【実施例】
【0038】
以下に合成例および実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下に示す材料、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0039】
(合成例1) 化合物1の合成
(1)化合物1の合成工程
化合物1を、以下のように中間体2〜5を経て合成した。
4,7-dibromo-5-nitrobenzo[c][1,2,5]thiadiazole(中間体2)の合成工程
【化19】
【0040】
4,7−ベンゾチアジアゾール(5.01g,17.1mmol)(1)を200mlの一口ナス型フラスコに入れ、硫酸(40.0ml)を加えて溶かした。この溶液に、NaNO
3(2.18g,25.7mmol)をゆっくり加えた。このとき、溶液の初期温度は28.5℃であり、開始10分で40.0℃に到達し、その後、温度は下がり続けた。この溶液を1時間25分撹拌した後、サンプリングを行い、さらにNaNO
3(0.201g,2.37mmol)を追加して45分撹拌した。この反応溶液を、氷水(200ml)に滴下した後、ブフナー漏斗でろ過し、得られた固体を、真空乾燥機を用いて60℃で乾燥した。以上の工程により、黄色固体である中間体2を、収量5.65g(16.7mmol)、収率98%で得た。
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ8.28(s,1H),
13C−NMR(75MHz,CDCl
3):δ153.0,152.7,149.9,127.4,114.7,109.1.
13C−NMR(75MHz,DMSO):δ152.4,151.9,150.0,126.9,114.1,108.1.
【0041】
5-nitro-4,7-di(thiazol-2-yl)benzo[c][1,2,5]thiadiazole(中間体3)の合成工程
【化20】
【0042】
中間体2(6.61g,19.5mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)(クロロホルム)ジパラジウム(0)(528mg,0.510mmol)、トリフェニルホスフィン(529mg,2.04mmol)を1000ml二口ナス型フラスコに入れ、アルゴンバブリングした脱水トルエン(150ml)を加えて溶かした。この溶液に、2−トリブチルスタニルチアゾール(16.1g,43.0mmol)を加えて3時間30分加熱還流を行った。この反応溶液に蒸留水を加え、トルエンによる抽出を行った。この抽出物に、飽和食塩水による洗浄、Na
2SO
4による乾燥を行行い、溶媒を減圧留去した。得られた残留物をヘキサンとクロロホルムで洗浄し、橙色固体である中間体3を収量3.11g(8.95mmol)で得た。さらに、R
f=0.30のシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、CHCl
3:EtOAc=40:1の混合溶媒を展開溶媒に用いて精製し、橙色固体である中間体3を、収量1.11g(3.20mmol)で得た。得られた中間体3の合計収率は62%であった。
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ8.86(s,1H),8.11(d,
3J(H,H)=3.0Hz,1H),8.09(d,
3J(H,H)=3.0Hz,1H),7.75(d,
3J(H,H)=3.3Hz,1H),7.73(d,
3J(H,H)=3.3Hz,1H).
13C−NMR(75MHz,DMSO):δ・206.4,159.1,155.5,151.4,150.7,147.4,144.0,126.5,125.9,125.6,120.7,117.1.
融点:214.8℃で熱分解
【0043】
4,7-di(thiazol-2-yl)benzo[c][1,2,5]thiadiazol-5-amine(中間体4)の合成工程
【化21】
【0044】
中間体3(306mg,0.884mmol)を200ml二口ナス型フラスコ入れ、酢酸(45ml)を加え、浴温度80℃で溶かした。この溶液に、鉄(622mg,10.6mmol)を入れて1時間30分撹拌した。この反応溶液に蒸留水(250ml)を加えて、酢酸エチルによる抽出を行った。得られた抽出物を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥した。さらにセライトでろ過して鉄を除去した後、溶媒を留去した。以上の工程により、赤色固体である中間体4を、収量258mg(0.814 mmol)、収率92%で得た。
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ8.34(s,1H),8.05(d,
3J(H,H)=3.3Hz,1H),7.96(d,
3J(H,H)=3.6Hz,1H),7.65(d,
3J(H,H)=3.3Hz,1H),7.44(d,
3J(H,H)=3.3Hz,1H).
