(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記エラストマー(C)は、ポリウレタンエラストマーであり、100重量部の前記脂環式エポキシ化合物(A)に対して200〜750重量部含まれる、請求項1記載のプリント配線板用接着剤組成物。
前記脂環式エポキシ化合物(A)は、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、または、そのカプロラクトン付加物のうち少なくもいずれか一方を含む、請求項5記載のプリント配線板用接着剤組成物。
前記α,β−不飽和ジカルボン酸変性ロジンの水素化物(B)は、ハーゼン単位色数が200以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のプリント配線板用接着剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔プリント配線板用接着剤組成物〕
以下、本発明のプリント配線板用接着剤組成物(以下、接着剤組成物ともいう)の一実施形態について説明する。本実施形態の接着剤組成物は、脂環式エポキシ化合物(A)(以下、成分(A)ともいう)、酸価が300〜350mgKOH/gである、α,β−不飽和ジカルボン酸変性ロジンの水素化物(B)(以下、成分(B)ともいう)、およびガラス転移温度が−35℃〜5℃であり、ハーゼン単位色数が300以下であるエラストマー(C)(以下、成分(C)ともいう)をそれぞれ特定量含有する。以下、それぞれについて説明する。
【0015】
(脂環式エポキシ化合物(A))
成分(A)は、格別限定なく、各種公知のものを使用できる。一例を挙げると、成分(A)は、無色透明性、低温硬化性および耐薬品性の点から、下記一般式(1)で表されるエポキシシクロヘキサン化合物、または、そのカプロラクトン付加物の少なくもいずれか一方である。
【化1】
(式中、R
1およびR
2はそれぞれ水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、Xはエポキシ基含有置換基を示す)
【0016】
より具体的には、成分(A)は、下記一般式(2)または一般式(3)で表されるエポキシシクロヘキサン化合物、または、そのカプロラクトン付加物の少なくもいずれか一方であってもよい。
【化2】
(式中、R
1〜R
4はそれぞれ水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、ALKは炭素数1〜4のアルキレン基を示す)
【化3】
(式中、R
1、R
2、R
5〜R
7はそれぞれ水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す)
【0017】
さらに具体的には、成分(A)は、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)オキサレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)ピペレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(6−メチル−3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ−2−メチル)シクロヘキサンカルボキシレート;3,4−エポキシ−3−メチルシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ−3−メチル)シクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ−5−メチル)シクロヘキサンカルボキシレートおよびこれらのカプロラクトン付加物、リモネンジオキサイド、ビニルシクロヘキセンジオキサイド等が例示される。これらは、2種以上が組み合わせて使用されてもよい。これらはいずれも常法により合成し得る。これらの中でも、成分(A)は、無色透明性、低温硬化性および耐薬品性の点から、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート(市販品として、「セロキサイド2021P」((株)ダイセル製)またはそのカプロラクトン付加物(市販品として、「セロキサイド2081」、「セロキサイド2083」((株)ダイセル製)や、リモネンジオキサイド(市販品として、「リモネンジオキサイド」(RENESSENZ社製)が好ましい。
【0018】
なお、本実施形態の目的や効果を逸脱しない範囲で、他のエポキシ樹脂が成分(A)と併用されてもよい。他のエポキシ樹脂としては、格別限定なく、各種公知のものを使用できる。他のエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂等のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂等が例示される。これらは、2種以上が組み合わせて使用されてもよい。他のエポキシ樹脂の使用量は、特に限定されない。他のエポキシ樹脂は、通常、成分(A)に対して30重量%未満程度使用される。
【0019】
(α,β−不飽和ジカルボン酸変性ロジンの水素化物(B))
