(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6274172
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】免震テーブル装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/04 20060101AFI20180129BHJP
【FI】
F16F15/04 E
F16F15/04 D
F16F15/04 A
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-183440(P2015-183440)
(22)【出願日】2015年9月1日
(65)【公開番号】特開2017-48910(P2017-48910A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2015年10月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】595116902
【氏名又は名称】大亦 絢一郎
(73)【特許権者】
【識別番号】514263780
【氏名又は名称】大亦 進一郎
(72)【発明者】
【氏名】大亦 絢一郎
【審査官】
鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−297841(JP,A)
【文献】
特開2000−240719(JP,A)
【文献】
特開2011−043227(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/122516(WO,A1)
【文献】
特開平10−280730(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0000159(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/04
F16F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦な基礎板上に、保持部材によって両端を水平に保持された1本のX方向ガイド軸と、前記X方向ガイド軸上を走行するX方向可動部と、このX方向可動部に固着されて可動部と一体となって基礎板上をX方向に走行する幅広いX方向移動テーブル板と、前記X方向移動テーブル板の下面でX方向ガイド軸を挟んだ左右端部に取り付けられて基礎板に接する複数個のフリーベア、とによって構成されるX方向移動機構と、
X方向移動テーブル板上のY方向に、保持部材によって両端を水平に保持された1本のY方向ガイド軸と、前記Y方向ガイド軸上を走行するY方向可動部と、このY方向可動部に固着されて可動部と一体となってX方向移動テーブル板上をY方向に走行する、幅のあるY方向移動テーブル板と、前記Y方向移動テーブル板の下面でY方向ガイド軸を挟んだ左右端部に取り付けられてX方向移動テーブル板に接する複数個のフリーベア、とによって構成されるY方向移動機構とを備え、
前記Y方向移動テーブル板上に機器を搭載するための搭載テーブル板を固着装備したことを特徴とする免震テーブル装置。
【請求項2】
請求項1に記載の免震テーブル装置において、
前記X方向移動テーブル板の下面に、複数個の摩擦ダンパーを、前記基礎板に接触するように固着装備し、更に、前記Y方向移動テーブル板の下面に、複数個の摩擦ダンパーを、前記X方向移動テーブル板に接触するように固着装備したことを特徴とする免震テーブル装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の免震テーブル装置において、
前記X方向ガイド軸保持部材と前記X方向可動部の間、及び前記Y方向ガイド軸保持部材と前記Y方向可動部の間に、圧縮変位が大きくなるに従ってばね定数が増大するような、漸硬型非線形復元力特性を有する、元位置復帰用のコイルばねを配設したことを特徴とする免震テーブル装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の免震テーブル装置において、
