(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
走行車体(2)の後部に、昇降リンク機構(4)を介して植付装置(5)を設け、該走行車体(2)の前側に予備のマット苗を積載する予備苗載せ台(6)を上下複数段に積重ねる積層形態(A)と、前後に並べる展開形態(B)に切替可能に構成した苗移植機において、
前記昇降リンク機構(4)の昇降により回動するリフトアーム(49)を設け、該リフトアーム(49)に連動ワイヤー(55)の一側部を連結し、
前記予備苗載せ台(6)を積層形態(A)と展開形態(B)に切り替える平行リンク(62)を設け、該平行リンク(62)に設けるブラケットピン(66)に前記連携ワイヤー(55)の他側部を連結し、前記昇降リンク機構(4)による植付装置(5)の昇降に連動して、前記予備苗載せ台(6)が積層形態(A)及び展開形態(B)に切り替わる構成としたことを特徴とする苗移植機の予備苗枠。
前記走行車体(2)の前後傾斜を検出する傾斜センサ(7)を設け、前記植付装置(5)の昇降を検出する昇降センサ(8)を設けると共に、前記予備苗載せ台(6)を積層形態(A)と展開形態(B)に切替える昇降シリンダ(3)または駆動モータ(9)を設け、前記傾斜センサ(7)が走行車体(2)の前上り傾斜を検出すると共に、前記昇降センサ(8)が植付装置(5)が上昇位置にあることを検出しているときは、前記予備苗載せ台(6)を展開形態(B)に切り替えることを特徴とする請求項1に記載の苗移植機の予備苗枠。
前記予備苗載せ台(6)を積層形態(A)と展開形態(B)に切り替える駆動モータ(9)を設け、該駆動モータ(9)を作動させて予備苗載せ台(6)が機体前側に位置する積層形態(A)と機体後側に位置する後側展開形態(C)に切り替える切り替えスイッチ(10)を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の苗移植機の予備苗枠。
前記予備苗載せ台(6)を前側へ展開形態(B)に回動させると、前記走行車体(2)に設けるエンジン(11)を始動させる始動補助機構(12)を駆動させることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の苗移植機の予備苗枠。
前記予備苗載せ台(6)の苗受面の左右内側壁面には、後側ほど内側へ張出すように傾斜する傾斜面(14)と、該傾斜面(14)の後端を急角度に切り落した形態の戻り止面(15)を形成したことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の苗移植機の予備苗枠。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の技術では、予備苗枠を手動操作で移動させていたので、作業者の操作力、操作時間を要して、作業能率を低下させる。また、補助の出入口等の傾斜地では、苗移植機の重心移動が大きく急激であるため、手動操作では対応し難い。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、走行車体(2)の後部に、昇降リンク機構(4)を介して植付装置(5)を設け、該走行車体(2)の前側に予備のマット苗を積載する予備苗載せ台(6)を上下複数段に積重ねる積層形態(A)と、前後に並べる展開形態(B)に切替可能に構成した苗移植機において、
前記昇降リンク機構(4)の昇降により回動するリフトアーム(49)を設け、該リフトアーム(49)に連動ワイヤー(55)の一側部を連結し、前記予備苗載せ台(6)を積層形態(A)と展開形態(B)に切り替える平行リンク(62)を設け、該平行リンク(62)に設けるブラケットピン(66)に前記連携ワイヤー(55)の他側部を連結し、前記昇降リンク機構(4)による植付装置(5)の昇降に連動して、前記予備苗載せ台(6)が積層形態(A)及び展開形態(B)に切り替わる
構成としたことを特徴とする苗移植機の予備苗枠の構成とする。
【0006】
苗移植機を走行運転して植付装置(5)による苗の植付作業を行うときは、予めマット苗を搭載している予備苗載せ台(6)は上下方向に高く積載された積層形態(A)にあって、車体(2)の後側には、昇降リンク機構4によって植付装置(5)が下降し、土壌面上に下降されて苗植付作業を行う苗植付作業状態にある。該植付装置(5)に供給した苗が作業によって減少すれば、運転者は機体前側部の予備苗載せ台(6)に積載した予備のマット苗を取り出して、後側の植付装置(5)に補充して、苗の植付作業を継続する。
【0007】
また、苗の植付作業の後、植付装置(5)を上昇させておき、走行車体(2)を単に走行移動させるときは、昇降リンク機構4を介して植付装置(5)を非苗の植付作業姿勢となるまで上昇させ、走行移動を行い易くする。
