(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(C)エチレン性二重結合を有する化合物が、5〜7員環を有し、数平均分子量が300以下であり、かつ、水酸基、カルボキシル基、およびアミノ基から選ばれる1つ以上の官能基を有する請求項1に記載の感光性樹脂印刷版原版。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0015】
感光性樹脂印刷版原版に含まれる(A)部分ケン化ポリ酢酸ビニル化合物(以下、(A)化合物と省略する場合がある)としては、部分ケン化ポリ酢酸ビニル、またはその誘導体が用いられる。ここで、部分ケン化ポリ酢酸ビニル誘導体とは、架橋性基を側鎖に導入した部分ケン化ポリ酢酸ビニルおよび部分ケン化ポリ酢酸ビニルの側鎖の水酸基を起点としてカルボキシル基などの反応性基を導入した変性部分ケン化ポリ酢酸ビニルのことである。また、架橋性基とは、ラジカル反応により架橋することができる反応性基のことでる。非芳香族の不飽和炭素−炭素結合を有する基が好ましく、中でもエチレン性二重結合を有する基が好ましい。具体的には、ビニル基または(メタ)アクリロイル基が挙げられる。なお、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基またはメタクリロイル基のことである。
【0016】
架橋性基を部分ケン化ポリ酢酸ビニルに導入する方法としては、具体的には、例えば、部分ケン化ポリ酢酸ビニルと酸無水物とを反応させ、部分ケン化ポリ酢酸ビニルの水酸基を起点としてカルボキシル基などの反応性基をポリマー側鎖に導入し、その反応性基に不飽和エポキシ化合物を反応させることにより架橋性基を導入する方法が挙げられる。また、酢酸ビニルと不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸塩および不飽和カルボン酸エステルから選ばれたモノマーとを共重合させて得られたポリマーを部分ケン化し、このポリマーのもつカルボキシル基と不飽和エポキシ化合物を反応させることにより架橋性基を導入する方法も挙げられる。
【0017】
架橋性基を部分ケン化ポリ酢酸ビニルに導入すると、感光性樹脂印刷版原版に活性光線を照射して架橋原版を得る工程で、印刷版原版中の光架橋剤であるモノマーが部分ケン化ポリ酢酸ビニルの架橋性基とも架橋して分子量が高い架橋原版を得ることができ、印刷版としての靱性や、現像工程やリンス工程での洗浄耐性を向上させることができる。
【0018】
(A)化合物のうち、部分ケン化ポリ酢酸ビニル誘導体における架橋性基の含有量は、現像工程やリンス工程でのレリーフ欠けに対する改善効果を高める上で、0.08モル/kg以上存在することが好ましく、0.12以上モル/kg以上であることがより好ましい。一方、感光性樹脂印刷版原版の水現像性および水溶解性を維持する上で、架橋性基の含有量は、0.72モル/kg以下であることが好ましく、0.36モル/kg以下であることがより好ましい。
【0019】
ここで、架橋性基の含有量とは、感光性樹脂組成物1kg中に含まれる部分ケン化ポリ酢酸ビニル誘導体由来の架橋性基のモル数のことである。また、感光性樹脂組成物とは、(A)部分ケン化ポリ酢酸ビニル化合物、(B)塩基性窒素を有するポリアミド、(C)エチレン性二重結合を有する化合物、および(D)光重合開始剤を含有する組成物のことである。
【0020】
(A)化合物は、少なくとも次の(I)および(II)の構造単位を有する。また、(A)化合物が部分ケン化ポリ酢酸ビニル誘導体の場合、さらに、少なくとも次の(III)の構造単位も有する。
【0022】
式中、Rは炭素数1〜20の炭化水素基、Xは末端に不飽和炭素−炭素結合を有する官能基である。Rは、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などであり、より好ましくはメチル基である。Xは、好ましくは、ビニル基、エテニル基、プロペニル基などを含む有機基である。具体的には、例えば後述のように、コハク酸無水物等のジカルボン酸無水物の残基にさらにビニル基、エテニル基またはプロペニル基を含むエポキシ化合物が結合したものなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
感光性樹脂印刷版原版がアナログ製版方式やCTP製版方式の場合、活性光線が照射されていない未硬化部分を水やブラシを用いて除去する現像工程が必要である。そのため、感光性樹脂印刷版原版には高い現像性が求められる。また、感光性樹脂印刷版原版がレーザー彫刻製版方式の場合、レーザーが照射された樹脂の大部分は分解され気化するが、一部の樹脂が固形物として版面に付着し残存することがある。これを彫刻残渣と呼ぶ。その彫刻残渣を水やブラシを用いて洗浄する工程をリンス工程と呼び、感光性樹脂印刷版原版には高い彫刻残渣のリンス性が求められる。
【0024】
(A)部分ケン化ポリ酢酸ビニル化合物において、(I)の構造単位が60モル%以上であると水溶性が高く十分な現像性または彫刻残渣のリンス性を得ることができるため好ましく、70モル%以上であることがより好ましい。また、感光性樹脂組成物の製造時の水溶解性を維持する上では、(I)の構造単位は99モル%以下が好ましく、95モル%以下がより好ましい。また、(A)化合物が部分ケン化ポリ酢酸ビニル誘導体の場合、(III)の構造単位が1モル%以上であれば(C)エチレン性二重結合を有する化合物(以下、(C)化合物と省略する場合がある)との反応性を得ることができるため好ましく、2モル%以上がより好ましい。また、(III)の構造単位が40モル%以下であれば高い水現像性または彫刻残渣のリンス性を得ることができるため好ましく、30モル%以下がより好ましい。
【0025】
また、架橋性基を部分ケン化ポリ酢酸ビニルに導入する別の方法として、部分ケン化ポリ酢酸ビニルとN−メチロール基を有するアクリル系化合物を反応させる方法もある。ここでN−メチロール基が架橋性基に該当する。
【0026】
N−メチロール基を有するアクリル系化合物の含有量は、架橋性基の十分な反応を得ることにより現像工程や彫刻残渣のリンス工程でのレリーフ欠けの低減効果が発現するため、部分ケン化ポリ酢酸ビニル100質量部に対し、2質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。また、N−メチロール基を有するアクリル系化合物の含有量は、高い現像性または彫刻残渣リンス性が得られるため、40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。
【0027】
前記N−メチロール基を有するアクリル系化合物としては、例えば、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メチル−N−メチロールアクリルアミド、N−メチル−N−メチロールメタクリルアミド、N−エチル−N−メチロールアクリルアミド、N−エチル−N−メチロールメタクリルアミドなどを挙げることができる。特にN−メチロールアクリルアミドやN−メチロールメタクリルアミドが好ましい。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0028】
本発明の感光性樹脂印刷版原版は、感光性樹脂層を下層と印刷面層の2層構成とした。すなわち、本発明の感光性樹脂印刷版原版は、支持体、下層および印刷面層をこの順に有する。印刷面層は、直接被印刷体と接触するので、耐刷性に関係する。下層は、直接被印刷体と接触しない。
【0029】
そして、本発明の感光性樹脂印刷版原版は、(A)部分ケン化ポリ酢酸ビニル化合物として、平均重合度が1200〜2600であるもの(A1)(以下、(A1)化合物と省略する場合がある)を印刷面層に、平均重合度が400〜800であるもの(A2)(以下、(A2)化合物と省略する場合がある)を下層に含有する。
【0030】
印刷中にクラックが発生する主な原因は、印刷中の応力によるクラック発生である。とりわけ、印刷で使用するインキや溶剤などが印刷版の最表面に浸透し、その最表面を起点としてクラックが発生するケミカルストレスクラックが発生しやすい。このケミカルストレスクラックは、強い印圧をかける傾向にあるラベル印刷用輪転印刷機や間欠式輪転印刷機で発生しやすい。それらの印刷機で使用される印刷版の版面硬度はタイプD デュロメータ硬さで好ましくは30〜70°であり、より好ましくは40〜60°の範囲であり、さらに好ましくはおよそ55°である。一方、同じ版面硬度の印刷版を使用する場合でも、ドライオフセット印刷のように印圧が低い印刷方法では問題は発生しにくい。
