粉増加、粉体流動性悪化など)が発生する場合がある。
【0048】
本実施形態に係るトナーにおいて、ポリエステル樹脂以外の樹脂を含んでもよい。ポリエステル樹脂以外の樹脂としては特に制限されないが、具体的には、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル系単量体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のメタクリル系単量体;さらにアクリル酸、メタクリル酸、スチレンスルフォン酸ナトリウム等のエチレン系不飽和酸単量体;さらにアクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;エチレン、プロピレン、ブタジエンなどのオレフィン類単量体の単独重合体、それらの単量体を2種以上組み合せた共重合体、またはそれらの混合物、さらには、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂等、非ビニル縮合系樹脂、または、それらと前記ビニル系樹脂との混合物、これらの共存下でビニル系単量体を重合して得られるグラフト重合体等が挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
結着樹脂の含有量は、例えばトナー粒子全体に対して65質量%以上95質量%以下の範囲である。
【0050】
結着樹脂の酸価は、1mgKOH/g以上、30mgKOH/g以下の範囲であることが好ましく、7mgKOH/g以上、20mgKOH/g以下の範囲であることがより好ましい。結着樹脂の酸価が1mgKOH/g未満であると、表面改質剤として使用するポリアリルアミン類の粒子表面吸着量が低下するため所望の正帯電量が得られない場合があったり、転相乳化を利用して造粒する際には造粒性が悪化してしまう場合がある。結着樹脂の酸価が30mgKOH/gを超えると、ポリアリルアミン類を粒子表面に吸着させても正帯電性が阻害される場合がある。
【0051】
(その他の成分)
本実施形態に係るトナー粒子は、着色剤、その他必要に応じて、離型剤、帯電制御剤、シリカ粉末、金属酸化物等の他の添加剤を含有してもよい。これら添加剤は、結着樹脂に混練するなどして内添してもよいし、粒子としてトナー粒子を得たのち混合処理を施すなどして外添してもよい。
【0052】
着色剤としては、特に制限はなく、公知の顔料が用いられ、必要に応じて、公知の染料を含んでもよい。具体的には、以下に示すイエロー、マゼンタ、シアン、黒(ブラック)等の各顔料が用いられる。
【0053】
イエローの顔料としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯化合物、メチン化合物、アリルアミド化合物等に代表される化合物が用いられる。
【0054】
マゼンタの顔料としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物等が用いられる。
【0055】
シアンの顔料としては、銅フタロシアニン化合物およびその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が用いられる。
【0056】
黒の顔料としては、カーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、鉄黒等が用いられる。
【0057】
着色剤の含有量は、例えばトナー粒子全体に対して1質量%以上20質量%以下の範囲である。
【0058】
離型剤としては、特に制限はなく、例えば、カルナバワックス、木蝋、米糠蝋等の植物性ワックス;蜜ワックス、昆虫ワックス、鯨ワックス、羊毛ワックスなどの動物性ワックス;モンタンワックス、オゾケライトなどの鉱物性ワックス、エステルを側鎖に有するフィッシャートロプシュワックス(FTワックス)、特殊脂肪酸エステル、多価アルコールエステル等の合成脂肪酸固体エステルワックス;パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、ポリアミドワックス、およびシリコーン化合物等の合成ワックス;等が挙げられる。離型剤は1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0059】
離型剤の含有量は、例えばトナー粒子全体に対して0.1質量%以上15質量%以下の範囲である。
【0060】
帯電制御剤としては、特に制限はなく、従来公知の帯電制御剤が使用される。例えば、ニグロシン染料、脂肪酸変性ニグロシン染料、カルボキシル基含有脂肪酸変性ニグロシン染料、四級アンモニウム塩、アミン系化合物、アミド系化合物、イミド系化合物、有機金属化合物等の正帯電性帯電制御剤;オキシカルボン酸の金属錯体、アゾ化合物の金属錯体、金属錯塩染料やサリチル酸誘導体等の負帯電性帯電制御剤;等が挙げられる。帯電制御剤は1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0061】
金属酸化物としては、特に制限はなく、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム等が挙げられる。金属酸化物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0062】
<トナー粒子の製造方法>
本実施形態で用いるトナー粒子を製造する方法としては、特に制限はなく、例えば、混練粉砕法や、液中乳化法、重合法等の湿式製法が挙げられる。
【0063】
