(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一般式(4)で表されるアダマンタン化合物に対して、一般式(5)で表される(メタ)アクリル酸グリシジル化合物を0.50〜0.99当量の範囲で反応させることを特徴とする請求項2に記載の混合物の製造方法。
一般式(1)の脂環式エステル化合物を40〜80%、一般式(2)の脂環式エステル化合物を10〜30%、および一般式(3)の脂環式エステル化合物を10〜30%含むことを特徴とする請求項1に記載の混合物。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスについては、記憶デバイスであるフラッシュメモリーの大容量化や携帯電話やスマートフォンの高解像度カメラ向けイメージセンサー等の市場の広がりにより、更なる微細化への強い要望がある。その各種電子デバイス製造において、フォトリソグラフィ法が広く利用されている。フォトリソグラフィは、光源を短波長化させることにより、微細化を推進してきた。光源としてKrFエキシマレーザー以降の短波長光源を使用する際には、一般的に化学増幅型レジストが使用され、その組成は、一般に主剤の機能性樹脂および光酸発生剤、さらには数種の添加剤を含む溶液である。その中で主剤である機能性樹脂は、エッチング耐性、基盤密着性、使用する光源に対する透明性、現像速度などの特性の各特性をバランス良く備えていることが重要であり、レジスト性能を決定付ける。
【0003】
KrFエキシマレーザー用フォトレジストで使用される機能性樹脂は、一般的にビニル化合物やアクリレートなどを繰り返し単位とする高分子である。例えば、KrFエキシマレーザーリソグラフィ用レジストではヒドロキシスチレン系樹脂が(特許文献1)、ArFエキシマレーザーリソグラフィ用レジストでは、アダマンチル(メタ)アクリレートを基本骨格とするアクリル系樹脂が提案されており(特許文献2〜6)、その基本骨格は定まりつつある。しかし、単一の繰り返し単位で使用されることはない。理由として、単一の繰り返し単位ではエッチング耐性などの特性をすべて満たすことはできないからである。実際には、各特性を向上させるための官能基を有する繰り返し単位を複数、すなわち2種類以上用いて共重合体にして機能性樹脂にして、さらにその機能性樹脂に光酸発生剤などを添加して溶剤に溶解させて感光性樹脂組成物として使用している。
【0004】
近年のリソグラフィプロセスはさらに微細化を進めており、ArFエキシマレーザーリソグラフィは、液浸露光、さらにはダブルパターニング露光へと進歩し続け、また次世代リソグラフィー技術として注目されている極端紫外光(EUV)を利用したリソグラフィーや、電子線での直接描画についても様々な開発が続けられている。
【0005】
微細化のための開発は継続されているが、その中で、樹脂組成物中に含有する、アルコール性ヒドロキシル基の含有量が感度や解像度を向上させる傾向があることが示されている(非特許文献1参照)。アルコール性ヒドロキシル基を有したモノマーを含む樹脂の例としては、例えば、3,5−ジヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)アクリレートを含む樹脂も提案されている(特許文献7参照)。また、繰り返し単位に連結基を導入した(メタ) アクリル酸エステル誘導体を導入した樹脂と酸発生剤とを含有する化学増幅型ポジ型レジスト組成物が、解像度などの各種のレジスト性能が良好であるとともに、ラインエッジラフネスが良好になるとの報告もある(特許文献8)。
【0006】
しかし、20nmやそれ以上の微細化に対応するには更なる性能の向上が不可欠で、レジストに対し更なる高感度化、高解像度化が望まれている。また、単純に感度を向上させただけでは、解像度の低下やラインエッジラフネスが悪化するなどの新たな問題が発生するため、酸拡散をコントロールする樹脂や、様々な光酸発生剤との組み合わせも検討され、更なる改良が進められている。
【0007】
また、グリセリンカルボン酸ジエステルの製造方法が知られているものの(特許文献9)、この文献においては、感光性樹脂組成物として用いられ得る特定の構造の脂環式エステル化合物およびその製造方法は開示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これらの事情から、感光性樹脂組成物としての基本特性に悪影響を与えることなく、感度や解像度、ラインエッジラフネスの向上を達成しうる優れた感光性樹脂組成物の開発が強く求められている。
【0011】
本発明の目的は、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、F2エキシマレーザーX線、電子ビーム、EUVに感応する化学増幅型レジストとして、パターン形状、ドライエッチング耐性、耐熱性等のレジストとしての基本物性を損なわずに、感度や解像度、ラインエッジラフネス(LER)を向上させるバランスの良いレジストを作製し、今後も益々進展する半導体基板回路の微細化に対応できる化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の各課題を解決する目的で鋭意検討した結果、一般式(1)〜(3)で表される脂環式エステル化合物の混合物、およびそれを繰り返し単位に含む感光性樹脂組成物が、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、F2エキシマレーザー、X線、電子ビームあるいはEUV(極端紫外光)で実施されるリソグラフィー操作において、感度が良好であるとともに、解像度やラインエッジラフネスなどの各種のレジスト性能を向上させ、半導体基板回路の微細化に対する上記各課題の解決が期待される有用な化合物であることを化合物であることを見出し、本発明に到達した。また、本発明は、上述の脂環式エステル化合物の混合物の製造方法を含み、この製造方法によれば、上述の脂環式エステル化合物を高い収率で効率的に製造することができる。
【0013】
すなわち本発明は、一般式(1)〜(3)で表される脂環式エステル化合物の混合物、およびその製造方法、一般式(1)〜(3)で表される脂環式エステル化合物を含む(メタ)アクリル共重合体とその感光性樹脂組成物に関する。
【0014】
より具体的には、本発明は以下の通りである。
(I)下記一般式(1)で表わされる脂環式エステル化合物と、下記一般式(2)で表わされる脂環式エステル化合物と、下記一般式(3)で表わされる脂環式エステル化合物とを含む混合物である。
【化1】
【化2】
【化3】
(式中、R
1は、水素原子、またはメチル基を表し、R
2とR
