特許第6274232号(P6274232)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6274232
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】ポリアミド樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/00 20060101AFI20180129BHJP
   C08K 3/40 20060101ALI20180129BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20180129BHJP
   F02M 35/10 20060101ALI20180129BHJP
   F02M 35/104 20060101ALI20180129BHJP
   B29K 77/00 20060101ALN20180129BHJP
【FI】
   C08L77/00
   C08K3/40
   B29C45/00
   F02M35/10 311E
   F02M35/104 N
   B29K77:00
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-31803(P2016-31803)
(22)【出願日】2016年2月23日
(62)【分割の表示】特願2012-504481(P2012-504481)の分割
【原出願日】2011年3月8日
(65)【公開番号】特開2016-117909(P2016-117909A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2016年2月23日
(31)【優先権主張番号】特願2010-51182(P2010-51182)
(32)【優先日】2010年3月8日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2010-51181(P2010-51181)
(32)【優先日】2010年3月8日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2010-51180(P2010-51180)
(32)【優先日】2010年3月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】宮本 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】福井 康治
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−152985(JP,A)
【文献】 特開2000−161161(JP,A)
【文献】 特開2010−042985(JP,A)
【文献】 特開2007−145699(JP,A)
【文献】 特開平04−198226(JP,A)
【文献】 特開2001−179831(JP,A)
【文献】 特表2007−530845(JP,A)
【文献】 特開2008−133954(JP,A)
【文献】 特開2009−298870(JP,A)
【文献】 特表2010−506970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L77、C08K3
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂(成分A)、及びガラス(成分C)を含むポリアミド樹脂組成物であって、
前記成分Aが、ポリアミド6及びポリアミド66からなる群からなる1種以上のポリアミド樹脂であり、
前記成分Cが酸化ホウ素を含まないガラス(成分C1)であり、
前記ポリアミド樹脂組成物100重量%中、前記成分Aが40〜95重量%であり、前
記成分C1が60〜5重量%であり、
スチレン系重合体(成分B1)及び変性ポリフェニレンエーテル(成分B2)を含まない、
ポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
EGR方式による排気ガスを経由させるための部品における、請求項1記載のポリアミド樹脂組成物の使用
【請求項3】
GR方式による排気ガスを経由させるための部品における、請求項1記載のポリアミド樹脂組成物を含む成形品の使用
【請求項4】
GR方式による排気ガスを経由させるための部品であって、該部品は請求項1記載のポリアミド樹脂組成物を含む成形品を含み、該部品はインテークマニホールド、EGRデリバリパイプ、EGRパイプ、EGRバルブ及びEGRクーラーから選択される、部品。
【請求項5】
自動車の部品である請求項記載の部品。
【請求項6】
ンジンルームの部品である請求項記載の部品。
【請求項7】
請求項1記載のポリアミド樹脂組成物を成形することを含む、EGR方式による排気ガスを経由させるための部品の製造方法。
【請求項8】
請求項記載の製造方法で得られるEGR方式による排気ガスを経由させるための部品
を組込むことを含む、自動車の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐酸性に優れた熱可塑性樹脂組成物たるポリアミド樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両等に搭載されているエンジンからの排気ガスの一部を再び吸気系に戻し、混合気に排気ガスの一部を加えることにより、混合気の燃焼温度を低下させるEGR(ExhaustGas Recirculation、排気ガス再循環)方式を採用することがある。そして、このことによりNOxの発生量を少なくすることができる。
また、燃料規制や環境問題からの軽量化要請で金属代替材料としてポリアミド樹脂組成物が広く使用されている(例えば、特許文献1)。
これらの材料においてさらに耐酸性を向上することが要求されている。
【0003】
耐酸性を改良する方法として、特許文献2には、軟質フッ素樹脂とポリアミド樹脂からなるポリアミド樹脂組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007−530845号公報