前記X方向ガイド軸保持部材と前記X方向可動部の間、及び前記Y方向ガイド軸保持部材と前記Y方向可動部の間に、元位置復帰用のU字形ばねを取り付け、加えて、各ガイド軸に沿ってU字形ばねの圧縮ストロークよりも短い短コイルばねを装備することにより、X方向又はY方向可動部の相対変位が一定値を超えて短コイルばねに接触すると、短コイルばねの分だけばね定数が増大するような、折れ線状復元力特性を持たせたこと、を特徴とする免震テーブル装置。
【請求項5】
請求項4に記載の免震テーブル装置において、
前記X方向短コイルばねの自由端に、1個又は2個の摩擦ダンパーを、前記基礎板に接触するように固着装備し、更に、前記Y方向短コイルばねの自由端に、1個又は2個の摩擦ダンパーを、前記X方向移動テーブル板に接触するように固着装備することにより、X方向又はY方向可動部の相対変位が一定値を超えて短コイルばねに接触た後は、摩擦力が階段状に増大するような、二段硬化型摩擦力特性を持たせたこと、を特徴とする免震テーブル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震テーブル装置に係わり、あらゆる水平方向から到来する地震動によって、搭載機器が転倒・破損するのを回避するための免震テーブル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
あらゆる水平方向から到来する地震動を受けて、精密機器、コンピューター、仏具、美術工芸品などが転倒あるいは破損することを防ぐために、いろいろなタイプの免震テーブル装置が提案され、そして実用化されている。
【0003】
水平方向からの地震波に対応する水平免震テーブル装置(以下では、単に免震テーブル装置と呼ぶ)は、一般的には、床面上に水平に配置された基礎板と、機器を搭載するための水平なテーブル板(搭載テーブル板)と、搭載テーブル板及び搭載物を支持し、基礎板上を水平面内の何れの方向にも自在に移動可能なテーブル板支持機構と、基礎板とテーブル板支持機構の間に配置された複数個の元位置復帰用ばね機構及び振動抑制用減衰機構(ダンパー)、とを備えている。
【0004】
(免震テーブル装置の原理図)
一般的な免震テーブル装置の原理図を
図1に示す。
図1では、テーブル板支持機構にころがり支承が用いられている。
図1の免震テーブル装置の固有周期Tnは、減衰力の影響を無視すると
Tn=2π(m/k)
1/2 (秒)
で与えられる。ここで、mは免震テーブル装置可動部と搭載機器の合計質量を表し、kは元位置復帰用ばねの合計ばね定数を表す。
【0005】
(免震テーブル装置の免震効果)
1995年1月に発生した阪神大震災、2004年10月に発生した新潟県中越地震、あるいは2011年3月に発生した東日本大震災における地震波は、周期が0.2〜1秒程度の短周期成分が卓越した地震波であった。このような短周期卓越成分を持つ通常の地震波に対しては、搭載機器を含む免震テーブル装置の固有周期を2〜4秒程度に設計することで、搭載テーブル板及び搭載物の加速度を1/5〜1/10程度に低減できる(後掲の特許文献2を参照)。一般の免震テーブル装置では、短周期成分が卓越した通常の地震波を対象としたものが多い。
「卓越成分」とは:地震波は種々の周期を持つ波が合成された不規則波であるが、その内の特に強い周期成分のことを「卓越成分」と言う。又、卓越成分の周期が2秒以上の地震波を長周期地震波と呼んでいる。
【0006】
ところが、固有周期が2〜4秒となるように設計された免震テーブル装置に、通常の地震波とは異なり、周期が2〜4秒程度の長周期卓越成分を含む地震波(例えば、1964年6月に発生した新潟地震波)が到来すると、この卓越した地震波の周期と免震テーブル装置の固有周期がほぼ一致して、免震テーブル装置が共振を起こし、搭載テーブル板が許容変位範囲を超えて大きく振動してしまう恐れがある。
【0007】
(抵抗力を変化させて共振を抑制する方法)