成分(B)は、原料のロジン類にα,β−不飽和ジカルボン酸を付加反応させたものをさらに水素化処理した水素化物である。成分(B)は、(I)α,β−不飽和ジカルボン酸類とロジン類とのディールス・アルダー反応物を水素化する方法や、(II)当該ディールス・アルダー反応物から公知の方法で単離した変性樹脂酸(米国特許2628226号参照)を水素化する方法、(III)ロジン類から公知の方法で単離したレボピマル酸(J.Am.Chem.Soc.70,334(1948)参照)とα,β−不飽和ジカルボン酸類とのディールス・アルダー反応物を水素化する方法等によって得られ得る。これらの中でも、方法(I)が、工業的には簡便な方法である。
【0020】
成分(B)の原料であるロジン類としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等が例示される。ロジン類の精製法は、特に制限されない。得られる接着剤組成物の色調などから、ロジン類は、減圧留去法、水蒸気蒸留法、抽出法、再結晶法等で精製したものが好適に使用される。
【0021】
精製する際には、有機溶媒が適宜使用される。具体的には、有機溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、デカリン等の脂環式炭化水素類等が例示される。これらの有機溶媒は、2種以上が組み合わせて使用されてもよい。
【0022】
α,β−不飽和ジカルボン酸としては、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸等が例示される。これらの中でも、α,β−不飽和ジカルボン酸は、反応の安定性および収率の点から、無水マレイン酸が好ましい。α,β−不飽和ジカルボン酸の使用量は、得られる成分(B)の有機溶剤に対する溶解性等の点から、通常は、ロジン類100重量部に対して15重量部以上であり、好ましくは17.5重量部以上である。また、α,β−不飽和ジカルボン酸の使用量は、通常は、25重量部以下であり、好ましくは23.5重量部以下である。
【0023】
ロジン類をα,β−不飽和ジカルボン酸と反応させる条件は、特に限定されない。一例を挙げると、ロジン類とα,β−不飽和ジカルボン酸との反応は、通常、加熱下で溶融させたロジン類に、α,β−不飽和ジカルボン酸を上記割合となるよう加えて、温度180〜240℃程度で、1〜9時間程度、反応させる条件が採用される。また、ロジン類とα,β−不飽和ジカルボン酸との反応は、好適には、接着剤組成物の色調を向上させるために、密閉した反応系内に窒素等の不活性ガスを吹き込みながら行われる。当該反応では、たとえば塩化亜鉛、塩化鉄、塩化スズ等のルイス酸や、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等のブレンステッド酸等の公知の触媒が使用されてもよい。これら触媒の使用量は、ロジン類に対して通常0.01〜10重量%程度である。
【0024】
得られたα,β−不飽和ジカルボン酸変性ロジンには、原料由来の樹脂酸が含まれてもよい。ただし、原料由来の樹脂酸の含有量は、有機溶剤に対する溶解性の点から、40〜60重量%であることが好ましい。
【0025】
成分(B)は、上記α,β−不飽和ジカルボン酸変性ロジンを各種公知の方法で水素化することによって得られる。具体的には、水素化処理は、α,β−不飽和ジカルボン酸変性ロジンを、水素化触媒存在下、温度が100〜300℃程度(好ましくは150〜260℃)、水素圧力が1〜25MPa程度(好ましくは5〜20MPa)で反応させることによって行われる。水素化触媒としては、パラジウムカーボン、ロジウムカーボン、ルテニウムカーボン、白金カーボン等の担持触媒;ニッケル、白金等の金属粉末;ヨウ素、ヨウ化鉄等のヨウ素化物等が例示される。水素化触媒の使用量としては、α,β−不飽和ジカルボン酸変性ロジンに対して通常0.01重量%以上であり、好ましくは0.10重量%以上である。また、水素化触媒の使用量としては、α,β−不飽和ジカルボン酸変性ロジンに対して通常10.0重量%程度以下であり、好ましくは5.0重量%以下である。また、水素化処理は、必要に応じて、溶媒として有機溶剤が利用されてもよい。なお、得られた成分(B)は、耐熱性および耐薬品性向上の点から、上記したロジン類の精製法により精製されることが好ましい。
【0026】
水素化処理により、アビエチン酸等の原料ロジン由来の樹脂酸も同時に水素化される。これにより、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸等が生成される。そのため、得られた成分(B)は、色調が良好になるだけでなく、接着剤組成物の被着体への濡れ性が増し、金属箔への接着性も高まる。また、このような成分(B)を用いた接着剤組成物は、無色透明な接着剤層を形成し得る。
【0027】
なお、成分(B)に含まれる樹脂酸の水素化物(デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸等)の含有率は、有機溶剤に対する溶解性、金属箔への接着性の点から、合計で20〜60重量%であることが好ましい。
【0028】
得られた成分(B)の色調は、格別限定されない。成分(B)の色調は、得られる接着剤層の透明性の点から、好ましくはハーゼン単位色数(JIS K 0071−1に準拠。以下同様)が200以下であり、より好ましくはハーゼン単位色数が150以下である。
【0029】
