(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明において、
図1などに示すXYZ直交座標系を適宜参照して、本発明の光拡散性シートの形状や配置などを説明する。本明細書では、このXYZ直交座標系において、第1の方向はY軸方向として、第2の方向はX軸方向として、第3の方向はZ軸方向として定義する。また、第3の方向は、光拡散性シートの法線方向と言うこともある。
【0010】
(光拡散性シート)
本発明の光拡散性シートの一実施形態について説明する。
図1および
図2に、本実施形態の光拡散性シートを示す。本実施形態の光拡散性シート1は、その少なくとも片面に凹凸パターン10を有する。ここで、凹凸パターン10は、第1の凹凸パターン11と、第1の凹凸パターン11の表面に形成された第2の凹凸パターン12とを有する。
第1の凹凸パターン11は、光拡散性シート1の表面に、第1の方向に沿って複数の突条が配列することによって形成される。以下、第1の凹凸パターン11の突条部の1つを「突条部11a」として、任意の隣り合う突条部11a間の凹部の谷底部分を「凹部11b」として説明する。
ここで、「突条」とは、シート面上を延伸する細長い突出部のことを意味する。
また、「隣り合う突条部」とは、第1の方向において、任意の突条部11aと、そのすぐ横に配置されている突条部11aのことを指す。
また、第2の凹凸パターン12は、第1の凹凸パターン11の表面に複数の突条が、第1の方向に対して配列することによって形成されている。以下、第2の凹凸パターン12の突条部の1つを「突条部12a」として、任意の隣り合う突条部12a間の凹部の谷底部分を「凹部12b」として説明する。
本実施形態において、光拡散性シート1の凹凸パターン10を有する面を、法線方向から観察した際、突条部11aの稜線は、蛇行していることが好ましい。すなわち、突条部11aの各々の稜線は、第2の方向に対して延伸する進行軸を有しているが、この進行軸を中心に左右に蛇行していることが好ましい。同様に、光拡散性シート1の凹凸パターン10を有する面を、法線方向から観察した際、突条部12aの稜線は、蛇行していることが好ましい。
ここで、「突条部11aの稜線」とは、突条部11aの頂部をつないで続く線のことを意味する。また、「突条部12aの稜線」とは、突条部12aの頂部をつないで続く線のことを意味する。
また、突条部11aの稜線は、
図5の電子顕微鏡写真において、白く見えるラインのことを指す。また、突条部12aの稜線は、
図4の電子顕微鏡写真において、第1の凹凸パターン11の突条部11aの表面に、白く見えるラインのことを指す。
【0011】
本発明の1つの態様において、第1の凹凸パターン11を形成しているそれぞれの突条は、第2の方向において高低差を有していてもよい。また、第2の凹凸パターン12を形成しているそれぞれの突条は、第2の方向において高低差を有していてもよい。ここで、「第2の方向において高低差を有する」とは、光拡散性シート1を、第1の方向に沿って切断した断面図(
図2)において、突条部11aの高さ、及び突条部12aの高さが、第2の方向において変化していることを意味する。突条部11aの高さ、及び突条部12aの高さについては、後述する。
【0012】
本発明の1つの態様において、光拡散性シート1を第1の方向に沿って切断した際、その断面図は、
図2に示すような形状を有している。すなわち、突条部11aの断面形状は、第1の方向において不規則に変化しており、突条部11aの断面形状の輪郭線に沿って、突条部12aの波状の断面が複数形成されていることが好ましい。
図2に示すように、第1の凹凸パターン11を形成する複数の突条部11aの断面形状はそれぞれ異なっており、同一ではない。同様に、第2の凹凸パターン12を形成する突条部12aの断面形状もまた、それぞれに異なっており、同一ではない。本発明の一つの態様において、光拡散性シート1を第1の方向に沿って切断した際の、第1の凹凸パターン11を形成する突条部11aの断面形状、及び第2の凹凸パターン12を形成する突条部12aの断面形状は、ひだ状、または紡錘形の一部を有する形状、または、一方向に引き伸ばしたドーム状であることが好ましい。
また、光拡散性シート1を第1の方向に沿って切断した際、突条部11aの断面の大きさ、及び形状の少なくとも1つが、第2の方向に沿って変化していることが好ましい。同様に、光拡散性シート1を第1の方向に沿って切断した際、突条部12aの断面の大きさ、及び形状の少なくとも1つが、第2の方向に沿って変化していることが好ましい。このような形状が、第1の凹凸パターン11、及び第2の凹凸パターン12を構成する突条の稜線の不規則性を生み出し、均一でフリンジパターンを発生しない光拡散性シートが得られる。
ここで、「フリンジパターン」とは、規則性のある凹凸パターンを有する光拡散シートを光が透過する際に発生する縞状のパターンを意味する。
【0013】
図3は、光拡散性シート1の、第1の凹凸パターン11の一例を示す拡大斜視図である。
図3に示すように、複数の突条部11aの稜線の間隔は、第1の方向において不規則に変化している。また、隣り合う2つの突条部11aの稜線の間隔は、第2の方向において不規則に、かつ連続的に変化していることが好ましい。ただし、第1の方向、及び第2の方向において、突条部11aの稜線の間隔が変化しない部分を含んでいてもよい。また、突条部11aの稜線は、その途中で任意の他の突条部11aの稜線に枝分かれしていてもよく、複数の突条部11aの稜線が重なっていてもよい。このような突条部11aの稜線の枝分かれ、又は合一が、突条部11aの稜線の間隔の不規則性を生み出す要因となっている。
ここで、「隣り合う2つの突条部11aの稜線の間隔」とは、第1の方向に沿って隣り合う2つの突条部11aの、頂部と頂部の間隔(距離)のことを意味する。
【0014】
図4は、光拡散性シート1の、第1の凹凸パターン11と第2の凹凸パターン12を、法線方向から撮影した電子顕微鏡写真の一例である。
図4に示すように、第2の凹凸パターン12は、第1の凹凸パターン11の表面に、複数の突条部12aが配列することによって形成されている。
複数の突条部12aの稜線の間隔は、第1の方向において不規則に変化している。また、隣り合う2つの突条部12aの稜線の間隔は、第2の方向において不規則に、かつ連続的に変化していることが好ましい。ただし、第1の方向、及び第2の方向において、突条部12aの稜線の間隔が変化しない部分を含んでいてもよい。また、突条部12aの稜線は、その途中で任意の他の突条部12aの稜線に枝分かれしていてもよく、複数の突条部12aの稜線が重なっていてもよい。
【0015】
上述した通り、第1の凹凸パターン11の突条部11aの稜線の間隔、及び第2の凹凸パターン12の突条部12aの稜線の間隔は一定ではない。本発明の光拡散性シートの1つの態様において、隣り合う2つの突条部11aの稜線の間隔を表す「ピッチ」は、最頻ピッチP
1として表すことができる。ここで、「最頻ピッチP
1」とは、隣り合う2つの突条部11aの稜線の間隔(稜線間距離)のうち、最も出現頻度が高い稜線間距離のことを意味する。
本発明の1つの態様において、第1の凹凸パターン11の最頻ピッチP
1は、3〜20μmであることが好ましく、5〜15μmであることがより好ましく、8〜13μmであることがさらに好ましい。最頻ピッチP
1が前記下限値未満、すなわち、3μm未満であっても、前記上限値を超えても、すなわち、20μmを超えても、光拡散性が損なわれる。
【0016】
前記最頻ピッチP
1は、以下の式(1)から求められた値である。
最頻ピッチP
1=1/R
1 ・・・(1)
具体的に、最頻ピッチP
1は光拡散性シートの電子顕微鏡画像より求めることができる。以下に、電子顕微鏡を用いた最頻ピッチの算出方法について説明する。
