特許第6274429号(P6274429)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6274429地中熱交換器の採熱量増強方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6274429
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】地中熱交換器の採熱量増強方法および装置
(51)【国際特許分類】
   F24T 10/00 20180101AFI20180129BHJP
   F28D 21/00 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
   F24J3/08
   F28D21/00 Z
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-101730(P2014-101730)
(22)【出願日】2014年5月15日
(65)【公開番号】特開2015-218935(P2015-218935A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2016年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 道哉
【審査官】 青木 良憲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−303695(JP,A)
【文献】 特開昭58−024762(JP,A)
【文献】 特開平09−137972(JP,A)
【文献】 特開2011−191014(JP,A)
【文献】 特開昭59−164854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24J 3/08
F28D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中熱ヒートポンプシステムに備わる地中熱交換器の採熱量を増強する方法であって、地中熱交換器が埋設されている第一帯水層から取水し、取水した水を第一帯水層よりも下側にある第二帯水層に還元する一方、第一帯水層から取水した水量相当の水を第二帯水層よりも下側にある第三帯水層から揚水し、第一帯水層に還元することを特徴とする地中熱交換器の採熱量増強方法。
【請求項2】
地中熱ヒートポンプシステムに備わる地中熱交換器の採熱量を増強する装置であって、地中熱交換器が埋設されている第一帯水層から取水する第一取水手段と、第一取水手段で取水した水を第一帯水層よりも下側にある第二帯水層に還元する第一還元手段と、第一帯水層から取水した水量相当の水を第二帯水層よりも下側にある第三帯水層から取水する第二取水手段と、第二取水手段で取水した水を第一帯水層に還元する第二還元手段とを有することを特徴とする地中熱交換器の採熱量増強装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中から熱を取り出すクローズドタイプの地中熱ヒートポンプシステムに用いられるボアホール方式の地中熱交換器の採熱量増強方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地中から熱を取り出すために地中熱交換器内に流体を循環させ、汲み上げた熱をヒートポンプで必要な温度領域の熱に変換するクローズドタイプの地中熱ヒートポンプシステムが知られている(例えば、特許文献1〜5を参照)。この地中熱ヒートポンプシステムによって取り出された熱は、一般に冷暖房や給湯などの熱源として利用される。地中熱交換器内を循環させる流体としては通常、不凍液や水などの冷媒が用いられる。
【0003】
地中熱交換器には、垂直型、水平型、傾斜型などがあり、垂直型のものとしては、掘削孔を利用するボアホール方式と基礎杭などを利用する杭方式とがある。ボアホール方式では通常、高密度ポリエチレンパイプ2本の先端部をU字状に接続したUチューブと呼ばれる採放熱管がボアホールに挿入される。
【0004】
Uチューブの型式としては、シングルUチューブ型と、ダブルUチューブ型とが普及している。シングルUチューブ型は1本のボアホールに一組のUチューブを挿入したものであり、ダブルUチューブ型は1本のボアホールに二組のUチューブを挿入したものである。
【0005】
また、地盤の表層付近の帯水層で地下水流れが顕著な地形の場合には、スパイラル型などの単位深さ当たりの採熱量が大きい地中熱交換器が利用される場合がある。
【0006】