成分(B)の酸価は、通常、300mgKOH/g程度以上であり、320mgKOH/g以上であることが好ましい。また、成分(B)の酸価は、通常、350mgKOH/g程度以下であり、345mgKOH/g以下であることが好ましい。当該酸価の成分(B)は、各種有機溶剤に対して適度に溶解しやすい。また、本実施形態の接着剤組成物を用いて得られるプリント配線板用積層板は、耐薬品性が向上しやすい。なお、酸価は、成分(B)をアセトン/水酸化カリウムの混合溶媒中で溶解させた後、フェノールフタレイン溶液を少量加えた液を、塩酸で滴定することにより算出され得る(JIS K−0070に準拠)。
【0030】
成分(B)の配合量(固形分換算)は、成分(A)100重量部に対して50重量部以上であればよく、60重量部以上であることが好ましい。また、成分(B)の配合量は、成分(A)100重量部に対して220重量部以下であればよく、210重量部以下であることが好ましい。当該範囲から外れると、成分(A)または成分(B)は、架橋反応後、接着剤層に残り、耐薬品性が低下し易い。また、成分(B)の配合量は、成分(A)に存在するエポキシ基1当量に対して、成分(B)中のカルボキシ当量(三級カルボキシ基と無水環との合計)で、通常は、0.1当量程度以上が好ましく、0.5当量以上がより好ましい。また、成分(B)の配合量は、成分(A)に存在するエポキシ基1当量に対して、2.0当量程度以下が好ましく、1.5当量以下がより好ましい。
【0031】
(エラストマー(C))
成分(C)は、硬化後の接着剤層に柔軟性を付与するとともに、ポリエステルなどのプラスチックフィルムとの接着性も高める目的で使用される。
【0032】
成分(C)は、ガラス転移温度(JIS K−7244−1に準拠)が−35℃〜5℃であれば特に限定されない。ガラス転移温度は、−35℃以上であればよく、好ましくは−30℃以上であり、より好ましくは−25℃以上である。また、ガラス転移温度は、5℃以下であればよく、好ましくは−5℃以下であり、より好ましくは−15℃以下である。ガラス転移温度が−35℃未満の場合、接着剤組成物は、エッチング処理時における耐薬品性が乏しくなりやすい。また、ガラス転移温度が5℃を超える場合、硬化後の接着剤層の柔軟性や、プラスチックフィルムとの接着性が低下しやすい。
【0033】
また、成分(C)の色調は、得られる接着剤層の透明性の点から、ハーゼン単位色数が300以下であればよく、好ましくは200以下であり、より好ましくは150以下である。
【0034】
上記ガラス転移温度を示す成分(C)は、たとえばアクリル系エラストマーであってもよく、ポリウレタンエラストマーであってもよい。
【0035】
成分(C)がアクリル系エラストマーである場合、成分(C)は、カルボキシル基、ヒドロキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1つの官能基を有するものであって、(1)アクリル酸エステル、α−置換アクリル酸エステルを主成分とし、これに架橋点として上記官能基の少なくとも1個を含有させてなる重合体、または(2)上記官能基を有するモノマーの少なくとも1個を上記主成分であるモノマーとグラフト重合させたポリマーがあげられる。具体的には、成分(C)は、アクリル酸エステルまたはα−置換アクリル酸エステル(c1)(以下、成分(c1)という)の1種を主成分とした構成成分に、エポキシ基含有モノマー(c2)(以下、成分(c2)という)、カルボキシル基含有モノマー(c3)(以下、成分(c3)という)、水酸基含有モノマー(c4)(以下、成分(c4)という)からなる群から選ばれた少なくとも1つの官能基を有するモノマーを共重合させたものが例示される。
【0036】
成分(c1)としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル等のエポキシ基、カルボキシル基および水酸基を有さないモノマーが例示される。成分(c2)としては、成分(c1)以外でカルボキシル基および水酸基を有しない、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等が例示される。成分(c3)としては、成分(c1)〜(c2)以外で水酸基を有しない、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸等が例示される。成分(c4)としては、成分(c1)〜(c3)以外のメタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート等の多価アルコールのジメタクリレート類、メトキシメチルアクリレート等のアルコキシアクリレート等が例示される。これらは2種以上が組み合わせて使用されてもよい。さらに、必要に応じて他のビニルモノマー、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル等が共重合されてもよい。
【0037】
得られる成分(C)のアクリルエラストマーとしては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリル酸オクチル、アクリル酸メチル−スチレン共重合体、アクリル酸メチル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸ブチル−アクリロニトリル−アクリル酸共重合体、アクリル酸ブチル−アクリル酸エチル−アクリロニトリル共重合体等のポリアクリル酸エステル系共重合体が例示される。これらの中でも、接着剤組成物がプラスチックフィルムや金属箔と良好に接着できるために、成分(C)は、アクリル酸ブチル−アクリル酸エチル−アクリロニトリル共重合体であることが好ましい。その市販品としては、「テイサンレジンSG−70L」「テイサンレジンWS−023 EK30」(ナガセケムテックス(株)製)が例示される。