まず、光拡散性シート1の凹凸パターン10が形成されている面を、法線方向から電子顕微鏡で観察する。観察条件は、加速電圧15〜20kV、ワーキングディスタンス5〜15mm程度で行うことが好ましい。電子顕微鏡観察における観察倍率は、第1の凹凸パターン11の突条部11aの配列数が、20〜50列となるように適宜調整することが好ましい。
次に、得られた電子顕微鏡写真(
図5)を、2次元フーリエ変換してフーリエ変換画像(
図6)を得る。ここで、得られた電子顕微鏡写真がJPEG等の圧縮画像である場合は、TIFF画像等のグレースケール画像に変換してから、2次元フーリエ変換を行うことが好ましい。なお、
図6のフーリエ変換画像において、中心からの方位は、
図5に存在する周期構造、すなわち、第1の凹凸パターン11を形成する突条部11aが配列する方向を意味し、中心からの距離は、
図5に存在する周期構造の周期の逆数を意味する。
また、
図6の画像の濃淡は周期構造の頻度を表し、淡いほど、
図5に含まれる周期構造の中で、対象となる周期構造の頻度が高いことを意味する。
続いて、観察条件はそのままで、第2の凹凸パターン12の電子顕微鏡観察を行う。観察倍率は、第1の方向における突条部12aの配列数が、20〜50列になるように適宜変更する。得られた電子顕微鏡写真(
図4参照)を、2次元フーリエ変換してフーリエ変換画像(
図7)を得る。ここで、得られた電子顕微鏡写真がJPEG等の圧縮画像である場合は、TIFF画像等のグレースケール画像に変換してから、2次元フーリエ変換を行うことが好ましい。
次に、
図6のフーリエ変換画像の中心部以外で、突条部11aのピッチの最大頻度を示す位置D
1を通るように直線L
1を引き、直線L
1上の突条部11aのピッチの頻度を縦軸に、中心からの距離(周期の逆数)を横軸にグラフを作成する(
図8)。
図8のグラフにおいて頻度が最大となる距離R
1の逆数から最頻ピッチP
1を求めることができる。
【0017】
また、第1の凹凸パターン11は、突条部11aのアスペクト比A
1が0.2〜1.0であることが好ましく、0.3〜0.7であることがより好ましく、0.35〜0.45であることが更に好ましい。アスペクト比A
1が前記下限値未満であっても前記上限値を超えても、光拡散性が損なわれる。
【0018】
ここで、突条部11aのアスペクト比A
1は、突条部11aの平均高さB
1/最頻ピッチP
1で求められる値である。
突条部11aの平均高さB
1は次のようにして求める。すなわち、光拡散性シート1の凹凸パターン10が形成された面を、法線方向から電子顕微鏡により観察し、その観察像から第1の方向に沿って切断した断面図(
図2参照)を得る。ここで、電子顕微鏡の観察条件は、前述の最頻ピッチP
1を求める際に用いた条件と同じであってもよい。
図2に示すように、第1凹凸パターン11を形成する突条部11aの高さは、両隣の2つの凹部11bから、突条部11aの頂部までの第3の方向の距離の和の1/2である。すなわち、第1の凹凸パターン11を形成する突条部11aの高さb
iは、突条部11aに対して一方側の凹部11bから計測した突条部11aの高さをL
i、他方側の凹部11bの底から計測した高さをR
iとした際に、b
i=(L
i+R
i)/2となる。このようにして各突条部11aの高さb
iを求める。そして、50個の突条部11aの高さR
iとL
iを測定して高さb
iを算出し、それらの高さを平均して平均高さB
1を求める。
【0019】
本実施形態における第1凹凸パターン11は、光拡散性シート1を法線方向から観察して、突条部11aの稜線が蛇行している。本明細書では、第1凹凸パターン11の突条部11aの稜線の蛇行の程度を配向度C
1という。この配向度C
1の値が大きいほど、突条部11aの稜線が蛇行していることを意味する。ここで、「配向度C
1」は、突条部11aの稜線の第2の方向に対する蛇行の程度である。すなわち、「配向度C
1の値が大きい」とは、突条部11aの稜線が、前述の進行軸を中心に左右に大きな振り幅で蛇行した状態にあることを意味する。
第1の凹凸パターン11の配向度C
1は0.2以上であることが好ましく、0.25以上であることがより好ましく、0.30以上であることが更に好ましい。配向度C
1が前記下限値未満、すなわち、0.2未満であると、光拡散性が損なわれることがある。
一方、第1の凹凸パターン11の配向度C
1は0.50以下であることが好ましく、0.40以下であることがより好ましく、0.35以下であることがさらに好ましい。配向度C
1が前記上限値以下、すなわち、0.50以下であれば、容易に光拡散性シート1を製造できる。すなわち、第1の凹凸パターン11の配向度C
1は、0.20〜0.50であることが好ましく、0.30〜0.40であることがより好ましい。配向度C
1が0.20〜0.50であれば、光拡散性が損なわれることなく、容易に光拡散性シートを製造できるため好ましい。
【0020】
配向度C
1は、以下の方法により求められる。
まず、最頻ピッチP
1を求める際に得た
図6のフーリエ変換像を利用し、突条部11aのピッチの最大頻度D
1が、X軸上を通るように、フーリエ変換像の中心部を軸として回転させたフーリエ変換像を作成する(
図9)。ここで、「X軸」とは、フーリエ変換像の中心部を通り、画像に対して水平な線のことを指す。次いで、最大頻度D
1を通り、第1の方向に平行な補助線M
1を引き、補助線M
1上の周期の頻度を縦軸に、最大頻度D
1からの距離を横軸にとってグラフを作成する(
図10)。
図10のグラフから、得られたピークの半減値W
1(補助線M
1上の周期の頻度の値が、最大頻度D
1の半分になる位置でのピークの幅)を求める。得られた値を以下の式(2)に当てはめて、配向度C
1を求める。
配向度C
1=W
1/R
1 ・・・(2)
【0021】
本実施形態における第1の凹凸パターン11は、突条部11aの頂部および凹部11bが丸みを帯びており、突条部11aと凹部11bを含む波状の凹凸は、正弦波状になっている。ここで、「正弦波状」とは、第1の凹凸パターン11を第1の方向に沿って切断した断面図において、第1の凹凸パターン11の突条部11aの断面形状の接線の傾きと、凹部11bの断面形状の接線の傾きが、連続的に変化することを意味する。
第1の凹凸パターン11の突条部11aと凹部11bを含む波状の凹凸が正弦波状であると、光拡散性に優れたシートが得られるため好ましい。
【0022】
また、本実施形態において、第2の凹凸パターン12の最頻ピッチP
2は、0.3〜2.0μmであることが好ましく、0.4〜1.0μmであることがより好ましく、0.5〜0.8μmであることがさらに好ましい。最頻ピッチP
2が前記下限値未満であっても前記上限値を超えても、光拡散性が損なわれる。
【0023】
最頻ピッチP
2は、以下の式(3)から求められた値である。
最頻ピッチP
2=1/R
2 ・・・(3)
具体的に、最頻ピッチP
2は、
図7のフーリエ変換画像を用いて、第1の凹凸パターン11の最頻ピッチP
1の算出方法と同様の方法にて、求めることができる。
すなわち、
図7のフーリエ変換画像の中心部以外で、突条部12aのピッチの最大頻度を示す位置を通るように直線を引き、前記直線上の突条部12aのピッチの頻度を縦軸に、中心からの距離(周期の逆数)を横軸にグラフを作成する。このグラフにおいて頻度が最大となる距離R
2の逆数から最頻ピッチP
2を求めることができる。
【0024】
また、第2の凹凸パターン12は、突条部12aのアスペクト比A
2が0.25〜0.35であることが好ましく、0.28〜0.33であることがさらに好ましい。アスペクト比A
2が前記下限値未満であっても前記上限値を超えても、光拡散性が損なわれることがある。
【0025】
ここで、突条部12aのアスペクト比A
2は、突条部12aの平均高さB
2/最頻ピッチP
2で求められる値である。
突条部12aの平均高さB
2は次のようにして求める。すなわち、光拡散性シート1の凹凸パターン10が形成された面を、法線方向から電子顕微鏡により観察し、その観察像から第1の方向に沿って切断した断面図(