例えば、結着樹脂、必要に応じて、着色剤、他の添加剤等をヘンシェルミキサ等の混合装置に投入して混合し、この混合物を二軸押出機、バンバリーミキサー、ロールミル、ニーダ等で溶融混練した後、ドラムフレーカー等で冷却し、ハンマーミル等の粉砕機で粗粉砕し、さらにジェットミル等の粉砕機で粉砕した後、風力分級機等を用いて分級することにより、粉砕トナーが得られる。
【0064】
また、結着樹脂、必要に応じて、着色剤、他の添加剤を酢酸エチル等の溶剤に溶解し、炭酸カルシウム等の分散安定剤が添加された水中に乳化、懸濁し、溶剤を除去した後、分散安定剤を除去して得られた粒子を濾過、乾燥することによって液中乳化乾燥トナーが得られる。
【0065】
また、結着樹脂を形成する重合性単量体、着色剤、重合開始剤(例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、イソプロピルパーオキシカーボネート、クメンハイドロパーオキサイド、2,4−ジクロリルベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド等)および他の添加剤等を含有する組成物を水相中に撹拌下で加えて造粒し、重合反応後、粒子を濾過、乾燥することによって重合トナーが得られる。
【0066】
なお、トナーを得る際の各材料(結着樹脂、着色剤、その他の添加剤等)の配合割合は、要求される特性、低温定着性、色等を考慮して設定すればよい。
【0067】
(表面改質方法)
本実施形態に係る表面改質トナー粒子は、例えば、トナー粒子をポリアリルアミン類により表面改質してトナー粒子表面を覆うポリアリルアミン類の層を形成する工程を含む方法等により作製される。ポリアリルアミン類は水溶性高分子であるので、液中で造粒する湿式製法では乾燥工程前の水洗浄後等にそのままポリアリルアミン類をトナー粒子表面に吸着すればよい。
【0068】
トナー粒子の表面改質は、具体的には、例えば、以下の方法により作製される。
(1)トナー粒子、水を含むスラリに酸(1N程度の塩酸または硝酸)を添加してpH3〜5程度に調整してトナー粒子表面の酸サイトをできるだけ確実に酸に戻す
(2)イオン交換水等による洗浄、または遠心分離等により固液分離を行い、余分な酸を除去する
(3)リスラリーした後、水溶性のポリアリルアミン類を添加し、例えば液温20℃以上35℃以下の範囲で30分以上60分以下程度撹拌する
(4)イオン交換水等による洗浄、または遠心分離等により固液分離を行い、余分なポリアミン類を除去する(例えば、導電率20μS/cm以下程度となるまで)
(5)ろ過した後、乾燥(例えば、35℃程度、最低24時間程度、水分率1%以下)し、解砕する
【0069】
トナー粒子の結着樹脂として酸価10程度のポリエステル樹脂を使用し、転相乳化を利用して造粒する場合は、洗浄後のろ液がアルカリ性になっていることから、トナー粒子表面の酸サイト(例えば−COOH基)が中和されて塩構造(例えば−COONa、−COONH)になっている部分が多いと思われる。よって、(1)の工程を行うことでトナー粒子表面の塩構造を酸(例えば−COOH基)に戻してポリアリルアミン類が酸塩基反応でより吸着しやすいようにすることが好ましい。ただし、(1)や(2)の工程は必須ではなく所望の正帯電量が得られる場合は省略してもよい。
【0070】
<正帯電用乾式トナーの平均粒径>
本実施形態に係る正帯電用乾式トナーの体積平均粒径としては、4μm以上8μm以下の範囲が好ましく、5μm以上7μm以下の範囲がより好ましく、また、個数平均粒径としては、3μm以上7μm以下の範囲が好ましく、4μm以上6μm以下の範囲がより好ましい。
【0071】
前記体積平均粒径および個数平均粒径の測定は、コールターマルチサイザII型(ベックマン−コールター社製)を用いて、50μmのアパーチャ径で測定することにより行われる。この時、測定はトナーを電解質水溶液(アイソトン水溶液)に分散させ、超音波により30秒分散させた後に行う。
【0072】
<現像剤>
本実施形態において、現像剤は、前記本実施形態に係る正帯電用乾式トナーを含有する以外は特に制限はなく、目的に応じて適宜の成分組成をとればよい。本実施形態における現像剤は、正帯電用乾式トナーを、単独で用いると一成分系の現像剤となり、また、キャリアと組み合わせて用いると二成分系の現像剤となる。
【0073】
例えばキャリアを用いる場合のそのキャリアとしては、特に制限はなく、それ自体公知のキャリアが挙げられ、例えば、特開昭62−39879号公報、特開昭56−11461号公報等に記載された樹脂被覆キャリア等の公知のキャリアが挙げられる。
【0074】
キャリアの具体例としては、以下の樹脂被覆キャリアが挙げられる。該キャリアの核体粒子としては、通常の鉄粉、フェライト、マグネタイト造型物などが挙げられ、その体積平均粒径は、30μm以上200μm以下程度の範囲である。
【0075】
また、上記樹脂被覆キャリアの被覆樹脂としては、例えば、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のα−メチレン脂肪酸モノカルボン酸類;ジメチルアミノエチルメタクリレート等の含窒素アクリル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類;2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等のビニルピリジン類;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロぺニルケトン等のビニルケトン類;エチレン、プロピレン等のオレフィン類;弗化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン等のビニル系フッ素含有モノマ;などの単独重合体、または2種類以上のモノマからなる共重合体、さらに、メチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン等を含むシリコーン樹脂類、ビスフェノール、グリコール等を含有するポリエステル類、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で用いてもよいし、あるいは2種以上併用してもよい。被覆樹脂の被覆量としては、前記核体粒子100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下程度の範囲が好ましく、0.5質量部以上3.0質量部以下の範囲がより好ましい。
