特許第6273863号(P6273863)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6273863
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】照明器具
(51)【国際特許分類】
   H05B 37/02 20060101AFI20180129BHJP
【FI】
   H05B37/02 J
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-12580(P2014-12580)
(22)【出願日】2014年1月27日
(65)【公開番号】特開2015-141756(P2015-141756A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2017年1月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390014546
【氏名又は名称】三菱電機照明株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142642
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 次郎
(72)【発明者】
【氏名】江口 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】今▲吉▼ ちづる
(72)【発明者】
【氏名】篠田 健吾
【審査官】 田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−118134(JP,A)
【文献】 特開2009−142085(JP,A)
【文献】 特開2011−097682(JP,A)
【文献】 特開2014−013698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、
前記発光素子を点灯させる点灯回路と、
を備え、
前記点灯回路は、
一次巻線および前記一次巻線と極性向きが反対である二次巻線とを備えた絶縁トランスと、一端が前記一次巻線に接続し他端が接地され前記一端と前記他端との間のスイッチングのための制御端子を備えるスイッチング素子と、を含むフライバックコンバータ回路と、
前記制御端子に制御信号を供給し、前記制御信号の周波数を増加させたらオン時間を減少させ前記制御信号の周波数を減少させたら前記オン時間を増加させるように前記制御信号の周波数を変化させる制御回路と、
を備え
前記制御回路は、予め定めた一次関数に従って前記制御信号の周波数と前記オン時間を変更し、
前記制御回路は、予め定められた下限値以上であり170kHz以下の周波数範囲で前記制御信号の周波数を変化させる照明器具。
【請求項2】
発光素子と、
前記発光素子を点灯させる点灯回路と、
を備え、
前記点灯回路は、
一次巻線および前記一次巻線と極性向きが反対である二次巻線とを備えた絶縁トランスと、一端が前記一次巻線に接続し他端が接地され前記一端と前記他端との間のスイッチングのための制御端子を備えるスイッチング素子と、を含むフライバックコンバータ回路と、
前記制御端子に制御信号を供給し、前記制御信号の周波数を増加させたらオン時間を減少させ前記制御信号の周波数を減少させたら前記オン時間を増加させるように前記制御信号の周波数を変化させる制御回路と、
を備え、
前記制御回路は、予め定めた一次関数に従って前記制御信号の周波数と前記オン時間を変更し、
前記制御回路は、予め定められた下限値以上であり100kHz以下の周波数範囲で前記制御信号の周波数を変化させる照明器具。
【請求項3】
前記下限値が50kHzである請求項1または2に記載の照明器具
【請求項4】
前記下限値が20kHzである請求項1または2に記載の照明器具。
【請求項5】
発光素子と、
前記発光素子を点灯させる点灯回路と、
を備え、
前記点灯回路は、
一次巻線および前記一次巻線と極性向きが反対である二次巻線とを備えた絶縁トランスと、一端が前記一次巻線に接続し他端が接地され前記一端と前記他端との間のスイッチングのための制御端子を備えるスイッチング素子と、を含むフライバックコンバータ回路と、
前記制御端子に制御信号を供給し、前記制御信号のオン時間を固定値とし前記制御信号の周波数を変化させる制御回路と、
を備え
前記制御回路は、予め定められた下限値以上であり170kHz以下の周波数範囲で前記制御信号の周波数を変化させる照明器具
【請求項6】
発光素子と、
前記発光素子を点灯させる点灯回路と、
を備え、
前記点灯回路は、
一次巻線および前記一次巻線と極性向きが反対である二次巻線とを備えた絶縁トランスと、一端が前記一次巻線に接続し他端が接地され前記一端と前記他端との間のスイッチングのための制御端子を備えるスイッチング素子と、を含むフライバックコンバータ回路と、
