特許第6274196号(P6274196)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6274196
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】電気接続箱
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/16 20060101AFI20180129BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
   H02G3/16
   B60R16/02 610A
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-245108(P2015-245108)
(22)【出願日】2015年12月16日
(65)【公開番号】特開2017-112718(P2017-112718A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2017年11月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北 幸功
【審査官】 久保 正典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−211776(JP,A)
【文献】 特開2012−090482(JP,A)
【文献】 特開2003−198159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/16
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部および接続部を有する電子部品が実装面に実装された回路基板と、
前記回路基板を内部に収容するケースと、を備える電気接続箱であって、
前記ケースは、前記回路基板のうち前記実装面の反対側の面と接着される接着面を有する接着ケースと、前記接着ケースに組み付けられて前記電子部品の前記本体部を前記接着面側に向けて押圧する押圧部を有する押圧ケースと、を備え、
前記押圧ケースは、前記回路基板を覆うカバーと、前記カバーおよび前記接着ケースの間に配される枠体と、を備えており、
前記枠体には、前記回路基板が前記接着ケースに位置決めされた状態において少なくとも前記電子部品の前記本体部と対向する位置に配される架橋部が設けられており、
前記押圧部は前記架橋部から前記回路基板側へ突出している電気接続箱。
【請求項2】
前記押圧ケースおよび前記接着ケースはネジ留めされている請求項1に記載の電気接続箱。
【請求項3】
前記接着ケースは金属製である請求項1または請求項2に記載の電気接続箱。
【請求項4】
前記回路基板のうち前記実装面の反対側の面にバスバーが配設されている請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の電気接続箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、電気接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば電子部品が実装された回路基板をケース内に収容してなる電気接続箱が知られている。このような電気接続箱において、回路基板をケースに対して接着剤により固定する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−164039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような電気接続箱を製造する際には、まず、絶縁基板の表面側にプリント配線技術により導電回路を印刷し、裏面側に、複数のバスバーを所定のパターンで配索する。次に、表面側に例えばリフローハンダ付け等により電子部品を実装し、回路基板を形成する。続いて、例えば2分割されたケースの一方側の所定領域に接着剤を塗布し、その上に上述した回路基板のバスバー側の面を重ね合わせて加圧することにより、回路基板を接着する。そして接着剤が硬化し、回路基板が固定された後に、2分割されたケースの他方側を組み付けて、電気接続箱を完成させる。
【0005】
しかし、このような製造方法によれば、接着剤が完全に硬化した後でないと次の作業に取り掛かることができない。このため、回路基板をケースに対して位置決めした後、接着剤が硬化するまで位置ずれしないように専用の治具により保持しておく必要がある。しかも、接着剤は硬化させるまで時間を要するため、作業効率が悪かった。
【0006】