この共振を抑制する対策としては、摩擦ダンパー等のダンパーの抵抗力を、通常の地震波に対する抵抗力の何倍かに大きくすることが考えられる。しかしながら、ダンパーの抵抗力をこのように大きくすると、通常の地震波に対する免震効果(加速度低減効果)は低下してしまう。
従って、通常の地震波に対する免震効果を低下させることなく、長周期地震波による免震テーブル装置の共振を抑制することが必要となる。
【0008】
通常の地震波に対しては高い免震効果を持ち、且つ長周期地震波による免震テーブル装置の共振を抑制するためには、一定相対変位までは抵抗力(減衰力)が小さく、一定相対変位を超えると抵抗力が増大するような、非線形減衰力特性を持つダンパーが有効である。長周期地震波は非常にゆっくりとした振動であるので、特に摩擦ダンパーが適している。
【0009】
(振動系の固有周期を変化させて共振を回避する方法)
通常の地震波に対する免震効果を低下させることなく、長周期地震波による免震テーブル装置の共振を回避するための他の方法は、一定相対変位まではばねの強さ(ばね定数)が小さく、一定相対変位を超えるとばねの強さが増して、固有周期が変化するような、非線形復元力特性を持つばね機構を用いることである。
【0010】
通常の地震波に対する免震効果と、長周期地震波による共振の抑制の両方を考慮した免震テーブル装置としては、下記特許文献1、2のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2011−47514号公報
【特許文献2】特開2012−67840号公報
【0012】
上記文献1に記載の免震テーブル装置では、テーブル板支持機構として、2組のリニアガイドを上下に重ね、且つ直交するように配置した、X−Yレール機構が用いられている。また、長周期地震波による免震テーブル装置の共振抑制対策として、一定相対変位までは摩擦力が一定で、一定相対変位を超えると摩擦力が直線的に増大する、非線形摩擦ダンパーが用いられている(
図2(A)参照)。
摩擦ダンパーは、例え摩擦力が一定のものであっても非線形ダンパーの部類に属するが、ここでは、相対変位に応じて摩擦力が変化する摩擦ダンパーを非線形摩擦ダンパーと呼び、このような特性を非線形摩擦力特性と呼ぶことにする。
【0013】
一方、上記文献2に記載の免震テーブル装置では、テーブル板支持機構として、あらゆる水平方向に移動可能な複数個のフリーベア(脱落不能に嵌合された自由回転球体)が用いられており、搭載テーブル板と基礎板の間に張られた複数のコイルばねによって、非線形摩擦力特性と、非線形復元力特性とを与えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記文献1に記載の免震テーブル装置では、搭載テーブル板と搭載物は、任意方向から到来する地震波のX方向成分とY方向成分の大きさに応じて、上下のリニアガイド上を±X方向及び±Y方向に独立して運動し、搭載物に偏心があっても回転運動は発生しないという長所を持っている。
しかしながら、X方向及びY方向に用いられるリニアガイドは、精密に加工された2本のガイド軸を厳密に平行に配置して、その上を可動部(リニアベアリング)が滑らかに移動するように製作しなければならないので、製作が難しく、製作費が高価になるという短所を持っている。
又、上記文献1のX方向及びY方向用非線形摩擦ダンパーは、中央の水平部と両側のテーパー部を有する精密加工されたシャフトを用いるので、製作が容易でないという短所を持っている。
【0015】
一方、上記文献2に記載の免震テーブル装置は、構造が簡単で、安価に製作できるという長所を持っている反面、テーブル板支持機構に複数個のフリーベアを用いているので、搭載テーブル板に偏心がある機器を搭載すると水平面内の回転運動が発生し、運動安定性及び免震効果が低下するという短所を持っている。更に、上下方向に傾けて張られたコイルばねによって発生する非線形復元力特性、及び非線形摩擦力特性は、共に非線形性が小さいので、長周期地震波による免震テーブル装置の共振を抑制する効果は小さいと考えられる。
