(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
正極集電体と、負極集電体と、正極と、負極と、前記正極と前記負極とを分離するセパレータと、電解液と、前記正極と前記負極と前記セパレータと前記電解液とを収納するベース容器と、前記容器を封止する蓋とからなり、前記正極集電体及び前記負極集電体と電気的に接続された各々の外部端子を介して充放電が可能な電気化学セルであって、
前記容器は、容器底部と、容器壁部とを有し、
前記正極と前記負極とが、前記正極が前記容器底部側に配置されるように、前記セパレータを介して対向配置され、かつ、前記正極の前記容器底部側に前記正極集電体が配置されるとともに、前記負極側に前記負極集電体が配置されており、
前記正極と前記正極集電体及び前記容器底部との間に、ポリアミック酸の加熱焼成物と、平均粒径が23〜36nmのカーボン、及び黒鉛の微粒子の混合物とからなる良電性の保護層が設けられ、
前記正極と前記正極集電体とが前記保護層を介して電気的に接続されてなることを特徴とする電気化学セル。
正極集電体と、負極集電体と、正極と、負極と、前記正極と前記負極とを分離するセパレータと、電解液と、前記正極と前記負極と前記セパレータと前記電解液とを収納するベース容器と、前記容器を封止する蓋とからなり、前記正極集電体及び前記負極集電体と電気的に接続された各々の外部端子を介して充放電が可能な電気化学セルであって、
前記容器は、容器底部と、容器壁部と、前記容器底部と前記容器壁部との間に配置されスペーサーとからなるとともに、前記スペーサーが貫通する溝部を有しており、
前記正極集電体は、前記容器底部と前記スペーサーの間に形成され、かつ、前記溝部に露出している面が、ポリアミック酸の加熱焼成物と、平均粒径が23〜36nmのカーボン、及び黒鉛の微粒子の混合物とからなる良電性の保護層によって被覆され、前記正極と前記正極集電体とが前記保護層を介して電気的に接続されてなることを特徴とする電気化学セル。
前記保護層は、前記カーボンが、カーボンブラック、カーボンファイバー及びカーボンナノチューブの内の少なくとも1種以上を含むものであることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の電気化学セル。
前記保護層は、前記カーボンと前記黒鉛の微粒子との混合比が8:30〜19:19(5:5)の範囲とされたものであることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の電気化学セル。
前記保護層は、形成時に用いられるポリアミック酸の加熱焼成物を含むバインダーの成分が、固形分の比率が40wt%以上80wt%未満であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の電気化学セル。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の電気化学セルの実施形態として、非水電解質電池及び電気二重層キャパシタの第1及び第2の実施形態を挙げ、それらの各構成及び製造方法について図面を参照しながら詳述する。
なお、本発明で説明する電気化学セルとは、具体的には、正極または負極として用いる活物質と電解液とが容器内に収容されてなる、非水電解質電池や電気二重層キャパシタ等を指し、本実施形態においても、これらを例に挙げて説明する。
【0030】
[第1の実施形態]
本発明の電気化学セルの第1の実施形態である非水電解質電池及び電気二重層キャパシタと、その製造方法について、図面を参照しながら以下に説明する。
【0031】
「電気二重層キャパシタ(非水電解質電池)」
図1に示す第1の実施形態の電気二重層キャパシタ(非水電解質電池)Aは、いわゆるチップ型のもので、長さ2〜3mm×幅2〜3mm×高さ0.2〜1mmの略直方体のものである。この電気二重層キャパシタAは、正極集電体7と、負極集電体6と、正極9と、負極8と、正極9と負極8とを分離するセパレータ10と、電解液と、正極9と負極8とセパレータ10と電解液とを収納するベース容器(容器)1Aと、この容器1Aを封止する蓋4とからなり、正極集電体7及び負極集電体6と電気的に接続された各々の外部端子70、60を介して充放電が可能とされている。
【0032】
そして、本実施形態の電気二重層キャパシタAは、容器1Aが、容器底部11と容器壁部12とを有し、正極9と負極8とが、正極が容器底部11側に配置されるようにセパレータ10を介して対向配置され、かつ、正極9の容器底部11側に正極集電体7が配置されるとともに、負極8側に負極集電体6が配置されており、正極9と正極集電体7及び容器底部11との間に、ポリアミック酸の加熱焼成物と、カーボン及び黒鉛の微粒子の混合物とからなる良電性の保護層18Aが設けられ、正極9と正極集電体7とが保護層18Aを介して電気的に接続されてなる構成とされている。また、容器1A内には、図示略の電解液が収容されており、正極9、負極8及びセパレータ10には、上記の電解液が含浸されている。
【0033】
(容器及び蓋)
容器1Aは、
図1に示すように、容器底部11と容器壁部12とを有した有底四角筒状とされており、例えば、セラミック材料からなるものである。また、容器1Aには、容器壁部12の上の開口部周縁に、セラミック材料と熱膨張係数が近いコバール材料を用いたシールリング3が、銀ろうや金ろう等のろう材5で接合されている。そして、本実施形態の電気二重層キャパシタAにおいては、シールリング3を介して蓋4と容器1Aとが密封された状態で構成される。
容器1Aの各部位の厚さとしては、特に限定されないが、例えば、0.15〜0.25mm程度とすることができる。
【0034】
容器底部11及び容器壁部12からなる容器1Aの材料としては、上記のセラミック材料の他、例えば、ガラス、プラスチック、アルミナ等の絶縁性を有する耐熱材料が挙げることができる。
シールリング3としては、コバール等にニッケルメッキが施されたもの等が挙げられる。
また、ろう材5としては、金ろう、銀ろう等、従来公知のろう材が挙げられる。
【0035】
蓋4は、例えば、コバール(鉄、ニッケル及びコバルトの合金)や42alloy等、ニッケルを50質量%程度含有するニッケル鉄合金等の導電性の金属製の平板に、ニッケルメッキが施されたものである。このニッケルメッキは、シールリング3と溶接するときの接合材となる。
【0036】
ここで、蓋4とシールリング3とは、接合時の材質の膨張度と、接合後の冷却によって生じる収縮時の応力とにより、封止部が脆弱することを防止するため、同じ線膨張係数を有する材料を用いることが好ましい。同様に、シールリング3と容器1Aとは、熱による残留応力によって容器1Aが損壊するのを防止するため、線膨張係数の近い材質を選択することが好ましい。この際、例えば、容器1Aの主成分として用いられるアルミナ(Al
2O
3)は、線膨張係数の代表値(400℃)が7.1×10
−6K
−1であり、蓋4又はシールリング3の主成分として用いられるコバールは、線膨張係数の代表値が4.9×10
−6K
−1である。
【0037】
(正極及び負極)
本実施形態の電気二重層キャパシタAは、凹状とされた容器1A内において、一対の電極である正極9と負極8とが、セパレータ10を介して対向配置されている。正極9は、容器1A内において容器底部11側に配置され、後述の保護層18Aを介して正極集電体7と電気的に接続されるとともに、その一部が保護層18Aを介して容器底部11に接着されている。また、負極8は、
図1に示す例においては、接着層13を介して蓋4の内面側に接着され、電気的に接続されている。
【0038】
正極9及び負極8としては、例えば、おが屑、椰子殻、ピッチ、コークス、フェノール樹脂等の有機系物質に対し、水蒸気又はアルカリ等を単独もしくは併用した賦活処理を行うことで得られる活性炭粉末を、適当なバインダーと一緒にプレス成型、又は、圧延ロールして用いることができる。また、フェノール系、レーヨン系、アクリル系、ピッチ系などの繊維を不融化及び炭化賦活処理することで、活性炭又は活性炭繊維とし、これをフェルト状、繊維状、紙状、または焼結体状にして用いてもよい。またポリアニリン(PAN)やポリアセンなども利用できる。
【0039】
また、正極9としては、リチウム含有マンガン酸化物、リチウム含有コバルト酸化物、リチウム含有ニッケル酸化物、リチウム含有チタン酸化物、三酸化モリブデン、五酸化ニオブ等の従来から知られている活物質に、従来公知のバインダーと導電助剤である黒鉛を混合したものを用いることができる。
【0040】
また二次電池に使用する負極8としては、炭素、シリコンやシリコン酸化物など従来から知られている活物質に適当なバインダーと導電助剤である黒鉛を混合し用いることができる。
【0041】
(正極集電体及び負極集電体)
正極集電体7は、
図1に示す例のように、後述の保護層18Aを介して正極9と電気的に接続され、この正極9の容器底部11側に配置される。また、正極集電体7には、容器底部11に設けられた外部端子70が電気的に接続されている。
