特許第6274456号(P6274456)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田中央研究所の特許一覧

特許6274456排ガス浄化用触媒、NOx吸蔵還元型触媒、及び排ガス浄化方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6274456
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】排ガス浄化用触媒、NOx吸蔵還元型触媒、及び排ガス浄化方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20180129BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20180129BHJP
   B01J 37/03 20060101ALI20180129BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20180129BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20180129BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20180129BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
   B01J23/63 AZAB
   B01J37/04 102
   B01J37/03 B
   B01D53/86 230
   B01D53/94 230
   F01N3/10 A
   F01N3/08 A
【請求項の数】14
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-19192(P2016-19192)
(22)【出願日】2016年2月3日
(65)【公開番号】特開2016-179466(P2016-179466A)
(43)【公開日】2016年10月13日
【審査請求日】2017年6月20日
(31)【優先権主張番号】特願2015-60073(P2015-60073)
(32)【優先日】2015年3月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】特許業務法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畑中 美穂
(72)【発明者】
【氏名】田中 寿幸
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/129634(WO,A1)
【文献】 特開2002−282688(JP,A)
【文献】 特開2010−046656(JP,A)
【文献】 特開2012−055842(JP,A)
【文献】 特開2009−022953(JP,A)
【文献】 特表2009−501078(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/044426(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第101015800(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
B01D 53/86
B01D 53/94
F01N 3/08
F01N 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナ、ジルコニア及びチタニアからなる第一の複合酸化物、及び該第一の複合酸化物の表面に担持された、前記第一の複合酸化物100質量部に対して0.5〜10質量部のセリアを含有する第一の触媒担体と、該第一の触媒担体の表面に担持された、前記第一の触媒担体100質量部に対してメタル換算で0.05〜5.0質量部の第一の貴金属とを含有する第一の触媒を備えていることを特徴とする排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
前記第一の複合酸化物の比表面積あたりのセリアの担持量が0.4〜5μmol/(m/g)であることを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
濃硝酸と濃塩酸とを1:3の体積比で含有する混合液に前記排ガス浄化用触媒を投入し、1時間静置後のろ液中に溶出するセリウムの量が、前記排ガス浄化用触媒中の全セリウム量に対して10%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項4】
セリウムと前記第一の貴金属とのモル比(Ce/第一の貴金属)が0.5〜10であることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項5】
前記第一の複合酸化物中のアルミナの含有量が30〜70質量%であることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項6】
前記第一の複合酸化物におけるジルコニアとチタニアの合計量に対するチタニアの割合が20〜60mol%であることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項7】
請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒と、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種のNOx吸蔵材とを含有することを特徴とするNOx吸蔵還元型触媒。
【請求項8】
前記排ガス浄化用触媒が2種以上の前記第一の触媒を備えるものであることを特徴とする請求項7に記載のNOx吸蔵還元型触媒。
【請求項9】
前記NOx吸蔵材が前記第一の触媒の表面に担持されていることを特徴とする請求項7又は8に記載のNOx吸蔵還元型触媒。
【請求項10】
前記NOx吸蔵材の含有量が前記第一の触媒100gあたり0.01〜0.3molであることを特徴とする請求項7〜9のうちのいずれか一項に記載のNOx吸蔵還元型触媒。
【請求項11】
アルミナ、ジルコニア及びチタニアからなる第二の複合酸化物を含有し、セリアを含有していない第二の触媒担体及び該第二の触媒担体の表面に担持された第二の貴金属を含有する第二の触媒を更に含有することを特徴とする請求項7〜10のうちのいずれか一項に記載のNOx吸蔵還元型触媒。
【請求項12】
前記NOx吸蔵材が前記第二の触媒の表面に担持されていることを特徴とする請求項11に記載のNOx吸蔵還元型触媒。
【請求項13】
前記NOx吸蔵材の担持量が前記第一の触媒と前記第二の触媒との合計量100gあたり0.01〜0.3molであることを特徴とする請求項11又は12に記載のNOx吸蔵還元型触媒。
【請求項14】