【0008】
そして、この昇降リンク機構4による植付装置(5)の上昇に連動して、積層形態(A)にある予備苗載せ台(6)を一部前側へ移動させることにより、前後並びの展開形態(B)に切替移動することができる。
【0009】
さらに、前記予備苗載せ台(6)の展開形態(B)から直ちに苗の植付作業の開始姿勢に移行するときは、植付装置(5)を昇降リンク機構(3)の作動によって苗の植付作業状態へ下降させることによって、これに連動して予備苗載せ台(6)が展開形態(B)から積層形態(A)に移動させて、苗の植付作業に適した形態とすることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記走行車体(2)の前後傾斜を検出する傾斜センサ(7)を設け、前記植付装置(5)の昇降を検出する昇降センサ(8)を設けると共に、前記予備苗載せ台(6)を積層形態(A)と展開形態(B)に切替える昇降シリンダ(3)または駆動モータ(9)を設け、前記傾斜センサ(7)が走行車体(2)の前上り傾斜を検出すると共に、前記昇降センサ(8)が植付装置(5)が上昇位置にあることを検出しているときは、前記予備苗載せ台(6)を展開形態(B)に切り替えることを特徴とする請求項1に記載の苗移植機の予備苗枠とする。
【0011】
苗移植機が圃場を走行して苗の植付作業を行うときは、昇降リンク機構4による植付装置(5)を昇降駆動力を利用して、前記予備苗載せ台(6)を積層形態(A)と展開形態(B)とに切り替えることができる。
【0012】
また、畦越えして圃場に出入りする場合等において、走行車体(2)が前後方向に大きく傾斜したときは、傾斜センサ(7)がこの傾斜を検出する。このとき、植付装置(5)の昇降位置が、昇降センサ(8)によって上昇位置にあると検出されると、積層形態(A)にある予備苗載せ台(6)を、昇降リンク機構4の昇降動作、または駆動モータ(9)の作動によって、機体前側へ移動させて展開形態(B)へ切えい替える。これにより、走行車体(2)が前上り傾斜で、且つ後部の植付装置(5)が上昇位置乃至上昇位置と同様の形態にあるときは、前記予備苗載せ台(6)を走行車体(2)の前側に移動させて展開形態(B)に切り替え、機体の前後重量バランスを図ることによって、機体走行の安全な姿勢を維持する。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記予備苗載せ台(6)を積層形態(A)と展開形態(B)に切り替える駆動モータ(9)を設け、該駆動モータ(9)を作動させて予備苗載せ台(6)が機体前側に位置する積層形態(A)と機体後側に位置する後側展開形態(C)に切り替える切り替えスイッチ(10)を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の苗移植機の予備苗枠とする。
【0014】
苗移植機は、苗の植付作業時のように、圃場内では前記植付装置(5)を昇降する昇降リンク機構4の昇降動作によって、そして、圃場に出入りするときは、前記昇降リンク機構4または駆動モータ(9)によって、予備苗載せ台(6)を積層形態(A)から展開形態(B)に切替移動させることができるが、この予備苗載せ台(6)を後側へ移動させて後側展開形態(C)に切り替えるときは、前記切替スイッチ(10)を操作して前記駆動モータ(9)を作動させる。
【0015】
このように、予備苗載せ台(6)を前側の展開形態(A)、又は積層形態(B)の位置から後側展開形態(C)に切替移動することによって、これら展開形態(B)または積層形態(A)で載置したマット苗や、肥料袋等の作業資材を予備苗載せ台(6)の上面に載せて、前後方向へ搬送案内することができ、作業能率を高めることができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、前記予備苗載せ台(6)を前側へ展開形態(B)に回動させると、前記走行車体(2)に設けるエンジン(11)を始動させる始動補助機構(12)を駆動させることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の苗移植機の予備苗枠とする。
【0017】
前記予備苗載せ台(6)は、手動操作またはスイッチ操作による電動モータ(9)で、前後方向へ移動させて積層形態(A)から前側の展開形態(B)へ移動することができるが、このとき予備苗載せ台(6)の展開形態(B)への移動に連動して、始動補助機構(12)を駆動して、走行車体(2)のエンジン(11)を起動する。
【0018】
請求項5に記載の発明は、