ところで、表層付近で地下水流れが顕著な伏流水の多い地域や扇状地においては、地下水流は季節変動の影響を受ける場合が多い。例えば、雪解けによる流れの増大や梅雨時期の降雨による流れの増大などがある一方、渇水時期には、地下水流も減少傾向となる地域が多く存在する。例えば、夏から秋にかけての時期がこれに当たる場合もあるため、冷房時期と期間が重なる場合、地下水流不足による熱交換量の減少が懸念される。
【0007】
一般的に、地中熱ヒートポンプシステムを計画する場合、サーマルレスポンステストなどで現地の熱抵抗を計測して熱交換器本数などを計画するが、通常は工事計画との兼ね合いで、計測は一回だけしか実施しない場合がほとんどである。この計測時期が地下水流速の大きな時期であると熱抵抗が通常期よりも小さく計測され、この結果を受けて計画される熱交換器の本数などが、本来必要であるべき本数などに達しない場合もある。この場合、この地中熱ヒートポンプシステムを適用した空調や工場のプロセス利用に支障をきたすおそれがある。
【0008】
また、従来の地中熱ヒートポンプシステムでは、熱交換量が時期的に変動することが計画に反映されていない場合が多く、さらに、供用開始後に容量不足などの支障をきたしても有効な対応策がとられないことが多い。なお、このような場合には、供用中の地中熱ヒートポンプシステムに、通常の空気熱源式ヒートポンプシステムを付加的に設置して容量不足に対応する方策が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2013−508658号公報
【特許文献2】特開2013−47606号公報
【特許文献3】特開2013−249982号公報
【特許文献4】特開2013−148255号公報
【特許文献5】特開2013−36687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このため、地中熱ヒートポンプシステムにおいて、地下水流速が低下する時期に起こる容量不足などに対処可能なように、地中熱交換器による採熱量を事後的に増強することが求められていた。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、地中熱交換器による採熱量を事後的に増強することができる地中熱交換器の採熱量増強方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る地中熱交換器の採熱量増強方法は、地中熱ヒートポンプシステムに備わる地中熱交換器の採熱量を増強する方法であって、地中熱交換器が埋設されている帯水層ではない層から取水し、取水した水を前記帯水層に注水することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る他の地中熱交換器の採熱量増強方法は、地中熱ヒートポンプシステムに備わる地中熱交換器の採熱量を増強する方法であって、地中熱交換器が埋設されている第一帯水層から取水し、取水した水を第一帯水層よりも下側にある第二帯水層に還元する一方、第一帯水層から取水した水量相当の水を第二帯水層よりも下側にある第三帯水層から揚水し、第一帯水層に還元することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る地中熱交換器の採熱量増強装置は、地中熱ヒートポンプシステムに備わる地中熱交換器の採熱量を増強する装置であって、地中熱交換器が埋設されている帯水層ではない層から取水する手段と、取水した水を前記帯水層に注水する手段とを有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る他の地中熱交換器の採熱量増強装置は、地中熱ヒートポンプシステムに備わる地中熱交換器の採熱量を増強する装置であって、地中熱交換器が埋設されている第一帯水層から取水する第一取水手段と、第一取水手段で取水した水を第一帯水層よりも下側にある第二帯水層に還元する第一還元手段と、第一帯水層から取水した水量相当の水を第二帯水層よりも下側にある第三帯水層から取水する第二取水手段と、第二取水手段で取水した水を第一帯水層に還元する第二還元手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る地中熱交換器の採熱量増強方法によれば、地中熱ヒートポンプシステムに備わる地中熱交換器の採熱量を増強する方法であって、地中熱交換器が埋設されている帯水層ではない層から取水し、取水した水を前記帯水層に注水するので、地中熱交換器が埋設されている帯水層に人工的な地下水流を形成することができる。これにより、地中熱交換器による採熱量を事後的に増強することができるという効果を奏する。また、地中熱交換器による熱交換によって温度上昇した(または温度低下した)地下水を取水して、これを地中熱交換器が埋設されている帯水層に還流させるものではないので、熱交換量の低下を生じさせるおそれはない。