また、負極集電体6は、
図1に示す例のように、負極8側に配置され、ろう材5、シールリング3、蓋4及び接着層13を介して負極8と電気的に接続されるとともに、容器壁部12から容器底部11に向けて延設される外部端子60に電気的に接続されている。
【0042】
これらの正極集電体7及び負極集電体6としては、通常、この分野で用いられる導電性材料を何ら制限無く用いることができる。これら各集電体の材料としては、使用する電解液の種類によって電解腐食を考慮しながら選択する必要があるが、例えば、タングステン、モリブデン、ニッケル、アルミ、金、銀、銅、鉄、クロムや42alloyやステンレスなどの合金、また、これらを複数積層したもの等で構成でき、適宜、選択することが可能である。ここで、特に、集電体材料にアルミを用いた場合、従来の導電ペーストでは電極との間で剥離が生じ易いという問題があることから、詳細を後述するような、本発明に係る構成のペーストからなる保護層を用いることで、有効に固着する効果が発揮される。
【0043】
また、上述したように、容器1Aの外部底面及び外部側面には、正極集電体7と電気的に接続される外部端子70、及び、負極集電体6と電気的に接続される外部端子60が設けられている。これらの各外部端子60、70は、リフローハンダ付けで電気二重層キャパシタAを回路基板上に取り付ける際の外部端子となる。これらの外部端子60、70は、それぞれ、負極集電体6や正極集電体7と一体的に形成することができ、また、同じ材料から構成することができる。また、外部端子60、70の露出面側は、回路基板とリフローハンダ付けされるため、必要に応じて、図示略のニッケルメッキ、金メッキを施すことが好ましい。このようなメッキを施す際に、電解メッキ浴による方法を用いた場合には、正極集電体7や負極集電体6、ろう材5やシールリング3の露出面全面にもメッキが施される。
【0044】
なお、正極集電体7や負極集電体6を、凹状の容器1Aの内部から外部へ貫通させることで外部端子70や外部端子60を容器1Aの外面に形成する場合には、容器1Aとの密着性が良好な材料を各集電体に採用することで、気密性に優れたものとなる。例えば、容器1Aの材料にセラミックを用いた場合には、このセラミックの焼結温度に耐えうるタングステンやモリブデンを各集電体及び端子に用いる。また、容器1Aの材料に、エポキシ系、ポリイミド系等の熱硬化性樹脂や、ポリスチレン系、ポリフェニレンサルファイド系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリエーテル系等の熱可塑性樹脂を用いた場合には、熱膨張係数の小さい42alloyを各集電体の材料に用いると、リフロー時の熱によっても容器1Aと各集電体6、7の密着性が向上する。ベース容器(容器)1Aと、各集電体6、7及び各外部端子60、70との、材料の組み合わせを上記として構成することで、リフロー炉を通過させた際の気密性が優れた電気化学セルとすることができる。
【0045】
(セパレータ)
セパレータ10は、正極9と負極8との間に介在され、大きなイオン透過度を有し、機械的強度を有する絶縁膜が用いられる。セパレータ10としては、リフロー炉での実装工程と、蓋4の溶接による熱影響を考慮すると、ガラス繊維を用いることが耐熱安定性の観点から好適であり、例えば、ホウ珪酸ガラス、石英ガラス、鉛ガラス等のガラスの繊維積層体が挙げられる。また、セパレータ10に、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチエン等の樹脂からなる不織布を用いることも可能である。セパレータ10としては、これらの中でも、ガラス製の繊維積層体を用いることが好ましく、ホウ珪酸ガラス製を用いることがより好ましい。ガラス製の繊維積層体は、上記の耐熱安定性の他、機械強度に優れるとともに、大きなイオン透過度を有するため、内部抵抗を低減して放電容量が向上するという効果が得られる。
【0046】
また、セパレータ10の孔径や厚さ等は、特に限定されないが、電気化学セルが用いられる機器の電流値に基づいて決定する事項である。また、セラミックの多孔質体を用いることもできる。
【0047】
(保護層)
本発明に係る電気化学セル、即ち、本実施形態の電気二重層キャパシタ(非水電解質電池)Aにおいて用いられる保護層18Aは、ポリアミック酸の加熱焼成物と、カーボン及び黒鉛の微粒子の混合物とからなる良電性の膜からなるものである。本発明においては、正極9と正極集電体7との間に介在される保護層18Aに上記材料を用いることにより、高温環境下における集電体、保護層及び電極の各々の間の固着力が高められ、耐熱性が向上することから、リフローハンダ付け工程における過酷な高温雰囲気に連続的に曝された場合であっても、電極剥離等が生じるのを防止できる。従って、正極9と正極集電体7との間の接触抵抗が上昇するのを抑制でき、ひいては、電気化学セルとしての内部抵抗を低く抑えることが可能となる。
【0048】
上述した保護層18Aに用いる、ポリアミック酸の加熱焼成物と、カーボン及び黒鉛の微粒子の混合物は、具体的には、ポリアミック酸の加熱焼成物として、ポリイミドのような線膨張係数の低い材料を用いることが好ましい。ここで説明するポリイミドとしては、例えば、保護層18Aを形成するためのペーストを作製する際に用いる樹脂バインダー等に含まれるものであり、具体的には、絶縁ワニス等が挙げられる。
【0049】
保護層18Aは、後述の製造方法において、バインダーとしてポリイミド等の熱硬化性樹脂を含むものを用いて得られるものなので、再加熱によっても樹脂が溶融しないことから、リフローハンダ付け用の電気二重層キャパシタや非水電解質電池等の電気化学セルに好適なものとなる。また、ポリイミドは、電解液等の耐薬品性にも優れているので、保護層18Aを形成するためのペーストを作製する際に用いる樹脂バインダーとして、非常に好適である。
【0050】
また、本実施形態では、加熱焼成後の保護層18Aが、形成時に用いられるポリアミック酸の加熱焼成物を含むバインダーの成分を、固形分の40wt%以上80wt%未満の範囲程度とすることが好ましい。
【0051】
本実施形態では、ポリアミック酸の加熱焼成物に、線膨張係数の低いポリイミドを用いることで、高温雰囲気下における、集電体、保護層及び電極の各々の間の固着力をより強固として各々が剥離するのを防止できるので、正極9と正極集電体7との間の接触抵抗の上昇を抑制し、内部抵抗を低く抑える効果がより顕著に得られる。
【0052】
また、保護層18Aは、カーボン及び黒鉛の微粒子の混合物に用いられる前述のカーボンとして、カーボンブラック、黒鉛、カーボンファイバー及びカーボンナノチューブの内の少なくとも1種以上を含むものを採用することが好ましい。これらのカーボンは、黒鉛に比べて電子伝導性が低いものの、粒子径の小さいカーボンが隙間に入り込むことで、保護層18A全体の抵抗値を下げることが可能となる。また、上記同様、高温雰囲気下における正極〜正極集電体間の固着力が増加して各々が剥離するのを防止できるので、正極9と正極集電体7との間の接触抵抗を低減させ、内部抵抗を低く抑える効果がより顕著に得られる。
【0053】
また、保護層18Aは、カーボンと黒鉛の微粒子との混合物において用いられる、前述の黒鉛の微粒子の比表面積が20m
2/g以下であることが好ましい。なおかつ、保護層18Aは、黒鉛の微粒子の平均粒度が10μm以下であることがより好ましい。黒鉛は、導電性が非常に高い材料として知られているが、さらに、その比表面積と平均粒度を上記範囲に制限することにより、十分な容量を確保することができるとともに、上記同様、高温雰囲気下における正極〜正極集電体間の固着力が増加して各々が剥離するのを防止できるので、正極9と正極集電体7との間の接触抵抗を低減させ、内部抵抗を低く抑える効果がより顕著に得られる。
【0054】
本発明においては、保護層18Aとして、上記したカーボンと黒鉛の微粒子との混合物を用いているので、特に、保護層18A全体の抵抗値を低減する顕著な効果が得られる。
【0055】
また、本実施形態における保護層18Aは、カーボンと黒鉛の微粒子との混合物において、それらの混合比が0:10〜5:5の範囲とされたものであることがより好ましい。カーボンと黒鉛の微粒子との混合比を上記範囲とすることにより、上述した、高温雰囲気下における正極〜正極集電体間の剥離防止効果や、接触抵抗を低減させる効果がさらに顕著に得られる。
【0056】
また、保護層18Aの厚みとしては、例えば、3〜100μmの範囲の程度とすることが好ましい。保護層18Aの厚みが3μm以下だと、膜中にピンホールが発生するおそれがある。一方、保護層18Aの厚みが100を超えると、容器1A内におけるサイズ等の関係から、正極9や負極8の厚みを薄くする必要が生じることから、電気二重層キャパシタ(非水電解質電池)の容量が低下してしまう。なお、一般に、塗膜の厚さは、使用した原料の粒子サイズよりも大きくなるので、通常、黒鉛の微粒子の平均粒度上限を10μmとした場合には、保護層18Aの厚みを10μm以上とする。