【0016】
[発明の目的]
本発明は、耐荷重性能に優れた製作容易なX−Yレール機構を提供し、且つ通常の地震波に対しては高い免震効果与えると共に、簡単な構造で、長周期地震波による免震テーブル装置の共振を抑制できるような、非線形摩擦力機構及び非線形復元力機構を持つ水平免震テーブル装置を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
製作容易なX−Yレール機構を実現するために、本免震テーブル装置のX方向及びY方向レール機構では、それぞれ1本の
丸棒製ガイド軸を用いている。そして、耐荷重性を高め、ガイド軸長手方向回りの回転安定性
(搭載物の偏心による、テーブル板のX・Y軸回りの回転を抑える効果)を高めるために、子供用自転車の補助輪に相当する、複数個のフリーベアを用いている。
【0018】
即ち、X方向レール機構においては、1本のX方向ガイド軸上を走行するX方向移動テーブル板下面の左右両側に複数個のフリーベアを取り付けて、このテーブル板が基礎板上を±X方向に移動する際の補助輪の働きをさせている。又、X方向移動テーブル板上に設置された1本のY方向ガイド軸上を走行する、Y方向移動テーブル板下面の左右両側に複数個のフリーベアを取り付けて、Y方向移動テーブル板がX方向移動テーブル板上を±Y方向に移動する際の補助輪の働きをさせている。
【0019】
上記のように構成されたX方向レール機構及びY方向レール機構を用いると、搭載テーブル板並びに搭載物の±X方向及び±Y方向への移動は、それぞれ1本のガイド軸によってガイドされ、搭載テーブル板と搭載物の重量は、X、Y方向とも、1本のガイド軸と移動テーブル板の左右両側に取り付けられたフリーベアによって支持されるので、従来の2本のガイド軸を用いたリニアガイド装置と殆ど変わらない走行性能、及びガイド軸回りの回転安定性が得られる。
【0020】
通常の地震波に対しては高い免震効果を持ち、且つ長周期地震波による免震テーブル装置の共振を回避するために、本発明では、変位が大きくなるに従ってばね定数が増大してゆく漸硬型非線形復元力特性、及び一定相対変位λまではばね定数が小さく、λを超えると急激にばね定数が増大する、折れ線型非線形復元力特性を用いている。漸硬型非線形復元力特性は、不等ピッチコイルばね又は円錐コイルばねを用いることによって実現でき、折れ線型非線形復元力特性は、常に作用するU字形ばねと、λを超えると作用するコイルばねを併用することによって実現できる。
【0021】
通常の地震波に対しては高い免震効果を持ち、且つ長周期地震波による免震テーブル装置の共振を抑制するために、本発明では、一定相対変位λまでは摩擦力が小さく、λを超えると摩擦力が階段状に増大する非線形摩擦力特性を用いている。この二段硬化型摩擦力特性は、常に作用する摩擦ダンパーと、λを超えると作用する摩擦ダンパーを併用することによって実現できる。
本発明で用いる摩擦ダンパーは、構造が簡単で、製作が容易である。
【発明の効果】
【0022】
製作の容易さを考えると、2本のガイド軸を厳密に平行に設置することは高度な技術を必要とするので、従来のX−Yレール機構は製作が容易ではない。これに対して、本発明の、1本のガイド軸と複数個のフリーベアから成るX−Yレール機構は、製作が容易である。従って、本発明のX−Yレール機構を用いた免震テーブル装置は、従来のX−Yレール機構を用いた免震テーブル装置に比べて、容易に製作できる(その結果、安価に製作できる)。更に、本発明のX−Yレール機構を用いると、折れ線型復元力特性及び二段硬化型摩擦力特性を実現し易いので、通常の地震波に対する高い免震効果のみならず、長周期地震波による免震テーブル装置の共振を十分に抑制する効果も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】免震テーブル装置の非線形復元力特性及び非線形摩擦力特性を表す。
【
図3】本発明の第1実施形態を示す組立斜視図である(ただし、搭載テーブル板は切り離して上に示してある)。
【
図4】