【0038】
成分(C)がアクリルエラストマーである場合、このような成分(C)は、成分(A)100重量部に対して200重量部以上となるよう含まれることが好ましく、230重量部以上となるように含まれることがより好ましい。また、このような成分(C)は、成分(A)100重量部に対して750重量部以下となるように含まれることが好ましく、710重量部以下となるように含まれることがより好ましい。成分(C)の含有量が200重量部未満の場合、接着剤組成物は、接着性が低下する傾向がある。一方、成分(C)の含有量が750重量部を超える場合、接着剤組成物は、耐薬品性が低下する傾向がある。
【0039】
成分(C)がアクリル系エラストマーである場合、成分(C)の数平均分子量は、特に限定されない。一例を挙げると、成分(C)の数平均分子量は、150,000〜300,000程度である。
【0040】
一方、成分(C)がポリウレタンエラストマーである場合、このような成分(C)は、たとえば、高分子量ポリオール(c5)(以下、成分(c5)ともいう)、ジイソシアネート化合物(c6)(以下、成分(c6)ともいう)および鎖伸長剤(c7)(以下、成分(c7)ともいう)を反応させることによって得られる。
【0041】
成分(c5)は、具体的には、酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフラン等の重合体もしくは共重合体等のポリエーテルポリオール類;エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4−ブチンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の飽和および不飽和の各種公知のグリコール類またはn−ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル類、バーサティック酸グリシジルエステル等のモノカルボン酸グリシジルエステル類、ダイマー酸を還元して得られるダイマージオールと、アジピン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の二塩基酸、もしくはこれらに対応する酸無水物やダイマー酸などを脱水縮合せしめて得られるポリエステルポリオール類;ε−カプロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合して得られるポリカプロラクトンポリオール類;その他ポリカーボネートポリオール類、ポリブタジエングリコール類、ビスフェノールAに酸化エチレンもしくは酸化プロピレンを付加して得られるグリコール類等のポリウレタンの製造に用いられる各種公知の高分子ポリオールが例示される。また、ポリエーテルポリエステルポリオールは、ポリエステルポリオール類にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等を付加重合させることによって得られ得る。
【0042】
成分(c6)は、具体的には、芳香族、脂肪族および脂環族のジイソシアネート類が例示される。より具体的には、成分(c6)は、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ダイマージイソシアネート等が例示される。これらは2種以上が適宜組み合わせて使用されてもよい。また、これらの中でも、接着剤層の無色透明性の点から、イソホロンジイソシアネートが好ましい。なお、これらに加えて、本実施形態の目的や効果を逸脱しない範囲で、他のジイソシアネートが併用されてもよい。他のジイソシアネートとしては、格別限定なく、各種公知のものを使用できる。他のジイソシアネートは、たとえば、成分(c6)に対して30重量%未満程度となるよう併用されてもよい。
【0043】
成分(c7)は、具体的には、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアミン、ダイマージアミン等のポリアミン類、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等の分子内に水酸基を有するジアミン類、さらには上記低分子グリコール類等が例示される。これらは、2種以上が適宜組み合わされて使用されてもよい。これらの中でも、接着剤層の無色透明性の点から、イソホロンジアミンが好ましい。
【0044】
成分(C)の原料として、必要に応じて、鎖伸長停止剤(c8)(以下、成分(c8)ともいう)が上記反応成分(成分(c5)〜成分(c7))中に添加されてもよい。成分(c8)は、具体的には、ジ−n−ブチルアミン等のジアルキルアミン、ジエタノールアミン等のジヒドロキシアルキルアミンや、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、およびイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類等が例示される。
【0045】
成分(C)の製造では、後述する有機溶剤(D)(以下、成分(D)ともいう)が格別限定なく使用されてもよい。
【0046】
成分(C)の製造方法としては、特に限定されない。成分(C)は、たとえば、以下の2種類の方法によって製造され得る。