【0017】
また、本発明に係る他の地中熱交換器の採熱量増強方法によれば、地中熱ヒートポンプシステムに備わる地中熱交換器の採熱量を増強する方法であって、地中熱交換器が埋設されている第一帯水層から取水し、取水した水を第一帯水層よりも下側にある第二帯水層に還元する一方、第一帯水層から取水した水量相当の水を第二帯水層よりも下側にある第三帯水層から揚水し、第一帯水層に還元するので、地中熱交換器が埋設されている第一帯水層に人工的な地下水流を形成することができる。これにより、地中熱交換器による採熱量を事後的に増強することができるという効果を奏する。また、第三帯水層の安定した温度、水質の水を第一帯水層に還元することで第一帯水層の温度、水質を安定したものにすることができるという効果を奏する。
【0018】
また、本発明に係る地中熱交換器の採熱量増強装置によれば、地中熱ヒートポンプシステムに備わる地中熱交換器の採熱量を増強する装置であって、地中熱交換器が埋設されている帯水層ではない層から取水する手段と、取水した水を前記帯水層に注水する手段とを有するので、地中熱交換器が埋設されている帯水層に人工的な地下水流を形成することができる。これにより、地中熱交換器による採熱量を事後的に増強することができるという効果を奏する。また、地中熱交換器による熱交換によって温度上昇した(または温度低下した)地下水を取水して、これを地中熱交換器が埋設されている帯水層に還流させるものではないので、熱交換量の低下を生じさせるおそれはない。
【0019】
また、本発明に係る他の地中熱交換器の採熱量増強装置によれば、地中熱ヒートポンプシステムに備わる地中熱交換器の採熱量を増強する装置であって、地中熱交換器が埋設されている第一帯水層から取水する第一取水手段と、第一取水手段で取水した水を第一帯水層よりも下側にある第二帯水層に還元する第一還元手段と、第一帯水層から取水した水量相当の水を第二帯水層よりも下側にある第三帯水層から取水する第二取水手段と、第二取水手段で取水した水を第一帯水層に還元する第二還元手段とを有するので、地中熱交換器が埋設されている第一帯水層に人工的な地下水流を形成することができる。これにより、地中熱交換器による採熱量を事後的に増強することができるという効果を奏する。また、第三帯水層の安定した温度、水質の水を第一帯水層に還元することで第一帯水層の温度、水質を安定したものにすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明に係る地中熱交換器の採熱量増強方法および装置の実施の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係る地中熱交換器の採熱量増強方法および装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0022】
本発明に係る地中熱交換器の採熱量増強方法および装置は、地盤の浅い層で地下水流れが期待されている地域において、浅層に単位深さ当たりの採熱量が大きく期待できるスパイラル型熱交換器などの集中採熱型地中熱交換器を設置する場合に、地下水流速が低下する時期に地下水流速を人工的に増大させて熱交換能力不足を解消するのに好適なものである。
【0023】
図1に示すように、上層から下層に向かって順に第一帯水層1、第一不透水層1A、第二帯水層2、第二不透水層2A、第三帯水層3、第三不透水層3Aで構成される地層において、地中熱ヒートポンプシステムに備わる地中熱交換器10が最上層の第一帯水層1(帯水層)に埋設配置されている。
【0024】
第一帯水層1、第二帯水層2、第三帯水層3は、地下水によって飽和している透水性の地層である。第一不透水層1A、第二不透水層2A、第三不透水層3Aは、透水性の極めて小さい地層であり、例えば未固結の粘土、シルト層、固結した割れ目のない岩盤などにより構成される。
【0025】
地中熱交換器10は、スパイラル型の熱交換器により構成される。より具体的には、地中熱交換器10は、合成樹脂製あるいは金属製等で螺旋状に形成され、内部を水や不凍液などの冷媒が流れる螺旋状流路10aと、螺旋状流路10aの下端に図示しない連結部材を介して接続し、螺旋状流路の螺旋軸方向と略平行に螺旋軸空間内に合成樹脂製あるいは金属製等で直管状に配設された直管状流路10bとで形成される。この地中熱交換器10は、第一帯水層1に掘削形成されたボアホール10c内に埋設される。ボアホール10c内は、地下水が流動できるように図示しない透水性の充てん材で充てんされている。なお、本実施の形態では、地中熱交換器10が1本の場合を例にとり説明するが、2本以上の地中熱交換器10を第一帯水層1に並列配置してもよい。
【0026】