3は、同一又は異なっていても良く、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭素数1〜10の環状または直鎖、分岐状のアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、アリールオキシ基、炭素数2〜6のアシルオキシ基、またはハロゲン基を示す。)
【0015】
(II)上記(I)記載の脂環式エステル化合物の混合物の製造方法であって、一般式(4)で表されるアダマンタン化合物と一般式(5)で表される(メタ)アクリル酸グリシジル化合物とを反応させることを特徴とする、上記(I)記載の混合物の製造方法である。
【化4】
(式中、R
2とR
3は、一般式(1)〜(3)と同じである)
【化5】
(式中、R
1は、水素原子、またはメチル基を表す)
【0016】
(III)一般式(4)で表されるアダマンタン化合物に対して、一般式(5)で表される(メタ)アクリル酸グリシジル化合物を0.50〜0.99当量の範囲で反応させることを特徴とする上記(II)に記載の混合物の製造方法である。
【0017】
(IV)下記一般式(6)〜(8)の少なくとも一種類を繰り返し単位に含む(メタ)アクリル共重合体である。
【化6】
【化7】
【化8】
(式中、R
1とR
2とR
3は、一般式(1)〜(3)と同じである)
【0018】
(V)上記一般式(6)〜(8)から選ばれる少なくとも一種類、下記一般式(9)〜(10)から選ばれる少なくとも一種類、および一般式(11)〜(12)から選ばれる少なくとも一種類を繰り返し単位に含むことを特徴とする上記(IV)に記載の(メタ)アクリル共重合体である。
【化9】
(式中、R
4は水素またはメチル基を示し、R
5は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R
6は炭素数5〜20の直鎖または分岐状のアルキレン基または脂環式アルキレン基を示す。)
【化10】
(式中、R
7は水素またはメチル基を示し、R
8〜R
9は、同一または異なっていてもよく、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基を示し、R
10は炭素数5〜20のシクロアルキル基または脂環式アルキル基を示す。)
【化11】
(式中、R
11は水素またはメチル基を示し、Zはメチレン(−CH
2−)またはオキサ(−O−)を示し、Xは同一または異なって、水酸基、ハロゲン基、ニトリル基、カルボン酸基、炭素数1〜4のカルボン酸アルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシド基を示し、n2は0〜2の整数を示す。)
【化12】
(式中、R
12は水素またはメチル基を示し、n3は1〜3の整数を示し、Lはメチル基、エチル基、水酸基、またはハロゲン基を示し、n4は0〜2を示す。)
【0019】
(VI)上記(IV)または(V)に記載の(メタ)アクリル共重合体と光酸発生剤を含む感光性樹脂組成物である。
(VII)一般式(1)の脂環式エステル化合物を40〜80%、一般式(2)の脂環式エステル化合物を10〜30%、および一般式(3)の脂環式エステル化合物を10〜30%含むことを特徴とする上記(I)に記載の混合物である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の脂環式エステル化合物は、耐熱性、表面硬度、耐薬品性、親油性を利用した各種機能性ポリマー等の各種樹脂組成物の原料として好適であり、特に、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、F2エキシマレーザー、X線、電子ビーム、EUV(極端紫外光)用化学増幅型レジストの共重合体の成分として使用した時に、解像度やラインエッジラフネスを向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明につき更に詳細に説明する。本発明の脂環式エステル化合物は、下記一般式(1)〜(3)で示されるものである。
【0025】
(式中、R
1は、水素原子、またはメチル基を表し、R
2とR
3は、同一又は異なっていても良く、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭素数1〜10の環状乃至は直鎖、分岐状のアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、アリールオキシ基、炭素数2〜6のアシルオキシ基、またはハロゲン基を示す。)
【0026】
本発明の一般式(1)〜(3)で表される脂環式エステル化合物は、一般式(4)で表されるアダマンタン化合物と、一般式(5)で表される(メタ)アクリル酸グリシジル化合物とを、アミンまたはその塩触媒存在下、反応させることにより得られる。本発明の一般式(1)〜(3)で表される脂環式エステル化合物は互いに互変異性の関係にあり、通常、一般式(1)〜(3)で表される脂環式エステル化合物の混合物の状態で得られる。
【0028】
(式中、R
2とR
3は、一般式(1)〜(3)と同じである)
【0030】
(式中、R
1は、水素原子、またはメチル基を表す)
【0031】
本発明の上記一般式(1)で表される脂環式エステル化合物として、具体的には、下記の化学式で示される、3−ヒドロキシ−1−アダマンタンカルボン酸2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル、3−ヒドロキシ−5,7−ジメチル−1−アダマンタンカルボン酸2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル、3−ヒドロキシ−5−エチル−1−アダマンタンカルボン酸2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル、3,5−ジヒドロキシ−1−アダマンタンカルボン酸2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル等があげられる。
【化18】
【0032】
本発明の上記一般式(2)で表される脂環式エステル化合物として、具体的には、下記の化学式で示される、3−ヒドロキシ−1−アダマンタンカルボン酸1−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロパン−2−イル、3−ヒドロキシ−5,7−ジメチル−1−アダマンタンカルボン酸1−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロパン−2−イル、3−ヒドロキシ−5−エチル−1−アダマンタンカルボン酸1−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロパン−2−イル、3,5−ジヒドロキシ−1−アダマンタンカルボン酸1−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロパン−2−イル等があげられる。