13C−NMR(75MHz,DMSO):δ163.5,160.1,153.8,149.0,146.1,143.4,140.9,125.4,123.9,123.5,118.7,99.9.
APCI-HRMS(-):m/z calcd for C
12H
7N
5S
3(M
-),316.9869;found,316.9862.
287.6℃で熱分解。
【0045】
N-(4,7-di(thiazol-2-yl)benzo[c][1,2,5]thiadiazol-5-yl)-5-(2-ethylhexyl)thiophene-2-carboxamide(中間体5)の合成工程
【化22】
【0046】
中間体4(1.01g,3.19mmol)を、トルエン(100ml)とピリジン(20ml)の混合溶媒に溶かし、5−(2−エチルヘキシル)チオフェン−2−カルボン酸塩化物(中間体11)のトルエン溶液(0.92M,4.2ml,3.9mmol)を加えて、7日加熱還流した。この反応溶液から溶媒を減圧留去した残留物を炭酸水素ナトリウム水溶液(50ml)に溶解させ、セライトで濾過した。得られた濾液を、炭酸水素ナトリウム水溶液(0.5M,50ml)、純水(50ml)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥した後、濾過して溶媒を減圧留去した。得られた残留物を、Rf=0.26のシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、ジクロロメタンを展開溶媒に用いて精製した。以上の工程により、橙色固体である中間体5を、収量1.27g(2.35mmol)、収率74%で得た。
1H−NMR(500MHz,CDCl
3):δ10.39(s,1H),8.12(d,
3J(H,H)=3.0Hz,2H),7.87(d,
3J(H,H)=3.5Hz,1H),7.63(d,
3J(H,H)=3.5Hz,1H),7.62(d,
3J(H,H)=3.0Hz,1H),6.90(d,
3J(H,H)=3.5Hz,1H),2.85(d,
3J(H,H)=7.0Hz,2H),1.72-1.63(m,1H),1.43-1.27(m,overlapped,8H),0.96-0.88(m,overlapped,6H).
13C−NMR(125MHz,CDCl
3):δ163.4,161.8,161.4,152.8,152.5,148.1,143.6,140.70,140.67,137.6,129.9,126.3,123.6,122.2,121.3,108.7,41.5,34.5,32.4,28.9,25.5,23.0,14.1,10.8.
融点:171.8℃
【0047】
6-(5-(2-ethylhexyl)thiophen-2-yl)-4,8-di(thiazol-2-yl)thiazolo[4',5':4,5]benzo[1,2-c][1,2,5]thiadiazole(化合物1)の合成工程
【化23】
【0048】
中間体5(653mg,1.21mmol)とローソン試薬(298mg,0.737mmol)をシュレンク管に入れ、オルソジクロロベンゼン(200ml)を加えて脱気した後、アルゴン雰囲気下、140℃で62時間加熱した。反応溶液から溶媒を減圧留去し、その残留物を、Rf=0.15の中圧シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、クロロホルムを用いて展開溶媒に用いて精製した。得られたフラクションについて二層拡散(クロロホルム/メタノール)により再結晶を行った後、再度、中圧シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行った。以上の工程により、暗赤色固体である中間体6を、収量356.6mg(0.610mmol)、収率50%で得た。
1H−NMR(500MHz,C
6D
6):δ8.13(d,
3J(H,H)=3.5Hz,1H),・7.90(d,
3J(H,H)=3.0Hz,1H),7.52(d,
3J(H,H)=3.5Hz,1H),7.04(d,
3J(H,H)=3.0Hz,1H),6.88(d,
3J(H,H)=3.0Hz,1H),6.48(d,
3J(H,H)=4.0Hz,1H),2.54(d,
3J(H,H)=6.5Hz,2H),1.58-1.50(m,1H),1.30-1.13(m,overlapped,8H),0.88(t,
3J(H,H)=7.0Hz,3H),0.79(t,J(H,H)=7.5Hz,3H).