【0076】
キャリアの製造には、加熱型ニーダ、加熱型ヘンシェルミキサ、UMミキサなどを使用すればよく、前記被覆樹脂の量によっては、加熱型流動転動床、加熱型キルンなどを使用してもよい。
【0077】
現像剤における前記本実施形態の正帯電用乾式トナーとキャリアとの混合比としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0078】
<トナーカートリッジ>
本実施形態に係るトナーカートリッジは、前記本実施形態に係る正帯電用乾式トナーを含有するものであればよく、特に制限はない。トナーカートリッジは、例えば、現像手段を備えた画像形成装置に着脱され、この現像手段に供給されるためのトナーとして、前記本実施形態に係る正帯電用乾式トナーが収納されているものである。
【0079】
<現像剤カートリッジ>
本実施形態に係る現像剤カートリッジは、前記本実施形態に係る正帯電用乾式トナーを含む現像剤を含有するものであればよく、特に制限はない。現像剤カートリッジは、例えば、現像手段を備えた画像形成装置に着脱され、この現像手段に供給されるための現像剤として、前記本実施形態に係る正帯電用乾式トナーを含む現像剤が収納されているものである。
【0080】
<プロセスカートリッジ>
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、前記本実施形態に係る正帯電用乾式トナーを含む現像剤を含有するものであればよく、特に制限はない。プロセスカートリッジは、例えば、像保持体の表面に形成された潜像を現像剤を用いて現像してトナー像を形成する現像手段とを備える。本実施形態のプロセスカートリッジは、必要に応じて、像保持体と、像保持体の表面を帯電させる帯電手段と、帯電した像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、像保持体の表面に形成されたトナー像を被転写体に転写する転写手段と、転写後の像保持体の表面に残留した残留トナー等を除去して清掃する像保持体清掃手段と、被転写体に転写されたトナー像を定着するための定着手段とからなる群より選択される少なくとも1つを備えていてもよい。
【0081】
本発明の実施形態に係るプロセスカートリッジの一例の概略構成を図1に示し、その構成について説明する。プロセスカートリッジ1は、静電潜像が形成される像保持体としての感光体(電子写真感光体)14と、感光体14の表面を帯電する帯電手段としての帯電装置10と、感光体14の表面に形成された静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成する現像手段としての現像装置16と、感光体14の表面に接触して、転写後に感光体14の表面に残留した残留トナーなどを除去して清掃する像保持体清掃手段としてのクリーニングブレード20とが一体に支持されており、画像形成装置に着脱自在である。画像形成装置に装着されたときには感光体14の周囲に、帯電装置10、レーザ光あるいは原稿の反射光などにより感光体14の表面に静電潜像を形成する潜像形成手段としての露光装置12、現像装置16、感光体14表面のトナー像を被転写体である記録用紙24に転写処理する転写手段としての転写ロール18、クリーニングブレード20がこの順序で配置されるようになっている。なお、図1では、他の電子写真プロセスにおいて通常必要な機能ユニットは、その記載を省略してある。
【0082】
本実施形態に係るプロセスカートリッジ1の動作について説明する。
【0083】
まず、帯電装置10により感光体14の表面が帯電される(帯電工程)。次に、露光装置12により感光体14の表面に光が当てられ、光の当てられた部分の帯電電荷が除去され、画像情報に応じて静電潜像(静電荷像)が形成される(潜像形成工程)。その後、静電潜像が現像装置16により現像され、感光体14の表面にトナー像が形成される(現像工程)。例えば、感光体14として有機感光体を用い、露光装置12としてレーザビーム光を用いたデジタル式電子写真複写機の場合、感光体14の表面は、帯電装置10により負電荷を付与され、レーザビーム光によりドット状にデジタル潜像が形成され、レーザビーム光の当たった部分に現像装置16でトナーを付与され可視像化される。この場合、現像装置16にはマイナスのバイアスが印加されている。次に転写ロール18で、被転写体である記録用紙24がこのトナー像に重ねられ、記録用紙24の裏側からトナーとは逆極性の電荷が記録用紙24に与えられ、静電気力によりトナー像が記録用紙24に転写される(転写工程)。転写されたトナー像は、定着手段としての定着ロール22を有する定着装置において熱および圧力が加えられ、記録用紙24に融着されて定着される(定着工程)。一方、転写されずに感光体14の表面に残存したトナー等の残留物はクリーニングブレード20により除去される(像保持体清掃工程)。この帯電工程から像保持体清掃工程に至る一連のプロセスで一回のサイクルが終了する。なお、図1において、転写ロール18で記録用紙24に直接トナー像が転写されているが、中間転写ベルト等の中間転写体を介して転写されてもよい。