図2参照)を得る。ここで、電子顕微鏡の観察条件は、前述の最頻ピッチP
1を求める際に用いた条件と同じであってもよい。
図2に示すように、第2の凹凸パターン12を形成する突条部12aの高さは、両隣の2つの凹部12bから、突条部12aの頂部までの距離の和の1/2である。ここで、凹部12bから突条部12aの頂部までの距離は、突条部11aの頂部と、凹部11bを結ぶ線に平行であり、かつ突条部12aの頂部を通過する仮想線に対して垂直方向の距離である。すなわち、第2の凹凸パターン12を形成する突条部12aの高さは、突条部12aに対して一方側の凹部12bから計測した突条部12aの高さをL
S、他方側の凹部12bから計測した高さをR
Sとした際に、b
S=(L
S+R
S)/2となる。このようにして各突条部12aの高さb
Sを求める。そして、50個の突条部12aの高さR
Sを測定し、それらの高さを平均して平均高さB
2を求める。
【0026】
本実施形態における第2の凹凸パターン12も、光拡散性シート1を法線方向から観察して、突条部12aの稜線が蛇行している。本明細書では、突条部12aの稜線の、第2の方向に対する蛇行の程度を「配向度C
2」という。この配向度C
2の値が大きいほど、突条部12aの稜線が蛇行していることを意味する。
本発明の1つの態様において、配向度C
2は、0.2以上であることが好ましく、0.25以上であることがより好ましく、0.30以上であることが更に好ましい。配向度C
2が前記下限値未満、すなわち、0.2未満であると、光拡散性が損なわれることがある。
また、第2の凹凸パターン12の配向度C
2は0.50以下であることが好ましく、0.40以下であることがより好ましく、0.35以下であることがさらに好ましい。配向度C
2が前記上限値以下、すなわち、0.50以下であれば、容易に光拡散性シートを製造できる。すなわち、第2の凹凸パターン12の配向度C
2は、0.20〜0.50であることが好ましく、0.25〜0.35であることがより好ましい。配向度C
2が0.20〜0.50であれば、光拡散性が損なわれることなく、容易に光拡散性シートを製造できるため好ましい。
【0027】
第2の凹凸パターン12の配向度C
2は、最頻ピッチP
2を求める際に得たフーリエ変換像(
図7)を用いて、第1の凹凸パターン11の配向度C
1と同じ方法にて求めることができる。
【0028】
第1の凹凸パターン11の配向方向と第2の凹凸パターン12の配向方向との差(以下、単に「配向方向の差」と言うこともある)は、光拡散の異方性が高くなることから、できるだけ小さいことが好ましい。すなわち、配向方向の差が小さいと、光拡散の異方性が高くなり、第1の凹凸パターン11と第2の凹凸パターン12の異方性拡散の相乗効果が得られるため好ましい。本発明においては、配向方向の差が5°以内であることが好ましく、2°以内であることがより好ましい。また、配向方向の差は、1〜5°であることが好ましく、1〜2°であることがより好ましい。
ここで、第1の凹凸パターン11の配向方向とは、第1の凹凸パターン11の蛇行した稜線の各箇所での方向を平均した方向を意味する。また、第2の凹凸パターン12の配向方向とは、第2の凹凸パターン12の蛇行した稜線の各箇所での方向を平均した方向を意味する。
第1の凹凸パターン11の配向方向と、第2の凹凸パターン12の配向方向は、電子顕微鏡画像を元に算出することができる。
まず、上述の最頻ピッチP
1を求める際に得られた電子顕微鏡画像
図4、及び
図5において、これら画像に共通する突条の稜線方向を一致させる。
図5のフーリエ変換像である
図6において、フーリエ変換像の中心部以外で、突条部11aのピッチの最大頻度を示す位置D
1から、フーリエ変換像の中心部に引いた線L
1と、X軸から構成される角度θ
1を、第1の凹凸パターン11の配向方向とする(
図11参照)。
次に、
図4のフーリエ変換像である
図7において、フーリエ変換像の中心部以外で、突条部12aのピッチの最大頻度を示す位置D
2から、フーリエ変換像の中心部に引いた線L
2と、X軸から構成される角度θ
2を、第2の凹凸パターン12の配向方向とする。
得られたθ
1とθ
2との差、すなわち、θ
1-θ
2で表される角度から配向方向の差を求めることができる。
【0029】
また、本発明の1つの態様において、光拡散性シート1の第1の凹凸パターン11と、第2の凹凸パターン12を有さない面から光を入射した際の光の1/10値角度は、65°以上であることが好ましい。また、1/10値角度が、65〜95°であることがより好ましく、75〜90°であることが更に好ましい。光の1/10値角度が65°以上であれば、光拡散性が優れるため好ましい。
ここで、「光の1/10値角度」は、以下の方法により求めることができる。
まず、ゴニオメーター(型式:GENESIA Gonio/FFP、ジェネシア社製)を用いて透過散乱光を測定することにより、照度曲線を得る。具体的には、光拡散シートから垂直に出射する光(この光の出光角度を0°とする。)の照度を1とした際の相対照度を、第2方向または第1方向に沿って出光角度−90°から90°までの相対照度を1°間隔で測定して、照度曲線を得る。ここで、照度曲線とは、
図14に示すような、横軸を出光角度とし、縦軸を相対照度として、プロットとした曲線である。
そして、得られた照度曲線から光の1/10値角度(
図14中のW
2)を求める。
【0030】
なお、光拡散性シート1は、後述する光拡散性シートの製造方法により得られたシートそのものであってもよいし、光拡散性シートの製造方法により得られたシートを原版として複製した複製シートであってもよい。
光拡散性シート1が、後述する光拡散性シートの製造方法により得られたシートそのものである場合には、通常、断面から見た場合に蛇行変形した硬質層と表面が硬質層の変形に追従して変形した基材層の2層で構成される。また、複製シートである場合には、通常、表面に凹凸が転写された樹脂からなる1層または、表面に凹凸が一方の面に転写された凹凸形成層と前記凹凸形成層の凹凸が転写されていない面に積層された平坦な基材層の2層で構成される。
【0031】
以上説明した光拡散性シート1では、凹凸パターン10が第1の凹凸パターン11と、第1の凹凸パターン11の表面に形成された第2の凹凸パターン12から構成されているため、優れた光拡散性を有するものとなっている。したがって、光拡散性シート1自体を光拡散シートとして使用することができ、また、光拡散シートを製造するための原版シートとして使用することもできる。
【0032】
(光拡散性シートの製造方法)
次に、光拡散性シート1の製造方法の一実施形態について説明する。
本実施形態の光拡散性シート1の製造方法は、積層フィルム形成工程と加熱収縮工程とを有する。
【0033】
[積層フィルム形成工程]
本実施形態における積層フィルム形成工程は、加熱収縮性樹脂フィルムの片面に、表面が平滑で2種の樹脂からなる硬質層(以下、「表面平滑硬質層」という。)を少なくとも1層積層させて積層フィルムを得る工程である。ここで、表面平滑硬質層とは、JIS B0601に記載の方法により測定される中心線平均粗さが0.1μm以下の層であって、加熱収縮性樹脂フィルムを収縮させる温度条件下で軟化しない層である。また、軟化しないとは、表面平滑層のヤング率が100MPa以上であることを意味する。
【0034】
加熱収縮性樹脂フィルムとは、80〜180℃の温度で加熱した際、特定の方向に収縮(シュリンク)するフィルムのことを意味する。このようなフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート系シュリンクフィルム、ポリスチレン系シュリンクフィルム、ポリオレフィン系シュリンクフィルム、ポリ塩化ビニル系シュリンクフィルム、ポリ塩化ビニリデン系シュリンクフィルムなどを用いることができる。このうち、耐熱性の観点から、ポリエチレンテレフタレート系シュリンクフィルム、又はポリスチレン系シュリンクフィルムを用いることが好ましい。