図3に示す組立斜視図を、基礎部、X方向移動ステージ、Y方向移動ステージ及び搭載テーブル板に分けて示した斜視図である。
【
図5】
図3に示す第1実施形態の正面図と側面図であり、
図5(A)はA−A線に沿った正面図、
図5(B)はB−B線に沿った側面図である(搭載テーブル板が取り付けられた状態の図である)。
【
図6】
図3に示す第1実施形態のC−C線に沿った平面断面図である。
【
図7】
図7(A)は第1及び第2実施形態で用いられるフリーベアの概略断面図であり、
図7(B)は第1及び第2実施形態で用いられる摩擦ダンパーの概略断面図である。
【
図8】本発明の第2実施形態を示す斜視図である(基礎部、X−Y方向移動ステージ及び搭載テーブル板に分けて示してある)。
【
図9】本発明の第2実施形態を示し、
図9(A)は正面図であり、
図9(B)は側面図である(U字形ばねを省略し、搭載テーブル板を取り付けた状態の図である)。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係わる免震テーブル装置100を、
図3乃至
図7を参照して説明する。
【0025】
図3及び
図4は、本第1実施形態における免震テーブル装置の斜視図を示したものである。
図3は搭載テーブル板のみを切り離して示した組立図であり、
図4は基礎部と、X方向移動ステージと、Y方向移動ステージと、搭載テーブル板、とに分けて示した図である。又、
図5(A)、(B)は、それぞれ
図3のA−A線に沿って示した正面図及びB−B線に沿って示した側面図であり、
図6は
図3のC−C線に沿って示した平面断面図である。
【0026】
(基礎部)
図4に示すように、基礎部は、基礎板1と、X方向ガイド軸保持部材1a、1bと、1本のX方向ガイド軸5と、複数個のX方向リニアベアリングケース7(7a、7b、7c)と、X方向コイルばね6a、6b、とによって構成されている。
【0027】
ここで、基礎板1には、ステンレス鋼板のような硬い金属板を用いてもよいし、アルミニウム等の軽量金属板の上に薄いステンレス鋼板を貼り付けた積層板(図示せず)を用いてもよい。上面にステンレス鋼板を用いる理由は、基礎板上を後述のX方向移動ステージが移動するとき、基礎板1に傷が付くのを防ぐためである。
【0028】
X方向ガイド軸保持部材1a、1bは、基礎板1の向かい合う二辺(X方向と直交する二辺)の中央部付近に立設されている。
【0029】
X方向ガイド軸5は、その両端がX方向ガイド軸保持部材1a、1bに固着装備されており、X方向ガイド軸5には、リニアベアリングを組み込んだX方向リニアベアリングケース(可動部)7a等が複数個装備されている。X方向リニアベアリングケース7がX方向ガイド軸5に沿って滑らかに移動できるように、X方向リニアベアリングケース7とX方向ガイド軸5の間の摩擦力は小さいことが望ましい。
【0030】
X方向コイルばね6aは、X方向ガイド軸保持部材1aとX方向リニアベアリングケース7aとの間で、X方向ガイド軸5がX方向コイルばね6aを挿通するような状態で取り付けられている。又、X方向コイルばね6bは、X方向ガイド軸保持部材1bとX方向リニアベアリングケース7cとの間で、X方向ガイド軸5がX方向コイルばね6bを挿通するような状態で取り付けられている。
【0031】
X方向コイルばね6a、6bに不等ピッチコイルばね又は円錐コイルばねを用い、圧縮状態でのみ使用する(X方向リニアベアリングケース7との接続を自由にする)ことにより、
図2(B)に示すような漸硬型非線形復元力特性が得られる。
図3乃至
図6は、X方向コイルばねに不等ピッチコイルばねを用いた場合、を示している。
【0032】
(X方向移動ステージ)
X方向移動ステージの本体は、X方向移動テーブル板2である。このX方向移動テーブル板2の上面には、Y方向移動ステージのための1本のY方向ガイド軸8と、このY方向ガイド軸8の両端を支持するY方向ガイド軸保持部材2a、2bと、複数個のY方向リニアベアリングケース10(10a、10b、10c)と、Y方向コイルばね9a、9b、とが装備されている。
