(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一方向クラッチが有する内輪と外輪との間の係合子を収容するポケットが周方向に複数形成され、各ポケットに設けられているばねが前記係合子を周方向一方に付勢することにより周方向他方の反力が作用する分割型保持器であって、
軸方向に対向して前記内輪と前記外輪との間に設けられると共に、内周側に複数の凹部が周方向に間隔をあけて形成されている一対の円環部と、
前記一対の円環部とは別体であって前記凹部に嵌合する柱端部を軸方向両側に有すると共に、前記反力が作用する柱部と、
を有し、
前記凹部は、前記内輪の外周面との間に前記周方向他方に向かって径方向に狭くなる楔形スペースを構成するための、楔面を有し、
前記柱端部は、前記周方向他方側に向かって径方向寸法が小さくなる楔形状を有し、かつ、前記楔面に接触する径方向外側面及び前記内輪の外周面に接触する径方向内側面を有し、
前記凹部の周方向寸法は、前記柱端部の周方向寸法よりも大きく設定されており、前記反力によって当該柱端部が周方向他方へ押されて当該凹部内を移動しても、当該柱端部の周方向他方側に当該凹部との間で隙間が形成され、当該反力を、前記径方向外側面及び前記径方向内側面からそれぞれ前記円環部及び前記内輪に伝達させることを特徴とする分割型保持器。
一方向クラッチが有する内輪と外輪との間の係合子を収容するポケットが周方向に複数形成され、各ポケットに設けられているばねが前記係合子を周方向一方に付勢することにより周方向他方の反力が作用する分割型保持器であって、
軸方向に対向して前記内輪と前記外輪との間に設けられると共に、内周側に複数の凹部が周方向に間隔をあけて形成されている一対の円環部と、
前記一対の円環部とは別体であって前記凹部に嵌合する柱端部を軸方向両側に有すると共に、前記反力が作用する柱部と、
を有し、
前記凹部は、前記内輪の外周面との間に前記周方向他方に向かって径方向に狭くなる楔形スペースを構成するための、楔面を有し、
前記柱端部は、前記周方向他方側に向かって径方向寸法が小さくなる楔形状を有し、かつ、前記楔面に接触する径方向外側面及び前記内輪の外周面に接触する径方向内側面を有し、前記反力を、当該径方向外側面及び当該径方向内側面からそれぞれ前記円環部及び前記内輪に伝達させ、
前記径方向外側面は平面からなり、前記楔面も平面からなることを特徴とする分割型保持器。
内輪と、前記内輪に同心状の外輪と、前記内輪と前記外輪との間に設けられている複数の係合子と、前記係合子それぞれを収容するポケットが周方向に複数形成されている保持器と、前記ポケットに設けられ前記係合子を周方向一方に付勢するばねと、を備え、
前記ばねが前記係合子を周方向一方に付勢することにより周方向他方の反力が前記保持器に作用する構成であり、
前記保持器は、
軸方向に対向して前記内輪と前記外輪との間に設けられていると共に、内周側に複数の凹部が周方向に間隔をあけて形成されている一対の円環部と、
前記一対の円環部とは別体であって前記凹部に嵌合する柱端部を軸方向両側に有すると共に、前記反力が作用する柱部と、
を有し、
前記凹部は、前記内輪の外周面との間に前記周方向他方に向かって径方向に狭くなる楔形スペースを構成するための、楔面を有し、
前記柱端部は、前記周方向他方側に向かって径方向寸法が小さくなる楔形状を有し、かつ、前記楔面に接触する径方向外側面及び前記内輪の外周面に接触する径方向内側面を有し、
前記凹部の周方向寸法は、前記柱端部の周方向寸法よりも大きく設定されており、前記反力によって当該柱端部が周方向他方へ押されて当該凹部内を移動しても、当該柱端部の周方向他方側に当該凹部との間で隙間が形成され、当該反力を、前記径方向外側面及び前記径方向内側面からそれぞれ前記円環部及び前記内輪に伝達させることを特徴とする一方向クラッチ。
【背景技術】
【0002】
風力発電装置として、ブレードが風力を受け、このブレードと接続されている主軸が回転し、この主軸の回転を増速機により増速させて発電機を駆動させるものが知られている。このような風力発電装置では、風速や風向の変化により、ブレードから主軸及び増速機等を介して発電機に伝わる回転数が変化することで、発電効率が低下するという問題があった。