前記制御端子に制御信号を供給し、前記制御信号のオン時間を固定値とし前記制御信号の周波数を変化させる制御回路と、
を備え、
前記制御回路は、予め定められた下限値以上であり100kHz以下の周波数範囲で前記制御信号の周波数を変化させる照明器具。
【請求項7】
前記下限値が50kHzである請求項5または6に記載の照明器具。
【請求項8】
前記下限値が20kHzである請求項5または6に記載の照明器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特表2009−526365号公報に開示されているように、フライバックコンバータ回路において高調波低減対策を施す技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009−526365号公報
【特許文献2】特許第5198057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の高調波低減対策を行ったフライバックコンバータ回路においてディザリング等によりスイッチングの周波数を変化させると、高調波低減に支障をきたしてしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、フライバックコンバータ回路において周波数を可変しても高調波低減対策を行うことのできる照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明にかかる照明器具は、発光素子と、前記発光素子を点灯させる点灯回路と、
を備える。前記点灯回路は、フライバックコンバータ回路と制御回路とを備える。フライバックコンバータ回路は、一次巻線および前記一次巻線と極性向きが反対である二次巻線とを備えた絶縁トランスと、一端が前記一次巻線に接続し他端が接地され前記一端と前記他端との間のスイッチングのための制御端子を備えるスイッチング素子と、を含む。制御回路は、前記制御端子に制御信号を供給し、前記制御信号の周波数を増加させたらオン時間を減少させ前記制御信号の周波数を減少させたら前記オン時間を増加させるように前記制御信号の周波数を変化させる。制御回路は、予め定めた一次関数に従って前記制御信号の周波数と前記オン時間を変更する。制御回路は、前記制御信号の周波数を前記制御信号の周波数を0Hzよりも高く170kHz以下の周波数範囲で変化させる。
【0007】
第2の発明にかかる照明器具は、発光素子と、前記発光素子を点灯させる点灯回路と、
を備える。前記点灯回路は、フライバックコンバータ回路と制御回路とを備える。フライバックコンバータ回路は、一次巻線および前記一次巻線と極性向きが反対である二次巻線とを備えた絶縁トランスと、一端が前記一次巻線に接続し他端が接地され前記一端と前記他端との間のスイッチングのための制御端子を備えるスイッチング素子と、を含む。制御回路は、前記制御端子に制御信号を供給し、前記制御信号のオン時間を固定値とし前記制御信号の周波数を変化させる。制御回路は、前記制御信号の周波数を0Hzよりも高く170kHz以下の周波数範囲で変化させる。
【発明の効果】
【0009】
1の発明によれば、本願発明者が導出した一定の関係性を満たすように周波数およびオン時間を調整するようにしたので、フライバックコンバータ回路において高調波低減とディザリングを両立することができる。
【0010】
本願発明者が導出した関係式によれば、オン時間を固定して周波数を変化させてディザリングを行うことによっても、その周波数範囲をある程度小さく設定すれば高調波低減とディザリングの両立が可能であることが判明している。この点、第2の発明によれば、周波数を変化させる範囲を一定範囲に制限したうえで、オン時間を固定しつつディザリングを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態1にかかる点灯回路および照明器具を示す図である。
図2】本発明の実施の形態1にかかる点灯回路および照明器具の動作を説明するための波形図である。
図3】本発明の実施の形態1にかかる点灯回路および照明器具の動作を説明するための図である。
図4】本発明の実施の形態1にかかる点灯回路および照明器具の動作を説明するための波形図である。
図5】本発明の実施の形態1にかかる点灯回路および照明器具の動作を説明するための電流波形図である。
図6】本発明の実施の形態1にかかる点灯回路および照明器具の動作を説明するための図である。
図7】本発明の実施の形態2にかかる点灯回路および照明器具の動作を説明するための電流波形図である。
図8】本発明の実施の形態2にかかる点灯回路および照明器具の動作を説明するための電流波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかる点灯回路22および照明器具30を示す図である。照明器具30は、ダイオードブリッジである整流回路3と、点灯回路22と、点灯回路22から電流の供給を受けて発光する発光素子12とを備えている。商用交流電源1からの交流電圧が整流回路3で整流され、整流された脈流電圧が点灯回路22に入力されている。商用交流電源1と整流回路3の間にはスイッチ2が介在しており、スイッチ2により電源のオンオフを行うことができる。