【化19】
【0033】
また、本発明の上記一般式(3)で表される脂環式エステル化合物として、具体的には、下記の化学式で示される、3−ヒドロキシ−1−アダマンタンカルボン酸3−ヒドロキシ−2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル、3−ヒドロキシ−5,7−ジメチル−1−アダマンタンカルボン酸3−ヒドロキシ−2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル、3−ヒドロキシ−5−エチル−1−アダマンタンカルボン酸3−ヒドロキシ−2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル、3,5−ジヒドロキシ−1−アダマンタンカルボン酸3−ヒドロキシ−2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル等があげられる。
【化20】
【0034】
本発明の脂環式エステル化合物の混合物においては、一般式(1)の脂環式エステル化合物を40〜80%、一般式(2)の脂環式エステル化合物を10〜30%、および一般式(3)の脂環式エステル化合物を10〜30%含むことが好ましい。より好ましくは、本発明の脂環式エステル化合物の混合物は、一般式(1)の脂環式エステル化合物を50〜75%、一般式(2)の脂環式エステル化合物を15〜25%、および一般式(3)の脂環式エステル化合物を15〜25%含む。
【0035】
本発明で用いることができる一般式(4)で表わされるアダマンタン化合物として、具体的には、3−ヒドロキシ−1−アダマンタンカルボン酸、5−メチル−3−ヒドロキシ−1−アダマンタンカルボン酸、5,7−ジメチル−3−ヒドロキシ−1−アダマンタンカルボン酸、3,5−ジヒドロキシ−1−アダマンタンカルボン酸、5−エチル−3−ヒドロキシ−1−アダマンタンカルボン酸、3,5,7−トリヒドロキシ−1−アダマンタンカルボン酸が挙げられる。
【0036】
本発明に用いられる一般式(5)で表される(メタ)アクリル酸グリシジル化合物の具体例として、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルが挙げられる。添加する量は、一般式(4)で表されるアダマンタン化合物に対して、1当量未満が望ましい。1当量以上だと、反応中や精製中にエステル交換が生起し、(メタ)アクリル基を二つ有するジ(メタ)アクリル体が副生成する。ジ(メタ)アクリル体を多く含むモノマーでポリマーを作成するとレジストの性能が悪化する。添加する量は、アダマンタン化合物に対して0.50〜0.99当量、好ましくは0.80〜0.95当量の範囲である。これ以下だと、一般式(4)で表されるアダマンタン化合物が多量に未反応のまま残り、経済的に好ましくない。
【0037】
一般式(4)で表されるアダマンタン化合物と、一般式(5)で表される(メタ)アクリル酸グリシジル化合物との反応の際に用いるオニウム塩、アミンもしくはその塩触媒は、一般的な四級アンモニウム塩や低求核性のアミンを用いることができ、具体例としてテトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムアイオダイド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムアイオダイド、テトラプロピルアンモニウムクロリド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリブチルアンモニウムブロミド、フェニルトリメチルアンモニウムクロリド、2−クロロ−1−メチルピリジニウムヨージド、1−ブチルピリジニウムクロリド、メチルビオロゲンクロリド、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、2,6−ルチジンが挙げられる。特に反応性に違いはないが、十分な量が溶媒に溶解しないと反応が進行しないことから、使用する溶媒に溶解するアミンもしくはその塩を選択する。これらのアミンもしくはその塩は、単独でも、2種以上を混合しても、使用できる。添加するアミンもしくはその塩の量はアダマンタン化合物に対して0.001〜10当量、好ましくは0.01〜1当量、さらに好ましくは0.05〜0.5当量の範囲で使用する。これより0.001当量以上であれば、十分な速さで反応が終了し、10当量以上だとアミンもしくはその塩の分離精製が困難になる。
【0038】
本発明で、一般式(4)で表されるアダマンタン化合物と、一般式(5)で表される(メタ)アクリル酸グリシジル化合物との反応の際に用いられる溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、クロロベンベゼン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが挙げられる。その中でも、ジメチルスルホキシドは一般式(4)で表されるアダマンタン化合物を十分に溶解させ、沸点が高く、反応温度を上げられるため望ましい。これらの溶媒は単独でも2種以上の溶媒を混合した系でも使用できる。溶媒量は、一般式(4)で表されるアダマンタン化合物1質量部に対して、1〜100質量部好ましくは3〜10質量部の割合で使用するが、一般式(4)で表されるアダマンタン化合物が完全に溶解することが望ましい。完全に溶解しないと、副反応が生起しやすくなる。また本反応は反応性が低いことから、なるべく高濃度で反応することが望ましく、一般式(4)で表されるアダマンタンカルボン酸化合物と、一般式(5)で表される(メタ)アクリル酸グリシジル化合物、アミンもしくはその塩が溶解混合する場合は、無溶媒でも製造できる。
【0039】
上記の具体的な反応条件に関しては、基質濃度や用いる触媒によって適当な条件を設定すべきであるが、一般的に反応温度20℃から150℃、好ましくは50℃から120℃、反応時間1時間から10時間、好ましくは2時間から8時間、圧力は常圧、減圧又は加圧下で行なうことができる。また、反応は、回分式、半回分式、連続式などの公知の方法を適宜選択して行なうことができる。
【0040】
