【文献】
Hylke B. Akkerman、他5名,Fabrication of organic semiconductor crystalline thin films and crystals from solution by confined crystallization,Organic Electronics,ELSEVIER,2011年11月29日,vol. 13,pp. 235-243
【文献】
Myeong Jin Kang、他6名,Alkylated Dinaphtho[2,3-b:2',3'-f]Thieno[3,2-b]Thiophenes(Cn-DNTTs): Organic Semiconductors for High-Performance Thin-Film Transistors,ADVANCED MATERIALS,2011年,vol. 23,pp. 1222-1225
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記有機半導体溶液を前記モールドに導入後及び/又は該モールドを剥離した後、熱処理を行い、有機半導体薄膜を前記基板上に形成させる、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の有機半導体薄膜の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本発明は、図面に記載された実施形態に限定されるものではない。
本発明は、基板上に凹部を有するモールドを配置することで空隙部を形成し、その空隙部に有機半導体材料を導入し、溶媒を乾燥させることにより、配向性の良い一軸配向膜である単一ドメインの単結晶性有機半導体薄膜を作製することにある。
【0014】
有機半導体溶液を導入する空隙部は、基板に凹部を有するモールドを配置することによって形成される。モールドは、例えば
図3Aに示すように断面形状が一定の間隔で凹凸となるような溝を持ち、
図3Bに示すように、基板2に配置された際にモールド1の凸部が基板2表面と密着し、凹部が基板1と共に空隙を形成している。このモールドでは、空隙の両端が一定の大きさで開口しており(穴部)、この穴部は、有機半導体溶液を導入するために用いることができる。但し、一方または両方の端部を閉鎖してもよいし、モールドの上部または側面に有機半導体溶液を導入できる穴部を設けてもよい。これらの穴部は、有機半導体溶液を基板-モールド間の空隙部に導入する際に使用されるほか、有機半導体溶液の導入後に、空隙部内にあるエアーや蒸発した溶媒を排出することにも使用できる。基板に同様の効果を奏する機構がある場合はモールドに穴部がなくてもよい。穴部のサイズも特に規定はないが有機半導体溶液の導入、エアーの排出に障害がないように構成されることが好ましい。
【0015】
図3Bに示す実施形態では、モールド1を基板2上に配置する時に、開口側を基板に向けて、すなわち凸部が基板と接触するようにモールド1を配置し、有機半導体溶液が導入中にモールド1と基板2の間から漏えいしないようにこれらを十分に密着させる必要がある。モールドが樹脂製であれば、加熱することにより密着固定し易くする事ができる。加熱する場合は通常0〜200℃であり、好ましくは20〜150℃であり、より好ましくは50〜100℃である。
【0016】
図3B及び3Cに示す通り、モールドが基板上に配置されると基板2-モールド3間に空隙ができ、その両端で開口している穴部に、有機半導体溶液を接触させて導入する事ができる(
図3C)。モールドの上部または側面に有機半導体溶液を導入できる穴部を設けた場合には、これらの穴部から有機半導体溶液を空隙に導入させることもできる(図示せず)。
【0017】
これらの場合、有機半導体溶液の導入は、例えば圧電素子による機械的作用(吐出や圧入等)を利用して圧力を付加して行うこともできるが、毛細管現象により導入することもできる。工業化を考慮すると供給量の制御可能な機械的作用を利用する方が好ましいが、いずれの場合も穴部の口径は、円形の場合、通常は0.01nm〜5μmであり、好ましくは0.1nm〜3μmであり、より好ましくは1nm〜1μm程度である。なお、入り口、出口の形状は特に限定されるものではなく、円形以外の形状の場合は、上記円形の時の断面積と同程度のサイズであることが好ましい。
【0018】
上記空隙に有機半導体溶液を導入する方法を例示する。導入方法としては、上述したように、例えば、固定されたモールドの一方の端部(凹部が開口している面)に有機半導体溶液を配置させ、毛細管力(キャピラリーフォース)により有機半導体溶液を空壁に導入する方法やモールドに予め設置された穴部より機械的作用により有機半導体溶液を空隙に導入する方法等が挙げられる。より具体的な態様としては、モールドをスタンプの型枠とし、電極を配した基板を所定の位置に固定し、上部よりモールドをプレスすると同時に有機半導体溶液を導入する方法が挙げられる。このような製造方法によれば、トランジスタを連続的に、しかもスループットを上げて作製することが可能であると言える。この時にロール状に形成されたモールドを用いて連続的に有機半導体薄膜を作製することもできる。
【0019】
本発明における溶媒を除去する工程は、例えば空隙部に半導体溶液が供給された後、室温又は加熱により溶媒を徐々に蒸発させて結晶を成長させ、所定温度で十分に乾燥し、目的の単一ドメインの結晶性有機半導体薄膜を作製する工程である。
【0020】
溶媒を除去する方法として、加熱による熱処理、乾燥ガス雰囲気下、大気雰囲気下、真空下での乾燥など、目的により適宜選択できるが、単一ドメインの結晶性有機薄膜を形成するには、有機半導体を溶解する溶液の沸点、蒸気圧等のパラメーターから適度な乾燥速度にコントロールする必要がある。これらを勘案し、温度・雰囲気条件を選定して有機薄膜を形成させる。
【0021】
上記の通り有機半導体溶液の溶媒を除去するために加熱処理等により結晶加速度をコントロールすることは重要である。加熱により熱処理を行う場合、加熱温度は通常、0〜300℃であり、好ましくは10〜250℃であり、より好ましくは20〜200℃である。処理時間は、通常0.5分〜24時間で、好ましくは1分〜10時間で、より好ましくは1分〜1時間である。この場合、製膜時の温度及び時間により、トランジスタの特性が変化する場合があるので、注意深く加熱処理温度及び時間を選択するのが好ましい。
【0022】
溶媒を除去する工程を経て、有機半導体薄膜を得たのち、基板上のモールドを除去し、本願の有機半導体薄膜を基板上に得ることができる(
図3D)
【0023】