【0084】
帯電手段である帯電装置10としては、例えば、図1に示すようなコロトロンなどの帯電器が用いられるが、導電性または半導電性の帯電ロールを用いてもよい。導電性または半導電性の帯電ロールを用いた接触型帯電器は、感光体14に対し、直流電流を印加するか、交流電流を重畳させて印加してもよい。例えばこのような帯電装置10により、感光体14との接触部近傍の微小空間で放電を発生させることにより感光体14表面を帯電させる。なお、通常は、−300V以上−1000V以下に帯電される。また前記の導電性または半導電性の帯電ロールは単層構造あるいは多重構造でもよい。また、帯電ロールの表面をクリーニングする機構を設けてもよい。
【0085】
感光体14は、少なくとも静電潜像(静電荷像)が形成される機能を有する。電子写真感光体は、円筒状の導電性の基体外周面に必要に応じて下引き層と、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とがこの順序で形成されたものである。電荷発生層と電荷輸送層の積層順序は逆であってもよい。これらは、電荷発生物質と電荷輸送物質とを別個の層(電荷発生層、電荷輸送層)に含有させて積層した積層型感光体であるが、電荷発生物質と電荷輸送物質との双方を同一の層に含む単層型感光体であってもよく、好ましくは積層型感光体である。また、下引き層と感光層との間に中間層を有していてもよい。また、感光層の上に保護層を有してもよい。また、有機感光体に限らずアモルファスシリコン感光膜など他の種類の感光層を使用してもよい。
【0086】
露光装置12としては、特に制限はなく、例えば、感光体14表面に、半導体レーザ光、LED(Light Emitting Diode)光、液晶シャッタ光などの光源を、所望の像様に露光するレーザ光学系、LEDアレイなどの光学系機器などが挙げられる。
【0087】
現像手段は、感光体14上に形成された静電潜像を静電荷像現像用トナーを含む一成分現像剤あるいは二成分現像剤により現像してトナー像を形成する機能を有する。そのような現像装置としては、上述の機能を有している限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、トナー層が感光体14に接触する方式のものでも、接触しない方式のものでもよい。例えば、図1のように静電荷像現像用トナーを現像装置16を用いて感光体14に付着させる機能を有する現像器、あるいはブラシなどを用いてトナーを感光体14に付着させる機能を有する現像器など、公知の現像器などが挙げられる。
【0088】
転写手段である転写装置としては、例えば、記録用紙24の裏側からトナーとは逆極性の電荷を記録用紙24に与え、静電気力によりトナー画像を記録用紙24に転写するもの、あるいは図1に示すような記録用紙24の表面に記録用紙24を介して直接接触して転写する導電性または半導電性のロール等を用いた転写ロールおよび転写ロール押圧装置を用いればよい。転写ロールには、像保持体に付与する転写電流として、直流電流を印加してもよいし、交流電流を重畳させて印加してもよい。転写ロールは、帯電すべき画像領域幅、転写帯電器の形状、開口幅、プロセススピード(周速)等により、任意に設定すればよい。また、低コスト化のため、転写ロールとして単層の発泡ロール等が好適に用いられる。転写方式としては、記録用紙24に直接転写する方式でも、中間転写体を介して記録用紙24に転写する方式でもよい。
【0089】
中間転写体としては、公知の中間転写体を用いればよい。中間転写体に用いられる材料としては、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアルキレンフタレート、PC/ポリアルキレンテレフタレート(PAT)のブレンド材料、エチレンテトラフロロエチレン共重合体(ETFE)/PC、ETFE/PAT、PC/PATのブレンド材料等が挙げられるが、機械的強度の観点から熱硬化ポリイミド樹脂を用いた中間転写ベルトが好ましい。
【0090】
像保持体清掃手段としては、像保持体上の残留トナー等を除去して清掃するものであれば、ブレードクリーニング方式、ブラシクリーニング方式、ロールクリーニング方式を採用したもの等、適宜選定して差し支えない。これらの中でもクリーニングブレードを用いることが好ましい。また、クリーニングブレードの材質としてはウレタンゴム、ネオプレンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。中でも、耐摩耗性に優れていることから、特にポリウレタン弾性体を用いることが好ましい。
【0091】
定着手段としての定着装置としては、記録用紙24に転写されたトナー像を加熱、加圧あるいは加熱加圧により定着するものであれば特に制限はない。例えば、加熱ロールと加圧ロールとを備える定着装置が用いられる。
【0092】
トナー像を転写する被転写体である記録用紙24としては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンタなどに使用される普通紙、OHPシートなどが挙げられる。定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、転写材の表面もできるだけ平滑であることが好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂などでコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙などが好適に使用される。
【0093】
<画像形成装置・画像形成方法>