【特許文献2】特開平6−172603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、
耐酸性の観点からは、特許文献1(例えば、段落0046)に開示されるポリアミド樹脂組成物は十分とはいえず、
特許文献2に開示されるポリアミド樹脂組成物は耐酸性の改善効果はあるものの、自動車用途を視野に入れると、機械的強度や剛性等の面で課題がある。
【0006】
本発明は、耐酸性に優れ、かつ軽量である、インテークマニホールド、EGRデリバリパイプ、EGRクーラー部品等のEGRによる排気ガスが経由する部品用途に好適に使用できるポリアミド樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下を内容とする。
(1)ポリアミド樹脂(成分A)、及び
ガラス(成分C)を含むポリアミド樹脂組成物であって、
前記ポリアミド樹脂組成物が、さらに、スチレン系重合体(成分B1)及び変性ポリフェニレンエーテル(成分B2)を含む場合と含まない場合があり、
前記ポリアミド樹脂組成物100重量%中、
前記成分A、B1及びB2の合計が40〜95重量%であり、前記成分Cが60〜5重量%であり、
前記成分A、B1及びB2の合計100重量%中、
前記成分Aが50〜100重量%、前記成分B1及びB2の合計が50〜0重量%であり、
前記成分Cが酸化ホウ素を含まないガラス(成分C1)を含む場合は、
前記ポリアミド樹脂組成物100重量%中、前記成分C1が60〜5重量%であり、
前記成分Cが前記成分C1を含まない場合は、
前記成分Aがポリオキサミド樹脂であるか、又は、
前記成分A、B1及びB2の合計100重量%中、
前記成分Aが50〜90重量%、前記成分B1及びB2の合計が50〜10重量%であり、
前記成分B1の荷重たわみ温度が140〜280℃である
ことを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
(2)EGR方式による排気ガスを経由させるための部品用の前記(1)に記載のポリアミド樹脂組成物からなる成形品。
(3)前記(2)に記載のEGR方式による排気ガスを経由させるための部品用のポリアミド樹脂組成物を使用した成形品を含むEGR方式による排気ガスを経由させるための部品。
(4)前記(1)に記載のポリアミド樹脂組成物を成形する工程を有するEGR方式による排気ガスを経由させるための部品の製造方法。
(5)前記(4)に記載の製造方法で得られるEGR方式による排気ガスを経由させるための部品を組込む工程を有する自動車の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、耐酸性に優れ、かつ軽量である、インテークマニホールド、EGRデリバリパイプ、EGRクーラー部品等のEGRによる排気ガスが経由する部品用途に好適に使用できる熱可塑性樹脂たるポリアミド樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例における耐酸性腐食性が○の場合の例。
図2】実施例における耐酸性腐食性が△の場合の例。
図3】実施例における耐酸性腐食性が×の場合の例。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、
ポリアミド樹脂(成分A)、及び
ガラス(成分C)を含むポリアミド樹脂組成物であって、
前記ポリアミド樹脂組成物が、さらに、スチレン系重合体(成分B1)及び変性ポリフェニレンエーテル(成分B2)を含む場合と含まない場合があり、
前記ポリアミド樹脂組成物100重量%中、
前記成分A、B1及びB2の合計が40〜95重量%であり、前記成分Cが60〜5重量%であり、
前記成分A、B1及びB2の合計100重量%中、
前記成分Aが50〜100重量%、前記成分B1及びB2の合計が50〜0重量%であり、
前記成分Cが酸化ホウ素を含まないガラス(成分C1)を含む場合は、
前記ポリアミド樹脂組成物100重量%中、前記成分C1が60〜5重量%であり、
前記成分Cが前記成分C1を含まない場合は、
前記成分Aがポリオキサミド樹脂であるか、又は、
前記成分A、B1及びB2の合計100重量%中、
前記成分Aが50〜90重量%、前記成分B1及びB2の合計が50〜10重量%であり、
前記成分B1の荷重たわみ温度が140〜280℃である。
【0011】
そして、本発明のポリアミド樹脂組成物(以下、ポリアミド樹脂組成物ともいう)は、
前記成分Cが酸化ホウ素を含まないガラス(成分C1)を含む場合で、
前記ポリアミド樹脂組成物100重量%中、前記成分C1が60〜5重量%である態様1、
前記成分Cが前記成分C1を含まない場合で、前記成分Aがポリオキサミド樹脂である態様2、及び、
前記成分Cが前記成分C1を含まない場合で、前記成分A、B1及びB2の合計100重量%中、前記成分Aが50〜90重量%、前記成分B1及びB2の合計が50〜10重量%である態様3を含む。
【0012】
耐酸性及び軽量化の観点から、態様1及び態様2がより好ましく、態様1が更に好ましい。
【0013】
(1)成分A(ポリアミド樹脂)
本発明における成分Aは、ジアミンとジカルボン酸(二塩基酸)との重縮合物からなるか、またはラクタムもしくはアミノカルボン酸からなるか、またはこれらの2種以上の重縮合体若しくは共重合体からなるものが挙げられる。
【0014】
ジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンや、メタキシリレンジアミン等の芳香族・環状構造を有するジアミンが挙げられる。
【0015】
ジカルボン酸としては、アジピン酸、ヘプタンジカルボン酸、オクタンジカルボン酸、ノナンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ジアミンやテレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族・環状構造を有するジカルボン酸が挙げられる。
【0016】
