(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記タンクが複数のタンク体を連通管で連通させたものであり、各タンク体に前記圧力センサが設けられており、各タンク体の圧力差が無いときの圧力情報を用いることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の空気圧縮機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、空気タンク内に溜まっているドレンは外から見ることができないため、作業終了時にエアガンなどで工具や周囲の清掃に空気タンクの残圧を使用すると残圧が少なくなり、溜まったドレンを十分に排出できない状態となるため、ドレンが残っていても作業者が気付かないという問題がある。また、湿度の高い作業環境下などではドレンの溜まる時間も早くなるため、想定以上にドレンが早く溜まってしまい、ドレンが溢れて工具側に流出する恐れがある。
【0008】
そのため、タンク内に溜まったドレンを作業者に報知するためには、ドレンの量を検出し、信号として作業者に認識できる手段への変換が必要であるが、特殊なセンサや検出装置が必要となるため、コストがかかるのが問題であった。
【0009】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、タンク内にドレンが溜まるとタンク内の容量が減少し、昇圧に要する時間が短くなることに着目し、簡単で安価な構成によってタンク内に所定ドレン量(例えば使用限界ドレン量)が溜まったことを検知して報知可能な空気圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある態様は空気圧縮機である。この空気圧縮機は。圧縮空気を生成する圧縮部と、前記圧縮部を駆動する駆動部と、圧縮空気を貯留するタンクと、前記タンクに貯留された圧縮空気の圧力を検出する圧力センサと、前記タンク内の圧縮空気の圧力と前記駆動部の運転時間との関係を示す基準データを記憶するとともに、前記圧力センサからの圧力情報を受ける制御部と、前記制御部によって制御されて報知信号を出力する報知部とを備え、
前記制御部は前記圧力センサからの圧力情報及び前記駆動部の運転時間情報の実測データと前記基準データとを比較して、前記タンク内のドレン貯留量が所定値に達していると判断したときは、前記報知部を作動させて前記報知信号を出力する
ものであり、
前記制御部は、第1の基準圧力よりも低い圧力点を第3の基準圧力として設定し、前記タンク内の圧縮空気の圧力が低下して前記圧力点以下となり昇圧が行われた場合に、前記実測データにおいて前記タンク内の圧縮空気の圧力が前記第1の基準圧力から第2の基準圧力に上昇するまでに要した運転時間が、前記基準データにおいて前記第1の基準圧力から前記第2の基準圧力に上昇するまでに要する運転時間以下であるときに、前記タンク内のドレン貯留量が前記所定値に達していると判断することを特徴とする。
【0012】
前記態様において、第3の基準圧力を昇圧計測開始の判断フラグとするとよい。
【0015】
前記態様において、前記制御部は、
前記実測データにおいて前記タンク内の圧縮空気の圧力が前記第1の基準圧力から前記第2の基準圧力に上昇するまでに要した運転時間での圧力上昇率が、
前記基準データにおいて前記第1の基準圧力から前記第2の基準圧力に上昇するまでに要する運転時間での圧力上昇率以上であるときに、前記タンク内のドレン貯留量が前記所定値に達していると判断してもよい。
【0016】
前記態様において、前記ドレン貯留量の前記所定値が、前記ドレン貯留量の使用限界値に設定されているとよい。
【0019】
前記態様において、前記報知部は、第1の報知信号と、前記第1の報知信号と異なる第2の報知信号を発することができるとよい。
【0020】