【0003】
そこで、本出願人は、発電効率を向上させるために、増速機と発電機との間に一方向クラッチを配置した風力発電装置を既に提案している(特許文献1参照)。この風力発電装置は、風速等が変化して主軸の回転が減速しても、一方向クラッチにより増速機の出力軸と発電機の入力軸との接続を遮断することにより、発電機の入力軸が急激に減速することなく慣性によって回転し続けることができるため、入力軸の平均回転速度を増加させ、発電効率を向上させることが可能となる。
【0004】
前記一方向クラッチは、
図8に示すように、内輪101と、外輪102と、複数のころ(係合子)103と、これら複数のころ103を周方向に間隔をあけて保持する環状の保持器104と、各ころ103を周方向一方側に弾性的に付勢するばね105とを備えている。保持器104は、軸方向に対向する一対の円環部106と、両円環部106を連結する複数の柱部107とが一体に形成されており、両円環部106と周方向に隣接する柱部107との間に、一つのころ103及び一つのばね105を収容するポケット108が形成されている。また、柱部107には、ばね105をポケット108内で支持するために周方向に突出している突起部109が設けられている。
【0005】
しかし、円環部106と柱部107とに囲まれた空間によりポケット108が形成され、また、柱部107は突起部109を有する複雑な形状をしているため、このような保持器104を削り出しによって製作する方法では、コストが増大するため、好ましくない。また、合成樹脂材料を射出成型し、前記構成を有する保持器104を一体形成する方法も考えられるが、発電装置に用いられる保持器104は大型であるため、このような大型の保持器104を射出成型により形成するのは困難である。
【0006】
そこで、本出願人は、更に、前記のような一方向クラッチ用の保持器を容易に製作することができるように、分割型のものを提案している(特許文献2参照)。つまり、
図9に示すように、この分割型保持器90は、軸方向に対向する一対の円環部91と、これら円環部91とは別体である複数の柱部92とを有しており、各柱部92の軸方向両端部が、両円環部91にそれぞれ嵌合することで組み立てられる構造となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図9に示す分割型保持器90によれば、円環部91と柱部92とを別体にすることで、それぞれ個別に製作することができ、保持器90を容易に製作することができる。また、柱部92は、図外のばねを支持するための突起部96を有しているが、この突起部96を含む柱部92を、例えば射出成形することで容易に製作することができる。
【0009】
前記のとおり、保持器90を分割型とすることでその製作は容易となるが、柱部92の両端部(柱端部93)の形状、及び、この柱端部93が嵌合する円環部91の凹部94の形状は、複雑となる(
図10参照)。なお、
図10は、分割型保持器90の柱端部93、及びその周囲を軸方向から見た説明図である。
【0010】
柱端部93の形状が複雑になる理由は、前記のとおり、ばね105がころ103を周方向一方側へ付勢することにより、周方向他方側へ向かう反力Fが柱部92に作用し、この反力Fを、柱端部93を介して円環部91が支持する構成(円環部91へ伝達させる構成)が必要となるためである。すなわち、前記反力Fを円環部91が支持するためには、柱端部93の周方向他方側に、周方向にほぼ直交する荷重受け面95を形成し、この荷重受け面95を凹部94の側面94aに接触させる必要があるためである。しかも、これら荷重受け面95と側面94aとの接触面圧を下げるために、荷重受け面95の面積を広くしている。
【0011】
このように、柱端部93の周方向他方側に広い面積の荷重受け面95を設けるためには、柱端部93の径方向寸法を拡大させる必要があり、この結果、