有機半導体薄膜の形状、特に薄膜の高さや幅は配置するモールドの溝(凹部)の高さ及び幅の規格によって特定される。
【0024】
有機半導体薄膜の膜厚は、有機半導体溶液の固形分量や基板とモールドによって形成される空隙部の規格(すなわち、モールドの溝の高さ等)に依存し、特にトランジスタ用の半導体薄膜として用いる場合、そのサイズはトランジスタのチャネル領域を覆うサイズ又は若干大きい程度が好ましい。これは、大き過ぎるとリークや寄生容量が増えるなど素子に好ましくない現象が起こるためである。したがって、有機半導体薄膜のサイズは電極のサイズ、デバイスに必要な電流量や特性、印刷の精度などを勘案し適宜決定することが好ましく、通常0.2nm〜5μmであり、好ましくは1nm〜0.5μmであり、より好ましくは2nm〜0.3μmである。
【0025】
次に空隙部を形成するためのモールドの形成方法について説明する。上述のとおり、モールドは、基板に密着させるため樹脂製であることが好ましい。凹型の溝部を形成する手法は、特に限定されないが、例えば予め前記の規格を有する凸部を有するテンプレートの上に熱又は光硬化性樹脂組成物(例えば、エポキシ樹脂と重合開始剤)を塗布し、硬化させることにより作製することができる。
【0026】
凸部を有するテンプレートの材料は特に限定されるものではないが、例えば、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。中でも加熱により比較的容易に硬化し、剥離性に優れるポリジメチルシロキサン(PDMS)が好ましい。
【0027】
前記テンプレートは、鋳型を用いて作製することができる。この鋳型の材料は、例えば、シリコン、石英、ガラス、金属、セラミックなどの無機材料、又は溶媒に不溶で、膨潤しにくいポリイミド、アクリルなどの有機材料が挙げられる。
【0028】
本発明に用いるモールドを形成するための樹脂組成物について説明する。樹脂組成物は硬化性樹脂及び溶剤を、通常は重合開始剤及び硬化促進剤等と共に含有し、必要に応じて、更に界面活性剤、熱硬化剤や光硬化剤、重合禁止剤、及び紫外線吸収剤等の各種添加物を含有させることができる。しかし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
モールドは前記のテンプレートにモールド用の樹脂組成物を塗布し、硬化後に剥離することで作成できる。テンプレートは表面に凹凸部を有する基板であるため、一般には凹凸の段差と樹脂膜層との間に空気を巻き込み易く、均一で平面性に優れた樹脂膜層が得られ難いという欠陥がある。
【0030】
この様な問題点を考慮して、本発明では、モールドの製造には公知の技術(特開2009−122211号)を利用することができる。この技術は、表面に凹凸のある基板上に感光性樹脂転写層を形成する方法、及び得られた転写層にフォトリソグラフィーの手法を施し、高精度でアスペクト比の高い微細な構造体を有する成形体を製造する方法である。
【0031】
モールド用の樹脂組成物における樹脂としては、モールドとして機能を発揮することができれば、特に限定されるものではないが、例えば、エポキシ樹脂が挙げられ、具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、多官能ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂のアルコール性水酸基とエピクロルヒドリンとの反応により得られるエポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のアルコール性水酸基とエピクロルヒドリンとの反応により得られるエポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0032】
なお、上記の樹脂組成物は、必要に応じて、各種添加剤、例えば、増粘剤、増感剤、界面活性剤、密着促進剤、酸化防止剤、凝集防止剤等を添加することができる。
【0033】
フォトレジストによるパターニング手法によりモールドを作製する場合、フォトリソグラフィー法の設計上、現像処理工程において用いられるアルカリ性現像液に可溶であることが望ましく、さらには良好な微細パターンを形成するために光重合開始剤、光重合性モノマー等との十分な硬化特性を有しているものが望ましい。
【0034】
また、樹脂組成物に硬化促進剤を併用してもよく、例えば、1級〜3級アミン類等の窒素含有複素環化合物、酸を発生させる光酸発生剤や熱酸発生剤が挙げられる。
【0035】
次に本発明で用いられる有機半導体化合物に説明する。本発明で使用される有機半導体化合物は、低分子化合物又は高分子化合物の何れでもよい。低分子化合物としては、ペンタセンやTIPS−ペンタセン等のポリアセン類およびポリアセン類の炭素の一部をN、S、Oなどの複素原子、アリール基、アシル基、アルキル基、アルコキシル基、カルボニル基などの官能基に置換した誘導体(トリフェノジオキサジン誘導体、トリフェノジチアジン誘導体、化合物(1)で示すチエノチオフェン誘導体など)を挙げられるほか、スチリルベンゼン誘導体、フタロシアニン類、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド類、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド類及びアントラセンテトラカルボン酸ジイミド類などの縮合環テトラカルボン酸ジイミド類、メロシアニン色素類、ヘミシアニン色素類などの色素などがあげられる。その他の有機半導体材料としては、テトラチアフルバレン(TTF)類、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)類及びそれらの錯体、ビスエチレンテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、BEDTTTF−ヨウ素錯体、TCNQ−ヨウ素錯体、などの有機分子錯体も用いることができ
る。
【0036】
高分子化合物としては、例えば、ポリアセチレン系高分子、ポリジアセチレン系高分子、ポリパラフェニレン系高分子、ポリアニリン系高分子、ポリチオフェン系高分子、ポリピロール系高分子、ポリチェニレンビニレン系高分子、ポリアニリン系高分子、ポリアズレン系高分子、ポリピレン系高分子、ポリカルバゾール系高分子、ポリセレノフェン系高分子、ポリフラン系高分子、ポリ(p−フェニレン)系高分子、ポリインドール系高分子、ポリピリダジン系高分子、ポリスルフィド系高分子、ポリパラフェニレンビニレン系高分子、ポリエチレンジオキシチオフェン系高分子、核酸やこれらの誘導体が挙げられ、これらは単一構成の重合体でも、これらの組み合わせによる共重合体でも使用できる。オリゴマーとしては、上記のポリマーと同じ繰返し単位を有するオリゴマー、例えば、チオフェン6量体であるα−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、などのオリゴマーが挙げられる。
