(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付している。
【0017】
(状態判定装置)
本発明の実施の形態に係る状態判定装置1は、機器の状態を示す項目値に基づいて、機器の状態を判定する。本発明の実施の形態において「項目値」は、機器の状態を判定するための指標値であって、例えば、機器に設けられたセンサの示す測定値である。また、所定の機器から同一のタイミングで取得した複数の項目の項目値の集合を、サンプルデータと称する場合もある。状態判定装置1は、機器の状態を判定するのみならず、複数の機器を備えるプラントの状態を判定しても良い。
【0018】
本発明の実施の形態に係る状態判定装置1は、
図1に示すように、中央処理制御装置10、記憶装置50、入出力制御装置60、入力装置61、出力装置62および通信制御装置63などを備える一般的なコンピュータで実現される。状態判定装置1は、一般的なコンピュータが所定の手段を機能させるためのプログラムを実行することにより、中央処理制御装置10および記憶装置50に、
図1に示す各手段およびデータを実装し、本発明の実施の形態に係る状態判定方法を実現する。
【0019】
入力装置61は、入出力制御装置60を介して中央処理制御装置10に、操作者の指示やデータを入力する。入力装置61は、例えば、キーボードやマウスなどである。出力装置62は、中央処理制御装置10の出力結果を、操作者が認識可能な形式で出力する。出力装置62は、表示装置や印刷装置などである。通信制御装置63は、通信ネットワークを介してデータを送受信するインタフェースである。通信制御装置63は、通信ネットワークと送受信したデータを、入出力制御装置60を介して中央処理制御装置10と送受信する。入出力制御装置60は、入力装置61および通信制御装置63から入力されたデータを中央処理制御装置10に出力するとともに、中央処理制御装置10から入力されたデータを出力装置62および通信制御装置63に出力する。
【0020】
記憶装置50は、本発明の実施の形態に係る状態判定プログラムを記憶するとともに、単位データ51およびサンプル蓄積データ52を記憶する。
【0021】
単位データ51は、正常状態の機器のサンプルデータの集合データである。ここでサンプルデータは、同一のタイミングで取得した、複数の項目の項目値を含み、具体的には、同一のタイミングで取得した複数のセンサの測定値である。
【0022】
サンプル蓄積データ52は、日時とその日時に機器から取得したサンプルデータを対応づけたデータである。サンプル蓄積データ52は、蓄積手段30によって逐次更新される。
【0023】
本発明の実施の形態において、単位データ51とサンプル蓄積データ52が別のデータである場合を説明するがこれに限られない。例えば、サンプル蓄積データ52に、単位データの要素となるサンプルデータであるか否かを示すフラグを設けても良い。この場合、状態判定装置1は、このフラグがチェックされたサンプルデータの集合を、単位データ51として処理する。
【0024】
中央処理制御装置10は、記憶装置50から状態判定プログラムを読み出し実行することにより、単位空間生成手段20、蓄積手段30および判定手段40を備える。
【0025】
単位空間生成手段20は、機器の正常状態における複数の項目の項目値を含むサンプルデータから、単位データ51を生成し、単位データ51の評価値を算出する。単位空間生成手段20は、サンプル蓄積データ52として蓄積されたサンプルデータから、機器の正常状態を示すと判定されたサンプルデータを抽出して、単位データ51を生成する。単位空間生成手段20は、設備投入時に単位データ51を生成するとともに、月に一度や季節に一度などの所定のタイミングで、単位データ51を更新する。
【0026】
蓄積手段30は、機器から取得したサンプルデータを、日時と対応づけてサンプル蓄積データ52として蓄積する。蓄積手段30は、機器からサンプルデータを取得する度に、サンプル蓄積データ52を更新する。
【0027】
判定手段40は、機器に関して新たに取得したサンプルデータと、単位データ51とを比較して、取得したサンプルデータが示す機器の状態を判定する。判定手段40は、稼働中の機器から逐次取得するサンプルデータに基づいて、その機器が正常状態であるか否かを判定する。判定手段40は、機器からサンプルデータを取得する度に判定しても良いし、所定数のサンプルデータが蓄積された後に判定しても良い。また判定手段40は、単位空間生成手段20により単位データ51が更新されると、更新後の単位データ51に基づいて、新たに取得したサンプルデータが示す機器の状態を判定する。
【0028】