図10に示すように、柱端部93の輪郭形状(断面形状)が凹凸の多い複雑な形状となっている。また、荷重受け面95と側面94aとを正確に面接触させるためには、これら両面(95,94a)を同形状とする必要があり、このため、各部を製作する際に高い寸法精度の管理が要求される。このため、柱端部93及びこれが嵌合する凹部94については、凹凸が多く形状が複雑であるのみならず、製作においても細かな寸法管理が必要となる。
【0012】
そこで、本発明は、構成が簡素化された分割型保持器、この分割型保持器を有している一方向クラッチ、及び、この一方向クラッチを備えている発電装置用の継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明は、一方向クラッチが有する内輪と外輪との間の係合子を収容するポケットが周方向に複数形成され、各ポケットに設けられているばねが前記係合子を周方向一方に付勢することにより周方向他方の反力が作用する分割型保持器であって、軸方向に対向して前記内輪と前記外輪との間に設けられると共に、内周側に複数の凹部が周方向に間隔をあけて形成されている一対の円環部と、前記一対の円環部とは別体であって前記凹部に嵌合する柱端部を軸方向両側に有すると共に、前記反力が作用する柱部と、を有し、前記凹部は、前記内輪の外周面との間に前記周方向他方に向かって径方向に狭くなる楔形スペースを構成するための、楔面を有し、前記柱端部は、前記周方向他方側に向かって径方向寸法が小さくなる楔形状を有し、かつ、前記楔面に接触する径方向外側面及び前記内輪の外周面に接触する径方向内側面を有し
、前記反力を、当該径方向外側面及び当該径方向内側面からそれぞれ前記円環部及び前記内輪に伝達させることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、円環部の凹部の楔面と内輪の外周面との間に構成される周方向他方に向かって径方向に狭くなる楔形スペースに、周方向他方に向かって径方向寸法が小さくなる楔形状を有した柱端部が嵌合する。そして、前記凹部の楔面に柱端部の径方向外側面が接触し、前記内輪の外周面に柱端部の径方向内側面が接触する。このため、ばねが係合子を周方向一方に付勢することで、その反力(周方向他方の反力)が柱部に作用するが、楔形状の柱端部が楔形スペースに嵌合し、前記反力は、柱端部の径方向外側面及び径方向内側面からそれぞれ円環部及び内輪に伝達されるので、従来のような柱端部の周方向他方側に設けられ周方向にほぼ直交する荷重受け面が不要となる。このため、柱端部の形状が簡素化され、また、この柱端部が嵌合する円環部の凹部の形状も簡素化され、各部の構成が簡素化された分割型保持器となる。
【0015】
(2)また、前記径方向外側面は平面からなり、前記楔面も平面からなるのが好ましく、これにより、柱端部の径方向外側面、及びこの径方向外側面と接触する楔面の形状が簡素化される。
(3)また、前記径方向内側面は、平面からなるのが好ましく、これにより、柱端部の径方向内側面の形状が簡素化される。
【0016】
(4)また、前記凹部の周方向寸法は、前記柱端部の周方向寸法よりも大きく設定されているのが好ましい。
この場合、凹部と柱端部との間に周方向の隙間が形成され、柱端部を円環部の凹部に嵌合させる作業(柱部と円環部との組み立て作業)が容易となる。
【0017】
(5)また、本発明の一方向クラッチは、内輪と、前記内輪に同心状の外輪と、前記内輪と前記外輪との間に設けられている複数の係合子と、前記係合子それぞれを収容するポケットが周方向に複数形成されている保持器と、前記ポケットに設けられ前記係合子を周方向一方に付勢するばねと、を備え、
前記ばねが前記係合子を周方向一方に付勢することにより周方向他方の反力が前記保持器に作用する構成であり、前記保持器は、軸方向に対向して前記内輪と前記外輪との間に設けられていると共に、内周側に複数の凹部が周方向に間隔をあけて形成されている一対の円環部と、前記一対の円環部とは別体であって前記凹部に嵌合する柱端部を軸方向両側に有すると共に、前記反力が作用する柱部と、を有し、前記凹部は、前記内輪の外周面との間に前記周方向他方に向かって径方向に狭くなる楔形スペースを構成するための、楔面を有し、前記柱端部は、前記周方向他方側に向かって径方向寸法が小さくなる楔形状を有し、かつ、前記楔面に接触する径方向外側面及び前記内輪の外周面に接触する径方向内側面を有し
