(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
蒸着層が金属酸化物からなり、前記金属酸化物が酸化アルミニウム、酸化珪素、またはそれらの混合物からなることを特徴とする請求項1または2に記載の蒸着ポリエステルフィルム。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステルフィルムは、その優れた機械的強度、熱的特性および光学特性等から、包装用材料や工業用材料など広範囲の分野に数多く利用されている。しかしながら、ポリエステルフィルムは酸素や水蒸気等のガスバリア性に乏しいため、食品用やレトルト品用、医薬品などの包装用途において、内容物の変質や劣化が生じてしまう問題がある。
【0003】
そのため、包装用途で使用されるポリエステルフィルムには、酸素や水蒸気等におけるガスバリア性が付与される。従来、ポリエステルフィルムにガスバリア性を付与する方法として、ポリ塩化ビニリデンやポリエチレンビニルアルコール共重合体などのガスバリア性の良好なフィルムを張り合わせる方法、ポリエステルフィルムにアルミニウムなどの金属や酸化アルミニウムなどの金属酸化物を蒸着させ、薄膜を形成させる方法が利用されている。特に、後者の金属や金属酸化物を蒸着して得られるポリエステルフィルム(以後、蒸着ポリエステルフィルムと呼ぶ)は、耐熱性や透明性の面で優れているため、数多くの用途で利用されている。
【0004】
また、得られる蒸着ポリエステルフィルムのガスバリア性の性能は、基材であるフィルムの表面状態や物性等に大きく依存していることが知られており、基材であるポリエステルフィルムの表面粗さや突起数を規定したもの(例えば、特許文献1参照)、ポリエステルフィルムの長手方向と幅方向の熱収縮率を規定したもの(例えば、特許文献2参照)、フィルム内のオリゴマー発生量を規定したポリエステルフィルムを基材として使用することで、優れたガスバリア性フィルムが得られるもの(例えば、特許文献3参照)、などが提案されている。
【0005】
近年、蒸着ポリエステルフィルムの加工工程は、生産性向上のため、高速化や基材となるフィルムロールの広幅化、長尺化が進められている。特にロールの広幅化がなされる場合、加工時の熱や張力の影響が大きくなるため、幅方向で安定した蒸着薄膜を得ることが難しく、部分的に蒸着薄膜のムラや抜けが生じてしまい、ガスバリア性の優れた蒸着ポリエステルフィルムロールを得ることが困難である。そのため、基材となるポリエステルフィルムのロール幅方向における物性の均一化が求められている。特に、ロール幅方向における分子配向性や熱収縮率のバラツキや歪みの低減が求められている。よって、前述の特許文献1〜3では、基材となるポリエステルフィルムの分子配向性や熱収縮率などの記載はあるものの、ロール幅方向における各物性のバラツキや歪みに関する記載がないため、ロールを広幅化した場合、ガスバリア性の優れた蒸着ポリエステルフィルムを得ることは困難である。
【0006】
また、かかる蒸着用ポリエステルフィルムは、機械的強度や耐熱性の点から、二軸延伸ポリエステルフィルムが使用されている。代表的な二軸延伸ポリエステルフィルムの製膜方法としては、一般的にチューブラー法、逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法が挙げられるが、生産性および平面性の点から、逐次二軸延伸法が主として採用されている。この逐次二軸延伸法は、一般的に、まず未延伸のポリエステルシートをガラス転移点以上に加熱した速度差のあるロール間にて、長手方向に延伸される。そして、テンター内でクリップにフィルムの端部を把持することで幅方向に延伸し、その後、熱固定処理、幅方向の熱弛緩処理、冷却工程を経て、ロール状に巻き取られ、二軸延伸ポリエステルフィルムを得ることができる。しかし、この逐次二軸延伸法は、テンター内での工程である幅方向の延伸、熱固定、熱弛緩および冷却工程において、クリップで把持されている端部と比較的拘束力が小さい中央部では、幅方向の延伸によって生じる長手方向の延伸応力や熱固定工程で生じる長手方向の収縮応力、テンター内で発生する張力の影響に差が生じるため、フィルムの幅方向で物性の不均一性が生じるボーイング現象が知られている。ここでいうボーイング現象とは、幾何学的に捉えた場合、テンター入口にてフィルムの幅方向に描いた直線が、テンター出口ではフィルム中央部が遅れた弓なりの曲線に変化するものであり、得られる二軸延伸ポリエステルフィルムは、中央部から端部に向かうほど分子鎖配向の主軸が傾き、そのため、熱収縮特性などにおいても幅方向で歪みやバラツキが発生する。
【0007】
これまで、ボーイングを低減させる方法として、例えば、横延伸後、ガラス転移温度以下に冷却した後熱処理する方法、熱固定温度を下げて収縮応力を下げる方法、幅方向の延伸倍率を大きくする方法などが提案されている(特許文献4〜6、非特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点を改善し、生産性を向上させた広幅化したフィルムロールの使用においても、蒸着加工性に優れ、かつ酸素や水蒸気などのガスバリア性にも優れた蒸着ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、基材となるポリエステルフィルムの配向バランスおよび熱収縮率だけでなく、フィルム幅方向に対する分子配向主軸の傾きと熱収縮率の歪みを制御することで上記課題を達成できることを見出した。