【0031】
従来の感光性樹脂印刷版原版では、部分ケン化ポリ酢酸ビニル化合物の結晶化度が高いため、硬く脆い性質の印刷版が得られる傾向があった。本発明の感光性樹脂印刷版原版は、感光性樹脂組成物からなる層を下層と印刷面層の2層構成とし、印刷面層に従来の技術で使用されていた部分ケン化ポリ酢酸ビニル化合物より平均重合度が高い部分ケン化ポリ酢酸ビニル化合物(A1)を含むことによって、印刷面層の結晶化度が低く、靱性が高く、かつ、インキや溶剤が浸透しにくく、浸透しても影響を受けにくい特徴がある。これによって、ケミカルストレスクラックを低減させることができる。また、(A1)化合物より水溶性が高く、現像性や彫刻残渣のリンス性が高い(A2)化合物を下層に使用することにより、印刷版原版全体の現像性や彫刻残渣のリンス性を高めることができる。また、下層に(A2)化合物を含むことにより、ラベル印刷用輪転印刷機や間欠式輪転印刷機を用いた印刷に適した版面硬度を得ることができる。すなわち、本発明の感光性樹脂印刷版原版は、クラックの起点となる印刷版の最表面に高い耐刷性をもつ印刷面層を、印刷版として必要な版面硬度などの物性調整や、現像性と彫刻残渣のリンス性向上のため下層を選択的に配置している。これにより、高い現像性および彫刻残渣のリンス性と画像再現性を有しながら、耐刷性を向上させており、印刷品質と耐刷性の向上の両立を達成している。
【0032】
これより、(A1)化合物および(A2)化合物について記述する。(A)化合物が、部分ケン化ポリ酢酸ビニルでも、その誘導体でも同様である。
【0033】
印刷面層には、高い耐刷性を与えるため、平均重合度が1200〜2600である(A1)化合物を含有する。平均重合度を1200以上とすることで、十分な耐刷性を得ることができるため好ましく、1400以上がより好ましい。また、平均重合度を2600以下とすることで印刷面層と下層の良好な接着性を得ることができるため好ましく、2300以下であることがより好ましい。
【0034】
(A1)化合物の含有量は、印刷面層全体を100質量%とした場合、15質量%〜70質量%の範囲が好ましい。15質量%以上であれば高い耐刷性を得ることができ、70質量%以下であれば感光性樹脂組成物に必要な溶解性を得ることができる。
【0035】
また、下層は平均重合度が400〜800である(A2)化合物を含有する。平均重合度が400以上であれば十分なレリーフ耐水性を得ることができ、現像工程や彫刻残渣のリンス工程でレリーフが欠損することを低減させることができるため好ましい。また、平均重合度が800以下であればラベル印刷用輪転印刷機や間欠式輪転印刷機を用いた印刷に適した版面硬度を得ることができ、600以下がより好ましい。
【0036】
(A2)化合物の含有量は、下層全体を100質量%とした場合、30質量%〜70質量%の範囲が好ましい。30質量%以上であれば十分な光重合速度を得ることができ、70質量%以下であればラベル印刷用輪転印刷機や間欠式輪転印刷機を用いた印刷に適した版面硬度を得ることができる。
【0037】
また、(A)部分ケン化ポリ酢酸ビニルとして、(A1−1)平均重合度400〜1000のポリマー(以下、(A1−1)化合物と省略する場合がある)を印刷面層にさらに含有することができ、感光性樹脂組成物に必要な溶解性を高めることができる。この場合、モル比(A1)/(A1−1)は30/70〜100/0であることが好ましい。この範囲であれば高い耐刷性を得ることができる。
【0038】
(A1−1)化合物の平均重合度は、400以上であれば十分なレリーフ耐水性を得ることができるため、水現像工程や彫刻残渣のリンス工程でレリーフが欠損することを低減させることができるため好ましく、1000以下であれば高い感光性樹脂組成物の溶解性が得られるため好ましい。
【0039】
(A1−1)化合物の含有量は、下層全体を100質量%とした場合、5〜40質量%の範囲が好ましい。5質量%以上であれば感光性樹脂組成物に必要な溶解性を高めることができ、40質量%以下であれば十分な耐刷性を得ることができる。
【0040】
(A)化合物の平均重合度はJIS K 6726:1994「ポリビニルアルコール試験方法」の「3.試験方法」に記載の平均重合度の測定方法に従って得ることができる。
【0041】
また、感光性樹脂組成物中の(A)化合物の平均重合度は、高速液体クロマトグラフィーで質量平均分子量を測定することから得ることが可能である。ポンプはDP8020(東ソー(株)製)、検出器はRI−71(昭和電工(株)製)、カラムはTSKgelGMPWXL(東ソー(株)製)を3本直列にして用いた。また、展開溶媒として硝酸ナトリウム水溶液とアセトニトリルの混合溶媒を、標準サンプルとしてポリエチレンオキサイドおよびポリエチレングリコールを用いた。
【0042】
(B)塩基性窒素を有するポリアミド(以下、(B)化合物と省略する場合がある)は、水溶性であり、結晶化度の高い(A)化合物の配合によって生じることの多かった水現像工程や彫刻残渣のリンス工程でのレリーフ欠けや印刷時のレリーフ欠けの問題を改良できるものである。(B)化合物を配合することで(A)化合物の結晶化度を低減させ、感光性樹脂印刷版原版の物理的耐性を高めることができる。塩基性窒素を有するポリアミドは、主鎖または側鎖の一部分に塩基性窒素を含有する重合体である。塩基性窒素とは、アミド基でないアミノ基を構成する窒素原子である。そのようなポリアミドとしては、3級アミノ基を主鎖中に有するポリアミドを挙げることができる。塩基性窒素を有するポリアミドは、塩基性窒素を有する単量体を単独もしくは他の単量体を用いて縮重合または重付加反応などを行うことにより得ることができる。塩基性窒素を有する単量体としては、ピペラジン基やN,N−ジアルキルアミノ基を有する単量体が好ましく、より好ましくはピペラジン基を有する単量体である。
【0043】
塩基性窒素を有する単量体の好ましい例は、N,N’−ビス(アミノメチル)−ピペラジン、N,N’−ビス(β−アミノエチル)−ピペラジン、N,N’−ビス(γ−アミノベンジル)−ピペラジン、N−(β−アミノエチル)ピペラジン、N−(β−アミノプロピル)ピペラジン、N−(ω−アミノヘキシル)ピペラジン、N−(β−アミノエチル)−2,5−ジメチルピペラジン、N,N−ビス(β−アミノエチル)−ベンジルアミン、N,N−ビス(γ−アミノプロピル)−アミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ビス(γ−アミノプロピル)−エチレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ビス(γ−アミノプロピル)−テトラメチレンジアミンなどのジアミン類;N,N’−ビス(カルボキシメチル)−ピペラジン、N,N’−ビス(カルボキシメチル)−メチルピペラジン、N,N’−ビス(カルボキシメチル)−2,6−ジメチルピペラジン、N,N’−ビス(β−カルボキシエチル)−ピペラジン、N,N−ビス(カルボキシメチル)−メチルアミン、N,N−ビス(β−カルボキシエチル)−エチルアミン、N,N−ビス(β−カルボキシエチル)−メチルアミン、N,N−ジ(β−カルボキシエチル)−イソプロピルアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ビス−(カルボキシメチル)−エチレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ビス−(β−カルボキシエチル)−エチレンジアミンなどのジカルボン酸類あるいはこれらの低級アルキルエステル;酸ハロゲン化物、N−(アミノメチル)−N’−(カルボキシメチル)−ピペラジン、N−(アミノメチル)−N’−(β−カルボキシエチル)−ピペラジン、N−(β−アミノエチル)−N’−(β−カルボキシエチル)−ピペラジン、N−カルボキシメチルピペラジン、N−(β−カルボキシエチル)ピペラジン、N−(γ−カルボキシヘキシル)ピペラジン、N−(ω−カルボキシヘキシル)ピペラジン、N−(アミノメチル)−N−(カルボキシメチル)−メチルアミン、N−(β−アミノエチル)−N−(β−カルボキシエチル)−メチルアミン、N−(アミノメチル)−N−(β−カルボキシエチル)−イソプロピルアミン、N,N’−ジメチル−N−(アミノメチル)−N’−(カルボキシメチル)−エチレンジアミンなどのω−アミノ酸などがある。またこれらの単量体以外のジアミン、ジカルボン酸、ω−アミノ酸、ラクタムなどを併用して重合することによって(B)塩基性窒素を含有するポリアミドを得ることができる。