前記走行車体(2)の前部に押えハンドル(13)を設け、該押えハンドル(13)と一体で回動するアーム(77)を設け、該アーム(77)と予備苗載せ台(6)を前記連携ワイヤー(55)で連結し、前記予備苗載せ台(6)は、前
記押えハンドル(13)を前側へ回動操作すると、
前記連携ワイヤー(55)により積層形態(A)から前側下部に下る展開形態(B)に操作可能に構成
とし、前記走行車体(2)には、押えハンドル(13)の前側への回動操作を規制するロックフック(79)を設けることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の苗移植機の予備苗枠とする。
【0019】
予備苗載せ台(6)を手動操作で展開形態(B)へ移動するときは、作業者が車体(2)前端部の押さえハンドル(13)を前側へ回動操作することによって、積層形態(A)から展開形態(B)に切り替えることができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、前記予備苗載せ台(6)の苗受面の左右内側壁面には、後側ほど内側へ張出すように傾斜する傾斜面(14)と、該傾斜面(14)の後端を急角度に切り落した形態の戻り止面(15)を形成したことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の苗移植機の予備苗枠とする。
【0021】
前記のように予備苗載せ台(6)を展開形態(B)に切り替えて走行車体(2)の前側へ張り出させて、この予備苗載せ台(6)の前端部上面からマット苗を載せて、後側へ摺動させて後部の予備苗載せ台(6)上面へ載置案内させる。
【0022】
このマット苗の摺動案内では、マット苗の左右両側面がこの予備苗載せ台(6)の左右内側壁面の傾斜面(14)に案内されて、予備苗載せ台(6)の左右幅の中央部寄りとなる位置に案内されながら予備苗載せ台(6)の後部面上へ移される。
【0023】
この走行車体(2)の前側から供給されるマット苗の手前側端部である,マット苗前端面が傾斜面(14)の後端を通過すると、この後端面の左右両端部が傾斜面(14)後端の戻り突起部後側の戻り止面(15)に係止されて、マット苗の前側への移動が停止される。苗移植機の走行、停止等の状態や、予備苗載せ台(6)の傾斜、揺動状態等の如何に拘わらず、予備苗載せ台(6)に対するマット苗の搭載供給を、円滑且つ正確に行わせる。
【発明の効果】
【0024】
請求項1に記載の発明は、植付装置(5)を昇降する昇降リンク機構(3)によって昇降リンク機構
(4)を上昇させると、予備苗載せ台(6)が前後並びの展開形態(B)に切替わることにより、走行車体(2)を補助端の畦際まで移動させると、予備苗載せ台(6)が圃場の外側へ突出させることができ易く、マット苗の積込補給搭載の作業を行い易くする。
【0025】
また、植付装置(5)を上昇させて苗植付作業を中断すると、これと同時に予備苗載せ台(6)が展開形態(B)に切替えることにより、作業者が予備苗載せ台(6)の姿勢切替操作をいちいち行う必要はなく、作業者の労力を軽減し、迅速で効率的作業操作を行うことができる。
【0026】
そして、植付装置(5)を下降させると、予備苗載せ台(6)が積層形態(A)に切替わることにより、苗植付作業に戻る際に作業者が予備苗載せ台(6)の切替操作を行う必要がなく、省力化できる。
【0027】
さらに、予備苗載せ台(6)のマット苗受姿勢を積層形態(A)と展開形態(B)とに切替える操作は、苗の植付作業時において常時行われるものではなく、予備苗載せ台(6)上のマット苗が無くなったときにおいて行われるものであるから、この苗受姿勢を切替えを行うときにおいてのみ選択して、前記植付装置(5)の昇降と連動して苗受姿勢の切替えを行わせるように選択機構を設けることにより、簡単な構成、操作によって迅速、的確に予備苗載せ台(6)の苗受姿勢を選択することができる。
【0028】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明の効果に加えて、走行車体(2)が前上り姿勢に傾斜したことを傾斜センサ(7)が検出すると共に、植付装置(5)が所定以上に上昇したことを昇降センサ(8)が検出すると、昇降リンク機構4または駆動モータ(9)が作動して、予備苗載せ台(6)を展開形態(B)に切り替えることができる。
【0029】
これにより、走行車体(2)が、例えば圃場から畦越えして出るときのようには、大きく前上り傾斜姿勢になるが、このとき走行車体(2)の前側上部位置に展開形態(B)の予備苗載せ台(6)の前部が伸び出すため、苗移植機体としての重心位置が前部、畦上部側へ変位して、走行車体(2)の前上り姿勢傾向を抑制し、安定した安全姿勢で畦越え走行することができる。