【0013】
すなわち、本発明の蒸着ポリエステルフィルムは、以下の構成よりなる。
1. 厚みが5〜20μmの二軸延伸ポリエステルフィルムの少なくとも片面に蒸着層を有する蒸着ポリエステルフィルムであって、酸素透過量が20ml/m
2・day・MPa以下、かつ水蒸気透過量が、2.0g/m
2/day以下であると共に、該二軸延伸ポリエステルフィルムが下記要件(1)〜(4)をすべて満たすことを特徴とするポリエステルフィルム。
(1)フィルム全幅において、長手方向の屈折率Nxと幅方向の屈折率Nyとの差(Nx−Ny)が−0.030以上0.015以下の範囲内であること
(2)フィルム全幅において、150℃で30分間熱処理したときの熱収縮率が長手方向で0.8%以上2.0%以下、幅方向で−0.5%以上1.0%以下の範囲内であること
(3)フィルム幅方向に対して、配向角の変化量が1mあたり0°以上20°以下であること
(4)フィルム幅方向に対して、150℃で30分間熱処理したとき、長手方向に対して、時計回り方向を正方向として+45°方向の熱収縮率と−45°方向の熱収縮率との差(斜め熱収縮率差)のフィルム幅方向に対する変化量が1mあたり0%以上0.25%以下であること
ここで、要件(1)〜(4)における試料の採取位置は、全幅に対して中央位置および中央位置から両端に向かって500mm毎の間隔の位置とし、両端近傍にて500mm間隔を確保できない場合、採取可能な端位置とする。
また、要件(1)及び(2)では、各測定位置データの最大値及び最小値が範囲内にあり、要件(3)及び(4)は隣接する2点の試料採取位置間の各変化量の最大値が範囲内にあることを要件とする。
2. 蒸着層が金属または金属酸化物からなることを特徴とする上記第1に記載の蒸着ポリエステルフィルム。
3. 蒸着層が金属酸化物からなり、前記金属酸化物が酸化アルミニウム、酸化珪素、またはそれらの混合物からなることを特徴とする上記第1または第2に記載の蒸着ポリエステルフィルム。
4. フィルム全幅が1500mm以上であることを特徴とする上記第1〜第3のいずれか1項に記載の蒸着ポリエステルフィルム。
5. 前記二軸延伸ポリエステルフィルムに粒子が含有されていることを特徴とする上記第1〜第4のいずれかに記載の蒸着ポリエステルフィルム。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、生産性を向上させた広幅のフィルムロールの使用においても、酸素や水蒸気などのガスバリア性に優れた蒸着ポリエステルフィルムを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の基材フィルムはポリエステル樹脂からなる二軸延伸ポリエステルフィルムである。本発明で使用するポリエステル樹脂は、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、ジオールまたはそのエステル形成性誘導体から合成されるポリマーである。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートが挙げられ、機械的特性および耐熱性、コストなどの観点からポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0016】
また、これらのポリエステルには、本発明の目的が損なわれない範囲であれば、他の成分が共重合されていてもよい。具体的には、共重合成分としては、ジカルボン酸成分では、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4、4−ジフェニルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸およびそのエステル形成性誘導体等が挙げられる。また、ジオール成分としてはジエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。また、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコールも挙げられる。共重合量としては、構成する繰り返し単位あたり10モル%以内が好ましく、5モル%以内がより好ましい。
【0017】
本発明のポリエステルの製造方法としては、まず、前述のジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、ジオールまたはそのエステル形成誘導体とを主たる出発原料として、常法に従い、エステル化またはエステル交換反応を行った後、さらに高温・減圧下で重縮合反応を行うことによって製造する方法等が挙げられる。
【0018】
本発明のポリエステルの極限粘度としては、製膜性や再回収性などの点から0.50〜0.9dl/gの範囲が好ましく、より好ましくは0.55〜0.8dl/gの範囲である。