請求項7〜13のうちのいずれか一項に記載のNOx吸蔵還元型触媒に、窒素酸化物及び硫黄酸化物を含有する排ガスを接触せしめることを特徴とする排ガスの浄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用触媒、より詳しくは、アルミナ、ジルコニア及びチタニアからなる複合酸化物の表面にセリアが担持された触媒担体と貴金属とを含有する排ガス浄化用触媒、この排ガス浄化用触媒とNOx吸蔵材とを含有するNOx吸蔵還元型触媒及びそれを用いた排ガス浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関からの排ガスに含まれる有害な炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)を浄化するために、燃焼反応において排ガス浄化用触媒が利用されてきた。また、酸素過剰な排ガスに含まれる有害な窒素酸化物(NOx)を浄化するために、NOxの吸蔵反応及び/又は還元反応が可能なNOx吸蔵還元型触媒が利用されてきた。しかしながら、排ガスには、燃料中に含まれる硫黄が燃焼して生成したSOが含まれており、このSOが原因で排ガス浄化用触媒やNOx吸蔵材が被毒劣化するという問題があった。このため、耐硫黄被毒性が要求される排ガス浄化用触媒やNOx吸蔵還元型触媒には、チタニアを含有する触媒担体が使用されてきた。
【0003】
例えば、特開2004−321847号公報(特許文献1)には、耐硫黄被毒性を有するNOx吸蔵還元型触媒として、アルミナとジルコニアとチタニアからなる複合酸化物を含有し、前記チタニアの少なくとも一部がアルミナに固溶している触媒担体と、この触媒担体に担持された貴金属及びNOx吸蔵材とを備えている触媒が開示されている。
【0004】
また、特開2008−137886号公報(特許文献2)には、アルミナとジルコニア−チタニア複合酸化物とRh担持ジルコニアとセリア−ジルコニア複合酸化物とを含有する担体に、PtとCeとBaとを担持させた排ガス浄化用触媒(NOx吸蔵還元型触媒)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−321847号公報
【特許文献2】特開2008−137886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のNOx吸蔵還元型触媒は、高温に晒されると、貴金属が粒成長しやすく、触媒活性が低下する場合があった。また、特許文献2に記載のNOx吸蔵還元型触媒は、硫黄被毒しやすく、還元処理による硫黄脱離性に劣るため、硫黄共存下でのNOx処理において、NOx浄化活性が低下する場合があった。
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、高い耐熱性及び高い触媒活性を示す排ガス浄化用触媒、並びに、硫黄に晒された場合でも、高いNOx浄化性能を示すNOx吸蔵還元型触媒及びそれを用いた排ガス浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、アルミナ、ジルコニア及びチタニアからなる複合酸化物の表面に所定量のセリアを担持した触媒担体に貴金属を担持した排ガス浄化用触媒が高い耐熱性及び高い触媒活性を示すことを見出し、さらに、この排ガス浄化用触媒とNOx吸蔵材とを含有するNOx吸蔵還元型触媒が、硫黄に晒された場合でも、還元処理時に硫黄の脱離が促進され、触媒性能の再生が容易となり、高いNOx浄化活性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の排ガス浄化用触媒は、アルミナ、ジルコニア及びチタニアからなる第一の複合酸化物、及び該第一の複合酸化物の表面に担持された、前記第一の複合酸化物100質量部に対して0.5〜10質量部のセリアを含有する第一の触媒担体と、該第一の触媒担体の表面に担持された、前記第一の触媒担体100質量部に対してメタル換算で0.05〜5.0質量部の第一の貴金属とを含有する第一の触媒を備えていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の排ガス浄化用触媒において、前記第一の複合酸化物の比表面積あたりのセリアの担持量としては0.4〜5μmol/(m/g)が好ましい。また、濃硝酸と濃塩酸とを1:3の体積比で含有する混合液に前記排ガス浄化用触媒粉末を投入し、1時間静置後のろ液中に溶出するセリウムの量としては前記排ガス浄化用触媒中の全セリウム量に対して10%以上が好ましい。さらに、セリウムと前記第一の貴金属とのモル比(Ce/第一の貴金属)としては0.5〜10が好ましい。
【0011】
また、本発明の排ガス浄化用触媒において、前記第一の複合酸化物中のアルミナの含有量としては30〜70質量%が好ましい。さらに、前記第一の複合酸化物におけるジルコニアとチタニアの合計量に対するチタニアの割合としては20〜60mol%が好ましい。
【0012】
本発明のNOx吸蔵還元型触媒は、前記本発明の排ガス浄化用触媒と、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種のNOx吸蔵材とを含有することを特徴とするものである。
【0013】
本発明のNOx吸蔵還元型触媒において、前記排ガス浄化用触媒としては2種以上の前記第一の触媒を備えていてもよい。また、前記NOx吸蔵材は前記第一の触媒の表面に担持されていることが好ましい。さらに、前記NOx吸蔵材の含有量としては前記第一の触媒100gあたり0.01〜0.3molが好ましい。
【0014】
また、本発明のNOx吸蔵還元型触媒においては、アルミナ、ジルコニア及びチタニアからなる第二の複合酸化物を含有し、セリアを含有していない第二の触媒担体及び該第二の触媒担体の表面に担持された第二の貴金属を含有する第二の触媒を更に含有することが好ましい。さらに、前記NOx吸蔵材は前記第二の触媒の表面に担持されていることが好ましい。また、前記NOx吸蔵材の担持量としては前記第一の触媒と前記第二の触媒との合計量100gあたり0.01〜0.3molが好ましい。
【0015】
本発明の排ガス浄化方法は、このような本発明のNOx吸蔵還元型触媒に、窒素酸化物及び硫黄酸化物を含有する排ガスを接触せしめることを特徴とする方法である。
【0016】
なお、本発明の排ガス浄化用触媒が高い耐熱性及び高い触媒活性を示し、また、本発明のNOx吸蔵還元型触媒が、硫黄に晒された場合でも、高いNOx浄化活性を示す理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明の排ガス浄化用触媒においては、触媒担体が、アルミナ、ジルコニア及びチタニアからなる複合酸化物の表面にセリアが担持されたものであり、この触媒担体の表面に貴金属を担持することによって、高温に晒されても、このセリアのアンカー効果によって、貴金属の粒成長が抑制されるため、高い耐熱性と高い触媒活性が発現すると推察される。これに対して、アルミナ、ジルコニア及びチタニアからなる複合酸化物を含有し、セリアが担持されていない触媒担体を高温に晒すと、触媒担体の表面に担持された貴金属が粒成長するため、触媒活性が低下すると推察される。