【0013】
なお、本実施の形態では発光素子12をLEDとするが、LEDに代えて有機ELとしてもよい。また、図では模式的に1つの発光素子12を図示しているが、本発明はこれに限られない。複数の発光素子12を直列、並列あるいは直並列に接続したものを点灯回路22で点灯させてもよい。
【0014】
点灯回路22は、整流回路3と接続するコンデンサ4と、このコンデンサ4と接続するフライバックコンバータ回路20と、フライバックコンバータ回路20内のスイッチング素子であるMOSFET8を制御する制御集積回路9とを備えている。また、点灯回路22は、発光素子12に流れるLED電流を検出する電流検出抵抗13と、LED電流を一定に保つように電流検出抵抗13で検出したLED電流の値を制御集積回路9にフィードバックするためのフィードバック回路11と、絶縁性を確保しつつフィードバック回路11と制御集積回路9の間を接続するフォトカプラ10とを備えている。
【0015】
フライバックコンバータ回路20は、一次巻線5aおよび一次巻線5aと極性向きが反対である二次巻線5bとを備えた絶縁トランス5を備えている。一次巻線5aの一端は、コンデンサ4と接続している。一次巻線5aの他端は、MOSFET8のドレイン端子に接続している。コンデンサ4の他端およびMOSFET8のソース端子は接地されている。二次巻線5bの一端には、ダイオード6のアノードが接続している。
【0016】
ダイオード6のカソードは出力平滑コンデンサ7の一端に接続している。二次巻線5bの他端および出力平滑コンデンサ7の他端は接地されている。発光素子12は、出力平滑コンデンサ7と並列に接続している。発光素子12のカソードには、前述した電流検出抵抗13が接続されている。
【0017】
制御集積回路9は、MOSFET8のゲート端子に制御信号を供給する。制御集積回路9は、制御信号の周波数fを増加させたらオン時間tonを減少させ、周波数fを減少させたらオン時間tonを増加させるように、制御信号の周波数fを変化させる。本実施の形態ではより好ましい形態として、制御集積回路9は、制御信号の周波数fとオン時間tonの二乗とを積算した値Kが一定となるように制御信号を変更するものとする。
【0018】
フライバックコンバータ回路20の商用周波数での平均電流の式を求めると下記の式(1)が得られる。
【0019】
ここで、係数Kを下記の式(2)のとおりに定める。
K=f×ton ・・・(2)
【0020】
図2は、本発明の実施の形態1にかかる点灯回路22および照明器具30の動作を説明するための波形図である。コンデンサ・インプット型電源回路では、図2に示すように、入力される商用交流電圧VACに対して入力電流波形Iが大きく歪むことが知られており、これが電源高調波電流を発生させる原因である。この高調波電流を低減するためには、入力電流波形を商用電源電圧VACと同じ正弦波の波形に近づけて図2の電流波形Iのようにすることが有効である。
【0021】
上記の式(1)から明らかなとおり、商用交流電圧VACの波形と入力電流であるドレイン電流Idとの間にある係数Kは、周波数(f)とオン時間の二乗(ton)を積算した値である。Lは絶縁トランス5の仕様で決まる固定値であり、商用交流電圧VACも商用交流電源1による一定の正弦波電圧である。入力電流波形すなわちIdを商用電源電圧VACと同じ正弦波の波形に近づけるためには、理想的には、係数Kが一定であればよい。
【0022】
そこで、本実施の形態では、好ましい形態として係数Kを一定値に定め、式(2)を下記の式(3)のように変形する。周波数fとオン時間tonの関係を式(3)に示すような反比例的な関係に保持すればよい。すなわち、下記の式(3)に従って、周波数fを増加させたらオン時間tonを減少させ、逆に周波数fを減少させたらオン時間tonを増加させるように、制御信号の周波数fおよびオン時間tonを変化させればよい。
【0023】
ところで、スイッチング時に発生するノイズ成分を抑制する技術の一つに、ディザリングというものがある。ディザリングは、スイッチング周波数を意図的に変化させることでノイズのピーク値を抑制する技術である。図3は、本発明の実施の形態1にかかる点灯回路22および照明器具30の動作を説明するための図である。ノイズ成分の周波数スペクトルを示したものであり、縦軸がパワーである。一般的に図3に示すようにスイッチング周波数fcをピークとするスペクトルが得られる。ディザリング前の特性カーブC1に対して、ディザリングを行うと特性カーブC2のようにノイズのピーク値を低く抑えることができる。
【0024】