また、このように接着剤による固定を行う場合は、車両走行時の振動等により剥がれが生じないようにするために、接着力が高い接着剤を使用する必要がある。接着力が高い接着剤としては、例えば熱硬化性樹脂を用いることが考えられるが、熱硬化性樹脂は、回路基板およびケースを高温・高圧で比較的長時間一体的に保持しなければならないため、専用の設備が必要であり、製造コストがかかる。また、全体を一旦高温にするため、冷却時間も長いという問題がある。
【0007】
本明細書に開示される技術は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、生産性に優れ、製造コストが安価な電気接続箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示される技術は、本体部および接続部を有する電子部品が実装面に実装された回路基板と、前記回路基板を内部に収容するケースと、を備える電気接続箱であって、前記ケースは、前記回路基板のうち前記実装面の反対側の面と接着される接着面を有する接着ケースと、前記接着ケースに組み付けられて前記電子部品の前記本体部を前記接着面側に向けて押圧する押圧部を有する押圧ケースと、を備え、前記押圧ケースは、前記回路基板を覆うカバーと、前記カバーおよび前記接着ケースの間に配される枠体と、を備えており、前記枠体には、前記回路基板が前記接着ケースに位置決めされた状態において少なくとも前記電子部品の前記本体部と対向する位置に配される架橋部が設けられており、 前記押圧部は前記架橋部から前記回路基板側へ突出している。
【0009】
上記構成によれば、押圧部により電子部品の本体部が接着ケースの接着面側に向けて押圧されるようになっているから、回路基板と接着ケースとを接着する接着剤が完全に硬化していない場合であっても、電子部品(本体部)を介して回路基板は接着ケースに対して押圧され、動き難い状態に保持される。すなわち、接着剤が完全に硬化するのを待つことなく次の製造工程に進めたり、搬送したりすることが可能となり、生産性が向上する。
【0010】
また上記構成によれば、接着剤が硬化した後も押圧部による押圧は継続されるから、回路基板と接着ケースとを接着剤だけで固定する場合ほど高い接着力が要求されない。すなわち、従来は高い接着性を確保するために接着剤として例えば熱硬化性樹脂等を使用していたが、上記構成では、常温で硬化する比較的安価な汎用の接着剤を使用することが可能となり、材料コストが低く抑えられる。しかも、熱硬化性樹脂を使用する場合の専用の設備や、接着剤が硬化するまでの保持用の治具等も不要となるため、設備コストも低く抑えられ、全体として製造コストを大幅に下げることができる。
【0013】
また、押圧ケースがカバーと枠体とで構成され、押圧部を枠体と一体に設ける構成としたから、部品点数を増やすことなく、簡易な構成で押圧部を設けることができる。
【0014】
上記電気接続箱は、以下の構成を備えていてもよい。
押圧ケースおよび接着ケースはネジ留めされている構成としてもよい。
【0015】
このような構成により、押圧部が電子部品の本体部を接着ケースの接着面側に向けて確実に押圧する構成とすることができる。
【0016】
接着ケースは金属製であってもよい。このような構成によれば、回路基板で発生した熱は接着ケースにより効率よく吸熱されるとともに外部に向けて放熱されるから、電気接続箱が高温になることを抑制することができる。
【0017】
さらに、回路基板のうち実装面の反対側の面にバスバーが配設される構成とすることもできる。
【発明の効果】
【0018】
本明細書に開示される技術によれば、生産性に優れ、製造コストが安価な電気接続箱を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施形態の電気接続箱の斜視図
図2】回路構成体が接着された放熱板とフレームの分解斜視図
図3】回路構成体が接着された放熱板にフレームを組み付けた状態の平面図
図4図3のA−A断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
一実施形態を図1ないし図4によって説明する。図1に示す本実施形態の電気接続箱10は、例えば電気自動車やハイブリッド自動車等の車両に設けられるDC/DCコンバータである。なお以下の説明においては、図1および図2の上側を上方、下側を下方、左手前を前方、右奥を後方とする。
【0021】
電気接続箱10は、トランジスタ等の電子部品20が実装された回路基板11と、回路基板11を内部に収容するケース30と、を備える(図4参照)。
【0022】
(回路基板11)
回路基板11は、絶縁基板12の表面(回路基板11の実装面11A)にプリント配線技術により図示しないプリント配線回路が形成されるとともに電子部品20が配され、裏面(実装面11Aの反対側の面)に複数のバスバー15が所定のパターンで配索されてなる。
