(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1にかかる点灯回路22および照明器具30を示す図である。照明器具30は、ダイオードブリッジである整流回路3と、点灯回路22と、点灯回路22から電流の供給を受けて発光する発光素子12とを備えている。商用交流電源1からの交流電圧が整流回路3で整流され、整流された脈流電圧が点灯回路22に入力されている。商用交流電源1と整流回路3の間にはスイッチ2が介在しており、スイッチ2により電源のオンオフを行うことができる。
【0013】
なお、本実施の形態では発光素子12をLEDとするが、LEDに代えて有機ELとしてもよい。また、図では模式的に1つの発光素子12を図示しているが、本発明はこれに限られない。複数の発光素子12を直列、並列あるいは直並列に接続したものを点灯回路22で点灯させてもよい。
【0014】
点灯回路22は、整流回路3と接続するコンデンサ4と、このコンデンサ4と接続するフライバックコンバータ回路20と、フライバックコンバータ回路20内のスイッチング素子であるMOSFET8を制御する制御集積回路9とを備えている。また、点灯回路22は、発光素子12に流れるLED電流を検出する電流検出抵抗13と、LED電流を一定に保つように電流検出抵抗13で検出したLED電流の値を制御集積回路9にフィードバックするためのフィードバック回路11と、絶縁性を確保しつつフィードバック回路11と制御集積回路9の間を接続するフォトカプラ10とを備えている。
【0015】
フライバックコンバータ回路20は、一次巻線5aおよび一次巻線5aと極性向きが反対である二次巻線5bとを備えた絶縁トランス5を備えている。一次巻線5aの一端は、コンデンサ4と接続している。一次巻線5aの他端は、MOSFET8のドレイン端子に接続している。コンデンサ4の他端およびMOSFET8のソース端子は接地されている。二次巻線5bの一端には、ダイオード6のアノードが接続している。
【0016】
ダイオード6のカソードは出力平滑コンデンサ7の一端に接続している。二次巻線5bの他端および出力平滑コンデンサ7の他端は接地されている。発光素子12は、出力平滑コンデンサ7と並列に接続している。発光素子12のカソードには、前述した電流検出抵抗13が接続されている。
【0017】
制御集積回路9は、MOSFET8のゲート端子に制御信号を供給する。制御集積回路9は、制御信号の周波数fを増加させたらオン時間t
onを減少させ、周波数fを減少させたらオン時間t
onを増加させるように、制御信号の周波数fを変化させる。本実施の形態ではより好ましい形態として、制御集積回路9は、制御信号の周波数fとオン時間t
onの二乗とを積算した値Kが一定となるように制御信号を変更するものとする。
【0018】
フライバックコンバータ回路20の商用周波数での平均電流の式を求めると下記の式(1)が得られる。
【0019】
ここで、係数Kを下記の式(2)のとおりに定める。
K=f×t
on2 ・・・(2)
【0020】
図2は、本発明の実施の形態1にかかる点灯回路22および照明器具30の動作を説明するための波形図である。コンデンサ・インプット型電源回路では、
図2に示すように、入力される商用交流電圧V
ACに対して入力電流波形I
1が大きく歪むことが知られており、これが電源高調波電流を発生させる原因である。この高調波電流を低減するためには、入力電流波形を商用電源電圧V
ACと同じ正弦波の波形に近づけて
図2の電流波形I
2のようにすることが有効である。
【0021】
上記の式(1)から明らかなとおり、商用交流電圧V
ACの波形と入力電流であるドレイン電流Idとの間にある係数Kは、周波数(f)とオン時間の二乗(t
on2)を積算した値である。Lは絶縁トランス5の仕様で決まる固定値であり、商用交流電圧V
ACも商用交流電源1による一定の正弦波電圧である。入力電流波形すなわちIdを商用電源電圧V
ACと同じ正弦波の波形に近づけるためには、理想的には、係数Kが一定であればよい。
【0022】
そこで、本実施の形態では、好ましい形態として係数Kを一定値に定め、式(2)を下記の式(3)のように変形する。周波数fとオン時間t
onの関係を式(3)に示すような反比例的な関係に保持すればよい。すなわち、下記の式(3)に従って、周波数fを増加させたらオン時間t
onを減少させ、逆に周波数fを減少させたらオン時間t
onを増加させるように、制御信号の周波数fおよびオン時間t
onを変化させればよい。
【0023】
ところで、スイッチング時に発生するノイズ成分を抑制する技術の一つに、ディザリングというものがある。ディザリングは、スイッチング周波数を意図的に変化させることでノイズのピーク値を抑制する技術である。
図3は、本発明の実施の形態1にかかる点灯回路22および照明器具30の動作を説明するための図である。ノイズ成分の周波数スペクトルを示したものであり、縦軸がパワーである。一般的に