本発明の実施の形態において状態判定装置1は、MT法を用いて、機器が正常に稼働しているか否かを判定する場合を説明する。単位空間生成手段20は、機器の正常状態を示すサンプルデータの集合である単位データ51に基づいて、予め第1のマハラノビス距離を算出する。判定手段40は、新たに取得したサンプルデータに基づいて第2のマハラノビス距離を算出する。判定手段40は、第2のマハラノビス距離が、第1のマハラノビス距離より小さい場合、新たにサンプルデータを取得した時点で、機器が正常状態であると判定する。一方、判定手段40は、第2のマハラノビス距離が、第1のマハラノビス距離より大きい場合、新たにサンプルデータを取得した時点で、単位データ51が示す既知の正常状態とは異なる状態であると判定する。
【0029】
ここで、単位データ51は、既に正常状態と判定されたサンプルデータが含まれているので、単位データ51に含まれるサンプルデータと同様のサンプルデータを取得すると、判定手段40は、正常状態であると判定する。しかしながら、現実の機器の稼働において、単位データ51が全ての正常状態のサンプルデータを含んでいるとは限らず、単位データ51が未知の正常状態も存在すると考えられる。例えば、環境変化などにより機器の排気を行うと、正常状態であるにもかかわらず、項目値が大きく変化する場合がある。このような変化後のサンプルデータが単位データ51に含まれる場合、変化後のサンプルデータは正常と判断されうる。しかしながら、変化後のサンプルデータが単位データ51に含まれていない場合、変化後のサンプルデータに関するマハラノビス距離は、単位データ51のマハラノビス距離と比べて大きく算出されてしまう。これにより、判定手段40は、正常状態であるにもかかわらず、異常と判断することにより、誤検出を引き起こす場合がある。
【0030】
そこで本発明の実施の形態に係る判定手段40は、サンプルデータが正常状態を示すか否かを判定する際、さらに、貢献度の高い項目の項目値と相関の高い項目があるか否かに基づいて、判定する。例えば、単位データ51と比べてマハラノビス距離が大きいサンプルデータについて、貢献度の高い項目X1と、そのX1と項目値の相関の高い項目X2がある場合、このサンプルデータが、機器の正常状態を示すと、判定手段40は判定する。この場合、判定手段40は、このサンプルデータを単位データ51に追加して更新する。その後、単位空間生成手段20は、更新後の単位データ51に基づいて、マハラノビス距離を算出する。判定手段40は、機器の正常状態の判定時に、単位データ51に含ませるか否かを判定してもよいし、例えば、月に一度のバッチ処理などにより機器の正常状態の判定時とは非同期に、判定しても良い。
【0031】
このように本発明の実施の形態に係る状態判定装置1は、サンプルデータが正常状態を示しているか否かを容易に判断することができる。また状態判定装置1は、正常と判定されたサンプルデータを含む単位データ51を、適切に生成することができる。このように、様々な条件で正常と判断されたサンプルデータを含む単位データ51を生成することにより、状態判定装置1は、適切に機器の状態を判定することができる。
【0032】
また本発明の実施の形態に係る状態判定装置1は、複数のセンサ等の項目値を含む機器などに適用することができる。特に、多数のセンサを含み、それぞれ分布形状や特性も異なるプラントなどの場合、一般的に、そのそれぞれについて正常状態を定義することも非常に困難である。これに対し本発明の実施の形態に係る状態判定装置1は、適切にプラントの正常状態を判断することができる。
【0033】
(単位空間生成手段)
本発明の実施の形態に係る単位空間生成手段20を詳述する。なお本発明の実施の形態において、既存の単位データ51にサンプルデータを追加する場合を説明するが、単位データ51を生成する場合に適用しても良い。
【0034】
本発明の実施の形態に係る判定手段40において、機器の正常状態を示すと判定されたサンプルデータが、予め生成された単位データ51に追加された場合、単位空間生成手段20は、更新された単位データ51に基づいてマハラノビス距離を算出する。判定手段40は、サンプルデータが、既に存在する単位データ51の許容範囲外であっても、そのサンプルデータにおいて貢献度の高い項目の項目値と相関を持つ項目がある場合、サンプルデータを、機器の正常状態を示すと判定する。これにより、単位データ51は、様々な条件での正常状態のサンプルデータを含むことができる。
【0035】
単位空間生成手段20は、正常状態における複数の項目の項目値を含むサンプルデータから、単位データ51を生成する。単位データ51は、正常状態と判定されたサンプルデータの集合であって、単位空間とも称される。
【0036】