本実施形態に係る画像形成装置は、前記本実施形態に係る静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像用現像剤を含有するものであればよく、特に制限はない。画像形成装置は、例えば、像保持体と、像保持体の表面を帯電させる帯電手段と、像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、像保持体の表面に形成された潜像を現像剤を用いて現像してトナー像を形成する現像手段と、現像されたトナー像を被転写体に転写する転写手段とを備える。本実施形態の画像形成装置は、必要に応じて、被転写体に転写されたトナー像を定着するための定着手段と、転写後の像保持体の表面に残留した残留トナー等を除去して清掃する像保持体清掃手段と、からなる群より選択される少なくとも1つを備えていてもよい。また、本実施形態に係る画像形成装置は、上記プロセスカートリッジを使用するものであってもよい。
【0094】
本実施形態に係る画像形成装置の一例の概略構成を図2に示し、その構成について説明する。画像形成装置3は、静電潜像が形成される像保持体としての感光体14と、感光体14の表面を帯電する帯電手段としての帯電装置10と、レーザ光あるいは原稿の反射光などにより感光体14の表面に静電潜像を形成する潜像形成手段としての露光装置12と、感光体14の表面に形成された静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成する現像手段としての現像装置16と、感光体14表面のトナー像を被転写体である記録用紙24に転写処理する転写手段としての転写ロール18と、感光体14の表面に接触して、転写後に感光体14の表面に残留した残留トナーなどを除去して清掃する像保持体清掃手段としてのクリーニングブレード20とを備える。画像形成装置3において、感光体14の周囲に、帯電装置10、露光装置12、現像装置16、転写ロール18、クリーニングブレード20がこの順序で配置されている。また、定着手段として定着ロール22を有する定着装置を備える。なお、図2では、他の電子写真プロセスにおいて通常必要な機能ユニットは、その記載を省略してある。画像形成装置3の各構成、画像形成時の動作は図1のプロセスカートリッジ1と同様である。
【0095】
本実施形態に係るプロセスカートリッジおよび画像形成装置の各構成については、これらに限らず従来から電子写真方式のプロセスカートリッジおよび画像形成装置の各構成として公知の構成を適用してもよい。すなわち、像保持体、帯電手段、潜像形成手段、現像手段、転写手段、像保持体清掃手段、除電手段、給紙手段、搬送手段、画像制御手段等について、必要に応じて従来公知のものが適宜採用される。これらの構成については、本実施形態において特に限定されるものではない。
【実施例】
【0096】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0097】
[実施例1]
本実施例のトナーは、以下の方法により得られる。すなわち、下記の樹脂粒子分散液、着色剤分散液、離型剤分散液をそれぞれ調製した。次いで、これらを所定量混合撹拌しながら、これに無機金属塩の重合体を添加し、イオン的に中和させ、上記各粒子の凝集体を形成させて、所望のトナー粒子径を得た。次いで、無機水酸化物で系内のpHを弱酸性から中性の範囲に調整後、当該樹脂粒子のガラス転移温度以上に加熱し、合一融合させた。反応終了後、十分な洗浄、固液分離、乾燥の工程を経て所望のトナー粒子を得た。
【0098】
(結晶性ポリエステル樹脂の合成)
フラスコに、セバシン酸1982質量部、エチレングリコール1490質量部、イソフタル酸ジメチル5−スルホン酸ナトリウム59.2質量部、およびジブチルスズオキシド0.8質量部を、窒素雰囲気下、180℃で5時間反応させ、続いて、減圧下220℃で縮合反応を行った。途中ポリマをサンプリングし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分子量がMw(重量平均分子量)=20,000、Mn(数平均分子量)=8,500になったところで、反応を止め、結晶性ポリエステル樹脂を得た。溶解温度(DSCのピーク温度)は71℃であった。NMRによるイソフタル酸ジメチル5−スルホン酸ナトリウムの含有量の測定結果は1モル%(対全構成成分)であった。
【0099】
(結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液)
結晶性ポリエステル樹脂160質量部と、酢酸エチル233質量部と、水酸化ナトリウム水溶液(0.3N)0.1質量部とを用意し、これらをセパラブルフラスコに入れ、75℃で加熱し、スリーワンモータ(新東科学株式会社製)により撹拌して樹脂混合液を調製した。この樹脂混合液をさらに撹拌しながら、徐々にイオン交換水373質量部を加え、転相乳化させ、10℃/分の降温速度にて40℃まで降温し、脱溶剤することにより結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(固形分濃度:30質量%)を得た。
【0100】
(非結晶性ポリエステル樹脂の合成)
加熱乾燥した二口フラスコに、テレフタル酸ジメチル200質量部と、1,3−ブタンジオール85質量部と、触媒としてジブチル錫オキサイド0.3質量部とを入れた後、減圧操作により容器内の空気を窒素ガスにより不活性雰囲気とし、機械撹拌にて180rpmで5時間撹拌を行った。その後、減圧下にて230℃まで徐々に昇温を行い2時間撹拌し、粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させ、非結晶性ポリエステル樹脂(芳香族ジカルボン酸由来構成成分の含有量が100構成モル%である酸由来構成成分と、脂肪族ジオール由来構成成分の含有量が100構成モル%であるアルコール由来構成成分と、を含む非結晶性ポリエステル樹脂)240質量部を合成した。