【0017】
また、本発明のNOx吸蔵還元型触媒においては、セリアの担持量が前記複合酸化物100質量部に対して10質量部以下に抑えられているため、セリアの還元に使用される還元剤を必要最小限に留めることができるだけでなく、必要最小限の還元剤で硫黄被毒を除去できるため、燃費悪化を抑制できる。さらに、貴金属の粒成長を抑制できるために、NO酸化還元サイトが十分に保持され、高い耐熱性と耐硫黄被毒性とを有するNOx吸蔵還元型触媒として高いNOx浄化活性を発現すると推察される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高い耐熱性及び高い触媒活性を示す排ガス浄化用触媒、並びに、硫黄に晒された場合でも、高いNOx浄化性能を示すNOx吸蔵還元型触媒及びそれを用いた排ガス浄化方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0020】
先ず、本発明の排ガス浄化用触媒及びNOx吸蔵還元型触媒について説明する。本発明の排ガス浄化用触媒は、アルミナ、ジルコニア及びチタニアからなる第一の複合酸化物及び該第一の複合酸化物の表面に担持されたセリアを含有する第一の触媒担体と、該第一の触媒担体の表面に担持された第一の貴金属とを含有する第一の触媒を備えていることを特徴とするものである。また、本発明のNOx吸蔵還元型触媒は、このような本発明の排ガス浄化用触媒と、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種のNOx吸蔵材とを含有することを特徴とするものである。
【0021】
アルミナ、ジルコニア及びチタニアからなる第一の複合酸化物(以下、「第一のAZT複合酸化物」と略す)及びこの第一のAZT複合酸化物の表面に担持されたセリアを含有する第一の触媒担体を用いることによって、これに貴金属を担持した本発明の排ガス浄化用触媒は高い耐熱性及び高い触媒活性を示す。また、この排ガス浄化用触媒と前記NOx吸蔵材とを含有する本発明のNOx吸蔵還元型触媒は、貴金属の粒成長が抑制されるため、低温リーン雰囲気でのNOx吸蔵性能に優れており、リッチ雰囲気におけるNOx還元量を増加させることができる。また、硫黄に晒された場合でも、高いNOx浄化活性を示す。
【0022】
本発明の排ガス浄化用触媒及びNOx吸蔵還元型触媒において、前記第一の触媒担体中のセリアの担持量は、前記第一のAZT複合酸化物100質量部に対して0.5〜10質量部である。前記第一の触媒担体中のセリアの担持量が前記下限未満になると、高温に晒された場合に、第一の触媒担体の表面に担持された第一の貴金属の粒成長抑制効果が十分に発揮されず、触媒活性及びNOx浄化活性が低下する。他方、前記第一の触媒担体中のセリアの担持量が前記上限を超えると、セリアの還元に伴って酸素が放出され、還元剤が消費される。このため、排ガス浄化用触媒においては、第一の貴金属を十分にメタル化(活性化)するために還元剤を投入する必要があり、燃費悪化の要因となる。また、NOx吸蔵還元型触媒においても燃費悪化の要因となる。特に、本発明のNOx吸蔵還元型触媒においては、前記第一の触媒担体中のセリアの担持量が前記範囲内にあると、セリア担持量が少ないことに起因してセリアの還元に伴う還元剤の消費を抑制でき、NOx還元や硫黄被毒回復のための燃焼リッチ制御においても、還元剤が無駄に燃焼消費されることはなく、窒素酸化物や硫黄酸化物の還元に効率的に利用され、燃費悪化が抑制される。このため、本発明のNOx吸蔵還元型触媒は、高いNOx浄化活性を示すだけでなく、付着した硫黄の脱離も促進され、高い耐熱性と耐硫黄被毒性を示す。これらの観点から、前記第一の触媒担体中のセリアの担持量としては、前記第一のAZT複合酸化物100質量部に対して1〜8質量部が好ましく、2〜7質量部がより好ましい。
【0023】
また、本発明の排ガス浄化用触媒及びNOx吸蔵還元型触媒において、前記第一の触媒担体中の前記第一のAZT複合酸化物の比表面積あたりのセリアの担持量としては、0.4〜5μmol/(m/g)が好ましく、0.7〜4μmol/(m/g)がより好ましく、1〜3.5μmol/(m/g)が特に好ましい。前記第一のAZT複合酸化物の比表面積あたりのセリアの担持量が前記下限未満になると、高温に晒された場合に、第一の触媒担体の表面に担持された第一の貴金属の粒成長が抑制されにくく、触媒活性及びNOx浄化活性が低下する傾向にある。他方、前記第一のAZT複合酸化物の比表面積あたりのセリアの担持量が前記上限を超えると、貴金属をメタル化(活性化)するために、余剰な還元剤が必要となり、燃費悪化を招く傾向にあるばかりか、前記第一のAZT複合酸化物の表面に高分散でセリアを担持することが困難となる傾向にある。
【0024】
本発明の排ガス浄化用触媒を濃硝酸と濃塩酸との混合液に一定時間浸漬し、前記排ガス浄化用触媒中の全セリウム量に対する溶出したセリウムの割合(Ce溶出率)を測定することによって、前記触媒担体表面のセリアの分散状態を把握することができる。具体的には、排ガス浄化用触媒1gを、濃硝酸と濃塩酸とを1:3の体積比で含有する混合液10mlに添加して1時間静置した後、ろ過し、得られたろ液について誘導結合プラズマ(ICP)発光分析を行い、セリウム溶出量を測定する。また、排ガス浄化用触媒1gを濃硝酸と濃塩酸とを1:3の体積比で含有する混合液10mlに全量溶解し、ICP発光分析により排ガス浄化用触媒中の全セリウム量を測定する。このようにして得られるセリウム溶出量及び全セリウム量から、Ce溶出率(セリウム溶出量/全セリウム量×100)を算出する。本発明の排ガス浄化用触媒及びNOx吸蔵還元型触媒において、前記Ce溶出率としては、10%以上が好ましく、15%以上がより好ましく、20%以上が特に好ましい。Ce溶出率が前記範囲内にあることは、AZT複合酸化物の表面をセリアが所定の担持量で高分散に被覆していることを意味する。なお、前記Ce溶出率の上限としては特に制限はないが、50%以下が好ましい。
【0025】
本発明の排ガス浄化用触媒及びNOx吸蔵還元型触媒における前記第一の触媒中の第一の貴金属としては、Pt、Pd、Rh等の白金族元素、Au、Agが挙げられるが、高い触媒活性及び高いNOx浄化活性が得られるという観点から、白金族元素が好ましく、Pt、Pdがより好ましく、Ptが特に好ましい。このような貴金属は、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、このような前記第一の触媒中の第一の貴金属の担持量は、前記第一の触媒担体100質量部に対してメタル換算で0.05〜5.0質量部である。前記第一の触媒中の第一の貴金属の担持量が前記下限未満になると、高い触媒活性及び高いNOx浄化活性が得られない。他方、前記第一の触媒中の第一の貴金属の担持量が前記上限を超えると、第一の貴金属の粒成長を抑制することが困難となり、貴金属量当たりの触媒活性及びNOx浄化活性が低下する。よって、高い触媒活性及び高いNOx浄化活性が得られ、また、高温に晒された場合でも、第一の触媒担体の表面に担持された第一の貴金属の粒成長が十分に抑制されて、貴金属量当たりの触媒活性及びNOx浄化活性を維持できるという観点から、前記第一の触媒中の第一の貴金属の担持量としては、前記第一の触媒担体100質量部に対してメタル換算で0.1〜3質量部が好ましく、0.2〜2.5質量部がより好ましく、0.25〜2質量部が特に好ましい。