単位空間生成手段20は、単位データ51について、評価値を算出する。MT法を用いる場合、この評価値は、マハラノビス距離である。単位空間生成手段20は、単位データ51について、各項目の平均および標準偏差を算出して基準化する。次に単位空間生成手段20は、単位データ51について各項目間の相関係数を算出し、相関行列を作成するとともに、この相関行列の逆行列を算出する。単位空間生成手段20は、このように算出した逆行列に基づいて、単位データ51のマハラノビス距離を算出する。
【0037】
ここで単位空間生成手段20は、後述の判定手段40において、対象サンプルデータが単位データ51に追加された場合、追加された後の単位データ51についても、マハラノビス距離を算出する。
【0038】
(単位空間生成方法)
図2を参照して、本発明の実施の形態に係る単位空間生成手段20による単位空間生成処理を説明する。
【0039】
まずステップS1において単位空間生成手段20は、判定手段40などによって新たなサンプルデータが単位データ51に追加されたか否かを判定する。追加されていない場合、そのまま処理を終了する。追加された場合、ステップS2において単位空間生成手段20は、単位データ51の各サンプルデータおよび各項目の項目値を取得する。
【0040】
次に単位空間生成手段20は、ステップS3において、ステップS2で取得した単位データ51の各サンプルデータについて、各項目の平均および標準偏差を算出して基準化する。ステップS4において単位空間生成手段20は、ステップS3で算出した単位データ51の基準化されたデータに基づいて、各項目間の相関係数から相関行列を算出する。ステップS5において単位空間生成手段20は、ステップS4で算出された相関行列の逆行列を算出する。ステップS6において単位空間生成手段20は、ステップS5で単位データ51から算出した逆行列から、単位データ51のマハラノビス距離を算出する。
【0041】
(判定手段)
判定手段40は、蓄積手段30が機器に関して新たに取得した判定対象の対象サンプルデータについて、当該対象サンプルデータが示す機器の状態を判定する。判定手段40は、対象サンプルデータの各項目値に基づいて、当該対象サンプルデータの評価値を算出し、対象サンプルデータの評価値と、単位データ51とを比較して、判定する。ここで判定手段40は、対象サンプルデータの評価値が、単位データ51の評価値の許容範囲外で、対象サンプルデータの評価値において、貢献度の高い項目と相関の高い項目があるか否かを判定する。貢献度の高い項目と相関の高い項目がある場合、判定手段40は、対象サンプルデータを単位データ51に含ませて、単位データ51を更新する。
【0042】
MT法を用いる場合、判定手段40は、各項目のマハラノビス距離の平均に基づいて、対象サンプルデータが単位データ51の許容範囲内であるか否かを判定する。この「許容範囲」は、判定対象の機器やプラント、センサ種別や精度などに応じて、予め、適宜設定され、具体的には、過去の単位データ51のマハラノビス距離の平均値や最大値などの基準値である。判定手段40は、対象サンプルデータの各項目に対するマハラノビス距離と、単位データ51の各項目に対するマハラノビス距離の基準値とを比較する。判定手段40は、対象サンプルデータのマハラノビス距離が、基準値より大きい場合、この対象サンプルデータが、機器の正常でない状態を示すと判定する。一方、判定手段40は、対象サンプルデータのマハラノビス距離が、基準値より小さい場合、この対象サンプルデータが、機器の正常な状態を示すと判定する。
【0043】
ここで、
図3(a)に示すように、単位データ51に含まれるサンプルデータと、蓄積手段30が新たに取得した各対象サンプルデータのマハラノビス距離の平均値を、時系列に示したグラフを考える。
図3(a)においてt1より前は、変動が少なく、既に正常と判断されたサンプルデータの集合である単位データ51から算出したマハラノビス距離の平均値近傍の数値であると考えられる。一方、時刻t1以降において、マハラノビス距離の平均値が増大する。
【0044】
このようなマハラノビス距離の平均値の乖離は、この時刻t1以降、機器が異常状態であることや、単位データ51の把握している正常状態とは異なる条件で機器が稼働していることなどを示すと考えられる。マハラノビス距離の平均値の乖離が、機器の異常により発生した場合、この時刻t1の対象サンプルデータは、単位データ51に含めるべきではない。しかしながら、正常状態で、単位データ51の把握していない条件で機器が稼働したことにより、項目値が変動した場合、この時刻t1の対象サンプルデータは、単位データ51に含めるのが良い。これにより、次回以降、同様の条件で機器が稼働した場合、状態判定装置1の判定手段40は、正常と判断できる。
【0045】
そこで機器の異常であるか否かを判定するために、判定手段40は、マハラノビス距離の平均値が乖離した時刻t1における対象サンプルデータについて、マハラノビス距離の平均値の貢献度の高い項目を特定する。ここで