【0101】
GPCによる分子量測定(ポリスチレン換算)の結果、得られた非結晶性ポリエステル樹脂(1)の重量平均分子量(Mw)は9,500であり、数平均分子量(Mn)は4,200であった。また、非結晶性ポリエステル樹脂(1)のDSCスペクトルを、前述の示差走査熱量計(DSC)を用いて測定したところ、明確なピークを示さず、階段状の吸熱量変化が観察された。階段状の吸熱量変化の中間点をとったガラス転移温度は55℃であった。なお樹脂酸価は18mgKOH/gであった。
【0102】
(非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液)
非結晶性ポリエステル樹脂(1)160質量部と、酢酸エチル233質量部と、水酸化ナトリウム水溶液(0.3N)0.1質量部とを用意し、これらをセパラブルフラスコに入れ、70℃で加熱し、スリーワンモータ(新東科学株式会社)により撹拌して樹脂混合液を調製した。この樹脂混合液をさらに撹拌しながら、徐々にイオン交換水373質量部を加え、転相乳化させ、1℃/分の降温速度にて40℃まで降温し脱溶剤することにより非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液(固形分濃度:30質量%)を得た。
【0103】
(着色剤分散液の調製)
シアン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3、大日精化製) 45質量部
イオン性界面活性剤(ネオゲンRK、第一工業製薬製) 5質量部
イオン交換水 200質量部
以上を混合溶解し、ホモジナイザー(IKAウルトラタラックス)により10分間分散
し、体積平均粒径170nmの着色剤分散液を得た。
【0104】
また、シアン顔料の分散液調製方法と同様にして、イエロー顔料(C.I.ピグメントイエロー74、大日精化製)、マゼンタ顔料(C.I.ピグメントレッド269、大日精化製)、ブラック顔料(C.I.ピグメントブラック7、三菱化学製)を用いて着色剤分散液を得た。
【0105】
(離型剤分散液の調製)
アルキルワックスFNP0085(溶解温度86℃、日本精蝋社製) 45質量部
カチオン性界面活性剤(ネオゲンRK、第一工業製薬製) 5質量部
イオン交換水 200質量部
以上を90℃に加熱して、IKA製ウルトラタラックスT50にて十分に分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザで分散処理し、体積平均粒径200nm、固形分量24.3質量%の離型剤分散液を得た。
【0106】
(トナーの調製)
結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液 15質量部
非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液 80質量部
着色剤分散液 18質量部
離型剤分散液 18質量部
以上の成分に固形分量16質量%となるようイオン交換水を添加し、丸型ステンレス製フラスコ中においてウルトラタラックスT50で十分に混合、分散した。次いで、これにポリ塩化アルミニウム0.36質量部を加え、ウルトラタラックスで分散操作を継続した。加熱用オイルバスでフラスコを撹拌しながら47℃まで加熱した。47℃で60分保持した後、ここに非結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を緩やかに46質量部を追加した。その後、0.55モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液で系内のpHを9.0にした後、ステンレス製フラスコを密閉し、磁力シールを用いて撹拌を継続しながら90℃まで加熱し、3.5時間保持した。この時の粒子径を測定したところ体積平均粒径は2.3μm、体積平均粒度分布指標GSDvは1.24、数平均粒度分布指標GSDpは1.30であった。上記処理終了後、冷却し、濾過し、イオン交換水で十分に洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離を施した。これをさらに40℃のイオン交換水3Lに再分散し、15分300rpmで撹拌、洗浄した。これをさらに5回繰り返し、濾液の電気伝導度が9.7μS/cmとなったところで、ヌッチェ式吸引濾過によりNo4Aろ紙を用いて固液分離を行い、トナー粒子を得た。
【0107】
(トナー粒子の表面改質)
得られたトナー粒子100質量部をイオン交換水900質量部に加えスラリー(固形分濃度10質量%)を調製した。そのスラリーに1N塩酸を添加してpH4に調整して、10分間撹拌した後、遠心分離により固液分離を行って上澄み液を捨て、余分な酸を除去した。その後、イオン交換水900質量部を添加してリスラリ化を行い、このスラリにポリアリルアミンPAA−15(ニットーボーメディカル社製、上記式(1)において、m=265、重量平均分子量15,000)の10質量%水溶液10質量部を添加し、60分撹拌した。この後、遠心分離により固液分離を行い、上澄み液を捨て、余分なポリアリルアミンを除去した。洗浄液の導電率が20μS/cm以下となるまで、イオン交換水添加、10分の撹拌、遠心分離を繰り返した。ろ紙(アドバンテック社製、No4A)を用いてろ過し、イオン交換水で洗浄した後、35℃で24時間乾燥し(水分率0.5質量%)、解砕して、表面改質トナー粒子を得た。
【0108】
(現像剤の調製)
上記で得られた表面改質トナー粒子10質量部を、正帯電用キャリア(日本画像学会標準キャリア P−01)190質量部と混合し、現像剤を得た。