【0037】
本発明の実施するにあたって特に好ましい化合物の一例として式(1)で表される誘導体があげられる。
【化2】
(式(1)中、X
1及びX
2はそれぞれ独立に硫黄原子又はセレン原子を表し、R
1及びR
2はそれぞれ独立に水素原子、脂肪族炭化水素基、アリール基、複素環基、アルコキシル基、アルコキシアルキル基を示し、R
1及びR
2は同一でも異なってもよい。m及びnはそれぞれ独立して0または1を表す。)
【0038】
上記脂肪族炭化水素基は、直鎖、分岐鎖又は環状の脂肪族炭化水素基であり、好ましくは直鎖の脂肪族炭化水素基が挙げられる。炭素数は通常1〜36であり、好ましくは2〜24であり、さらに好ましくは4〜20であり、最も好ましくは4〜10である。直鎖又は分岐鎖の飽和脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、t−ペンチル基、sec−ペンチル基、n−ヘキシル基、iso−ヘキシル基、n−ヘプチル基、sec−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、sec−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基、ドコシル基、n−ペンタコシル基、n−オクタコシル基、n−トリコンチル基、5−(n−ペンチル)デシル基、ヘネイコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、ノナコシル基、n−トリアコンチル基、スクアリル基、ドトリアコンチル基、ヘキサトリアコンチル基等が挙げられ、環状の飽和脂肪族炭化水素基の具体例としては、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、アダマンチル基、ノルボルニル基等が挙げられる。好ましくは、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基である。
【0039】
上記アリール基は、フェニル基、ビフェニル基、ピレン基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、ベンジル基、フェニルエチル基、α−メチルベンジル基、トリフェニルメチル基、スチリル基、シンナミル基、ビフェニリル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基等の芳香族炭化水素基などが挙げられ、上記複素環基は、硫黄、酸素、窒素原子を含有する芳香族複素環基であり、好ましくは2−チエニル基、チエノチエニル基である。アリール基や複素環基はC4〜C10のアルキル基などの上記の脂肪族炭化水素基を置換基として有していてもよく、複数の置換基を有する場合、それぞれの置換基は同一又は異なっていてもよい。
【0040】
アルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、n−ノナデシルオキシ基、n−イコシルオキシ基、n−ヘンイコシルオキシ基、n−ドコシルオキシ基、n−トリコシルオキシ基、n−テトラコシルオキシ基、n−ペンタコシルオキシ基、n−ヘキサコシルオキシ基、n−ヘプタコシルオキシ基、n−オクタコシルオキシ基、n−ノナコシルオキシ基、及びn−トリアコンチルオキシ基を挙げることができる。好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、n−ノナデシルオキシ基、及びn−イコシルオキシ基等の炭素数1〜20のアルコキシ基が挙げられる。
【0041】
アルコキシアルキル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、n−プロポキシメチル基、n−ブトキシメチル基、n−ペンチルオキシメチル基、n−ヘキシルオキシメチル基、n−ヘプチルオキシメチル基、n−オクチルオキシメチル基、n−ノニルオキシメチル基、n−デシルオキシメチル基、n−ウンデシルオキシメチル基、n−ドデシルオキシメチル基、n−トリデシルオキシメチル基、n−テトラデシルオキシメチル基、n−ペンタデシルオキシメチル基、n−ヘキサデシルオキシメチル基、n−ヘプタデシルオキシメチル基、n−オクタデシルオキシメチル基、n−ノナデシルオキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、n−プロポキシエチル基、n−ブトキシエチル基、n−ペンチルオキシエチル基、n−ヘキシルオキシエチル基、n−ヘプチルオキシエチル基、n−オクチルオキシエチル基、n−ノニルオキシエチル基、n−デシルオキシエチル基、n−ウンデシルオキシエチル基、n−ドデシルオキシエチル基、n−トリデシルオキシエチル基、n−テトラデシルオキシエチル基、n−ペンタデシルオキシエチル基、n−ヘキサデシルオキシエチル基、n−ヘプタデシルオキシエチル基、n−オクタデシルオキシエチル基、n−ノナデシルオキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシプロピル基、n−プロポキシプロピル基、n−ブトキシプロピル基、n−ペンチルオキシプロピル基、n−ヘキシルオキシプロピル基、n−ヘプチルオキシプロピル基、n−オクチルオキシプロピル基、n−ノニルオキシプロピル基、n−デシルオキシプロピル基、メトキシブチル基、エトキシブチル基、n−プロポキシブチル基、n−ブトキシブチル基、n−ペンチルオキシブチル基、n−ヘキシルオキシブチル基、n−ヘプチルオキシブチル基、n−オクチルオキシブチル基、n−ノニルオキシブチル基、n−デシルオキシブチル基を挙げることができる。好ましくはメトキシメチル基、エトキシメチル基、n−プロポキシメチル基、n−ブトキシメチル基、n−ペンチルオキシメチル基、n−ヘキシルオキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、n−プロポキシエチル基、n−ブトキシエチル基、n−ペンチルオキシエチル基、n−ヘキシルオキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシプロピル基、n−プロポキシプロピル基、n−ブトキシプロピル基、n−ペンチルオキシプロピル基、n−ヘキシルオキシプロピル基、メトキシブチル基、エトキシブチル基、n−プロポキシブチル基、n−ブトキシブチル基、n−ペンチルオキシブチル基、n−ヘキシルオキシブチル基、n−ヘプチルオキシブチル基、n−オクチルオキシブチル基、n−ノニルオキシブチル基、n−デシルオキシブチル基が挙げられる。