本発明に係る地中熱交換器の採熱量増強装置100は、地中熱交換器10の採熱量を増強する装置である。この採熱量増強装置100は、地中熱交換器10が埋設されている第一帯水層1から取水する揚水井12(第一取水手段)と、揚水井12で取水した水を第一帯水層1よりも下側にある第二帯水層2に還元する還元井14(第一還元手段)とを有する。
【0027】
揚水井12の下端は、第一帯水層1内(例えば第一帯水層1の深さ方向略中央位置)に位置している。第一帯水層1の水は揚水井12内の下端に設けた図示しない揚水ポンプなどにより揚水され、地上に設けた配管20を介して還元井14側に送られるようになっている。
【0028】
還元井14の下端は、第二帯水層2内(例えば第二帯水層2の上部位置)に位置している。配管20からの水は図示しない送水ポンプなどにより還元井14の下端を通じて第二帯水層2に圧送されるようになっている。
【0029】
また、本発明の採熱量増強装置100は、第一帯水層1から取水した水量相当の水を第二帯水層2よりも下側にある第三帯水層3から取水する揚水井16(第二取水手段)と、揚水井16で取水した水を第一帯水層1に還元(注水)する還元井18(第二還元手段)とをさらに有する。
【0030】
揚水井16の下端は、第三帯水層3内(例えば第三帯水層3の深さ方向略中央位置)に位置している。第三帯水層3の水は揚水井16内の下端に設けた図示しない揚水ポンプなどにより揚水され、地上に設けた配管22を介して還元井18側に送られるようになっている。
【0031】
還元井18の下端は、第一帯水層1内(例えば第一帯水層1の深さ方向略中央位置)に位置している。配管22からの水は図示しない送水ポンプなどにより還元井18の下端を通じて第一帯水層1に圧送されるようになっている。
【0032】
揚水井12および還元井18は、この間に横方向の地下水流を形成する観点から地中熱交換器10を左右側方から挟む位置に配置することが好ましく、平面視で揚水井12と還元井18とを繋ぐ線分上に地中熱交換器10が位置するように配置することがより好ましい。
【0033】
上記の構成において、地中熱交換器10が埋設されている第一帯水層1ではない層(第三帯水層3)から取水し、取水した水を第一帯水層1に注水することで、第一帯水層1の還元井18の下端から揚水井12の下端の間に人工的な地下水流Fを形成することができる。この人工的に作り出された地下水流Fによって地中熱交換器10の周囲の地下流速が増大するので、地中熱交換器10による採熱量を、地中熱ヒートポンプシステムの導入後に事後的に増強することができるという効果を奏する。
【0034】
また、上記の構成によれば、揚水井12で汲み上げたものを直接、第一帯水層1に注水しないので、地中熱交換器10による熱交換によって温度上昇した(または温度低下した)地下水を第一帯水層1に戻すことによる熱交換量の低下を生じさせるおそれはない。
【0035】
また、上記の構成によれば、第三帯水層3の安定した温度、水質の水を第一帯水層1に還元することで第一帯水層1の温度、水質を安定的に維持することができるという効果を奏する。
【0036】
また、従来の地中熱ヒートポンプシステムでは、熱交換量が時期的に変動することが計画に反映されていない場合が多く、さらに、供用開始後に容量不足などの支障をきたしても有効な対応策がとられないことが多かった。しかしながら、本発明によれば、熱交換能力(採熱量)の低下したクローズドタイプの地中熱交換器の熱交換能力を後から増強させることが可能であるため、地下水流速が低下する時期に起こる容量不足などに有効に対処することができる。
【0037】
例えば、熱交換能力不足が判明した既設の地中熱ヒートポンプシステムや、何らかの原因で年数が経過した後に熱交換能力が低下した場合の対策として、揚水井12、還元井14、揚水井16、還元井18を後から施工することで対処可能である。
【0038】
なお、上記の実施の形態において、揚水井12以外の還元井14、揚水井16、還元井18を一つの掘削孔で施工してもよい。この場合、掘削孔の第一帯水層1の位置に、配管22からの水を周囲に圧送するための設備を設ける。また、掘削孔の第二帯水層2の位置に、配管20からの水を周囲に圧送するための設備を設ける。さらに、掘削孔の第三帯水層3の位置に、第三帯水層3の水を配管22に送り出すための揚水ポンプなどの設備を設ける。このようにすれば、掘削孔施工に掛かる工事コストの削減が可能となる。
【0039】
また、本発明は、地中熱ヒートポンプシステムの新設時における地中熱交換器10による採熱量を増強する方策としても適用可能である。また、新設時に地中熱交換器10の設置本数を最小化して、本数が不足した時に本発明によって対応することも可能である。
【0040】