【0109】
[実施例2]
ポリアリルアミンPAA−15の使用量を0.1質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、表面改質トナー粒子、現像剤を得た。
【0110】
[実施例3]
ポリアリルアミンPAA−15の使用量を3質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、表面改質トナー粒子、現像剤を得た。
【0111】
[実施例4]
ポリアリルアミンをPAA−25(ニットーボーメディカル社製、上記式(1)において、m=440、重量平均分子量25,000)に変更した以外は、実施例1と同様にして、表面改質トナー粒子、現像剤を得た。
【0112】
[実施例5]
ポリアリルアミンをPAA−08(ニットーボーメディカル社製、上記式(1)において、m=140、重量平均分子量8,000)に変更した以外は、実施例1と同様にして、表面改質トナー粒子、現像剤を得た。
【0113】
[実施例6]
ポリアリルアミンをPAA−05(ニットーボーメディカル社製、上記式(1)において、m=90、重量平均分子量5,000)に変更した以外は、実施例1と同様にして、表面改質トナー粒子、現像剤を得た。
【0114】
[実施例7]
ポリアリルアミンをPAA−03(ニットーボーメディカル社製、上記式(1)において、m=55、重量平均分子量3,000)に変更した以外は、実施例1と同様にして、表面改質トナー粒子、現像剤を得た。
【0115】
[実施例8]
ポリアリルアミンをPAA−01(ニットーボーメディカル社製、上記式(1)において、m=30、重量平均分子量1,600)に変更した以外は、実施例1と同様にして、表面改質トナー粒子、現像剤を得た。
【0116】
[実施例9]
ポリアリルアミンをPAA−1112(ニットーボーメディカル社製、上記式(2)において、R=メチル基、R=メチル基、m=2、n=1、l=5、重量平均分子量1,000)に変更した以外は、実施例1と同様にして、表面改質トナー粒子、現像剤を得た。
【0117】
[実施例10]
ポリアリルアミンをPAA−N5000(ニットーボーメディカル社製、上記式(3)において、m=2、n=1、l=70、重量平均分子量15,000)に変更した以外は、実施例1と同様にして、表面改質トナー粒子、現像剤を得た。
【0118】
[実施例11]
ポリアリルアミンをPAA−U5000(ニットーボーメディカル社製、上記式(4)において、m=2、n=1、l=70、重量平均分子量15,000)に変更した以外は、実施例1と同様にして、表面改質トナー粒子、現像剤を得た。
【0119】
[実施例12]
(トナー製造)
乳化重合法で、結着樹脂としてスチレン/アクリル樹脂を用いたトナー粒子を調製した。
【0120】
実施例1と同様にして、トナー粒子の表面改質を行い、現像剤を調製した。
【0121】
[実施例13]
ポリアリルアミンPAA−15の使用量を0.05質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、表面改質トナー粒子、現像剤を得た。
【0122】
[実施例14]
ポリアリルアミンPAA−15の使用量を3.5質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、表面改質トナー粒子、現像剤を得た。
【0123】
[実施例15]
結着樹脂と使用するポリエステル樹脂の酸価を1mgKOH/gとした以外は実施例1と同様にして、トナー粒子を調製し、トナー粒子の表面改質を行い、現像剤を調製した。
【0124】
[実施例16]
(トナー製造)
結着樹脂と使用するポリエステル樹脂の酸価を30mgKOH/gとした以外は実施例1と同様にして、トナー粒子を調製し、トナー粒子の表面改質を行い、現像剤を調製した。
【0125】
[実施例17]
(トナー製造)
結着樹脂と使用するポリエステル樹脂の酸価を0.7mgKOH/gとした以外は実施例1と同様にして、トナー粒子を調製し、トナー粒子の表面改質を行い、現像剤を調製した。
【0126】
[実施例18]
(トナー製造)
結着樹脂と使用するポリエステル樹脂の酸価を35mgKOH/gとした以外は実施例1と同様にして、トナー粒子を調製し、トナー粒子の表面改質を行い、現像剤を調製した。
【0127】
比較
特開昭60−104107号公報、特開昭60−192715号公報、特開昭61−60703号公報等を参考に合成を行い、上記式(1)において、m=490、重量平均分子量28000のポリアリルアミンに変更した以外は、実施例1と同様にして、表面改質トナー粒子、現像剤を得た。
【0128】
比較
特開昭60−104107号公報、特開昭60−192715号公報、特開昭61−60703号公報等を参考に合成を行い、上記式(1)において、m=12、重量平均分子量700のポリアリルアミンに変更した以外は、実施例1と同様にして、表面改質トナー粒子、現像剤を得た。
【0129】
[比較例1]
ポリアリルアミンPAA−15によるトナー粒子の表面改質を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、トナー粒子、現像剤を得た。
【0130】
[比較例2]
ポリアリルアミンPAA−15の代わりに4級アンモニウム塩含有正帯電用帯電制御剤BONTRON P−51(オリエント化学工業製)を使用した以外は、実施例1と同様にして、表面改質トナー粒子、現像剤を得た。
【0131】
(ポリアリルアミンの検出)