【0044】
これら塩基性窒素を含有する単量体成分は全ポリアミド構成成分、すなわちアミノカルボン酸単位(原料としてラクタムの場合を含む)、ジカルボン酸単位およびジアミン構造単位の和に対して、10〜100モル%が好ましく、さらに10〜80モル%であることが好ましい。含有量が10モル%以上であると水溶性が高く(A)化合物との相溶性がよい。含有量が80モル%以下の場合、印刷版を保管中に過度に吸水することがなく、印刷版の厚み精度を高いレベルで維持できる。
【0045】
(B)化合物の含有量は、印刷面層および下層のそれぞれにおいて、(A)化合物100質量部に対して1〜40質量部であることが好ましい。含有量が1質量部以上であれば、水現像工程や彫刻残渣のリンス工程でのレリーフ欠けや印刷時のレリーフ欠けを抑制でき、40質量部以下であれば、印刷版に適した版面硬度を維持できる。
【0046】
(C)エチレン性二重結合を有する化合物(以下、(C)化合物と省略する場合がある)の具体的な例としては、次のようなものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、β−ヒドロキシ−β’−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレートなどの水酸基を有する(メタ)アクリレート;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート;クロロエチル(メタ)アクリレート、クロロプロピル(メタ)アクリレート等のハロゲン化アルキル(メタ)アクリレート;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;フェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレートなどのフェノキシアルキル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングレコール(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;2,2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2,2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のエチレン性二重結合を1個だけ有する化合物;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートのようなポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート;ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートのようなポリプロピレングリコールのジ(メタ)アクリレート;トリメリロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート;エチレングリコールジグリシジルエーテルに不飽和カルボン酸や不飽和アルコールなどのエチレン性二重結合と活性水素を持つ化合物を付加反応させて得られる多価(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレートなどの不飽和エポキシ化合物とカルボン酸やアミンのような活性水素を有する化合物を付加反応させて得られる多価(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、ネオペンチルグリコール−(メタ)アクリル酸−安息香酸エステル、(メタ)アクリロイルモルフォリン、スチレンおよびその誘導体、ビニルピリジン、N−ビニル−2−ピロリドン、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、N−フェニルマレイミドおよびその誘導体、N−(メタ)アクリルオキシコハク酸イミド、(メタ)アクリル酸−2−ナフチル、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、ジビニルエチレン尿素、ジビニルプロピレン尿素、ビニルカプロラクタム、ビニルカルバゾール、ビシクロペンテニル(メタ)アクリレート、1−ビニルイミダゾール、2−メチル−1−ビニルイミダゾール、(2−メチル−エチルジオキソラン−4−イル)メチルアクリレート、イミドアクリレート、[4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシル]メチル(メタ)アクリレート、(2−オキシ−1,3−ジオキソランー4−イル)メチル(メタ)アクリレート、2−(オキシジイミダゾリジン−1−イル)エチル(メタ)アクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアクリレートなどの5〜7員環とエチレン性二重結合を有する化合物;メチレンビス(メタ)アクリルアミドなどの多価(メタ)アクリルアミド、ジビニルベンゼンなどの多価ビニル化合物、などの2つ以上のエチレン性二重結合を有する化合物、などが挙げられる。
【0048】
これら(C)化合物の含有量は、印刷面層および下層のそれぞれにおいて、(A)化合物100質量部に対して、5〜200質量部であることが好ましい。含有量が5質量部以上であれば、ラベル印刷用輪転印刷機や間欠式輪転印刷機を用いた印刷に適した版面硬度が得られるため好ましく、200質量部以下であれば感光性樹脂組成物を容易に成形することができる。
【0049】
また、(C)化合物が5〜7員環とエチレン性二重結合を有する化合物の場合、5〜7員環は嵩高い置換基であるため、分子運動の障壁が高くなる。そのため、感光性樹脂組成物に配合した場合、5〜7員環とエチレン性二重結合を有する化合物のまわりの化合物の分子運動も制限されるため、(A)化合物の結晶化を抑制し、印刷中の繰り返しの衝撃力に対して耐性が向上することが期待される。また、分子内に5〜7員環とエチレン性二重結合を有する化合物が、複素環や水酸基、カルボキシル基およびアミノ基から選ばれる1つ以上の官能基を有することで(A)化合物の水酸基と水素結合により相互作用し、(A)化合物の結晶化を抑制する効果が向上すると共に、(A)化合物との相溶性が良くなる。
【0050】
分子内に5〜7員環とエチレン性二重結合を有する化合物は、数平均分子量が300以下が好ましく、100以上300以下がより好ましい。分子量が100以上であれば十分な光重合速度を得られるため好ましい。また、分子量が300以下であれば(A)化合物と高い相溶性が得られるため好ましい。
【0051】
また、印刷面層および下層には、画像再現性を調整するために、(C)化合物以外のエチレン性二重結合を有する化合物を含有しても良い。
【0052】
また、本発明の感光性樹脂印刷版原版は、(D)光重合開始剤(以下、(D)成分と省略する場合がある)を含有する。光重合開始剤としては、光によって重合性の炭素−炭素不飽和基を重合させることができるものであれば全て使用できる。なかでも、光吸収によって、自己分解や水素引き抜きによってラジカルを生成する機能を有するものが好ましく用いられる。例えば、ベンゾインアルキルエーテル類、ベンゾフェノン類、アントラキノン類、ベンジル類、アセトフェノン類、ジアセチル類などがある。
【0053】
光重合開始剤の配合量としては、印刷面層および下層のそれぞれにおいて、(A)化合物100質量部に対して0.1〜20質量部の範囲が好ましい。
【0054】
感光性樹脂組成物に相溶性および柔軟性を高めるための相溶助剤として多価アルコール類を添加することも可能である。このような多価アルコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリンおよびその誘導体、トリメチロールプロパンおよびその誘導体、トリメチロールエタンおよびその誘導体、ペンタエリスリトールおよびその誘導体などが挙げられる。
【0055】
これらの多価アルコール類の含有量は、感光性樹脂組成物全体に対して、30質量%以下であることか好ましい。多価アルコール類の添加によって相溶性が向上することで、樹脂組成物の濁りおよび低分子量成分のブリードアウトを抑制できる。
【0056】
感光性樹脂組成物の熱安定性を上げる為に、重合禁止剤を添加することができる。好ましい重合禁止剤としては、フェノール類、ハイドロキノン類、カテコール類、ヒドロキシアミン誘導体などが挙げられる。