、前記反力を、当該径方向外側面及び当該径方向内側面からそれぞれ前記円環部及び前記内輪に伝達させることを特徴とする。
本発明によれば、前記(1)に記載した、各部の構成が簡素化された分割型保持器を備えていることで、一方向クラッチのコストダウンが可能となる。
【0018】
(6)また、本発明は、外力により回転する主軸と、前記主軸の回転を増速する回転伝達機構、及び当該回転伝達機構が増速した回転を出力する出力軸を有する増速機と、前記出力軸の回転を入力として回転する入力軸を有すると共に、当該入力軸と一体回転するロータの回転により発電する発電機と、を備えている発電装置に用いられる継手であって、前記増速機の前記出力軸と一体回転する第1回転体と、前記発電機の前記入力軸と一体回転する第2回転体と、前記第1回転体と前記第2回転体との間に配置されている前記(5)の一方向クラッチと、を有していることを特徴とする。
本発明によれば、前記(5)の一方向クラッチを有していることで、継手においてもコストダウンが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の分割型保持器によれば、各部の構成が簡素化され、製作が容易となる。そして、本発明の一方向クラッチ及び発電装置用の継手によれば、各部の構成が簡素化された分割型保持器を備えていることで、コストダウンが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、発電装置を示す概略構成図である。この発電装置は風力発電装置1であり、風力(外力)を受けて回転する主軸2と、この主軸2に連結された増速機3と、この増速機3に連結された発電機4とを備えており、主軸2の回転を増速機3により増速させ、増速させた軸の回転により発電機4を駆動し、発電が行われる。
【0022】
発電機4は、例えば誘導発電機により構成されており、増速機3により増速された回転を入力とし回転する入力軸41、発電機4に内蔵されたロータ42、及び図示しないステータ等を有する。ロータ42は入力軸41に一体回転可能に連結されており、発電機4は、入力軸41が回転してロータ42が駆動することに伴って発電するように構成されている。
【0023】
増速機3は、主軸2の回転を入力してその回転を増速する歯車機構(回転伝達機構)30を備えている。この歯車機構30は、遊星歯車機構31と、この遊星歯車機構31により増速された回転を入力してさらにその回転を増速する高速段歯車機構32とを備えている。
遊星歯車機構31は、内歯車(リングギヤ)31aと、主軸2に一体回転可能として連結された遊星キャリア(図示省略)に保持された複数の遊星歯車31bと、遊星歯車31bに噛み合う太陽歯車31cとを有している。これにより、主軸2とともに遊星キャリアが回転すると、遊星歯車31bを介して太陽歯車31cが回転し、その回転が高速段歯車機構32の低速軸33に伝達される。
【0024】
高速段歯車機構32は、低速ギヤ33aを有する低速軸33と、第1中間ギヤ34a及び第2中間ギヤ34bを有する中間軸34と、高速ギヤ35aを有する出力軸35とを備えている。
低速軸33は、その直径が例えば約1mの大型の回転軸からなり、主軸2と同心上に配置されている。低速軸33の軸方向両端部はころ軸受36a,36bにより回転自在に支持されている。
【0025】
中間軸34は、低速軸33と平行に配置されており、その軸方向両端部がころ軸受37a,37bにより回転自在に支持されている。中間軸34の第1中間ギヤ34aは低速ギヤ33aと噛み合い、第2中間ギヤ34bは高速ギヤ35aと噛み合っている。
出力軸35は、中間軸34と平行に配置されており、回転トルクを出力する。出力軸35の軸方向の一端部35b及び他端部(出力端部)35c側は、それぞれころ軸受38,39により回転自在に支持されている。