【0042】
式(1)におけるX
1及びX
2、並びにR
1及びR
2の好ましい組合せは、上記でそれぞれにおいて好ましいとされるもの同士の組み合わせであり、より好ましい組み合わせは上記でそれぞれにおいてより好ましいとされるもの同士の組み合わせである。この際、m及びnはそれぞれ独立して0または1を表す。
【0043】
上記式(1)で表される化合物の代表的な例としては以下の化合物が挙げられる。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【0044】
上記式(1)で表される化合物は、例えばJournal of the American Chemical Society,2007, 129,15732やAdvanced Materials,2011,23.1222をはじめとする公知の方法により合成することができる。式(1)で表される化合物の精製方法は、特に限定されず、再結晶、カラムグロマトグラフィー、及び真空昇華精製等の公知の方法が採用できる。また必要に応じてこれらの方法を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
有機半導体溶液は、有機半導体化合物を溶媒に溶解または分散したものである。使用される溶媒は、化合物が基板上に成膜できれば特に限定されるものではないが、有機溶媒が好ましく、単一の有機溶媒でも、複数の有機溶媒を混合して使用することもできる。有機溶媒としてはジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタンなどのハロゲノ炭化水素類、ジエチルエーテル、アニソール、テトラヒドロフランなどのエーテル類、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類等、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール類、オクタフルオロペンタノール、ペンタフルオロプロパノールなどのフッ化アルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸エチル、炭酸ジエチルなどのエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、メシチレン、エチルベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロナフタレン、テトラヒドロナフタレンなどの芳香族炭化水素類、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、デカン、テトラリンなどの炭化水素類などを用いることができる。有機半導体溶液中に含まれる有機半導体材料の濃度は、通常0.01%〜10%、好ましくは0.1%〜8%、より好ましくは0.2%〜5%である。
【0046】
有機半導体溶液には、低分子系半導体化合物と半導体性高分子化合物を混合させることができる。半導体性高分子化合物は、半導体性を示すことを特徴とする高分子化合物である。半導体性高分子化合物の具体例として、ポリアセチレン系高分子、ポリジアセチレン系高分子、ポリパラフェニレン系高分子、ポリアニリン系高分子、ポリチオフェン系高分子、ポリピロール系高分子、ポリチェニレンビニレン系高分子、ポリアニリン系高分子、ポリアズレン系高分子、ポリピレン系高分子、ポリカルバゾール系高分子、ポリセレノフェン系高分子、ポリフラン系高分子、ポリ(p−フェニレン)系高分子、ポリインドール系高分子、ポリピリダジン系高分子、ポリスルフィド系高分子、ポリパラフェニレンビニレン系高分子、ポリエチレンジオキシチオフェン系高分子、核酸やこれらの誘導体が挙げられる。
【0047】
有機半導体溶液には、低分子系半導体化合物と絶縁性高分子化合物を混合させることもできる。絶縁性高分子化合物とは、絶縁性を示すことを特徴とする高分子化合物であり、上記の導電性または半導体性高分子材料以外の高分子材料の大部分は絶縁性高分子材料である。その具体例として、アクリル系高分子、ポリエチレン系高分子、ポリメタクリレート系高分子、ポリスチレン系高分子、ポリエチレンテレフタレート系高分子、ナイロン系高分子、ポリアミド系高分子、ポリエステル系高分子、ビニロン系高分子、ポリイソプレン系高分子、セルロース系高分子、共重合系高分子およびこれらの誘導体などがより好ましい。
【0048】
有機半導体溶液における半導体性高分子化合物、絶縁性高分子化合物等の高分子材料の添加量は、高分子材料を使用するのであれば、通常0.5%〜95%、好ましくは1%〜90% 、より好ましくは3%〜75%、最も好ましくは5%〜50%の範囲で使用するのが良い。なお、高分子材料を使用しなくてもよい。
【0049】
また、有機半導体溶液は、得られる効果を損なわない限りにおいて、その他の添加物、例えば、キャリア発生剤、導電性物質、粘度調整剤、表面張力調整剤、レベリング剤、浸透剤、濡れ調製剤、レオロジー調整剤などを加えてもよい。添加剤は、有機半導体材料の総量を1とした場合、通常0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%、より好ましくは0.1〜3重量%の範囲で添加するのがよい。
【0050】
本発明の有機半導体溶液は、他の添加物を含有してもよいが、含有しなくても本発明の効果が得られる。
【0051】
有機半導体薄膜は、有機エレクトロニクスデバイスに使用することができる。有機エレクトロニクスデバイスとしては、例えば有機トランジスタや光電変換デバイス、有機太陽電池デバイス、有機ELデバイス、有機発光トランジスタデバイス、有機半導体レーザーデバイスなどが挙げられる。本発明の製膜方法では結晶性の薄膜が得やすいため、有機トランジスタや有機レーザーデバイスなどが好適な有機エレクトロニクスデバイスとして挙げられる。有機トランジスタについて詳しく説明する。
【0052】
有機トランジスタは、有機半導体に接して2つの電極(ソース電極及びドレイン電極)があり、その電極間に流れる電流を、ゲート電極と呼ばれるもう一つの電極に印加する電圧で制御するものである。
【0053】