ラクタムとしては、炭素数6〜12のラクタム類であり、また、アミノカルボン酸としては炭素数6〜12のアミノカルボン酸である。6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、α−ピロリドン、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム、ε−エナントラクタム等が挙げられる。
【0017】
成分Aはポリアミド樹脂組成物の基材として、組成物全体の強度、耐熱性及び成形加工性等の機械的強度を確保する役割を担っており、コストの観点からも、具体例としては、
ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド912、ポリアミド1010、ポリアミド1212などのホモポリマーや、
ポリアミド6/66、ポリアミド6/12、ポリアミド11/12などのコポリマーが好適に使用される。
なお、成分Aの具体例の上記名称は、JIS K6920−1:2000「プラスチック−ポリアミド(PA)成形用及び押出用材料−第1部:呼び方のシステム及び仕様表記の基礎」に基づく。
粘度や吸水性の観点から、ポリアミド11、ポリアミド12が望ましい。
安定した機械的強度を確保する観点から、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6/66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド1212、ポリアミド1010、ポリアミド912、ポリアミド46、ポリアミド6/12、ポリアミド11/12が好ましく、機械的強度と、コストを加味した観点からポリアミド6、ポリアミド66がより好ましい。
【0018】
さらに、成分Aとして、耐酸性の観点から、ジカルボン酸成分としてシュウ酸を用いるポリオキサミド樹脂が更に好ましい。
ポリオキサミド樹脂のシュウ酸源としては、シュウ酸ジエステルが用いられ、これらはアミノ基との反応性を有するものであれば特に制限はなく、シュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジn−(またはi−)プロピル、シュウ酸ジn−(またはi−、またはt−)ブチル等の脂肪族1価アルコールのシュウ酸ジエステル、シュウ酸ジシクロヘキシル等の脂環式アルコールのシュウ酸ジエステル、シュウ酸ジフェニル等の芳香族アルコールのシュウ酸ジエステル等が挙げられる。これらのうち、続く溶融重合、固相重合温度において、完全に取り除くことができるアルコールを生成するシュウ酸ジエステルが好ましく用いられる。このようなシュウ酸ジエステルの例としては、シュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジn−(またはi−)プロピル、シュウ酸ジn−(またはi−、またはt−)ブチルを挙げることができる。さらに、ジアミンに対して混練により混合しやすい、室温で液体であるシュウ酸ジエチル、シュウ酸ジn−(またはi−)プロピル、シュウ酸ジn−(またはi−、またはt−)ブチルが特に好ましく用いられる。
【0019】
成分Aとしてのポリオキサミド樹脂の原料のジアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミンなどの脂肪族ジアミン、さらにシクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミンなどの脂環式ジアミン、さらにp−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、キシレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどの芳香族ジアミン等から選ばれる1種または2種以上の任意の混合物が挙げられる。
【0020】
成分Aは、ポリオキサミド樹脂だけでなく、芳香族ポリアミド、脂肪族ポリアミド、脂環式ポリアミドなどのポリアミド樹脂類を混合することが可能である。
【0021】
(2)成分B1(スチレン系重合体)
ポリアミド樹脂組成物は、耐酸性の観点から、スチレン系重合体として荷重たわみ温度が140〜280℃であり、好ましくは150〜280℃であり、より好ましくは160〜280℃であり、更に好ましくは170〜280℃であるスチレン系重合体を含むことが好ましい。
【0022】
スチレン系重合体とは、スチレン単量体又はスチレンのフェニル基の水素がさらに置換されている置換フェニルであるスチレン系単量体由来の構造単位で構成される重合体である。
【0023】
荷重たわみ温度とは、スチレン系重合体の耐熱性の尺度であり、スチレン系重合体が好ましくはシンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体(以下、SPSともいう)であるときに、上記の好適荷重たわみ温度範囲を達成できる。
荷重たわみ温度は、ASTM D−648に基づいて、長さ5インチ×幅1/2インチ×厚み1/2インチのテストピースに、金型温度150℃、0.46MPa荷重時の常温より2℃/minで昇温して行き、0.25mm撓んだときの温度で定義される。
【0024】
SPSは、例えば、出光興産株式会社から商品名「ザレック(XAREC)」で市販されている。
【0025】
ここでシンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体におけるシンジオタクチック構造とは、立体構造がシンジオタクチック構造、即ち炭素−炭素結合から形成される主鎖に対して側鎖であるフェニル基や置換フェニル基が交互に反対方向に位置する立体構造を有するものであり、そのタクティシティは、好ましくは、同位体炭素による核磁気共鳴法(13C−NMR法)により定量される。
13C−NMR法により測定されるタクティシティは、連続する複数個の構成単位の存在割合、例えば2個の場合はダイアッド、3個の場合はトリアッド、5個の場合はペンタッドによって示すことができるが、本発明に言うシンジオタクチック構造を有するスチレン系共重合体とは、通常はラセミダイアッドで75%以上、好ましくは85%以上、もしくはラセミペンタッドで30%以上、好ましくは50%以上のシンジオタクティシティを有するポリスチレン、ポリ(アルキルスチレン)、ポリ(ハロゲン化スチレン)、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)、ポリ(アルコキシスチレン)、ポリ(ビニル安息香酸エステル)、これらの水素化重合体及びこれらの混合物、或いはこれらを主成分とする共重合体を指す。