13C−NMR(125MHz,CDCl
3):δ168.4,160.7,160.0,153.6,152.6,150.4,149.6,143.2,142.3,136.6,134.5,131.7,127.0,122.6,122.3,117.3,116.0,41.5,34.7,32.4,28.8,25.5,23.0,14.1,10.9.
【0049】
(2)中間体11の合成工程
化合物1の合成に用いた中間体11は、以下のように中間体9、10を経て合成した。
2-(2-ethylhexyl)thiophene (中間体9)の合成工程
【化24】
チオフェン(16.2g,193mmol)(8)をテトラヒドロフラン(200ml)に溶解させ、−78℃に冷却した後、n−ブチルリチウムヘキサン溶液(1.6M,120ml,193mmol)を滴下し、2時間撹拌した。この混合物に、1−ブロモ−2−エチルヘキサン(21.8g,129mmol)を滴下した後、室温で2時間撹拌し、続いて70℃で11時間撹拌した。この反応溶液を飽和食塩水で洗浄し、溶媒を減圧留去した。得られた残留物を、200pa、85℃の蒸留によって精製した。以上の工程により、薄い褐色油状物質である中間体9を、収量14.7g(74.9mmol)、収率58%で得た。
1H−NMR(500MHz,CDCl
3):δ7.11(dd,
3J(H,H)=5.0Hz,
4J(H,H)=1.0Hz,1H),6.93-6.90(m,1H),6.77-6.74(m,1H),2.76(d,
3J(H,H)=6.5Hz,2H),1.62-1.54(m,1H),1.40-1.25(m,overlapped,8H),0.89(t,
3J(H,H)=7.5Hz,6H).
【0050】
5-(2-ethylhexyl)thiophene-2-carboxylic acid(中間体10)の合成工程
【化25】
【0051】
中間体9(14.0g,71.1mmol)をテトラヒドロフラン(350ml)に溶解させ、−78℃に冷却した後、n−ブチルリチウムヘキサン溶液(1.27M,60ml,76.2mmol)を滴下し、1時間30分撹拌した。この混合物に、粉砕したドライアイス(約200ml)を加え、室温で11時間撹拌した。塩酸(2M,60ml)を加えて反応を終了させた後、ジクロロメタンによる抽出を行った。得られた抽出物を、Na
2SO
4で乾燥した後、濾過して溶媒を減圧留去した。この残留物を、Rf=0.11のシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、ジクロロメタンを展開溶媒に用いて精製した。以上の工程により、褐色油状物質の中間体10を、収量14.6g(58.5mmol)、収率82%で得た。
1H−NMR(500MHz,CDCl3):δ7.72・(d,
3J(H,H)=4.0Hz,1H),6.80(d,
3J(H,H)=3.5Hz,1H),2.79(d,
3J(H,H)=7.0Hz,2H),1.67-1.58(m,1H),1.38-1.25(m,overlapped,8H),0.93-0.96(m,overlapped,6H).