【0026】
また、本発明の排ガス浄化用触媒及びNOx吸蔵還元型触媒において、貴金属とセリウムとの相互作用の観点から、前記第一の触媒中のセリウムと第一の貴金属とのモル比(Ce/第一の貴金属)としては、0.5〜10が好ましく、1〜8がより好ましく、2〜7が特に好ましい。前記第一の触媒中のセリウムと第一の貴金属とのモル比が前記下限未満になると、高温に晒された場合に、第一の触媒担体の表面に担持された第一の貴金属の粒成長が抑制されにくく、触媒活性及びNOx浄化活性が低下する傾向にある。他方、前記第一の触媒中のセリウムと第一の貴金属とのモル比が前記上限を超えると、貴金属をメタル化(活性化)するための還元剤がセリアの還元に伴う酸素放出に消費される傾向にあり、燃費が悪化する傾向にある。
【0027】
本発明の排ガス浄化用触媒においては、前記第一の触媒1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、本発明の排ガス浄化用触媒は、アルミナ、ジルコニア及びチタニアからなる第二の複合酸化物(以下、「第二のAZT複合酸化物」と略す)を含有し、セリアを含有していない第二の触媒担体及び該第二の触媒担体の表面に担持された第二の貴金属を含有する第二の触媒と併用してもよい。前記第一の触媒と前記第二の触媒とを併用する場合、高い触媒活性が得られるという観点から、前記第一の触媒の含有量としては、前記第一の触媒と前記第二の触媒との合計量100質量%に対して、5〜95質量%が好ましく、10〜90質量%がより好ましい。
【0028】
また、本発明のNOx吸蔵還元型触媒は、本発明の排ガス浄化用触媒と、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種のNOx吸蔵材とを含有するものである。本発明のNOx吸蔵還元型触媒においては、前記排ガス浄化用触媒として、前記第一の触媒1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよいし、また、前記第一の触媒1種又は2種以上からなる本発明の排ガス浄化用触媒と、前記第二の触媒とを併用してもよい。前記第一の触媒と前記第二の触媒とを併用する場合、高いNOx浄化活性が得られるという観点から、前記第一の触媒の含有量としては、前記第一の触媒と前記第二の触媒との合計量100質量%に対して、5〜95質量%が好ましく、10〜90質量%がより好ましい。
【0029】
本発明の排ガス浄化用触媒及びNOx吸蔵還元型触媒において、前記第二のAZT複合酸化物としては、第一のAZT複合酸化物と、アルミナ、ジルコニア、チタニアの割合が同じものであっても、異なるものであってもよい。また、前記第二の貴金属としては、前記第一の貴金属として例示したものが挙げられるが、高いNOx浄化活性が得られるという観点から、白金族元素が好ましく、Pt、Pd、Rhがより好ましい。このような貴金属は、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、前記第二の貴金属としては、第一の貴金属と同じものであっても、異なるものであってもよい。このような前記第二の触媒中の第二の貴金属の担持量としては、前記第二の触媒担体100質量部に対してメタル換算で0.05〜5.0質量部が好ましく、0.1〜3質量部がより好ましく、0.2〜2.5質量部が更に好ましく、0.25〜2質量部が特に好ましい。前記第二の触媒中の第二の貴金属の担持量が前記下限未満になると、高い触媒活性及び高いNOx浄化活性が得られない傾向にある。他方、前記第二の触媒中の第二の貴金属の担持量が前記上限を超えると、第二の貴金属の粒成長をが進行し、触媒活性及びNOx浄化活性の低下を抑制することが困難となる傾向にある。
【0030】
本発明のNOx吸蔵還元型触媒におけるNOx吸蔵材としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属、バリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム等のアルカリ土類金属が挙げられる。このようなNOx吸蔵材は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。本発明のNOx吸蔵還元型触媒においては、高いNOx吸蔵能を発現する観点から、バリウムが含まれていることが好ましい。
【0031】
また、前記NOx吸蔵材は、前記第一の触媒の表面に担持されていることが好ましく、前記第一の触媒と前記第二の触媒とを併用している場合には、これらの少なくとも一方(より好ましくは両方)の触媒の表面に担持されていることが好ましい。これらにより、NOx浄化活性が向上する。
【0032】
このようなNOx吸蔵材の含有量としては、前記第一の触媒(前記第二の触媒と併用している場合には、これらの合計)100gあたり、0.01〜0.3molが好ましく、0.03〜0.2molがより好ましく、0.05〜0.15molが特に好ましい。NOx吸蔵材の含有量が前記下限未満になると、高いNOx吸蔵性能が得られない傾向にある。他方、NOx吸蔵材の含有量が前記上限を超えると、高分散に担持させることが困難となる傾向にある。
【0033】
本発明にかかる前記第一及び第二のAZT複合酸化物としては、アルミナとジルコニアとチタニアの複合酸化物がナノレベルで混合しているものが挙げられる。また、前記AZT複合酸化物においては、チタニアの一部がアルミナにも固溶していることが好ましい。これにより、アルミナやジルコニアへの硫黄酸化物の付着が抑制されるとともに、アルミナやジルコニアに付着した硫黄酸化物が脱離しやすくなり、NOx吸蔵還元型触媒の耐硫黄被毒性が向上する。
【0034】
前記AZT複合酸化物におけるアルミナの含有量としては、前記AZT複合酸化物100質量%に対して30〜70質量%が好ましく、40〜60質量%がより好ましい。アルミナの含有量が前記下限未満になると、アルミナがジルコニア−チタニア固溶体の拡散障壁として作用しにくくなり、排ガス浄化用触媒の耐熱性が低下する傾向にある。他方、アルミナの含有量が前記上限を超えると、NOx吸蔵還元型触媒の耐硫黄被毒性が低下する傾向にある。
【0035】
また、前記AZT複合酸化物において、ジルコニアとチタニアの合計量(ジルコニア−チタニア固溶体の場合にはその質量)に対するチタニアの割合としては、20〜60mol%が好ましく、30〜50mol%がより好ましい。チタニアの割合が前記下限未満になると、NOx吸蔵還元型触媒の耐硫黄被毒性が低下する傾向にある。他方、チタニアの割合が前記上限を超えると、排ガス浄化用触媒の耐熱性が低下する傾向にある。