(方法1)二段法:ポリオールと過剰のジイソシアネート化合物とを、温度70〜150℃程度、3〜10時間程度反応させて、高分子ポリオールの末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを調製し、次いでこれを適当な溶媒中で鎖伸長剤および必要により鎖長停止剤と反応させる方法。
(方法2)一段法:ポリオール、ジイソシアネート化合物、鎖伸長剤および必要により鎖長停止剤を一度に反応させる方法。
これらの中でも、均一なポリマー溶液を得るには、方法1が好ましい。
【0047】
得られる成分(C)としては、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエーテルポリエステルポリウレタン、ポリエーテルカーボネートポリウレタン、ポリカプロラクトンポリウレタン、脂肪族ポリウレタン、芳香族ポリウレタン等が例示される。これらの中でも、接着剤組成物がプラスチックフィルムや金属箔と良好に接着できるために、成分(C)は、ポリエーテルポリエステルポリウレタンであることが好ましい。ポリエーテルポリエステルポリウレタンの市販品としては、「TAJ−642」(荒川化学工業(株)製)等が例示される。
【0048】
成分(C)がポリウレタンエラストマーである場合、このような成分(C)は、成分(A)
100重量部に対して200重量部以上となるよう含まれることが好ましく、230重量部以上となるように含まれることがより好ましい。また、このような成分(C)は、成分(A)
100重量部に対して750重量部以下となるように含まれることが好ましく、710重量部以下となるように含まれることがより好ましい。成分(C)の含有量が200重量部未満の場合、接着剤組成物は、接着性が低下する傾向がある。一方、成分(C)の含有量が750重量部を超える場合、接着剤組成物は、耐薬品性が低下する傾向がある。
【0049】
得られた成分(C)の数平均分子量は、7,500以上であることが好ましく、10,000以上であることがより好ましい。また、成分(C)の数平均分子量は、30,000以下であることが好ましく、25,000以下であることがより好ましい。このような数平均分子量であれば、成分(C)は、成分(A)や成分(B)と相溶しやすくなり、また硬化させた後のプラスチックフィルムまたは金属箔に対する接着剤組成物の接着性が確保されやすい。
【0050】
なお、成分(C)は、本実施形態の目的や効果を逸脱しない範囲で、他のエラストマーと併用されてもよい。他のエラストマーとしては、具体的には、上記したアクリルポリマー、アクリロニトリルブタジエンポリマー、スチレンブタジエンポリマー、ブタジエンメチルアクリレートアクリロニトリルポリマー、ブタジエンポリマー、カルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンポリマー、ビニル基含有アクリロニトリルブタジエンポリマー、シリコーンポリマー、ポリビニルブチラール、ポリエステル、ポリイミド等が例示される。これらは、2種以上が併用されてもよい。他のエラストマーの使用量は、通常、成分(C)の30重量%未満程度とされる。
【0051】
接着剤組成物全体の説明に戻り、本実施形態の接着剤組成物は、プラスチックフィルムへ塗布するため、有機溶剤(D)(以下、成分(D)ともいう)を含んでいることが好ましい。成分(D)としては、具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒等が例示される。これらは、2種以上が組み合わせて使用されてもよい。これらの中でも、耐熱性が劣るフィルムを用いて接着剤を低温で硬化させるため、成分(D)は、沸点が120℃以下の低沸点の有機溶媒であることが好ましい。より具体的には、成分(D)は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン等が好ましい。
【0052】
本実施形態の接着剤組成物は、本実施形態の目的や効果を逸脱しない範囲で、エポキシ硬化促進剤が適宜添加されてもよい。エポキシ硬化促進剤としては、具体的には、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン類;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール類;トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等の有機ホスフィン類;テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩等が例示される。エポキシ硬化促進
剤は、成分(A)と成分(B)との合計量に対して、0.05〜5重量%程度の割合で使用されることが好ましい。
【0053】
本実施形態の接着剤組成物には、本実施形態の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、離型剤、表面処理剤、難燃剤、粘度調節剤、可塑剤、抗菌剤、防黴剤、レベリング剤、消泡剤、着色剤、安定剤、カップリング剤等が配合されてもよい。
【0054】
以上、本実施形態の接着剤組成物は、成分(A)(脂環式エポキシ化合物(A))、成分(B)(酸価が300〜350mgKOH/gである、α,β−不飽和ジカルボン酸変性ロジンの水素化物(B))、および成分(C)(ガラス転移温度が−35℃〜5℃であり、ハーゼン単位色数が300以下であるエラストマー(C)
