【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0044】
(実施例1)
先ず、酢酸銅(Cu(CH
3COO)
2・H
2O)0.63gとメタタングステン酸アンモニウム((NH
4)
6[H
2W
12O
40]・6H
2O)0.23gを100mlの蒸留水に溶解し、そこへ市販品のCeO
2(比表面積160m
2/g)4.50gを加えて含浸せしめ、180℃で加熱攪拌して蒸発乾燥させて凝固物を得た(蒸発乾固)。次に、得られた凝固物を、大気中で120℃、12時間の条件で乾燥処理を行い、次いで、大気中で500℃、4時間の条件で熱処理を行い、焼成して三元触媒を得た。
【0045】
(実施例2)
CeO
2として市販品のCeO
2(比表面積146m
2/g)4.50gを用いた以外は実施例1と同様にして実施例2の三元触媒を得た。
【0046】
(実施例3)
CeO
2として市販品のCeO
2(比表面積119m
2/g)4.50gを用いた以外は実施例1と同様にして実施例3の三元触媒を得た。
【0047】
(実施例4)
銅源として酢酸銅(Cu(CH
3COO)
2・H
2O)0.06gを用い、CeO
2として市販品のCeO
2(比表面積160m
2/g)4.73gを用いた以外は実施例1と同様にして実施例4の三元触媒を得た。
【0048】
(実施例5)
銅源として酢酸銅(Cu(CH
3COO)
2・H
2O)0.06gを用い、CeO
2として市販品のCeO
2(比表面積146m
2/g)4.73gを用いた以外は実施例1と同様にして実施例5の三元触媒を得た。
【0049】
(実施例6)
銅源として酢酸銅(Cu(CH
3COO)
2・H
2O)0.06gを用い、CeO
2として市販品のCeO
2(比表面積119m
2/g)4.73gを用いた以外は実施例1と同様にして実施例6の三元触媒を得た。
【0050】
(実施例7)
銅源として酢酸銅(Cu(CH
3COO)
2・H
2O)0.06gを用い、CeO
2として市販品のCeO
2(比表面積81m
2/g)4.73gを用いた以外は実施例1と同様にして実施例7の三元触媒を得た。
【0051】
(実施例8)
タングステン源としてメタタングステン酸アンモニウム((NH
4)
6[H
2W
12O
40]・6H
2O)0.09gを用い、CeO
2として市販品のCeO
2(比表面積160m
2/g)4.65gを用いた以外は実施例1と同様にして実施例8の三元触媒を得た。
【0052】
(比較例1)
先ず、硝酸第二鉄(Fe(NO
3)
3・9H
2O)5.06gとメタタングステン酸アンモニウム((NH
4)
6[H
2W
12O
40]・6H
2O)1.60gを100mlの蒸留水に溶解し、そこへ市販品のAl
2O
3(比表面積200m
2/g)3.00gを加えて含浸せしめ、180℃で加熱攪拌して蒸発乾燥させて凝固物を得た(蒸発乾固)。次に、得られた凝固物を、大気中で120℃、12時間の条件で乾燥処理を行い、次いで、大気中で600℃4時間の条件で熱処理を行い、焼成して比較用触媒を得た。
【0053】
(比較例2)
先ず、硝酸コバルト六水和物(Co(NO
3)
2・6H
2O)5.78gと硝酸セリウム(Ce(NO
3)
3・6H
2O)0.53gを150mlの蒸留水に溶解し、そこへNaOH水溶液を滴下しpHを9に調整し、得られた沈殿物をろ過した後、少量の蒸留水を加え遠心分離機を用いて洗浄した。次に、大気中で120℃、12時間の条件で乾燥処理を行い、次いで、大気中で400℃4時間の条件で熱処理を行い、焼成して比較用触媒を得た。
【0054】
(比較例3)
CeO
2として市販品のCeO
2(比表面積160m
2/g)4.75gを用い、タタングステン源としてのメタタングステン酸アンモニウムを用いなかった以外は実施例1と同様にして比較用触媒を得た。
【0055】
(比較例4)
銅源としての酢酸銅の代わりに硝酸第二鉄(Fe(NO
3)
3・9H
2O)1.26gを用いた以外は実施例1と同様にして比較用触媒を得た。
【0056】
(比較例5)
銅源としての酢酸銅の代わりに硝酸第二鉄(Fe(NO
3)
3・9H
2O)1.26gを用い、CeO
2として市販品のCeO
2(比表面積160m
2/g)4.75gを用い、タタングステン源としてのメタタングステン酸アンモニウムを用いなかった以外は実施例1と同様にして比較用触媒を得た。