【0036】
なお、アルミナの含有量及びチタニアの割合が前記範囲内にあるAZT複合酸化物中のアルミナ、ジルコニア及びチタニアのモル比は、最も広い範囲がアルミナ/ジルコニア/チタニア=29.9〜71.6/15.0〜47.8/8.5〜35.0(mol%)であり、最も狭い範囲がアルミナ/ジルコニア/チタニア=39.9〜61.9/20.1〜40.7/11.4〜30.1(mol%)である。
【0037】
このようなAZT複合酸化物は、例えば、特開2004−321847号公報に記載された方法により調製することができる。具体的には、アルミニウム塩(例えば、硝酸アルミニウム)とジルコニウム塩(例えば、オキシ硝酸ジルコニル)とチタニウム塩(例えば、四塩化チタン)とを含有する溶液(好ましくは、水溶液)を用いて共沈法により沈殿物を生成させ、得られた沈殿物を焼成することによってAZT複合酸化物が得られる。また、得られたAZT複合酸化物にチタニア前駆体(例えば、チタンアルコキシド)を担持して焼成し、チタニアの一部をアルミナやジルコニアに固溶させることによって、耐硫黄被毒性に優れたNOx吸蔵還元型触媒を得ることができる。
【0038】
次に、本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法について説明する。本発明の排ガス浄化用触媒は、例えば、アルミナ、ジルコニア及びチタニアからなる第一の複合酸化物(第一のAZT複合酸化物)に、原料セリウム塩を溶解した溶液(以下、「セリア前駆体溶液」という)を含浸させた後、加熱処理を施して、前記第一のAZT複合酸化物の表面に所定量のセリアが担持した第一の触媒担体を得る工程と、前記第一の触媒担体の表面に所定量の第一の貴金属を担持させて第一の触媒を得る工程と、を含む方法によって製造することができる。
【0039】
本発明の排ガス浄化用触媒を製造する際に用いられる原料セリウム塩としては、酢酸セリウム、硝酸セリウム等が挙げられる。この原料セリウム塩を溶解する溶媒としては水が挙げられる。また、前記セリア前駆体溶液には、多座配位子を有する化合物が含まれていてもよい。さらに、原料セリウム塩を水溶液中に確実に溶解するために、適量のアンモニア水を添加してもよい。ここで、多座配位子とは、2個以上の配位基により配位し得るものをいう。このような多座配位子を有する化合物を前記セリア前駆体溶液に添加することによって、原料セリウム塩の溶解度を高めることができる。多座配位子を有する化合物としては、クエン酸、シュウ酸等の多価カルボン酸類、グリコール、ピナコール等のジオール類、エチレンジアミン等のジアミン類、アセト酢酸エチル等の2つのカルボニル基を有するエステル類等が挙げられる。これらのうち、クエン酸、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、リンゴ酸、アジピン酸、酒石酸、マロン酸、フマル酸、アコニット酸、グルタル酸、エチレンジアミン四酢酸、乳酸、グリコール酸、グリセリン酸、サリチル酸、メバロン酸、エチレンジアミン、アセト酢酸エチル、マロン酸エステル、グリコール及びピナコールが好ましく、ヒドロキシ基を併せ持つカルボン酸であるという観点から、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、グリコール酸、サリチル酸がより好ましい。なお、多座配位子を有する化合物は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。前記セリア前駆体溶液において、多座配位子を有する化合物の含有量としては、原料セリウム塩の等モル当量以上が好ましい。
【0040】
前記AZT複合酸化物に前記セリア前駆体溶液を含浸させる方法としては特に制限はないが、前記セリア前駆体溶液中に前記AZT複合酸化物を浸漬する方法が好ましい。このようにしてセリア前駆体溶液を含浸させた前記AZT複合酸化物に、必要に応じて乾燥処理を施した後、大気中で加熱処理を施すことによって、前記AZT複合酸化物の表面にセリアが担持された、本発明にかかる触媒担体(セリア担持AZT複合酸化物)が得られる。加熱温度としては200〜800℃が好ましく、加熱時間としては1〜10時間が好ましい。
【0041】
本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法において、前記第一の触媒担体の表面に貴金属を担持させる方法としては特に制限はなく、公知の方法を適用することができる。例えば、貴金属の塩(例えば、ジニトロジアンミン塩)や錯体(テトラアンミン錯体)を含有する溶液(好ましくは、水溶液)を前記第一の触媒担体に含浸させた後、乾燥、焼成することによって、第一の触媒担体の表面に貴金属が担持した第一の触媒を得ることができる。前記貴金属を含有する溶液中の貴金属の濃度は、貴金属担持量及びAZT複合酸化物による前記貴金属を含有する溶液の含浸量に応じて適宜調整される。
【0042】
また、本発明の排ガス浄化用触媒と併用してもよい前記第二の触媒は、例えば、アルミナ、ジルコニア及びチタニアからなる第二の複合酸化物(第二のAZT複合酸化物)を含有し、セリアを含まない第二の触媒担体の表面に第二の貴金属を担持させて第二の触媒を得る工程を含む方法によって製造することができる。前記第二の触媒担体の表面に貴金属を担持させる方法としては特に制限はなく、前記第一の触媒担体の表面に貴金属を担持させる方法と同様の方法が挙げられる。
【0043】
次に、本発明のNOx吸蔵還元型触媒の製造方法について説明する。本発明のNOx吸蔵還元型触媒は、例えば、前記第一の触媒1種又は2種以上からなる本発明の排ガス浄化用触媒と、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される少なくとも1種のNOx吸蔵材とを混合(例えば、粉末混合)することによって製造することができる。NOx浄化活性が向上するという観点から、例えば、前記第一の触媒1種又は2種以上からなる本発明の排ガス浄化用触媒に、前記NOx吸蔵材を含有する溶液(好ましくは水溶液)を含浸させた後、乾燥、焼成して、前記第一の触媒の表面にNOx吸蔵材を担持させることによって製造することが好ましい。
【0044】
さらに、本発明のNOx吸蔵還元型触媒において、前記第一の触媒と前記第二の触媒とを併用する場合には、例えば、前記第一の触媒と前記第二の触媒との混合物と、前記NOx吸蔵材とを混合(例えば、粉末混合)してもよいが、NOx浄化活性が向上するという観点から、例えば、前記第一の触媒及び前記第二の触媒の少なくとも一方(より好ましくは両方)の触媒に前記NOx吸蔵材を含有する溶液(好ましくは水溶液)を含浸させた後、乾燥、焼成して、前記第一の触媒及び前記第二の触媒の少なくとも一方(より好ましくは両方)の触媒の表面に前記NOx吸蔵材を担持させることが好ましい。
【0045】