【0057】
重合禁止剤の含有量は、感光性樹脂組成物全体に対して、0.001〜5質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0058】
また、他の成分として、感光性樹脂組成物に、染料、顔料、界面活性剤、消泡剤、紫外線吸収剤、香料などを添加することができる。
【0059】
次に、本発明の感光性樹脂印刷版原版について説明する。本発明の感光性樹脂印刷版原版は、少なくとも支持体(E)と、前記の感光性樹脂組成物から形成された感光性樹脂層(F)を有する。
【0060】
支持体(E)としては、ポリエステルなどからなるプラスチックシート、スチレン−ブタジエンゴムなどからなる合成ゴムシート、スチール、ステンレス、アルミニウムなどからなる金属板などを使用することができる。
【0061】
支持体の厚さは、特に限定されないが、取扱性および柔軟性の観点から100〜350μmの範囲が好ましい。厚さが100μm以上であれば支持体としての取扱性が向上し、350μm以下であれば印刷版原版としての柔軟性が向上する。
【0062】
支持体(E)は、感光性樹脂層(F)との接着性を向上させる目的で、易接着処理されていることが好ましい。易接着処理の方法としては、サンドブラストなどの機械的処理、コロナ放電などの物理的処理、コーティングなどによる化学的処理などが例示できる。コーティングにより易接着層(G)を設けることが接着性の観点から好ましい。
【0063】
感光性樹脂層(F)は、感光性樹脂組成物から形成される。感光性樹脂層(F)の厚さは、十分なレリーフ深度を有し印刷適性を向上させる観点から、0.3mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましい。一方、露光に用いられる活性光線を底部まで十分に到達させて画像再現性をより向上させる観点から、5mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましい。
【0064】
感光性樹脂層(F)は、支持体(E)の上に設けられた下層(F1)およびその上に設けられた印刷面層(F2)の少なくとも2層からなる。すなわち、本発明の感光性印刷版原版は、少なくとも支持体(E)、下層(F1)および印刷面層(F2)をこの順に有する。下層(F1)の厚みは、好ましくは0.01mm以上4.99mm以下、より好ましくは0.05mm以上4.95mm以下である。印刷面層(F2)の厚みは、好ましくは0.01mm以上4.99mm以下、より好ましくは0.05mm以上4.95mm以下である。
【0065】
表面保護および異物等の付着防止の観点から、感光性樹脂層(F)上にカバーフィルム(H)を有することが好ましい。感光性樹脂層(F)とカバーフィルム(H)は直接接していてもよいし、感光性樹脂層(F)とカバーフィルム(H)の間に1層または複数の層を有していてもよい。感光性樹脂層(F)とカバーフィルム(H)の間の層としては、例えば、感光性樹脂層表面の粘着を防止する目的で設けられる粘着防止層などが挙げられる。
【0066】
カバーフィルム(H)の材質としては、特に限定されないが、ポリエステル、ポリエチレンなどからなるプラスチックシートが好ましく使用される。カバーフィルム(H)の厚さは、特に限定されないが、10〜150μmの範囲が取扱性およびコストの観点から好ましい。またカバーフィルム表面は、原画フィルムの密着性向上を目的として粗面化されていてもよい。
【0067】
CTP製版方式の場合、感光性印刷版原版は、さらに感熱マスク層(I)を有してもよい。感熱マスク層(I)は、紫外光を事実上遮断し、描画時には赤外レーザー光を吸収し、その熱により瞬間的に一部または全部が昇華または融除するものが好ましい。これによりレーザーの照射部分と未照射部分の光学濃度に差が生じ、従来の原画フィルムと同様の機能を果たすことができる。
【0068】
ここで、紫外光を遮断する機能を有するというのは、感熱マスク層(I)の光学濃度が2.5以上のことを指し、3.0以上であることがより好ましい。光学濃度は一般にDで表され、以下の式で定義される。D=log
10(100/T)=log
10(I
0/I)(ここでTは透過率(%)、I
0は透過率測定の際の入射光強度、Iは透過光強度である。)
光学濃度の測定には、入射光強度を一定にして透過光強度の測定値から算出する方法と、ある透過光強度に達するまでに必要な入射光強度の測定値から算出する方法が知られているが、本発明における光学濃度は前者の透過光強度から算出した値をいう。
【0069】
光学濃度は、オルソクロマチックフィルターを用いてマクベス透過濃度計「TR−927」(コルモルゲンインスツルメンツ(Kollorgen Instruments Corp.)社製)を用いることで測定することができる。
【0070】
感熱マスク層(I)の材料の好ましい具体例としては、赤外線吸収物質を分散させた樹脂を例示することができる。赤外線吸収物質としては、赤外光を吸収して熱に変換し得る物質であれば、特に限定されるものではない。例えば、カーボンブラック、アニリンブラック、シアニンブラック等の黒色顔料;フタロシアニン、ナフタフロシアニン系の緑色顔料;ローダミン色素、ナフトキノン系色素、ポリメチン系染料、ジイモニウム塩、アゾイモニウム系色素、カルコゲン系色素、カーボングラファイト、鉄粉、ジアミン系金属錯体、ジチオール系金属錯体、フェノールチオール系金属錯体、メルカプトンフェノール系金属錯体、アリールアルミニウム金属塩類、結晶水含有無機化合物、硫酸銅、硫化クロム、珪酸塩化合物;酸化チタン、酸化バナジウム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化タングステン等の金属酸化物;これらの金属の水酸化物、硫酸塩、さらにビスマス、スズ、テルル、鉄、アルミの金属粉などが挙げられる。
【0071】
これらの中でも、光熱変換率、経済性、取り扱い性および後述する紫外線吸収機能の面から、カーボンブラックが特に好ましい。バインダーとなる樹脂成分としては、特に限定されないが、感熱マスク層(I)の安定性や耐傷性の観点から熱硬化性樹脂が好ましく使用できる。
【0072】
感光性印刷版原版は、感光性樹脂層(F)と感熱マスク層(I)との間に接着力調整層(J)を有してもよい。接着力調整層(J)は、ケン化度30モル%以上の部分ケン化ポリ酢酸ビニル、ポリアミドなどの水溶解性および/または水分散性の樹脂を含有することが好ましい。また、接着力調整層(J)には、接着力を最適化するための樹脂類やモノマー類、塗工性や安定性を確保するための界面活性剤や可塑剤などの添加剤を含有させてもよい。
【0073】
接着力調整層(J)の膜厚は15μm以下が好ましく、0.1μm以上5μm以下がより好ましい。膜厚が15μm以下であれば、紫外光を露光した際の該層による光の屈折や散乱が抑制され、よりシャープなレリーフ画像が得られる。また、膜厚が0.1μm以上であれば、接着力調整層(J)の形成が容易となる。
【0074】
感光性印刷版原版は、感熱マスク層(I)の上にさらに剥離補助層(K)を有してもよい。剥離補助層(K)は、好ましくは感熱マスク層(I)とカバーフィルム(H)の間に設けられる。剥離補助層(K)は、感光性印刷版原版から剥離補助層(K)のみ、カバーフィルム(H)のみ、または、カバーフィルム(H)および剥離補助層(K)の両方を容易に剥離せしめる機能を有することが好ましい。カバーフィルム(H)と感熱マスク層(I)が隣接して積層されており、両層間の接着力が強い場合、カバーフィルム(H)が剥離できない、あるいは、剥離した際に感熱マスク層(I)がカバーフィルム(H)側に一部接着したまま残留し、感熱マスク層(I)に抜けが生じる可能性がある。したがって、剥離補助層(K)は、感熱マスク層(I)との接着力が強く、カバーフィルム(H)との接着力が剥離可能な程度に弱い物質、あるいは感熱マスク層(I)との接着力が剥離可能な程度に弱く、カバーフィルム(H)との接着力が強い物質から構成されることが好ましい。なお、剥離補助層(K)は、カバーフィルム(H)を剥離した後、感熱マスク層(I)側に残留して最外層になる場合があるので、取り扱いの面から粘着質でないことが好ましい。また、剥離補助層(K)層を通して紫外光露光されるため実質的に透明であることが好ましい。
【0075】