なおここで、ポリ(アルキルスチレン)としては、ポリ(メチルスチレン)、ポリ(エチルスチレン)、ポリ(イソプロピルスチレン)、ポリ(tert−ブチルスチレン)、ポリ(フェニルスチレン)、ポリ(ビニルナフタレン)、ポリ(ビニルスチレン)等があり、ポリ(ハロゲン化スチレン)としては、ポリ(クロロスチレン)、ポリ(ブロモスチレン)、ポリ(フルオロスチレン)等がある。又、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)としては、ポリ(クロロメチルスチレン)等がある。
又、ポリ(アルコキシスチレン)としては、ポリ(メトキシスチレン)、ポリ(エトキシスチレン)等がある。
【0026】
より好ましいスチレン系重合体としては、ポリスチレン、ポリ(p−メチルスチレン)、ポリ(m−メチルスチレン)、ポリ(p−tert−ブチルスチレン)、ポリ(p−クロロスチレン)、ポリ(m−クロロスチレン)、ポリ(p−フルオロスチレン)、水素化ポリスチレン及びこれらの構造単位を含む共重合体が挙げられる。
なお、スチレン系重合体は、一種のみを単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
このスチレン系重合体は、分子量について特に制限はないが、得られるポリアミド樹脂組成物或いはその成形品の熱的性質、力学的物性を好適な範囲とする観点から、重量平均分子量が好ましくは10000以上、より好ましくは50000以上であり、好ましくは400000以下、より好ましくは300000以下であり、更に好ましくは10000〜400000、更により好ましくは50000〜300000である。更に、分子量分布についてもその広狭に制約はなく、様々なものを充当することが可能である。
なお、重量平均分子量は、1,2,4−トリクロロベンゼンを溶媒として、130℃にて、ゲル浸透クロマトグラフ分析(GPC)より求めた。
【0028】
このようなシンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体は、例えば不活性炭化水素溶媒中、又は溶媒の不存在下に、チタン化合物及び水とトリアルキルアルミニウムの縮合生成物を触媒として、スチレン系単量体を重合することにより製造することができる(特開昭62−187708号公報)。
又、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)については特開平1−46912号公報、上記水素化重合体は特開平1−178505号公報に記載の方法等により得ることができる。
【0029】
(3)成分B2(変性ポリフェニレンエーテル)
成分B2は、ポリアミド樹脂組成物中で、成分B1を安定に分散させ、ポリアミド樹脂との界面強度を向上してポリアミド樹脂組成物の力学物性や耐酸性を安定にする。
成分B2は、成分B1の分散性とポリアミド樹脂組成物の力学物性や耐酸性の安定化の観点から、無無水マレイン酸変性ポリフェニレンエーテル及び/又はフマル酸変性ポリフェニレンエーテルが好ましく、フマル酸変性ポリフェニレンエーテルがより好ましい。
【0030】
成分B1を安定に分散させ、ポリアミド樹脂との界面強度を向上してポリアミド樹脂組成物の力学物性や耐酸性を安定にする観点から、
成分B1と成分B2の重量比(B1/B2)は、5/95〜90/10が好ましく、26/74〜88/12がより好ましく、76/24〜85/15が更に好ましい。
【0031】
(4)成分C(ガラス)
本発明のポリアミド樹脂組成物(以下、ポリアミド樹脂組成物ともいう)で使用される成分Cであるガラスとは、通常のガラスであるアルミノホウケイ酸ガラス(例えば、E−ガラス(通称、無アルカリガラス))、また、耐酸性の観点から、より好ましくは、E−ガラスに対し酸化ホウ素を含まないガラス(成分C1)のことを示す。ガラスは、繊維、フレーク、ビーズ、バルーン等でもよく、強度等の面から特にガラス繊維が良い。
【0032】
本発明で使用される成分C1である酸化ホウ素を含まないガラスとは、通常のガラスであるE−ガラスと比較し、酸化ホウ素を含まないであるものである。成分C1は、繊維、フレーク、ビーズ、バルーン等でもよく、強度等の面から特にガラス繊維が良い。
【0033】
(5)ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂
ポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂成分A以外の熱可塑性樹脂であり、低吸水性・耐薬品性を有するものを加えてもよい。
例えば、成分B1及びB2だけでなく、
その他のポリスチレン樹脂やABS樹脂等のスチレン系樹脂、
その他のポリフェニレンフェニレンエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリスルホン樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ゴム質重合体、ポリアルキレンオキサイド樹脂等から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂を好ましく挙げることができる。
ポリアミド樹脂とポリアミド樹脂以外の樹脂の反応性を向上させるために、ポリアミド樹脂以外の樹脂の末端基を変性したものを1種以上用いることがより好ましい。
【0034】
また、本発明のポリアミド樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分、例えば、可塑剤、耐衝撃材、耐熱材、発泡剤、耐候剤、結晶核剤、結晶化促進剤、離型剤、滑剤、流動改良剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、顔料、染料等の機能性付与剤等を適宜配合することができる。
【0035】