本実施形態では、加熱収縮性樹脂フィルムとして、1軸延伸フィルムを用いることが好ましい。1軸延伸は、縦延伸、横延伸のいずれであってもよい。
また、加熱収縮性樹脂フィルムは、1.1〜15倍の延伸倍率で延伸されていることが好ましく、1.3〜10倍で延伸されていることがより好ましい。
また、加熱収縮性樹脂フィルムとしては、収縮率が好ましくは20〜90%、より好ましくは35〜75%のフィルムであることが好ましい。本明細書において、収縮率とは、(収縮率[%])={(収縮前のフィルムの長さ)−(収縮後のフィルムの長さ)}/(収縮前のフィルムの長さ)×100である(ただし、「フィルムの長さ」は加熱収縮性樹脂フィルムの収縮方向の長さのことを意味する)。収縮率が前記下限値以上、すなわち20%以上であれば、光拡散性シート1をより容易に製造できる。一方、収縮率が前記上限値を超える、すなわち、90%を超える加熱収縮性樹脂フィルムの製造は困難である。
加熱収縮性樹脂フィルムの表面は、平坦であることが好ましい。加熱収縮性樹脂フィルムの表面が平坦であれば、その表面に、表面平滑硬質層を容易に形成できるため好ましい。ここで、「平坦」とは、JIS B0601に記載の方法により測定される中心線平均粗さが0.1μm以下であることを意味する。
【0035】
加熱収縮性樹脂フィルムを構成する樹脂(以下、「樹脂L」と記載する)のガラス転移温度Tg
1は40〜200℃であることが好ましく、60〜150℃であることがより好ましい。ガラス転移温度は示差熱分析等により測定できる。ガラス転移温度Tg
1が40〜200℃であれば、より容易に凹凸パターン10を形成できる。すなわち、樹脂Lのガラス転移温度Tg
1が、40〜200℃であれば、樹脂Lから構成される加熱収縮性樹脂フィルムを、80〜180℃の温度で加熱収縮させることができるため、より容易に凹凸パターン10を形成することができるため好ましい。
樹脂Lのヤング率は、加熱収縮工程の温度、すなわち、80〜180℃の温度範囲において0.01〜100MPaであることが好ましく、0.1〜10MPaであることがより好ましい。樹脂Lのヤング率が前記下限値以上であれば、基材として使用可能な硬さであり、前記上限値以下であれば、表面平滑硬質層が変形する際に同時に追従して変形可能な軟らかさである。
上述のようなガラス転移温度Tg
1、及びヤング率を有する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、及びポリ塩化ビニル系樹脂から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0036】
表面平滑硬質層を構成する2種の樹脂(以下、一方を「樹脂M」、他方を「樹脂N」として記載する)としては、各々、例えば、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、フッ素樹脂などを使用することができる。
【0037】
また、樹脂Mおよび樹脂Nは、第2の凹凸パターン12を容易に形成できることから、ガラス転移温度が互いに異なることが好ましく、具体的には、樹脂Mのガラス転移温度Tg
2Mが樹脂Nのガラス転移温度Tg
2Nよりも高いことが好ましい。さらには、(樹脂Mのガラス転移温度Tg
2M)−(樹脂Nのガラス転移温度Tg
2N)が10℃以上であることが好ましく、15℃以上であることがより好ましい。
一方、Tg
2MとTg
2Nとが離れすぎても、第2凹凸パターン12を形成しにくくなるため、Tg
2M−Tg
2Nが20℃以下であることが好ましく、19℃以下であることがより好ましい。すなわち、樹脂Mのガラス転移温度Tg
2Mと、樹脂Nのガラス転移温度Tg
2Nの差は、10〜20℃であることが好ましく、11〜15℃であることがより好ましい。
第1の凹凸パターン11および第2の凹凸パターン12からなる凹凸パターン10を容易に形成できる点では、樹脂Mのガラス転移温度Tg
2Mと樹脂Lのガラス転移温度Tg
1との差(Tg
2M−Tg
1)、樹脂Nのガラス転移温度Tg
2Nと樹脂Lのガラス転移温度Tg
1との差(Tg
2N−Tg
1)が共に10℃以上であることが好ましく、15℃以上であることがより好ましく、20℃以上であることが特に好ましい。
【0038】
樹脂Mおよび樹脂Nのガラス転移温度Tg
2M,Tg
2Nは共に40〜400℃の範囲内にあることが好ましく、80〜250℃の範囲内にあることがより好ましい。Tg
2M,Tg
2Nが前記下限値以上且つ前記上限値以下、すなわち、40〜400℃の範囲であれば、より容易に凹凸パターン10を形成できる。
樹脂Mおよび樹脂Nのヤング率は、加熱収縮工程の温度、すなわち、80〜180℃の温度範囲において0.01〜300GPaの範囲内にあることが好ましく、0.1〜10GPaの範囲内にあることがより好ましい。樹脂Mおよび樹脂Nのヤング率が0.01GPa以上であれば、凹凸パターン10の形状を維持するのに充分な硬さであり、ヤング率が前記上限値未満であれば、より容易に凹凸パターン10を形成できる。
本発明の1つの態様において、樹脂Mとしては、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体、又はスチレン-アクリル共重合体であることが好ましい。また、樹脂Nとしては、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体、又はスチレン−アクリル共重合体であることが好ましい。これら樹脂Mと樹脂Nの組み合わせとしては、アクリル樹脂とアクリル樹脂、アクリル樹脂とスチレン−アクリル共重合体、又はアクリル樹脂とスチレン−アクリロニトリル共重合体の組み合わせが好ましく、アクリル樹脂とアクリル樹脂との組み合わせであることがより好ましい。
【0039】
表面平滑硬質層の厚さは、0.05μmを超え5.0μm以下とすることが好ましく、0.5〜3.0μmとすることがより好ましい。表面平滑硬質層の厚さを前記範囲にすることにより、最頻ピッチP
1が適切な範囲となり、光拡散性をより高くすることができる。
表面平滑硬質層の厚さは連続的に変化していても構わない。表面平滑硬質層の厚さが連続的に変化している場合には、圧縮後、すなわち、加熱収縮工程後に形成される第1の凹凸パターン11の突条部11aのピッチおよび高さが連続的に変化するようになる。
【0040】
上述の樹脂M、及び樹脂Nで構成された表面平滑硬質層を、加熱収縮性樹脂フィルムの表面に積層させる方法としては、樹脂Mおよび樹脂Nを含む硬質層形成用塗料を加熱収縮性樹脂フィルムに連続的に塗工し、乾燥する方法が挙げられる。
前記硬質層形成用塗料の調製方法としては、トルエン溶媒により希釈する方法等が挙げられる。また、前記硬質層形成用塗料の固形分濃度(樹脂Mと樹脂Nの濃度)は、塗料の総質量に対して、1〜15質量%であることが好ましく、5〜10質量%であることがより好ましい。
塗料の塗工方法としては、例えば、エアナイフコーティング、ロールコーティング、ブレードコーティング、メイヤーバーコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティング、キャストコーティング、カーテンコーティング、ダイスロットコーティング、ゲートロールコーティング、サイズプレスコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング等が挙げられる。
乾燥方法としては、熱風、赤外線等を用いた加熱乾燥法が挙げられる。
加熱収縮性樹脂フィルムへの樹脂溶液の乾燥塗工量は、1〜10g/m
2にすることが好ましい。樹脂溶液の乾燥塗工量が1〜10g/m
2であれば、表面平滑硬質層の厚みを上述の好ましい範囲とすることができ、前記表面平滑硬質層に凹凸パターン10が形成されやすいため好ましい。
【0041】
[加熱収縮工程]