【0019】
尚、本発明の基材となるポリエステルフィルムには、製膜時や蒸着加工時の易滑性の点から、粒子を配合することが好ましい。配合する粒子としては特に限定されるものではないが、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化チタン、カオリン、タルクなど無機粒子が挙げられ、また、架橋ポリスチレン樹脂や架橋アクリル樹脂などの有機粒子でも良い。
【0020】
本発明においてポリエステルフィルムに含有される粒子の粒径としては、粒子の凝集や透明性、粗大突起によるガスバリア性悪化の点から、平均粒径(レーザー回折散乱法より測定)は0.5〜 10μmの範囲が好ましく、より好ましくは1〜 7μmの範囲であり、更に好ましくは1.2〜 5μmの範囲である。
【0021】
本発明においてポリエステルフィルムに含有される粒子の含有量は、粒子の凝集や透明性、粗大突起によるガスバリア性悪化の点から、0.01〜 1重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.01〜 0.5重量%の範囲である。
【0022】
また、本発明の目的を損なわない範囲において、これらのポリエステル中には少量の他の重合体や酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、顔料またはその他の添加剤等が含有されていてもよい。
【0023】
次に本発明の基材となるポリエステルフィルムの製造方法について説明するが、特にこれに限定されるものではない。本発明のポリエステルは、上記ポリエステル樹脂を通常の方法で乾燥後、T字の口金からシート状に溶融押出し、静電印加法などにより、キャスティングドラムに密着させ冷却固化し、未延伸ポリエステルシートを得る。次いで、得られた未延伸シートをガラス転移温度(以下Tgと呼ぶ)以上に加熱し、速度差のあるロール間で長手方向に延伸する。その後、テンター内にてフィルムをTg以上で加熱して、幅方向に延伸する。引き続き、熱固定処理、幅方向の熱弛緩処理、冷却工程を経て、クリップで把持されていた耳部をトリミングして、ロール状に巻き取ることで二軸延伸ポリエステルフィルムを得ることができる。その後、指定の蒸着加工ロール幅にスリットし、蒸着用ポリエステルフィルムロールが得られる。
【0024】
本発明の基材となるポリエステルフィルムは、フィルム全幅において、後述の評価方法による長手方向の屈折率Nxと幅方向の屈折率Nyとの差(Nx−Ny)が−0.030以上0.015以下であることが好ましく、より好ましくは−0.025以上0.010以下である。Nx−Nyを−0.030以上0.015以下の範囲内にすることで、良好な配向バランスが得られ、蒸着加工時の張力における変形やシワの発生がなく、安定した蒸着薄膜が形成され、ガスバリア性の優れた蒸着ポリエステルフィルムが得られる。ここで、全幅における試料の採取位置は、幅方向の中央位置および中央位置から両端に向かって500mm毎の間隔の位置とし、両端近傍にて500mm間隔を確保できない場合、採取可能な端位置とする。また、各測定位置データの最大値及び最小値に着目し、その両者が前記範囲を満足していることで範囲内であるものする。
【0025】
本発明の基材となるポリエステルフィルムは、フィルム全幅において、後述の評価方法による150℃で30分間熱処理したときの熱収縮率が長手方向で0.8%以上2.0%以下、幅方向で−0.5%以上1.0%以下であることが好ましく、より好ましくは長手方向で1.0%以上1.8%以下、幅方向で−0.3%以上0.8%以下である。長手方向および幅方向の熱収縮率を上記の範囲内にすることで、蒸着加工時において、熱に対する寸法安定性が得られ、熱による変形やシワの発生がなく、安定した蒸着薄膜が形成され、ガスバリア性の優れた蒸着ポリエステルフィルムが得られる。ここで、全幅における試料の採取位置は、幅方向の中央位置および中央位置から両端に向かって500mm毎の間隔の位置とし、両端近傍にて500mm間隔を確保できない場合、採取可能な端位置とする。また、各測定位置データの最大値及び最小値に着目し、その両者が前記範囲を満足していることで範囲内であるものとする。
【0026】
本発明の基材となるポリエステルフィルムは、フィルム幅方向に対して、後述の評価方法による配向角の変化量が1mあたり0°以上20°以下であることが好ましく、より好ましくは0°以上16°以下、さらに好ましくは0°以上12°以下である。なお、ここでいう配向角とは、幅方向を基準とした場合の分子鎖配向の主軸の傾きである。配向角の変化量が1mあたり20°よりも大きい場合、蒸着加工ロール幅内での主となる分子配向方向が大きく異なるため、広幅のロールを使用した場合、蒸着加工時において、走行性悪化や斜めにシワが発生し易く、部分的に蒸着薄膜のムラや抜けが生じ、ガスバリア性が悪化するため好ましくない。また、配向角の変化量が大きい場合、フィルム全幅におけるNx−Nyのバラツキも大きくなるため好ましくない。ここで、全幅における試料の採取位置は、中央位置および中央位置から両端に向かって500mm毎の間隔の位置とし、両端近傍にて500mm間隔を確保できない場合、採取可能な端位置とする。また、隣接する2点の試料採取位置間から求める各変化量の最大値が範囲内にあることで前記範囲を満足しているものとする。