【0057】
ここで、ポリイミドの前駆体となるポリアミック酸を加熱によって重合させる場合、この加熱の過程において溶媒が揮発することで“す”が発生し易く、さらに、前駆体であるポリアミック酸から1〜2モルの水が発生するため、上記以外にも“す”を生成し易い。このため、ポリアミック酸を加熱焼成したポリイミドを保護層18Aに用いる場合には、上述のカーボンと黒鉛の微粒子との混合物を、1回塗布、乾燥、固化させた後に、さらに、もう一回以上、上述のカーボンと黒鉛の微粒子との混合物を塗工することで、緻密で安定な保護層を形成することが可能となる。
【0058】
(電解液)
本実施形態の電気二重層キャパシタ(非水電解質電池)Aにおいて、容器1A内に収容されるとともに、正極9、負極8及びセパレータ10に含浸される図示略の電解液としては、特に限定されず、例えば、液体状、固体状、ゲル状のもの等を何ら制限無く用いることができる。液体状及びゲル状の電解液に用いられる有機溶媒としては、例えば、アセトニトリル(AN)、ジエチルエーテル(DEE)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、1,2−ジメトキシエタン(DME)、テトラヒドロフラン(THF)、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、γ−ブチロラクトン(γBL)、スルホラン(SL)、対称鎖状スルホン、非対称鎖状スルホン等が挙げられ、これらを単一または1種類以上を混合し用いことができる。
【0059】
液状及びゲル状の電解液に含まれる電解質としては、(C
2H
5)
4PBF
4{略称:TEA}、(C
3H
7)
4PBF
4、(CH
3)(C
2H
5)
3NBF
4{略称:TEMA}、(C
2H
5)
4NBF
4、(C
2H
5)
4PPF
6、(C
2H
5)
4PCF
3SO
4、(C
2H
5)
4NPF
6、過塩素酸リチウム(LiClO
4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)、ホウフッ化リチウム(LiBF
4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF
6)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCF
3SO
3 )、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム[LiN(CF
3SO
2)
2]、チオシアン塩、アルミニウムフッ化塩、リチウム塩等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
ゲル状の電解液としては、液体状の電解液をポリマーゲルに含浸させたものとすることができる。ポリマーゲルとしては、ポリエチレンオキシド、ポリメタクリル酸メチル、ポリフッ化ビニリデンが適しているが、これらに限定されるものではない。
また、電解液は、イオン性液体とも呼ばれる常温溶融塩も使用することができる。この場合、常温溶融塩に有機溶媒を混合し、常温や低温での電気伝導度を調整してもよい。上述の常温溶融塩は、カチオンとアニオンの組み合わせから成る。
【0061】
イミダゾリウムカチオン、テトラアルキルアンモニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、ピロリウムカチオン、ピロリニウムカチオン、ピロリジニウムカチオンがキャパシタに用いる常温溶融塩として適している。中でも、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン(EMI+)は電気伝導率が特に高くキャパシタの電解液に適している。
【0062】
イミダゾリウムカチオンには、ジアルキルイミダゾリウムカチオンとトリアルキルイミダゾリウムカチオンが含まれる。具体的には、1,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン(DMI
+)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン(EMI
+)、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムカチオン(MEI
+)、1−メチル−3−ブチルイミダゾリウムカチオン(MBI
+)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン(BMI
+)、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムカチオン(TMI
+)、1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウムカチオン(DMEI
+)、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン(DMPI
+)、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン(BDMI
+)等を用いることができるが、これらには限定されない。
【0063】
ピリジニウムカチオンとしては、N−エチルピリジニウムカチオン(EP
+)、N−n−ブチルピリジニウムカチオン、N−s−ブチルピリジニウムカチオン、N−n−プロピルピリジニウムカチオン、1−エチル−2−メチルピリジニウムカチオン、1−n−ヘキシル−2−メチルピリジニウムカチオン、1−n−ブチル−4−メチルピリジニウムカチオン、1−n−ブチル−2,4−ジメチルピリジニウムカチオン等を用いることができるが、これらには限定されない。
【0064】
ピラゾリウムカチオンとしては、1,2−ジメチルピラゾリウムカチオン、1−エチル−2−メチルピラゾリウムカチオン、1−プロピル−2−メチルピラゾリウムカチオン、1−ブチル−2−メチルピラゾリウムカチオン等が挙げられるが、これらには限定されない。
【0065】
ピロリウムカチオンとしては、1,1−ジメチルピロリウムカチオン、1−エチル−1−メチルピロリウムカチオン、1−メチル−1−プロピルピロリウムカチオン、1−ブチル−1−メチルピロリウムカチオン等が挙げられるが、これらには限定されない。
【0066】
ピロリニウムカチオンとしては、1,2−ジメチルピロリニウムカチオン、1−エチル−2−メチルピロリニウムカチオン、1−プロピル−2−メチルピロリニウムカチオン、1−ブチル−2−メチルピロリニウムカチオン等が挙げられるが、これらには限定されない。
【0067】
ピロリジニウムカチオンとしては、1,1−ジメチルピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−メチルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムカチオン、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムカチオン等が挙げられるが、これらには限定されない。
【0068】
アニオンとしては、AlCl
4−、Al
2Cl
7−、HF
−、NO
2−、NO
3−、BF
4−、PF
6−、AsF
6−、SbF
6−、NbF
6−、TaF
6−、CH
3CO
2−、CF
3CO
2−、C
3F
7CO
2−、CH
3SO
3−、CF
3SO
3−、C
4F
9SO
3−、N(CF
3SO
2)
2−、N(C
2F
5SO
2)
2−、C(CF
3SO
2)
3−、N(CN)
2−が用いられる。
【0069】
また、容器1A内における電解液の量についても、特に限定されるものではなく、本実施形態の保護層18Aは、沸点の高い溶媒を用いた場合、あるいは、低沸点の溶媒を用いた場合の何れであっても強固な結着を維持できることから、非水溶媒の種類や、容器サイズ、空隙率等を勘案しながら適宜決定すれば良い。
【0070】
本実施形態の電気二重層キャパシタ(非水電解質電池)Aによれば、特に、正極9と正極集電体7並びに容器底部11との間に、上述のような、ポリアミック酸の加熱焼成物と、カーボン及び黒鉛の微粒子の混合物とからなる保護層18Aが設けられ、正極9と正極集電体7とが保護層18Aを介して電気的に接続された構成を採用している。正極9と正極集電体7との間に介在される保護層18Aに上記材料を用いることにより、高温環境下における集電体、保護層及び電極の各々の間の固着力が高められ、耐熱性が向上することから、リフローハンダ付け工程における過酷な高温雰囲気に連続的に曝された場合であっても、電極剥離等が生じるのを防止できる。従って、正極9と正極集電体7との間の接触抵抗が上昇するのを抑制でき、ひいては、電気化学セルとしての内部抵抗を低く抑えることが可能となり、充放電効率が高く、耐熱性及び電気的特性に優れた電気化学セルを提供できる。