加熱収縮工程は、上記積層フィルムを加熱して加熱収縮性樹脂フィルムを収縮させることにより、前記表面平滑硬質層を折り畳むように変形させて、加熱収縮性樹脂フィルムの表面に凹凸パターン10を形成する工程である。
加熱収縮工程では、40%以上の収縮率で積層フィルムを収縮させることが好ましい。収縮率が40%以上であれば、収縮不足の部分、すなわち、凹凸パターン10が形成されない、または形成されたとしても突条のアスペクト比が十分に大きくない部分を小さくすることができる。一方、収縮率を大きくしすぎると、得られる光拡散性シート1の面積が小さくなり、歩留まりが低くなるため、収縮率の上限は80%が好ましい。
【0042】
積層フィルムを加熱する方法としては、熱風、蒸気または熱水中に通す方法等が挙げられ、中でも、均一に収縮させることができることから、熱風に通す方法が好ましい。
加熱収縮性樹脂フィルムを熱収縮させる際の加熱温度は、使用する加熱収縮性樹脂フィルムの種類、目的とする第1の凹凸パターン11の最頻ピッチP
1、アスペクト比A
1および配向度C
1、目的とする第2の凹凸パターン12の最頻ピッチP
2および配向度C
2に応じて適宜選択することが好ましい。
また、加熱収縮温度は、加熱収縮性樹脂フィルムを構成する樹脂Lのガラス転移温度Tg
1以上の温度にすることが好ましい。Tg
1以上の温度で熱収縮させると、第1の凹凸パターン11を容易に形成できる。
また、樹脂Mのガラス転移温度Tg
2Mが樹脂Nのガラス転移温度Tg
2Nよりも高い場合には、加熱収縮温度は、(樹脂Mのガラス転移温度Tg
2M+15℃)未満であることが好ましい。
すなわち、本発明の1つの態様において、加熱収縮工程は、前記工程で得られた積層フィルムを、80〜180℃、より好ましくは120〜170℃の熱風の中を通過させることにより、加熱樹脂収縮性フィルムと表面平滑硬質層を変形させて、凹凸パターン10が表面平滑硬質層の表面に形成されたシートを得る工程であることが好ましい。積層フィルムを熱風で加熱する時間は、1〜3分間であることが好ましく、1〜2分間であることがより好ましい。また、熱風の風速としては、1〜10m/sであること好ましく、2〜5m/sであることがより好ましい。
【0043】
[凹凸パターン特性の調整]
上記製造方法の条件を調整することによって、第1の凹凸パターン11の最頻ピッチP
1、突条部11aのアスペクト比A
1、および配向度C
1、第2の凹凸パターン12の最頻ピッチP
2、突条部12aのアスペクト比A
2、および配向度C
2、第1の凹凸パターン11の配向方向と第2の凹凸パターン12の配向方向の差を調整することができる。
最頻ピッチP
1を調整するためには、ガラス転移温度が高い樹脂Mと低い樹脂Nの配合比率を変更すればよい。樹脂Mの配合比率が高い程、最頻ピッチP
1は、大きくなる傾向がある。すなわち、樹脂Mと樹脂Nの配合比率が、1:1〜1:3であれば、第1の凹凸パターン11の最頻ピッチP
1を、3〜20μmの範囲に調整することができる。
突条部11aのアスペクト比A
1を上記所定、すなわち、0.2〜1.0の範囲にするためには、ガラス転移温度が高い樹脂Mと低い樹脂Nの配合比率を変更すればよい。樹脂Mの配合比率が高い程、アスペクト比A
1は、小さくなる傾向がある。すなわち、樹脂Mと樹脂Nの配合比率が、1:1〜1:3であれば、突条部11aのアスペクト比A
1を、0.2〜1.0の範囲に調整することができる。
配向度C
1を上記所定、すなわち、0.20〜0.50の範囲にするためには、加熱収縮工程の収縮率を調整すればよい。収縮率が大きい程、配向度C
1は、大きくなる傾向がある。すなわち、加熱収縮工程において、積層フィルムの収縮率が40〜60%であれば、配向度C
1を0.20〜0.50の範囲に調整することができる。
最頻ピッチP
2を調整するためには、ガラス転移温度が高い樹脂Mと低い樹脂Nの配合比率を変更すればよい。樹脂Mの配合比率が高い程、最頻ピッチP
2は、大きくなる傾向がある。すなわち、樹脂Mと樹脂Nの配合比率が、1:1〜1:3であれば、第2の凹凸パターン12の最頻ピッチP
2を、0.3〜2.0μmの範囲に調整することができる。
突条部12aのアスペクト比A
2を上記所定、すなわち、0.25〜0.35の範囲にするためには、加熱収縮工程の収縮率を調整すればよい。また、樹脂Mの配合比率が高い程、アスペクト比A
2は、大きくなる傾向がある。すなわち、樹脂Mと樹脂Nの配合比率が、1:1〜1:3であれば、突条部12aのアスペクト比A
2を、0.25〜0.35の範囲に調整することができる。また、加熱収縮工程において、積層フィルムの収縮率が40〜60%であれば、突条部12aのアスペクト比A
2を、0.25〜0.35の範囲に調整することができる。
配向度C
2を上記所定の範囲、すなわち、0.20〜0.50にするためには、加熱収縮工程の収縮率を一定の範囲に調整すればよい。収縮率が大きい程、配向度C
2は、大きくなる傾向がある。すなわち、加熱収縮工程において、積層フィルムの収縮率が40〜60%であれば、配向度C
2を0.20〜0.50の範囲に調整することができる。
第1の凹凸パターン11の配向方向と第2の凹凸パターン12の配向方向の差を調整するためには、樹脂Mと樹脂Nの配合比率を調整した上で、加熱収縮工程の収縮率を調整すればよい。樹脂Mの配合比率が高い程、収縮率が大きい程、配向方向の差は、大きくなる傾向がある。すなわち、樹脂Mと樹脂Nの配合比率が、1:1〜1:3であり、加熱収縮工程における積層フィルムの収縮率が、40〜60%であれば、第1の凹凸パターン11の配向方向と第2の凹凸パターン12の配向方向の差を5°以内とすることができる。
【0044】
[他の製造方法]
また、光拡散性シートの製造方法としては、下記(1)〜(4)の方法を適用することもできる。
(1)基材用樹脂層の片面の全部に、2種の樹脂からなる表面平滑硬質層を設けて積層シートを形成し、積層シート全体を表面に沿った一方向に圧縮する方法。
基材用樹脂層のガラス転移温度が室温未満の場合、積層シートの圧縮は室温で行い、基材用樹脂層のガラス転移温度が室温以上の場合、積層シートの圧縮は、基材用樹脂層のガラス転移温度以上、表面平滑硬質層のガラス転移温度未満で行う。
(2)基材用樹脂層の片面の全部に、2種の樹脂からなる表面平滑硬質層を設けて積層シートを形成し、積層シートを一方向に延伸し、延伸方向に対する直交方向を収縮させて、表面平滑硬質層を表面に沿った一方向に圧縮する方法。
基材用樹脂層のガラス転移温度が室温未満の場合、積層シートの延伸は室温で行い、基材用樹脂層のガラス転移温度が室温以上の場合、積層シートの延伸は、基材用樹脂層のガラス転移温度以上、表面平滑硬質層のガラス転移温度未満で行う。
(3)未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂により形成された樹脂層に、2種の樹脂からなる表面平滑硬質層を積層して積層シートを形成し、活性エネルギー線を照射して基材用樹脂層を硬化させることにより収縮させて、基材に積層された表面平滑硬質層を表面に沿った少なくとも一方向に圧縮する方法。
(4)溶媒を膨潤させて膨張させた基材用樹脂層に、2種の樹脂からなる表面平滑硬質層を積層して積層シートを形成し、基材用樹脂層中の溶媒を乾燥し、除去することにより収縮させて、基材用樹脂層に積層された表面平滑硬質層を表面に沿った少なくとも一方向に圧縮する方法。
【0045】
(1)の方法において、積層シートを形成する方法としては、例えば、基材用樹脂層の片面に、樹脂の溶液または分散液をスピンコーターやバーコーター等により塗工し、溶媒を乾燥させる方法、基材用樹脂層の片面に、あらかじめ作製した表面平滑硬質層を積層する方法などが挙げられる。
【0046】