一般に、有機トランジスタデバイスはゲート電極が絶縁膜で絶縁されている構造(Metal−InsuIator−Semiconductor MIS構造)がよく用いられる。絶縁膜に金属酸化膜を用いるものはMOS構造と呼ばれる。他には、ショットキー障壁を介してゲート電極が形成されている構造(すなわちMES構造)もあるが、有機トランジスタの場合、MIS構造がよく用いられる。
【0054】
以下、図を用いて有機トランジスタについてより詳細に説明するが、本発明はこれらの構造には限定されない。
【0055】
図1に、有機トランジスタデバイスのいくつかの態様例を示す。
図1における各態様例において、1がソース電極、2が半導体層、3がドレイン電極、4が絶縁体層、5がゲート電極、6が基板をそれぞれ表す。尚、各層や電極の配置は、デバイスの用途により適宜選択できる。A〜D、Fは基板と並行方向に電流が流れるので、横型トランジスタと呼ばれる。Aはボトムコンタクトボトムゲート構造、Bはトップコンタクトボトムゲート構造と呼ばれる。また、Cは半導体上にソース及びドレイン電極、絶縁体層を設け、さらにその上にゲート電極を形成しており、トップコンタクトトップゲート構造と呼ばれている。Dはトップ&ボトムコンタクトボトムゲート型トランジスタと呼ばれる構造である。Fはボトムコンタクトトップゲート構造である。Eは縦型の構造をもつトランジスタ、すなわち静電誘導トランジスタ(SIT)の模式図である。このSITは、電流の流れが平面状に広がるので一度に大量のキャリアが移動できる。またソース電極とドレイン電極が縦に配されているので電極間距離を小さくできるため応答が高速である。従って、大電流を流す、高速のスイッチングを行うなどの用途に好ましく適用できる。なお
図1中のEには、基板を記載していないが、通常の場合、
図1E中の1及び3で表されるソース又はドレイン電極の外側には基板が設けられる。
【0056】
各態様例における各構成要素について説明する。
基板6は、その上に形成される各層が剥離することなく保持できることが必要である。例えば樹脂板やフィルム、紙、ガラス、石英、セラミックなどの絶縁性材料;金属や合金などの導電性基板上にコーティング等により絶縁層を形成した物;樹脂と無機材料など各種組合せからなる材料;等が使用できる。使用できる樹脂フィルムの例としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、ポリエーテルイミドなどが挙げられる。樹脂フィルムや紙を用いると、デバイスに可撓性を持たせることができ、フレキシブルで、軽量となり、実用性が向上する。基板の厚さとしては、通常1μm〜10mmであり、好ましくは10μm〜2mmある。
【0057】
ソース電極1、ドレイン電極3、ゲート電極5には導電性を有する材料が用いられる。例えば、白金、金、銀、アルミニウム、クロム、タングステン、タンタル、ニッケル、コバルト、銅、鉄、鉛、錫、チタン、インジウム、パラジウム、モリブデン、マグネシウム、カルシウム、バリウム、リチウム、カリウム、ナトリウム等の金属及びそれらを含む合金;InO
2、ZnO
2、SnO
2、ITO等の導電性酸化物;ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリジアセチレン等の導電性高分子化合物;シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素等の半導体;カーボンブラック、フラーレン、カーボンナノチューブ、グラファイト、グラフェン等の炭素材料;等が使用できる。また、導電性高分子化合物や半導体にはドーピングが行われていてもよい。ドーパントとしては、例えば、塩酸、硫酸等の無機酸;スルホン酸等の酸性官能基を有する有機酸;PF
5、AsF
5、FeCl
3等のルイス酸;ヨウ素等のハロゲン原子;リチウム、ナトリウム、カリウム等の金属原子;等が挙げられる。ホウ素、リン、砒素などはシリコンなどの無機半導体用のドーパントとしても多用されている。
また、上記のドーパントにカーボンブラックや金属粒子などを分散した導電性の複合材料も用いられる。直接、半導体と接触するソース電極1およびドレイン電極3はコンタクト抵抗を低減するために適切な仕事関数を選択するか、表面処理などが大切になる。
【0058】
またソース電極とドレイン電極間の距離(チャネル長)がデバイスの特性を決める重要なファクターとなる。該チャネル長は、通常0.01〜300μm、好ましくは0.1〜100μmである。チャネル長が短ければ取り出せる電流量は増えるが、逆にコンタクト抵抗の影響など短チャネル効果が発生し、制御が困難となるため、適正なチャネル長が必要である。ソースとドレイン電極間の幅(チャネル幅)は通常1〜1000μm、好ましくは5〜200μmとなる。またこのチャネル幅は、電極の構造をくし型構造とすることなどにより、さらに長いチャネル幅を形成することが可能で、必要な電流量やデバイスの構造などにより、適切な長さにする必要がある。
【0059】
ソース電極及びドレイン電極のそれぞれの構造(形)について説明する。ソース電極とドレイン電極の構造はそれぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
ボトムコンタクト構造の場合は、一般的にはリソグラフィー法を用いて各電極を作製し、また各電極は直方体に形成するのが好ましい。最近は各種印刷方法による印刷精度が向上してきており、インクジェット印刷、グラビア印刷又はスクリーン印刷などの手法を用いて精度よく電極を作製することが可能となってきている。半導体上に電極のあるトップコンタクト構造の場合はシャドウマスクなどを用いて蒸着することが出来る。インクジェットなどの手法を用いて電極パターンを直接印刷形成することも可能となってきている。電極の長さは前記のチャネル幅と同じである。電極の幅には特に規定は無いが、電気的特性を安定化できる範囲で、デバイスの面積を小さくするためには短い方が好ましい。電極の幅は、通常0.1〜1000μmであり、好ましくは0.5〜100μmである。電極の厚さは、通常0.1〜1000nmであり、好ましくは1〜500nmであり、より好ましくは5〜200nmである。各電極1、3、5には配線が連結されているが、配線も電極とほぼ同様の材料により作製される。
【0060】
絶縁体層4としては絶縁性を有する材料が用いられる。例えば、ポリパラキシリレン、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリビニルフェノール、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリスルホン、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等のポリマー及びこれらを組み合わせた共重合体;酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化タンタル等の金属酸化物;SrTiO