【0027】
本発明の基材となる二軸延伸ポリエステルフィルムは、フィルム幅方向に対して、後述の評価方法による150℃で30分間熱処理したときの、長手方向に対して、時計回り方向を正方向として+45°方向の熱収縮率と−45°方向の熱収縮率との差(以下、斜め熱収縮率差と呼ぶ)の変化量が1mあたり0%以上0.25%以下であることが好ましく、より好ましくは0%以上0.20%以下、さらに好ましくは0%以上0.15%以下である。上記の斜め熱収縮率差の変化量が1mあたり0.25%よりも大きい場合、蒸着加工ロール幅内での熱による収縮挙動が大きく異なるため、広幅のロールを使用した場合、走行性悪化やシワが発生し易く、部分的に蒸着薄膜のムラや抜けが生じ、ガスバリア性が悪化するため好ましくない。また、斜め熱収縮率差が大きい場合、フィルム全幅における長手方向と幅方向の熱収縮率のバラツキも大きくなるため好ましくない。ここで、全幅における試料の採取位置は、中央位置および中央位置から両端に向かって500mm毎の間隔の位置とし、両端近傍にて500mm間隔を確保できない場合、採取可能な端位置とする。また、隣接する2点の試料採取位置間から求める各変化量の最大値が範囲内にあることで前記範囲を満足しているものとする。
【0028】
本発明の目的とする基材の特性を有する二軸延伸ポリエステルフィルムを得ること、つまり、蒸着加工に好適な配向バランスおよび熱収縮率を獲得しつつ、広幅フィルムロール幅内の配向角や斜め熱収縮率差の変化量を上記範囲内に制御するためには、以下のような長手方向および幅方向の延伸条件、熱固定条件、熱弛緩条件等の製膜条件を適宜組み合わせることで達成可能となる。以下に詳細に説明する。
【0029】
(1)長手方向の延伸条件
本発明の目的に好適な基材の特性を有する二軸延伸ポリエステルフィルムを得るために、長手方向の延伸方法としては、長手方向の収縮応力を抑えた一軸延伸ポリエステルフィルムを得ることが好ましく、これにより、次工程であるテンター内で発生する長手方向の応力を抑えることができるため、ボーイングの低減を図ることが可能である。例えば、延伸温度としては(Tg+15)〜(Tg+55)℃、延伸倍率としては3.3〜4.7倍に延伸することが好ましい。延伸温度が(Tg+55)℃よりも高く、または3.3倍より低い場合、ボーイングが低減され、得られる二軸延伸ポリエステルフィルムの配向角や斜め熱収縮率差の変化量は低減されるものの、長手方向よりも幅方向の分子配向が大きくなりすぎるため、配向バランスが崩れ好ましくない。また、得られる二軸延伸ポリエステルフィルムの平面性も悪化するため好ましくない。一方、(Tg+15)℃よりも低く、または4.7倍よりも高い場合、収縮応力が増加し、ボーイングが増加するため、得られる二軸延伸ポリエステルフィルムの配向角や斜め熱収縮率差の変化量が増加するため好ましくない。
【0030】
また、未延伸フィルムの両端部は、T字の口金から出た樹脂がキャスティングドラムに接するまでの間、幅方向へ縮むネックイン現象が生じるため、中央部よりも厚みが厚くなる。そのため、長手方向の延伸時において、両端部の分子配向や収縮応力が中央部よりも高くなってしまい、該一軸延伸フィルムを幅方向に延伸した場合、ボーイングの増加だけでなく、得られる二軸延伸ポリエステルフィルムの中央部と両端部の物性差が大きくなる。そのため、端部の分子配向や収縮応力を低減させて、幅方向に物性差が少ない一軸延伸ポリエステルフィルムを得ることが好ましい。
【0031】
両端部の分子配向や収縮応力を低減させる方法としては、例えば、フィルム両端部を中央部とは別に加熱する方法、長手方向の延伸時に使用するニップロールとしてテーパー状のロールを使用する方法、複数のロール間で多段延伸する方法などが挙げられる。
【0032】
フィルム両端部を中央部とは別に加熱する方法では、中央部よりも厚い両端部を赤外線ヒーターなどで別に加熱することにより、両端部の分子配向や収縮応力を低減させた一軸延伸ポリエステルフィルムを得ることができる。温度条件としては、両端部のフィルム温度が中央部より0〜20℃高くなるように加熱するのが好ましい範囲であり、より好ましくは2〜15℃の範囲である。20℃よりも高くした場合、両端部が加熱白化してしまい、幅方向の延伸時に破断が発生するため好ましくない。フィルム両端部を加熱する割合としては、フィルム全幅に対して端部から5〜30%の範囲が好ましく、10〜20%の範囲がさらに好ましい。
【0033】
長手方向の延伸で使用するニップロールとしてテーパー状のロールを使用する方法は、延伸時におけるフィルム幅方向の延伸点を均一にするために有用な手段である。一般的に長手方向のロール間での延伸において、延伸点を固定するために、ロール上部にニップロールを設けるが、ネックイン現象により両端部の厚みが厚いため、フィルム幅方向の延伸点を合わせることが難しく、フィルム幅方向に対して均一に延伸することができない。よって、幅方向に分子配向や収縮応力のバラツキが生じてしまい、特に、両端部の分子配向や収縮応力が高くなってしまう傾向にある。そのため、中央部から両端部にかけてロール径の狭まったテーパー部を設けたニップロールを使用することで、フィルム幅方向に対して均一に延伸することが可能となり、両端部の分子配向や収縮応力を低減させることができる。