【0026】
以上の構成により、主軸2の回転は、遊星歯車機構31のギヤ比、低速ギヤ33aと第1中間ギヤ34aとのギヤ比、及び第2中間ギヤ34bと高速ギヤ35aとのギヤ比により3段階に増速されて、出力軸35から出力される。すなわち、風力による主軸2の回転は増速機3により3段階に増速されて、出力軸35から出力され、この出力軸35の回転トルクによって発電機4が駆動される。
【0027】
また、風力発電装置1は、増速機3の出力軸35と発電機4の入力軸41とを連結するための継手9を備えている。
図2は、継手9、及びその周囲を示す縦断面図である。継手9は、出力軸35と入力軸41との間の領域に設けられ、これら出力軸35と入力軸41との間でトルク伝達可能とする。継手9は、第1回転体5、第2回転体6、一方向クラッチ7、及び転がり軸受8を有している。一方向クラッチ7及び転がり軸受8は、第1回転体5と第2回転体6との間に配置されている。
【0028】
第1回転体5は、出力軸35と同心上に配置された軸部材であり、その軸方向一端部(
図2の左端部)から軸方向他端部(
図2の右端部)に向けて、フランジ部51、大径部52及び小径部53をこの順に有している。フランジ部51は、出力軸35の端部フランジ35dに着脱可能に固定されており、第1回転体5は出力軸35と一体回転する。
【0029】
第2回転体6は、第1回転体5の径方向外側に同心状に配置されており、円筒部61と、この円筒部61の軸方向他端部に設けられたフランジ部62とを有している。本実施形態では、第2回転体6は、第1回転体5の径方向外側に配置されているが、第1回転体5を筒形状として、この第1回転体5の径方向内側に配置されていてもよい。フランジ部62は、入力軸41の端部フランジ41aに着脱可能に固定されており、第2回転体6は入力軸41と一体回転する。
円筒部61の内周面は円筒面とされており、この円筒部61の軸方向一端部と、第1回転体5の大径部52との間には、環状のシール部材10が設けられている。
【0030】
各転がり軸受8は、第1回転体5の小径部53と第2回転体6の円筒部61との間に配置されており、第1回転体5及び第2回転体6を互いに相対回転可能として支持している。各転がり軸受8は、円筒ころ軸受からなり、内輪81及び外輪82と、内輪81と外輪82との間に転動可能に配置された複数の円筒ころ83とを備えている。第2回転体6が有する円筒部61の軸方向両端部の領域A及び領域Cが、転がり軸受8の外輪82としての機能を有しており、この領域A,Cの各内周面に外輪82の外輪軌道面82aが形成されている。この外輪軌道面82aと、内輪81の外周に形成された内輪軌道面81aとの間に、円筒ころ83が転動可能に配置されている。
【0031】
図3は、一方向クラッチ7の横断面図である。
図2及び
図3において、一方向クラッチ7は、内輪71と、この内輪71に同心状となる外輪72と、内輪71の外周面71aと外輪72の内周面72aとの間に設けられている複数のころ(係合子)73と、ころ73それぞれを収容するポケット78が周方向に複数形成されている保持器74と、各ポケット78に設けられころ73を周方向一方(
図3では、時計回り方向)に向かって弾性的に付勢するばね75とを備えている。
【0032】
内輪71は、第1回転体5の小径部53の軸方向中央部に外嵌して固定されており(
図2参照)、第1回転体5と一体回転する。第2回転体6の円筒部61の軸方向中央部の領域Bは、一方向クラッチ7の外輪72としての機能を有している。ころ73は、円柱形状であり、本実施形態では周方向に8つ配置されている。ばね75は、圧縮コイルバネからなり、保持器74の各ポケット78に個別に収容されている。
なお、本実施形態では、第2回転体6を、一方向クラッチ7の外輪72及び転がり軸受8の外輪82として用いているが、これらの外輪72,82を第2回転体6と別体に有していてもよい。
【0033】