前記NOx吸蔵材を含有する溶液は、アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物のうちの少なくとも1種の金属化合物を含有する溶液であり、前記アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属の水酸化物、酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩等が挙げられ、前記アルカリ土類金属化合物としては、アルカリ土類金属の水酸化物、酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩等が挙げられる。このようなアルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物は、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。前記NOx吸蔵材を含有する溶液中のNOx吸蔵材の濃度は、NOx吸蔵材の担持量及びAZT複合酸化物によるNOx吸蔵材を含有する溶液の含浸量に応じて適宜調整される。
【0046】
また、前記第一の触媒及び前記第二の触媒の両方の触媒の表面に前記NOx吸蔵材を担持させる場合、前記第一の触媒の表面に前記NOx吸蔵材を担持し、また、前記第二の触媒の表面に前記NOx吸蔵材を担持した後、これらを混合してもよいし、前記第一の触媒と前記第二の触媒とを混合した後、この混合物に前記NOx吸蔵材を含有する溶液を含浸させた後、乾燥、焼成してもよい。
【0047】
このような本発明の排ガス浄化用触媒又はNOx吸蔵還元型触媒に排ガスを接触せしめることによって、排ガスを浄化することができる。本発明の排ガス浄化用触媒は、高い耐熱性を有することから、高温に晒される環境下での排ガスの浄化に適している。また、本発明のNOx吸蔵還元型触媒は、硫黄成分を含む排ガスの浄化処理においても、少量の還元剤で硫黄成分(硫黄酸化物等)を分解脱離させることができるため、窒素化合物や硫黄酸化物を含み、酸素が過剰に存在する排ガス、例えば、自動車の内燃機関等から出される排ガス等の浄化に適している。
【実施例】
【0048】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、セリアの担持量及び溶出率、貴金属担持量、並びにバリウム担持量は以下の方法により測定した。
【0049】
(1)セリア担持量及び貴金属担持量
触媒1gを濃硝酸と濃塩酸とを1:3の体積比で含有する混合液10ml中にに全量溶解し、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により各元素の含有量を求めた。この元素含有量に基づいて、AZT複合酸化物の質量をAlとZrOとTiOの合計質量に換算して求め、また、セリアの質量をCeOの質量に換算して求め、AZT複合酸化物100質量部に対するセリア担持量を算出した。さらに、触媒担体(セリア担持AZT複合酸化物)の質量をAlとZrOとTiOとCeOの合計質量に換算して求め、また、貴金属の質量をメタル換算で求め、触媒担体100質量部に対する貴金属担持量を算出した。
【0050】
(2)Ce溶出率
触媒1gを、濃硝酸と濃塩酸とを1:3の体積比で含有する混合液10ml中に添加して1時間静置した後、ろ過した。得られたろ液についてICP発光分析を行い、溶出した各元素の量を求めた。得られたCe溶出量を、前記(1)においてICP発光分析により求めた全量溶解時のCe含有量で除して、触媒中の全Ce量に対する溶出試験によって溶出したCe量の割合(Ce溶出率)を求めた。
【0051】
(3)バリウム担持量
酢酸バリウム水溶液の触媒への含浸量から触媒中のバリウム担持量を求めた。
【0052】
(調製例1)
硝酸アルミニウム・九水和物441.2gと18質量%のオキシ硝酸ジルコニル溶液233.3gと四塩化チタン65.4gとをイオン交換水2000mlに添加して撹拌し、さらに、30質量%の過酸化水素水154gを添加した。得られた水溶液を25質量%のアンモニア水456gで中和して共沈法により沈殿物を調製した。得られた沈殿物を溶媒(水)とともに2気圧下、120℃の雰囲気下に2時間保持して熟成させた。次いで、沈殿物を遠心分離によって回収した後、150℃で7時間仮焼し、その後、大気中、400℃で5時間焼成し、さらに、800℃で5時間焼成してAZT複合酸化物を得た。このAZT複合酸化物を湿式ボールミルを用いてメジアン径D50が22.5μmの粉末に粉砕した。
【0053】
このAZT複合酸化物粉末の組成は、ICP発光分析による各元素含有量から求めた質量比でAl:ZrO:TiO=50:35:15であり、AZT複合酸化物100質量%に対するアルミナの含有量は50質量%であり、ジルコニアとチタニアの合計量に対するチタニアの割合は39.8mol%であった。また、AZT複合酸化物粉末の比表面積をBET法により求めたところ、112.5m/gであった。
【0054】
(実施例1)
調製例1で得られたAZT複合酸化物粉末にセリア前駆体溶液を含浸させ、その後、乾燥処理及び加熱処理を行い、AZT複合酸化物粉末の表面にセリアが担持された触媒担体(セリア担持AZT複合酸化物粉末)を調製した。具体的には、先ず、所定量の酢酸セリウムとその3.9倍当量のクエン酸とを所定量のイオン交換水に添加し、さらに25質量%のアンモニア水を添加して酢酸セリウムを溶解し、セリア前駆体溶液を調製した。このセリア前駆体溶液をAZT複合酸化物粉末に含浸させた。セリア前駆体溶液中のCe濃度は、前記AZT複合酸化物粉末100質量部にセリア前駆体溶液を含浸させた際に、セリアの担持量が0.7質量部となるように設定した。次に、セリア前駆体溶液含浸AZT複合酸化物粉末を110℃で乾燥し、さらに室温から500℃まで100℃/時間で昇温した後、500℃で2時間保持してAZT複合酸化物粉末の表面にセリアが担持された触媒担体(セリア担持AZT複合酸化物粉末)を得た。この触媒担体のBET比表面積は113.6m/gであった。
【0055】
次に、この触媒担体を、ジニトロジアンミン白金水溶液(Pt濃度:4.538質量%)をイオン交換水で希釈した水溶液に浸漬することによって前記触媒担体にPtを吸着させた。得られたPt吸着触媒担体を110℃で乾燥し、さらに室温から500℃まで100℃/時間で昇温した後、500℃で2時間保持して前記触媒担体の表面にPtが担持された排ガス浄化用触媒を得た。この排ガス浄化用触媒を圧粉して直径0.5〜1mmの破砕ペレットを得た。
【0056】
この排ガス浄化用触媒におけるAZT複合酸化物粉末100質量部に対するセリア担持量、AZT複合酸化物の比表面積あたりのセリア担持量、Ce溶出率、触媒担体100質量部に対するPt担持量、及びCeとPtのモル比(Ce/Pt)を表1に示す。
【0057】
(実施例2)
調製例1で得られたAZT複合酸化物粉末100質量部にセリア前駆体溶液を含浸させた際に、セリアの担持量が2.6質量部となるように、セリア前駆体溶液中のCe濃度を変更した以外は、実施例1と同様にして、セリア担持AZT複合酸化物粉末からなる触媒担体の表面にPtが担持された排ガス浄化用触媒を調製した。なお、触媒担体のBET比表面積は113.1m/gであった。得られた排ガス浄化用触媒の物性を表1に示す。