図3(b)に示すように、時刻t1における対象サンプルデータについて、各項目の貢献度を算出する。この貢献度は、時刻t1におけるマハラノビス距離について、各項目の項目値がどの程度影響を及ぼしたかを示す指標である。判定手段40は、各項目について、例えば、所定の閾値以上の貢献度を持つ項目や、各項目の平均値以上の貢献度を持つ項目などを、貢献度の高い項目として特定して出力する。
【0046】
図3(b)に示すグラフにおいて、時刻t1における各項目の貢献度のうち、項目X1および項目X2に関する貢献度が高い。従って判定手段40は、項目X1および項目X2を、貢献度の高い項目として特定して出力する。
【0047】
次に判定手段40は、貢献度の高い項目と相関の高い項目があるか否かを判定する。ここで、「相関が高い」とは、ある項目の項目値の時間推移と同期した値をとることを意味する。相関があれば、正の相関か負の相関かは問わない。判定手段40は、貢献度の高い項目と、それ以外のそれぞれの項目との相関係数をそれぞれ算出する。判定手段40は、所定の閾値よりも高い相関係数を持つ項目がある場合、その項目を相関が高い項目として出力する。例えば判定手段40は、相関係数が、0.7以上であれば、その項目を相関が高い項目として出力する。この相関係数の基準は、判定対象の機器やプラント、センサ種別や精度などに応じて、適宜設定されても良い。
【0048】
図4(a)および
図4(b)に示すように、項目X1に関するマハラノビス距離が大きくなると、項目X2に関するマハラノビス距離が小さくなり、項目X1に関するマハラノビス距離が小さくなると、項目X2に関するマハラノビス距離が大きくなる。よって、項目X1および項目X2との間に、負の相関があり相関関係が高いことがわかる。一方、
図4(a)および
図4(c)に示すように、項目X1に関するマハラノビス距離の変動に関わらず、項目X3に関するマハラノビス距離は一定値をとる。よって、項目X1および項目X3との間に、相関関係がないことがわかる。
【0049】
このような項目X1ないしX3について、さらに
図5ないし
図8を参照して説明する。
【0050】
図5(a)および
図5(b)は、それぞれ項目X1の項目値と、項目X2の項目値の時間推移を示したグラフである。項目X1と項目X2の各項目値は、同じ時刻t1で大きく変動する。このような項目X1とX2の相関関係は、
図6に示すように、正常時の相関の延長上に、時刻t1以降の相関が示される。このような事象は、複数項目間での関係性が満たされているので、時刻t1の対象サンプルデータは、機器が正常状態であることを示す。
【0051】
一方
図7(a)および
図7(b)は、それぞれ項目X1の項目値と、項目X3の項目値の時間推移を示したグラフである。項目X3の項目値は、時刻t2で大きく変動するのに対し、項目X1の項目値は、時刻t2の前後において変動はない。このような項目X1とX3の相関関係は、
図8に示すように、正常時の相関以外の位置に、時刻t2以降の相関が示される。このような事象は、複数項目間での関係性が崩れているので、時刻t2の対象サンプルデータは、機器が正常状態でないことを示す。
【0052】
判定手段40は、このように相関関係の高い項目を発見できた対象サンプルデータを、機器の正常状態を示すと判断し、単位データ51に含ませる。これにより、同様のサンプルデータを取得した場合、判定手段40は、この取得したサンプルデータが示す機器の状態を、正常と判断し出力する。ここで判定手段40は、最終的にサンプルデータを単位データ51に含ませるか否かを、操作者に判断させ、操作者の指示に従って処理しても良い。
【0053】
(判定方法)
図9を参照して、本発明の実施の形態に係る判定手段40による判定処理を説明する。
【0054】
判定手段40は、判定対象となる各対象サンプルデータについて、ステップS11ないしステップS21の処理を繰り返す。まずステップS11において判定手段40は、一つの対象サンプルデータについて、マハラノビス距離を算出する。
【0055】
ステップS12において判定手段40は、ステップS11において算出されたマハラノビス距離が、既存の単位データ51のマハラノビス距離の基準値よりも増大しているか否かを判定する。判定手段40は例えば、基準値と、対象サンプルデータのマハラノビス距離とを比較して、所定の閾値以上、増大しているか否かを判定しても良い。増大していない場合、具体的には、対象サンプルデータが、単位データ51が既知の正常状態のデータの範囲内である場合、判定手段40は、この対象サンプルデータについて単位データ51に含ませることなく、そのまま処理を終了する。判定手段40は、他の対象サンプルデータについて処理する。なお、対象サンプルデータが、単位データ51が既知の正常状態のデータの範囲内である場合、判定手段40は、この対象サンプルデータについて単位データ51に含ませても良い。
