(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6274411
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】カメラおよび運転支援装置
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20060101AFI20180129BHJP
G03B 17/08 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
G02B7/02 D
G02B7/02 Z
G03B17/08
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-29228(P2014-29228)
(22)【出願日】2014年2月19日
(65)【公開番号】特開2015-152882(P2015-152882A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年5月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】100105094
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 薫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 弘典
【審査官】
井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−182255(JP,A)
【文献】
特許第4726698(JP,B2)
【文献】
国際公開第2010/087270(WO,A1)
【文献】
特開2006−313312(JP,A)
【文献】
特開2008−148276(JP,A)
【文献】
特開2009−157194(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2012−0021829(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02 − 7/16
G03B 17/02
G03B 17/04 −17/17
H04N 5/222− 5/257
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ面を有するレンズと、
前記レンズを収容し、前記レンズ面を露出させる開口を有する筐体と、
重力方向に前記レンズの光軸よりも下方で、前記開口の縁から、前記光軸を中心として前記開口の縁で規定される円から内側に前記レンズ面に沿って延びる第1片と、
重力方向に前記光軸よりも下方で、前記開口の縁から、前記円から内側に前記レンズ面に沿って延び、前記レンズ面上で前記第1片との間にスリットを形成する第2片とを備え、
前記スリットは、前記レンズ面に付着した水滴を排出する排水路として機能する
ことを特徴とするカメラ。
【請求項2】
請求項1に記載のカメラにおいて、前記第1片および前記第2片はイメージサークルの中であって撮像素子の外側に投影像を形成することを特徴とするカメラ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のカメラにおいて、前記スリットの幅は前記光軸から遠ざかるにつれて増大することを特徴とするカメラ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のカメラにおいて、前記筐体は、前記レンズ面の反対側から前記レンズを支持する筐体本体と、前記レンズ面の側から前記レンズに接触して前記開口を区画し、前記筐体本体との間に前記レンズを挟み込む環状の押さえ部材とを備えることを特徴とするカメラ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のカメラを備えることを特徴とする運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車載カメラや監視カメラといった屋外に設置されるカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
車載カメラや監視カメラといった屋外に設置されるカメラは一般に知られる。屋外では雨水や水蒸気によってレンズのレンズ面に水滴が付着することがある。水滴は撮像画像をぼかす。認識に十分な画像が得られない。水滴は速やかに除去されることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4726698号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるように、水滴の除去にあたって溝といった排水路が提案される。排水路は環状の押さえ部材の表面に刻まれる。押さえ部材の円形の開口にレンズのレンズ面は露出する。円形の開口の縁から外側に向かって排水路は延びる。しかしながら、水滴の自重や車両の振動程度では水滴は容易にレンズ面の中央からレンズ面の縁まで移動しない。水滴の除去が促進される術が望まれる。
【0005】
本発明のいくつかの態様によれば、従来に比べて速やかに水滴を除去することができるカメラは提供されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、レンズ面を有するレンズと、前記レンズを収容し、前記レンズ面を露出させる開口を有する筐体と