剥離補助層(K)に使用される材料としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、部分ケン化ポリビニルアルコール、ヒドロキシアルキルセルロース、アルキルセルロース、ポリアミド樹脂などを挙げることができる。水に溶解または分散可能で、かつ、粘着性の少ない樹脂を主成分とすることが好ましい。これらの中で、粘着性の面から、ケン化度60〜99モル%の部分ケン化ポリビニルアルコール、アルキル基の炭素数が1〜5のヒドロキシアルキルセルロースおよびアルキルセルロースから選ばれた樹脂が特に好ましく用いられる。
【0076】
剥離補助層(K)は、赤外線で融除しやすくするために、赤外線吸収物質をさらに含有してもよい。赤外線吸収物質としては、感熱マスク層(I)の説明で例示したものを使用することができる。また、塗工性、濡れ性、および剥離性向上のために界面活性剤を含有してもよい。特にリン酸エステル系の界面活性剤を剥離補助層(K)に含有するとカバーフィルム(H)からの剥離性が向上する。
【0077】
剥離補助層(K)の膜厚は6μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。膜厚が1μm以下であれば、感熱マスク層(I)のレーザー融除性を損なうことがない。また、膜厚が0.1μm以上であれば剥離補助層(K)の形成が容易であり好ましい。
【0078】
次に、感光性樹脂組成物および感光性樹脂印刷版原版の製造方法について説明する。例えば、(A1)化合物、(A1−1)化合物および(B)化合物を、水/アルコール混合溶媒に加熱溶解した後に、(C)化合物、(D)成分、および必要に応じて可塑剤その他の添加剤等を添加し、撹拌して十分に混合し、印刷面層用感光性樹脂組成物溶液を得る。(A1)化合物および(A1−1)化合物を(A2)化合物に変えた以外は、上記と同様にして下層用感光性樹脂組成物溶液を得る。
【0079】
上記のようにして得た下層用感光性樹脂組成物溶液を、必要により易接着層(G)を有する支持体(E)上に流延し、乾燥して下層(F1)を形成する。その後、その上に上記のようにして得た印刷面層用感光性樹脂組成物溶液を流延し、乾燥して印刷面層(F2)を形成し、下層(F1)および印刷面層(F2)の2層からなる感光性樹脂層(F)を形成する。さらに、必要により粘着防止層を塗布したカバーフィルム(H)を感光性樹脂層(F)上に密着させることで感光性印刷版原版を得ることができる。
【0080】
また、別法として、乾燥製膜により感光性樹脂シートを作製し、支持体(E)とカバーフィルム(H)で該感光性樹脂シートを挟み込むようにラミネートすることでも感光性印刷版原版を得ることができる。
【0081】
感光性印刷版原版が感熱マスク層(I)を有する場合、感熱マスク層(I)の形成方法としては、特に限定されないが、例えば、カーボンブラックを分散させた樹脂を適当な溶媒で溶解または希釈し、感光性樹脂層(F)上に塗布して溶媒を乾燥することにより、感熱マスク層(I)を形成することができる。また、前述のカーボンブラック溶液を一旦カバーフィルム(H)に塗布し、このカバーフィルム(H)と支持体(E)で感光性樹脂層(F)を挟み込むようにラミネートすることでも感熱マスク層(I)を形成することができる。
【0082】
感光性印刷版原版が接着力調整層(J)を有する場合、接着力調整層(J)の形成方法としては、特に限定されないが、薄膜形成の簡便さから、接着力調整層(J)を構成する成分を溶媒に溶解した溶液を感熱マスク層(I)上に塗布し、溶媒を除去する方法が特に好ましく行われる。溶媒の除去方法としては、例えば熱風乾燥、遠赤外線乾燥、自然乾燥などを挙げることができる。溶媒は特に限定されないが、水、アルコール、または水とアルコールの混合物が好ましく使用される。水やアルコールを使用した場合、感熱マスク層(I)が水不溶性であると、感熱マスク層(I)上に塗布しても感熱マスク層(I)が浸食を受けることがないため好ましい。
【0083】
感光性印刷版原版が剥離補助層(K)を有する場合、剥離補助層(K)の形成方法は特に限定されないが、薄膜形成の簡便さから、剥離補助層(K)成分を溶媒に溶解した溶液をカバーフィルム(H)上に塗布し、溶媒を除去する方法が特に好ましく行われる。溶媒の除去方法としては、例えば熱風乾燥、遠赤外線乾燥、自然乾燥などを挙げることができる。剥離補助層(K)成分を溶解する溶媒は特に限定されないが、水やアルコール、または水とアルコールの混合物が好ましく使用される。
【0084】
次に、印刷版の製造方法について説明する。
【0085】
アナログ製版方式およびCTP製版方式では、(1)感光性樹脂印刷版原版に活性光線を照射してレリーフとなる部分の感光性樹脂層を選択的に架橋させる工程、(2)未架橋部分の樹脂層を除去してレリーフを得る工程を順次経て、印刷版を製造することができる。
【0086】
例えば、感光性印刷版原版が感熱マスク層(I)を具備しない場合(以下、アナログ版と呼ぶ)、カバーフィルム(H)を具備する場合はこれを剥離した後、感光性樹脂層(F)上にネガティブまたはポジティブの原画フィルムを密着させ、紫外線照射することによって、感光性樹脂層(F)を光硬化させる。
【0087】
また、感光性印刷版原版が感熱マスク層(I)を具備する場合(以下、CTP版と呼ぶ)は、カバーフィルム(H)を剥離した後、レーザー描画機を用いて原画フィルムに相当する像の描画を実施した後、紫外線照射することによって、感光性樹脂層(F)を光硬化させる。
【0088】
紫外線照射は、通常300〜400nmの波長を照射できる高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノン灯、カーボンアーク灯、ケミカル灯などを用いて行う。特に微細な細線または独立点の再現性が要求される場合は、カバーフィルム(H)の剥離前に支持体(E)側から短時間露光(裏露光)することも可能である。
【0089】
次に、露光された感光性印刷版原版を現像液に浸漬し、未硬化部分をブラシで擦りだして除去するブラシ式現像装置を用いて現像することにより、基板上にレリーフ像を形成する。また、ブラシ式現像装置の代わりにスプレー式現像装置を使用することも可能である。現像液としては、水または界面活性剤を添加した水を用いることができる。現像時の液温は15〜40℃が好ましい。
【0090】
レリーフ像形成後、50〜70℃において10分間程度乾燥し、必要に応じてさらに大気中ないし真空中で活性光線処理して印刷版を得ることができる。
【0091】
レーザー彫刻製版方式の場合は、(1)感光性樹脂印刷版原版を架橋して架橋原版を得る工程、(2)前記架橋原板にレーザーをパターン照射し、樹脂層を彫刻してレリーフを得る工程を順次経て、印刷版を製造することができる。
【0092】
さらに、必要に応じて、前記工程(2)に次いで、(3)水または水を含む液体でレリーフをリンスする工程、(4)彫刻により得られたレリーフを乾燥してリンス液を揮発させる工程、(5)レリーフに活性光線を照射することによりさらに架橋させる工程などを含んでも良い。
【0093】
工程(1)は、感光性樹脂層(F)に活性光線を照射することにより光架橋させる工程である。活性光線としては、可視光、紫外光、電子線などが挙げられるが、紫外光が最も一般的である。紫外光の照射は、通常300〜400nmの波長を照射できる高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノン灯、カーボンアーク灯、ケミカル灯などを用いて行う。活性光線を照射する工程は、活性光線を透過する透明なカバーフィルム(H)が設けられている場合、カバーフィルム(H)を剥離する前後のどちらでもよい。カバーフィルム(H)が活性光線を透過しない場合は、カバーフィルム(H)を剥離した後に照射を行う。酸素の存在下では重合阻害が生じるので、感光性樹脂層(F)上に塩化ビニルを被せて真空引きした上で、活性光線を照射してもよい。また、レリーフの支持体(E)側を裏面とすれば、おもて面に活性光線を照射するだけでもよいが、支持体(E)が活性光線を透過する透明なフィルムならば、裏面からも活性光線を照射することができる。
【0094】
感光性樹脂印刷版原版を架橋することで、第1にレーザー彫刻後形成されるレリーフがシャープになり、第2にレーザー彫刻の際に発生する彫刻残渣の粘着性が抑制されるという利点がある。未架橋の感光性樹脂印刷版原版をレーザー彫刻すると、レーザー照射部の周辺に伝播した余熱により、本来意図していない部分が溶融または変形しやすく、シャープなレリーフが得られない。また、素材の一般的な性質として、低分子なものほど固形ではなく液状になり、すなわち粘着性が強くなる。架橋原版を彫刻する際に発生する彫刻残渣は、低分子の材料を多く用いるほど粘着性が強くなる。低分子である(C)化合物は架橋することで高分子になるため、発生する彫刻残渣は粘着性が少なくなる傾向がある。