【0071】
なお、本発明においては、正極集電体7や負極集電体6として、上述した材料以外にも、例えば、アルミニウム製蒸着層をサポート材に用いた集電体の他、発泡金属を用いた集電体材料(例えば、本出願人が提案した特開2006−164947号公報や特許第3188853号公報を参照)等、従来から用いられている集電体材料を何ら制限無く採用することができる。そして、本発明では、このような材料からなる正極集電体を用いた場合であっても、上記同様、保護層18Aを設けることで、過酷な高温雰囲気に連続的に曝される環境下においても電極剥離等が生じるのを防止でき、内部抵抗を抑制できるので、充放電効率が高く、耐熱性及び電気的特性に優れた電気化学セルが実現できる。
【0072】
「製造方法」
次に、本発明の電気化学セルである電気二重層キャパシタ(非水電解質電池)の製造方法について説明する。
本実施形態の好ましい態様である電気二重層キャパシタの製造方法は、上記構成の電気二重層キャパシタAを製造する方法であり、容器1A内の容器底部11に形成した正極集電体7上に正極9を形成した後、正極9上にセパレータ10を形成し、次いで、セパレータ10と接続するように負極8を形成することで、セパレータ10を介して正極9と負極8とを接続させ、さらに、容器1A内の負極8側に負極集電体6を形成する「電極配置工程」と、容器1A内に電解液を注入する「注入工程」と、負極上に蓋4を重ね合わせることで、容器1Aの開口部1aを蓋4で覆って封止する「密封工程」と、を少なくとも具備した方法である。
【0073】
また、本実施形態の電極配置工程は、
図1に示す例のように、正極集電体7上に正極9を形成した後、正極9上にセパレータ10及び負極8を順次積層することで、セパレータ10を介して正極9と負極8とを対向配置させ、さらに、容器1A内の負極8側に負極集電体6を形成する工程とされている。
そして、上述の電極配置工程は、さらに、正極9と正極集電体7及び容器底部11との間に、上述したような、ポリアミック酸の加熱焼成物と、カーボン及び黒鉛の微粒子の混合物とからなる良電性の保護層18Aを形成する工程を含む方法とされている。
なお、本発明の電気化学セルである電気二重層キャパシタ(非水電解質電池)の製造方法においては、上記方法とされた、電極配置工程に含まれる保護層18Aを形成する工程を備える点を除き、従来と同様の条件や手順を採用することができる。
【0074】
本実施形態では、まず、正極集電体7(外部端子70を含む)、負極集電体6(外部端子60を含む)が設けられたベース容器(容器)1Aを準備する。次いで、容器1Aの開口部周縁、即ち容器壁部12の上端面12aに、ろう材5によってシールリング3を接合する。次いで、シールリング3、ろう材5及び上端面12aを覆うように、図示略のニッケルメッキを施す。ニッケルメッキとしては、例えば、電解ニッケルメッキや無電解ニッケルメッキが挙げられる。
【0075】
具体的には、まず、2枚のセラミックグリーンシート上にタングステンペーストを印刷後に焼結することにより、凹状の容器1Aの容器底部11及び容器壁部12上に、外部端子70及び外部端子60を含む正極集電体7及び負極集電体6を形成する。この際、容器壁部12の上にセラミックと熱膨張係数が近いコバールを用いたシールリング3を、銀ろうや金ろう等からなるろう材5で接合する。また、負極集電体6,正極集電体7の底面は回路基板とリフローハンダ付けされることから、予め、ニッケルメッキ、金メッキを施しておくのが好ましい。このようなメッキを施す際、電解メッキ浴による方法を採用した場合には、正極集電体7及び負極集電体6の他、ろう材5、シールリング3の表面全面にもメッキが施される。
【0076】
次に、本実施形態の電極配置工程においては、
図1に示すように、容器1Aの容器底部11に形成した正極集電体7上に、ポリアミック酸の加熱焼成物、具合的には、ポリイミドとカーボン及び黒鉛の微粒子の混合物とからなるペーストを塗布した後、加熱硬化させることにより、保護層18Aを形成する。この際、硬化前のペーストは少なからず空気を含んでおり、ピンホールの原因となるおそれがあることから、減圧(真空)装置や遊星式の攪拌脱泡法機を使用して、脱泡してから、大気に触れることなく、容器に充填し用いることが好ましい。また、このようなペーストの塗布にあたっては、ディスペンサーなどを用いて正極集電体7を完全に覆うように塗布する。
次に、上記手順で塗布したペースト上に正極9を配置し、従来公知の方法で加熱硬化させる。この際、ペーストの加熱硬化を真空中で行うと、ペースト中の溶媒、空気、重合によって生じる水分が抜け出して緻密な保護層18Aを形成することが可能となる。このような加熱を行う工程により、溶媒の除去と、脱水閉環反応(イミド化)が進行する。
【0077】
本発明においては、上述のような、保護層18Aを形成するためのペーストを塗布するにあたり、まず、ポリイミドを含むバインダーと、カーボン及び黒鉛の微粒子の混合物とを混合した後、固化後の固形分の3倍未満となる添加量で希釈溶媒を添加して、ペーストを調整する条件とすることができる。
【0078】
ここで、保護層18Aを形成するためのペーストに用いられる、ポリアミック酸の加熱焼成物を含むバインダーとしては、例えば、熱硬化性ポリイミド、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド前駆体混合溶液等が挙げられる。ここで、本発明において説明する「ポリアミック酸」とは、「酸無水物とジアミンとからなる熱縮合の中間体」である。
【0079】
本発明においては、カーボンや黒鉛中に含まれる不純物が取り除かれていることが好ましく、特に、Feなどの繊維金属は100ppm以下に抑制されていることが好ましい。また、黒鉛およびカーボンのX線回折(XRD)分析における、(002)面の格子面間隔(d
002)の値中心値は、0.30nm〜0.40nmの範囲が好ましく、0.33nm〜0.38nm範囲がより好ましい。
また、本発明において用いられる黒鉛の微粒子としては、例えば、膨張化処理を施されたものを用いることが出来る。
【0080】
なお、本実施形態では、詳細な図示を省略するが、まず、保護層18Aのみを加熱硬化によって形成した後、その上に導電性接着剤を塗布して正極9を配置した後に、導電性接着剤を硬化させることで図示略の接着層を形成することで、保護層18Aと正極9とを接着する方法を採用しても良い。ここで用いる導電性接着剤としては、上述した、負極8と蓋4とを接着する接着層13と同様の材料を用いることができる。
【0081】
なお、保護層18Aの膜厚は、ペーストの塗布量と粘度によって調整することができる。ここで、高粘度のペーストは、ディスペンサーで塗布すると山のような形状になってしまい、均一な膜厚が得られないことから、N―メチル−2ピロリドン(略称:NMP)等の溶剤で希釈してもよい。希釈後の粘度は、概ね、0.05〜50Ps・sであることが好ましく、ペーストを低粘度とすることで、塗布後の形状が平坦になり、均一な膜厚の保護層18Aを形成することができる。
【0082】
次に、正極9上にセパレータ10を載置した後、容器1A内に、任意の量の電解液を注入する(注入工程)。この際の電解液の注入量は、非水溶媒の種類や容器サイズ、空隙率等を勘案しながら決定する。ここで、セパレータ10としてガラス繊維積層体を用いる場合には、電解液を注入する前に、予め、セパレータ10を加熱してもよい。セパレータ10を加熱することで、ガラス繊維積層体の表面の吸着水や各種有機物を、酸化又は揮発によって除去することができるので、電解液がセパレータ10に対してより多量かつ速やかに含浸される。
【0083】
次に、蓋4の内面側、即ち、容器1A側となる面に導電性接着剤を塗布することで接着層13とし、この接着層13によって蓋4の内面側に負極8を接着する。そして、接着層13を硬化させた後、負極8が接着された蓋4を、負極8がセパレータ10に当接するように、容器1Aの開口部に設けられたシールリング3上に載置する。あるいは、セパレータ10に当接するように負極8を載置した後、予め、接着層13を設けた蓋4をシールリング30上に載置して、負極8と蓋4との間を接着する(電極配置工程及び封入工程)。
【0084】
次いで、蓋4とシールリング3とを溶接し、蓋4と容器1Aとで該容器1A内を密封する(封入工程)。この際、蓋4とシールリング3との溶接方法としては、特に限定されず、例えば、抵抗溶接によるシーム溶接等が挙げられる。このようなシーム溶接を用いた場合には、蓋4のニッケルメッキと、シールリング3を覆うニッケルメッキとが溶着される。
【0085】
以上のような手順により、本実施形態の電気二重層キャパシタ(非水電解質電池)Aが得られる。
なお、上記手順においては、蓋4と容器1Aとの密封方法を、蓋4のニッケルメッキとシールリング3のニッケルメッキとを溶着させる方法で説明しているが、これには限定されず、例えば、蓋4とシールリング3とを、直接、ろう材によって接合してもよい。この場合のろう材としても、上述したような、容器1Aとシールリング3との間で用いられるろう材5と同じ材料を採用することが可能である。