【0056】
一方、増大している場合、ステップS13に進む。ステップS13において判定手段40は、例えば
図3(b)に示すように、対象サンプルデータの各項目の項目値を、表示する。ステップS14において判定手段40は、対象サンプルデータの各項目のうち、貢献度の高い項目を特定する。判定手段40は、ステップS14で特定された貢献度の高い項目のそれぞれについて、ステップS15からステップS20の処理を繰り返す。ここで、項目がX1からX10まであり、貢献度の高い項目が項目X1について処理する場合を説明する。
【0057】
ステップS15において判定手段40は、項目X1に関するサンプルデータを表示する。例えば、判定手段40は、項目X1について、サンプル蓄積データ52からその過去のサンプルデータの項目値を取得し、取得した項目値を時系列で表示する。ステップS16において判定手段40は、貢献度の高い項目の項目値と、それ以外のそれぞれの項目の項目値との相関係数を算出する。具体的には判定手段40は、項目X1と項目X2の相関係数、項目X1と項目X3の相関係数、・・・・項目X1と項目X10の相関係数を、それぞれ算出する。ステップS17において判定手段40は、ステップS16で算出した各相関係数に基づいて、貢献度の高い項目X1と相関の高い項目があるか否かを判定する。相関の高い項目がない場合、対象サンプルデータのマハラノビス距離が増大した原因は、関係性の崩れにより発生していると考えられる。従って判定手段40は、対象サンプルデータについて単位データ51に含ませることなく、次に貢献度の高い項目について、ステップS15ないしステップS20の処理を繰り返す。
【0058】
一方相関の高い項目がある場合、ステップS18において判定手段40は、例えば
図5および
図6に示すように、ステップS17で特定された相関の高い項目との関係を表示する。ステップS19において判定手段40は、この対象サンプルデータについて、単位データ51に含めるか否かを問い合わせる画面を表示する。ステップS19において操作者が、含めない旨の指示を入力した場合、単位空間生成手段20は、対象サンプルデータについて単位データ51に含ませることなく、次に貢献度の高い項目について、ステップS15ないしステップS20の処理を繰り返す。
【0059】
一方、ステップS19において操作者が対象サンプルデータを単位データ51に含める旨の指示を入力した場合、判定手段40は、ステップS20において、処理対象のサンプルデータを単位データ51に含める旨の指定をする。判定手段40は、例えば、サンプル蓄積データ52に設けられた、単位データ51に含めるか否かのフラグにチェックする。その後、判定手段40は、次に貢献度の高い項目について、ステップS15ないしステップS20の処理を繰り返す。
【0060】
ステップS14において特定された貢献度の高い項目のそれぞれについて、ステップS15ないしステップS20の処理が終了すると、ステップS21に進む。ステップS21において判定手段40は、ステップS20において単位データに指定された対象サンプルデータを、単位データ51に追加して更新する。
【0061】
なお、
図9に示すフローチャートにおいて、ステップS13、ステップS15、ステップS18およびステップS19などの表示に関する処理は、割愛されても良い。この場合、判定手段40は、ステップS17において相関の高い項目が発見された場合、操作者の指示を経ずに、ステップS20において、対象サンプルデータを単位データに指定する。
【0062】
このように本発明の実施の形態に係る状態判定装置1は、単位データ51の範囲外の対象サンプルデータであっても、項目間の関係性を維持しているか否かを判定し、対象サンプルデータを単位データ51に含ませるか否かの判断材料を出力する。これにより、単位データ51は、適切に多様な状況での正常データを収集することができるので、従来は正常であるにもかかわらず異常と判断された誤検出が解消され、安定して機器を稼働させることができる。
【0063】
また状態判定装置1は、判断材料をプログラム処理で出力することができるので、プラントの様に、複数のセンサが設けられる場合にも好適である。特に、プラントにおいては、様々なセンサが設けられるので、それらのセンサの項目値の分布形状や特性も様々で、正常状態の定義が一般的に困難な場合がある。そのような場合でも、本発明の実施の形態に係る状態判定装置1は、容易に正常状態であるか否かを判定することができる。また、抽気系統のように、単独のトレンドデータでは正常か異常かの判断が困難な場合でも、本発明の実施の形態に係る状態判定装置1によれば、他の項目との相関を算出することにより、容易に判断することができる。
【0064】
(第1の変形例)