【0095】
(2)架橋原版にレーザーをパターン照射し、感光性樹脂層を彫刻してレリーフを得る工程とは、形成したい画像のデジタルデータを元にコンピューターでレーザーヘッドを制御し、架橋原版に対して走査照射する工程のことである。赤外レーザーが照射されると、架橋原版中の分子が分子振動し、熱が発生する。赤外レーザーとして炭酸ガスレーザーやYAGレーザーのような高出力のレーザーを用いると、レーザー照射部分に大量の熱量が発生し、架橋原版中の分子は分子切断あるいはイオン化されて選択的な除去、すなわち彫刻がなされる。
【0096】
レーザー彫刻製版方式の利点は、彫刻深さを任意に設定できるため、構造を3次元的に制御することができる点である。例えば、微細な網点を印刷する部分は浅く、あるいは、ショルダーをつけて彫刻することで、印圧でレリーフが転倒しないようにすることができ、細かい抜き文字を印刷する溝の部分は深く彫刻することで、溝にインキが埋まりにくくなり、抜き文字つぶれを抑制することが可能となる。
【0097】
彫刻表面に彫刻残渣が付着している場合は、さらに(3)水または水を含む液体でレリーフをリンスする工程、を行って、彫刻面における彫刻残渣を洗い流しても良い。リンスの手段としては、流水で洗い流す方法、高圧水をスプレー噴射する方法、感光性樹脂凸版の現像機として公知のバッチ式あるいは搬送式のブラシ式洗い出し機で、彫刻表面を主に水の存在下でブラシ擦りする方法などが挙げられる。彫刻残渣のヌメリがとれない場合は、石鹸などを添加したリンス液を用いてもよい。
【0098】
(3)水または水を含む液体でレリーフをリンスする工程を行った場合、(4)彫刻により得られたレリーフを乾燥してリンス液を揮発させる工程、を追加することが好ましい。
【0099】
さらに、必要に応じて(5)レリーフに活性光線を照射することによりさらに架橋させる工程、を追加しても良い。追加の架橋工程(5)を行うことにより、彫刻によって形成されたレリーフをより強固にすることができる。
【0100】
本発明の感光性樹脂印刷版原版を用いて製造された印刷版は、ラベル印刷用輪転印刷機や間欠式輪転印刷機などを用いた凸版印刷用、ドライオフセット印刷用に用いることが最も適しているが、平版印刷用、凹版印刷用、孔版印刷用、フォトレジストとして使用することも可能である。
【実施例】
【0101】
以下、本発明を実施例で詳細に説明する。実施例では、ケミカルストレスクラックが発生しやすいラベル印刷用輪転印刷機や間欠式輪転印刷機で好ましく使用される印刷版の版面硬度であるタイプD デュロメータ硬さ55°の感光性樹脂印刷版原版および印刷版の例を挙げるが、これらの版面硬度や印刷用途に限定されるものではない。
【0102】
<部分ケン化ポリ酢酸ビニル誘導体((A)化合物)の作製>
合成例1:
日本合成化学工業(株)製の部分ケン化ポリ酢酸ビニル“KL−05”(平均重合度500、ケン化度80モル%)をアセトン中で膨潤させ、無水コハク酸1.0モル%を添加し、60℃で6時間撹拌して分子鎖にカルボキシル基を付加させた。このポリマーをアセトンで洗浄して未反応の無水コハク酸を除去した後、乾燥した。得られたポリマーの酸価を測定したところ、10.0mgKOH/gであった。このポリマー100質量部をエタノール/水=30/70(重量比)の混合溶媒200質量部に80℃で溶解した。ここにグリシジルメタクリレートを6質量部添加して部分ケン化ポリ酢酸ビニル中に官能基を導入した。電位差滴定装置877ティトリーノプラス(登録商標)(メトロームジャパン(株))を用いて電位差滴定法により分析した結果から、ポリマー中のカルボキシル基がグリシジルメタクリレートのエポキシ基と反応しポリマー側鎖中にメタクロイル基が導入されたことを確認した。このようにして、(A)化合物である平均重合度500の部分ケン化ポリ酢酸ビニル誘導体を得た。
【0103】
また、部分ケン化ポリ酢酸ビニルとして、平均重合度1000(デンカ(株)デンカポバール(登録商標) MP−10)、および、平均重合度2200(日本合成化学工業(株)ゴーセノール(登録商標) KH−17)を用いた以外は上記と同じ方法で反応させ、それぞれ平均重合度1000および2200の部分ケン化ポリ酢酸ビニル誘導体を得た。
【0104】
(A)化合物の平均重合度はJIS K 6726:1994「ポリビニルアルコール試験方法」の「3.試験方法」に記載の平均重合度の測定方法に従って確認した。すなわち、ケン化されていない部分(残存酢酸基)をあらかじめ40℃±2℃の水浴中で水酸化ナトリウムを用いて完全にケン化した。水との相対粘度は測定温度を25℃±0.1℃とし、オストワルド粘度計を用いて測定し、「3.試験方法」に記載の計算式によって算出した。その結果を用いて「3.試験方法」に記載の計算式によって平均重合度を算出した。
【0105】
<塩基性窒素を有するポリアミド((B)化合物)の合成>
合成例2:
ε−カプロラクタム10質量部、N−(2−アミノエチル)ピペラジンとアジピン酸のナイロン塩90質量部および水100質量部をステンレス製オートクレーブに入れ、内部の空気を窒素ガスで置換した後に180℃で1時間加熱し、ついで水分を除去して水溶性ポリアミド樹脂である塩基性窒素を有するポリアミドを得た。
【0106】
<易接着層(G)を有する支持体(E)の作製>
“バイロン”(登録商標)31SS(不飽和ポリエステル樹脂のトルエン溶液、東洋紡績(株)製)260質量部および“PS−8A”(ベンゾインエチルエーテル、和光純薬工業(株)製)2質量部の混合物を70℃で2時間加熱後、30℃に冷却し、エチレングリコールジグリシジルエーテルジメタクリレート7質量部を加えて2時間混合した。さらに、“コロネート”(登録商標)3015E(多価イソシアネート樹脂の酢酸エチル溶液、日本ポリウレタン工業(株)製)25質量部および“EC−1368”(工業用接着剤、住友スリーエム(株)製)14質量部を添加して混合し、易接着層(G)用塗工液1を得た。
【0107】
“ゴーセノール”(登録商標)KH−17(ケン化度78.5〜81.5モル%のポリビニルアルコール、日本合成化学工業(株)製)50質量部を、“ソルミックス”(登録商標)H−11(アルコール混合物、日本アルコール(株)製)200質量部および水200質量部の混合溶媒中70℃で2時間混合した後、“ブレンマー”(登録商標)G(グリシジルメタクリレート、日本油脂(株)製)1.5質量部を添加して1時間混合した。ここに、さらに(ジメチルアミノエチルメタクリレート)/(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)重量比2/1の共重合体(共栄社化学(株)製)3質量部、“イルガキュア”(登録商標)651(ベンジルメチルケタール、チバ・ガイギー(株)製)5質量部、“エポキシエステル70PA”(プロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、共栄社化学(株)製)21質量部およびエチレングリコールジグリシジルエーテルジメタクリレート20質量部を添加して90分間混合し、50℃に冷却後、“メガファック”(登録商標) F−470(DIC(株)製)を0.1質量部添加して30分間混合して易接着層(G)用塗工液2を得た。
【0108】
厚さ250μmの“ルミラー”(登録商標)T60(ポリエステルフィルム、東レ(株)製)上に前記易接着層(G)用塗工液1を乾燥後膜厚が40μmになるようにバーコーターで塗布し、180℃のオーブンで3分間加熱して溶媒を除去した後、その上に前記易接着層(G)用塗工液2を乾燥膜厚が30μmとなるようにバーコーターで塗布し、160℃のオーブンで3分間加熱して、易接着層(G)を有する支持体(E)を得た。
【0109】
<アナログ版およびレーザー彫刻版用のカバーフィルム(H1)の作製>
表面粗さRaが0.1〜0.6μmとなるように粗面化された厚さ100μmの“ルミラー(登録商標)”S10(ポリエステルフィルム、東レ(株)製)に、“ゴーセノール(登録商標)”AL−06(ケン化度91〜94モル%の部分ケン化ポリビニルアルコール、日本合成化学工業(株)製)を乾燥膜厚が1μmとなるように塗布し、100℃で25秒間乾燥し、アナログ版およびレーザー彫刻版用のカバーフィルムH1を得た。
【0110】
<CTP版用のカバーフィルム(H2)の作製>