積層シート全体を表面に沿った一方向に圧縮する方法としては、例えば、積層シートの一端部とその反対側の端部とを、万力等により挟んで圧縮する方法などが挙げられる。また、基材用樹脂層を構成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂又はポリ塩化ビニル系樹脂を用いることが好ましい。また、上述の加熱収縮性樹脂フィルムを構成する樹脂Lであってもよい。また、表面平滑硬質層としては、上述の樹脂M及び樹脂Nを用いることが好ましい。また、表面平滑硬質層の厚みとしては、0.5〜3.0μmが好ましく、1.0〜2.0μmがより好ましい。
【0047】
(2)の方法において、積層シート基材用樹脂層を一方向に延伸する方法としては、例えば、積層シートの一端部とその反対側の端部とを、引っ張って延伸する方法などが挙げられる。
(3)の方法において、活性エネルギー線硬化性樹脂としては紫外線硬化型樹脂や電子線硬化型樹脂などが挙げられる。
(4)の方法において、溶媒は基材用樹脂層を構成する樹脂の種類に応じて適宜選択される。溶媒の乾燥温度は溶媒の種類に応じて適宜選択される。
(2)〜(4)の方法における表面平滑硬質層においても、(1)の方法で用いるものと同様の樹脂成分を用いることができ、同様の厚さとすることができる。また、積層シートの形成方法は、(1)の方法と同様に、基材用樹脂層の片面に樹脂の溶液または分散液を塗工し、溶媒を乾燥させる方法、基材用樹脂層の片面に、あらかじめ作製した表面平滑硬質層を積層する方法を適用できる。
【0048】
上記の製造方法は、表面平滑硬質層が2種の樹脂から構成されたが、これに限定されるものではない。
また、光拡散性シートは、上記製造方法により得たものを原版シートとして用い、以下に示すような方法で他の素材に転写させることにより、製造することもできる。
原版シートには、光拡散性シート1を支持するための樹脂製または金属製の支持体が取り付けられてもよい。
【0049】
原版シートを用いて、新たな光拡散性シートを製造する具体的な方法としては、例えば、下記(a)〜(c)の方法が挙げられる。
(a)原版シートの凹凸パターンが形成された面に、未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂を塗工する工程と、活性エネルギー線を照射して前記硬化性樹脂を硬化させた後、硬化した塗膜を原版シートから剥離する工程とを有する方法。ここで、活性エネルギー線とは、通常、紫外線または電子線のことであるが、本発明では、可視光線、X線、イオン線等も含む。
(b)原版シートの凹凸パターンが形成された面に、未硬化の液状熱硬化性樹脂を塗工する工程と、前記液状熱硬化性樹脂を加熱して硬化させた後、硬化した塗膜を原版シートから剥離する工程とを有する方法。
(c)原版シートの凹凸パターンが形成された面に、シート状の熱可塑性樹脂を接触させる工程と、前記シート状の熱可塑性樹脂を原版シートに押圧しながら加熱して軟化させた後、冷却する工程と、その冷却したシート状の熱可塑性樹脂を原版シートから剥離する工程とを有する方法。
【0050】
また、原版シートを用いて2次工程用成形物を作製し、その2次工程用成形物を用いて、新たな光拡散性シートを製造することもできる。2次工程用成形物としては、例えば、2次工程シートが挙げられる。また、2次工程用成形物としては、原版シートを丸めて円筒の内側に貼り付け、その円筒の内側にロールを挿入した状態でめっきし、円筒からロールを取り出して得ためっきロールが挙げられる。
2次工程用成形物を用いる具体的な方法としては、下記(d)〜(f)の方法が挙げられる。
【0051】
(d)原版シートの凹凸パターンが形成された面に、ニッケル等の金属めっきを行って、めっき層(凹凸パターン転写用材料)を積層する工程と、そのめっき層を原版シートから剥離して、金属製の2次工程用成形物を作製する工程と、次いで、2次工程用成形物の凹凸パターンと接していた側の面に、未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂を塗工する工程と、活性エネルギー線を照射して前記硬化性樹脂を硬化させた後、硬化した塗膜を2次工程用成形物から剥離する工程とを有する方法。
(e)原版シートの凹凸パターンが形成された面に、めっき層(凹凸パターン転写用材料)を積層する工程と、そのめっき層を原版シートから剥離して、金属製の2次工程用成形物を作製する工程と、前記2次工程用成形物の凹凸パターンと接していた側の面に、未硬化の液状熱硬化性樹脂を塗工する工程と、加熱により該樹脂を硬化させた後、硬化した塗膜を2次工程用成形物から剥離する工程とを有する方法。
(f)原版シートの凹凸パターンが形成された面に、めっき層(凹凸パターン転写用材料)を積層する工程と、そのめっき層を原版シートから剥離して、金属製の2次工程用成形物を作製する工程と、前記2次工程用成形物の凹凸パターンと接していた側の面に、シート状の熱可塑性樹脂を接触させる工程と、前記シート状の熱可塑性樹脂を2次工程用成形物に押圧しながら加熱して軟化させた後、冷却する工程と、その冷却したシート状の熱可塑性樹脂を2次工程用成形物から剥離する工程とを有する方法。
【0052】
(a)の方法の具体例について説明する。まず、ウェブ状の原版シートの凹凸パターンが形成された面に、コーターにより未硬化の液状活性エネルギー線硬化性樹脂を塗工する。次いで、前記硬化性樹脂を塗工した原版シートを、ロールを通すことにより押圧して、前記硬化性樹脂を原版シートの凹凸パターン内部に充填する。その後、活性エネルギー線照射装置により活性エネルギー線を照射して、硬化性樹脂を架橋・硬化させる。そして、硬化後の活性エネルギー線硬化性樹脂を原版シートから剥離させることにより、ウェブ状の光拡散性シートを製造することができる。
【0053】
(a)の方法において、原版シートの凹凸パターンが形成された面には、離型性を付与する目的で、未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂塗工前に、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等からなる層を1〜10nm程度の厚さで設けてもよい。
原版シートの凹凸パターンが形成された面に、未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂を塗工するコーターとしては、Tダイコーター、ロールコーター、バーコーター等が挙げられる。
未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂としては、エポキシアクリレート、エポキシ化油アクリレート、ウレタンアクリレート、不飽和ポリエステル、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ビニル/アクリレート、ポリエン/アクリレート、シリコンアクリレート、ポリブタジエン、ポリスチリルメチルメタクリレート等のプレポリマー、脂肪族アクリレート、脂環式アクリレート、芳香族アクリレート、水酸基含有アクリレート、アリル基含有アクリレート、グリシジル基含有アクリレート、カルボキシ基含有アクリレート、ハロゲン含有アクリレート等のモノマーの中から選ばれる1種類以上の成分を含有するものが挙げられる。未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂は溶媒等で希釈することが好ましい。
また、未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂には、フッ素樹脂、シリコーン樹脂等を添加してもよい。
未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂を紫外線により硬化する場合には、未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂にアセトフェノン類、ベンゾフェノン類等の光重合開始剤を添加することが好ましい。
【0054】