また、上記反応には重合禁止剤を添加しても良い。重合禁止剤としては特に制限はなく、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシル、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩、N−ニトロソ−N−(1−ナフチル)ヒドロキシルアミンアンモニウム塩、N−ニトロソジフェニルアミン、N−ニトロソ−N−メチルアニリン、ニトロソナフトール、p−ニトロソフェノール、N,N’−ジメチル−p−ニトロソアニリンなどのニトロソ化合物、フェノチアジン、メチレンブルー、2−メルカプトベンゾイミダゾールなどの含硫黄化合物、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、4−ヒドロキシジフェニルアミン、アミノフェノールなどのアミン類、ヒドロキシキノリン、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、p−ベンゾキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテルなどのキノン類、p−メトキシフェノール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、カテコール、3−s−ブチルカテコール、2,2−メチレンビス−(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)などのフェノール類、N−ヒドロキシフタルイミドなどのイミド類、シクロヘキサンオキシム、p−キノンジオキシムなどのオキシム類、ジアルキルチオジプロピネートなどが挙げられる。添加量としては、上記(メタ)アクリル酸グリシジル化合物100重量部に対して、0.001〜10重量部、好ましくは0.01〜1重量部である。
【0041】
以上の記載に基づき得られた一般式(1)〜(3)で表される脂環式エステル化合物は、それぞれの異性体を単離して使用も良いものの、単離後には異性化反応により混合物となり得ることから、単離することなく混合物の状態のまま、例えばレジストポリマーの重合に使用しても良い。但し、一般的には、レジストモノマーとして金属不純物の低減化などが求められるため、公知の精製方法である濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィー、活性炭等による分離精製方法や、これらの組合せによる方法で所望の高純度モノマーとして単離精製するここが望ましい。具体的には、反応液を水洗処理することにより、過剰の(メタ)アクリル酸誘導体、酸や塩基などの添加物が除去される。このとき、洗浄水中に塩化ナトリウムや炭酸水素ナトリウム等、適当な無機塩が含まれていてもよい。また、未反応の(メタ)アクリル酸誘導体類をアルカリ洗浄により除去する。アルカリ洗浄には、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、アンモニア水などを用いることができるが、用いるアルカリ成分に特に制限はない。更に、金属不純物を除去するために、酸洗浄しても良い。酸洗浄には、塩酸水溶液、硫酸水溶液、リン酸水溶液などの無機酸およびシュウ酸水溶液などの有機酸が用いられる。洗浄に際し、反応液に有機溶媒等を添加しても良く、添加する有機溶媒は、反応に使用したものと同一のものを使用することもできるし、異なったものを使用することもできるが、通常、水との分離性がよい極性の小さい溶媒を用いることが好ましい。
【0042】
本発明の一般式(1)〜(3)で表される脂環式エステル化合物を共重合することにより得られる(メタ)アクリル共重合体は、フォトレジストで使用される機能性樹脂に使用できる。一般式(1)〜(3)で表される脂環式エステル化合物を共重合させて(メタ)アクリル共重合体を得る際に、それぞれ単独で用いても良いし、また混合物として使用しても良い。
【0043】
本発明の(メタ)アクリル共重合体は、一般式(6)〜(8)から選ばれる少なくとも一種類、一般式(9)〜(10)から選ばれる少なくとも一種類、および一般式(11)〜(12)から選ばれる少なくとも一種類を繰り返し単位を含むことが好ましい。なお、一般式(6)〜(8)の繰り返し単位はそれぞれ、一般式(1)〜(3)で表される脂環式エステル化合物を原料(モノマー)として重合させることにより、得ることができる。
【0047】
(式中、R
1とR
2とR
3は、一般式(1)〜(3)と同じである)
【0049】
(式中、R
4は水素またはメチル基を示し、R
5は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R
6は炭素数5〜20の直鎖または分岐状のアルキレン基または脂環式アルキレン基を示す。)
【0051】
(式中、R
7は水素またはメチル基を示し、R
8〜R
9は同一または異なっていてもよく、炭素数1〜4のアルキル基を示し、R
10は炭素数5〜20のシクロアルキル基または脂環式アルキル基を示す。)
【0053】
(式中、R
11は水素またはメチル基を示し、Zはメチレン(−CH
2−)またはオキサ(−O−)を示し、Xは同一または異なって、水酸基、ハロゲン基、ニトリル基、カルボン酸基、炭素数1〜4のカルボン酸アルキル基、または炭素数1〜4のアルコキシド基を示し、n2は0〜2を示す。)
【0055】
(式中、R
12は水素またはメチル基を示し、n3は1〜3を示し、Lはメチル基、エチル基、水酸基、またはハロゲン基を示し、n4は0〜2を示す。)
【0056】
一般式(9)で表される繰り返し単位の原料としては、2−メチル−2−(メタ)アクリルロイルオキシアダマンタン、2−エチル−2−(メタ)アクリルロイルオキシアダマンタン、2−イソプロピル−2−(メタ)アクリルロイルオキシアダマンタン、2−n−プロピル−2−(メタ)アクリルロイルオキシアダマンタン、2−n−ブチル−2−(メタ)アクリルロイルオキシアダマンタン、1−メチル−1−(メタ)アクリルロイルオキシシクロペンタン、1−エチル−1−(メタ)アクリルロイルオキシシクロペンタン、1−メチル−1−(メタ)アクリルロイルオキシシクロヘキサン、1−エチル−1−(メタ)アクリルロイルオキシシクロヘキサン、1−メチル−1−(メタ)アクリルロイルオキシシクロヘプタン、1−エチル−1−(メタ)アクリルロイルオキシシクロヘプタン、1−メチル−1−(メタ)アクリルロイルオキシシクロオクタン、1−エチル−1−(メタ)アクリルロイルオキシシクロオクタン、2−エチル−2−(メタ)アクリルロイルオキシデカヒドロ−1,4:5,8−ジメタノナフタレン、2−エチル−2−(メタ)アクリルロイルオキシノルボルナンなどが挙げられる。
【0057】