【0057】
(比較例6)
銅源としての酢酸銅の代わりに硝酸コバルト六水和物(Co(NO
3)
2・6H
2O)0.91gを用いた以外は実施例1と同様にして比較用触媒を得た。
【0058】
(比較例7)
銅源としての酢酸銅の代わりに硝酸コバルト六水和物(Co(NO
3)
2・6H
2O)0.91gを用い、CeO
2として市販品のCeO
2(比表面積160m
2/g)4.75gを用い、タタングステン源としてのメタタングステン酸アンモニウムを用いなかった以外は実施例1と同様にして比較用触媒を得た。
【0059】
(比較例8)
CeO
2として市販品のCeO
2(比表面積81m
2/g)4.50gを用いた以外は実施例1と同様にして比較用触媒を得た。
【0060】
(比較例9)
銅源として酢酸銅(Cu(CH
3COO)
2・H
2O)0.06gを用い、CeO
2として市販品のCeO
2(比表面積26m
2/g)4.50gを用いた以外は実施例1と同様にして比較用触媒を得た。
【0061】
(比較例10)
CeO
2として市販品のCeO
2(比表面積52m
2/g)4.50gを用いた以外は実施例1と同様にして比較用触媒を得た。
【0062】
(比較例11)
CeO
2として市販品のCeO
2(比表面積26m
2/g)4.50gを用いた以外は実施例1と同様にして比較用触媒を得た。
【0063】
(比較例12)
CeO
2として市販品のCeO
2(比表面積70m
2/g)4.75gを用い、銅源としての酢酸銅を用いなかった以外は実施例1と同様にして比較用触媒を得た。
【0064】
(触媒評価試験)
実施例1〜8において得られた三元触媒試料及び比較例1〜12において得られた比較用触媒試料について、以下に示す性能評価試験を行った。
【0065】
<CeO
2担体の比表面積評価試験>
CeO
2担体の比表面積は、吸着等温線からBET等温吸着式を用いてBET比表面積として算出した。すなわち、全自動比表面積測定装置(MICRO・DATA社製、商品名「MICRO SORP4232II」)を用い、液体窒素温度(−196℃)におけるN
2吸着を利用したBrunauer−Emmett−Teller(BET)一点法により算出した。
【0066】
<CuとWの合計面積の算出>
CuとWの合計面積は、CuとWがCuOとWO
3の状態でCeO
2表面上にモノレイヤーを形成していると仮定し、各酸化物の密度と各成分の担持量から算出した。
【0067】
<関係式Aによる値(数値A)の算出>
実施例1〜8において得られた三元触媒試料及び比較例1〜12において得られた比較用触媒試料について、上記式(1)の「(5.77×Cuの担持量(質量%)+3.63×Wの担持量(質量%))/担体の比表面積(m
2/g)」(関係式A)における値を計算により求めた(数値Aとする)。
【0068】
<触媒活性評価試験>
先ず、実施例1〜8において得られた三元触媒試料及び比較例1〜12において得られた比較用触媒試料を準備し、圧粉成型により1000kgf/cm
2でペレット状に粉砕して、触媒活性の評価試験用の触媒試料(大きさ:500〜700μm)をそれぞれ調製した。
【0069】
次に、得られたペレット状の触媒試料を固定床流通式評価装置(ベスト測器製、製品名「CATA−4000」)にそれぞれ設置し、三元ガスを模擬した排気モデルガス(NO:3000ppm、CO:4500ppm、C
3H
6:1000ppm、O
2:5250ppm、CO
2:10vol%、H
2O:3vol%、N
2:残部)を、300℃の温度条件下、3.5L/分の流量で15分間供給した(前処理)。その後、各試料の温度を100℃になるまで冷却した後、前記排気モデルガスを7L/分の流量で供給しながら20℃/分の昇温速度で100℃から600℃まで加熱していき、供給した排気モデルガス中のNOの浄化率が10%に到達する温度(NO転化温度、℃)(以下、「NO_T10」と表す。)及び供給した排気モデルガス中のNOが50%浄化される温度(NO転化温度、℃)(以下、「NO_T50」と表す。)を測定した。得られた結果を、表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
<触媒活性評価試験の結果>