【0033】
又、X方向移動テーブル板2の下面の左右端部には、
図3乃至
図6に示す如く、スペーサー11a、11b及び粘弾性板12a、12bを介して複数個のフリーベア13乃至16が取り付けられている。スペーサー11a、11bは、フリーベア13乃至16が基礎板1に接するように、その高さが調整されている。
又、粘弾性板12a、12bは、搭載物(図示せず)の重量をX方向ガイド軸5とフリーベア13乃至16とで分担して支えるために必要である。
【0034】
更に、X方向移動テーブル板2の下面の左右端部には、
図3乃至6に示す如く、X方向移動テーブル板2のX方向の振動を抑制するために、スペーサー11a、11bと粘弾性板12a、12bとを介して複数個の摩擦ダンパー17、18が取り付けられている。
【0035】
ここで、X方向移動テーブル板2には、ステンレス鋼板のような硬い金属板を用いてもよいし、アルミニウム等の軽量金属板の上に薄いステンレス鋼板を貼り付けた積層板(図示せず)を用いてもよい。上面にステンレス鋼板を用いる理由は、Y方向移動ステージがX方向移動テーブル板2の上を±Y方向に移動するとき、X方向移動テーブル板2に傷が付くのを防ぐためである。
【0036】
Y方向ガイド軸保持部材2a、2bは、X方向移動テーブル板2の向かい合う二辺(Y方向と直交する二辺)の中央部付近に立設されている。このY方向ガイド軸保持部材間に取り付けられたY方向ガイド軸8の上を、Y方向リニアベアリングケース10(可動部)が滑らかに移動できるように、Y方向リニアベアリングケース10とY方向ガイド軸8の間の摩擦力は小さいことが望ましい。
【0037】
Y方向コイルばね9aは、Y方向ガイド軸保持部材2aとY方向リニアベアリングケース10aとの間に、又、Y方向コイルばね9bは、Y方向ガイド軸保持部材2bとY方向リニアベアリングケース10cとの間に、Y方向ガイド軸8がY方向コイルばね9a、9bを挿通するような状態で取り付けられている。
【0038】
Y方向コイルばね9a、9bに不等ピッチコイルばね又は円錐コイルばねを用い、圧縮状態でのみ使用する(Y方向リニアベアリングケース10との接続を自由にする)ことにより、
図2(B)に示すような漸硬型非線形復元力特性が得られる。
図3乃至
図6は、Y方向コイルばねに不等ピッチコイルばねを用いた場合、を示している。
【0039】
補助輪の役目をするフリーベア13は、
図7(A)に示すように、取付け用フランジ13aと、球体受け13bと、自由回転球体13c、とによって構成されている。
球体受け13bと自由回転球体13cの間のすき間には、自由回転球体13cの回転を滑らかにするためにグリースが挿入されているが、多数の小球が挿入されることもある。
13以外のフリーベアも、
図7(A)と全く同様に構成されている。
【0040】
振動抑制用の摩擦ダンパー17は、
図7(B)に示すように、取付け用フランジ17aと、圧縮ばね17bと、外筒17cと、取付板17dと、ブレーキシュー17e、とによって構成されている。ブレーキシュー17eは取付板17dに固着されているが、圧縮ばね17bと取付け用フランジ17a及び取付板17dとの間は、固着であってもよいし、自由であってもよい。
圧縮ばね17bは、ブレーキシュー17eと基礎板1の間で適当な一定摩擦力を発生するように、その長さとばね定数が設定されている。
17以外の摩擦ダンパーも、
図7(B)と全く同様に構成されている。
【0041】
前述のように構成されたX方向移動ステージは、
図3及び
図5に示す如く、X方向ガイド軸5に組み込まれたリニアベアリングケース7に、ボルト又は接着剤によって固着される。
【0042】
(Y方向移動ステージ)
図3乃至
図6に示すように、Y方向移動ステージは、前述したX方向移動ステージの下半分に似た構造を有し、
Y方向移動テーブル板3と、スペーサー19a、19bと、粘弾性板20a、20bと、複数個のフリーベア21乃至24と、複数個の摩擦ダンパー25、26、とから構成されている。
【0043】
Y方向移動テーブル3の下面の左右端部には、