前記態様において、前記制御部は、ドレン貯留量を判断する際の前記圧力センサの測定値に応じて、異なる前記基準データで判断を行ってもよい。
【0021】
前記態様において、前記タンクが複数のタンク体を連通管で連通させたものであり、各タンク体に前記圧力センサが設けられており、各タンク体の圧力差が無いときの圧力情報を用いる構成であるとよい。
【0022】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る空気圧縮機によれば、タンク内に一定以上のドレンが溜まった場合には、ドレンの排出の必要性を作業者に報知することができるので、ドレン残留に起因する作業効率の低下や、先端空気工具の寿命低下を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材、処理等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0026】
図1乃至
図4において、本発明の実施の形態に係る可搬式空気圧縮機の全体構成を説明する。これらの図において、可搬式空気圧縮機1は、圧縮空気を貯留する空気タンク5と、タンク5内の圧縮空気の圧力を検出(監視)するための圧力センサ11と、圧縮空気を生成する圧縮部4と、圧縮部4を駆動するための駆動部3と、主電源スイッチ10と、駆動部3の起動・停止(オン・オフ)を制御する制御部9と、報知部9aとを具備している。
【0027】
主電源スイッチ10は、空気圧縮機1に供給される商用交流電源をオン、オフするために設けられる。主電源スイッチ10を介して供給される交流電力は、制御部9により直流電力に変換され、駆動部3等の駆動電源として使用される。
【0028】
駆動部3は、電動モータ、例えば直流ブラシレスモータを具備し、モータの駆動回路(インバータ回路、図示なし)は制御部9によって制御される。すなわち、制御部9によって駆動部3のモータのオン、オフ制御(回転制御)が行われる。
【0029】
制御部9は、図示されていないが、マイクロコンピュータを有し、演算、制御プログラムを実行する中央処理装置(CPU)、CPUの制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)、CPUの作業領域やデータの一時記憶領域などとして利用されるランダムアクセスメモリ(RAM)等の回路機能ブロックを含んでいる。
【0030】
図1に示されるように、制御部9のCPUは、タンク5に取り付けられた圧力センサ11より圧縮空気の圧力検出信号を受け、駆動部3を制御して、起動(オン)又は停止(オフ)を実行する。また、制御部9は報知部9aを制御して、後述するドレンの溜まり程度(ドレン貯留量が使用限界に達したか否か)を作業者に報知する機能を有する。
【0031】
空気タンク5は、並行に配置され、かつ相互に連通する一対の円筒状タンク体より構成され、圧縮空気を貯留する。圧縮空気は圧縮部4で生成され、その吐出口よりパイプ(空気流通路)6を通してタンク5内に供給される。供給された圧縮空気は、タンク5内で、例えば3.0〜4.5MPaの圧力を有する。
【0032】
タンク5の一部にはリリーフバルブ5a(
図2や
図3参照)が取り付けられており、タンク5内の圧力が異常に高くなったときに、その圧縮空気の一部を外部に吐出させて、万が一の異常な圧力上昇を防止している。また、タンク5には、一対の圧縮空気取出口(エアソケット)8a,8bが設けられており、それらエアソケット8a,8bの各々には、エアホースを介して釘打機等の空気工具15a,15b(
図1参照)が接続される。
【0033】
タンク5のエアソケット8a,8b側には、減圧弁7a,7bがそれぞれ設けられており、タンク5への圧縮空気の入口側(パイプ6側)の圧力の大きさにかかわらず、タンク5のエアソケット8a、8b側圧力を最高圧力以下に一定に抑える機能を持つ。従って、エアソケット8a,8bには、タンク5内の圧力にかかわらず、上記の最高圧力以下の圧力を持つ圧縮空気が得られる。