【0086】
本発明においては、特に、電極配置工程における保護層を形成する工程を、上述したような適正な条件及び手順とすることにより、リフローハンダ付け装置のような、連続的に製品を高温雰囲気下に曝すことを繰り返した場合においても、正極集電体7、保護層18A及び正極9の各々の間の固着力が高められる。従って、正極9と正極集電体7との間に剥離が生じることがなく、これに伴う接触抵抗・内部抵抗の上昇が防止され、優れた充放電効率を有する電気二重層キャパシタ(非水電解質電池)Aを製造することが可能となる。また、本発明の製造方法によれば、工程における取り扱い性にも優れ、歩留まりが高いものとなる。
【0087】
なお、本実施形態では、上述したような、セラミック材料からなる容器1A内の容器底部11及び正極集電体7の上に保護層18Aを形成し、その上に正極9を形成する方法を例に挙げて説明しているが、これに限定されるものではない。例えば、予め、正極集電体上に、上述したようなポリアミック酸の加熱焼成物と、カーボン及び黒鉛の微粒子の混合物とからなる保護層を形成し、この保護層上に正極を形成したものを容器内に組み付けることで、電気化学セル(電気二重層キャパシタ、非水電解質電池)を製造する方法を採用することも可能である。このような方法を採用する場合には、詳細な図示を省略するが、例えば、以下に説明するような方法とすることができる。
【0088】
まず、集電体(正極集電体)として、アルミ等からなる金属箔であるエキスパンドメタルを準備する。ここで、金属箔は、エッチングメタル、パンチングメタル、エキスパンドメタル等を用いることができるが、特に、エキスパンドメタルが好ましい。そして、この上に、上述したような保護層を形成するための導電ペーストを塗布した後、200〜300℃程度の温度で乾燥する。次いで、導電ペーストが塗布された集電体をロール圧延でプレスすることで、正極集電体上に保護層が形成されたシート状部材を作製する。
次に、シート状部材に形成された保護層の上に、さらに、上述したような、正極を形成するための活物質を含むスラリーを塗布し、その後、上記同様の条件で乾燥〜プレスすることにより、正極集電体、保護層及び正極からなるシート状部材が得られる。あるいは、シート状部材に形成された保護層の上に、予め準備した電極シートを接着する方法でも、上述したような、正極集電体、保護層及び正極からなるシート状部材を作製することが可能である。
【0089】
そして、上述のようなシート状部材を電極サイズに適宜切断し、超音波溶着法によってリード及びタブを取り付けた後、上記のシート状部材、セパレータ及び負極を順次組み合わせ、容器内に設置する。その後、容器内に電解液を入れ、内部の反応ガスを脱気した後、蓋で封止することで、電気化学セルを製造することができる。
【0090】
なお、上述のようなシート状部材、セパレータ及び負極を順次組み合わせるにあたり、必要に応じて、シート状部材を予め長尺部材として形成し、捲回させた構成とすることも可能である。このような場合には、容器内において電極が捲回されて設けられた構成の電気化学セル、例えば、特許3405380号公報や特許第4448963号公報等に記載の構造において、上記シート状部材の構成を適用することが可能である。また、例えば、特開2005−149882号公報に記載のような、電極が多層で積層されてなる構造においても、上記シート状部材の構成を適用することが可能である。
【0091】
また、上記シート状部材に、外部端子としてリードを取り付けた場合には、例えば、容器としてステンレス製ケースを用い、このステンレス製ケースとリードとの間にPPS(ポリフェニレンスルファイド)等からなる封止部材を設けることで、電気化学セルの封止性を高めることが可能である。また、このような場合のステンレス素材の容器と蓋との接合についても、溶接やシール部材によって接合する方法を採用することができる。この場合のステンレス製ケースの例としては、例えば、特開2005−183700号公報等に記載のような、ベース容器と平板状の底板とからなる構成のものが挙げられる。また、特開2011−210900号公報、特開2011−228409号公報に記載のような、底深の容器と、リード(外部端子)を容器外に導出するための貫通孔が設けられた平板状の蓋とからなる構成のステンレス製ケースを備える場合においても、記シート状部材を適用することも可能である。
【0092】
またさらに、上記シート状部材の構成を、コイン型やボタン型の非水電解質電池及び電気二重層キャパシタに適用することも可能である。
【0093】
[第2の実施形態]
本発明の電気化学セルの第2の実施形態である非水電解質電池及び電気二重層キャパシタについて、図面を参照しながら以下に説明する。なお、以下の説明において、上述した第1の実施形態における電気二重層キャパシタ(非水電解質電池)Aと共通する構成については、同じ符号を付与するとともに、その詳しい説明を省略する。
【0094】
図2に示す本発明の第2の実施形態の電気二重層キャパシタ(非水電解質電池)Bは、第1の実施形態の電気二重層キャパシタAと同様、正極集電体7と、負極集電体6と、正極9と、負極8と、正極9と負極8とを分離するセパレータ10と、図示略の電解液と、正極9と負極8とセパレータ10と電解液とを収納するベース容器(容器)1Bと、この容器1Bを封止する蓋4とからなり、正極集電体7及び負極集電体6と電気的に接続された各々の外部端子70、60を介して充放電が可能な構成とされている。
【0095】
さらに、本実施形態の電気二重層キャパシタBは、容器1Bが、容器底部11と、容器壁部12と、これら容器底部11と容器壁部12との間に配置されスペーサー14とからなるとともに、スペーサー14が貫通する溝部15を有している。そして、本実施形態の電気二重層キャパシタBは、正極集電体7が容器底部11とスペーサー14の間に形成され、かつ、溝部15に露出している面が、ポリアミック酸の加熱焼成物と、カーボン及び黒鉛の微粒子の混合物とからなる良電性の保護層18Bによって被覆され、正極9と正極集電体7とが保護層10Aを介して電気的に接続されてなる点で、上記第1の実施形態における電気二重層キャパシタAとは異なる。
【0096】
従来の電気化学セルにおいては、その構造上、保護層の端部から電解液が浸透して正極集電体にまで達する可能性があった。このため、本実施形態では、
図2に示すように、ベース容器(容器)1Bの底部近傍に設けられるスペーサー14に溝部15を形成し、この溝部15中に導電性接着剤を埋め込むことで保護層18Bを形成する方法を採用している。これにより、保護層18Bの上端部から正極集電体7までの距離が長くなるので、電解液が正極集電体7まで達するように浸透する可能性が、確実に減少する。なお、溝部15は、容器底部11と容器壁部12の間に、セラミックシートからなるスペーサー14を追加する構成を採用しても良い。
【0097】
また、本実施形態の電気二重層キャパシタBを製造する方法としても、電極配置工程として、正極9と正極集電体7との間に設けられるスペーサー14を貫通する溝部15に、ポリアミック酸の加熱焼成物と、カーボン及び黒鉛の微粒子の混合物とからなる良電性の保護層18Bを形成する工程を含む方法とすることができる。このような保護層18Bを形成するための各条件及び手順に関しても、上記の第1実施形態と同様とすることができる。
【0098】
本実施形態の電気二重層キャパシタBは、第1の実施形態の電気二重層キャパシタAと同様、正極9と正極集電体7との間に設けられるスペーサー14を貫通する溝部15に、上記構成の保護層18Bが設けられたものである。これにより、リフローハンダ付け装置(リフロー炉)のような、連続的に製品を高温雰囲気下に曝すことを繰り返す場合においても、正極集電体7、保護層18B及び正極9の各々の間の固着力が高められる。従って、正極9と正極集電体7との間に剥離が生じることがなく、これに伴って接触抵抗が上昇するのを抑制でき、ひいては、電気化学セルとしての内部抵抗を低く抑えることが可能となり、充放電効率が高く、耐熱性及び電気的特性に優れた電気化学セルが実現できる。またさらに、本実施形態の電気二重層キャパシタBは、上記の溝部15に保護層18Bが設けられた構成なので、電解液が正極集電体7まで達するように浸透する可能性が減少し、良好な電気的特性を維持できるという効果が得られる。
【0099】
[第3の実施形態]
本発明の電気化学セルの第3の実施形態である非水電解質電池及び電気二重層キャパシタについて、
図3を参照しながら以下に説明する。なお、以下の説明において、上述した第1、2の実施形態における電気二重層キャパシタ(非水電解質電池)A、Bと共通する構成については、同じ符号を付与するとともに、その詳しい説明を省略する。
【0100】