一般式(10)で表される繰り返し単位の原料としては、2−シクロヘキシル−2−(メタ)アクリルロイルオキシプロパン、2−(4−メチルシクロヘキシル)−2−(メタ)アクリルロイルオキシプロパン、2−アダマンチル−2−(メタ)アクリルロイルオキシプロパン、2−(3−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)アダマンチル)−2−(メタ)アクリルロイルオキシプロパンなどが挙げられる。
【0058】
一般式(11)で表される繰り返し単位の原料としては、2−(メタ)アクリルロイルオキシ−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.0
3,7]ノナン、7または8−(メタ)アクリルロイルオキシ−3−オキソ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン、9−(メタ)アクリルロイルオキシ−3−オキソ−2−オキサ−6−オキサ−トリシクロ[4.2.1.0
4,8]ノナン、2−(メタ)アクリルロイルオキシ−5−オキソ−4−オキサ−8−オキサトリシクロ[4.2.1.0
3,7]ノナン、2−(メタ)アクリルロイルオキシ−9−メトキシカルボニル−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.0
3,7]ノナン、2−(メタ)アクリルロイルオキシ−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.0
3,7]ノナン−6−カルボニトリルなどが挙げられる。
【0059】
一般式(12)で表される繰り返し単位の原料としては、α−(メタ)アクリルロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、β−(メタ)アクリルロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、(メタ)アクリルロイルオキシパントラクトンなどが挙げられる。
【0060】
一般式(9)および(10)で表される繰り返し単位は、酸で解離する機能を有している。これらはおよそ同程度の性能であり、少なくとも一種類含むことにより、露光時に光酸発生剤から生起した酸と反応してカルボン酸基が生起して、アルカリ可用性へと変換することができる。
【0061】
また、一般式(11)および(12)で表される繰り返し単位は、ラクトン基を有しており、これらはおよそ同程度の機能を有しており、その機能とは少なくとも一種類含むことにより、溶剤溶解性や基板密着性、アルカリ現像液への親和性を向上させることができ、フォトリソグラフィに使用することができる。
【0062】
一般式(6)〜(8)、および一般式(9)〜(10)、および一般式(11)〜(12)で表される繰り返し単位からなる(メタ)アクリル共重合体の共重合比は、一般式(6)〜(8)の繰り返し単位は1重量%〜60重量%、好ましくは3重量%〜50重量%、さらに好ましくは5重量%〜40重量%を繰り返し単位に含み、一般式(9)〜(10)の化合物は少なくとも1種類を、10重量%〜80重量%、好ましくは15重量%〜60重量%、さらに好ましくは20重量%〜50重量%を繰り返し単位に含み、一般式(11)〜(12)の化合物は少なくとも1種類を、10重量%〜80重量%、好ましくは15重量%〜60重量%、さらに15重量%〜50重量%含むことが好ましい。
ここで、一般式(6)〜(8)、および一般式(9)〜(10)、および一般式(11)〜(12)の共重合比の合計は100重量%とする。そして、本発明の(メタ)アクリル共重合体には、一般式(6)〜(12)の繰り返し単位の他に、共重合比で20重量%以下で他の繰り返し単位をさらに含んでも構わないが、10重量%以下がより好ましい。
【0063】
重合においては、一般的には、繰り返し単位となるモノマーを溶媒に溶かし、触媒を添加して加熱あるいは冷却しながら反応を実施する。重合反応の条件は、開始剤の種類、熱や光などの開始方法、温度、圧力、濃度、溶媒、添加剤などにより任意に設定することができ、本発明の(メタ)アクリル共重合体の重合においては、アゾイソブチロニトリルや過酸化物などのラジカル発生剤を使用したラジカル重合や、アルキルリチウムやGrignard試薬などの触媒を利用したイオン重合など公知の方法で実施することができる。
【0064】
本発明の(メタ)アクリル共重合体の重合反応にて用いる溶媒としては、2−ブタノン、2−ヘプタノン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナン等のアルカン類、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のカルボン酸エステル類が例示され、これらの溶媒は単独又は2種類以上混合して使用することができる。
【0065】
本発明の(メタ)アクリル共重合体、例えば、上述の一般式(6)〜(12)のいずれかの繰り返し単位を含む(メタ)アクリル共重合体は、ランダム共重合、ブロック共重合、あるいはグラフト共重合であっても良いが、ランダム共重合が好ましい。
【0066】
本発明で得られる(メタ)アクリル共重合体は、公知の方法により精製を行うことができる。具体的には金属不純物の除去に関し、限外濾過、精密濾過、酸洗浄、電気伝導度が10mS/m以下の水洗浄、抽出を組み合わせて行うことができる。酸洗浄を行う場合、加える酸としては、水溶性の酸であるギ酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸等の無機酸が挙げられるが、反応液との分離性を考えた場合、無機酸を用いるのが好ましい。また、オリゴマー類の除去には、限外濾過、精密濾過、晶析、再結晶、抽出、電気伝導度が10mS/m以下の水洗浄などを組み合わせて実施することができる。
【0067】
本発明の(メタ)アクリル共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「Mw」という。)は、好ましくは1,000〜500,000、さらに好ましくは3,000〜100,000である。また、(メタ)アクリル共重合体のMwとGPCで測定したポリスチレン換算数平均分子量(以下、「Mn」という。)との比(Mw/Mn)は、通常、1〜10、好ましくは1〜5である。また、本発明において、(メタ)アクリル共重合体は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0068】