表1に示した実施例1〜8の結果と比較例1〜12の結果との比較から明らかなように、実施例1〜8の三元触媒は、酸化セリウム(CeO
2)を含む担体と該担体に担持された銅及びタングステンとを含んでおり、上記式(1)における「(5.77×Cuの担持量(質量%)+3.63×Wの担持量(質量%))/担体の比表面積(m
2/g)」の値が0.05〜0.5の範囲にあることにより、NO_T10及びNO_T50が低いNO転化温度であることから、高度に優れた触媒活性示す三元触媒が得られていることが確認された。
【0072】
なお、本発明と従来の卑金属酸化物触媒との比較のため、実施例1、比較例1及び2で得られた結果について、「NO_T10」(単に、T10と示すことがある)及び「NO_T50」(単に、T50と示すことがある)におけるNO転化温度(℃)を
図1に示す。
【0073】
図1に示した実施例1の結果と比較例1及び2の結果との比較から明らかなように、実施例1の三元触媒は、従来の卑金属酸化物触媒を用いた比較例1及び2の比較用触媒に比較して、NO_T10及びNO_T50がともに本実施例の方がNO転化温度が低いことから、本発明の触媒は従来の卑金属酸化物触媒よりも高い活性を示すことが確認された。
【0074】
また、Cu及びWの担持(添加)効果を調べるため、実施例1及び比較例3〜7で得られた結果について、「NO_T10」におけるNO転化温度(℃)を
図2に示す。
【0075】
図2に示した実施例1の結果と比較例3〜7の結果との比較から明らかなように、実施例1の三元触媒は、NO_T10(NO転化温度)が267℃と優れた低温NO活性が発現していることが確認された。一方、比較例では、同じCeO
2担体とW源試薬を用いてFe又はCoを含浸担持した触媒(比較例4、6)、Wを添加せずにCeO
2担体にCu,Fe又はCoを含浸した触媒(比較例3、5、7)のいずれもNO_T10(NO転化温度)が高く(389〜417℃)、触媒活性が低いことが確認された。この結果から、CeO
2担体にCuとWを担持したときのみ、200℃近傍からのNO還元反応が発現することが確認された。
【0076】
次に、CuとWの組成範囲を調べるため、実施例1〜8及び比較例8〜12で得られた結果について、「NO_T50」におけるNO転化温度(℃)と数値Aとの関係を、
図3に示す。
図3に示した実施例1〜7の結果と比較例8〜11の結果との比較から明らかなように、実施例1〜7の三元触媒は数値Aが0.05〜0.5の範囲にある場合において、NO_T50及びNO_T10がともに低いNO転化温度であることが確認された。したがって、200℃から600℃の温度範囲において高度に優れた触媒活性示す三元触媒とするためには、数値Aが0.05〜0.5の範囲にあることが好ましいことが確認された。
【0077】
なお、上記式(1)は、CuとWがCuOとWO
3の状態でCeO
2表面上にモノレイヤーを形成していると仮定し、各酸化物の密度と各成分の担持量から担体単位表面積当りのCuとWの合計表面積を算出する式と見ることができる。このような観点でみると、数値Aは、担体単位表面積当たりのCu及びWの合計表面積に相当するものと見ることができ、したがって、
図3を「NO_T50」におけるNO転化温度(℃)と担体単位表面積当たりのCu及びWの合計表面積との関係と見ることができる。このような関係から、
図3に示した実施例1〜7の三元触媒は、担体の表面積1m
2当たりのCu及びWの合計表面積(酸化物換算)が0.05〜0.5m
2の範囲にある場合において、NO_T50及びNO_T10がともに低いNO転化温度であることが確認された。これより、200℃から600℃の温度範囲において高度に優れた触媒活性示す三元触媒とするためには、担体の表面積1m
2当たりのCu及びWの合計表面積(酸化物換算)が0.05〜0.5m
2の範囲にあることが好ましいことが確認された。
【0078】
また、実施例6、8及び比較例3、12で得られた結果について表2に示す。これら結果、上記関係式Aより算出される数値A、及び一般的に使用されるCeO
2担体の比表面積から、Wの担持量(含有量)が触媒の全質量に対して酸化物換算で1〜25質量%の範囲にあることが好ましいことが、Cuの担持量(含有量)が触媒の全質量に対して酸化物換算で0.3〜15質量%の範囲にあることが好ましいことが確認された。
【0079】
【表2】