【0052】
5-(2-ethylhexyl)thiophene-2-carbonyl chloride(中間体11)の合成工程
【化26】
中間体10(2.88g,12.0mmol)に、塩化チオニル(4.28g,36.0mmol)を加え、80℃で3時間加熱した。この反応溶液から塩化チオニルを減圧留去し、残留物にトルエン(10ml)を加えた溶液を化合物1の合成に使用した。
【0053】
(合成例2) 化合物2の合成
化合物2を、以下のように中間体13、14を経て合成した。
4,7-di(thiophen-2-yl)benzo[c][1,2,5]thiadiazol-5-amine(中間体13)の合成工程
【化27】
出発物質12(3.01g,8.72mmol)に酢酸(400ml)を加え、80℃に加熱し、溶解させた。この溶液に、鉄(5.84g,105mmol)を加え、80℃で3時間撹拌した。反応溶液を濾過し、純水中へ滴下して黄土色沈殿を生じさせた。この沈殿物を濾取し、純水で洗浄した後、真空下、60℃で乾燥することで、黄土色粉末である中間体13を、収量2.06g(6.54mmol)、収率75%で得た。
1H−NMR(500MHz,CD
2Cl
2):δ8.13(dd,
3J(H,H)=4.0Hz,
4J(H,H)=1.5Hz,1H),7.54(dd,
3J(H,H)=5.5Hz,
4J(H,H)=1.5Hz,1H),7.50(s,1H),7.49(dd,
3J(H,H)=5.0Hz,
4J(H,H)=1.0Hz,1H),7.41(dd,
3J(H,H)=4.0Hz,
4J(H,H)=1.0Hz,1H),7.24(dd,
3J(H,H)=5.0Hz,
3J(H,H)=3.0Hz,1H),7.22(dd,
3J(H,H)=5.0Hz,
3J(H,H)=3.5Hz,1H).
【0054】
N-(4,7-di(thiophen-2-yl)benzo[c][1,2,5]thiadiazol-5-yl)-5-(2-ethylhexyl)thiophene-2-carboxamide(中間体14)の合成工程
【化28】
中間体13(1.01g,3.21mmol)に、トルエン(100ml)、ピリジン(10ml)、5−(2−エチルヘキシル)チオフェン−2−カルボン酸塩化物(中間体11)のトルエン溶液(0.92M,4.2ml,3.9mmol)を加えて、30時間加熱還流した。この反応溶液から溶媒を減圧留去した残留物を、ジクロロメタン(40ml)に溶解させ、セライトで濾過した。得られた濾液を炭酸水素ナトリウム水溶液(0.5M,100ml)、純水(100ml)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥した後、濾過して溶媒を減圧留去した。得られた残留物を、Rf=0.27のシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、ジクロロメタン:ヘキサン=1:1の混合溶媒を展開溶媒に用いて精製した。以上の工程により、赤褐色固体である中間体14を、収量1.30g(2.41mmol)、収率75%で得た。
1H−NMR(500MHz,CDCl
3):δ9.27(s,1H),8.40(br,1H),8.18(dd,
3J(H,H)=3.5Hz,
4J(H,H)=1.0Hz,1H),7.68(dd,
3J(H,H)=5.0Hz,
4J(H,H)=1.0Hz,1H),7.52-7.50(overlapped,2H),7.34(dd,
3J(H,H)=5.0Hz,
3J(H,H)=3.5Hz,1H),7.27-7.24(overlapped solvent peak,1H),7.22(dd,
3J(H,H)=5.0Hz,
3J(H,H)=4.0Hz,1H),6.78(d,
3J(H,H)=3.5Hz,1H),2.79(d,
3J(H,H)=6.5Hz,2H),1.64-1.59(m,1H),1.38-1.28(m,8H),0.92-0.88(m,6H).
【0055】
6-(5-(2-ethylhexyl)thiophen-2-yl)-4,8-di(thiophen-2-yl)thiazolo[4',5':4,5]benzo[1,2-c][1,2,5]thiadiazole(化合物2)の合成工程
【化29】
中間体14のODCB溶液(0.121M,10.0ml,1.21mmol)に、ODCB(190ml)、ローソン試薬(296mg,0.732mmol)を入れ、脱気した後、アルゴン雰囲気下、140℃で73時間、160℃で20時間、180℃で16時間加熱した。この反応溶液から溶媒を減圧留去した残留物を、Rf=0.12のシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、トルエン:ヘキサン=4:1の混合溶媒を展開溶媒に用いて精製し、暗赤色固体である化合物2を、収量38.9mg(0.0705mmol)、収率14%で得た。
1H−NMR(500MHz,CD
2Cl
2):δ・8.99(dd,
3J(H,H)=4.0Hz,
4J(H,H)=1.5Hz,1H),8.09(dd,
3J(H,H)=3.5Hz,
4J(H,H)=1.0Hz,1H),7.69(d,
3J(H,H)=4.0Hz,1H),7.66-7.64(m,overlapped,2H),7.33-7.31(m,overlapped,2H),6.93(d,
3J(H,H)=3.5Hz,1H),2.88(d,
3J(H,H)=7.0Hz,2H),1.75-1.70(m,1H),1.44-1.30(m,overlapped,8H),0.96-0.90(m,overlapped,6H).