“ゴーセノール(登録商標)”KL−05(ケン化度78〜82モル%のポリビニルアルコール、日本合成化学工業(株)製)10質量部を水40質量部、メタノール20質量部、n−プロパノール20質量部およびn−ブタノール10質量部に溶解させ、接着力調整層(J)用塗工液を得た。
【0111】
“MA−100”(カーボンブラック、三菱化学(株)製)23質量部、“ダイヤナール(登録商標)”(登録商標)BR−95(アルコール不溶性のアクリル樹脂、三菱レイヨン(株)製)1質量部、可塑剤“ATBC“(アセチルクエン酸トリブチル、(株)ジェイプラス製)6質量部およびジエチレングリコールモノエチルエーテルモノアセテート30質量部をあらかじめ混合させたものを、3本ロールミルを用いて混練分散させ、カーボンブラック分散液を調製した。該カーボンブラック分散液に“アラルダイト6071“(エポキシ樹脂、旭チバ(株)製)20質量部、“ユーバン(登録商標)”(登録商標)62(メラミン樹脂、三井化学(株)製)27質量部、“ライトエステル”(登録商標)P−1M(リン酸モノマー、共栄社化学(株)製)0.7質量部およびメチルイソブチルケトン140質量部を添加し、30分間撹拌した。その後、固形分濃度が33質量%になるようにさらにメチルイソブチルケトンを添加し、感熱マスク層(I)用塗工液を得た。
【0112】
“ゴーセノール(登録商標)”AL−06(ケン化度91〜94モル%のポリビニルアルコール、日本合成化学工業(株)製)11質量部を水55質量部、メタノール14質量部、n−プロパノール10質量部およびn−ブタノール10質量部に溶解させ、剥離補助層(K)用塗工液を得た。
【0113】
カバーフィルム(H)として、表面を粗面化処理されていない厚さ100μmの“ルミラー(登録商標)”S10(ポリエステルフィルム、東レ(株)製)を用いた。カバーフィルム(H)上に、前記剥離補助層(K)用塗工液をバーコーターで乾燥膜厚が0.25μmになるように塗布し、100℃で25秒間乾燥し、剥離補助層(K)/カバーフィルム(H)の積層体を得た。このようにして得られた積層体の剥離補助層(K)側に、前記感熱マスク層(I)用塗工液をバーコーターで乾燥膜厚が2μmになるように塗布し、140℃で30秒間乾燥し、感熱マスク層(I)/剥離補助層(K)/カバーフィルム(H)の積層体を得た。このようにして得られた積層体の赤外感受性層(I)側に、前記接着力調整層(J)用塗工液をバーコーターで乾燥後膜厚が1μmになるように塗布し、180℃で30秒間乾燥することで、接着力調整層(J)/感熱マスク層(I)/剥離補助層(K)/カバーフィルム(H)の構成を有するCTP版用のカバーフィルムH2を得た。このカバーフィルムH2(J/I/K/Hの積層体)の、カバーフィルムHの値をゼロとした光学濃度(オルソクロマチックフィルター、透過モード)は3.6であった。
【0114】
[評価方法]
各実施例および比較例における評価は、次の方法で行った。
【0115】
(1)アナログ版の画像再現性
10cm×10cmのアナログ版感光性印刷版原版からカバーフィルム(H1)のうちポリエステルフィルムのみを剥離し(剥離後の感光性印刷版原版の最表面は乾燥膜厚1μmの部分ケン化ポリビニルアルコール層)、感度測定用グレースケールネガフィルムおよび画像再現性評価用ネガフィルム(150線4%網点、直径200μmの独立点を有する)を真空密着させた。該ネガフィルムを通して、ケミカル灯FL20SBL−360 20ワット(三菱電機オスラム(株)製)でグレースケール感度16±1段となる条件で露光した(主露光)。その後、現像液温25℃の水でブラシ式現像装置により現像し、60℃で10分間乾燥した後、さらにケミカル灯FL20SBL−360 20ワット(三菱電機オスラム(株)製)で主露光と同条件で後露光し、画像再現性評価用印刷版を得た。
【0116】
得られた印刷版について、以下の方法で網点および独立点を評価した。
【0117】
網点:1cm×1cmの領域に形成された150線4%の網点を倍率20倍の拡大鏡を用いて観察し、ネガを密着した位置に網点が再現しているかどうかを以下の点数基準で判定し、4点以上であれば合格とした。
5:欠けなし
4:最外周部エリアの網点に欠けが見られる
3:最外周部および最外周から2列目のエリアに欠けが見られる
2:最外周から3列目を含む内部のエリアに欠けが見られる
1:全網点エリアの20%以上の面積に欠けが見られる。
【0118】
独立点:直径200μmの独立点3個を目視観察し、独立点が再現されている数を計数した。3つ全てが再現していれば合格とした。
【0119】
(2)CTP版の画像再現性
10cm×10cmのCTP版感光性印刷版原版からカバーフィルム(H2)のポリエステルフィルムのみを剥離し、レーザー描画機CDI2120(エスコグラフィックス(株)製)を用いて画像再現性評価用チャート(175線2%網点、直径140μmの独立点を有する)をレーザーエネルギー2.0J/cm
2で描画し、その後、ケミカル灯FL20SBL−360 20ワット(三菱電機オスラム(株)製)で6分間露光した(主露光)。その後、現像液温25℃の水でブラシ式現像装置により現像し、60℃で10分間乾燥した後、さらにケミカル灯FL20SBL−360 20ワット(三菱電機オスラム(株)製)で主露光と同条件で後露光し、画像再現性評価用印刷版を得た。
【0120】
得られた印刷版について、以下の方法で網点および独立点を評価した。
【0121】
網点:1cm×1cmの領域に形成された175線2%の網点を倍率20倍の拡大鏡を用いて観察し、ネガを密着した位置に網点が再現しているかどうかを以下の点数基準で判定し、4点以上であれば合格とした。
5:欠けなし
4:最外周部エリアの網点に欠けが見られる
3:最外周部および最外周から2列目のエリアに欠けが見られる
2:最外周から3列目を含む内部のエリアに欠けが見られる
1:全網点エリアの20%以上の面積に欠けが見られる。
【0122】
独立点:直径140μmの独立点3個を目視観察し、独立点が再現されている数を計数した。3つ全てが再現していれば合格とした。
【0123】
(3)レーザー彫刻版の画像再現性
カバーフィルム(H1)を除いた厚さが950μmの感光性樹脂印刷版原版のカバーフィルム(H1)側から、ケミカル灯FL20SBL−360 20ワット(三菱電機オスラム(株)製)を備えた製版装置DX−A3(タカノ(株)製)で、大気下で全面露光して(露光量:2400mJ/cm
2)架橋原版を得た。カバーフィルム(H1)のうち、ポリエステルフィルムのみを剥離し、Adflex Direct 250L((株)コムテックス製)で架橋原版にレーザーをパターン照射することで樹脂層を彫刻し、133Lpi1%〜5%までの網点レリーフを形成した。彫刻速度を1000cm/s、レーザー走査幅を10μmとした。
【0124】
このようにして得られるレリーフ断面の概念図を
図1に示す。
図1のレリーフ断面における、トップ1が10%、ボトム2が100%、ワイズ3が0.3mmの条件で彫刻を行った。
【0125】
その後、製版装置DX−A3を用いて、25℃の水道水で30秒間リンスを行い、その後、60℃の熱風乾燥機で10分間乾燥した。再度ケミカル灯で、大気下で全面露光(露光量:2400mJ/cm
2)して、画像再現性評価用印刷版を得た。
【0126】
得られた印刷版について、リンス後の彫刻残渣残り有無と網点再現性を25倍ルーペで確認した。網点再現性は、再現している最小網点%を評価した。
【0127】
(4)レリーフのクラック発生評価(耐刷性)
アナログ版については、10cm×10cmのアナログ版感光性印刷版原版からカバーフィルム(H1)のうちポリエステルフィルムのみを剥離し、クラック発生評価用ネガフィルム(直径12mmの円形ベタ部を有する)を真空密着させ、ケミカル灯FL20SBL−360 20ワット(三菱電機オスラム(株)製)でグレースケール感度16±1段となる条件で露光した。その後、現像液温25℃の水でブラシ式現像装置により現像し、60℃で10分間乾燥した後、さらにケミカル灯FL20SBL−360 20ワット(三菱電機オスラム(株)製)で主露光と同条件で後露光し、刷版厚950μm、直径12mmの円形ベタ部を有する印刷版を得た。その後、版面に水蒸気を当て、クラックが発生しやすい状態にした後、印刷機は間欠式輪転印刷機LR3(岩崎鉄工(株)製)、インキはBEST CURE(登録商標) UV161藍S((株)T&K TOKA製)、紙は厚さ90μmの両面コート紙(マルウ接着(株)製)を用いて印刷した。印圧調整ハンドルの目盛を5.05、印刷スピードは100m/分とした。3000刷、5000刷、8000刷、11000刷、15000刷後の印刷版のレリーフ表面を25倍のルーペで観察してクラックの有無を評価した。判定は、5000刷後にクラックが無い場合は耐性が高いため合格、クラックが有る場合は不合格とした。