【0058】
(実施例3)
調製例1で得られたAZT複合酸化物粉末100質量部にセリア前駆体溶液を含浸させた際に、セリアの担持量が4.2質量部となるように、セリア前駆体溶液中のCe濃度を変更した以外は、実施例1と同様にして、セリア担持AZT複合酸化物粉末からなる触媒担体の表面にPtが担持された排ガス浄化用触媒を調製した。なお、触媒担体のBET比表面積は112m/gであった。得られた排ガス浄化用触媒の物性を表1に示す。
【0059】
(実施例4)
調製例1で得られたAZT複合酸化物粉末100質量部にセリア前駆体溶液を含浸させた際に、セリアの担持量が7.0質量部となるように、セリア前駆体溶液中のCe濃度を変更した以外は、実施例1と同様にして、セリア担持AZT複合酸化物粉末からなる触媒担体の表面にPtが担持された排ガス浄化用触媒を調製した。なお、触媒担体のBET比表面積は108.8m/gであった。得られた排ガス浄化用触媒の物性を表1に示す。
【0060】
(実施例5)
調製例1で得られたAZT複合酸化物粉末100質量部にセリア前駆体溶液を含浸させた際に、セリアの担持量が9.3質量部となるように、セリア前駆体溶液中のCe濃度を変更した以外は、実施例1と同様にして、セリア担持AZT複合酸化物粉末からなる触媒担体の表面にPtが担持された排ガス浄化用触媒を調製した。なお、触媒担体のBET比表面積は109.8m/gであった。得られた排ガス浄化用触媒の物性を表1に示す。
【0061】
(実施例6)
所定量の硝酸セリウムをイオン交換水に溶解した溶液をセリア前駆体溶液として使用した以外は、実施例3と同様にして、セリア担持AZT複合酸化物粉末からなる触媒担体の表面にPtが担持された排ガス浄化用触媒を調製した。なお、触媒担体のBET比表面積は115m/gであった。得られた排ガス浄化用触媒の物性を表1に示す。
【0062】
(実施例7)
ジニトロジアンミン白金水溶液の代わりに、ジニトロジアンミン白金水溶液(Pt濃度:4.538質量%)とジニトロジアンミンパラジウム水溶液(Pd濃度:4.5質量%)を使用した以外は、実施例3と同様にして、セリア担持AZT複合酸化物粉末からなる触媒担体の表面にPt及びPdが担持された排ガス浄化用触媒を調製した。なお、触媒担体のBET比表面積は112m/gであった。得られた排ガス浄化用触媒の物性を表1に示す。
【0063】
(比較例1)
AZT複合酸化物粉末の表面にセリアが担持された触媒担体の代わりに、調製例1で得られたAZT複合酸化物粉末を触媒担体として用いた以外は、実施例1と同様にして、AZT複合酸化物粉末の表面にPtが担持された触媒を調製した。得られた触媒の物性を表1に示す。
【0064】
(比較例2)
ジニトロジアンミン白金水溶液の代わりに、ジニトロジアンミン白金水溶液(Pt濃度:4.538質量%)とジニトロジアンミンパラジウム水溶液(Pd濃度:4.5質量%)を使用した以外は、比較例1と同様にして、調製例1で得られたAZT複合酸化物粉末の表面にPt及びPdが担持された触媒を調製した。得られた触媒の物性を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
表1に示した結果から明らかなように、AZT複合酸化物100質量部に対するセリア担持量が増加するにつれて、Ce溶出率が徐々に低下した。これは、セリア担持量が増加すると、セリアの分散度が低下することに対応しており、AZT複合酸化物の表面を改質するという観点から、セリア担持量には上限が存在することを意味している。すなわち、AZT複合酸化物表面において、セリア担持量の増加による効果を発現させつつ、高分散にセリアを担持させるためには、セリア担持量を適正な範囲に制御する必要があることがわかった。
【0067】
<熱耐久試験(1)>
得られた触媒2gを石英管に充填し、リーンガス〔O(7%)/NO(400ppm)/CO(0.01%)/C(0.06%)/CO(11%)/HO(3%)/N(残部)〕とリッチガス〔NO(400ppm)/H(2%)/CO(6%)/C(0.32%)/CO(11%)/HO(3%)/N(残部)〕とをリーン/リッチ=11分/1分の間隔で交互に切り替えながら500ml/分で流通させ、室温から750℃まで1時間かけて昇温した後、750℃で5時間保持し、その後、室温まで放冷した。
【0068】
<X線回折測定>
熱耐久試験(1)後の触媒について、粉末X線回折装置((株)リガク製「試料水平型多目的X線回折装置Ultima IV R285」)を用い、X線源:CuKα線(λ=0.154nm)、加速電圧:40kV、加速電流:40mAの条件で粉末X線回折(XRD)測定を行なった。得られたXRDパターンのPt(111)に由来する回折ピークの強度及びその半値幅より算出したPt粒子径を表2に示す。
【0069】
<触媒性能評価試験(1)>
熱耐久試験(1)後の触媒を固定床流通装置に設置した。触媒量は、比較例1の触媒については1gとし、その他の触媒(実施例1〜5)については、比較例1の触媒とPt量が等しくなる量とした。この触媒にモデルガス〔CO(800ppm)/O(10%)/CO(10%)/HO(3%)/N(残部)〕を5L/分で流通させながら20℃/分で昇温してCOが50%浄化された時点の触媒温度を測定した。その結果を表2に示す。
【0070】
一方、上記と同様に、熱耐久試験(1)後の触媒を固定床流通装置に設置した。この触媒に還元ガス〔H(1%)/CO(10%)/HO(3%)/N2(残部)〕を入りガス温度400℃で10分間流通させて還元前処理を行なった。この還元前処理後の触媒について、上記と同様にモデルガスを流通させながら昇温してCOが50%浄化された時点の触媒温度を測定した。その結果を表2に示す。
【0071】
<触媒性能評価試験(2)>
上記触媒性能評価試験(1)と同様に、熱耐久試験(1)後の触媒を固定床流通装置に設置した。この触媒に入りガス温度400℃、ガス流量5L/分で、O含有ガス〔O(1%)/N(残部)〕、Nガス、CO含有ガス〔CO(1%)/N(残部)〕、及びNガスを、O含有ガス/Nガス/CO含有ガス/Nガス=60秒/20秒/60秒/20秒の間隔で繰り返し流通させ、CO導入時に生成するCO量を測定して酸素吸蔵量(OSC量)を算出した。その結果を表2に示す。
【0072】
【表2】
【0073】
表2に示した結果から明らかなように、セリア担持量が増加するにつれて、Pt(111)に由来する回折ピークの強度が弱くなり、また、前記回折ピークの半値幅から算出したPt粒子径が小さくなった(実施例1〜5)。このことから、AZT複合酸化物粉末の表面に高分散に担持されているセリアのアンカー効果によって貴金属(Pt)の粒成長が抑制されたことがわかった。すなわち、Pt粒成長を抑制するという観点から、Pt担持量に見合う適正な量のセリアを担持させる必要があることがわかった。また、セリア前駆体の種類を変更した場合(実施例3及び実施例6)でも、セリアを含まない触媒担体を用いた場合(比較例1)に比べてPtの粒子径が小さくなり、セリアの添加により貴金属(Pt)の粒成長が抑制されることがわかった。さらに、貴金属としてPtとPdを担持した場合でも、AZT複合酸化物粉末の表面にセリアが担持された触媒担体を用いた場合(実施例7)には、セリアを含まない触媒担体を用いた場合(比較例2)に比べてPt及びPdの粒子径が小さくなり、セリアの添加により貴金属(Pt及びPd)の粒成長が抑制されることがわかった。