本実施の形態では、上述した式(1)〜(3)で説明した周波数fとオン時間tonとの関係を考慮しながらディザリングも行う。その結果、高調波電流低減とともにディザリングによるノイズピーク抑制をも行うことができる。
【0025】
図4は、本発明の実施の形態1にかかる点灯回路22および照明器具30の動作を説明するための波形図である。図4の上段には、制御集積回路9がMOSFET8のゲート端子に与える制御信号の波形であり、周期T(すなわち周波数f=1/T)かつオン時間tonのパルス波形が図示されている。図4の下段には、上段に図示した制御信号が印加されたときのMOSFET8のドレイン電圧を示す。
【0026】
この周波数fを、式(3)に示す関係を維持しながら変化させる。例えば、時間の経過に応じて所定の上限周波数と所定の下限周波数との間で周波数の増加と現象を繰り返すようにする。このようにすることで、高調波電流を低減させつつ周波数fを変化させることができる。
【0027】
図5は、本発明の実施の形態1にかかる点灯回路22および照明器具30の動作を説明するための電流波形図である。図5は本願発明者が行った計算結果であり、正弦波の電源電圧波形に対して本実施の形態にかかる点灯回路22がスイッチングを行ったときの2つの入力電流波形グラフiおよびiが示されている。電流波形グラフiは、本実施の形態にかかる制御すなわち係数Kを一定値とするように周波数fおよびオン時間tonを変化させたものである。これに対し、電流波形グラフiは、実施の形態にかかる制御を行わず、オン時間tonを一定にして周波数fを変化させたものである。電流波形グラフiは正弦波状であるのに対し、電流波形グラフiでは波形のプラス側ピークおよびマイナス側ピークにおいて周波数が変化しそれぞれ正弦波から電流波形が逸脱している。
【0028】
図6は、本発明の実施の形態1にかかる点灯回路22および照明器具30の動作を説明するための図である。図6は、MOSFET8のゲート端子に供給する制御信号の、周波数f[Hz]、周期T[μs]、オン時間ton[μs]、およびデューティ比Duty[%]のK=一定の場合の関係を示す。横軸の周波数に対するオン時間tonの値に着目すると、周波数が20Hzのときにオン時間を20μsに設定し、周波数が80Hzのときにオン時間を10μsに設定することで、係数Kを一定にすることができる。
【0029】
なお、上述した実施の形態1では、係数Kを一定として、入力電流波形すなわちIdを正弦波波形に近づけた。しかしながら、本発明はこれに限られるものではない。一定でないとしても、所望の高調波電流低減が実現される程度にIdを実質的にVACの正弦波波形に等しくするように係数Kが一定範囲内の値をとれば良い。係数Kを一定範囲内とするように、周波数fを増加させたらオン時間tonを減少させ、周波数fを減少させたらオン時間tonを増加させるように、制御信号の周波数fを変化させればよい。
【0030】
実施の形態2.
実施の形態2にかかる点灯回路および照明器具は、実施の形態1と同じ回路構成を備えており、制御集積回路9の出力する制御信号の内容が実施の形態1とは異なっている。したがって、以下の説明では実施の形態1と同一または相当する構成については同一の符号を付して説明を行うとともに、実施の形態1との相違点を中心に説明し、共通事項は説明を簡略化ないしは省略する。
【0031】
図6に示したように、周波数fが増加するほどオン時間tonを低減することによって、係数Kを一定にすることができる。図6におけるオン時間tonのグラフは曲線であり、これは式(3)の右辺の分母がオン時間tonの二乗となっていることに起因している。実施の形態2では、式(3)の近似式を求めて演算を簡素化することにする。
【0032】
x=a付近でのテイラー級数による近似式は、下記の式(4)である。
f(x) ≒ f(a)+f´(a)×f(x−a) ・・・(4)
【0033】
式(4)を用いて、下記のように近似式を求めることができる。
【0034】
上記式(8)は、オン時間tonを周波数fの一次関数で表した近似式である。実施の形態2においては、制御集積回路9が、この式(8)に従って周波数fおよびオン時間tonを変化させる。
【0035】
一次関数で近似させることで演算が簡素化されるので、制御集積回路9での演算が容易となる効果がある。また、集積回路ではなくアナログ演算回路を用いることによっても、周波数fとオン時間tonの計算を行うことが可能となる。
【0036】
図7および図8は、本発明の実施の形態2にかかる点灯回路22および照明器具30の動作を説明するための電流波形図である。電流波形グラフiは、実施の形態2にかかる制御すなわち近似式である式(8)に従って周波数fおよびオン時間tonを変化させたものである。電流波形グラフiおよびiは、実施の形態1の図5で述べたのと同じである。電流波形グラフi、i、iを相互に比較することで、近似式に従って制御した電流波形グラフiも、実施の形態1にかかる電流波形グラフiと遜色無いほどに正弦波状となっていることがわかる。