【0034】
また、長手方向の延伸において、一段階での延伸でなく、複数のロール間で多段階に延伸する方法では、延伸速度を制御しながら徐々に長手方向に延伸されるため、フィルム幅方向での物性差を低減させることができる。効果や設備面、コストの点から二段〜五段延伸が好ましい。
【0035】
(2)幅方向の延伸条件
本発明の目的に好適な基材の特性を有する二軸延伸ポリエステルフィルムを得るために、幅方向の延伸方法としては、蒸着加工に好適な配向バランスを保持しつつ、ボーイングの低減を図る条件が好ましく、例えば、延伸温度としては(Tg+15)〜(Tg+60)℃、延伸倍率としては3.5〜4.7倍が好ましい。延伸温度が(Tg+60)℃よりも高く、または3.5倍より低い場合、得られる二軸延伸ポリエステルフィルムの幅方向よりも長手方向の分子配向が大きくなりすぎるため、配向バランスが崩れ好ましくない。また、得られる二軸延伸ポリエステルフィルムの平面性も悪化するため好ましくない。一方、(Tg+15)℃よりも低く、または4.7倍よりも高い場合、ボーイングが低減され、得られる二軸延伸ポリエステルフィルムの配向角の変化量は低減されるものの、長手方向よりも幅方向の分子配向性が大きくなりすぎるため、配向バランスが崩れ好ましくない。また、幅方向の分子配向性が大きすぎる場合、配向角の傾きと熱収縮率の歪みの変化が比例的な関係とはならず、配向角の変化量は低減されるものの、一方で、斜め熱収縮率差の変化量はむしろ増加傾向を示すため好ましくない。
【0036】
(3)熱固定条件
本発明の目的に好適な基材の特性を有する二軸延伸ポリエステルフィルムを得るために、熱固定方法としては、蒸着加工に好適な長手方向および幅方向の熱収縮率を達成しつつ、高温処理による熱収縮のボーイング増加を抑える条件が好ましい。例えば、熱固定温度としては、220〜245℃が好ましい。熱固定温度が245℃よりも高い場合、ボーイングが増加し、得られる二軸延伸ポリエステルフィルムの配向角や斜め熱収縮率差の変化量が増加するため好ましくない。一方、220℃よりも小さい場合、長手方向および幅方向ともに熱収縮率が高くなり、蒸着加工時の熱寸法安定性が悪くなるため好ましくない。
【0037】
(4)熱弛緩条件
本発明の目的に好適な基材の特性を有する二軸延伸ポリエステルフィルムを得るために、熱弛緩方法としては、蒸着加工に好適な幅方向の熱収縮率を達成しつつ、熱緩和処理にて幅方向の拘束力が減少し、変形し易くなることによるボーイング増加を抑える条件が好ましい。例えば、幅方向の熱弛緩率としては4〜8%が好ましい。熱緩和率が4%未満の場合、得られる二軸延伸ポリエステルフィルムの幅方向の熱収縮率が高くなり、蒸着加工時の寸法安定性が悪くなるため好ましくない。一方、熱緩和率が8%より大きい場合、ボーイングが増加し、得られる二軸延伸ポリエステルフィルムの配向角や斜め熱収縮率差の変化量が増加するため好ましくない。
【0038】
また、熱弛緩処理工程では、フィルムが熱緩和により収縮されるまでの間、幅方向の拘束力が減少して自重により弛んでしまったり、また、随伴気流によってフィルムが膨らんでしまうことがあるため、フィルムが非常に上下に変動し易い状況下にある。このため、この熱弛緩工程では、フィルムの搬送状態により、得られる二軸延伸ポリエステルフィルムの配向角や斜め熱収縮率差の変化量が大きく変動する。軽減させる方法としては、例えば、上下部のノズルから吹き出す風速を適宜調整することで、フィルムが平行になるように保つことが挙げられる。フィルムの好ましい状態としては、クリップで把持されたフィルム両端部を直線で結んだ面に対して、中央部の最大の膨らみが±100mm以下であり、より好ましくは±50mm以下である。尚、上部への膨らみを+、下部への膨らみを−とした。
【0039】
本発明の基材となる二軸延伸ポリエステルフィルムは、包装用途としての機械的強度保持や柔軟性の点から、厚みは5〜20μmであることが好ましく、さらに好ましくは、8〜16μmである。
【0040】
本発明の基材となる二軸延伸ポリエステルフィルムは、層構成としては単層でもよく、A/Bの二層、A/B/AまたはA/B/Cとした三層、更には三層以上の多層構成でもよく、特に限定しない。また、各層の厚み比率も特に限定しない。多層構造を採用することで、蒸着を施す面の表面粗さをコントロールでき、また、片側に粒子を含有させない層を設けるなど、透明性をコントロールする手段としても利用できる。これらの積層構造は共押出し成形法による積層方法が好適に採用できる。
【0041】
本発明の基材となるポリエステルフィルムは少なくとも片面にコロナ放電処理がなされていることが好ましく、コロナ放電処理された面が蒸着層を積層する面であることが好ましい。コロナ放電処理することで蒸着層との密着性が良くなり、優れたガスバリア性を有するポリエステルフィルムが得られる。
【0042】