【0034】
エアソケット8a,8bの近傍には圧力計13a,13bが取り付けられており、エアソケット8a,8bの近傍の圧力をモニタできるように構成されている。
【0035】
圧縮部4は、
図5に示されるように、シリンダ部41a、41bとピストン部42a、42bとを有する。駆動部3の回転運動は、クランクシャフト50に伝達され、低圧側クランクアーム43a及び高圧側クランクアーム43bを回転させる。高圧側クランクアーム43bの外周には、ベアリング44bを介して、高圧側コンロッド45bが回動自在に配設され、高圧側クランクアーム43bが偏心して回転することにより、高圧側シリンダ41bに内設する高圧側ピストン42bの往復運動に変換される。同様に低圧側クランクアーム43aの外周には、ベアリング44aを介して、低圧側コンロッド45aが回動自動に配設され、低圧側クランクアーム43aが偏心して回転することにより低圧側シリンダ41aに内接する低圧側ピストン42aの往復運動に変換される。
【0036】
まず、高圧側ピストン42b及び低圧側ピストン42aが高圧側シリンダ41b及び低圧側シリンダ41a内の上死点から下死点へ下降運動する吸込み工程において、空気が高圧側圧縮室46b及び低圧側圧縮室46a内に吸込まれる。一方、高圧側ピストン42b及び低圧側ピストン42aが高圧側シリンダ41b及び低圧側シリンダ41a内の下死点から上死点へ上昇運動する工程においては、高圧側ピストン42b及び低圧側ピストン42aが高圧側圧縮室46b及び低圧側圧縮室46a内の空気を圧縮し、圧縮空気を生成する。高圧側ピストン42b及び低圧側ピストン42aが高圧側圧縮室46b及び低圧側圧縮室46aの上死点へ達する吐出工程において生成された圧縮空気は、図示しない配管へ吐出される。
【0037】
高圧側ピストン42b及び低圧側ピストン42aの往復運動は位相がずれており、低圧側圧縮室46aから吐出された圧縮空気は図示しない配管を介して高圧側圧縮室46bに吸込まれ、高圧側圧縮室46bから吐出された圧縮空気は図示しない配管を介してタンク5に供給される。
【0038】
なお、空気の流通方向は高圧側圧縮室46b及び低圧側圧縮室46aにそれぞれ設けられた吸込み弁と吐出弁によって一方向に限定される。供給された圧縮空気は、タンク5内で、例えば3.0〜4.5MPa程度の圧力を有する。
【0039】
この時、生成された圧縮空気は大気中の空気を吸引して圧縮するため、大気に含まれる水分も一緒に圧縮される。この吸引した水分がタンク5へ供給されたのち冷却され再び水すなわちドレンとして貯留される。
【0040】
図2に示すように、タンク5にはドレンコック12が設けられている。このドレンコック12は、1次側にタンク内部の底面際まで伸ばしたチューブ51を備え、かつ2次側は大気解放するボール式のバルブにより1次側と2次側とを開閉可能としたものである。そして、タンク5内に貯留したドレンは、ドレンコック12を開くことで、1次側のチューブ51、2次側の大気解放するボール式バルブを介し、タンク5内の圧力を利用してタンク外に排出することができる。
【0041】
以上の吸込工程、圧縮工程及び吐出工程をピストン42a,42bの往復運動により繰り返すことによって、圧縮部4よりタンク5に、第1の基準圧力(任意値)から、許容最高圧力以下である第2の基準圧力までの圧力範囲を持つ圧縮空気を供給することができる。タンク5内の圧力が予め設定された許容最高圧力(第2の基準圧力)に到達すると、圧力センサ11の圧力検出信号に基づいて制御部9から駆動部3へ停止信号が送信され、駆動部3のモータの運転が停止され、その結果、圧縮部4のピストン42a,42bの往復運動が停止されて圧縮空気の生成が停止される。
【0042】
報知部9a(