、重力方向に前記レンズの光軸よりも下方で、前記開口の縁から、前記光軸を中心として前記開口の縁で規定される円から内側に前記レンズ面に沿って延びる第1片と、重力方向に前記光軸よりも下方で、前記開口の縁から、前記円から内側に前記レンズ面に沿って延び、前記レンズ面上で前記第1片との間にスリットを形成する第2片とを備え、前記
スリットは、前記レンズ面に付着した水滴を排出する排水路
として機能するカメラに関する。
【0007】
こうしたカメラによれば、従来に比べて、排水路の入口はレンズ面の中心に近づくことができる。したがって、これまでよりもレンズ面の中央に近い位置でレンズ面上の水滴は排水路に進入することができる。こうしてレンズ面上の水滴は速やかにレンズ面上から除去されることができる。
【0008】
ここでは、排水路はスリットで形成される。スリットの働きでレンズ面上に排水路の入口は形成される。その結果、レンズ面には段差なく排水路の入口が接続される。こうして排水路への水滴の進入は促進される。
【0009】
カメラでは、前記スリットの幅は前記光軸から重力方向に遠ざかるにつれて増大すればよい。毛細管現象の働きでレンズ面上の水滴は上端の入口からスリットの排水路に取り込まれる。水は排水路内に留まることなく流れ落ちる。
【0010】
前記筐体は、前記レンズ面の反対側から前記レンズを支持する筐体本体と、前記レンズ面の側から前記レンズに接触して前記開口を区画し、前記筐体本体との間に前記レンズを挟み込む環状の押さえ部材とを備えてもよい。
【0011】
カメラは運転支援装置に利用されることができる。このとき、運転支援装置はカメラを備えればよい。カメラは運転支援装置に前述の技術的効果をもたらすことができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように本発明の一態様によれば、従来に比べて速やかに水滴を除去することができるカメラは提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】運転支援装置を備える自動車の構造を概略的に示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係るカメラの拡大斜視図である。
【
図4】イメージサークルと撮像範囲との関係を示す概念図である。
【
図6】水飛沫に曝されたカメラの拡大正面図である。
【
図7】スリットに流れ込む水滴の様子を示すカメラの拡大正面図である。
【
図8】第2実施形態に係るカメラの拡大分解斜視図である。
【
図9】
図5に対応し、第2実施形態に係るカメラの水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0015】
(1)自動車および運転支援装置の構成
図1は一実施形態に係る自動車11を概略的に示す。自動車11の車体12には運転支援装置13が搭載される。運転支援装置13はナビゲーション装置14を備える。ナビゲーション装置14はディスプレイパネル15を有する。ディスプレイパネル15は例えば自動車11のダッシュボードに組み込まれることができる。ディスプレイパネル15の表示画面には地図その他の情報が表示されることができる。
【0016】
運転支援装置13はカメラ16を備える。カメラ16は例えば車体12の後部に設置される。カメラ16はいわゆる屋外に設置される。カメラ16は例えば自動車11のリアバンパーの上方に取り付けられる。カメラ16の光軸17は例えば水平面に対して所定の角度に設定される。光軸17は、自動車11から後方に離れるにつれて自動車11が置かれている地面に近づくように傾斜する。カメラ16は車体12後方の被写体を撮像する。ここでは、光軸17に対して水平方向および垂直方向にいずれも少なくとも±90°の画角範囲で被写体の撮像画像は取得される。
【0017】
カメラ16は撮像画像に基づき画像信号を生成する。画像信号では、ディスプレイパネル15の表示画面に表示される表示画像が特定される。カメラ16はナビゲーション装置14に接続される。ナビゲーション装置14にはカメラ16から画像信号が供給される。ディスプレイパネル15の表示画面には画像信号に基づき車体12後方の映像が映し出されることができる。この運転支援装置13では、例えば駐車場で駐車スペースに後退走行で進入する際に運転者は車体12の後方の様子を確認することができる。こうして運転支援装置13は運転者の後方確認を支援することができる。
【0018】
(2)第1実施形態に係るカメラの構造
図2は第1実施形態に係るカメラ16を概略的に示す。カメラ16は筐体21を備える。カメラ16の前面で筐体21には開口22が区画される。開口22の輪郭は、正面視で少なくとも左右両側で光軸17回りの円弧23を描く。ここでは、光軸17を含んで水平方向に広がる仮想平面HPより上半分を含んで180度よりも大きい中心角で円弧23は広がる。開口22の輪郭は筐体21の縁でかたどられる。
【0019】
筐体21にはレンズアセンブリ24が収容される。レンズアセンブリ24は最前面にレンズ面25を規定する。レンズアセンブリ24は複数のレンズで形成される。レンズアセンブリ24は魚眼レンズまたは広角レンズを提供する。
【0020】
筐体21には排水路26が区画される。
図3から明らかなように、排水路26は、光軸17を含んで水平方向に広がる仮想平面HPよりも重力方向に下方で、開口22の縁で規定される光軸17を中心とした円27よりも当該円27の内側に配置される。ここでは、排水路26は光軸17を含む鉛直面VPに沿って延びる。
【0021】