なお、本発明に係る揚水井12、揚水井16、還元井14、還元井18は、地下水流速が低下する渇水時期の期間のみ、さらに一日の間でも地中熱交換器10の周囲の温度上昇(または温度低下)が無視し得ない場合にのみ稼働させることが好ましい。このようにすれば、地下水の水質に与える影響を非常に少なくすることができる。
【0041】
なお、第一帯水層1に地下水が豊富な場合には、生活用水に井戸を利用している場合が多く、一般的にオープンタイプの地中熱ヒートポンプシステムの導入は地域住民にとって受け入れづらいものである。しかしながら、本発明によれば、井戸への影響を最小限にできるため、このような地域でも、クローズドタイプの地中熱ヒートポンプシステムの導入の理解が得られやすいと考えられる。
【0042】
以上説明したように、本発明に係る地中熱交換器の採熱量増強方法によれば、地中熱ヒートポンプシステムに備わる地中熱交換器の採熱量を増強する方法であって、地中熱交換器が埋設されている帯水層ではない層から取水し、取水した水を前記帯水層に注水するので、地中熱交換器が埋設されている帯水層に人工的な地下水流を形成することができる。これにより、地中熱交換器による採熱量を事後的に増強することができる。また、地中熱交換器による熱交換によって温度上昇した(または温度低下した)地下水を取水して、これを地中熱交換器が埋設されている帯水層に還流させるものではないので、熱交換量の低下を生じさせるおそれはない。
【0043】
また、本発明に係る他の地中熱交換器の採熱量増強方法によれば、地中熱ヒートポンプシステムに備わる地中熱交換器の採熱量を増強する方法であって、地中熱交換器が埋設されている第一帯水層から取水し、取水した水を第一帯水層よりも下側にある第二帯水層に還元する一方、第一帯水層から取水した水量相当の水を第二帯水層よりも下側にある第三帯水層から揚水し、第一帯水層に還元するので、地中熱交換器が埋設されている第一帯水層に人工的な地下水流を形成することができる。これにより、地中熱交換器による採熱量を事後的に増強することができる。また、第三帯水層の安定した温度、水質の水を第一帯水層に還元することで第一帯水層の温度、水質を安定したものにすることができる。
【0044】
また、本発明に係る地中熱交換器の採熱量増強装置によれば、地中熱ヒートポンプシステムに備わる地中熱交換器の採熱量を増強する装置であって、地中熱交換器が埋設されている帯水層ではない層から取水する手段と、取水した水を前記帯水層に注水する手段とを有するので、地中熱交換器が埋設されている帯水層に人工的な地下水流を形成することができる。これにより、地中熱交換器による採熱量を事後的に増強することができる。また、地中熱交換器による熱交換によって温度上昇した(または温度低下した)地下水を取水して、これを地中熱交換器が埋設されている帯水層に還流させるものではないので、熱交換量の低下を生じさせるおそれはない。
【0045】
また、本発明に係る他の地中熱交換器の採熱量増強装置によれば、地中熱ヒートポンプシステムに備わる地中熱交換器の採熱量を増強する装置であって、地中熱交換器が埋設されている第一帯水層から取水する第一取水手段と、第一取水手段で取水した水を第一帯水層よりも下側にある第二帯水層に還元する第一還元手段と、第一帯水層から取水した水量相当の水を第二帯水層よりも下側にある第三帯水層から取水する第二取水手段と、第二取水手段で取水した水を第一帯水層に還元する第二還元手段とを有するので、地中熱交換器が埋設されている第一帯水層に人工的な地下水流を形成することができる。これにより、地中熱交換器による採熱量を事後的に増強することができる。また、第三帯水層の安定した温度、水質の水を第一帯水層に還元することで第一帯水層の温度、水質を安定したものにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上のように、本発明に係る地中熱交換器の採熱量増強方法および装置は、地中から熱を取り出すクローズドタイプの地中熱ヒートポンプシステムに用いられるボアホール方式の地中熱交換器に有用であり、特に、地盤の浅い層で地下水流れが期待されている地域において、浅層に単位深さ当たりの採熱量が大きく期待できるスパイラル型熱交換器などの集中採熱型地中熱交換器を設置する場合に、地下水流速が低下する時期に地下水流速を人工的に増大させて熱交換能力不足を解消するのに適している。
【符号の説明】
【0047】
1 第一帯水層(帯水層)
1A 第一不透水層
2 第二帯水層
2A 第二不透水層
3 第三帯水層
3A 第三不透水層
10 地中熱交換器
12 揚水井(第一取水手段)
14 還元井(第一還元手段)
16 揚水井(第二取水手段)
18 還元井(第二還元手段)
20,22 配管
100 地中熱交換器の採熱量増強装置
F 地下水流
図1