(6)ポリアミド樹脂組成物
ポリアミド樹脂組成物における成分A、B1、B2及びCの配合量は、
ポリアミド樹脂組成物100重量%中、
成分A、B1及びB2の合計が40〜95重量%であり、前記成分Cが60〜5重量%であり、
成分A、B1及びB2の合計100重量%中、
成分Aが50〜100重量%、成分B1及びB2の合計が50〜0重量%である。
【0036】
ポリアミド樹脂組成物が成分B1及びB2を含まない場合、
ポリアミド樹脂組成物における成分(A)の配合量は、耐酸性と軽量化の観点から、ポリアミド樹脂組成物全体に対して、即ち、ポリアミド樹脂組成物100重量%中、40〜95重量%であり、より好ましくは55〜90重量%であり、更に好ましくは55〜80重量%である。
【0037】
なお、成分Aと成分A以外の熱可塑性樹の合計の配合量は、耐酸性及び軽量化の観点から、ポリアミド樹脂組成物全体に対して、即ち、ポリアミド樹脂組成物100重量%中、
好ましくは40〜95重量%であり、
より好ましくは55〜90重量%であり、
更に好ましくは55〜80重量%である。
【0038】
ポリアミド樹脂組成物が成分B1及びB2を含む場合、耐酸性と軽量化の観点から、
成分A、B1及びB2の合計100重量%中、
成分Aが50〜100重量%、成分B1及びB2の合計が50〜0重量%(但し、0重量%は除く)であり、
好ましくは、成分Aが50〜90重量%、成分B1及びB2の合計が50〜10重量%であり、
より好ましくは、成分Aが60〜80重量%、成分B1及びB2の合計が40〜20重量%であり、
更に好ましくは、成分Aが65〜75重量%、成分B1及びB2の合計が35〜25重量%である。
【0039】
ポリアミド樹脂組成物における成分Cの配合量は、耐酸性、軽量化及び成形性の観点から、ポリアミド樹脂組成物全体、即ち、ポリアミド樹脂組成物100重量%に対して60〜5重量%であり、好ましくは50〜10重量%であり、より好ましくは45〜10重量%であり、更に好ましくは40〜20重量%であり、更に好ましくは35〜25重量%である。
【0040】
成分Cが成分C1を含む場合、成分C1の配合量は、耐酸性、軽量化及び成形性の観点から、ポリアミド樹脂組成物全体、即ち、ポリアミド樹脂組成物100重量%に対して60〜5重量%であり、好ましくは50〜10重量%であり、より好ましくは45〜10重量%であり、更に好ましくは40〜20重量%であり、更に好ましくは35〜25重量%である。
【0041】
また、成分C1は、耐酸性の観点から、成分C100重量%中、好ましくは8.4〜100重量%であり、より好ましくは16.7〜100重量%であり、更に好ましくは33.4〜100重量%であり、更に好ましくは41.7〜100重量%であり、更に好ましくは58.4〜100重量%であり、更に好ましくは66.7〜100重量%であり、更に好ましく75.0〜100重量%であり、更に好ましく84〜100重量%であり、更に好ましは100重量%である。
【0042】
(7)態様1のポリアミド樹脂組成物
態様1のポリアミド樹脂組成物は、成分Cが成分C1を含み、
ポリアミド樹脂組成物100重量%中、
成分A、B1及びB2の合計が40〜95重量%又は成分Aが40〜95重量%であり、成分C1が60〜5重量%である場合であり、
前記成分A、B1及びB2の合計100重量%中、
前記成分Aが50〜100重量%、前記成分B1及びB2の合計が50〜0重量%である。
【0043】
より好ましい態様1は、
成分A、B1、B2及びC1の合計100重量%中、
成分A、B1及びB2の合計が40〜95重量%かつ成分C1が60〜5重量%、
好ましくは、
成分A、B1及びB2の合計が55〜90重量%かつ成分C1が45〜10重量%、
より好ましくは、
成分A、B1及びB2の合計が55〜80重量%かつ成分C1が45〜20重量%、
更に好ましくは、
成分A、B1及びB2の合計が60〜80重量%かつ成分C1が40〜20重量%、
更に好ましくは、
成分A、B1及びB2の合計が65〜75重量%かつ成分C1が35〜25重量%であるか、
成分A及びCの合計100重量%中、
成分Aが40〜95重量%であり、成分C1が60〜5重量%、好ましくは、
成分Aが55〜90重量%かつ成分C1が45〜10重量%、より好ましくは、
成分Aが55〜80重量%かつ成分C1が45〜20重量%、更に好ましくは、
成分Aが60〜80重量%かつ成分C1が40〜20重量%、更に好ましくは、
成分Aが65〜75重量%かつ成分C1が35〜25重量%である。
【0044】
態様1において、
成分C1の配合量は、耐酸性、軽量化及び成形性の観点から、ポリアミド樹脂組成物全体、即ち、ポリアミド樹脂組成物100重量%に対して、好ましくは、成分A、B1、B2及びCの合計100重量%又は成分A及びCの合計100重量%に対して、60〜5重量%であり、好ましくは50〜10重量%であり、より好ましくは45〜10重量%であり、更に好ましくは40〜20重量%であり、更に好ましくは35〜25重量%である。
また、成分C1は、耐酸性の観点から、成分C100重量%中、好ましくは8.4〜100重量%であり、より好ましくは16.7〜100重量%であり、更に好ましくは33.4〜100重量%であり、更に好ましくは41.7〜100重量%であり、更に好ましくは58.4〜100重量%であり、更に好ましくは66.7〜100重量%であり、更に好ましく75.0〜100重量%であり、更に好ましく84〜100重量%であり、更に好ましは100重量%である。
【0045】
態様1のポリアミド樹脂組成物は、成分B1及び成分B2を含んでも含まなくてもよいが、耐酸性と軽量化の観点から、含むことが好ましく、その場合、
成分A、B1及びB2の合計100重量%中、
成分Aが50〜100重量%、成分B1及びB2の合計が50〜0重量%(但し、0重量%は除く)であり、
好ましくは、成分Aが50〜90重量%、成分B1及びB2の合計が50〜10重量%であり、
より好ましくは、成分Aが60〜80重量%、成分B1及びB2の合計が40〜20重量%であり、
更に好ましくは、成分Aが65〜75重量%、成分B1及びB2の合計が35〜25重量%である。
【0046】