)をそれぞれ特定量含有する。このような接着剤組成物は、従来のプリント配線板用接着剤組成物と比較して、低温硬化性、無色透明性、接着性および耐薬品性を同時に充足する。そのため、本実施形態の接着剤組成物は、ディスプレイ用途や光学用途向けフレキシブルプリント配線板用として適している。より具体的には、接着剤組成物は、タッチパネル用基板、電子ペーパー用基板、フレキシブルディスプレイ用基板、反射フィルム、メタルメッシュフィルム等に適している。加えて、接着剤組成物は、ICカードおよびICタグ用基板、電磁波シールド用積層体等にも適している。
【0055】
〔接着剤シートおよびプリント配線板用積層板について〕
以下、本発明の積層板の一実施形態として、接着剤シートおよびプリント配線板用積層板について説明する。本実施形態の接着剤シート(積層板の一例)は、プラスチックフィルムと、プラスチックフィルム上に、上記した実施形態のプリント配線板用接着剤組成物を含むプリント配線板用接着剤層が設けられた、接着剤シートである。
【0056】
プラスチックフィルムとしては、特に制限されず、用途に応じて公知のものが制限なく使用され得る。プラスチックフィルムは、具体的には、ポリエチレンナフタレート(PEN)やポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルフィルム、アクリルフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム等が例示される。これらの中でも、プラスチックフィルムは、無色透明性、耐薬品性のバランスから、ポリエステルフィルムであることが好ましい。プラスチックフィルムの厚みは、用途に応じて適宜設定されればよい。
【0057】
接着剤シートの製造方法は特に限定されない。接着剤シートは、たとえば、基材であるプラスチックフィルム上に、硬化時の膜厚が5〜50μm程度となるように上記した実施形態のプリント配線板用接着剤組成物を塗工し、50〜120℃程度で30秒〜5分程度予備乾燥させることにより製造され得る。
【0058】
また、本実施形態の接着剤シートは、上記した実施形態のプリント配線板用組成物が塗工されたプリント配線板接着剤層に、さらに金属箔が設けられた積層板であってもよい。このような積層板は、プリント配線板用積層板として好適である。金属箔をプリント配線板接着剤層に設ける方法は特に限定されない。一例を挙げると、金属箔は、プリント配線板接着剤層に積層されてもよく(ラミネート法)、蒸着されてもよく(蒸着法)、スパッタされてもよい(スパッタ法)。
【0059】
ラミネート法により金属箔を設ける場合、プリント配線板用積層板は、たとえば、プリント配線板接着剤層に金属箔を重ね合わせ、40〜120℃程度に加熱したラミネートロールで熱圧着することにより作製され得る。本実施形態のプリント配線板用積層板は、上記した樹脂組成物からなる接着剤層が形成されている。そのため、プリント配線板用積層板は、プリント配線板接着剤層が、たとえば40〜70℃程度の温度下で、0.5〜10日程度で低温硬化し得る。
【0060】
金属箔は、特に限定されず、各種公知のものが使用され得る。金属箔は、具体的には、金箔、ITO箔、銀箔、銅箔、ニクロム箔、アルミニウム箔等が例示される。これらの中でも、金属箔は、フレキシブルプリント配線板の用途において、導電性や耐腐食性が優れる点から、銅箔であることが好ましい。
【0061】
このようにして得られたプリント配線板用積層板は、優れた接着性のみならず耐薬品性を有し、さらに、エッチング処理により金属箔を部分的に除去することで優れた透過性を示すものとなる。
【0062】
〔フレキシブルプリント配線板について〕
以下、本発明のフレキシブルプリント配線板の一実施形態について説明する。本実施形態のフレキシブルプリント配線板は、上記したプリント配線板用積層板(積層板の一例)を備える。フレキシブルプリント配線板は、たとえばプリント配線板用積層板の金属箔面を、エッチング処理により部分除去し、回路を形成したものである。このようなフレキシブルプリント配線板は、タッチパネル用基板、電子ペーパー用基板、フレキシブルディスプレイ用基板等のディスプレイ用基板として好適に利用できる。
【0063】
以上、本発明の一実施形態について説明した。本発明は、上記実施形態に格別限定されない。なお、上記した実施形態は、以下の構成を有する発明を主に説明するものである。
【0064】
(1)脂環式エポキシ化合物(A)と、α,β−不飽和ジカルボン酸変性ロジンの水素化物(B)と、エラストマー(C)とを含み、前記α,β−不飽和ジカルボン酸変性ロジンの水素化物(B)は、酸価が300〜350mgKOH/gであり、100重量部の前記脂環式エポキシ化合物(A)に対して50〜220重量部含まれ、前記エラストマー(C)は、ガラス転移温度が−35℃〜5℃であり、ハーゼン単位色数が300以下である、プリント配線板用接着剤組成物。
【0065】
(2)前記エラストマー(C)は、アクリル系エラストマーであり、ポリアクリル酸エステル系共重合体であり、100重量部の前記脂環式エポキシ化合物(A)に対して200〜750重量部含まれる、(1
)記載のプリント配線板用接着剤組成物。
【0066】
(3)前記エラストマー(C)は、ポリウレタンエラストマーであり、100重量部の前記脂環式エポキシ化合物(A)に対して200〜750重量部含まれる、(1)記載のプリント配線板用接着剤組成物。
【0067】
(4)前記ポリウレタンエラストマーは、ポリエーテルポリエステルポリウレタンである、(3)記載のプリント配線板用接着剤組成物。
【0068】