図3において、内輪71の外周面71aには、ころ73と同数(8つ)の平坦な(平面状の)カム面71a1が形成されており、外輪72の内周面72aは円筒面とされている。これにより、カム面71a1と内周面72aとの間には、楔状空間Sが周方向に複数(8つ)形成される。そして、ころ73及びばね75は各楔状空間Sに個別に配置されており、ばね75がころ73を楔状空間Sが狭くなる方向(周方向一方)に付勢している。ころ73の外周面は、カム面71a1及び内周面72aに接触する接触面となっており、この接触面は幅方向(軸方向)に真っ直ぐに形成されている。
【0034】
このように構成された一方向クラッチ7では、第1回転体5が増速回転することにより、第1回転体5の回転速度が、第2回転体6の回転速度を上回ろうとする場合には、内輪71が外輪72に対して一方向(
図3の時計回り方向)に相対回転しようとする。この場合、ばね75の付勢力により、ころ73は楔状空間Sが狭くなる方向へ僅かに移動して、ころ73の接触面(外周面)が、内輪71の外周面71a(カム面71a1)及び外輪72の内周面72aに圧接し、ころ73が内外輪71,72の間に噛み合った状態となる。これにより、内外輪71,72は前記一方向に一体回転可能となり、第1回転体5と第2回転体6とを一体回転可能に接続する。この結果、出力軸35と入力軸41とを一体回転させることができる。
【0035】
また、第1回転体5が増速回転後に一定速回転となり、第1回転体5の回転速度が、第2回転体6の回転速度と同一になる場合には、ころ73が内外輪71,72の間に噛み合った状態で保持される。このため、一方向クラッチ7は、内外輪71,72の前記一方向への一体回転を維持し、第1回転体5と第2回転体6と(出力軸35と入力軸41と)は一体回転し続ける。
【0036】
一方、第1回転体5が減速回転することにより、第1回転体5の回転速度が、第2回転体6の回転速度を下回る場合には、内輪71が外輪72に対して他方向(
図3の反時計回り方向)に相対回転しようとする。この場合には、ばね75の付勢力に抗して、ころ73は楔状空間Sが広くなる方向へ僅かに移動することにより、ころ73と内外輪71,72との噛み合いが解除される。このように、ころ3の噛み合いが解除されることで、内外輪71,72の前記他方向への相対回転が許容され、第1回転体5と第2回転体6との接続が遮断される。この結果、出力軸35と入力軸41とが相対回転可能となる(空転する)。
【0037】
図4は、前記一方向クラッチ7の保持器74を示す斜視図である。この保持器74は、分割型保持器であって、軸方向に対向する一対の円環部76と、これら円環部76とは別体である複数の柱部77とを有している。各柱部77の軸方向両端部(柱端部64)が、両円環部76に設けられている後述の凹部84に嵌合し、これにより、柱部77は一対の円環部76を連結する。両円環部76と、周方向で隣接する柱部77との間にポケット78が形成され、各ポケット78にころ73が収容される(
図3参照)。これにより、保持器74は、複数のころ73を周方向に間隔をあけて保持することができる。
【0038】
図5は、保持器74が有する円環部76の斜視図である。円環部76は、炭素鋼やアルミ等の金属製であり、例えば、外径が300mm、軸方向の厚みが15mmの環状部材である。そして、一方向クラッチ7(
図3参照)の内輪71と外輪72との間に、一対の円環部76が軸方向に対向して設けられる。
図5において、各円環部76の内周側には、複数の凹部84が、周方向に間隔をあけて形成されている。各凹部84は、周方向両側にある第1側面85及び第2側面86と、これら側面85,86の間に設けられ径方向内側に臨む楔面87とを有している。
【0039】
図6は、保持器74が有する柱部77の斜視図である。柱部77は、合成樹脂材料を射出成型することにより作製されている。柱部77は、本体部77aと、本体部77aの周方向の一端面から突出して設けられている突起部77bと、本体部77aの軸方向両側にそれぞれ設けられている一対の柱端部64とを有している。突起部77bは、
図3に示すように、ばね75をポケット78内の所定位置で支持するためのものであり、この突起部77bにコイル状のばね75が外嵌した状態となる。