【0030】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明の効果に加えて、予備苗載せ台(6)を積層形態(A)の前方位置の展開形態(B)から後方位置の後側展開形態(C)に亘って大きく前後方向へ移動させるときは、切替スイッチ(10)を操作して駆動モータ(9)を駆動させ、予備苗載せ台(6)の移動停止位置を操作することにより、遠隔操作位置から簡単、容易に制御操作することができ、操作性が向上する。
【0031】
また、予備苗載せ台(6)の前後方向移動行程を長くすることができ、マット苗や、肥料袋等の作業資材の植付装置(5)の苗タンクに対するマット苗補給や、車体(2)後部上の施肥タンクに対する肥料補給等を、容易且つ迅速に行うことができ、苗の植付作業能率を向上し、作業労力を軽減することができる。
【0032】
そして、構成においても予備苗載せ台(6)自体を資材運搬用のキャリアとして利用することができるので、取り扱い易い形態とすることができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、エンジン(11)を停止した状態で、予備苗載せ台(6)を手動または駆動モータ(9)で前後方向へ移動させて、展開形態(B)に切替えるときは、この操作によって始動補助装置(12)を作動させてエンジン(11)を起動しやすくすることができるので、エンジン(11)の起動を早めることにより、特に気温が低いときは、暖気運転を十分に維持して、苗移植機の作業走行を早く開始することができ、作業能率を高めることができる。
【0033】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、走行車体(2)の前端部を押える押えハンドル(13)を機体前側へ回動して押えることにより、予備苗載せ台(6)を前側へ移動させて展開形態(B)とすることにより、補場の畦際出入り口等の傾斜地で、この押えハンドル(13)を使用することができ、この押えハンドル(13)の押え操作と、走行車体(2)の前部上に予備苗載せ台(6)の重心位置を移動することによって、この傾斜地での走行車体(2)の移動を円滑に、安定姿勢で行わせることができる。
また、ロックフック(79)により、押えハンドル(13)の機体前方への回動を規制することにより、予備苗載せ台(6)の積層形態(A)と展開形態(B)のに切り替わることを規制することができる。
【0034】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、予備苗載せ台(6)の左右両側面に傾斜面(14)と、この傾斜面(14)の奥端部に戻り止め面(15)を形成して、マット苗の滑り込みを案内するものであるから、予備苗載せ台(6)上面でのマット苗の積み込み移動時の、左右揺動を規制案内して、安定したマット苗収容姿勢を保持することができ、一旦戻り止め面(15)部を越えて後側部へ供給案内したマット苗は、予備苗載せ台(6)面が前下り傾斜揺動しても、前側への逆戻りを防止することができ、正確な位置にマット苗を収容支持することができ、後続のマット苗の取出操作を行い易くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図面に基づいて、苗移植機は、高床乗用四輪走行形態の走行車体2の後側に、
昇降シリンダ3の油圧伸縮によって昇降回動される平行リンク形態の昇降リンク機構4を介して、代掻ロー夕20や、土壌面を滑走均平するフロート21、このフロート21の上側に支持される伝動ケース等からなる苗移植機体22、この機体22の上部に支持される苗タンク23、及び、機体22の後側下部にあってダブルクランク機構形態に回転してマット苗を分離保持して土壌面へ植付ける植付装置24等によって構成される多条植形態の植付装置5を装着し、走行車体2の運転席1の後側部には、施肥ホッパー25、肥料繰出装置26、施肥風呂亜27、及び繰出された肥料を施肥ブロア27からの送風によって搬送して、前記フロート21により均平された苗植付位置近傍の土壌面に施肥案内する施肥ホース28等からなる施肥装置29を、走行車体2後部のリヤフレーム30上に装着している。
【0037】
前記走行車体2の運転席1の下部には、エンジンカバー31下にエンジンルームを形成して、走行駆動用のエンジン11を搭載し、この運転席1の前方部にステアリングボード32、及びステアリングハンドル33、その他苗移植機運転操作のための操作具34等を配置している。
【0038】