図3乃至
図6に示す如く、スペーサー19a、19b及び粘弾性板20a、20bを介して複数個のフリーベア21乃至24が取り付けられている。スペーサー19a、19bは、フリーベア21乃至24がX方向移動テーブル板2に接するように、その高さが調整されている。
又、粘弾性板20a、20bは、搭載物(図示せず)の重量をY方向ガイド軸8とフリーベア21乃至24とで分担して支えることができるように、その厚さが調整されている。各フリーベアの構造は、
図7(A)に示したものと同様である。
【0044】
更に、Y方向移動テーブル板3の下面の左右端部には、
図3乃至6に示す如く、スペーサー19a、19b及び粘弾性板20a、20bを介して、複数個の摩擦ダンパー25、26が取り付けられている。各摩擦ダンパーの構造は、
図7(B)に示したものと同様である。
摩擦ダンパー25、26の摩擦力は、Y方向移動テーブル板3のY方向の振動を抑制するように、圧縮ばね17bによって適正に調整されている。
【0045】
前述のように構成されたY方向移動ステージの下面中央部は、
図3及び
図5に示す如く、Y方向ガイド軸8に組み込まれたY方向リニアベアリングケース10の上面に、ボルト又は接着剤によって固着される。
【0046】
(搭載テーブル板)
搭載テーブル板4は機器を搭載するためのテーブル板で、その下面中央部は、
図5に示す如く、ボルト又は接着剤によってY方向移動テーブル板3に固着される。
【0047】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態を、
図8及び
図9を参照して説明する。
ここで、前述した第1実施形態の場合と同一の構成部材については、同一の符号を用いることにする。
【0048】
この第2実施形態における免震テーブル装置200では、前述した第1実施形態における免震テーブル装置100のコイルばね4本は、U字形ばね8本に置き換えられている。
【0049】
即ち、
図8に示す如く、X方向U字形ばね28a、28bはU字形ばね取付部材27a乃至27dを介して、X方向ガイド軸保持部材1aとX方向リニアベアリングケース7aとの間に取り付けられており、同じくX方向U字形ばね30a、30bはU字形ばね取付部材29a乃至29dを介して、X方向ガイド軸保持部材1bとX方向リニアベアリングケース7cとの間に取り付けられている。同様に、Y方向U字形ばね32a、32b及び34a、34bは、U字形ばね取付部材31a乃至31d及び33a乃至33dを介して、Y方向ガイド軸保持部材2a、2bとY方向リニアベアリングケース10との間に取り付けられている。
【0050】
免震テーブル装置200では、
図8及び
図9に示す如く、8本のU字形ばねに加えて、X方向ガイド軸5にX方向短コイルばね37a、37bが挿通して取り付けられており、Y方向ガイド軸8にはY方向短コイルばね38a、38bが挿通して取り付けられている。
X方向短コイルばね37aの一端はX方向ガイド軸保持部材1aに固着され、他端はガイド軸に挿通しているX方向スライダー35aに固着されている。更に、X方向スライダー35aの下面には、X方向硬化用摩擦ダンパー39a、39bが2本装着されている。摩擦ダンパーを2本にした理由は、X方向スライダーのX方向ガイド軸回りの回転を防ぐためである。
他のX方向短コイルばね37b及びY方向短コイルばね38a,38bも、短コイルばね37aと同様に、ガイド軸保持部材とスライダーの間に取り付けられている。それぞれのスライダー35b、36a,36bの下面には、硬化用摩擦ダンパー(40a,40b)、(41a,41b)、(42a,42b)が2本ずつ装着されている。
短コイルばねは、線形ばねであってもよく、不等ピッチコイルばねや円錐コイルばねのような非線形ばねであってもよい。又、硬化用摩擦ダンパーのブレーキシューの横幅を広くすれば、各スライダーに取り付ける硬化用摩擦ダンパーは、1本であってもよい。
【0051】
免震テーブル装置可動部(X方向移動ステージ、Y方向移動ステージ、搭載テーブル板及び搭載機器)のX方向の運動について考えると、