【0056】
(合成例3) 化合物3の合成
N-(4,7-di(thiazol-2-yl)benzo[c][1,2,5]thiadiazol-5-yl)-3,5-bis(trifluoromethyl)benzamide(中間体18)の合成工程
【化30】
200ml二口ナスフラスコに中間体4(0.463g,1.46mmol)を入れ、トルエン(100ml)、ピリジン(20.0ml)を加えて80oCに加熱して溶かした。3,5-ビストリフルオロメチルベンゾイルクロライド(0.807g,2.92mmol)を入れて2時間30分加熱還流を行った。クロロホルムで抽出後、Na
2SO
4で乾燥した。溶媒を減圧留去し、化合物18(814mg,1.46mmol)を赤橙色固体として定量的に得た。
1H-NMR(300MHz,CDCl
3):δ10.51(s,1H),8.64-8.52(br,6H),8.14-8.08(m,4H),8.00-7.90(br,2H),7.72(d,
3J(H,H)=3.6Hz,1H),7.70(d,
3J(H,H)=3.6Hz,1H).
融点:207.5oC-208.5oC
昇華性あり
【0057】
【化31】
6-(3,5-bis(trifluoromethyl)phenyl)-4,8-di(thiazol-2-yl)thiazolo[4',5':4,5]benzo[1,2-c][1,2,5]thiadiazole(中間体19)の合成工程
50ml二口ナスフラスコに18(117mg,0.179mmol)、ローソン試薬(53.9mg,0.133mmol)を入れ、反応容器をアルゴン置換した。2時間アルゴンバブリングを行った脱水トルエン(10ml)を加え8時間加熱還流した。その後、ローソン試薬(77.7mg,0.192mmol)を追加し、さらに12時間加熱還流した。トルエンを展開溶媒に用いてシリカゲルショートカラムクロマトグラフィーを行った。その後、展開溶媒をクロロホルムとトリエチルアミンと変え、(20.4mg,0.0356mmol)の化合物26を赤色固体として収率20%で得た。
1H−NMR(300MHz,CDCl
3):δ8.64(s,2H),8.38(d,
3J(H,H)=3.3Hz,1H),8.25(d,
3J(H,H)=3.3Hz,1H),8.11(s,1H),7.78(d,
3J(H,H)=3.3Hz,1H),7.74(d,
3J(H,H)=3.3Hz,1H).
APCI-HRMS(-):m/z calcd for C
21H
7F
6N
5S
4 (M
-),570.9494; found,570.9486.
【0058】
(合成例4) 化合物4の合成
化合物4を以下の中間体を経て合成する。
【化32】
(合成例5) ポリマー1の合成
ポリマー1を以下のようにジハロゲン化物を経て合成した。
ジハロゲン化物の合成工程
【化33】
[4',5':4,5]benzo[1,2-c][1,2,5]thiadiazole
【0059】
化合物1(302mg,0.545mmol)とN−ブロモスクシンイミド(232mg,1.30mmol)をクロロホルム:ヘキサン=1:1の混合溶液(12ml)に溶解させ、遮光条件下、室温で14時間撹拌した。この反応溶液を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100ml)を用いて中和し、クロロホルム(100ml)を加えて分液操作を行った。得られた有機層を、純水(100ml)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50ml)、飽和食塩水(100ml)を順に用いて洗浄し、Na
2SO
4で乾燥した後、濾過して溶媒を減圧留去した。得られた残留物を、Rf=0.34の中圧シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、クロロホルムを展開溶媒に用いて精製した後、得られたフラクションについて二層拡散(クロロホルム/メタノール)により再結晶を行った。以上の工程により、赤色固体である化合物1のジハロゲン化物を、収量240mg(0.315mmol)、収率58%で得た。
1H−NMR(500MHz,CDCl
3):δ8.17(s,1H),8.03・s・1H),7.79(d,J(H,H)=4.0Hz,1H),6.93(d,J(H,H)=4.0Hz,1H),2.90(d,J(H,H)=7.0Hz,2H),1.80-1.71(m,1H),1.48-1.30(m,overlapped,8H),1.00-0.91(m,overlapped,6H).