【0128】
CTP版については、10cm×10cmのCTP版感光性印刷版原版からカバーフィルム(H2)のうちポリエステルフィルムのみを剥離し、レーザー描画機CDI2120(エスコグラフィックス(株)製)を用いてレーザーエネルギー2.0J/cm
2で描画し、ケミカル灯FL20SBL−360 20ワット(三菱電機オスラム(株)製)で6分間露光した(主露光)。その後、現像液温25℃の水でブラシ式現像装置により現像し、60℃で10分間乾燥した後、さらにケミカル灯FL20SBL−360 20ワット(三菱電機オスラム(株)製)で主露光と同条件で後露光し、刷版厚950μm、直径12mmの円形ベタ部を有する印刷版を得た。印刷によるクラック発生評価は、アナログ版と同様の方法で行った。
【0129】
レーザー彫刻版については、レーザー彫刻版感光性樹脂印刷版原版のカバーフィルム(H1)側から、ケミカル灯FL20SBL−360 20ワット(三菱電機オスラム(株)製)を備えた製版装置DX−A3(タカノ(株)製)で、大気下で全面露光して(露光量:2400mJ/cm
2)架橋原版を得た。カバーフィルム(H1)のうち、ポリエステルフィルムのみを剥離し、Adflex Direct 250L((株)コムテックス製)で架橋原版にレーザーをパターン照射することで樹脂層を彫刻した。その後、現像液温25℃の水でブラシ式現像装置により現像し、60℃で10分間乾燥した後、さらにケミカル灯FL20SBL−360 20ワット(三菱電機オスラム(株)製)で主露光と同条件で後露光し、刷版厚950μm、直径12mmの円形ベタ部を有する印刷版を得た。印刷によるクラック発生評価は、アナログ版と同様の方法で行った。
【0130】
(5)水現像性の評価
画像再現性評価と同様、10cm×10cmのアナログ版およびCTP版の感光性印刷版原版にテストパターンを露光した。その後、製版装置DX−A3(タカノ(株)製)のブラシ式現像装置を用いて現像液温25℃の水で現像し、支持体上に樹脂が残らなくなる現像時間を評価した。判定は、125秒以内であれば水現像性が高いため合格、125秒を超えると水現像性が低いと判断し、不合格とした。
【0131】
(6)レーザー彫刻版における印刷面層と下層の接着評価
架橋原版にレーザーを照射するパターンを変更した以外は(3)同様の方法で、幅200μm、長さ10cmの細線を有する印刷版を作成した。その後、印刷版のレリーフ表面を25倍のルーペで観察して印刷面層と下層が剥離した部分の有無を評価した。剥離が無い場合を合格、剥離が有る場合を不合格とした。
【0132】
(7)タイプD デュロメータ硬さ
感光性樹脂層用の感光性樹脂組成物を用いて10cm×10cm、厚さ600μmの感光性樹脂シートを得た。ケミカル灯FL20SBL−360 20ワット(三菱電機オスラム(株)製)を備えた製版装置DX−A3(タカノ(株)製)を用いて、大気下で、該感光性樹脂シートを全面露光(露光量:2400mJ/cm
2)し、デュロメータ硬さ測定用サンプルを作製した。その後、タイプDデュロメータを用いて、JIS K 6253−3:2012「加硫ゴムおよび熱可塑性樹脂−硬さの求め方−」の「第3部 デュロメータ硬さ」の「8.試験方法」に規定される方法で、サンプルのデュロメータ硬さを測定した。ここでは、ラベル印刷用輪転印刷機や間欠式輪転印刷機に好ましく使用される印刷版の版面硬度である40〜60°の範囲であれば合格とした。
【0133】
(8)総合判定
評価項目の全てにおいて合格であれば「合格」、評価項目の一部でも不合格があれば「不合格」とした。
【0134】
[実施例1]
<印刷面層用 感光性樹脂組成物溶液1の調整>
攪拌用ヘラおよび冷却管を取り付けた3つ口フラスコ中に、上記合成例1で合成した(A)化合物および上記合成例2で合成した(B)化合物を、表1に記載の量添加し、“ソルミックス”(登録商標)H−11(アルコール混合物、日本アルコール(株)製)50質量部および水50質量部の混合溶媒を混合した後、攪拌しながら90℃2時間加熱し、溶解させた。ここで、(A)化合物の重合度は表1に記載のものを用いた。該混合物を70℃に冷却した後、表1に記載のその他の成分を添加し、30分攪拌し、印刷面層用感光性樹脂組成物溶液1を得た。
【0135】
<下層用 感光性樹脂組成物溶液1の調整>
(A)化合物を表1に記載のように変更した以外は、印刷面層用感光性樹脂組成物溶液1と同様の方法で、下層用感光性樹脂組成物溶液1を得た。
【0136】
<アナログ版 感光性樹脂印刷版原版1の製造>
上記のようにして得られた下層用感光性樹脂組成物溶液1を、前記易接着層(G)を有する支持体(E)の易接着層(G)側に流延し、60℃で2.5時間乾燥して下層を形成した。このとき乾燥後の版厚(ポリエステルフィルム+感光性樹脂層)が0.90mmとなるよう調節した。その後、前記印刷面層用感光性樹脂組成物溶液1を下層の上に流延し、60℃で1時間乾燥して印刷面層を形成した。このとき乾燥後の版厚(ポリエステルフィルム+感光性樹脂層)が0.95mmとなるよう調節した。
【0137】
このようにして得られた感光性樹脂層上に、水/エタノール=50/50(重量比)の混合溶剤を塗布し、表面に前記アナログ版用のカバーフィルム(H1)を圧着し、感光性印刷版原版を得た。得られた感光性印刷版原版を用いて、前記方法により印刷版の特性を評価した結果を表1に示す。
【0138】
[実施例2]
<印刷面層用 感光性樹脂組成物溶液2の調整>
実施例1と同様の方法で印刷面層用感光性樹脂組成物溶液2を得た。
【0139】
<下層用 感光性樹脂組成物溶液2の調整>
実施例1と同様の方法で下層用感光性樹脂組成物溶液2を得た。
【0140】
<CTP版 感光性樹脂印刷版原版2の製造>
上記のようにして得られた下層用感光性樹脂組成物溶液2を、前記易接着層(G)を有する支持体(E)の易接着層(G)側に流延し、60℃で2.5時間乾燥して下層を形成した。このとき乾燥後の版厚(ポリエステルフィルム+感光性樹脂層)が0.90mmとなるよう調節した。その後、前記印刷面層用感光性樹脂組成物溶液2を下層の上に流延し、60℃で1時間乾燥して印刷面層を形成した。このとき乾燥後の版厚(ポリエステルフィルム+感光性樹脂層)が0.95mmとなるよう調節した。
【0141】
このようにして得られた感光性樹脂層上に、水/エタノール=50/50(重量比)の混合溶剤を塗布し、表面に前記CTP版用のカバーフィルム(H2)を圧着し、感光性印刷版原版を得た。得られた感光性印刷版原版を用いて、前記方法により印刷版の特性を評価した結果を表1に示す。
【0142】
[実施例3〜6、比較例1〜5]
各成分を表1、2のとおり変更した以外は実施例1と同様にして感光性樹脂シートおよび感光性印刷版原版を作製した。評価結果を表1、2に示す。
【0143】
【表1】
【0144】
【表2】
【0145】
[実施例7]
<印刷面層用 感光性樹脂組成物溶液3の調整>
各成分を表3に記載のように変更した以外は、実施例1と同様の方法で印刷面層用感光性樹脂組成物溶液3を得た。
【0146】
<下層用 感光性樹脂組成物溶液3の調整>
各成分を表3に記載のように変更した以外は、実施例1と同様の方法で下層用感光性樹脂組成物溶液3を得た。
【0147】
<レーザー彫刻版 感光性樹脂印刷版原版3の製造>
上記のようにして得られた下層用感光性樹脂組成物溶液3を、前記易接着層(G)を有する支持体(E)の易接着層(G)側に流延し、60℃で2.5時間乾燥して下層を形成した。このとき乾燥後の版厚(ポリエステルフィルム+感光性樹脂層)が0.90mmとなるよう調節した。その後、前記印刷面層用感光性樹脂組成物溶液3を下層の上に流延し、60℃で1時間乾燥して印刷面層を形成した。このとき乾燥後の版厚(ポリエステルフィルム+感光性樹脂層)が0.95mmとなるよう調節した。
【0148】
このようにして得られた感光性樹脂層上に、水/エタノール=50/50(重量比)の混合溶剤を塗布し、表面に前記レーザー彫刻版用のカバーフィルム(H1)を圧着し、感光性印刷版原版を得た。得られた感光性印刷版原版を用いて、前記方法により印刷版の特性を評価した結果を表3に示す。
【0149】
[実施例8〜12、比較例6〜9]
各成分を表3、4のとおり変更した以外は実施例7と同様にして感光性樹脂シートおよび感光性印刷版原版を作製した。評価結果を表3、4に示す。
【0150】
【表3】
【0151】
【表4】