図3に示す本発明の第3の実施形態の電気二重層キャパシタCは、第1、2の実施形態の電気二重層キャパシタA、Bと同様、正極集電体17と、負極集電体16と、正極9と、負極8と、正極9と負極8とを分離するセパレータ10と、図示略の電解液と、正極9と負極8とセパレータ10と電解液とを収納するベース容器(容器)1Cと、この容器1Cを封止する蓋4とからなり、正極集電体17及び負極集電体6と電気的に接続された各々の外部端子70、60を介して充放電が可能な構成とされている。
【0101】
そして、本実施形態の電気二重層キャパシタCは、正極9よりも長寸とされた正極集電体17が、容器1Cの容器底部11C上に設けられ、この正極集電体17が、容器1Cを構成する容器底部11Cと容器壁部12Cとの間に延設されて外部端子70と電気的に接続されている。さらに、電気二重層キャパシタCは、上記構成の正極集電体17上に、第1、2の実施形態における保護層18A、18Bと同様の材料からなる保護層18Cが設けられることで、正極集電体17と正極9とが接合されている。また、本実施形態では、
図3における詳細な図示を省略しているが、タングステン等からなる正極集電体17の上に、この正極集電体17保護するためのアルミ層が設けられている。
【0102】
また、本実施形態では、負極集電体16が接着層13によって蓋4に接着されており、負極集電体16の周縁がシールリング3と接することで、負極集電体16と外部端子60とが電気的に接続される。
また、外部端子60、70は、第1、2の実施形態と同様に、容器1Cの外面に沿って形成され、外部端子60は容器壁部12Cの外壁面に沿って容器底部11Cの底面に延設されており、外部端子70は、容器底部11Cの側端面に沿って容器底部11Cの底面に延設されている。
【0103】
上記の如く、本実施形態の電気二重層キャパシタCによれば、第1、2の実施形態の保護層18A、18Bと同様の材料からなる保護層18Cが設けられた構成を採用している。これにより、上記同様、連続的に製品を高温雰囲気下に曝すことを繰り返す場合においても、正極集電体17、保護層18C及び正極9の各々の間の固着力が高められ、正極9と正極集電体17との間に剥離が生じることがなく、これに伴って接触抵抗が上昇するのを抑制できる。従って、内部抵抗を低く抑えることが可能となり、充放電効率が高く、耐熱性及び電気的特性に優れた電気二重層キャパシタCが実現できる。
【0104】
[第4の実施形態]
本発明の電気化学セルの第4の実施形態である非水電解質電池及び電気二重層キャパシタについて、
図4を参照しながら以下に説明する。
図4に示す本発明の第4の実施形態の電気二重層キャパシタDは、上記各実施形態の電気二重層キャパシタA〜Cと同様、正極集電体27と、負極集電体26と、正極9と、負極8と、正極9と負極8とを分離するセパレータ10と、図示略の電解液と、正極9と負極8とセパレータ10と電解液とを収納するベース容器(容器)1Dと、この容器1Dを封止する蓋4とからなり、正極集電体27及び負極集電体26と電気的に接続された各々の外部端子71、61を介して充放電が可能な構成とされている。
【0105】
また、本実施形態の電気二重層キャパシタDは、正極集電体27と外部端子70とが、容器1Dをなす容器底部11Dに形成された貫通孔を通るビア31を介して電気的に接続されている。また、本実施形態では、上記第3の実施形態と同様、負極集電体26が接着層13によって蓋4に接着されている。そして、負極集電体26の周縁がシールリング3と接することで、負極集電体26と外部端子60とが、容器壁部12Dに形成された貫通孔を通るビア32を介して電気的に接続された構成とされている。
【0106】
さらに、電気二重層キャパシタDは、正極集電体17が容器1Dの容器底部11D上に設けられ、その上に、上記各実施形態の保護層18A〜18Cと同様の材料からなる保護層18Dが設けられることで、正極集電体27と正極9とが接合されている。また、本実施形態の電気二重層キャパシタDは、
図4における詳細な図示を省略しているが、第3の実施形態の電気二重層キャパシタCと同様、タングステン等からなる正極集電体27の上に、この正極集電体27を保護するためのアルミ層が設けられている。
なお、上記のビア31およびビア32についても、各集電体と同様、タングステン材料から形成することができる。
【0107】
本実施形態の電気二重層キャパシタDによれば、上記構成の保護層18Dが設けられた構成を採用している。これにより、上記各実施形態の電気二重層キャパシタA〜Cと同様、連続的に製品を高温雰囲気下に曝すことを繰り返す場合においても、正極集電体27、保護層18D及び正極9の各々の間の固着力が高められ、正極9と正極集電体27との間に剥離が生じることがなく、接触抵抗が上昇するのを抑制できる。従って、内部抵抗を低く抑えることができ、充放電効率が高く、耐熱性及び電気的特性に優れた電気二重層キャパシタDが実現できる。
【0108】
[第5の実施形態]
本発明の電気化学セルの第5の実施形態である非水電解質電池及び電気二重層キャパシタについて、
図5を参照しながら以下に説明する。
図5に示す本発明の第5の実施形態の電気二重層キャパシタEは、正極集電体37と、負極集電体36と、正極9と、負極8と、正極9と負極8とを分離するセパレータ10と、図示略の電解液と、正極9と負極8とセパレータ10と電解液とを収納するベース容器(容器)1Eと、この容器1Eを封止する蓋4とからなり、正極集電体37及び負極集電体36と電気的に接続された各々の外部端子72、62を介して充放電が可能な構成とされている。
【0109】
そして、電気二重層キャパシタEは、正極集電体37と外部端子72とが、容器1Eをなす容器底部11Eに形成された断面L字状の貫通孔を通るビア41を介して電気的に接続されている。また、本実施形態では、上記第3、4の実施形態と同様、負極集電体36が接着層13によって蓋4に接着されている。そして、負極集電体36の周縁がシールリング3と接することで、負極集電体36と外部端子62とが、容器壁部12Eに形成された鉛直方向の貫通孔を通るビア42aと、容器底部11Eに埋め込まれるように形成されたビア42bとを介して電気的に接続された構成とされている。
【0110】
さらに、電気二重層キャパシタEは、正極集電体37が容器1Eの容器底部11E上に設けられ、その上に、上記各実施形態と同様の材料からなる保護層18Eが設けられることで、正極集電体37と正極9とが接合されている。また、本実施形態の電気二重層キャパシタEは、
図5における詳細な図示を省略しているが、上述した電気二重層キャパシタC、Dと同様、タングステン等からなる正極集電体37の上に、この正極集電体37保護するためのアルミ層が設けられている。
なお、上記のビア41およびビア42についても、各集電体と同様、タングステン材料から形成することができる。
【0111】
電気二重層キャパシタEによれば、上記構成の保護層18Eが設けられた構成を採用しているので、上記各実施形態の電気二重層キャパシタA〜Dと同様、連続的に製品を高温雰囲気下に曝すことを繰り返す場合においても、正極集電体37、保護層18E及び正極9の各々の間の固着力が高められ、正極9と正極集電体37との間に剥離が生じることがなく、接触抵抗が上昇するのを抑制できる。従って、内部抵抗を低く抑えることができ、充放電効率が高く、耐熱性及び電気的特性に優れた電気二重層キャパシタEが実現できる。
【0112】
[第6の実施形態]
本発明の電気化学セルの第6の実施形態である非水電解質電池及び電気二重層キャパシタについて、
図6(a)及び
図6(b)を参照しながら以下に説明する。
図6(a)に示す本発明の第6の実施形態の電気二重層キャパシタGは、正極9と、負極8と、正極9と負極8とを分離するセパレータ10と、図示略の電解液と、正極9と負極8とセパレータ10と電解液とを収納するベース容器(容器)1Gと、この容器1Gを封止する蓋4とからなり、正極9及び負極8と電気的に接続された各々の外部端子72G、60Gを介して充放電が可能な構成とされている。
【0113】
そして、電気二重層キャパシタGは、正極9と外部端子72Gとが、容器1Gをなす容器底部11Gに形成された貫通孔を通るビア53と内部配線54とを介して電気的に接続されている。また、本実施形態では、負極8と外部端子60Gとが、ろう材5、シールリング3、蓋4及び接着層13を介して電気的に接続された構成とされている。
【0114】
さらに、電気二重層キャパシタGは、ビア53の上面が容器1Gの容器底部11G上に露出し、その上に、上記各実施形態と同様の材料からなる保護層18Gが、ビア53の上面と容器底部11G上を連続して覆うように設けられることで、ビア53の上面と正極9とが電気的に接続されている。また、本実施形態の電気二重層キャパシタGは、保護層18Gを、ビア53の上面が露出する容器底部11G上に直接形成した構成とすることができるが、これには限定されない。例えば、
図6(a)においては詳細な図示を省略しているが、タングステン等からなるビア53の上面と、セラミックからなる容器底部11G上とを連続して覆うように、このビア53の上面を保護するためのアルミ層を設け、このアルミ層の上に保護層18Gが形成された構成を採用しても良い。このように、図示略のアルミ層を設けることで、ビア53の上面が電解液と接触するのを防止できる。