態様1において、成分Aは、ポリオキサミド樹脂を含んでも含まなくてもよいが、耐酸性と軽量化の観点から、含むことが好ましく、その場合、ポリオキサミド樹脂の配合量は、
ポリアミド樹脂組成物全体に対して、即ち、ポリアミド樹脂組成物100重量%中、好ましくは2〜95重量%であり、より好ましくは3〜90重量%であり、更に好ましくは3〜80重量%であり、更に好ましくは3〜75重量%でありる。
また、成分A100重量%中、ポリオキサミド樹脂は、好ましくは5〜100重量%であり、より好ましくは30〜100重量%であり、更に好ましくは60〜100重量%であり、更に好ましくは100重量%である。
【0047】
(8)態様2のポリアミド樹脂組成物
態様2のポリアミド樹脂組成物は、成分Cが成分C1を含まず、成分Aがポリオキサミド樹脂である場合である。
態様2において、成分Aはポリオキサミド樹脂であり、耐酸性と軽量化の観点から、ポリオキサミド樹脂の配合量は、
ポリアミド樹脂組成物全体に対して、即ち、ポリアミド樹脂組成物100重量%中、好ましくは40〜95重量%であり、より好ましくは55〜90重量%であり、更に好ましくは55〜80重量%である。
【0048】
より好ましい態様2は、
ポリオキサミド樹脂及び成分Cの合計100重量%中、好ましくは、
ポリオキサミド樹脂が40〜95重量%かつ成分Cが60〜5重量%、より好ましくは、
ポリオキサミド樹脂が55〜90重量%かつ成分Cが45〜10重量%、更に好ましくは、
ポリオキサミド樹脂が55〜80重量%かつ成分Cが45〜20重量%、更に好ましくは、
ポリオキサミド樹脂が60〜80重量%かつ成分Cが40〜20重量%、更に好ましくは、
ポリオキサミド樹脂が65〜75重量%かつ成分Cが35〜25重量%である。
【0049】
態様2において、成分B1及び成分B2を含んでも含まなくてもよいが、耐酸性と軽量化の観点から、含むことが好ましく、その場合、
成分A、B1及びB2の合計100重量%中、
成分Aが50〜100重量%、成分B1及びB2の合計が50〜0重量%(但し、0重量%は除く)であり、
好ましくは、成分Aが50〜90重量%、成分B1及びB2の合計が50〜10重量%であり、
より好ましくは、成分Aが60〜80重量%、成分B1及びB2の合計が40〜20重量%であり、
更に好ましくは、成分Aが65〜75重量%、成分B1及びB2の合計が35〜25重量%である。
【0050】
(9)態様3のポリアミド樹脂組成物
態様3のポリアミド樹脂組成物は、成分Cが成分C1を含まず、
成分A、B1及びB2の合計100重量%中、
成分Aが50〜90重量%、前記成分B1及びB2の合計が50〜10重量%であるである場合である。
【0051】
態様3において、耐酸性及び軽量化の観点から、
成分A、B1及びB2の合計100重量%中、
好ましくは、成分Aが60〜80重量%、成分B1及びB2の合計が40〜20重量%であり、
より好ましくは、成分Aが65〜75重量%、成分B1及びB2の合計が35〜25重量%である。
【0052】
より好ましい態様3は、
成分A、B1、B2及びCの合計100重量%中、
成分A、B1及びB2の合計が40〜95重量%かつ成分Cが60〜5重量%、
好ましくは、
成分A、B1及びB2の合計が55〜90重量%かつ成分Cが45〜10重量%、
より好ましくは、
成分A、B1及びB2の合計が55〜80重量%かつ成分Cが45〜20重量%、
更に好ましくは、
成分A、B1及びB2の合計が60〜80重量%かつ成分Cが40〜20重量%、
更に好ましくは、
成分A、B1及びB2の合計が65〜75重量%かつ成分Cが35〜25重量%である。
【0053】
態様3において、成分Aは、ポリオキサミド樹脂を含んでも含まなくてもよいが、耐酸性と軽量化の観点から、含むことが好ましく、その場合、ポリオキサミド樹脂の配合量は、
ポリアミド樹脂組成物全体に対して、即ち、ポリアミド樹脂組成物100重量%中、好ましくは2〜95重量%であり、より好ましくは3〜90重量%であり、更に好ましくは3〜80重量%であり、更に好ましくは3〜75重量%である。
また、成分A100重量%中、ポリオキサミド樹脂は、好ましくは5〜100重量%であり、より好ましくは30〜100重量%であり、更に好ましくは60〜100重量%であり、更に好ましくは100重量%である。
【0054】
また、本発明の態様1〜3を始めとするポリアミド樹脂組成物には、その効果を損なわない範囲で他の成分、例えば、可塑剤、耐衝撃材、耐熱材、発泡剤、耐候剤、結晶核剤、結晶化促進剤、離型剤、滑剤、流動改良剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、顔料、染料等の機能性付与剤等を適宜配合することができる。
【0055】
本発明のポリアミド樹脂組成物の製造方法は、例えば次の方法を適用することができる。
成分A若しくはC、必要であればポリオキサミド、B1及びB2及び/又はC1を、単軸、2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、及びミキシングロールなど通常公知の溶融混練機が用いられる。例えば、2軸押出機を使用して、全ての原材料を配合後、溶融混練する方法、一部の原材料を配合後、溶融混練し、更に残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後、溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよい。
【0056】
本発明のポリアミド樹脂組成物から成形品を製造する方法については、通常使用される熱可塑性樹脂の成形機、例えば、押出成形機、ブロー成形機、圧縮成形機、射出成形機等を用いて、各種形状に製造可能である。
【0057】
本発明のポリアミド樹脂組成物は耐酸性の要求されるインテークマニホールド、EGRデリバリパイプ、EGRパイプ、EGRバルブ、EGRクーラー部品等のEGRによる排気ガスが経由する部品(EGR部品)に好適に用いられる。EGR部品の用途では、例えば、自動車用部品が好適であり、中でも、インテークマニホールド、EGRデリバリパイプ、EGRクーラー部品、EGRパイプ、EGRバルブ等のEGR部品用途を始め、エアクリーナー、レゾネーター、フューエルレール、スロットルボディおよびバルブ、エアフローメーター、シリンダーヘッドカバー、ベーパーキャニスター、フューエルストレーナー、バッテリー、端子カバー等の関連周辺部品を含むエンジンルーム部品が好適である。