本発明の感光性樹脂組成物は、上記の(メタ)アクリル系重合体と光酸発生剤とを溶剤に溶解させて使用しても良い。通常使用される溶剤としては、例えば、2−ペンタノン、2−ヘキサノン等の直鎖状ケトン類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等の環状ケトン類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルアセテート類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のジエチレングリコールアルキルエーテル類、酢酸エチル、乳酸エチル等のエステル類、シクロヘキサノール、1−オクタノール等のアルコール類、炭酸エチレン、γ−ブチロラクトン等を挙げることができる。これらの溶剤は、単独あるいは2種以上を混合して使用することができる。
【0069】
光酸発生剤は、露光光波長に応じて、化学増幅型レジスト組成物の酸発生剤として使用可能なものの中から、レジスト塗膜の厚さ範囲、それ自体の光吸収係数を考慮した上で、適宜選択することができる。光酸発生剤は、単独あるいは2種以上を組合せて使用することができる。酸発生剤使用量は、(メタ)アクリル共重合体100重量部当り、好ましくは0.1〜20重量部、さらに好ましくは0.5〜15重量部である。
【0070】
遠紫外線領域において、利用可能な光酸発生剤としては、例えば、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、キノンジアジド化合物およびジアゾメタン化合物等が挙げられる。中でも、KrFエキシマレーザーやEUV、電子線に対しては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等のオニウム塩化合物が好適である。具体的には、トリフェニルスルホニウムトリフレート、トリフェニルスルホニウムノナフルオルブチレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムナフタレンスルホネート、(ヒドロキシフェニル)ベンジルメチルスルホニウムトルエンスルホネート、ジフェニルヨードニウムトリフレート、ジフェニルヨードニウムピレンスルホネート、ジフェニルヨードニウムドデシルベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート等を挙げるこができる。
【0071】
本発明の感光性樹脂組成物には、露光により酸発生剤から生じた酸のレジスト被膜中における拡散現象を制御し、非露光領域での好ましくない化学反応を抑制する作用を有する酸拡散制御剤を配合することができる。酸拡散制御剤としては、レジストパターンの形成工程中の露光や加熱処理により塩基性が変化しない含窒素有機化合物が好ましい。このような含窒素有機化合物としては、例えば、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、等のモノアルキルアミン類;ジ−n−ブチルアミン等のジアルキルアミン類;トリエチルアミン等のトリアルキルアミン類;トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリペンタノールアミン、トリヘキサノールアミン、等の置換トリアルコールアミン類、トリメトキシエチルアミン、トリメトキシプロピルアミン、トリメトキシブチルアミン、トリエトキシブチルアミン等のトリアルコキシアルキルアミン類;アニリン、N,N−ジメチルアニリン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、ジフェニルアミン等の芳香族アミン類等;エチレンジアミンなどのアミン化合物、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド化合物、尿素等のウレア化合物、イミダゾール、ベンズイミダゾールなどのイミダゾール類、ピリジン、4−メチルピリジン等のピリジン類のほか、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等を挙げることができる。酸拡散制御剤の配合量は、(メタ)アクリル共重合体100重量部当り、通常、15重量部以下、好ましくは0.001〜10重量部、さらに好ましくは0.005〜5重量部である。
【0072】
さらに、本発明の感光性樹脂組成物でも、必要に応じて、従来の化学増幅型レジスト組成物においても利用されている種々の添加成分、例えば、界面活性剤、クエンチャー、増感剤、ハレーション防止剤、保存安定剤、消泡剤等の各種添加剤を含有させることもできる。
【0073】
本発明の感光性樹脂組成物からレジストパターンを形成する際には、前述のように調製された組成物溶液を、スピンコータ、ディップコータ、ローラコータ等の適宜の塗布手段によって、例えば、シリコンウエハー、金属、プラスチック、ガラス、セラミック等の基板上に塗布することにより、レジスト被膜を形成し、場合により予め50℃〜200℃程度の温度で加熱処理を行ったのち、所定のマスクパターンを介して露光する。塗膜の厚みは、例えば0.01〜5μm、好ましくは0.02〜1μm、より好ましくは0.02〜0.1μm程度である。露光には、種々の波長の光線、例えば、紫外線、X線などが利用でき、例えば、光源としては、F
2 エキシマレーザー(波長157nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)やKrFエキシマレーザー(波長248nm)等の遠紫外線、EUV(波長13nm)、X線、電子線等を適宜選択して使用する。また、露光量等の露光条件は、感光性樹脂組成物の配合組成、各添加剤の種類等に応じて、適宜選定される。
【0074】
本発明においては、高精度の微細パターンを安定して形成するために、露光後に、50〜200℃の温度で30秒以上加熱処理を行うことが好ましい。この場合、温度が50℃未満では、基板の種類による感度のばらつきが広がるおそれがある。その後、アルカリ現像液により、通常、10〜50℃で10〜200秒、好ましくは20〜25℃で15〜1200秒の条件で現像することにより、所定のレジストパターンを形成する。
【0075】
上記アルカリ現像液としては、例えば、アルカリ金属水酸化物、アンモニア水、アルキルアミン類、アルカノールアミン類、複素環式アミン類、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド類、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物を、通常、0.0001〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%、より好ましくは0.1〜3重量%の濃度となるよう溶解したアルカリ性水溶液が使用される。また、上記アルカリ性水溶液からなる現像液には、水溶性有機溶剤や界面活性剤を適宜添加することもできる。