前記運転席1、ステアリングボード32、及びこれらの間のセンタフロア35等の左右両側部には、走行車体2の前端部から後端部上のフェンダー36部に亘って一連に長く、かつ横幅広く形成のサイドフロア37を形成し、運転、作業者がこのサイドフロア37上面を前後に広く移動してマット苗補給作業や、肥料補給作業等を行い易く構成している。
【0039】
走行車体2の前端部上には、サイドフロア37の外側部に位置して、苗載せ支持枠38を設けて、上部の苗棚支持ベース16の上側部に複数段の予備苗載せ台6を支持構成している。走行車体2前端中央部には、押え軸39周りに、前側へ適宜角度回動できる押えハンドル13を設け、このハンドル13上には方向視針用のセンタマーカ40を立設している。
【0040】
前記エンジン11の前側には、ミッションケース41、油圧無段変速装置42等を設けて、エンジン11から伝動を受けて、左右前輪43の前車軸44や、左右後輪45の後車軸46を伝動する連動軸47、及びPTO軸48等を伝動回転する。このPTO軸48によって、前記植付装置5の苗タンク23や、植付装置24、及び施肥装置29等を連動し、又、連動軸47を経て後輪45と代掻ロー手20を伝動回転する。
【0041】
前記
昇降シリンダ3は、エンジン11によって駆動回転される油圧ポンプ回路から給排される油圧力によって伸縮されるもので、この伸縮によって、リフトアーム49をリヤフレーム30のアーム軸50周りに前後回動して、このリヤフレーム30に連結している昇降リンク機構4を昇降回動し、この後端部リンクヒッチ51に装着される植付装置5を平行姿勢を維持して昇降させることができる。前記
昇降シリンダ3の伸縮は、前記運転席1横側の操作具52によって油圧回路の切替弁を操作して作動することができるが、前記フロート21の中央部のセンタフロートが、土壌面を滑走するときの圧力を受けて、上下揺動して土壌面の深さや、凹凸面の変化を検出することができる。植付装置5が沈下して、このセンタフロート21の仰角が所定角以上に大きくなると、これに連動して前記油圧回路の切替弁を切替えて植付装置5を上昇するように連動して、苗植深さを浅くするように制御する、あるいは逆に、フロート21の仰角が所定角以下に小さくなると、切替弁を切替えて植付装置5を下降するように連動して、苗植深さを深くするように制御して、土壌面の深さや、状態等に拘らず、苗植付深さを略一定に維持するように、植付深さ制御を行う形態としている。
【0042】
主として,
図3〜
図6において、前記予備苗載せ台6の積層形態Aと展開形態Bとの切替と、前記
昇降シリンダ3による昇降リンク機構4の昇降作動との連動関係を説明する。前記左右両側部の各予備苗載せ台6は、方形状マット苗床形態に育苗されたマット苗を載せることができるプレート状形態で、前記苗載せ台支持ベース16の上側において,上下一対の棚桟60、61によって上下二段に支持される。下側の苗載せ台支持ベース16(乃至下棚桟61部)から上方に前後一対の平行リンク62が立設されて、この平行リンク62の上端部間に亘って上側の上棚桟60が支持される。
【0043】
この平行リンク62を苗載せ台支持ベース16に対して前後に回動することによって、上棚桟60を下棚桟61上面と平行状態を保持して前後に回動することができ、後側上部位置に回動したときは、上棚桟60が下棚桟61上方適宜高さ間隔に位置して、積層形態Aとなり、前側下部位置に回動したときは、上棚桟60が下棚桟61の前側延長面上に位置して、前後水平状面に沿って並ぶ展開形態Bとなる。この展開形態Bでは、この上棚桟61上に支持させている予備苗載せ台6の後端が、下棚桟61上に支持させる予備苗載せ台6の前端部に接近、乃至連接した状態になって、マット苗の底面を受ける苗受棚面63が、下棚桟61の棚面64の前方へ延長突出された形態となり、略同じ高さ面に維持される。
【0044】
このような
昇降シリンダ3と、予備苗載せ台6の前後移動を連動ワイヤー55を連結して行わせる形態としている。連動ワイヤー55の基端部の長穴57をリフトアーム49のピン56に嵌合させて、
昇降シリンダ3を伸縮してリフトアーム49、及び昇降リンク機構4をアーム軸50周りに昇降回動することにより、ワイヤー55を引っ張ったり、緩めたりすることができる。
【0045】
また、この連動ワイヤー55の先端部は、上棚桟60を支持する平行リンク62の下端部リンクピン65近くのブラケットピン66にスプリング67を介して連結している。前記
昇降シリンダ3側から連動ワイヤー55を引っ張ることによって、平行リンク62を前側へ回動して、展開形態Bに切替えることができる。
【0046】
前記苗載せ支持枠38の後端部と、平行リンク62のブラケットピン66との間には、戻しスプリング68を設けて、平行リンク62を後方回動するように付勢して、積層形態Aでの平行リンク62機構が、振動、揺動し難い構成としている。