図3に示すようにスイッチング周波数fcをピークとするスペクトルが得られる。ディザリング前の特性カーブC1に対して、ディザリングを行うと特性カーブC2のようにノイズのピーク値を低く抑えることができる。
【0024】
本実施の形態では、上述した式(1)〜(3)で説明した周波数fとオン時間t
onとの関係を考慮しながらディザリングも行う。その結果、高調波電流低減とともにディザリングによるノイズピーク抑制をも行うことができる。
【0025】
図4は、本発明の実施の形態1にかかる点灯回路22および照明器具30の動作を説明するための波形図である。
図4の上段には、制御集積回路9がMOSFET8のゲート端子に与える制御信号の波形であり、周期T(すなわち周波数f=1/T)かつオン時間t
onのパルス波形が図示されている。
図4の下段には、上段に図示した制御信号が印加されたときのMOSFET8のドレイン電圧を示す。
【0026】
この周波数fを、式(3)に示す関係を維持しながら変化させる。例えば、時間の経過に応じて所定の上限周波数と所定の下限周波数との間で周波数の増加と現象を繰り返すようにする。このようにすることで、高調波電流を低減させつつ周波数fを変化させることができる。
【0027】
図5は、本発明の実施の形態1にかかる点灯回路22および照明器具30の動作を説明するための電流波形図である。
図5は本願発明者が行った計算結果であり、正弦波の電源電圧波形に対して本実施の形態にかかる点灯回路22がスイッチングを行ったときの2つの入力電流波形グラフi
kおよびi
nが示されている。電流波形グラフi
kは、本実施の形態にかかる制御すなわち係数Kを一定値とするように周波数fおよびオン時間t
onを変化させたものである。これに対し、電流波形グラフi
nは、実施の形態にかかる制御を行わず、オン時間t
onを一定にして周波数fを変化させたものである。電流波形グラフi
kは正弦波状であるのに対し、電流波形グラフi
nでは波形のプラス側ピークおよびマイナス側ピークにおいて周波数が変化しそれぞれ正弦波から電流波形が逸脱している。
【0028】
図6は、本発明の実施の形態1にかかる点灯回路22および照明器具30の動作を説明するための図である。
図6は、MOSFET8のゲート端子に供給する制御信号の、周波数f[
kHz]、周期T[μs]、オン時間ton[μs]、およびデューティ比Duty[%]のK=一定の場合の関係を示す。横軸の周波数に対するオン時間tonの値に着目すると、周波数が20
kHzのときにオン時間を20μsに設定し、周波数が80
kHzのときにオン時間を10μsに設定することで、係数Kを一定にすることができる。
【0029】
なお、上述した実施の形態1では、係数Kを一定として、入力電流波形すなわちIdを正弦波波形に近づけた。しかしながら、本発明はこれに限られるものではない。一定でないとしても、所望の高調波電流低減が実現される程度にIdを実質的にV
ACの正弦波波形に等しくするように係数Kが一定範囲内の値をとれば良い。係数Kを一定範囲内とするように、周波数fを増加させたらオン時間t
onを減少させ、周波数fを減少させたらオン時間t
onを増加させるように、制御信号の周波数fを変化させればよい。
【0030】
実施の形態2.
実施の形態2にかかる点灯回路および照明器具は、実施の形態1と同じ回路構成を備えており、制御集積回路9の出力する制御信号の内容が実施の形態1とは異なっている。したがって、以下の説明では実施の形態1と同一または相当する構成については同一の符号を付して説明を行うとともに、実施の形態1との相違点を中心に説明し、共通事項は説明を簡略化ないしは省略する。
【0031】
図6に示したように、周波数fが増加するほどオン時間t
onを低減することによって、係数Kを一定にすることができる。
図6におけるオン時間t
onのグラフは曲線であり、これは式(3)の右辺の分母がオン時間t
onの二乗となっていることに起因している。実施の形態2では、式(3)の近似式を求めて演算を簡素化することにする。
【0032】
x=a付近でのテイラー級数による近似式は、下記の式(4)である。
f(x) ≒ f(a)+f´(a)×f(x−a) ・・・(4)
【0033】
式(4)を用いて、下記のように近似式を求めることができる。
【0034】
上記式(8)は、オン時間t
onを周波数fの一次関数で表した近似式である。実施の形態2においては、制御集積回路9が、この式(8)に従って周波数fおよびオン時間t
onを変化させる。
【0035】
一次関数で近似させることで演算が簡素化されるので、制御集積回路9での演算が容易となる効果がある。また、集積回路ではなくアナログ演算回路を用いることによっても、周波数fとオン時間t
onの計算を行うことが可能となる。
【0036】
図7および
図8は、本発明の実施の形態2にかかる点灯回路22および照明器具30の動作を説明するための電流波形図である。電流波形グラフi
aは、実施の形態2にかかる制御すなわち近似式である式(8)に従って周波数fおよびオン時間t