図1参照)は、本発明に従って設けられた構成部分であり、長時間圧縮運転を行った結果、タンク5にドレンが溜まり続けて使用限界量に達した時に発光ダイオード(LED)等の警告灯を点灯させ、又はブザー等による警告音を発生する回路であり、前記制御部9によって制御される。この報知部9aの動作については後述する。また、報知の手段としては任意の方法を用いることができ、例えば、操作パネル14(
図2参照)に報知用の警告灯を設ける方法や、操作パネル14に設けられたタンク内圧力や動作状態を報知するLEDを特殊な点灯パターンで点灯させる方法の他、ブザーや音声による報知方法を用いることができる。
【0043】
本願発明者は、
図6の基本的な第1動作例に示すように、圧縮部4にて生成した圧縮空気に含まれる水分がドレンとしてタンク内に貯留され、その量が増大するにつれて、タンク5内の圧縮空気の圧力(タンク内圧力)Pを、第1の基準圧力Prから第2の基準圧力Pmまで上昇させるために必要な駆動部3(又は圧縮部4)の運転時間(充填時間)tが短くなることを見出した。なお、分かり易くするために
図6では運転時間と圧縮空気圧力との関係をリニアな関係であると仮定して表示してある。
【0044】
すなわち、
図6に示す運転時間t対タンク内圧力P特性において、特性Aはタンク5にドレンがない状態の時の昇圧特性(初期時)を示し、特性Bは長時間稼動によりタンク内にドレンが限界まで溜まった時の昇圧特性(ドレン貯留量限界時)を示す。
【0045】
本願発明者は、ドレンの貯留量が、特性A(初期時)から特性B(ドレン貯留量限界時)へと増大するにつれて、タンク5内の圧縮空気を第1の基準圧力Pr(例えば、標準大気圧)より第2の基準圧力(許容最高圧力、例えば30MPa)Pmまでに上昇させる駆動部3の運転時間(充填時間)tは、TfからTm(Tm<Tf)と短くなり、この運転時間tが所定の時間Tmよりも短くなると、ドレンの貯留量限界を超えてタンク5から接続した空気工具へドレンが流出し、空気工具の寿命低下となる問題を招くことを見いだした。
【0046】
そこで、本実施の形態では、ドレンの貯留量が使用限界量に達した場合、ドレンの排出が必要であることを報知する報知部9aを設け、制御部9によって制御するように構成している。具体的には、制御部9は、ドレンの貯留量が使用限界に達した場合における、タンク内圧力Pと駆動部3の運転時間tとの関係を示す基準データを制御部9のメモリ部(図示なし)に予め記憶しておく。この基準データは、ドレン貯留量の使用限界量とタンク内圧力との関係を実験的に求めたものである。前記基準データには、ドレン貯留量が使用限界量になったときにおいて、タンク内圧力Pを前記第1の基準圧力Prから前記第2の基準圧力Pmまで圧力上昇させるために必要な圧縮部4(又は駆動部3)の基準運転時間Tmを含んでいる。
【0047】
運転時において、制御部9は、空気圧縮機1を運転した場合の実測データに対応する
図6の特性Cに示すように、圧力センサ11及び制御部9のタイマ機能によりタンク5内の圧力Pが前記第1の基準圧力Prから前記第2の基準圧力Pmに上昇するまでの運転時間Taを表す実測データ(時間Ta又は時間Taの関数)を検出する。そして、実測データ(時間Ta又は時間Taの関数)を前記基準データと比較することによって、実測データの運転時間Taが基準データの基準運転時間Tmに達した場合に、報知部9a(
図1参照)を制御し、視覚的あるいは聴覚的にドレンの排出時期であることを報知する報知信号を出力する。例えば、報知部9aは、実測運転時間Taが基準運転時間Tmに対してTa≦Tmの時に、ブザー等を駆動し報知信号としての警告音で報知するか、又は報知信号として発光ダイオード等の警告灯を点灯又は点滅させて報知する。
【0048】
図7のフローチャートで、空気圧縮機1の運転開始から報知部9aが作動するまでの動作の流れを説明する。