本発明の基材となるポリエステルフィルムからなるマスターロール幅は、特に限定されないが、生産性の点から、4000mm以上が好ましく、より好ましくは5000mm以上、さらに好ましくは6000mm以上である。しかしながら、あまりにもマスターロールの幅が広過ぎると取扱いが困難になるので、20000mm以下であることが好ましい。
【0043】
本発明の基材となる二軸延伸ポリエステルフィルムからなるマスターロールをスリットすることで得られる蒸着用ポリエステルフィルムのロール幅は、特に限定されないが、生産性の点から、1500mm以上が好ましく、より好ましくは1750mm以上、さらに好ましくは2000mm以上である。しかしながら、あまりにもスリットロールの幅が広過ぎると取扱いが困難になるので、5000mm以下であることが好ましい。
【0044】
本発明の基材となる二軸延伸ポリエステルフィルムに蒸着させる薄膜としては、金属または金属酸化物が挙げられ、酸素及び水蒸気バリア性、生産性、透明性の点から、酸化アルミニウム、酸化珪素またはその混合物が好ましい。
【0045】
本発明で得られる蒸着ポリエステルフィルムは、包装材として使用した場合の内容物の品質保持性の点から、酸素透過量が、20ml/m
2・day・MPa以下が好ましい。
【0046】
本発明で得られる蒸着ポリエステルフィルムは、包装材として使用した場合の内容物の品質保持性の点から、水蒸気透過量が、2.0g/m
2/day以下が好ましい。
【実施例】
【0047】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、本発明は以下に述べる実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における各評価項目は次の方法で測定した。
【0048】
(1)極限粘度[η]
フェノール/ テトラクロロエタン= 60 /40(重量比)の混合溶媒に溶解し、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。なお、測定は3回行い、その平均値を求めた。
【0049】
(2)ガラス転移温度(Tg)
示差走査型熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製DSC6220型)を用いて、試料を窒素雰囲気下にて280℃まで溶融し、5分間保持した後、液体窒素にて急冷し、室温より昇温度速度20℃/分の条件にて測定を行った。
【0050】
(3)屈折率
ナトリウムD線(波長589nm)を光源として、アッベ屈折計を用いて長手方向、幅方向の屈折率(Nx、Ny)を測定し、(Nx−Ny)を計算して求めた。なお、測定は得られた二軸延伸フィルムロール全幅に対して、中央および中央位置より両端に向かって500mm毎の間隔で測定を行った。また、両端部近傍にて500mm間隔を確保できない場合は、測定可能な端位置にて測定を行った。このようにして求めたNx−Nyに対して、ロール全幅でのNx−Nyの最大値と最小値を求めた。
【0051】
(4)長手方向および幅方向の熱収縮率
長手方向および幅方向に対し、試料を幅10mm、長さ250mmに切り取り、200mm間隔で印を付け、5gfの一定張力下で印の間隔(A)を測定する。次いで、フィルムを無荷重下の状態で、150℃で30分間加熱処理した後、5gfの一定張力下で印の間隔(B)を測定し、式(1)より熱収縮率を求めた。なお、測定は得られた二軸延伸フィルムロール全幅に対して、中央および中央位置より両端に向かって500mm毎の間隔で測定を行った。また、両端部近傍にて500mm間隔を確保できない場合は、測定可能な端位置にて測定を行った。このようにして求めた熱収縮率に対して、ロール全幅での長手方向および幅方向の熱収縮率の最大値と最小値を求めた。
熱収縮率(%)={(A−B)/A}×100 式(1)
【0052】
(5)斜め熱収縮率差のフィルム幅方向に対する変化量
まず、長手方向の軸を基準として、時計回り方向を正方向として+45°方向および−45°方向に試料を幅10mm、長さ250mmに切り取り、上記の方法と同様に、+45°方向および−45°方向に対する熱収縮率を求め、式(2)より、斜め熱収縮率差を求めた。なお、測定は得られた二軸延伸フィルムロール全幅に対して、中央および中央位置より両端に向かって500mm毎の間隔で測定を行い、隣接する各二点間の斜め熱収縮率差の変化量をそれぞれ求め、式(3)より1mあたりに換算した。また、両端部近傍にて500mm間隔を確保できない場合は、測定可能な端位置にて測定を行い、測定したサンプル間隔の距離で割り返し、同様に1mあたりに換算した。
熱収縮率の斜め差(%)=熱収縮率(+45°方向)−熱収縮率(−45°方向)
式(2)
1mあたりの斜め熱収縮率差の変化量(%/m)
=|隣接する二点間の斜め熱収縮率差(%)|÷500(mm)×1000(mm/m) 式(3)
そして、算出される隣接する二点の試料採取位置間の複数の変化量の最大値を、そのフィルムの変化量評価結果とした。
ここで、式(2)により、熱収縮率の斜め差(%)のデータはプラスデータの場合もあれば、マイナスデータの場合もある。そして、式3において、隣接する二点間の斜め熱収縮率差(%)の絶対値を算出すれば、隣接する二点の試料採取位置の熱収縮率の斜め差(%)のどちらからどちらを差し引いても同じ正の値となり、どちらからどちらを差し引いても同じ1mあたりの斜め熱収縮率差の変化量(%/m)を算出できる。