onを変化させたものである。電流波形グラフi
kおよびi
nは、実施の形態1の
図5で述べたのと同じである。電流波形グラフi
a、i
k、i
nを相互に比較することで、近似式に従って制御した電流波形グラフi
aも、実施の形態1にかかる電流波形グラフi
kと遜色無いほどに正弦波状となっていることがわかる。
【0037】
上記の近似式を用いる場合には、実施の形態1で述べた式(3)と実施の形態2における近似式との乖離が大きくなりすぎるのを防ぐために、ディザリングにより変化させる周波数fの範囲を所定周波数範囲に限定することが好ましい。その周波数範囲は、下記の基準によって定めることができる。
【0038】
先ず、周波数範囲の上限は、170
kHz、100
kHz、80
kHz、71
kHz、55
kHz、または45
kHzとしてもよい。周波数範囲を170
kHz以下とした場合、170
kHz以上を避けることで雑音端子電圧の領域のノイズを低減し、3次高調波が500
kHz以下とすることができる。周波数範囲を100
kHz以下とした場合、100
kHz以上を避けることで雑音端子電圧の領域のノイズを低減し、5次高調波が500
kHz以下とすることができる。周波数範囲を80
kHz以下とした場合、高周波化に伴いスイッチングロスが増えるので効率の低下を避けるように周波数を抑えることができる。周波数範囲を71
kHz以下とした場合、71
kHz以上を避けることで雑音端子電圧領域のノイズを低減し、7次高調波が500
kHz以下とすることができる。周波数範囲を55
kHz以下とした場合、55.5
kHz以上を避けることで雑音端子電圧領域のノイズを低減し、9次高調波が500
kHz以下とすることができる。周波数範囲を45
kHz以下とした場合、45
kHz以上を避けることで雑音端子電圧領域のノイズを低減し、11次高調波が500
kHz以下とすることができる。
【0039】
以上のように限定する周波数範囲の上限値のバリエーションを上げたが、これらは基本動作周波数の奇数次高調波成分がノイズとして出力され易い特性に鑑みて定められている。特に3次,5次等の低い次数の奇数次高調波成分が大きく発生するので、それらの低い次数の成分を抑えることが好ましい。
【0040】
次に、限定する周波数範囲の下限は、20
kHzまたは50
kHzとしてもよい。周波数範囲を20
kHz以上とした場合、可聴範囲の20
kHz以下を外すことで騒音問題を回避することができる。また、周波数範囲を50
kHz以上とした場合、動作周波数の高周波化によりトランスの小型化が可能となる。
【0041】
以上説明した上限値170
kHz、100
kHz、80
kHz、71
kHz、55
kHz、および45
kHzのいずれか1つと、下限値20
kHzおよび50
kHzのいずれか1つとを組み合わせて、上述した式(8)の近似式に従って変化させる周波数fの範囲を予め定めればよい。なお、所定周波数範囲を50
kHz以上かつ100
kHz以下としてもよい。この場合には、周波数が高い領域はカーブが比較的なだらかになるので広範囲の周波数範囲で近似式を適用しても誤差が少ないという利点がある。
【0042】
上述した実施の形態では、周波数fとオン時間t
onの両方を可変としている。しかしながら、本発明はこれに限られない。オン時間t
onを固定値とし、周波数fを上述した所定周波数範囲内で変化させてもよい。オン時間t
onを固定して周波数fを変化させてディザリングを行うことによっても、その周波数範囲をある程度小さく設定する限り高調波低減とディザリングの両立が可能である。そこで、周波数fを変化させる範囲を一定範囲に制限したうえで、オン時間t
onを固定しつつディザリングを行うことができる。
【0043】
なお、上述した実施の形態1、2において制御信号のディザリングを行っているので、ディザリング時の周波数変更を利用して周波数変調信号を生成してもよい。これにより、フォトカプラなどの専用の絶縁素子を用いることなく、点灯回路内で信号を伝達することができる。例えば、ディザリング時に調光率の情報を載せた制御信号を周波数変調信号として調光器(図示せず)に入力するなどして、調光信号の伝達を行っても良い。このように照明器具の調光信号または消灯信号を伝達することで,明るさを制御することができる。
【0044】
また、上記のディザリングによる周波数変調信号を例えば点検用回路(図示せず)に入力するなどして、ディザリングによる変調信号を点検信号の伝達に利用してもよい。典型的には実施の形態1、2にかかる照明器具30を非常灯および誘導灯に用いる場合において点検信号を伝達し,点検動作を行うことができる。また、ディザリングによる周波数変調信号を照明光変調信号の伝達に利用してもよい。これにより照明光を通信に使用する際の信号を伝達することができる。また、ディザリングによる周波数変調信号をHEMSコントローラ(図示せず)に入力するなどして、HEMS信号の伝達を行っても良い。