図7において、ステップS1で空気圧縮機1の運転を開始(モータON)する。ステップS2でタンク内圧力Pが第1の基準圧力(任意値)Prに到達したかどうかを判断する。未達(No)であればステップS2を繰り返す。タンク内圧力Pが第1の基準圧力Prに到達すると(YESであると)、ステップS3で制御部9に内蔵のタイマの時間計測を開始させる(タイマONにする)。ステップS4でタンク内圧力Pが第2の基準圧力(許容最高圧力)Pmに到達したかどうかを判断する。未達(No)であればステップS4を繰り返す。タンク内圧力Pが第2の基準圧力Pmに到達すると(YESであると)、ステップS5で空気圧縮機1の運転を停止(モータOFF)するとともに、タイマの時間計測を停止させる(タイマOFFにする)。ステップS6では、タイマの計測値から得られた実測運転時間Taとメモリ部に格納されている基準運転時間Tmとを対比し、Ta≦Tmであるかどうか判断する。Ta>Tmであれば(Noであれば)報知部9aは作動されずステップS7の「警報無し」となる。Ta≦Tmであれば(YESであれば)報知部9aは作動されて、ステップS8の「警報発生」となり、報知部9aはドレンの排出時期であることを報知する報知信号(第1の報知信号)を作業者に向けて出力する。
【0049】
なお、作業者が前記警告に対し気付かない場合には、運転時間tが基準データの運転時間Tmを超えた回数を制御部9のメモリ部に記憶させておき、所定の回数に到達した場合には空気圧縮機1の運転再開の禁止や初回の報知信号とは違う第2の報知信号で報知するなどの、複数段階に分けた報知信号をあらかじめ設定しておき、段階に応じて切り替えることができる。その後、作業者がドレンの排出を行えば、運転時間tは基準データの運転時間Tmより長くなる。制御部9は運転時間tが運転時間Tmより長くなったことを検出すると、メモリ部に記憶させた回数をリセットする。
【0050】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0051】
(1) タンク5内のドレン貯留量が使用限界に達した場合におけるタンク5内の圧縮空気の圧力Pと、圧縮部4を駆動する駆動部3の運転時t間との関係を示す基準データを制御部9に記憶しておき、前記基準データと空気圧縮機運転時の実測データとを対比することで、制御部9はタンク5内に使用限界ドレン量が溜まったことを検知し、報知部9aで例えば視覚的、聴覚的に報知可能である。このように、ドレンの排出を作業者に促すことができるので、ドレン残留に起因する作業効率の低下や、先端空気工具の寿命低下を防止することができる。
【0052】
(2) 空気圧縮機1の基本構成部品である圧力センサ11を利用し、その出力データを演算することで、ドレンの貯留量を間接的に把握することができ、また追加部品も必要ないので、安価で信頼性の高いメンテナンス手段として実施可能である。
【0053】
図7のフローチャートは、
図6において第1の第1の基準圧力(任意値)Prから第2の基準圧力(許容最高圧力)Pmに到達するまでの時間に着目して、ドレン貯留量の使用限界を判断したが、
図6の特性A(初期時)と特性B(ドレン貯留量限界時)の運転時間に対する圧力上昇率が、前者よりも後者が大きくなることに着目してドレン貯留量の使用限界を判断してもよい。この場合、前記基準データに含まれる特定の時間帯における特性Bの圧力上昇率(ΔPm/ΔTm)を用い、これを制御部9のメモリ部に記憶させておき、同じ微小時間帯における実測データである特性Cの圧力上昇率(ΔPa/ΔTa)と対比し、(ΔPm/ΔTm)≦(ΔPa/ΔTa)であれば
図1の報知部9aからドレンの排出時期であることを報知する報知信号を作業者に向けて出力すればよい。ΔTmは微小な時間(例えば、3秒)としてもよく、モータ起動後の一定の長さのある時間(例えば、60秒)としてもよい。
【0054】
また、