【0053】
(6)フィルム幅方向における配向角の変化量
フィルムを100mm×100mmに切り取り、王子計測株式会社製のMOA−6004型分子配向計を用いて、フィルムの幅方向の軸を基準にして、分子鎖主軸の配向角を求めた。このとき、フィルム幅方向に対して反時計回りの傾きを+、時計回りを−とした。なお、測定は得られた二軸延伸フィルムロール全幅に対して、中央および中央位置より両端に向かって500mm毎の間隔で測定を行い、隣接する各二点間の配向角の変化量をそれぞれ求め、式(4)より1mあたりに換算した。また、両端部近傍にて500mm間隔を確保できない場合は、測定可能な端位置にて測定を行い、測定したサンプル間隔の距離で割り返し、同様に1mあたりに換算した。
1mあたりの配向角の変化量(°/m)
=|隣接する二点間の配向角の差(°)|÷500(mm)×1000(mm/m) 式(4)
そして、算出される隣接する二点の試料採取位置間の複数の変化量の最大値を、そのフィルムの変化量評価結果とした。
【0054】
(7)酸素透過率
酸素透過量は、酸素透過度測定装置(Modern Controls社製OX-TRAN100)を用いて、温度23℃、湿度65%の条件にて測定を行い、以下のように評価した。
◎:0以上20(ml/m
2・day・MPa)未満
○:20以上40(ml/m
2・day・MPa)未満
×:40(ml/m
2・day・MPa)以上
【0055】
(8)水蒸気透過率
水蒸気透過量は、水蒸気透過度測定装置(Modern Controls社製PERMATRAN-W)を用いて、温度40℃、湿度90%の条件にて測定を行い、以下のように評価した。
◎:0以上2(g/m
2・day)未満
○:2以上4(g/m
2・day)未満
×:4(g/m
2・day)以上
【0056】
(9)加工性および外観評価
蒸着加工時のフィルムの加工性および加工後の外観評価を○、×で評価した。たるみやシワがなく、走行性が良好であれば、○とした。
【0057】
[実施例1]
平均粒径が2.5μmのシリカを0.1重量%含有したポリエチレンテレフタレート(極限粘度=0.62dl/g、Tg=78℃)を、乾燥後、押出機に供給し、285℃で溶融し、T字の口金から吐出させ、キャスティングドラムにて冷却固化させ、未延伸のポリエチレンテレフタレートシートを得た。このシートを115℃に加熱し、一段目を1.4倍、二段目を2.86倍とした二段延伸にて、全延伸倍率4.0倍で長手方向に延伸した。このとき、未延伸シートの全幅に対して両端部から10%の位置にかけて赤外線ヒーターを設置し、中央部よりも端部のフィルム温度を+3℃とした。引き続き、温度115℃、延伸倍率4.3倍にて幅方向に延伸し、235℃で熱固定し、幅方向に5%熱弛緩処理させた。このとき、上下部のノズル風量を調整することで、熱弛緩ゾーンのフィルム中央部の膨らみが+50mmになるようにした。そして、耳部をトリミングし、コロナ放電処理を経てロール状に巻取ることで、厚み12μm、ロール幅6300mmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのマスターロールを得た。得られたフィルムの屈折率、熱収縮率および配向角をそれぞれ測定した。また、得られたマスターロールは各2200mm幅にスリットし、蒸着加工用フィルムロールを得た。上記で得られた蒸着加工用フィルムロールのコロナ処理面に、無機薄膜層として、酸化アルミニウムの無機酸化物層を電子ビーム蒸着法で形成した。蒸着源として、3〜5mm程度の大きさの粒子状のAl
2O
3(純度99.9%)を用い、加熱源として、電子銃を使用し、酸素ガスの供給を調整し、真空度10
−4Torr以下の条件で蒸着を行った。得られた酸化アルミニウム薄膜層の膜厚は20nmであった。酸素および水蒸気透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0058】
[実施例2]
長手方向の延伸条件として、温度を105℃、一段目を1.3倍、二段目を2.77倍、全延伸倍率を3.6倍で行い、端部のフィルム温度を中央部よりも+2℃とし、幅方向の延伸条件として、温度を118℃、延伸倍率を4.5倍、熱固定温度を230℃、熱弛緩ゾーンのフィルム中央部の膨らみを0mmになるように変更した以外は実施例1と同様の方法で、厚み15μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。実施例1と同様に、スリット加工および酸化アルミニウムの蒸着加工を行い、酸素および水蒸気透過率を測定した。結果は表1に示す。
【0059】
[実施例3]
平均粒径が2.5μmのシリカを0.14重量%含有したポリエチレンテレフタレート(A)(極限粘度=0.62dl/g、Tg=78℃)と平均粒径が2.5μmのシリカを0.035重量%含有したポリエチレンテレフタレート(B)(極限粘度=0.62dl/g、Tg=78℃)を乾燥後、別々の押出機に供給し、285℃で溶融し、A/B/Aの二種三層の構成になるように合流させた後、T字の口金から吐出させ、キャスティングドラムにて冷却固化させ、未延伸のポリエチレンテレフタレートシートを得た。このとき各層の厚さの比としては、A/B/A=7/86/7になるように吐出量を調整した。