【0076】
本発明の感光性樹脂組成物は、基板に対して優れた密着性を有し、アルカリ可溶性を備えており、微細なパターンを高い精度で形成することができる。
【実施例】
【0077】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何らの制限を受けるものではない。なお、実施例において、新規(メタ)アクリル系化合物の純度及び収率は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、構造は
1Hおよび
13C−NMRにより決定した。ジメタクリル体の確認はガスクロマトグラフィー(GC)およびガスクロマトグラフ質量分析計で行った。HPLCの測定条件は以下のとおりである。
<HPLC測定条件>
カラム:化学物質評価機構L−column ODS L−C18(5μm、4.6φ×250mm)、展開溶媒 :アセトニトリル/水 =40/60(v/v)、流量:1ml/分、カラム温度:40℃、検出器:RI
<GC条件>
カラム:TC−17(0.53mmI.D.×30m)、インジェクション温度:280℃、オーブン温度:70℃(1分保持)→10℃/分で昇温→280℃(10分保持)、検出器:FID、移動相:アルゴン
【0078】
実施例1
<3−ヒドロキシ−1−アダマンタンカルボン酸メタクリロイルオキシヒドロキシプロピルの製造>
撹拌機、温度計、空気吹込み口を備えた1000ml三口丸底フラスコに、3−ヒドロキシ−1−アダマンタンカルボン酸49.08g(0.25mol)、メタクリル酸グリシジル31.98g(0.225mol)、テトラメチルアンモニウムクロリド2.74g(25mmol)、p−メトキシフェノール319.6mg(2.6mmol)、ジメチルスルホキシド250gを仕込み、空気を吹き込みながら、90℃で5時間撹拌した。反応終了後、クロロホルム1000gを加え、有機層を5%塩化ナトリウム水溶液1000g、5%炭酸ナトリウム水溶液1000g、1%硫酸水溶液1000g、5%塩化ナトリウム水溶液1000gで洗浄した。有機層を回収し、シリカゲル25g加え、1時間撹拌し、5Cろ紙でシリカゲルを除去し、クロロホルム1000gで洗浄した。回収したクロロホルム溶液に活性炭(クラレコールGLC10/32)60gを加え、5Cろ紙で活性炭を除去した。溶媒を真空濃縮し、淡黄色粘調液体54.75g(収率64.8%)を得た。Hおよび
13C−NMR、HPLCにより構造を確認したところ、3−ヒドロキシ−1−アダマンタンカルボン酸2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル(式(1)の化合物)と3−ヒドロキシ−1−アダマンタンカルボン酸1−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロパン−2−イル(式(2)の化合物)、3−ヒドロキシ−1−アダマンタンカルボン酸3−ヒドロキシ−2−メタクリロイルオキシプロピル(式(3)の化合物)の混合物であることを確認した。GCでジメタクリル体の生成量を確認したところ、ジメタクリル体/1−ヒドロキシ−3−アダマンタンカルボン酸メタクリロイルオキシヒドロキシプロピルの比は0.002であった。また、NMRスペクトル、HPLCの面積値から式(1)の化合物、式(2)の化合物、式(3)の化合物の比を確認したところ、64:18:18であった。
1H−NMRスペクトル(CDCl
3):δ1.5〜2.1ppm(16H、アダマンタン)、1.9ppm(3H、メタクリロイル基のメチル基)、3.7ppm(0.75H、式(2)および式(3)の構造のグリシジル基−C
H2−OH)、4.0−4.7ppm(3.88H、グリシジル基)、5.1ppm(0.37H、式(2)および式(3)の構造のグリシジル基2位)、5.6ppm(1H、メタクリロイル基二重結合)、6.1ppm(1H、メタクリロイル基二重結合)。
13C−NMRスペクトル(CDCl3):18ppm(メタクリロイル基のメチル基)、24.5〜46.0ppm(アダマンタン)、60.8ppm、61.0ppm、62.3ppm、62.8ppm、65.0ppm、67.7ppm、68.0ppm、72.0ppm、72.6ppm(グリシジル基)、65.4ppm(OH結合アダマンタン)126.3ppm(メタクリロイル基二重結合末端)135.8ppm(メタクリロイル基カルボニルα位)、166.8ppm、167.0ppm、167.3ppm(メタクリロイル基カルボニル)、176.0ppm、176.2ppm、176.4ppm(アダマンタンカルボン酸カルボニル)。
【0079】
参考例
メタクリル酸グリシジルの仕込量を49.75g(0.35mol)に変えた以外は、実施例1と同様に行った。GCでジメタクリル体の生成量を確認したところ、ジメタクリル体/1−ヒドロキシ−3−アダマンタンカルボン酸メタクリロイルオキシヒドロキシプロピルの比は0.072であった。また、NMRスペクトル、HPLCの面積値から式(1)の化合物、式(2)の化合物、式(3)の化合物の比を確認したところ、64:18:18であった。
【0080】
実施例2
<3−ヒドロキシ−1−アダマンタンカルボン酸メタクリロイルオキシヒドロキシプロピル重合物の製造>
実施例1で得られた3−ヒドロキシ−1−アダマンタンカルボン酸2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル(式(1)の化合物)と3−ヒドロキシ−1−アダマンタンカルボン酸1−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロパン−2−イル(式(2)の化合物)、3−ヒドロキシ−1−アダマンタンカルボン酸3−ヒドロキシ−2−メタクリロイルオキシプロピル(式(3)の化合物)の混合物(以下、モノマーM)3.05g、式(9)の原料として2−エチル−2−メタクリロイルオキシアダマンタン(以下、モノマーE)4.47g、式(12)の原料としてα−メタクリルロイルオキシ−γ−ブチロラクトン(以下、モノマーG)3.07g、アゾビスイソブチロニトリル0.37gを、テトラヒドロフラン90mLに溶解させ、窒素雰囲気下、反応温度を60℃に保持して、15時間重合させた(モノマー仕込み比は、M/E/G=20/40/40モル%)。重合後、反応溶液を450mLのn−ヘキサン中に滴下して、生成樹脂を凝固精製させ、生成した白色粉末をろ過して、減圧下40℃で一晩乾燥させメタクリル共重合体Aを7.48g得た。
【0081】
実施例3