【0023】
回路基板11は、図2および図3に示すように、略長方形状をなしており、その所定の位置には、一対の開口部13が設けられている。これらの開口部13は、電子部品20の本体部21を載置するとともに接続端子22(接続部の一例)をバスバー15に接続するためのものである。電子部品20の接続端子22は、開口部13から露出したバスバー15の表面にハンダ付けにより接続されている。
【0024】
回路基板11の前方側(図2の左手前)の縁部からは、図示しない外部端子と接続するための2本の外部接続バスバー15Aが突出しており、先端部がクランク状に屈曲されている。これらの先端部には、接続用のボルト(図示せず)を貫通させるためのボルト孔16が形成されている。
【0025】
(ケース30)
上述した回路基板11は、ケース30内に収容されている。ケース30は、回路基板11の下面(実装面11Aと反対側の面)側に配される矩形の平板状の放熱板31(接着ケースの一例)と、回路基板11の周囲を囲む略長方形の枠状のフレーム40(押圧ケース、枠体の一例)と、放熱板31に位置決めされた回路基板11をフレーム40の上方から覆うカバー50(押圧ケースの一例)と、から構成されている。
【0026】
放熱板31は、例えばアルミニウムやアルミニウム合金等の熱伝導性に優れる金属材料からなり、回路基板11において発生した熱を放熱するヒートシンクとしての機能を有する。
【0027】
フレーム40は合成樹脂製であり、4つの側壁のうちの一側壁(図2の左手前側の前側壁41A)には、上述した外部接続バスバー15Aを外側に導出するための一対の切欠部42が、その下端縁から上方に向けて略U字形状に切り欠いて設けられている。
【0028】
またフレーム40の四つの角部は内側に向けて張り出しており、この張り出した部分に、後述するボルト25と螺合可能なボルト孔46が上下方向に貫通して設けられている。
【0029】
またフレーム40のうち、左右の一対の側壁41B,41Cには、一対の側壁41B,41C間を架け渡す架橋部44が設けられている。架橋部44は、一対の側壁41B,41Cの上端から対向する側壁41C,41Bに向けて延びる角柱状をなしている。架橋部44は、ケース30内の所定位置に回路基板11が収容(位置決め)された状態において、電子部品20の本体部21に対向する位置を含むように設けられている(図3参照)。
【0030】
架橋部44には、その下面側から下方に向けて延びる一対の板状の押圧片45(押圧部の一例)が設けられている。押圧片45は、ケース30内の所定位置に回路基板11が収容(位置決め)された状態において、電子部品20の本体部21に対向する位置に設けられており、その先端部が電子部品20の本体部21の上面21Aを下方に向けて押圧する長さ寸法に設定されている(図4参照)。
【0031】
カバー50は合成樹脂製であり、回路基板11を覆う矩形の板状をなしている。カバー50がフレーム40に重ねられることにより、ケース30が閉じた状態とされる。
【0032】
なお、上述した放熱板31およびカバー50のうち、フレーム40と重ねられた状態においてフレーム40のボルト孔46に対応する位置には、それぞれ、ボルト25と螺合可能なボルト孔32(カバー50のボルト孔は図示せず)が貫通して設けられている。
【0033】
(電気接続箱10の製造方法)
次に、本実施形態の電気接続箱10の製造方法について説明する。まず、絶縁基板12の表面側(回路基板11の実装面11A側)にプリント配線技術により導電回路(図示せず)を印刷するとともに、裏面側(実装面11Aの反対側の面)に接着シート(図示せず)を貼付し、複数のバスバー15を所定のパターンで配索して貼り付ける。
【0034】
次に、電子部品20を絶縁基板12の表面(回路基板11の実装面11A)の所定位置に載置し、リフローハンダ付けにより表面側の導電回路および裏面側のバスバー15に接続する。図2ないし図4において、電子部品20はトランジスタを表しており、電子部品20の本体部21は、絶縁基板12の開口部13から露出したバスバー15上に載置されている。また、本体部21の側面から導出された複数の接続端子22の一部は、絶縁基板12の開口部13から露出したバスバー15に接続されている。これにより、電子部品20が実装された回路基板11が完成する。
【0035】
次に、放熱板31の上面31A(接着ケースの接着面の一例)の必要領域(回路基板11が配される領域)に絶縁性の接着剤(図示せず)を塗布し、回路基板11を所定位置に載置する。
【0036】
続いて、フレーム40を放熱板31に重ね合わせ、下面側からボルト25を放熱板31のボルト孔32およびフレーム40のボルト孔46に締結して、フレーム40を放熱板31に対して固定(ネジ留め)する。