3、BaTiO
3等の強誘電性金属酸化物;窒化珪素、窒化アルミニウム等の窒化物、硫化物、フッ化物などの誘電体;あるいは、これら誘電体の粒子を分散させたポリマー;等が使用しうる。この絶縁体層はリーク電流を少なくするために電気絶縁特性が高いものが好ましく使用できる。それにより膜厚を薄膜化し、絶縁容量を高くすることが出来、取り出せる電流が多くなる。また半導体の移動度を向上させるためには絶縁体層表面の表面エネルギーを低下させ、凹凸がなくスムースな膜であることが好ましい。その為に自己組織化単分子膜や、2層の絶縁体層を形成させる場合がある。絶縁体層4の膜厚は、材料によって異なるが、通常0.1nm〜100μm、好ましくは0.5nm〜50μm、より好ましくは1nm〜10μmである。
【0061】
有機トランジスタには、例えば基板層と絶縁膜層や絶縁膜層と半導体層の間やデバイスの外面に必要に応じて他の層を設けることができる。例えば、有機半導体層上に直接、又は他の層を介して、保護層を形成すると、湿度などの外気の影響を小さくすることができる。また、有機トランジスタデバイスのオン/オフ比を上げることができるなど、電気的特性を安定化できる利点もある。
【0062】
上記保護層の材料としては特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、フッ素樹脂、ポリオレフィン等の各種樹脂からなる膜;酸化珪素、酸化アルミニウム、窒化珪素等の無機酸化膜;及び窒化膜等の誘電体からなる膜;等が好ましく用いられ、特に、酸素や水分の透過率や吸水率の小さな樹脂(ポリマー)が好ましい。有機ELディスプレイ用に開発されているガスバリア性保護材料も使用が可能である。保護層の膜厚は、その目的に応じて任意の膜厚を選択できるが、通常100nm〜1mmである。
【0063】
また有機半導体層が積層される基板又は絶縁体層に予め表面改質や表面処理を行うことにより、有機トランジスタデバイスとしての特性を向上させることが可能である。例えば基板表面の親水性/疎水性の度合いを調整することにより、その上に成膜される膜の膜質や成膜性を改良することができる。特に、有機半導体材料は分子の配向など膜の状態によって特性が大きく変わることがある。そのため、基板、絶縁体層などへの表面処理によって、その後に成膜される有機半導体層との界面部分の分子配向が制御されること、また基板や絶縁体層上のトラップ部位が低減されることにより、キャリア移動度等の特性が改良されるものと考えられる。
トラップ部位とは、未処理の基板に存在する例えば水酸基のような官能基をさし、このような官能基が存在すると、電子が該官能基に引き寄せられ、この結果としてキャリア移動度が低下する。従って、トラップ部位を低減することもキャリア移動度等の特性改良には有効な場合が多い。
【0064】
上記のような特性改良のための表面処理としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、オクチルトリクロロシラン、オクタデシルトリクロロシラン等による自己組織化単分子膜処理;ポリマーなどによる表面処理;塩酸や硫酸、酢酸等による酸処理;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア等によるアルカリ処理;オゾン処理;フッ素化処理;酸素やアルゴン等のプラズマ処理;ラングミュア・ブロジェット膜の形成処理;その他の絶縁体や半導体の薄膜の形成処理;機械的処理;コロナ放電などの電気的処理;又繊維等を利用したラビング処理、等およびその組み合わせが挙げられる。
これらの態様において、例えば基板層と絶縁膜層や絶縁膜層と有機半導体層等の各層を設ける方法としては、前記した真空プロセス、溶液プロセスが適宜採用できる。
【0065】
次に、本発明に係る有機トランジスタデバイスの製造方法について、
図1の態様例Bに示すトップコンタクトボトムゲート型有機トランジスタを例として、
図2に基づき以下に説明する。この製造方法は前記した他の態様の有機トランジスタ等にも同様に適用しうるものである。
【0066】
(有機トランジスタの基板及び基板処理について)
本発明の有機トランジスタは、基板6上に必要な各種の層や電極を設けることで作製される(
図2(1)参照)。基板としては上記で説明したものが使用できる。この基板上に前述の表面処理などを行うことも可能である。基板6の厚みは、必要な機能を妨げない範囲で薄い方が好ましい。材料によっても異なるが、通常1μm〜10mmであり、好ましくは5μm〜5mmである。また、必要により、基板に電極の機能を持たせるようにする事も出来る。
【0067】
(ゲート電極の形成について)
基板6上にゲート電極5を形成する(
図2(2)参照)。電極材料としては上記で説明したものが用いられる。電極膜を成膜する方法としては、各種の方法を用いることができ、例えば真空蒸着法、スパッタ法、塗布法、熱転写法、印刷法、ゾルゲル法等が採用される。成膜時又は成膜後、所望の形状になるよう必要に応じてパターニングを行うのが好ましい。パターニングの方法としても各種の方法を用いうるが、例えばフォトレジストのパターニングとエッチングを組み合わせたフォトリソグラフィー法等が挙げられる。また、シャドウマスクを用いた蒸着法やスパッタ法やインクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷等の印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法等のソフトリソグラフィーの手法、及びこれら手法を複数組み合わせた手法を利用し、パターニングすることも可能である。ゲート電極5の膜厚は、材料によっても異なるが、通常0.1nm〜10μmであり、好ましくは0.5nm〜5μmであり、より好ましくは1nm〜3μmである。また、ゲート電極と基板を兼ねるような場合は上記の膜厚より大きくてもよい。
【0068】
(絶縁体層の形成について)
ゲート電極5上に絶縁体層4を形成する(