図8及び
図9(A)からわかるように、X方向移動テーブル板2の相対変位がλより小さいときは、X方向のばね定数はU字形ばね28a、28b及び30a、30bによって与えられ。X方向移動テーブル板2の相対変位がλより大きくなり、X方向短コイルばね37a又は37bに接触した後は、X方向のばね定数は、U字形ばね28a、28b及び30a、30bに加えて、X方向短コイルばね37a又は37bによって与えられる。
Y方向についても、X方向と同様である。これによって、X方向、Y方向共に、
図2(B)に示すような折れ線状の復元力特性が得られる。
【0052】
又、X方向及びY方向の各スライダーに硬化用摩擦ダンパーを取り付けることにより、
図2(A)に示すような二段硬化型非線形摩擦力特性を実現できる。
【0053】
なお、
図8及び
図9では、丸棒をU字状に曲げて製作したU字形ばねが用いられているが、板ばねをU字状に曲げて製作したU字形板ばね(図示せず)であってもよい。又、U字形ばねの代わりに半円弧ばね(図示せず)を用いてもよい。
【0054】
(任意方向からの地震波に対する免震テーブル装置の応答解析)
図1の振動系はX方向に対する振動系であるが、Y方向についても全く同様である。従って、免震テーブル装置100及び200のX方向及びY方向の運動は、
図1に示すような振動系の運動方程式に、地震波のX方向成分及びY方向成分を代入して求めることができる。又、任意方向から到来する地震波を受けたときの免震テーブル装置100及び200の任意方向の運動は、地震波のX方向成分及びY方向成分を、それぞれX方向の運動方程式及びY方向の運動方程式に代入して解を求め、それらの解をベクトル的に合成して求めることができる。
【0055】
従って、X方向及びY方向の摩擦力特性が
図2(A)に示すような二段硬化型非線形特性を有するならば、X方向とY方向のみならず、任意方向からの長周期地震波に対しても、共振を抑制する効果を持つことになる。
又、X方向及びY方向の復元力特性が
図2(B)に示すような折れ線型非線形特性を有するならば、X方向とY方向のみならず、任意方向からの長周期地震波に対しても、共振を回避する効果を持つことになる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、精密機器、コンピューター、仏具、美術工芸品などを地震による転倒や破損から守るための免震テーブル装置であって、製作が容易であるにもかかわらず、従来の免震テーブル装置と同等の運動性能と免震効果を期待でき、且つ長周期地震動による免震テーブル装置の共振を抑制できるので、利用範囲が大幅に拡大する可能性を有する。
【符号の説明】
【0057】
100、200‥‥免震テーブル装置
1‥‥基礎板
1a,1b‥‥X方向ガイド軸保持部材
2‥‥X方向移動テーブル板
2a,2b‥‥Y方向ガイド軸保持部材
3‥‥Y方向移動テーブル板
4‥‥搭載テーブル板
5‥‥X方向ガイド軸
6a,6b‥‥X方向コイルばね
7(7a,7b,7c)‥‥X方向リニアベアリングケース(X方向可動部)
8‥‥Y方向ガイド軸
9a,9b‥‥Y方向コイルばね
10(10a,10b,10c)‥‥Y方向リニアベアリングケース(Y方向可動部)
11a,11b,19a,19b‥‥スペーサー
12a,12b,20a,20b‥‥粘弾性板
13,14,15,16,21,22,23,24‥‥フリーベア
17,18,25,26‥‥摩擦ダンパー
27a,27b,27c,27d,29a,29b,29c,29d,31a,31b,31c,31d,33a,33b,33c,33d‥‥U字形ばね取付部材
28a,28b,30a,30b‥‥X方向U字形ばね
32a,32b,34a,34b‥‥Y方向U字形ばね
35a,35b‥‥X方向スライダー
36a,36b‥‥Y方向スライダー
37a,37b‥‥X方向短コイルばね
38a,38b‥‥Y方向短コイルばね
39a,39b,40a,40b‥‥X方向硬化用摩擦ダンパー
41a,41b,42a,42b‥‥Y方向硬化用摩擦ダンパー