【0058】
これらのEGR方式による排気ガスを経由させるための部品は、本発明のポリアミド樹脂組成物を成形する工程を有する製造方法によって得ることができ、さらに、得られたEGR方式による排気ガスを経由させるための部品を、エンジンルーム等に組み込む工程を経てEGR方式による排気ガスを経由させるための部品を備える自動車を製造することができる。
【実施例】
【0059】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、実施例および比較例において使用した樹脂及び成形品の物性測定方法を以下に示す。
(1)引張強さおよび引張破壊ひずみ:ISO527−1,2に従い、常温下、厚み4mmの試験片を用いて引張速度5mm/minで試験を行った(n=5の平均値を求めた)。
(2)引張弾性率:ISO527−1,2に従い、常温下、厚み4mmの試験片を用いて引張速度1mm/minで試験を行った(n=5の平均値を求めた)。
引張試験は、ISO 11403−3に従い、引張速度1mm/minで試験を行った。
(3)シャルピー衝撃強さ:ISO179−1に従い、常温下、Aノッチ入り厚み4mmの試験片を用いてエッジワイズ衝撃試験を行った(n=10の平均値を求めた)。
(4)耐酸性腐食性:ISO294−2記載のISO Type−C試験片を下記の処理条件−A、処理条件−D、処理条件−E、処理条件−B、処理条件−Cの5条件による浸漬処理を行った。
処理条件−A 0.1N硫酸水溶液に120時間浸漬。
処理条件−D 0.1N硫酸水溶液に240時間浸漬。
処理条件−E 0.5N硫酸水溶液に40時間浸漬。
処理条件−B 0.5N硫酸水溶液に120時間浸漬。
処理条件−C 0.5N硫酸水溶液を240時間浸漬。
浸漬後、試験片を蒸留水で水洗し、80℃の真空乾燥機にて試験片の水分率が0.2%以下になる様に乾燥を行い外観観察及び引張試験を実施し引張強度保持率を測定した。
外観変化なし(ISO ISO Type−C試験片に白化を伴う表面状態の変化なし)の場合を○(例えば、図1を参照のこと)、
若干の表面荒れありの(ISO Type−C試験片の表面光沢が若干低下するとともに、若干の白化を伴う外観変化が認められる)場合を△(例えば、図2を参照のこと)、
表面荒れありの(ISO Type−C試験片の表面光沢が著しく低下するとともに、全体的な白化を伴う著しい外観変化が確認される)場合を×(例えば、図3を参照のこと)、
と評価した。
【0060】
成分A:ポリアミド樹脂
成分A1:ポリアミド92(試作品)
成分A2:ポリアミド6(宇部興産(株)製 UBEナイロン 1015B)
成分A3:ポリアミド66(宇部興産(株)製 UBEナイロン 2020B)
【0061】
ポリアミド92は、ポリオキサミド樹脂であり、以下の方法によって製造した。
攪拌機、温度計、トルクメーター、圧力計、ダイアフラムポンプを直結した原料投入口、窒素ガス導入口、放圧口、圧力調節装置及びポリマー抜出し口を備えた内容積が150リットルの圧力容器にシュウ酸ジブチル28.40kg(140.4モル)を仕込み、窒素置換を行った後、封圧下、攪拌しながら系内を昇温した。シュウ酸ジブチルの温度を100℃にした後、1,9−ノナンジアミン18.89kg(119.3モル)と2−メチル−1,8−オクタンジアミン3.34kg(21.1モル)の混合物(1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンのモル比が85:15)をダイアフラムフポンプにより反応容器内に供給すると同時に昇温した。
供給直後の圧力容器内の内圧は、重縮合反応により生成したブタノールによって0.35MPaまで上昇し、重縮合物の温度は約170℃まで上昇した。
その後、1時間かけて温度を235℃まで昇温した。その間、生成したブタノールを放圧口より抜き出しながら、内圧を0.5MPaに調節した。
重縮合物の温度が235℃に達した直後から放圧口よりブタノールを抜き出し、内圧を常圧にした。常圧にしたところから、窒素ガスを流しながら昇温を開始し、約1時間かけて重縮合物の温度を260℃にし、260℃において4.5時間反応させた。
その後、攪拌を止めて系内を窒素で1MPaに加圧して約10分間静置した後、内圧0.5MPaまで放圧し、重縮合物を圧力容器下部抜出口より紐状に抜き出した。
紐状の重合物は直ちに水冷し、水冷した紐状の樹脂はペレタイザーによってペレット化した。
得られたポリアミドは白色の強靭なポリマーであり、相対粘度(ηr)=3.20であった。
【0062】
成分B1:シンジオタクチックポリスチレン樹脂(荷重たわみ温度:189℃、重量平均分子量:190000、出光興産株式会社製ZAREC 130ZC、表1では「SPS」と記す)
成分B2:変性ポリフェニレンエーテル樹脂(出光興産株式会社製CX−1、表1では「m−PPE」と記す)
【0063】
成分C:ガラス繊維
成分C1:酸化ホウ素を含まないガラス1(オーウェンス・コーニング株式会社製CS 983−10P 4MM 2406#GBB ADV)
成分C1:酸化ホウ素を含まないガラス2(日東紡績株式会社製CSE3J−459)
成分C2:E−ガラス(日東紡績株式会社製CS3J−454)
成分C3:E−ガラス(日本電気硝子株式会社製ECS03T−289H)
【0064】
〔実施例1〕
表1に記載したポリアミド樹脂(成分A2)と酸化ホウ素を含まないガラス1で構成されるガラス繊維(成分C1)をTEX44HCT二軸混練機で溶融混練し、目的とするポリアミド樹脂組成物ペレットを作成した。
次に得られたペレットを溶融樹脂温度290℃、金型温度80℃、金型内平均射出速度250mm/sec、保圧60MPa×20secで射出成形し、各種試験片を製造し、各種物性測定および耐酸性腐食性の評価を行った。
【0065】
〔実施例2〕
表1に記載のポリアミド樹脂(成分A3)を用いた以外は、実施例1と同じ条件にて試験を実施した。
【0066】
〔実施例3〕