図2(3)参照)。絶縁体材料としては上記で説明した材料が用いられる。絶縁体層4を形成するにあたっては各種の方法を用いることができる。例えばスピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、キャスト、バーコート、ブレードコーティング、ダイコート、スリットコートなどの塗布法、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット等の印刷法、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、大気圧プラズマ法、CVD法などのドライプロセス法が挙げられる。その他、ゾルゲル法やアルミニウム上のアルマイト、シリコン上の酸化珪素のように金属上に熱酸化法などにより酸化物膜を形成する方法等が採用される。尚、絶縁体層と半導体層が接する部分においては、両層の界面で半導体を構成する分子、例えば上記一般式(1)または(2)で表される化合物の分子を良好に配向させるために、絶縁体層に所定の表面処理を行うこともできる。表面処理の手法は、基板の表面処理と同様のものを用いることができうる。絶縁体層4の膜厚は、その電気容量をあげることで取り出す電気量を増やすことが出来るため、出来るだけ薄い膜であることが好ましい。このときに薄い膜になるとリーク電流が増えるため、その機能を損なわない範囲で薄い方が好ましい。通常0.1nm〜100μmであり、好ましくは0.5nm〜50μmであり、より好ましくは5nm〜10μmである。
【0069】
本発明により形成された有機半導体層(
図2(4)参照)は、後処理によりさらに特性を改良することが可能である。例えば、熱処理により、成膜時に生じた膜中の歪みが緩和されること、ピンホール等が低減されること、膜中の配列・配向が制御できる等の理由により、有機半導体特性の向上や安定化を図ることができる。本発明の有機トランジスタの作製時にはこの熱処理を行うことが特性の向上の為には効果的である。当該熱処理は有機半導体層を形成した後に基板を加熱することによって行う。熱処理の温度は特に制限は無いが通常、室温から150℃程度で、好ましくは40〜120℃、さらに好ましくは45〜100℃である。この時の熱処理時間については特に制限は無いが通常10秒から24時間、好ましくは30秒から3時間程度である。その時の雰囲気は大気中でもよいが、窒素やアルゴンなどの不活性雰囲気下でもよい。その他、溶媒蒸気による膜形状のコントロールなどが可能である。
【0070】
(ソース電極及びドレイン電極の形成)
ソース電極1及びドレイン電極3の形成方法等はゲート電極5の場合に準じて形成することができる(
図2(5)参照)。また有機半導体層との接触抵抗を低減するために各種添加剤などを用いることが可能である。本構造のボトムゲートトップコンタクト型のトランジスタにおいては、メタルマスクを用いた蒸着法が多用されている。その時の膜厚は通常10〜200nmであり、20〜100nmが好ましい。
【0071】
(保護層について)
有機半導体層上に保護層7を形成すると、外気の影響を最小限にでき、また、有機トランジスタの電気的特性を安定化できるという利点がある(
図2(6)参照)。保護層の材料としては前記のものが使用される。保護層7の膜厚は、その目的に応じて任意の膜厚を採用できるが、通常100nm〜1mmである。保護層を成膜するにあたっては各種の方法を採用しうるが、保護層が樹脂からなる場合は、例えば、樹脂溶液を塗布後、乾燥させて樹脂膜とする方法;樹脂モノマーを塗布あるいは蒸着したのち重合する方法;などが挙げられる。成膜後に架橋処理を行ってもよい。保護層が無機物からなる場合は、例えば、スパッタリング法、蒸着法等の真空プロセスでの形成方法や、ゾルゲル法等の溶液プロセスでの形成方法も用いることができる。
【0072】
有機トランジスタにおいては有機半導体層上の他、各層の間にも必要に応じて保護層を設けることができる。それらの層は有機トランジスタの電気的特性の安定化に役立つ場合がある。
【0073】
本製造法で薄膜を製造すると、比較的低温プロセスで有機トランジスタを製造することができる。従って、高温にさらされる条件下では使用できなかったプラスチック板、プラスチックフィルム等フレキシブルな材質も基板として用いることができる。その結果、軽量で柔軟性に優れた壊れにくいデバイスの製造が可能になり、ディスプレイのアクティブマトリクスのスイッチングデバイス等として利用することができる。 ディスプレイとしては、例えば液晶ディスプレイ、高分子分散型液晶ディスプレイ、電気泳動型ディスプレイ、ELディスプレイ、エレクトロクロミック型ディスプレイ、粒子回転型ディスプレイ等が挙げられる。また、メモリー回路素子、信号ドライバー回路素子、信号処理回路素子などのデジタル素子やアナログ素子としても利用でき、これらを組み合わせることによりICカードやICタグの作製が可能である。更に、本発明の有機半導体デバイスは化学物質等の外部刺激によりその特性に変化を起こすことができるので、FETセンサーとしての利用も期待できる。
【実施例】
【0074】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものでは無い。電界効果トランジスタの構造は原子間力顕微鏡(以下、AFMと略記)装置名Seiko Instruments SPI3700、透過型電子顕微鏡(以下、TEMと略記)装置名Hitachi H−7100、XRD(X線回折)装置名Rigaku RINT2000により確認し、半導体特性の評価は半導体パラメータアナライザKeithly 4200により測定した。
【0075】
実施例1
1.1 鋳型の作製
テンプレートの作製には、市販のポリカーボネート製のCD―Rを鋳型として用いた。下からポリカーボネート製の樹脂層、有機色素薄膜の記録層、金属製の反射層、ラベル面のある保護層で構成されている。この中でも樹脂層を鋳型として用いた。樹脂層を鋳型とするため、反射層と樹脂層は(ピンセットやセロテープ(登録商標)を使用して)除去した。樹脂層に残存する記録層を完全に除去する目的でエタノール洗浄した。
【0076】
1.2 テンプレートの作製
上記のポリカーボネートモールドを用いてポリジメチルシロキサン(PDMS)からなるテンプレートを作成した。まず、PDMS(ベース)と硬化剤を重量比10:1の割合で混合した。このゲル状PDMSをCD―Rで作製した鋳型に流し込んだ。80℃で2時間熱硬化させた後、固体となったPDMSを剥離した。
【0077】
1.3 エポキシモールドの作製
まず液体エポキシ樹脂の調製を行った。エポキシ樹脂は応研商事(株)製Oken Epok 812セットを用いた。液体エポキシの調製はEpok812とドデセニルコハク酸無水物(DDSA)とメチルナディック酸無水物(MNA)を体積比23:15:12で混合し、重合開始剤であるトリ−ジメチルアミノメチルフェノール(日新EM株式会社製、商品名:DMP30)を全量の1.5%加えて撹拌した。その後1時間真空中で脱気して液体エポキシ樹脂をPDMSテンプレート上に流し込み、60℃で6時間熱硬化させて固体エポキシモールドを剥離し、