【0115】
また、
図6(b)の横断面図に示すように、ビア53及び内部配線54はそれぞれ複数形成され、ビア53の各々は、互いに異なる内部配線54に接続されている。
図6(b)に示す例では、2本の内部配線54が、平面視で略逆コの字状に分岐するように設けられ、これら2本の内部配線54の一端側が、各々、ビア53に接続された構成とされているが、これには限定されず、さらに多くのビア及び内部配線を備えた構成を採用しても良い。
【0116】
図6(a)、(b)に示すような内部配線54を形成する場合には、例えば、容器底部11Gに断面L字状の貫通孔を形成し、この貫通孔の内部にビア53及び内部配線54を形成する方法の他、容器底部11Gをセラミックの積層構造とし、その層間に内部配線を形成する方法を採用できる。
なお、上記のビア53および内部配線54については、タングステン材料から形成することができる。
【0117】
電気二重層キャパシタGによれば、上記構成の保護層18Gが設けられた構成を採用しているので、上記各実施形態と同様、連続的に製品を高温雰囲気下に曝すことを繰り返す場合においても、ビア53の上面、保護層18G及び正極9の各々の間の固着力が高められ、正極9とビア53の上面との間に剥離が生じることがなく、接触抵抗が上昇するのを抑制できる。従って、内部抵抗を低く抑えることができ、充放電効率が高く、耐熱性及び電気的特性に優れた電気二重層キャパシタGが実現できる。
【0118】
また、ビアの上面のみを容器底部上に露出させ、保護層で容器底部と連続して覆うことにより、電解液とビアの上面との接触によるビアの腐食を防止することができる。さらに、ビアと内部配線との組み合わせが複数設けられることにより、仮に、一つのビアが腐食され、その腐食が内部配線にまで及んだ場合であっても、その他のビアと内部配線との組み合わせには影響が及ばず、正極と外部端子との電気的な接続を保持することが可能となる。従って、耐食性に非常に優れた電気二重層キャパシタGが実現できる。
【0119】
[第7の実施形態]
本発明の電気化学セルの第7の実施形態である非水電解質電池及び電気二重層キャパシタについて、
図7を参照しながら以下に説明する。
図7に示す本発明の第7の実施形態の電気二重層キャパシタFは、正極集電体47と、負極集電体46と、正極9と、負極8と、正極9と負極8とを分離するセパレータ10と、図示略の電解液と、正極9と負極8とセパレータ10と電解液とを収納するための収納空間を有する容器蓋体12Fおよび容器底部11Fからなる容器1Fとからなり、正極集電体47及び負極集電体46と電気的に接続された各々の外部端子73、63を介して充放電が可能な構成とされている。
【0120】
そして、電気二重層キャパシタFは、正極集電体47と外部端子73とが、容器底部11Fに形成された貫通孔を通るビア51を介して電気的に接続されている。また、本実施形態では、容器蓋体12Fの収納空間に沿って形成され、接着層43によって容器蓋体12Fの内面に接着された負極集電体46と、外部端子63とが、シールリング3および容器底部11Fに形成された貫通孔を通るビア52を介して電気的に接続された構成とされている。さらに、電気二重層キャパシタFは、正極集電体47が容器底部11F上に設けられ、その上に、上記各実施形態と同様の材料からなる保護層18Fが設けられることで、正極集電体47と正極9とが接合されている。また、本実施形態の電気二重層キャパシタFは、
図6における詳細な図示を省略しているが、上記同様、タングステン等からなる正極集電体47の上に、この正極集電体47を保護するためのアルミ層が設けられている。
なお、上記のビア51およびビア52についても、各集電体と同様、タングステン材料から形成することができる。
【0121】
電気二重層キャパシタFによれば、上記構成の保護層18Fが設けられた構成を採用しているので、上記各実施形態と同様、連続的に製品を高温雰囲気下に曝すことを繰り返す場合においても、正極集電体47、保護層18F及び正極9の各々の間の固着力が高められ、正極9と正極集電体47との間に剥離が生じず、接触抵抗が上昇するのを抑制できる。従って、内部抵抗を低く抑えることができ、充放電効率が高く、耐熱性及び電気的特性に優れた電気二重層キャパシタFが実現できる。
【実施例】
【0122】
次に、実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお本発明は、本実施例によってその範囲が制限されるものではなく、本発明に係る電気化学セル及びその製造方法は、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
【0123】
[実施例1]
実施例1においては、まず、電気化学セルとして、
図1に示すような平面視長方形の電気二重層キャパシタを作製した。
この際、ベース容器(容器)としてアルミナのセラミック製のものを作製し、平面視での外形は5×3mm、容器底面から蓋上面までの厚みは1mmとした。
また、セラミックからなる容器底部11と容器壁部12にタングステン材料を印刷することにより、外部端子60を含む負極集電体6、及び外部端子70を含む正極集電体7を形成した後、焼結した。
次いで、容器壁部12とコバールからなるシールリング3をろう材5で接合した。さらに、これら金属が露出している部分をニッケルメッキした後、金メッキを施した。
【0124】
次に、電極として、市販の活性炭に黒鉛とポリテトラフルオロエチエンを9:1:1の割合で混合、圧延して、厚み0.2mmの活性炭シートを得た後、それを3.5×1.5mmの平面視で四角形に打ち抜き、正極9及び負極8とした。
【0125】
次に、保護層を作製するにあたり、ポリアミック酸の加熱焼成物と、カーボン及び黒鉛の微粒子の混合物とからなるペーストを作製した。まず、バインダーとして、ポリアミック酸の加熱焼成物である熱硬化性ポリイミドを含有した、ポリイミド前駆体混合溶液からなる市販のバインダーを準備した。また、カーボンとして、市販のカーボンブラックを準備した。また、黒鉛の微粒子としても、市販の黒鉛を準備した。
そして、カーボンブラックと黒鉛とを、メノウ製の乳鉢を用い、下記表1に示す条件で、混合させた後、この混合物に、下記表1の実験例1〜7に示す配合比でバインダーを添加するとともに、市販の溶媒を添加して少なくとも5分以上の時間で十分に混錬させ、さらに、遊星式の撹拌脱泡機を用いて脱泡を行うことでペーストを作製した。
【0126】
また、ペースト中の溶媒の配合比を、下記表2の実験例2、8〜10に示す条件で変化させた点を除き、上記と同様にしてペーストを作製した。
また、ペースト全体における黒鉛の配合比、及び、カーボン及び黒鉛の混合物中における黒鉛の配合比を、下記表3に示す実験例11〜17に示す条件で変化させた点を除き、上記と同様にしてペーストを作製した。
また、ペースト中に含まれる黒鉛の平均粒度(D50)、粒度D90、比表面積(BET)、吸油分の各々を、下記表4に示す実験例18〜27に示す条件で変化させた点を除き、上記と同様にしてペーストを作製した。
【0127】
そして、上記手順で得られた各ペーストを正極集電体7及び容器底部11上に塗布した後、正極9を配置し、その後、250℃の加熱温度で、窒素気流中で硬化させた。硬化後の保護層18Aの厚みは約10μmであった。
【0128】
次に、厚さ0.1mmのコバールにニッケルメッキした板材を、平面視で4.5×2.5mmのサイズに打ち抜き、蓋4を作製した。この蓋4は、表面と裏面にニッケルメッキが施されているが、側面にはニッケルメッキがついていないものである。さらに、蓋4の上に、この分野で汎用的な導電性接着剤を塗布し、その上に負極8を設置した後、250℃の加熱温度で、窒素気流中(不活性ガス雰囲気)で硬化させて接着層13を形成することで、蓋4に負極8を接着した。
【0129】
次に、セパレータ10として、ガラス繊維製のものを正極9の上に配置した後、プロピレンカーボネ−ト(PC)に(C
2H
5)
4NBF
4を1mol/L溶かした電解液を容器1A内に2μL注入した。
次に、蓋4をシールリング3上に配置させ、蓋4上における任意の2点をスポット抵抗溶接によって仮止めした後、2つのローラー電極を有する抵抗シーム溶接装置を用いて、蓋4の全周を窒素雰囲気中で溶接し、本実施例の電気二重層キャパシタを作成した。
【0130】
そして、上記条件でバインダー(固形分)の配合比を変化させて作製した実験例1〜7の電気二重層キャパシタに関し、
図8(b)のグラフに示す条件でリフローハンダ付けに相当する熱処理を計10回行った後、内部抵抗値を測定して、この結果を
図8(a)のグラフに示した。この際、内部抵抗値は、LCRメーターを用い、R機能により、交流1KHzにおける値を測定した。この際の詳細な熱処理条件としては、