(5)前記脂環式エポキシ化合物(A)は、下記一般式(1)で表されるエポキシシクロヘキサン化合物、または、そのカプロラクトン付加物のうち少なくもいずれか一方を含む、(1)〜(4)のいずれかに記載のプリント配線板用接着剤組成物。
【化4】
(式中、R
1およびR
2はそれぞれ水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し、Xはエポキシ基含有置換基を示す)
【0069】
(6)前記脂環式エポキシ化合物(A)は、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、または、そのカプロラクトン付加物のうち少なくもいずれか一方を含む、(5)記載のプリント配線板用接着剤組成物。
【0070】
(7)前記α,β−不飽和ジカルボン酸変性ロジンの水素化物(B)は、無水マレイン酸、マレイン酸およびフマル酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である、(1)〜(6)のいずれかに記載のプリント配線板用接着剤組成物。
【0071】
(8)前記α,β−不飽和ジカルボン酸変性ロジンの水素化物(B)は、ハーゼン単位色数が200以下である、(1)〜(7)のいずれかに記載のプリント配線板用接着剤組成物。
【0072】
(9)さらに、有機溶剤(D)を含む、(1)〜(8)のいずれかに記載のプリント配線板用接着剤組成物。
【0073】
(10)前記有機溶媒(D)は、沸点が120℃以下の有機溶剤である、(9)記載のプリント配線板用接着剤組成物。
【0074】
(11)プラスチックフィルムと、前記プラスチックフィルム上に、(1)〜(10)のいずれかに記載のプリント配線板用接着剤組成物を含むプリント配線板用接着剤層が設けられた、積層板。
【0075】
(12)前記プリント配線板用接着剤層に、さらに金属箔が貼り合わされた、(11)記載の積層板。
【0076】
(13)プリント配線板用である、(11)または(12)記載の積層板。
【0077】
(14)(11)〜(13)のいずれかに記載の積層板を備える、フレキシブルプリント配線板。
【実施例】
【0078】
以下、実施例および比較例をあげて本発明を具体的に説明する。本発明は、これら実施例に限定されない。
【0079】
使用した原料を以下に示す。
<エポキシ樹脂>
(成分(A):脂環式エポキシ化合物(A))
A−1:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート((株)ダイセル製、商品名「セロキサイド2021P」 構造は以下に示される)
【化5】
A−2:A−1のカプロラクトン付加物((株)ダイセル製、商品名「セロキサイド2081」)
A−3:リモネンジオキサイド(RENESSENZ社製、商品名「リモネンジオキサイド」 構造は以下に示される)
【化6】
(その他のエポキシ樹脂)
JER:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、商品名「JER828」)
YDPN:フェノールノボラック型エポキシ樹脂(新日鐵住金(株)製、商品名「YDPN−638」)
【0080】
<硬化剤>
(成分(B):酸価が300〜350mgKOH/gであるα,β−不飽和ジカルボン酸変性ロジンの水素化物(B))
B−1:マレイン化ロジン水素化物(酸価:330mgKOH/g、色調:ハーゼン単位色数150)
B−2:マレイン化ロジン水素化物(酸価:316mgKOH/g、色調:ハーゼン単位色数150)
(その他の硬化剤)
B−3:マレイン化ロジン水素化物(酸価:358mgKOH/g、色調:ハーゼン単位色数200)
B−4:マレイン化ロジン水素化物(酸価:270mgKOH/g、色調:ハーゼン単位色数150)
リカシッド:液状脂環式酸無水物(新日本理化(株)製、商品名「リカシッド MH−700」、色調:ハーゼン単位色数50)
タマノル:フェノールノボラック樹脂(荒川化学工業(株)製、商品名「タマノル759」、色調:ガードナー色数3)
b2:調製例1の工程2で得られたマレイン化ロジン
ガスカミン:メタキシレンジアミンとスチレンの付加反応物(三菱ガス化学(株)製、商品名「ガスカミン240」、色調:ハーゼン単位色数500)
【0081】
<エラストマー>
(成分(C):ガラス転移温度が−35〜5℃であり、ハーゼン単位色数が300以下であるエラストマー(C))
C−1:ポリエーテルポリエステルポリウレタン(荒川化学工業(株)製、商品名「TAJ−642」、固形分35%(酢酸エチル/IPA)、ガラス転移温度:−25℃、色調:ハーゼン単位色数150))
C−2:アクリル酸エステル共重合体(ナガセケムテックス(株)製、商品名「テイサンレジンSG−70L」、濃度12.5%、ガラス転移温度:−17℃、色調:ハーゼン単位色数50)
C−3:アクリル酸エステル共重合体(ナガセケムテックス(株)製、商品名「テイサンレジンWS−023 EK30」、濃度30%、ガラス転移温度:−10℃、色調:ハーゼン単位色数200)
(その他のエラストマー)
E−1:ポリエーテルポリエステルポリウレタン(荒川化学工業(株)製、商品名「TSP−2548」、固形分30%(酢酸エチル/IPA)、ガラス転移温度:−30℃、色調:ガードナー色数3)
E−2:ポリエーテルポリウレタン(荒川化学工業(株)製、商品名「PU−419L」、固形分30%(メチルエチルケトン/IPA)、ガラス転移温度:−55℃、色調:ハーゼン単位色数150)