図6の特性A(初期時)と特性B(ドレン貯留量限界時)において、一定運転時間Tcが経過した時の圧力が、前者よりも後者が大きくなることに着目してドレン貯留量の使用限界を判断してもよい。この場合、前記基準データに含まれる、一定運転時間Tcが経過した時の特性Bの圧力Pcmを用い、これを制御部9のメモリ部に記憶させておき、同時刻における実測データである特性Cの圧力Pcaと対比し、Pcm≦Pcaであれば
図1の報知部9aからドレンの排出時期であることを報知する報知信号を作業者に向けて出力すればよい。
【0055】
図6では運転時間とタンク内の圧縮空気圧力との関係をリニアな関係であると仮定して特性A(初期時)と特性B(ドレン貯留量限界時)とを表示したが、実際は
図8の第2動作例のように運転時間とタンク内の圧縮空気圧力との関係は完全なリニアな関係にはならない。つまり、特性A(初期時)及び特性B(ドレン貯留量限界時)共に第2の基準圧力(許容最高圧力)Pmに近くなると圧力上昇率が低下する傾向にある。
【0056】
図8の場合も
図7のフローチャートに従った動作が可能である。また、
図8の場合において、前記基準データに含まれる、一定運転時間Tcが経過した時の特性Bの圧力Pcmを用い、これを制御部9のメモリ部に記憶させておき、同時刻における実測データである特性Cの圧力Pcaと対比し、Pcm≦Pcaであれば
図1の報知部9aからドレンの排出時期であることを報知する報知信号を作業者に向けて出力する動作も可能である。但し、
図8の特性A(初期時)と特性B(ドレン貯留量限界時)の運転時間に対する圧力上昇率は、測定する時間帯によっては差異が明確にならない可能性がある。
【0057】
図1の空気圧縮機1に空気工具15a,15bを接続して断続的に使用した場合のタンク内圧力の変化の一例を
図9の第3動作例に示す。すなわち、実際に空気工具を使用する場合、
図9のようにタンク内圧力を最大値Pmaxまで上昇させた後に空気工具の使用を開始すると、空気工具の使用に伴ってタンク内圧力が空気工具の使用限界下限値(例えば2.0MPa)まで低下する。この時点で空気工具の使用を一旦停止して、タンク内圧力が最大値Pmaxに到達するまで待機し、最大値Pmaxに到達後、再度空気工具の使用の使用を開始するというサイクルを繰り返す。各サイクルのタンク内圧力の上昇局面にて、第1の基準圧力Prから第2の基準圧力Pmに到達するまでの実測時間Ta1,Ta2,Ta3,…を前記メモリ部の基準運転時間Tmと対比することで、
図6や
図7のフローチャートの動作に従ってタンク内に使用限界ドレン量が溜まったことを検知し、報知部で例えば視覚的、聴覚的に報知可能である。
【0058】
図9のように、各サイクルのタンク内圧力Pの上昇局面にて、タンク内に使用限界ドレン量が溜まったか否かを判断することで、より迅速にドレン排出時期を作業者に報知することが可能である。
【0059】
図10は空気圧縮機1の第4動作例であって、
図1の圧力センサ11の検出圧力が、タンク内の空気の慣性効果による圧力戻り+ΔPの影響を受けることに配慮し、圧力戻り+ΔPに起因する誤検出を回避してタンク内の使用限界ドレン量の検知を行うようにしたものである。
【0060】
まず、誤検出が生じる場合について説明すると、
図9と同様に第1の基準圧力Prから第2の基準圧力Pmに到達するまでの実測時間に基づきタンク内の使用限界ドレン量の検知を行う場合において、第1の基準圧力Prより僅かに低い圧力で空気の消費が終わったときは
図10の中央の波形Jのようにタンク内の空気の慣性効果による圧力戻り+ΔPの影響を受けて、タンク内圧力は第1の基準圧力Prから第2の基準圧力Pmに向かって急激に上昇する。このため、第1の基準圧力Prから第2の基準圧力Pmに到達するまでの昇圧時間Ta2’は短く検出されてしまう。換言すれば、Ta2’<Ta2(
図9記載)となり、実際にはドレンが溜まっていなくとも基準運転時間Tmとの対比において、Ta2’<Tmとなり、誤検出が発生する。
【0061】