13C−NMR(125MHz,CDCl
3):δ168.6,161.8,161.0,154.6,152.6,149,7,149.4,144.6,143.7,135.8,134.1,132.3,127.3,116.9,115.5,114.05,113.7,41.5,34.8,32.4,28.8,25.6,23.1,14.2,10.8.
【0060】
ポリマー1の合成工程
【化34】
20mlのシュレンク管に、化合物1のジハロゲン化物(41.4mg,0.0582mmol)とドナー化合物(59.9mg,0.0578mmol)を入れ、トルエン(5ml)を加えて、1時間Arバブリングを行った。ここに、触媒としてトリス(ジベンジリデンアセトン)(クロロホルム)ジパラジウム(0)(0.60mg,0.58μmol)、S−phos(0.95mg,2.3μmol)を加え、140oCで58時間加熱した。その後、2−トリブチルスズチオフェン(216mg,0.578mmol)を加えて4時間、続いてブロモベンゼン(182mg,1.16mmol)を加えて7時間反応させ、キャッピングを行った。反応後、反応溶液をメタノール(100ml)に注いで沈殿を生じさせ、メンブレンフィルタを用いて濾過して、固体を得た。これをソックスレー抽出器を用いて、アセトンで6時間、ヘキサンで12時間抽出した後、ジクロロメタンで32時間、トルエンで21時間それぞれ抽出を行い、このジクロロメタン分画(暗緑色固体、23.3mg)、トルエン分画(暗緑色固体、9.9mg)をそれぞれポリマー1のジクロロメタン分画およびポリマー1のトルエン分画として検討に用いた。
得られたジクロロメタン分画およびトルエン分画の
1H−NMRスペクトルを
図1に示す。
図1(a)がジクロロメタン分画、
図1(b)がトルエン分画である。
【0061】
(実験例1) 化合物1の特性評価
化合物1のジクロロメタン溶液1−1と、化合物1とTBAPF6(tetraammonium hexafluorophosphate)のジクロロメタン溶液1−2を調製した。
ジクロロメタン溶液1−1における化合物1の濃度は1.0x10
-5mol/Lとし、ジクロロメタン溶液1−2における化合物1の濃度は1.0x10
-3mol/L、TBAPF6の濃度は0.1Mとした。
ジクロロメタン溶液1−1について光物理特性を測定した結果を
図2に示し、ジクロロメタン溶液1−2で測定されたサイクリックボルタンモグラムを
図3に示す。また、化合物1の仕事関数を測定したところ5.72eVであった。
【0062】
(実験例2) 化合物2の特性評価
化合物1の代わりに化合物2を用いること以外は、実験例1と同様にして、化合物2のジクロロメタン溶液2−1および化合物2とTBAPF6のジクロロメタン溶液2−2を調製した。ジクロロメタン溶液2−1について光物理特性を測定した結果を
図2に示し、ジクロロメタン溶液2−2で測定されたサイクリックボルタンモグラムを
図3に示す。
【0063】
(実験例3) 化合物3の特性評価
化合物1の代わりに化合物3を用いること以外は、実験例1と同様にして、化合物3とTBAPF6のジクロロメタン溶液を調製した。このジクロロメタン溶液で測定されたサイクリックボルタンモグラムを
図3に示す。Ar
3に相当する芳香環に電子求引基を導入することにより、骨格自体の電子受容性をさらに低下させ得ることがわかる。
【0064】
(比較実験例1) 比較化合物Aの特性評価