【0040】
図6において、柱端部64は、本体部77aよりも径方向(図の上下方向)の厚みが小さく形成されており、柱端部64の外周面と本体部77aの外周面との間には段差面77dが形成されている。この柱端部64を、円環部76に設けられている凹部84(
図5参照)に嵌合させることで、この分割型の保持器74は組み立てられる(
図4参照)。
【0041】
このように構成された一方向クラッチ7によれば、保持器74を構成する円環部76と柱部77とを別体としたので、円環部76及び柱部77をそれぞれ個別に製作することができる。したがって、保持器の全体を一体に製作する場合に比べて、容易に製作することができる。
【0042】
ここで、前記のとおり、各ポケット78において(
図3参照)、ばね75は柱部77ところ73との間に位置しており、ばね75がころ73を周方向一方に向かって付勢している。このため、ころ73を付勢するばね75の反力が柱部77に作用する。なお、この反力は、周方向他方に向かう力となる。
図7は、柱部77が有する柱端部64、及びその周囲を軸方向から見た説明図である。
図7に示す矢印Fは、前記反力を示す。ばね75による反力Fは、柱端部64を介して円環部76に作用する。
【0043】
図7に示すように、円環部76に形成されている前記凹部84は、径方向内側へ臨む楔面87を有しており、この楔面87により、この凹部84では、内輪71の外周面71aとの間に、周方向他方に向かって径方向に狭くなる楔形スペース88が構成される。なお、凹部84は、前記のとおり、楔面87の周方向両側に位置する第1側面85及び第2側面86を有しており、これらの面によって凹部84は径方向内側に向かって開口する切り欠き形状を有している。
【0044】
これに対して、この凹部84に嵌合している柱端部64は、楔形スペース88に対応する楔形状を有している。つまり、柱端部64は、楔形スペース88に対応するよう、周方向他方に向かって径方向寸法が徐々に小さくなる楔形状を有している(
図6、
図7参照)。本実施形態の柱端部64は、保持器74の軸方向に平行な方向から見て、(角に円弧部65bを有する)ほぼ台形を有しており、前記楔面87に接触する径方向外側面65、内輪71の外周面71aのカム面71a1に接触する径方向内側面66、周方向一方側の第1周方向側面67、及び周方向他方側の第2周方向側面68を有している。側面67,68は、それぞれ径方向に広がる面であって、両者はほぼ平行であるが、径方向外側面65はその全面において周方向他方に向かうにしたがって径方向内側面66に接近する傾斜面となっている。
【0045】
以上の構成により、楔形状を有した柱端部64が楔形スペース88に嵌合し、凹部84の楔面87に柱端部64の径方向外側面65が接触し、内輪71の外周面71aのカム面71a1に柱端部64の径方向内側面66が接触する。このため、前記のとおり、ばね75の反力(周方向他方の反力)Fが柱部77に作用するが、楔形状の柱端部64が楔形スペース88に嵌合することで、この反力Fは、柱端部64の径方向外側面65及び径方向内側面66からそれぞれ円環部76及び内輪71に伝達される。そして、楔面87及びカム面71a1に接触するこれら径方向外側面65及び径方向内側面66によって、柱部77は周方向について位置決めされる。
【0046】
このため、本実施形態の分割型保持器74によれば、従来のような(
図10参照)柱端部93の周方向他方側に設けられている荷重受け面95が不要となる。なお、この荷重受け面95は、周方向にほぼ直交し凹部94の側面94aに接触する面であって、ばね105の反力Fを受ける面である。
このように荷重受け面95が不要となる結果、柱端部64の形状が簡素化され、また、この柱端部64が嵌合する円環部76の凹部84の形状も簡素化され、各部の構成が簡素化された分割型保持器74となる。
【0047】