このような誤検出を回避するために(タンク内空気の慣性効果の影響を検出しないようにするために)、
図10の第4動作例では、Pr−Pt>ΔPを満足する圧力点Ptを昇圧計測開始の判断フラグとして設定する。そして、
図10の右側の波形Kのように判断フラグPtまでタンク内圧力が低下すると、計測の可否を判断するフラグが有効になり、タンク内圧力の上昇により第1の基準圧力Prに達すると計測を開始し、第2の基準圧力Pmに到達するまでの昇圧時間Ta3’を計測する。この昇圧時間Ta3’は圧力戻り+ΔPが発生しない場合(若しくは無視できる場合)の
図9に記載の昇圧時間Ta3とほぼ同じになり、誤検出を回避できることになる。第1の基準圧力Prから第2の基準圧力Pmに到達するまでの実測時間を前記メモリ部の基準運転時間Tmと対比してタンク内に使用限界ドレン量が溜まったことを検知する点は
図9の第3動作例と同様である。
【0062】
第4動作例では、
図10の中央の波形Jのように判断フラグとなる圧力点Pt(第3の基準圧力)まで圧力が低下しない場合には計測は行わないことになる。
【0063】
図10の第4動作例は、空気工具の使用する単位時間当たりの空気消費量が多くて空気の慣性効果による圧力戻り+ΔPの影響が大きい場合にとくに有効である。なお、空気工具の使用する単位時間当たりの空気消費量が少なくて圧力戻り+ΔPが無視できる条件下では
図9の第3動作例でもよいことは自明である。
【0064】
図11は本発明のもう一つの実施の形態であって、空気タンク5の一対の円筒状タンク体5A,5Bを連通管55で連通するとともに、各タンク体5A,5Bに圧力センサ11を設けた構成を示す。その他の構成は
図1の実施の形態と同様である。
【0065】
この場合、タンク体5Aに接続された空気工具15a,15bが空気を急激に消費するすると、タンク体5Aの圧力の方がタンク体5Bの圧力よりも先に低下する。空気工具15a,15bの空気の消費が停止すると、タンク体5Aの圧力はタンク体5B内の圧力と均衡(バランス)するまで急上昇する。従って、各タンク体5A,5Bの圧力センサ11の圧力値が一致している状態(圧力差の無い状態)を、タンク内の空気の慣性効果による圧力戻り+ΔPの影響が無くなった状態であると判断して、各タンク体5A,5Bの圧力センサ11の圧力値が一致しているという条件下で、第1の基準圧力Prから第2の基準圧力Pmに上昇するまでの運転時間Taを表す実測データを計測することで、タンク内の空気の慣性効果による圧力戻り+ΔPに起因する誤動作を回避できる。例えば、前述の第1動作例乃至第3動作例に適用できる。
【0066】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0067】
上記実施の形態において、
図6及び
図8における第1の基準圧力Prから第2の基準圧力Pmまで圧力上昇させるために必要な圧縮部4(又は駆動部3)の基準データに含まれる基準運転時間Tmは、運転総時間であってもよい。また、前記第2の基準圧力は、必ずしも許容最高圧力に特定する必要はなく、前記第1の基準圧力より高く、許容最高圧力より低い基準圧力に設定してもよい。
【0068】
また、上述のように、タンク内圧力の上昇速度はタンク内圧力が高くなるにつれて小さくなるので、報知発生の判断を行うタイミングに応じて、異なる基準データで判断を行ってもよい。
【0069】
また、
図10において、判断フラグとなる圧力点Ptを設定する代わりに、空気の慣性効果による圧力戻り+ΔPの影響でタンク内圧力が急増する一定時間(所定時間)は計測を行わず、運転開始(昇圧開始時点)から前記一定時間経過した時点のタンク内の圧縮空気の圧力を、第1の基準圧力Prに設定して第1の基準圧力Prから第2の基準圧力Pmに到達するまでの昇圧時間Taを計測するようにしてもよい。あるいは、運転開始(昇圧開始時点)から所定時間経過後に圧力上昇率の計測を行ってもよい。