排水路26の区画にあたって筐体21には第1片31および第2片32が形成される。第1片31は、重力方向に仮想平面HPよりも下方で、開口22の縁から円27の内側までレンズ面25に沿って延びる。第2片32は、同様に、重力方向に仮想平面HPよりも下方で、開口22の縁から円27の内側までレンズ面25に沿って延びる。第1片31および第2片32の間に光軸17を含む鉛直面VPに沿ってスリット33が形成される。スリット33はレンズ面25上に排水路26を形成する。スリット33の上端33aは水に対して毛細管現象が発生する。スリット33の幅は光軸17から遠ざかるにつれて徐々に増大する。第1片31および第2片32の上縁は開口22の縁からスリット33に向かって下降する。上縁の傾斜は開口22の縁からスリット33に向かって連続する。スリット33はレンズ面25上の上端33aから始まって円27の下方まで延びる。
【0022】
図4に示されるように、カメラ16ではレンズアセンブリ24が形成するイメージサークル35内に撮像素子の撮像範囲36は収まる。撮像範囲36は例えばディスプレイパネル15の表示画面の形状(アスペクト比)に応じて決定されればよい。このとき、第1片31および第2片32の投影像37、38は、イメージサークル35の内側に位置するものの、撮像範囲36の外側に留まる。イメージサークル35は開口22の縁で規定される円27に対応する。撮像範囲36は撮像素子の輪郭に一致する。
【0023】
図5に示されるように、レンズ面25と第1片31の上縁とは微細な間隔で向き合わせられてもよい。こうしてレンズ面25と第1片31の上縁との間にも毛細管現象が発生する。同様に、レンズ面25と第2片32の上縁とは微細な間隔で向き合わせられる。レンズ面25と第2片32の上縁との間にも毛細管現象が発生する。毛細管現象でレンズ面25と第1片31および第2片32に蓄えられた水滴は、最終的にスリット33に蓄えられた水滴に吸い寄せられ、排水路26から排出される。
【0024】
雨天時や雨上がりなどに自動車11が走行すると、路面から水飛沫が舞い上がる。
図6に示されるように、水飛沫はカメラ16の筐体21やレンズアセンブリ24のレンズ面25に付着する。水飛沫が凝集すると水滴を形成する。
図7に示されるように、水滴はスリット33に集められる。スリット33から下方に流れ落ちる。こうしてレンズ面25から水滴は除去される。
【0025】
筐体21の第1片31および第2片32によれば、従来に比べて、排水路26の入口はレンズ面25の中心に近づくことができる。したがって、これまでよりもレンズ面25の中央に近い位置でレンズ面25上の水滴は排水路26に進入することができる。こうしてレンズ面25上の水滴は速やかにレンズ面25上から除去されることができる。
【0026】
カメラ16では排水路26はスリット33で形成される。スリット33はレンズ面25上に排水路26の入口を形成する。その結果、レンズ面25には段差なく排水路26の入口が接続される。こうして排水路26への水滴の進入は促進される。
【0027】
前述のようにスリット33の上端33aは毛細管現象を発生させる。毛細管現象の働きでレンズ面25上の水滴は上端33aの入口からスリット33の排水路26に取り込まれる。水は排水路26内に留まることなく流れ落ちる。
【0028】
レンズ面25上では第1片31および第2片32の上縁に向かって水滴は流れ落ちる。第1片31および第2片32の上縁は開口22の縁からスリット33に向かって下降することから、流れ落ちた水滴は第1片31および第2片32の上縁に沿ってスリット33に向かって誘導される。こうしてレンズ面25上から水滴の除去はさらに促進される。
【0029】
加えて、レンズ面25と第1片31および第2片32の縁との間には毛細管構造が形成される。レンズ面25上で水滴が十分に大きくなると、レンズ面25上では第1片31および第2片32の上縁に向かって水滴は流れ落ちる。水滴は第1片31および第2片32の上縁に沿ってスリット33の排水路26に向かって誘導される。レンズ面25上の水滴は毛細管現象の効果でスリット33の排水路26に集められる。こうして水滴の除去は促進される。
【0030】
(3)第2実施形態に係るカメラの構造
図8は第2実施形態に係るカメラ16aを概略的に示す。カメラ16aは筐体41を備える。筐体41は筐体本体42と押さえ部材43とを備える。筐体本体42にレンズアセンブリ24は組み込まれる。カメラ16aの前面で筐体本体42には窓孔44が区画される。窓孔44は例えば円形の輪郭を有する。窓孔44に押さえ部材43は嵌め合わせられる。こうして押さえ部材43は筐体本体42に結合される。結合においては接着剤等が用いられればよい。押さえ部材43は環状に形成される。押さえ部材43には前述の開口22や第1片31および第2片32が形成される。
【0031】
例えば
図9に示されるように、レンズアセンブリ24は複数のレンズで形成される。最前位置のレンズ45は窓孔44内に配置される。レンズ45はレンズ面25の反対側から筐体本体42に支持される。レンズ45の背面は周囲で窓孔44内の段差面46に受け止められる。押さえ部材43が筐体本体42に接着剤等で結合されると、押さえ部材43は筐体本体42との間にレンズ45を挟み込む。レンズ45の外周には、図示されるように、レンズ面25に段差で接続されて、円27の外側で押さえ部材43に接触して押さえ部材43の押し付け力を受け止める段差面が形成されてもよい。
【0032】
なお、カメラ16、16aは前述のように運転支援装置13に利用されることができるだけでなく監視カメラに利用されてもよい。
【符号の説明】
【0033】
13 運転支援装置、16 カメラ、16a カメラ、17 光軸、21 筐体、22 開口、23 円弧、24 レンズ(レンズアセンブリ)、25 レンズ面、26 排水路、27 円、31 第1片、32 第2片、33 スリット、33a 上端、41 筐体、42 筐体本体、43 押さえ部材、45 レンズ。