メタクリル共重合体A100重量部とトリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート(みどり化学社製TPS−109)10重量部を、共重合体濃度6.3重量%になるように乳酸エチル溶剤で溶解させ、感光性樹脂組成物Cを調製した。シリコンウエハー上に反射防止膜(日産化学社製ARC−29)を塗布した後、このフォトレジスト用樹脂組成物をスピンコーティングにより反射防止膜状に塗布し、厚み100nmの感光層を形成した。ホットプレート上で温度90℃、60秒間プリベークした後、電子線描画装置(エリオニクス社製ELS−7700)にて感光層を80nmハーフピッチのライン・アンド・スペースパターン(ライン10本)で照射した。所定温度で90秒間ポストベーク(PEB)した。次いで、0.3Mのテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液により60秒間現像し、純水でリンスし、ライン・アンド・スペースパターンを得た。
【0082】
比較例1
モノマーMの代わりに、3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレート(以下、モノマーH)を2.12g用いた他は実施例2と同じ操作を行い(モノマー仕込み比は、H/E/G=20/40/40モル%)、メタクリル共重合体Bを6.85g得た。
【0083】
比較例2
メタクリル共重合体B100重量部とトリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート(みどり化学社製TPS−109)10重量部を、共重合体濃度6.3重量%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセタートで溶解させ、共重合体濃度6.3重量%の感光性樹脂組成物Dを調製した以外は、実施例3と同様に行った。
【0084】
得られたライン・アンド・スペースパターンをFE−SEMで観察し、解像度とラインエッジラフネス(LER)を測定した。その結果を表1に示す。実施例3の感光性樹脂組成物Cのほうが、同一PEB温度、同一露光量で比較例2の感光性樹脂組成物Dと比較した場合、LERが良好で、解像度が高くなった。
【0085】
【表1】
【0086】
実施例4
<3−ヒドロキシ−1−アダマンタンカルボン酸メタクリロイルオキシヒドロキシプロピル重合物の製造2>
実施例1で得られた3−ヒドロキシ−1−アダマンタンカルボン酸2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルと3−ヒドロキシ−1−アダマンタンカルボン酸1−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロパン−2−イル、3−ヒドロキシ−1−アダマンタンカルボン酸3−ヒドロキシ−2−メタクリロイルオキシプロピルの混合物(モノマーM)3.05g、式(10)で表わされる原料として2−アダマンチル−2−メタクリルロイルオキシプロパン(以下、モノマーI)4.72g、式(11)で表わされる原料として2−メタクリルロイルオキシ−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.0
3,7]ノナン(以下、モノマーN)4.00g、アゾビスイソブチロニトリル0.37gを、テトラヒドロフラン100mLに溶解させ、窒素雰囲気下、反応温度を60℃に保持して、15時間重合させた(モノマー仕込み比は、M/I/N=20/40/40モル%)。重合後、反応溶液を500mLのn−ヘキサン中に滴下して、樹脂を凝固精製させ、生成した白色粉末をメンブレンフィルターでろ過し、n−ヘキサンの1000mlで洗浄した。白色粉末を回収し、減圧下40℃で一晩乾燥させメタクリル共重合体Eを7.65g得た。
【0087】
実施例5
メタクリル共重合体E100重量部とトリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート(みどり化学社製TPS−109)10重量部を、共重合体濃度6.3重量%になるように乳酸エチル溶剤で溶解させ、感光性樹脂組成物Fを調製した。
【0088】
比較例3
モノマーMの代わりに、3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレート(モノマーH)を2.12g用いた他は実施例4と同じ操作を行い(モノマー仕込み比は、M/I/N=20/40/40モル%)、メタクリル共重合体Gを7.43得た。
【0089】
比較例4
メタクリル共重合体G100重量部とトリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート(みどり化学社製TPS−109)10重量部を、共重合体濃度6.3重量%になるように乳酸エチル溶剤で溶解させ、感光性樹脂組成物Hを調製した。
【0090】
実施例6、7および比較例5、6
<レジストパターン形成>
シリコンウエハー上に反射防止膜(日産化学社製ARC−29)を塗布した後、感光性樹脂組成物C、D、F、Hをスピンコーティングにより塗布し、厚み100nmの感光層をそれぞれ形成した。感光性樹脂組成物C(実施例3にて調製)から形成した感光層を実施例6、感光性樹脂組成物D(比較例2にて調製)から形成した感光層を比較例5、感光性樹脂組成物F(実施例5にて調製)から形成した感光層を実施例7、および感光性樹脂組成物H(比較例4にて調製)から形成した感光層を比較例6として、これらの結果を表2に示す。ホットプレート上で温度90℃、60秒間プリベークした後、電子線描画装置(エリオニクス社製ELS−7700)にて描画を行った。表2に示した温度で90秒間ポストベーク(PEB)を行い、次いで0.3Mのテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液により60秒間現像し、純水でリンスし、ライン・アンド・スペースパターンを得た。作成したライン・アンド・スペースパターンをFE−SEMで観察し、100nmの1:1のライン・アンド・スペースパターンで解像する露光量を最適露光量Eop(μC/cm
2)とし、最適露光量において分離解像している1:1のライン・アンド・スペースパターンの最小寸法を限界解像度とした。さらに50箇所のスペース幅を測定し、その結果から標準偏差(σ)の三倍値(3σ)を求め、LWRとした。その結果を表2に示す。実施例6と比較例5、および、実施例7と比較例6の結果の比較により、本発明のポリマーを含む感光性樹脂組成物の方が、LWRが良好で、限界解像度も小さいことが確認された。
【0091】
【表2】