表1に記載の酸化ホウ素を含まないガラス2で構成されるガラス繊維(成分C1)を用いた以外は、実施例1と同じ条件にて試験を実施した。
【0067】
〔実施例4〕
表1に記載のポリアミド樹脂(成分A3)を用いた以外は、実施例3と同じ条件にて試験を実施した。
【0068】
〔実施例5〕
表1に記載したポリオキサミド樹脂(ポリアミド92)(成分A1)と酸化ホウ素を含まないガラス1で構成されるガラス繊維(成分C1)をTEX44HCT二軸混練機で溶融混練し、目的とするポリオキサミド樹脂組成物ペレットを作成した。
次に得られたペレットを溶融樹脂温度290℃、金型温度80℃、金型内平均射出速度250mm/sec、保圧60MPa×20secで射出成形し、各種試験片を製造し、各種物性測定および耐酸性腐食性の評価を行った。
【0069】
〔実施例6〕
表1に記載した所定量のポリアミド樹脂(成分A2)、シンジオタクチックポリスチレン樹脂(成分B1)、変性ポリフェニレンエーテル樹脂(成分B2)及び酸化ホウ素を含まないガラス1で構成されるガラス繊維(成分C1)をTEX44HCT二軸混練機で溶融混練し、目的とするポリアミド樹脂組成物ペレットを作成した。
次に得られたペレットを溶融樹脂温度290℃、金型温度80℃、金型内平均射出速度250mm/sec、保圧60MPa×20secで射出成形し、各種試験片を製造し、各種物性測定および耐酸性腐食性の評価を行った。
【0070】
〔実施例7〕
表1に記載した所定量のポリアミド樹脂(成分A3)を用いた以外は、実施例6と同じ条件にて試験を実施した。
【0071】
〔実施例8〕
表1に記載のガラス繊維(成分C2)を用いた以外は、実施例5と同じ条件にて試験を実施した。
【0072】
〔実施例9〕
表1に記載のガラス繊維(成分C3)を用いた以外は、実施例5と同じ条件にて試験を実施した。
【0073】
〔実施例10〜13〕
表1に記載した所定量のポリアミド樹脂(成分A2)、シンジオタクチックポリスチレン樹脂(成分B1)、変性ポリフェニレンエーテル樹脂(成分B2)及びガラス繊維(成分C2)をTEX44HCT二軸混練機で溶融混練し、目的とするポリアミド樹脂組成物ペレットを作成した。
次に得られたペレットを溶融樹脂温度290℃、金型温度80℃、金型内平均射出速度250mm/sec、保圧60MPa×20secで射出成形し、各種試験片を製造し、各種物性測定および耐酸性腐食性の評価を行った。
【0074】
〔比較例1〕
表1に記載したポリアミド樹脂(成分A2)とガラス繊維(成分C2)をTEX44HCT二軸混練機で溶融混練し、目的とするポリアミド樹脂組成物ペレットを作成した以外は、実施例1と同じ条件にて試験を実施した。
【0075】
〔比較例2〕
表1に記載したポリアミド樹脂(成分A2)とガラス繊維(成分C3)をTEX44HCT二軸混練機で溶融混練し、目的とするポリアミド樹脂組成物ペレットを作成した以外は、実施例1と同じ条件にて試験を実施した。
【0076】
【表1】
【0077】
表1から、本発明のポリアミド樹脂組成物は、機械的特性を確保しつつ、耐酸性に優れることがわかり、さらに軽量であることから、インテークマニホールド、EGRデリバリパイプ、EGRクーラー部品等のEGRによる排気ガスが経由する部品用途に好適に使用できることがわかる。
【0078】
本発明は以下の態様を包含する。
[1] ポリアミド樹脂(成分A)、及び
ガラス(成分C)を含むポリアミド樹脂組成物であって、
前記ポリアミド樹脂組成物が、さらに、スチレン系重合体(成分B1)及び変性ポリフェニレンエーテル(成分B2)を含む場合と含まない場合があり、
前記ポリアミド樹脂組成物100重量%中、
前記成分A、B1及びB2の合計が40〜95重量%であり、前記成分Cが60〜5重量%であり、
前記成分A、B1及びB2の合計100重量%中、
前記成分Aが50〜100重量%、前記成分B1及びB2の合計が50〜0重量%であり、
前記成分Cが酸化ホウ素を含まないガラス(成分C1)を含む場合は、
前記ポリアミド樹脂組成物100重量%中、前記成分C1が60〜5重量%であり、
前記成分Cが前記成分C1を含まない場合は、
前記成分Aがポリオキサミド樹脂であるか、又は、
前記成分A、B1及びB2の合計100重量%中、
前記成分Aが50〜90重量%、前記成分B1及びB2の合計が50〜10重量%であり、
前記成分B1の荷重たわみ温度が140〜280℃である
ことを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
[2] 前記成分B1及びB2の合計100重量%中、前記成分B1が5〜90重量%、前記成分B2が95〜10重量%である[1]載のポリアミド樹脂組成物。
[3] 前記成分Aが、ポリアミド6、ポリアミド66及びポリアミド92からなる群から選ばれる1以上のポリアミド樹脂である[1]又は[2]記載のポリアミド樹脂組成物。
[4] 前記成分Aが、ポリオキサミド樹脂である[1]〜[3]いずれか記載のポリアミド樹脂組成物。
[5] 前記成分Cが、前記成分C1である[1]〜[4]いずれか記載のポリアミド樹脂組成物。
[6] 前記成分B1が、シンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体である[1]〜[5]いずれか記載のポリアミド樹脂組成物。
[7] EGR方式による排気ガスを経由させるための部品用である[1]〜[6]いずれか記載のポリアミド樹脂組成物。
[8] [7]記載のEGR方式による排気ガスを経由させるための部品用のポリアミド樹脂組成物からなる成形品。
[9] [8]記載のEGR方式による排気ガスを経由させるための部品用のポリアミド樹脂組成物を使用した成形品を含むEGR方式による排気ガスを経由させるための部品。
[10] 前記部品が自動車用である[9]記載の部品。
[11] 前記部品がエンジンルーム用である[8]又は[9]記載の部品。
[12] 前記ポリアミド樹脂組成物が[1]〜[6]のいずれか記載のポリアミド樹脂組成物を成形する工程を有するEGR方式による排気ガスを経由させるための部品の製造方法。
[13] [12]記載の製造方法で得られるEGR方式による排気ガスを経由させるための部品を組込む工程を有する自動車の製造方法。
図1
図2
図3