更に、本実施形態では、柱端部64の径方向外側面65は、径方向外側に凸となる半径の大きい円弧面であってもよいが、平面からなり、また、この径方向外側面65が接触する楔面87も、径方向外側に凸となる半径の大きい円弧面であってもよいが、平面からなる。また、内輪71のカム面71a1は平面からなり、このカム面71a1に接触する径方向内側面66は、その全部において平面からなる。そして、柱端部64の第1周方向側面67及び第2周方向側面68も平面からなり、凹部84の第1側面85及び第2側面86も平面からなる。
このため、本実施形態の柱端部64は、保持器74の軸方向に平行な方向から見て、ほぼ台形を有するものとなり、特に、柱端部64の径方向外側面65、凹部84の楔面87の形状、更には、柱端部64の径方向内側面66の形状が、従来と比較して、簡素化され、柱部77及び円環部76それぞれの作製が容易となる。
なお、本実施形態では、径方向外側面65と側面67,68との間には、径方向外側に向かって凸となる円弧部65bが介在していることから、柱端部64は、保持器74の軸方向に平行な方向から見て、角に円弧部65bを有するほぼ台形を有する。
【0048】
また、本実施形態では、凹部84の周方向寸法K1は、柱端部64の周方向寸法K2よりも大きく設定されている(K1>K2)。このため、凹部84と柱端部64との間には、周方向の隙間Q1,Q2が形成される。特に、前記反力Fによって柱端部64が周方向他方へ押されて凹部84(楔形スペース88)内を移動しても、周方向他方側に形成される隙間Q1は残されるように、凹部84及び柱端部64の寸法は設定されている。これにより、反力Fが作用した際に、凹部84の楔面87に柱端部64の径方向外側面65が確実に面接触し(圧接させ)、内輪71の外周面71aのカム面71a1に柱端部64の径方向内側面66が確実に面接触する(圧接させる)ことができる。
【0049】
そして、凹部84と柱端部64との間に周方向の隙間Q1,Q2が形成されていることにより、円環部76と柱部77との組み立てにおいて、柱端部64を円環部76の凹部84に嵌合させる作業が容易となる。更に、柱端部64は、前記のような楔形状を有していればよく、細かな寸法管理を行って柱端部64及び凹部84を形成する必要もなく、柱部77及び円環部76の作製が容易となる。
【0050】
以上より、
図2に示す一方向クラッチ7は、柱部77及び円環部76の構成が簡素化された分割型保持器74を備えていることで、コストダウンが可能となり、また、
図2に示す継手9は、前記分割型保持器74を備えた一方向クラッチ7を有していることで、この継手9においてもコストダウンが可能となる。
【0051】
なお、前記実施形態では、一つの円環部76は、一枚の円環部材から構成されている場合について説明したが、(図示しないが)複数枚の円環部材を軸方向に重合して一つの円環部76を構成してもよい。この場合、一枚の円環部材に凸部が形成され、これに重ねられる他の円環部材に前記凸部が嵌合する凹部が形成され、複数枚の円環部材が相互固定され、一つの円環部76が構成される。
【0052】
また、前記実施形態では(
図6参照)、柱端部64は、四つの面(65,66,67,68)を有して輪郭を形成しており、柱端部64の形状(側面視形状、断面形状)が、ほぼ台形である場合について説明したが、柱端部64は、径方向外側面65及び径方向内側面66を有して楔形状を成していればよく、例えば図示しないが、周方向他方側の周方向側面(68)を省略して(又は、他の面とくらべて極端に狭くして)、柱端部64の形状を、ほぼ三角形としてもよい。
【0053】
また、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく適宜変更して実施可能である。例えば、上記実施形態における一方向クラッチ7は、保持器74の円環部76を金属製としているが、合成樹脂によって円環部76を形成してもよい。この場合、合成樹脂材料を射出成型することにより、円環部76を容易に製作することができる。
また、上記実施形態の発電装置用の継手9は、外力として風力を用いる風力発電装置1用の継手として例示したが、水力や火力等の他の外力を用いて発電する発電装置にも適用することができる。さらに、本発明の一方向クラッチ7は、発電装置以外にも適用することができる。