図8(b)に示すように、製品(電気二重層キャパシタ)本体の上面で測定した温度で、217℃以上となる時間:80秒以下、250℃以上となる時間:20秒以下、ピーク温度:260℃とした。
【0131】
また、上記条件でペースト中の溶媒の配合比を変化させて作製した実験例2、8〜10の電気二重層キャパシタに関し、上記同様の方法で、リフローハンダ付けに相当する熱処理を計10回行った後の内部抵抗値を測定し、この結果を
図9のグラフに示した。
【0132】
また、上記条件でペースト全体における黒鉛の配合比、及び、カーボン及び黒鉛の混合物中における黒鉛の配合比を変化させて作製した実験例11〜17の電気二重層キャパシタについても、上記同様の方法で、リフローハンダ付けに相当する熱処理を計10回行った後の内部抵抗値を測定し、この結果を
図10、11のグラフにそれぞれ示した。
【0133】
また、上記条件でペースト中に含まれる黒鉛の平均粒度(D50)や粒度(D90)、比表面積(BET)、吸油分の各々を変化させて作製した実験例18〜27の電気二重層キャパシタについても、上記同様の方法で、リフローハンダ付けに相当する熱処理を計10回行った後の内部抵抗値を測定し、この結果を
図12〜15のグラフにそれぞれ示した。
【0134】
【表1】
【0135】
【表2】
【0136】
【表3】
【0137】
【表4】
【0138】
表1及び
図8(a)に示す結果のように、本発明の特許請求の範囲で規定するバインダー(固形分)の配合比とされたペーストを用いて保護層を形成し、電気二重層キャパシタを作製した場合には、連続的に高温環境下に曝されるリフローハンダ付けの後も、概ね低い内部抵抗値を示しているが、特に、バインダーの配合比を40wt%まで増量した場合に、リフロー後の内部抵抗が抑制されていることがわかる。
【0139】
また、表2及び
図9に示す結果のように、ペースト中の溶媒の配合比を変化させたペーストを用いて保護層を形成し、電気二重層キャパシタを作製した場合には、特に、溶媒の配合比を3.3以下とすることで、リフロー後の内部抵抗が抑制されていることがわかる。
【0140】
また、表3及び
図10、11に示す結果のように、ペースト全体における黒鉛の配合比、及び、カーボン及び黒鉛の混合物中における黒鉛の配合比を変化させたペーストを用いて保護層を形成し、電気二重層キャパシタを作製した場合には、特に、カーボン及び黒鉛の混合物中における黒鉛の配合比を本発明の特許請求の範囲で規定する範囲とすることで、リフロー後の内部抵抗が抑制されていることがわかる。
【0141】
また、表4及び
図12、14に示す結果のように、ペースト中に含まれる黒鉛の平均粒度(D50)、粒度D90を変化させたペーストを用いて保護層を形成し、電気二重層キャパシタを作製した場合には、特に、上記粒度を本発明の特許請求の範囲で規定する範囲とすることで、リフロー後の内部抵抗が顕著に低減されていることがわかる。
また、表4及び
図13に示す結果のように、黒鉛の比表面積(BET)を変化させたペーストを用いて保護層を形成し、電気二重層キャパシタを作製した場合においても、特に、上記比表面積を本発明の特許請求の範囲で規定する範囲とすることで、リフロー後の内部抵抗が抑制されていることがわかる。
さらに、表4及び
図15に示す結果のように、ペースト中の吸油分を変化させたペーストを用いて保護層を形成し、電気二重層キャパシタを作製した場合には、特に、上記吸油分を、概ね150(mL/100g)以下とすることで、リフロー後の内部抵抗が抑制されていることがわかる。
【0142】
[実施例2]
実施例2においては、ペースト中に含まれるカーボン及び黒鉛の微粒子からなる混合物に関し、カーボンの種類、平均粒径及び比表面積を下記表5に示す条件とした点を除き、上記実施例1同様に、
図1に示すような平面視長方形の電気二重層キャパシタを作製した(実験例28〜36)。
そして、得られた電気二重層キャパシタについて、実施例1と同様の方法で、リフローハンダ付けに相当する熱処理を計10回行った後の内部抵抗値を測定し、結果を下記表5及び
図16、17のグラフに示した。
【0143】
【表5】
【0144】
表5及び
図16、17に示す結果のように、カーボンとして、特に、カーボンブラックを用いた場合(実験例33)や、カーボンの平均粒径、比表面積を所定以下に制限した場合には、リフロー後の内部抵抗が抑制されていることがわかる。
【0145】
[実施例3]
実施例3においては、下記表6に示す条件でペーストを作製した点を除き、上記実施例1、2と同様に、
図1に示すような平面視長方形の電気二重層キャパシタを作製し、実施例2と同様の方法で、リフローハンダ付けに相当する熱処理を計10回行った後の内部抵抗値を測定し、結果を下記表6に示した(実験例37〜46、及び、実験例3)。ここで、下記表6中の実験例37〜39は、バインダーとして、ポリイミド等のポリアミック酸の加熱焼成物を含まないものを用いた、本発明の比較例である。
【0146】
【表6】
【0147】
表6に示す結果のように、ポリアミック酸の加熱焼成物を含まないバインダーを用いてペーストを作製し、このペーストで保護層が形成された実験例37〜39の電気二重層キャパシタは、リフローハンダ付けに相当する熱処理を重ねてゆくにつれて、内部抵抗値が増大していることがわかる。
【0148】
[実施例4]
実施例4においては、上記実施例1の実験例1で作製した電気二重層キャパシタを用い、下記表7に示す条件でリフローハンダ付けに相当する熱処理を行い、初期熱処理を行った後、リフロー回数が1回、5回、10回の各状態における内部抵抗を、上記実施例1と同様の方法で測定し、結果を下記表7及び
図18のグラフに示した(実験例47)。
また、実施例4においては、比較例として、エポキシ樹脂からなるバインダーを用いてペーストを作製した点を除き、上記同様に電気二重層キャパシタを作製し、上記同様の方法により、各状態における内部抵抗を測定して、結果を下記表8及び
図18のグラフに示した(実験例48)。
また、実施例4においては、本発明の比較例として、フェノール樹脂からなるバインダーを用いてペーストを作製した点を除き、上記同様に電気二重層キャパシタを作製し、上記同様の方法により、各状態における内部抵抗を測定して、結果を下記表9及び
図18のグラフに示した(実験例49)。
【0149】
【表7】
【0150】
【表8】
【0151】
【表9】
【0152】
表7及び
図18に示す結果のように、本発明で規定する条件でペーストを作製し、これを用いて保護層を形成した構成の実験例47の電気二重層キャパシタは、初期熱処理後〜リフロー10回後の何れにおいても、内部抵抗が抑制されていることがわかる。
一方、表8、9及び
図18に示す結果のように、本発明の規定外の条件でペーストを作製し、これを用いて保護層を形成した構成の実験例48、49の電気二重層キャパシタは、初期熱処理後の状態においては内部抵抗が低減されているものの、リフローを重ねるごとに内部抵抗値が増大し、特に、実験例49においては、リフロー10回の後に正極と正極集電体の剥離が生じているのが確認された。
【0153】
[実施例5]
実施例5においては、本発明例として、上記実施例1で示した実験例4の電気二重層キャパシタを用い、上記同様の方法で、初期熱処理を行った後、リフロー回数が1回、5回、10回の各状態における内部抵抗を測定して、結果を
図19のグラフに示した(実験例50)。
また、実施例5では、比較例として、ポリアミック酸の加熱焼成物を含まないフッ素系の樹脂を主成分とする市販の導電ペーストを用いて、上記同様に電気二重層キャパシタを作製し、上記同様の方法により、各状態における内部抵抗を測定して、結果を
図20〜24のグラフに示した(実験例51、52)。ここで、正極として、実験例52においては、市販の活性炭電極シート(厚み=0.23mm)を用い、また、実験例53においては、市販の活性炭電極シート(アルミニウム箔基材付き;電極厚み=100μm/Al厚み=20μm(予めエッチング処理を施したもの))を用いた。
【0154】
図19に示す結果のように、本発明で規定する条件でペーストを作製した実験例4の電気二重層キャパシタを用いて実験を行った実験例50では、初期熱処理後〜リフロー10回後の何れにおいても、内部抵抗にほとんど変化が無く、接触的の増大が抑制されていることがわかる。
【0155】
一方、
図20〜24のグラフに示す結果のように、比較例である実験例51、52においては、初期熱処理後の内部抵抗は比較的低く安定しているものの、リフローが5〜10回目となった際に、内部抵抗値が増加することが明らかとなった。これらの中でも、ペーストにフェノール樹脂系の導電ペーストを用いた場合には、リフローが5回目以降となった際に内部抵抗値が大幅に増加しており、正極と正極集電体との間で剥離が生じていることがわかる。この比較例では、従来からこの分野で用いられている導電ペーストを用いており、実用面での耐久性は持ち合わせているものの、リフローの繰り返しにより、電極の剥離、内部抵抗の増大が生じることが明らかとなった。