E−3:ポリエステルポリウレタン(荒川化学工業(株)製、商品名「PU−536」、固形分30%(トルエン/IPA)、ガラス転移温度:−40℃、色調:ハーゼン単位色数150)
E−4:アクリル酸エステル共重合体(ナガセケムテックス(株)製、商品名「テイサンレジンSG−P3」、濃度15%(MEK)、ガラス転移温度:15℃、色調:ハーゼン単位色数500)
E−5:アクリル酸エステル共重合体(ナガセケムテックス(株)製、商品名「テイサンレジンSG−600TEA」、濃度15%(トルエン/酢酸エチル)、ガラス転移温度:−37℃、色調:ハーゼン単位色数500)
E−6:アクリル酸エステル共重合体(ナガセケムテックス(株)製、商品名「テイサンレジンSG−708−6」、濃度20%(MEK)、ガラス転移温度:6℃、色調:ハーゼン単位色数500)
NBR:カルボキシNBR(JSR(株)製、商品名「XER−32C」、色調:ガードナー色数10)
【0082】
<成分(B)の調製>
上記した成分(B)(B−1〜B−4)の調製方法を以下に示す。
(調製例1:B−1)
工程(1):精製
未精製のガムロジン(酸価171mgKOH/g、ガードナー色数6、中国産)を減圧蒸留容器に仕込み、窒素シール下に0.4kPaの減圧下で蒸留し、精製ロジン(b1)(酸価177mgKOH/g、ガードナー色数3)を得た。
【0083】
工程(2):ディールス・アルダー反応
次いで、別の減圧蒸留容器に精製ロジン(b1)700gと無水マレイン酸154gを仕込み、窒素気流下に攪拌しながら220℃で4時間反応させた後、4kPaの減圧下に未反応物を除去することによって、マレイン化ロジン(b2)(酸価335mgKOH/g、ガードナー色数8)を得た。
【0084】
工程(3):水素化反応
次いで、マレイン化ロジン(b2)500gと触媒として5%パラジウムカーボン(含水率50%)6.0gを1リットル回転式オートクレーブに仕込み、系内の酸素を除去した後、水素にて10MPaに加圧し、220℃まで昇温し、同温度で3時間水素化反応させることにより、粗ロジン生成物(b3)を得た。
【0085】
工程(4):精製
次いで、粗ロジン生成物(b3)400gとキシレン200gを反応容器に仕込み、加熱下に溶解させた後、触媒ろ過を行った。その後、キシレンを留去することによって、B−1を得た。B−1の物性を表1に示す。
【0086】
(調製例2〜4:B−2〜B−4)
調製例1の工程(2)における無水マレイン酸の使用量を表1に示されるように変更した以外は調製例1と同様の方法により、B−2〜B−4を得た。B−2〜B−4の物性を表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
<接着剤組成物の製造>
(実施例1)
エポキシ樹脂A−1を100.0g、硬化剤B−1を139.0g、エラストマーC−1を1604.0g(固形分:561.4g)およびメチルエチルケトンを139.0g加えて、均一に溶解して接着剤組成物を調製した。接着剤組成物中に存在するエポキシ基1当量に対して、エポキシ樹脂A−1中のカルボキシル基は1当量である。
【0089】
(実施例2〜12、比較例1〜20)
使用したエポキシ樹脂、硬化剤およびエラストマーを表2に示されるものに変更した以外は、実施例1と同様の方法により、接着剤組成物を調製した。
【0090】
<接着剤シートの製造>
実施例1〜12および比較例1〜20で得た接着剤組成物を50μmのポリエスエルフィルム(東洋紡(株)製 商品名「コスモシャインA4100」)にロールコーターで乾燥後の厚さが12μmになるように塗布し、90℃の乾燥機で3分間予備乾燥し、接着剤シートを得た。
【0091】
<プリント配線板用積層板の製造>
実施例1〜12および比較例1〜20で得た接着剤組成物を使用して得た接着剤シートの接着剤層と、18μmの銅箔(古河サーキットフォイル(株)製 商品名「F2−WS」)の鏡面とを重ね合わせて100℃のラミネートロールで圧着した。その後、オーブンで60℃、4日間加熱し、接着剤層を硬化させてプリント配線板用積層板を得た。得られたプリント配線板用積層板の剥離強度、耐薬品性および透明性を以下の条件で測定した。結果を表2に示す。
【0092】
(剥離強度)
剥離強度は、JIS C−6481に準拠して、銅箔とプラスチックフィルムとの剥離強度を測定した。数値が大きいほど、剥離強度は良好である。
(耐薬品性)
プリント配線板用積層板の試験片を室温にてエッチング液(塩化第二鉄40%水溶液)に1時間浸漬し、銅箔を溶解させた後、色差計でb*値を測定した。b*の数値が小さいほど、耐薬品性は高い。
(透明性)
プリント配線板用積層板の試験片を室温にて塩化第二鉄40%水溶液に1時間浸漬し、銅箔を溶解させた後、ヘイズメーターでヘイズ値(JIS K 7105に準拠)を測定した。数値が小さいほど、透明性は高い。
【0093】
【表2】
【0094】
表2に示されるように、実施例1〜12の接着剤組成物は、60℃、4日間という低温条件で硬化することがわかった。また、実施例1〜12の接着剤組成物を用いて得られるプリント配線板用積層板は、剥離強度だけでなく、接着剤層の耐薬品性および透明性が優れることがわかった。
【0095】
<フレキシブルプリント配線板の作製>
得られたプリント配線板用積層板ついて、銅箔の一部をエッチング液(塩化第二鉄40%水溶液)を用いたエッチング処理により除去して、ライン/スペース=50μm/50μmの銅回路を形成することにより、フレキシブルプリント配線板を作製し得ることを確認した。