【0047】
また、この戻しスプリング68は、展開状態Bで、昇降リンク機構4が下降したときに平行リンク62を後方へ引っ張り、積層形態Aへの切替作動を行い易く補助する。
前記下段部の予備苗載せ台6と、これを受ける苗載せ支持枠38の上面との間に、前後摺動自在の棚桟61が構成されて、この移動によって下段部の予備苗載せ台6の前端部を展開形態Bの予備苗載せ台6の後端部に連接して、前後予備苗載せ台6相互間の接続を円滑にし、正確に維持させることができる。
【0048】
この棚桟61のロックピン69に、前記苗載せ支持枠38のピン70周りに揺動自在に保持させたロックフック71を係合させて、前記昇降リンク機構4が昇降する際に棚桟61の前後移動を規制することができる。
【0049】
前記のように、ロックピン69にロックフック71を係合させて、棚桟61の移動を行わせないようにロックするので、マット苗の補充作業を行わないときに、予備苗載せ台6が切替えることなく、マット苗の落下や、補助苗店6が障害者物に接触することが防止される。
【0050】
また、前記ロックフック71を係合しているとき、昇降リンク機構4の上下回動に伴って、連動ワイヤー55が引っ掛っても、これをスプリング67力で吸収することにより、ワイヤー55の損傷、予備苗載せ台6の強制的切替移動を防止して、耐久性を向上することができる。前記上側の予備苗載せ台6を支持する苗桟60の後端側部には,ハンドル59を設けて,手動操作で前後方向へ移動することができる。
【0051】
ここにおいて,この予備苗枠は,運転席1を有した走行車体2の後部に、
昇降シリンダ3により昇降可能の昇降リンク機構4を介して多条植形態の植付装置5を連結し、前部には、マット苗搭載用の予備苗載せ台6を上下複数段に積重ねる積層形態Aと、前後に並べる展開形態Bとに切替可能にして構成する苗移植機において、前記
昇降シリンダ3による植付装置5の昇降に連動して、前記予備苗載せ台6を積層形態A、及び展開形態Bに切替可能に設ける構成とする。
【0052】
苗移植機を走行運転して植付装置5による苗の植付作業を行うときは、予めマット苗を搭載している予備苗載せ台6は上下方向に高く積載された積層形態Aにあって、走行車体2の後側には、
昇降シリンダ3の作動で下降された昇降リンク機構4を介して植付装置5が、土壌面上に下降されて苗植付作業を行う苗植付作業状態にある。植付装置5に供給した苗が作業によって減少すれば、運転者が前側部の予備苗載せ台6上面のマット苗を取出して、後側の植付装置5へ運んで挿填して、苗の植付作業を継続する。
【0053】
そして、苗の植付作業が終って植付装置5を上昇して苗移植機を単に走行移動するときは、この植付装置5を
昇降シリンダ3の作動によって、昇降リンク機構4を介して上昇して、植付装置5を非苗の植付作業姿勢として走行移動を行い易くする。
【0054】
また、この
昇降シリンダ3による植付装置5の上昇に連動して、積層形態Aにある予備苗載せ台6を一部前側へ移動させて前後並びの展開形態Bに切替移動することができる。
【0055】
さらに、前記予備苗載せ台6の展開形態Bから直ちに苗の植付作業の開始姿勢に移行するときは、植付装置5を
昇降シリンダ3の作動によって苗の植付作業状態へ下降させることによって、これに連動して予備苗載せ台6が展開形態Bから積層形態Aに移動させて、苗の植付作業を行うに適した形態となる。
【0056】
そして,前記苗移植機には、前記走行車体2の前後傾斜を検出する傾斜センサ7と、前記植付装置5の昇降を検出する昇降センサ8と、前記予備苗載せ台6を積層形態Aと展開形態Bとに切替える
昇降シリンダ3、又は駆動モータ9とを設けて、前記走行車体2が前上り傾斜して、植付装置5が上昇位置にあるときは、前記予備苗載せ台6を展開形態Bに作動させる。
【0057】
苗移植機が圃場土壌面を走行して苗の植付作業を行う場合は、前記のように
昇降シリンダ3の伸縮作動による植付装置5を昇降する駆動力を利用連動して、前記予備苗載せ台6を積層形態Aと展開形態Bとに切替えることができる。
【0058】
また、畦越えして圃場に出入りする場合等において、走行車体2が前後方向に大きく傾斜するときは、傾斜センサ7によって傾斜を検出する。このとき、植付装置5の昇降位置が、昇降センサ8によって上昇位置にあることを検出すると、積層形態Aにある予備苗載せ台6を、
昇降シリンダ3の作動、又は駆動モータ9の作動によって、前側へ移動させて展開形態Bへ切替える。
【0059】
これによって、走行車体2が前上り傾斜で、後部の植付装置5が上昇位置,乃至上昇位置と同様の形態にあるときは、前記予備苗載せ台6を走行車体2前側へ移動させて展開形態Bにして、苗移植機体は前後重量バランスを図ることによって、機体走行の安全な姿勢を維持する。