表面改質トナー粒子におけるポリアリルアミンの検出は赤外分光光度計(日本分光社製、FT/IR−4100)を用いて行った。ポリアリルアミンの検出は、赤外吸収スペクトルにおいて1650cm−1、1570cm−1付近に吸収特性がある。また、ポリアリルアミンがトナー粒子の表面に存在することは、蛍光染料であるフルオレセインイソチオシアネート(FITC)をトナー表面に存在するポリアリルアミンに吸着させ、紫外可視近赤外分光光度計(島津製作所製、UV−1800型)を用いて確認した。
【0132】
なお、表面改質トナー粒子は現像剤からキャリア液を除去することにより採取することができる。採取したトナー粒子をアルコール類で洗浄することによりトナー粒子表面のポリアリルアミン類を脱離させ、その洗浄後の液を高速液体クロマトグラフィ(東ソー製、HLC−8320GPC型)を用いて、ポリアリルアミンの重量平均分子量Mwを求め、FITCを吸着させ、紫外可視近赤外分光光度計(島津製作所製、UV−1800型)を用いて、ポリアリルアミンの添加量を求め、JIS K0070の方法により、電位差滴定装置(平沼産業製、COM−1700型)を用いて、結着樹脂の酸価を求める。
【0133】
(評価)
[現像性]
25℃、50%RHの環境下にて、実施例および比較例の各現像剤を、富士ゼロックス(株)製DocuCentreColor400CP改造機(定着器のプロセススピードを外部電源コントロールにて行うように改造したもの)の現像器に充填し、富士ゼロックス(株)製A4用紙(J紙)にて白ベタ画像を10,000枚出力した後、5cm×2cmのソリッドバッチを現像し、感光体表面の現像トナー画像を、粘着テープ表面の粘着性を利用して採取し、その質量(W1)を測定した。次に、同様の現像トナー像を、紙(J紙)表面に転写させ、その転写画像の質量(W2)を測定した。これらの結果から、以下の式によって転写効率を求め、以下の4段階の基準に基づいて評価した。
転写効率(%)=(W2/W1)×100
A:転写効率が95%以上
B:転写効率が87.5%以上95%未満
C:転写効率が80%以上87.5%未満
D:転写効率が80%未満
【0134】
[正帯電性]
実施例および比較例の各現像剤を、それぞれ上述した現像器に充填し、現像装置の規制ブレードに規制され、感光体に搬送されるトナーの帯電量を、現像ローラ上のトナーを分析することによって評価した。帯電量は、ホソカワミクロン(株)製のE−SPARTアナライザによって測定した。測定条件は、吸引流量0.2リットル/分、集塵エアー流量0.6リットル/分、吹き付け窒素ガス圧0.02MPaとし、トナー1個ごとの帯電量(Q/m)を測定して、3,000個のトナーカウントで帯電量分布を求めた。トナーの帯電量の均一性は、トナー1個あたりの帯電量の個数分布において、最大頻度の帯電量(Q1/m1)と測定したトナーの総帯電量を測定カウント(個数)で除した値(Q2/m2)との差の絶対値が小さいほど、帯電量の分布は均一であり、絶対値が大きいほど不均一である。以下の4段階の基準に基づいて評価した。
A:差の絶対値が0.8以下
B:差の絶対値が0.8以上1.0未満
C:差の絶対値が1.0以上1.5未満
D:差の絶対値が1.5以上
【0135】
[高温高湿環境下の飽和帯電量]
温度30℃、湿度80%の環境試験室で、標準キャリアP−01(日本画像学会)100質量部と、実施例および比較例の各トナー5質量部を1時間放置し、環境試験室でステンレスポットに仕込み、環境試験室内に設置したボールミルにて一定回転数で回転混合させた。回転スタートから20分撹拌後の現像剤の飽和帯電量(μC/g)をブローオフ装置にて測定し、1分後の帯電量と20分後の帯電量の差を求め、以下の4段階の基準に基づいて評価した。
A:帯電量の差が、±3μC未満
B:帯電量の差が、±3μC以上、±5μC未満
C:帯電量の差が、±5μC以上、±7μC未満
D:帯電量の差が、±7μC以上
【0136】
[低温低湿環境下の飽和帯電量]
温度10℃、湿度30%の環境試験室で、標準キャリアP−01(日本画像学会)100質量部と、実施例および比較例の各トナー5質量部を1時間放置し、環境試験室でステンレスポットに仕込み、環境試験室内に設置したボールミルにて一定回転数で回転混合させた。回転スタートから20分撹拌後の現像剤の飽和帯電量(μC/g)をブローオフ装置にて測定し、1分後の帯電量と20分後の帯電量の差を求め、以下の4段階の基準に基づいて評価した。
A:帯電量の差が、±3μC未満
B:帯電量の差が、±3μC以上、±5μC未満
C:帯電量の差が、±5μC以上、±7μC未満
D:帯電量の差が、±7μC以上
【0137】
[かぶり]
実施例および比較例の各現像剤を、それぞれ上述した現像器に充填し、画像形成装置にセットした。上記画像形成装置において、富士ゼロックス(株)製A4用紙(J紙)に所定のパターンの印字(5%印字)を連続で10枚行った後、転写された記録媒体の印字されていない部分への、トナー粒子付着度合いを目視にて確認し、以下の4段階の基準に従い評価した。
A:印字されていない部分に、トナー粒子が確認できない
B:印字されていない部分に、トナー粒子が僅かに付着している
C:印字されていない部分に、トナー粒子が多少付着している
D:印字されていない部分に、トナー粒子が多量に付着している
【0138】
【表1】
【0139】
このように、表面がポリアリルアミン類により表面改質されたトナー粒子を含有する現像剤を用いた実施例では、比較例に比べて、正帯電性に優れていた。また、実施例では、比較例に比べて、現像性に優れ、高温高湿環境下および低温低湿環境下の帯電量が適正であり、かぶりの発生も少なかった。
【符号の説明】
【0140】
1 プロセスカートリッジ、3 画像形成装置、10 帯電装置、12 露光装置、14 感光体、16 現像装置、18 転写ロール、20 クリーニングブレード、22 定着ロール、24 記録用紙。
図1
図2