化合物1の代わりに比較化合物Aを用いること以外は、実験例1のジクロロメタン溶液1−1と同様にして比較化合物Aのジクロロメタン溶液Aを調製した。ジクロロメタン溶液Aについて光物理特性を測定した結果を
図2に示す。
【化35】
【0065】
(比較実験例2、3) 比較化合物B、Cの特性評価
化合物1の代わりに比較化合物BまたはCを用いること以外は、実験例1のジクロロメタン溶液1−2と同様にして、比較化合物BとTBAPF6のジクロロメタン溶液Bおよび比較化合物CとTBAPF6のジクロロメタン溶液Cを調製した。ジクロロメタン溶液B、Cで測定されたサイクリックボルタンモグラムを
図3に示す。
【化36】
【0066】
図2より、チアゾール環にチオフェン環が連結した化合物1、2は、チアゾール環にアルキル基が置換した比較化合物Aに比べて吸収の谷が小さく、広い波長領域で吸収が認められた。このことから、チアゾール環に連結する基は、アルキル基よりも芳香族基であることが好ましいことがわかった。
【0067】
(実施例1) ポリマー1の特性評価
ポリマー1のオルソジクロロベンゼン溶液を調製した。オルソジクロロベンゼン溶液におけるポリマー1の濃度は0.01mg/mLとした。
また、ポリマー1のクロロベンゼン溶液を基板上に滴下した後、真空下乾燥することで薄膜を形成した。
作製した各サンプルについて光物理特性を測定した結果を
図4に示す。
図4より、ポリマー1のオルソジクロロベンゼン溶液および薄膜は、400〜1000nmの広い波長領域で吸収が認められ、特に単量体(化合物1、2)では吸収が認められない長波長領域で大きな吸収を示すことがわかった。また、ポリマー1の仕事関数を測定したところ5.19eVであった。
【0068】
(実施例2) ポリマ−1を用いた有機太陽電池の作製と評価
膜厚330nmのインジウム・スズ酸化物(ITO)からなる陽極が形成された透明ガラス電極基板を用意した。この基板のITO陽極上に、PEDOT:PSSの溶液を塗布、乾燥することで膜厚50nmの薄膜を形成した。この薄膜上に、ポリマー1のジクロロメタン分画とPC61BM(phenyl C61-Butyric acid Methyl ester)を溶解させたクロロベンゼン溶液を塗布した後、100℃で6分間熱処理して膜厚100nmの薄膜を形成した。ここで、ポリマー1のジクロロメタン分画とPC61BMの質量比は1:2とした。続いて、この薄膜上に、スピンコート法にて酸化チタン(TiO
2)からなる薄膜を膜厚5nmで形成した後、真空蒸着法にてアルミニウム(Al)を膜厚100nmで成膜することにより陰極を形成した。以上の工程により、有機太陽電池(実施例電池1)を作製した。
また、上記のポリマー1のジクロロメタン分画とPC61BMのクロロベンゼン溶液(質量比1:2)のかわりに、ポリマー1のトルエン分画とPC61BMのクロロベンゼン溶液(質量比1:2)を用いて、溶液を塗布、乾燥する際に熱処理しないこと以外は、上記と同様にして有機太陽電池(実施例電池2)を作製した。
作製した実施例電池1、2について、作用スペクトルを測定した結果を
図5に示し、電圧−電流密度特性を測定した結果を
図6に示す。
図6中、DCは暗電流(Dark Current)を表す。また、短絡電流密度Jsc、開放電圧Voc、曲線因子FF、変換効率η、直列抵抗Rs、並列抵抗Rshを測定した結果を、表1にまとめて示す。作製した有機太陽電池は、いずれも広い波長領域において大きな外部量子効率を得ることができた。
【0069】
【表1】
【0070】
【化37】