本発明の実施の形態に係る判定手段40は、コンピュータ処理により単位データ51を更新する場合を説明したが、第1の変形例においては、操作者の操作とインタラクティブに処理する場合を説明する。第1の変形例に係る判定手段40aは、
図2、
図4および
図5に示すグラフなどを出力装置62に出力して操作者に認識させ、操作者が入力した指示に従って処理する。
【0065】
図9に示すフローチャートを参照して、第1の変形例に係る判定処理を説明する。ステップS11において判定手段40aは、対象サンプルデータについてマハラノビス距離を算出すると、
図3(a)に示すように、各項目のマハラノビス距離の平均の推移を、出力装置62に表示する。ここでの表示対象は、対象サンプルデータと、単位データ51の各サンプルデータの、各項目のマハラノビス距離の平均値である。
【0066】
操作者は、
図3(a)に示す画面において、マハラノビス距離が増大している時刻t1を選択すると、判定手段40aは、
図3(b)に示す画面を表示する。操作者は、
図3(b)に示す画面において、貢献度の高い項目X1を選択すると、判定手段40aは、この項目X1と相関の高い項目X2を特定する。判定手段40aはさらに、
図5および
図6に示すように、操作者によって特定された項目X1と、この項目X1と相関の高い項目X2との関連を示す画面を表示する。
【0067】
図5に示すように、判定手段40aは、貢献度の高い項目と当該項目と相関の高い項目について、各項目値の時間推移を、表示する。判定手段40aは、時刻t1において相関の高かった項目X1およびX2の各項目値について、時刻t1を含む時間推移を表示する。また
図6に示すように判定手段40aは、貢献度の高い項目と当該項目と相関の高い項目について、各項目値の相関を、表示する。判定手段40aは、横軸に項目X1をとり、縦軸に項目X2をとるグラフを表示するとともに、時刻t1を含む時間の各項目値を、グラフに示す。このとき、判定手段40aは、本発明の実施の形態において説明したように、項目X1および項目X2の相関係数を算出し、算出した相関係数を、操作者の判断材料として表示しても良い。
【0068】
操作者は、
図5および
図6に示す画面を参照して、項目X1および項目X2に相関があるか否かを判定する。操作者は、相関があり、この対象サンプルデータを単位データに含めるべきと判定した場合、その指示を状態判定装置1に入力する。判定手段40aは、操作者からの指示により、対象サンプルデータを含む単位データ51に更新して、記憶装置50に記憶する。
【0069】
このように、判定手段40aは、本発明の実施の形態に記載したように、コンピュータ処理によって単位データ51を更新するのみならず、操作者の指示に従って処理を進め、単位データ51を更新しても良い。
【0070】
(第2の変形例)
本発明の実施の形態においては、項目間の相関関係に基づいて、対象サンプルデータが正常であるか否かを判定した。これに対し第2の変形例は、任意の2つの項目について、その項目間の数値遷移に関する物理モデルを利用して、対象サンプルデータが正常であるか否かを判定する場合を説明する。
【0071】
判定手段40bは、予め任意の2つの項目について、正常なデータであることを示す物理モデルを用意する。例えば、判定対象の機器に10の項目が設けられている場合、45通りの物理モデルを用意する。
【0072】
図9のステップS14において、判定手段40bが貢献度の高い項目を特定すると、その貢献度の高い項目の項目値と、他の項目の項目値とが、予め用意された物理モデルと合致するか否か判定する。合致しない場合、この貢献度の高い項目が、関係性の崩れにより検出されたものであるので、対象サンプルデータを単位データ51に含ませることなく、処理を終了する。一方、予め容易された物理モデルと合致する場合、対象サンプルデータは正常状態を示すと考えられるので、判定手段40bは、対象サンプルデータを単位データ51に含ませる。
【0073】
このように、第2の変形例においても、本発明の実施の形態と同様に、項目間の相関に基づいて適切に単位データを生成することができる。
【0074】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明の実施の形態、第1および第2の変形例によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなる。
【0075】
例えば、本発明の実施の形態に記載した状態判定装置は、
図1に示すように一つのハードウェア上に構成されても良いし、その機能や処理数に応じて複数のハードウェア上に構成されても良い。また、既存のシステムやコンピュータに実現されても良い。
【0076】
本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。