未硬化の液状活性エネルギー線硬化性樹脂を塗工した後には、樹脂、ガラス等からなる基材を貼り合わせてから活性エネルギー線を照射してもよい。活性エネルギー線の照射は、基材、原版シートの活性エネルギー線透過性を有するいずれか一方から行えばよい。
【0055】
硬化後の活性エネルギー線硬化性樹脂のシートの厚みは0.1〜100μm程度とすることが好ましい。硬化後の活性エネルギー線硬化性樹脂のシートの厚みが0.1μm以上であれば、充分な強度を確保でき、100μm以上であれば、充分な可撓性を確保できる。
【0056】
上記に示す方法では、原版シートがウェブ状であったが、枚葉のシートであってもよい。ここで「枚葉」とは、印刷用紙の枚葉紙に準じ、一定寸法に裁断されたシートのことを意味する。
枚葉のシートを用いる場合、枚葉のシートを平板状の型として使用するスタンプ法、枚葉のシートをロールに巻きつけて円筒状の型として使用するロールインプリント法等を適用できる。また、射出成形機の型の内側に枚葉の原版シートを配置させてもよい。
しかし、これら枚葉のシートを用いる方法において、光拡散性シートを大量生産するためには、凹凸パターンを形成する工程を多数回繰り返す必要がある。活性エネルギー線硬化性樹脂と原版シートとの離型性が低い場合には、多数回繰り返した際に凹凸パターンに目詰まりが生じ、凹凸パターンの転写が不完全になる傾向にある。
これに対し、上記に示す方法(a)では、原版シートがウェブ状であるため、大面積で連続的に凹凸パターンを形成させることができる。そのため、光拡散性シートの繰り返し使用回数が少なくても、必要な量の光拡散性シートを短時間に製造できる。
【0057】
(b)、(e)の方法において、液状熱硬化性樹脂としては、例えば、未硬化の、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
また、(b)の方法における硬化温度は、原版シートのガラス転移温度より低いことが好ましい。硬化温度が原版シートのガラス転移温度以上であると、硬化時に原版シートの凹凸パターンが変形するおそれがあるからである。
【0058】
(c)、(f)の方法において、熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリエステル等が挙げられる。
シート状の熱可塑性樹脂を2次工程用成形物に押圧する際の圧力は1〜100MPaであることが好ましい。押圧時の圧力が1MPa以上であれば、凹凸パターン10を高い精度で転写させることができ、100MPa以下であれば、過剰な加圧を防ぐことができる。
また、(c)の方法における熱可塑性樹脂の加熱温度は、原版シートのガラス転移温度より低いことが好ましい。加熱温度が原版シートのガラス転移温度以上であると、加熱時に原版シートの凹凸パターン10が変形するおそれがあるからである。
加熱後の冷却温度としては、凹凸パターン10を高い精度で転写させることができることから、熱可塑性樹脂のガラス転移温度未満であることが好ましい。
【0059】
(a)〜(c)の方法の中でも、加熱を省略でき、原版シートの凹凸パターンの変形を防止できる点で、活性エネルギー線硬化性樹脂を使用する(a)の方法が好ましい。
【0060】
(d)〜(f)の方法においては、金属製の2次工程用成形物の厚さを50〜500μm程度とすることが好ましい。金属製の2次工程用成形物の厚さが50μm以上であれば、2次工程用成形物が充分な強度を有し、500μm以下であれば、充分な可撓性を確保できる。
(d)〜(f)の方法では、熱による変形が小さい金属製シートを原版シートとして用いるため、光拡散性シート用の材料として、活性エネルギー線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも使用できる。
【0061】
なお、(d)〜(f)では原版シートの凹凸パターンを金属に転写させて2次工程用成形物を得たが、樹脂に転写させて2次工程用成形物を得てもよい。その場合に使用できる樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスルホン、(a)の方法で使用する活性エネルギー線硬化性樹脂などが挙げられる。活性エネルギー線硬化性樹脂を用いる場合には、(a)の方法と同様に、活性エネルギー線硬化性樹脂の塗工、硬化、剥離を順次行って、2次工程用成形物を得る。
【実施例】
【0062】
次に、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0063】
(実施例1)
ガラス転移温度128℃のアクリル樹脂(樹脂N)とガラス転移温度139℃のアクリル樹脂(樹脂M)を質量比1:1で混合し、トルエンに希釈して、硬質層形成用塗料(固形分濃度8質量%)を得た。この塗料を、一軸方向に収縮する加熱収縮性樹脂フィルム(ポリエチレンテレフタレート系シュリンクフィルム、製品名SC807、東洋紡績社製、厚さ30μm)の片面に、バーコーターにより、乾燥後の厚さが2.0μmになるように塗工した。次いで、乾燥させることにより、表面平滑硬質層を形成して積層シートを得た。
次いで、前記積層シートの1軸収縮方向に張力が掛かるように前記積層シートの両端をクランプで固定した。前記積層シートを150℃で1分間加熱すると共に、加熱後の積層シートの1軸収縮方向の長さが、加熱前の積層シートの1軸収縮方向の長さの48%(すなわち、収縮率48%)となるように積層シートの1軸収縮方向に掛かる張力を調整した。
これにより、表面平滑硬質層の表面に、複数の突条が収縮方向(第1の方向)に沿って配列することにより形成された第1の凹凸パターンと、第1の凹凸パターンの表面に、複数の突条が前記第1の方向に沿って配列することによって形成された第2の凹凸パターンとを含む凹凸パターンを形成して、光拡散性シートを得た。
【0064】
(実施例2)
硬質層形成用塗料を、ガラス転移温度128℃のアクリル樹脂(樹脂N)とガラス転移温度139℃のアクリル樹脂(樹脂M)を質量比3:1で混合し、トルエンに希釈して得たものに変更した以外は実施例1と同様の操作にて、光拡散性シートを得た。
【0065】
(実施例3)
硬質層形成用塗料を、ガラス転移温度128℃のアクリル樹脂(樹脂N)とガラス転移温度139℃のアクリル樹脂(樹脂M)を質量比1:3で混合し、トルエンに希釈して得たものに変更した以外は実施例1と同様の操作にて、光拡散性シートを得た。
【0066】
(実施例4)
実施例1と同様の操作にて光拡散性シートを得た。ただし、本例では、加熱後の積層シートの1軸収縮方向の長さが、加熱前の積層シートの1軸収縮方向の長さの51%(収縮率51%)となるように積層シートの1軸収縮方向に掛かる張力を調整した。
【0067】
(実施例5)
実施例1と同様の操作にて光拡散性シートを得た。ただし、本例では、加熱後の積層シートの1軸収縮方向の長さが、加熱前の積層シートの1軸収縮方向の長さの43%(収縮率43%)となるように積層シートの1軸収縮方向に掛かる張力を調整した。
【0068】
(実施例6)
ガラス転移温度128℃のアクリル樹脂(樹脂N)を酢酸エチル、トルエンに溶解させた溶液と、ガラス転移温度139℃(樹脂M)のアクリル樹脂をメチルエチルケトンに溶解させた溶液を、質量比1:1で混合し、更にトルエンに希釈して、樹脂Mと樹脂Nのガラス転移温度差が11℃である硬質層形成用塗料(固形分濃度8質量%)を得た。この塗料を、一軸方向に収縮する加熱収縮性樹脂フィルム(ポリエチレンテレフタレート系シュリンクフィルム、製品名SC807、東洋紡績社製、厚さ30μm)の片面に、バーコーターにより、乾燥後の厚さが2μmになるように塗工した。次いで、乾燥させることにより、表面平滑硬質層を形成して積層シートを得た。
次いで、前記積層シートの1軸収縮方向に張力が掛かるように前記積層シートの両端をクランプで固定した。前記積層シートを170℃で2分間加熱すると共に、加熱後の積層シートの1軸収縮方向の長さが、加熱前の積層シートの1軸収縮方向の長さの57%(収縮率57%)となるように積層シートの1軸収縮方向に掛かる張力を調整した。