【0060】
また,前記予備苗載せ台6を、積層形態Aと、展開形態Bとに切替可能に設けると共に、切替スイッチ10の操作、及び駆動モータ9の回転により前記積層形態Aから後側に並べる後側展開形態Cに切替可能に設ける。
【0061】
苗移植機は、前記のように苗の植付作業時のように圃場内では、前記植付装置5を昇降する
昇降シリンダ3の作動によって、あるいは圃場に出入りするときは、前記
昇降シリンダ3、又は駆動モータ9等によって、予備苗載せ台6を積層形態Aから展開形態Bへ切替移動させることができるが、この予備苗載せ台6を後側へ移動させて後側展開形態Cに切替えるときは、前記切替スイッチ10を操作するか、前記駆動モータ9を駆動して、予備苗載せ台6を後側へ展開移動させて、後側展開形態Cへ切替える。
【0062】
このように、予備苗載せ台6を前側の展開形態A、又は積層形態Bの位置から後側展開形態Cへ切替移動することによって、これら展開形態B、又は積層形態Aで載置したマット苗や、肥料袋等の作業資材を予備苗載せ台6上面に載せて、前後方向へ搬送,案内することができ、作業性を高めることができる。
【0063】
また,前記予備苗載せ台6を前側へ展開形態Bに回動することにより、走行車体2のエンジン11の始動用のセルスタータ12を駆動可能に設ける。
前記予備苗載せ台6は手動操作、又はスイッチ操作による電動モータ9で、前後方向へ移動させて積層形態Aから前側の展開形態Bへ移動することができるが、このとき予備苗載せ台6の展開形態Bへの移動に連動して、セルモータ12を駆動して、走行車体2のエンジン11を起動する。
【0064】
また、前記予備苗載せ台6は、走行車体2前端部に設置の押えハンドル13を前側へ回動操作することによって、積層形態Aから前側下部の展開形態Bへ操作可能に構成する。
予備苗載せ台6を手動操作で展開形態Bへ移動するときは、作業者が走行車体2前端部の押さえハンドル13を前側へ回動操作することによって、積層形態Aから展開形態Bへ切替えることができる。
【0065】
更には,前記予備苗載せ台6の苗受面の左右内側壁面には、後側ほど内側へ張出すように傾斜する傾斜面14と、この傾斜面14の後端を急角度に切り落した形態の戻り止面15を形成して、マット苗の左右両側面を案内する構成とする。
【0066】
前記のように予備苗載せ台6を展開形態Bにして、走行車体2の前側へ張出させて、この予備苗載せ台6の前端部上面からマット苗を載せて、後側へ摺動させて後部の予備苗載せ台6上面へ載置案内させる。このマット苗の摺動案内では、マット苗の左右両側面がこの予備苗載せ台6の左右内側壁面の傾斜面14に案内されて、予備苗載せ台6幅の中央部寄りへ案内されながら予備苗載せ台6の後部面上へ移される。
【0067】
この走行車体2の前側から供給されるマット苗の手前側端部である,マット苗前端面が傾斜面14の後端を通過すると、この後端面の左右両端部が傾斜面14後端の戻り突起部後側の戻り止面15に係止されて、マット苗の前側への移動が停止される。苗移植機の走行、停止等の状態や、予備苗載せ台6の傾斜、揺動状態等の如何に拘わらず、予備苗載せ台6に対するマット苗の搭載供給を、円滑に、正確に行わせる。
【0068】
次に、主として
図7、
図8において、走行車体2の前後傾斜を検出する傾斜センサ7や、植付装置5の昇降位置を検出する昇降センサ8、又は、切替スイッチ10の操作等で駆動モータ9を駆動することによって、予備苗載せ台6を積層形態Aから、前側展開形態B、又は後側展開形態C等へ切替える構成としたものである。
【0069】
前記下側の予備苗載せ台6を支持する苗店支持枠38の下部に電動ギヤドモータ形態からなる駆動モータ9を設けて、このギヤ75により、前記平行リンク62のリンク(ピン)軸65のギヤ76を回動させて、この平行リンク62上側部に支持される予備苗載せ台6を、積層形態Aと、前側、後側展開形態B、Cとに切替回動できる。前記平行リンク62の回動域に接近する支持枠38部には、予備苗載せ台6の積層形態A位置を係止するストッパー72を設けている。後側展開形態C域へ回動するときは、このストッパー72を引っ込めて作用させない。
【0070】
また、
図9(a)(b)、
図10において、前記予備苗載せ台6の切替移動に伴って、エンジン11のセルスタータを連動する。図例では、平行リンク62を前後回動することにより、扇形ギヤ76を介してピニオンギヤ75を回転し、このギヤ75と一体回転するリー
ルで、セルスタータ12のロープ、又はワイヤー78を巻き取って、エンジン11を起動することができる。
【0071】
そして、
図11、