【0060】
このシートを用い、長手方向の延伸条件として、温度を116℃、一段目を1.5倍、二段目を2.85倍、全延伸倍率を4.3倍で行い、端部のフィルム温度を中央部よりも+4℃とし、幅方向の延伸条件として、温度を112℃、延伸倍率を4.2倍、熱固定温度を235℃、幅方向に4%熱弛緩処理を行い(フィルム中央部の膨らみが+50mmであった)、それ以外は実施例1と同様の方法で、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。実施例1と同様に、スリット加工および酸化アルミニウムの蒸着加工を行い、酸素および水蒸気透過率を測定した。結果は表1に示す。
【0061】
[実施例4]
長手方向の延伸条件として、温度を110℃、一段目を1.3倍、二段目を3.0倍、全延伸倍率を3.9倍で行い、端部のフィルム温度を中央部よりも+3℃とし、熱固定温度を225℃、幅方向に6%熱弛緩処理を変更した以外は実施例1と同様の方法で、厚み9μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。実施例1と同様に、スリット加工および酸化アルミニウムの蒸着加工を行い、酸素および水蒸気透過率を測定した。結果は表1に示す。
【0062】
[実施例5]
実施例1の方法で得られた蒸着加工用フィルムロールを用い、コロナ処理面に無機蒸着層として、二酸化珪素の無機酸化物層を電子ビーム蒸着法で形成した。蒸着源として、3〜5mm程度の大きさの粒子状のSi(純度99.99%)とSiO
2(純度99.9%)を用い、加熱源として、電子銃を使用し、酸素ガスの供給を調整し、真空度10
−4Torr以下の条件で蒸着を行った。得られた二酸化珪素薄膜層の膜厚は20nmであった。酸素および水蒸気透過率を測定した。結果は表1に示す。
【0063】
[実施例6]
実施例1の方法で得られた蒸着加工用フィルムロールを用い、コロナ処理面に無機蒸着層として、二酸化珪素と酸化アルミニウムの複合無機酸化物層を電子ビーム蒸着法で形成した。蒸着源としては、3mm〜5mm程度の粒子状SiO
2(純度99.9%)とA1
2O
3(純度99.9%)とを用いた。ここで複合酸化物層の組成は、SiO
2/A1
2O
3(質量比)=60/40であった。加熱源として、電子銃を使用し、真空度10
−4Torr以下の条件で蒸着を行った。得られた二酸化珪素と酸化アルミニウム薄膜層の膜厚は20nmであった。酸素および水蒸気透過率を測定した。結果は表1に示す。
【0064】
[比較例1]
長手方向の延伸条件として、一段目を1.6倍、二段目を3.1倍、全延伸倍率を4.9倍で行い、端部の加熱は行わず(中央部よりも端部のフィルム温度は−3℃であった)、幅方向に10%熱弛緩処理し、熱弛緩ゾーンの上下部のノズル風量を調整は行わず(フィルム中央部の膨らみが+150mmであった)、それ以外は実施例1と同様の方法で、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。同様に、スリット、蒸着加工を行い、酸素および水蒸気透過率を測定した。結果は表1に示す。
【0065】
[比較例2]
長手方向の延伸条件として、一段目を1.3倍、二段目を2.92倍、全延伸倍率を3.8倍で行い、端部の加熱は行わず(中央部よりも端部のフィルム温度は−3℃であった)、幅方向の延伸条件として、温度を118℃、延伸倍率を4.8倍、熱固定温度を248℃、幅方向に5%熱弛緩処理、熱弛緩ゾーンの上下部のノズル風量を調整は行わず(フィルム中央部の膨らみが+150mmであった)、それ以外は実施例1と同様の方法で、厚み15μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。同様に、スリット、蒸着加工を行い、酸素および水蒸気透過率を測定した。結果は表1に示す。
【0066】
[比較例3]
熱固定温度を190℃、幅方向に2%熱弛緩処理、熱弛緩ゾーンの上下部のノズル風量を調整は行わず(フィルム中央部の膨らみが+120mmであった)、それ以外は実施例1と同様の方法で、厚み9μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。同様に、スリット、蒸着加工を行い、酸素および水蒸気透過率を測定した。結果は表1に示す。
【0067】
実施例より得られた二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを基材として用いた蒸着用フィルムは、蒸着加工性に優れ、酸素および水蒸気バリア性に優れたガスバリア性フィルムが得られた。一方、比較例1〜3より得られた二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを基材として用いた蒸着用フィルムは、蒸着加工時にシワ発生や走行性が悪く、得られたフィルムとしては酸素および水蒸気のガスバリア性に劣るものであった。
【0068】
【表1】