これにより、表面平滑硬質層の表面に、複数の突条が収縮方向(第1の方向)に沿って配列することにより形成された第1の凹凸パターンと、第1の凹凸パターンの表面に、複数の突条が前記第1の方向に沿って配列することによって形成された第2の凹凸パターンとを含む凹凸パターンを形成して、光拡散性シートを得た。
【0069】
(実施例7)
硬質層形成用塗料を、ガラス転移温度128℃のアクリル樹脂を酢酸エチル、トルエンに溶解させた溶液と、ガラス転移温度139℃のアクリル樹脂をメチルエチルケトンに溶解させた溶液を質量比3:1で混合し、更にトルエンで希釈して調製したものに変更した以外は、実施例6と同様の操作にて、光拡散性シートを得た。
【0070】
(実施例8)
硬質層形成用塗料を、ガラス転移温度128℃のアクリル樹脂を酢酸エチル、トルエンに溶解させた溶液と、ガラス転移温度139℃のアクリル樹脂をメチルエチルケトンに溶解させた溶液を質量比1:3で混合し、更にトルエンで希釈して調製したものに変更した以外は、実施例6と同様の操作にて、光拡散性シートを得た。
【0071】
(実施例9)
実施例6と同様の操作にて光拡散性シートを得た。ただし、本例では、加熱後の積層シートの1軸収縮方向の長さが、加熱前の積層シートの1軸収縮方向の長さの59%(収縮率59%)となるように積層シートの1軸収縮方向に掛かる張力を調整した。
【0072】
(実施例10)
実施例6と同様の操作にて光拡散性シートを得た。ただし、本例では、加熱後の積層シートの1軸収縮方向の長さが、加熱前の積層シートの1軸収縮方向の長さの50%(収縮率50%)となるように積層シートの1軸収縮方向に掛かる張力を調整した。
【0073】
(実施例11)
実施例1と同様の操作にて光拡散性シートを得た。その後、光拡散性シートの凹凸パターン形成面に、離型剤を含む未硬化の紫外線硬化性樹脂A(アクリレート系樹脂、総研化学社製)を厚さ20μmとなるように塗布し、紫外線を照射して硬化後、剥離して光拡散性シートの凹凸パターンが反転したパターンを有する1次転写品を得た。
次いで透明PET基材(東洋紡株式会社製A4300、厚さ188μm)の片面に未硬化の紫外線硬化性樹脂B(アクリレート系樹脂、ソニーケミカル社製)を厚さ20μmとなるように塗布し、塗布された紫外線硬化性樹脂Bに対して、1次転写品の反転パターンを有する面を押し当て、紫外線を照射して硬化させた。硬化後、1次転写品を剥離して、透明PET基材上に紫外線硬化性樹脂の硬化物からなる表面層が形成された、光拡散性シートと同じ凹凸パターンを有する2次転写品を得た。
【0074】
(比較例1)
硬質層形成用塗料を、ガラス転移温度128℃のアクリル樹脂をトルエンに希釈して得たものに変更した以外は実施例1と同様の操作にて、光拡散性シートを得た。
【0075】
(比較例2)
硬質層形成用塗料を、ガラス転移温度139℃のアクリル樹脂をトルエンに希釈して得たものに変更した以外は実施例1と同様の操作にて、光拡散性シートを得た。
【0076】
(比較例3)
ガラス転移温度128℃のアクリル樹脂を酢酸エチル、トルエンに溶解させた溶液と、ガラス転移温度175℃のアクリル樹脂をメチルエチルケトンに溶解させた溶液を質量比1:1で混合し、更にトルエンで希釈して調製した、ガラス転移温度差が47℃である硬質層形成用塗料に変更した以外は、実施例1と同様の操作にして、凹凸パターン形成シートを得た。
【0077】
<凹凸パターンの表面特性>
実施例1〜11の光拡散性シートを顕微鏡観察したところ、第1の凹凸パターンの表面に第2の凹凸パターンが形成されていることが確認された(
図12参照。なお、
図12は、実施例1の光拡散性シートの凹凸パターンを、走査型電子顕微鏡を用いて撮影したものである。)。
比較例1〜3の光拡散性シートを顕微鏡観察したところ、第1凹凸パターンの表面に第2凹凸パターンが形成されていないことが確認された(
図13参照。なお、
図13は、比較例1の光拡散性シートの凹凸パターンを、走査型電子顕微鏡を用いて撮影したものである。)。
また、各例における第1の凹凸パターンの最頻ピッチP
1、アスペクト比A
1および配向度C
1、第2の凹凸パターンの最頻ピッチP
2、アスペクト比A
2および配向度C
2、第1凹凸パターンの配向方向と第2凹凸パターンの配向方向との差(表中では「配向方向の差」と略す。)を、上述の方法により測定した。使用した電子顕微鏡の仕様、及び観察条件は以下の通りである。
電子顕微鏡:日立ハイテクノロジーズ社製S-3600N
分解能:3.0nm(2次電子像)、4.5nm(反射電子像)、
加速電圧:0.5〜30kV、倍率:12〜300,000
観察条件:加速電圧15kV、ワーキングディスタンス10mm
最頻ピッチ、アスペクト比および配向度、及び配向方向の差の測定結果を表1に示す。
【0078】
[最頻ピッチの測定]
上述した方法に沿って、最頻ピッチP
1及びP
2を算出した。
【0079】
[アスペクト比の測定]
上述した方法に沿って、アスペクト比A
1及びA
2を算出した。
【0080】
[配向度の測定]
上述した方法に沿って、配向度C
1及びC
2を算出した。
【0081】
[配向方向の差]
上述した方法に沿って、配向方向の差を算出した。
【0082】
<光拡散性の目視評価>
10個のLED光源(株式会社SYK製 SouLight照射角度: 約120°)を、17mm間隔で直線的に配列して直線状の光源ユニットを形成した。次いで、この光源ユニットを、各例の光拡散性シートで、LED光源の配列方向と第1の凹凸パターンの突条の配列方向とが一致するように且つLED光源からの光が光拡散性シートに垂直に入射するように覆った。その際、光拡散性シートの凹凸パターンを、光源ユニットの反対側に配置させたてから、5人の評価者が、上記照明装置における光拡散性を目視により評価した。その評価は1点〜5点の5段階とし、LED光源の不視認性が高く、光拡散性が高いほど、高い点数とした。5人の評価の平均値を表1に示す。
【0083】
<照度曲線における半値幅および1/10幅の測定>
ゴニオメーター(型式:GENESIA Gonio/FFP、ジェネシア社製)を用いて透過散乱光を測定することにより、照度曲線を得た。具体的には、光拡散性シートから垂直に出射する光(この光の出光角度を0°とする。)の照度を1とした際の相対照度を、第1の方向に沿って出光角度−90°から90°までの相対照度を1°間隔で測定して、照度曲線を得た。ここで、照度曲線とは、
図14に示すような、横軸を出光角度とし、縦軸を相対照度として、プロットとした曲線である。
そして、照度曲線における半値幅(1/2幅、
図14中のW
1)および1/10値幅(
図14中のW
2)を求めた。その際、相対照度が0.5以上の角度範囲のデータのみを利用した。
半値幅および1/10値幅の結果を表1に示す。なお、照度曲線の半値幅の角度および1/10値幅の角度が大きい程、拡散角度が大きくなる。
【0084】
【表1】
【0085】
実施例1〜11の光拡散性シートは、照度曲線の半値幅および1/10値幅の両方において高い数値を示し、特に1/10値幅が65°以上であり、拡散角度が大きくなっていた。また、実施例1では、
図15のように、LED光源を全く視認できず、実施例2では、
図16のように、実施例1よりはややLED光源を視認できるものの、充分な不視認性を有していた。実施例3〜5についても実施例2と同様であった。また、実施例6〜11は、照度曲線の半値幅および1/10値幅の両方において実施例1〜5より高い数値となり、更に優れた不視認性を有していた。したがって、実施例1〜11の光拡散性シートは、優れた光拡散性を有することが分かった。
これに対し、比較例1の光拡散性シートは、1/10値幅が狭く、拡散角度が充分に広くなっておらず、
図17のように、LED光源を視認可能になっていた。比較例2及び3についても比較例1と同様であった。したがって、比較例1〜3では、光拡散性が不充分であった。