図12において、前記押えハンドル13を押えハンドル13を押え軸39周りに前側へ回動することによって、押えハンドル13と一体のアーム77に連結したワイヤー55を引っ張って、平行リンク62を前側へ回動させて予備苗載せ台6を積層形態Aと展開形態Bとに切替ることができる。前記押えハンドル13は、走行車体2前端部のブラケット78の先端部に押え軸39によって取付けられて、この押えハンドル39を前側へ所定角度回動操作することにより、走行車体2の前端部の浮上を防止することができ、畦際等の傾斜面を出入り走行するときに利用される。前記アーム77の回動には、ロックフック79が係合される。
【0072】
このロックフック79は、基部を走行車体2側のピン80周りに回動自在に設け、先端部を前記ワイヤー55を連結するピン81に手動で係合することができる。このロックフック79をピン81に係合させたときは、押えハンドル13を前側へ回動することができないし、又、予備苗載せ台6を積層形態Aから展開形態Bへ切替えることができない牽制状態にある。
【0073】
また、
図13(a)(b)において、各段の補助苗店6の平面形態を示すもので、育苗箱81内でマット床状苗形態に育苗されたマット苗82、又はこの育苗箱81を受けることができる。マット苗82を育苗箱81のまま受けるときは、前記植付装置5の苗タンク23へ供給するときは、この育苗箱81からマット苗82を取出して、マット苗82のみ苗タンク23へ供給する。予備苗載せ台6の左右両側縁部には、マット苗82の苗床厚と略同高さの側壁83が前後平行形態に形成されるが、この前半部には前端部から後側に亘って順次内側へ傾斜して張出す傾斜面14を形成し、この傾斜面14の後端に鋭角状の戻り止面15を形成している。
【0074】
これら傾斜面14、及び戻り止面15等を配置する左右両側部の側壁83は、予備苗載せ台6の中央線Lに対して左右対象状に形成される。各予備苗載せ台6の前端縁には、中央部を後側へ窪ませて左右両側部を前側へ突出させた凹縁縁84を形成し、後端縁には、中央部を後側へ突出させて,左右両側部を前側へ窪ませた凸曲縁85を形成している。
【0075】
これら各予備苗載せ台6の凹曲縁84と、凸曲縁85を、前後側から展開対向させて、接近接合させて、前後一連形態(展開形態B)に連接設定することにより、上側面に載せたマット苗82(苗箱81に収容されたままの形態でも可能)の前後移動を、前記傾斜面14に案内させて予備苗載せ台6幅の中央部側へ寄せるようにして後側へ押し移動するように案内作用を、円滑に、正確に行わせることができる。
【0076】
次に、主として
図14に基づいて、前記苗載せ支持枠38上の予備苗載せ台6は、前側展開形態Bにした状態で、前記平行リンク62を支持する支持アーム84を、支持枠38のアーム軸85の周りに横方向86へ旋回したり、前方向87へ旋回することができるが、サイドフロア37の前端部上には、前記支持アーム84とは独立の旋回支持アーム88を左右方向回動可能に設けて、各旋回支持アーム88の上側の予備苗載せ台6を載せて、左右方向へ移送することができる。
【0077】
図例では、左側の予備苗載せ台6を展開形態Bにして、外側端の予備苗載せ台6を畦D越しの路面E上にのぞませて、この路面E上からマット苗を予備苗載せ台6上面に載せて、走行車体2側の予備苗載せ台6に手押して移動(f1)させる。左側の旋回支持アーム88を畦D側へ回動して、予備苗載せ台6を前後に相接近させた状態で、このマット苗を旋回支持アーム88上の予備苗載せ台6に載せ替える(f2)。
【0078】
また、右側の旋回支持アーム88をこの前側へ接近させたておき、マット苗を左側予備苗載せ台6からこの右予備苗載せ台6上面に移動する(f3)。更に、右側の予備苗載せ台6を前側展開形態Bにしておけば、この前側の予備苗載せ台6を右側旋回支持アーム88上の予備苗載せ台6の端部に接近させて、マット苗の載せ替え(f4)を行って、更に右側後側の予備苗載せ台6への移送(f5)を順次に行うことができる。
【0079】
このため、走行車体2の右側の予備苗載せ台6にマット苗を供給するときは、走行車体2の向きを変えなくても、又、作業者がマット苗を一枚毎土壌面ち歩くことなく、供給作業を速かに行うことができる。
【0080】
次に、主として、
図15、
図16に基づいて、前記左右苗載せ支持枠38の前側に位置する前支柱89を、チューブ材等で、正面視U字状形態に形成して、このU字状底部に位置するフロントガード90を走行車体2の前端部下部に位置させるように張出させて、左右苗載せ支持枠38の前支柱89間を、前側へ湾曲形成したフロントガード90部で一体的に連結した形態に構成して、軽量,剛性的な構成で,左右両側部の重量予備苗載せ台6部の振動,揺動を少なくして,安定した支持形態とする。