【0037】
この状態において、フレーム40に設けられた架橋部44は電子部品20の本体部21の上方(本体部21と対向する位置)に配されており、架橋部44に設けられた押圧片45は、ボルト25が締結されることにより、その先端(下端)が本体部21を放熱板31の上面31A(接着ケースの接着面の一例)側に向けて押圧している。
【0038】
そして最後に、フレーム40にカバー50を重ね合わせて回路基板11を覆い、ボルト25をカバー50のボルト孔(図示せず)およびフレーム40のボルト孔46に締結して、フレーム40に対してカバー50を固定(ネジ留め)する。この状態において、カバー50の下面は架橋部44の上面にぴったり沿うように配されているから、押圧片45はより確実に本体部21を放熱板31の上面31A側に向けて押圧した状態とされる。このようにして、電気接続箱10が完成する。
【0039】
(作用効果)
このような本実施形態の電気接続箱10によれば、フレーム40に設けられた押圧片45により電子部品20の本体部21が放熱板31の上面31A側に向けて押圧されるようになっている。すなわち、回路基板11(バスバー15)が放熱板31の上面31Aに押圧されているから、製造過程において放熱板31および回路基板11を接着する接着剤が完全に硬化していない場合であっても、回路基板11は放熱板31に対して動き難い状態に保持される。すなわち、接着剤が完全に硬化するのを待つことなく次の工程に進めたり、搬送したりすることが可能となり、生産性が向上する。
【0040】
また上記構成によれば、接着剤が硬化した後も押圧片45による押圧は継続されるから、従来のように、回路基板11とケース30(放熱板31)とを接着剤だけで固定する場合ほど高い接着力が要求されない。すなわち、従来使用されていた接着性が高い熱硬化性樹脂等に替えて、常温で硬化する比較的安価な汎用の接着剤を使用することが可能となり、材料コストが低く抑えられる。しかも、熱硬化性樹脂を使用する場合の専用の設備や、接着剤が硬化するまでの保持用の治具等も不要となるため、設備コストも低く抑えられ、全体として製造コストを大幅に下げることができる。
【0041】
また、回路基板11を収容するケース30の一部(フレーム40)を利用して、押圧片45をフレーム40と一体的に設ける構成としたから、部品点数を増やすことなく簡易な構成とすることができる。
【0042】
また、フレーム40および放熱板31はネジ留めされているから、押圧片45により、電子部品20の本体部21を放熱板31側に向けて確実に押圧させることができる。
【0043】
さらに、ケース30の一部を放熱板31としたから、電気接続箱10が高温になることを抑制することができる。
【0044】
<他の実施形態>
本明細書に開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0045】
(1)上記実施形態では、ケース30のフレーム40に架橋部44を設けて押圧片45を一体に設ける構成としたが、別部材を電気接続箱10に組み込むことにより、電子部品20の本体部21を放熱板31の上面31A側に向けて押圧する押圧部を設ける構成としてもよい。
【0046】
(2)押圧部は板状の押圧片45に限らず、丸棒状や角柱状等、任意の形態とすることができる。
【0047】
(3)上記実施形態では、電気接続箱10のケース30を、放熱板31と、フレーム40と、カバー50とで構成したが、フレーム40を含まない形態のケースとしてもよい。その場合には、カバー(押圧ケース)に押圧部を一体に形成することが好ましい。
【0048】
(4)上記実施形態では、放熱板31およびフレーム40をネジ留めにより固定する構成としたが、固定方法は上記実施形態に限るものではなく、例えば、接着剤や係止手段により固定する方法としてもよい。
【0049】
(5)上記実施形態では、放熱板31を金属製としてヒートシンクの機能を持たせたが、合成樹脂製の底板部としてもよい。
【0050】
(6)上記実施形態では、外部接続バスバー15Aを外部端子とボルトにより接続する構成としたが、外部コネクタを装着することにより接続する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10…電気接続箱
11…回路基板
11A…実装面
12…絶縁基板
15…バスバー
20…電子部品
21…本体部
22…接続端子(接続部)
25…ボルト
30…ケース
31…放熱板(接着ケース)
31A…上面(接着面)
32…ボルト孔
40…フレーム(枠体、押圧ケース)
44…架橋部
45…押圧片(押圧部)
46…ボルト孔
50…カバー(押圧ケース)
図1
図2
図3
図4