【0037】
上記の近似式を用いる場合には、実施の形態1で述べた式(3)と実施の形態2における近似式との乖離が大きくなりすぎるのを防ぐために、ディザリングにより変化させる周波数fの範囲を所定周波数範囲に限定することが好ましい。その周波数範囲は、下記の基準によって定めることができる。
【0038】
先ず、周波数範囲の上限は、170Hz、100Hz、80Hz、71Hz、55Hz、または45Hzとしてもよい。周波数範囲を170Hz以下とした場合、170Hz以上を避けることで雑音端子電圧の領域のノイズを低減し、3次高調波が500Hz以下とすることができる。周波数範囲を100Hz以下とした場合、100Hz以上を避けることで雑音端子電圧の領域のノイズを低減し、5次高調波が500Hz以下とすることができる。周波数範囲を80Hz以下とした場合、高周波化に伴いスイッチングロスが増えるので効率の低下を避けるように周波数を抑えることができる。周波数範囲を71Hz以下とした場合、71Hz以上を避けることで雑音端子電圧領域のノイズを低減し、7次高調波が500Hz以下とすることができる。周波数範囲を55Hz以下とした場合、55.5Hz以上を避けることで雑音端子電圧領域のノイズを低減し、9次高調波が500Hz以下とすることができる。周波数範囲を45Hz以下とした場合、45Hz以上を避けることで雑音端子電圧領域のノイズを低減し、11次高調波が500Hz以下とすることができる。
【0039】
以上のように限定する周波数範囲の上限値のバリエーションを上げたが、これらは基本動作周波数の奇数次高調波成分がノイズとして出力され易い特性に鑑みて定められている。特に3次,5次等の低い次数の奇数次高調波成分が大きく発生するので、それらの低い次数の成分を抑えることが好ましい。
【0040】
次に、限定する周波数範囲の下限は、20Hzまたは50Hzとしてもよい。周波数範囲を20Hz以上とした場合、可聴範囲の20Hz以下を外すことで騒音問題を回避することができる。また、周波数範囲を50Hz以上とした場合、動作周波数の高周波化によりトランスの小型化が可能となる。
【0041】
以上説明した上限値170Hz、100Hz、80Hz、71Hz、55Hz、および45Hzのいずれか1つと、下限値20Hzおよび50Hzのいずれか1つとを組み合わせて、上述した式(8)の近似式に従って変化させる周波数fの範囲を予め定めればよい。なお、所定周波数範囲を50Hz以上かつ100Hz以下としてもよい。この場合には、周波数が高い領域はカーブが比較的なだらかになるので広範囲の周波数範囲で近似式を適用しても誤差が少ないという利点がある。
【0042】
上述した実施の形態では、周波数fとオン時間tonの両方を可変としている。しかしながら、本発明はこれに限られない。オン時間tonを固定値とし、周波数fを上述した所定周波数範囲内で変化させてもよい。オン時間tonを固定して周波数fを変化させてディザリングを行うことによっても、その周波数範囲をある程度小さく設定する限り高調波低減とディザリングの両立が可能である。そこで、周波数fを変化させる範囲を一定範囲に制限したうえで、オン時間tonを固定しつつディザリングを行うことができる。
【0043】
なお、上述した実施の形態1、2において制御信号のディザリングを行っているので、ディザリング時の周波数変更を利用して周波数変調信号を生成してもよい。これにより、フォトカプラなどの専用の絶縁素子を用いることなく、点灯回路内で信号を伝達することができる。例えば、ディザリング時に調光率の情報を載せた制御信号を周波数変調信号として調光器(図示せず)に入力するなどして、調光信号の伝達を行っても良い。このように照明器具の調光信号または消灯信号を伝達することで,明るさを制御することができる。
【0044】
また、上記のディザリングによる周波数変調信号を例えば点検用回路(図示せず)に入力するなどして、ディザリングによる変調信号を点検信号の伝達に利用してもよい。典型的には実施の形態1、2にかかる照明器具30を非常灯および誘導灯に用いる場合において点検信号を伝達し,点検動作を行うことができる。また、ディザリングによる周波数変調信号を照明光変調信号の伝達に利用してもよい。これにより照明光を通信に使用する際の信号を伝達することができる。また、ディザリングによる周波数変調信号をHEMSコントローラ(図示せず)に入力するなどして、HEMS信号の伝達を行っても良い。
【符号の説明】
【0045】
1 商用交流電源、2 スイッチ、3 整流回路、4 入力平滑コンデンサ、5 絶縁トランス、5a 一次巻線、5b 二次巻線、6 ダイオード、7 出力平滑コンデンサ、8 MOSFET、9 制御集積回路、10 フォトカプラ、11 フィードバック回路、12 発光素子、13 電流検出抵抗、20 フライバックコンバータ回路、22 点灯回路、30 照明器具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8