図5のAFM像に示す形状のスタンプ(モールド)を得た。
【0078】
1.4 C8BTBT(具体例の化合物(2))一軸配向膜の作製
C8BTBTクロロベンゼン溶液(1wt%)を調製した。基板(Siまたはガラス)は洗剤、イオン交換水及びアセトンを用いて超音波洗浄を15分ずつ行った。大気下で周期的な1.6μm溝構造(すなわち凹部を有する構造)を有するエポキシモールドを基板上に乗せ、80℃〜90℃で2分間加熱することでモールドと基板を密着させた。室温で穴部にC8BTBT溶液を置き、毛細管力により、基板と凹部から構成される空隙中にC8BTBT溶液を導入した。溶媒が蒸発した後、モールドを除去し、C8BTBTの薄膜を作製した。
【0079】
2.C8BTBT一軸配向膜の構造評価
2.1 C8BTBT一軸配向膜のAFM観察
断面プロファイルによりライン状膜の高さは160nm程度であり、モールドの溝高さ220nmより60nmの減少が観察され、これは溶媒乾燥とともに蒸発した溶媒の量に相当すると考えられる。膜のピッチ幅は約1.6μm、ライン状膜の幅は1μm程度であり、モールドの溝幅と一致した(
図4参照)。
【0080】
2.2 C8BTBT一軸配向膜のTEM観察、XRD測定
TEM像にはモールドの周期に対応したC8BTBTのライン形状が確認された。HRED像は面間隔0.746nm
−1及び0.589nm
−1に相当する回折斑点によるネットパターンを形成し、c軸投影の回折像と一致していた。HREDは直径約150μmの領域からの回折であることから、ラインを形成するC8BTBTは単結晶様に結晶化し、同じ配向を取ることが分かった。C8BTBT結晶のb*軸はモールドの溝方向に対して平行であった(
図4参照)。なお、XRDでも観察した。XRD、HRED像よりC8BTBTのライン形状は単結晶で同一配向にあり、基板に対して側鎖で接地し垂直配向ある事が分かった。
【0081】
3.トランジスタ特性評価
3.1 基板洗浄
基板にはシリコン(酸化膜300nm)を用い、過酸化水素と硫酸を1:4の割合で混合した過硫酸溶液に浸漬し約100℃で20分加熱した後、イオン交換水及びイソプロパノールを用いてそれぞれ5分3回、3分1回で超音波洗浄を行った。その後、イソプロパノールをおよそ半分入れたビーカーに基板を入れ、120℃前後で沸騰させて約10分放置し、12分間UVオゾン洗浄を行った。
【0082】
3.2 C8BTBT配向膜の作製
基板上に1.4の方法でC8BTBT薄膜を作製し、長軸方向にソース−ドレイン電極を80nm蒸着することでトップコンタクトボトムゲート型OFETを作製し、長軸方向の電界効果移動度を測定した。
【0083】
3.3 移動度の評価
ゲート電極に正または負のバイアスをかけたとき、FETはdepletion modeまたはaccumulation modeで作動する。C8BTBTはゲート電圧(VG)を負にした時に正孔注入により電流が流れるp型有機半導体特有の性質を示した。C8BTBT配向膜の長軸方向のI
DS−V
DS特性及びI
DS−V
G特性及びC8BTBTスピンコート膜のI
DS−V
DS特性及びI
DS−V
G特性からそれぞれの移動度を算出した。算出には一般的に用いられている(1)式を用いた。
(数1)
(μ:正孔移動度[cm2/Vs]、L:チャンネル長、W:チャンネル幅、Cox:SiO2のキャ パシタンス(6.91×10
―9F/cm
2)、Vt: 閾値電圧)
なお、C8BTBT配向膜のチャネル長及びチャネル幅は、顕微鏡観察により正確に見積もった。C8BTBT配向膜を用いたFETの移動度は2.10cm
2/Vs、閾値電圧は−6.45V、ON/OFF比は4.05×10
6であった。
【0084】
比較例1
実施例1、1.4で調整したC8BTBT溶液を用いて一般的な塗布法と知られるスピンコート法(3000rpmで60秒間、回転塗布)によって得られる有機薄膜を作成し、実施例1、3と同様の手法によりOFETの移動度を評価した。算出された正孔移動度は2.21×10
―2cm
2/Vs、閾値電圧は―12.1V、ON/OFF比は5.09×10
3であった。実施例1で作製したC8BTBT配向膜の移動度はスピンコート膜よりも約100倍高い値を示した(
図6参照)。
【0085】
実施例2
4.TIPS-ペンタセン(化合物(10))配向膜の作製
実施例1と同じ操作で、TIPS-ペンタセントルエン溶液(0.5wt%)を調製した。基板(Siまたはガラス)は洗剤、イオン交換水及びアセトンを用いて超音波洗浄を15分ずつ行った。大気下で周期的な溝構造を有する1.6μm−エポキシモールドを基板上に乗せ、80℃〜90℃で2分間加熱することでモールドと基板を密着させた。室温でモールドの外側にTIPS−ペンタセン溶液をキャストし、毛細管力により、基板と凹部から構成される空隙中に溶TIPS−ペンタセン液を導入した。溶媒が完全に蒸発した後(10〜15分後)、モールドを除去し、TIPS-ペンタセン配向膜を形成した。
【化11】
【0086】
5.TIPS-ペンタセン配向膜の構造評価
5.1 TIPS-ペンタセン配向膜のAFM観察
断面プロファイルによりライン状膜の高さは200nm程度であり、モールドの溝高さ220nmより20nmの減少が観察され、これは溶媒乾燥とともに蒸発した溶媒の量に相当すると考えられる。膜のピッチ幅は約1.6μm、ライン状膜の幅は1μm程度であり、モールドの溝幅と一致した。
【0087】
5.2 TIPS-ペンタセン配向膜のXRD結果
XRDパターンには面間隔1.640nm、0.824nm、0.548nm及び0.329nmに相当するピークが認められ、TIPS−ペンタセン結晶の(001)、(002)、(003)及び(005)面に帰属された。
【0088】
5.3 TIPS-ペンタセン配向膜のTEM観察
TEM像にはモールドの周期に対応したTIPS-ペンタセンのライン形状が確認された。HRED像は面間隔0.76nm−1及び0.74nm−1に相当する回折斑点によるネットパターンを形成し、c軸投影の回折像と一致していた(
図5のa)。HREDは直径約150μmの領域からの回折であることから、ラインを形成するTIPS-ペンタセンは単結晶様に結晶化し、b*軸はモールドの溝方向に対して垂直に配向していた。しかし、場所によってはb*軸を共通(モールドに対して垂直)とした双晶が観察された(
図5のb)。
【0089】
以上より、本発明の有機半導体薄膜の製造方法は、半導体層を作製する際に真空蒸着法や結晶成長のための煩雑、精緻なコントロールをせずともチャネルに高い半導体特性を示す単一ドメインの単結晶性有機半導体薄膜を形成できる事が分かった。