【0074】
また、熱耐久試験(1)直後のCO50%浄化温度は、セリア担持量が増加するにつれて低くなり(実施例1〜5、比較例1)、貴金属の粒成長が抑制されたことによって触媒活性の劣化が抑制されることがわかった。さらに、還元前処理後のCO50%浄化温度は、熱耐久試験(1)直後のCO50%浄化温度に比べて低くなり(実施例1〜5、比較例1)、還元前処理によって触媒活性が向上することがわかった。これは、還元前処理によって活性サイトである貴金属がメタル化したことによると考えられる。
【0075】
一方、セリア担持量が増加すると、OSC量が増加しており(実施例1〜5、比較例1)、貴金属をメタル化するために還元剤を投入する必要があることがわかった。リーンバーン雰囲気下に晒された触媒において、貴金属等の活性種を十分にメタル化するためには還元剤を投入する必要があるが、還元剤の投入は燃費の低下を招くおそれがある。このため、触媒の耐久性の向上と燃費悪化の抑制を両立させるためには適切なセリア担持量を選択する必要があることがわかった。ただし、実施例5で得られたOSC量は、それが排ガス浄化用触媒中のセリアに全て起因したものであると仮定しても、理論上得られるはずのOSC量の約1/4であり、CO導入後10秒間のOSC量は約1/10であった。
【0076】
(調製例2)
調製例1で得られたAZT複合酸化物粉末を硝酸ロジウム水溶液(Rh濃度:2.75質量%)に浸漬して前記AZT複合酸化物粉末にRhを吸着させた。得られたRh吸着AZT複合酸化物粉末を110℃で乾燥し、さらに室温から500℃まで100℃/時間で昇温した後、500℃で2時間保持して前記AZT複合酸化物粉末の表面にRhが担持した触媒(Rh担持AZT複合酸化物粉末)を得た。この触媒におけるRh担持量は、前記AZT複合酸化物粉末100質量部に対して1質量部であった。
【0077】
(実施例8)
熱耐久試験(1)後の実施例1の排ガス浄化用触媒(Pt担持セリア含有AZT複合酸化物粉末)と調製例2で得られた触媒(Rh担持AZT複合酸化物粉末)との混合物に酢酸バリウム水溶液を含浸させ、その後、乾燥処理及び加熱処理を行い、前記Pt担持セリア含有AZT複合酸化物粉末及び前記Rh担持AZT複合酸化物粉末の表面にNOx吸蔵材としてのバリウムを担持させたNOx吸蔵還元型触媒(以下、「NSR(NOx−Storage and Reduction)触媒」と略す)を調製した。具体的には、先ず、熱耐久試験(1)後の実施例1の排ガス浄化用触媒3.03gと調製例2で得られた触媒0.43gとを粉末混合し、得られた混合物に0.85gの酢酸バリウムを含む酢酸バリウム水溶液を含浸させた。その後、110℃で乾燥処理を行い、さらに室温から500℃まで100℃/時間で昇温した後、500℃で2時間保持してNSR触媒を得た。このNSR触媒を圧粉して直径0.5〜1mmの破砕ペレットを得た。このNSR触媒におけるBa担持量は、熱耐久試験(1)後の実施例1の排ガス浄化用触媒と調製例2で得られた触媒との混合物100gに対して0.096molであった。
【0078】
(実施例9)
熱耐久試験(1)後の実施例1の排ガス浄化用触媒の代わりに熱耐久試験(1)後の実施例3の排ガス浄化用触媒3.15g(実施例8とPt担持量が等しい触媒量)を使用した以外は実施例8と同様にして、NSR触媒を調製した。このNSR触媒におけるBa担持量は、熱耐久試験(1)後の実施例3の排ガス浄化用触媒と調製例2で得られた触媒との混合物100gに対して0.093molであった。
【0079】
(実施例10)
熱耐久試験(1)後の実施例1の排ガス浄化用触媒の代わりに熱耐久試験(1)後の実施例4の排ガス浄化用触媒3.22g(実施例8とPt担持量が等しい触媒量)を使用した以外は実施例8と同様にして、NSR触媒を調製した。このNSR触媒におけるBa担持量は、熱耐久試験(1)後の実施例4の排ガス浄化用触媒と調製例2で得られた触媒との混合物100gに対して0.091molであった。
【0080】
(実施例11)
熱耐久試験(1)後の実施例1の排ガス浄化用触媒の代わりに熱耐久試験(1)後の実施例5の排ガス浄化用触媒3.29g(実施例8とPt担持量が等しい触媒量)を使用した以外は実施例8と同様にして、NSR触媒を調製した。このNSR触媒におけるBa担持量は、熱耐久試験(1)後の実施例5の排ガス浄化用触媒と調製例2で得られた触媒との混合物100gに対して0.089molであった。
【0081】
(比較例3)
熱耐久試験(1)後の実施例1の排ガス浄化用触媒の代わりに熱耐久試験(1)後の比較例1の触媒3g(実施例8とPt担持量が等しい触媒量)を使用した以外は実施例8と同様にして、NSR触媒を調製した。このNSR触媒におけるBa担持量は、熱耐久試験(1)後の比較例1の触媒と調製例2で得られた触媒との混合物100gに対して0.097molであった。
【0082】
<触媒性能評価試験(3)>
NSR触媒を固定床流通装置に設置した。触媒量は、比較例3のNSR触媒については1gとし、その他のNSR触媒(実施例8〜11)については、比較例3のNSR触媒とPt量及びBa量が等しくなる量とした。このNSR触媒に入りガス温度300℃又は400℃で、リーンモデルガス〔NO(400ppm)/C(100ppmC)/O(5.5%)/CO(10%)/HO(5%)/N(残部)〕とリッチモデルガス〔NO(400ppm)/CO(3%)/H(1%)/C(500ppmC)/CO(10%)/HO(5%)/N(残部)〕とをリーン/リッチ=60秒/3秒の間隔で交互に切り替えながら5L/分で流通させ、この切り替えを10サイクル実施し、入りガス及び出ガスのNOx濃度を測定して、後半3サイクルの平均NOx転化率を求めた。その結果を表3に示す。
【0083】
<触媒性能評価試験(4)>
前記リーンモデルガス及び前記リッチモデルガスにそれぞれ37ppmのSOを共存させたリーンモデルガスとリッチモデルガスとを、前記触媒性能評価試験(3)に引き続いて、リーン/リッチ=60秒/3秒の間隔で交互に切り替えながら前記NSR触媒に400℃、5L/分で流通させ、この切り替えを40サイクル実施し、入りガス中及び出ガス中のNOx濃度を測定して、最終サイクルにおけるNOx転化率を求めた。その結果を表3に示す。また、入りガス及び出ガスのSO濃度を測定してNSR触媒への硫黄付着量を求めた。
【0084】
<触媒性能評価試験(5)>
前記触媒性能評価試験(4)に引き続いて、前記NSR触媒に入りガス温度600℃でSOを含まないモデルガス〔CO(1300ppm)/H(900ppm)/C(100ppmC)/CO(10%)/HO(5%)/N(残部)〕を5L/分で流通させて弱リッチ雰囲気を形成し、10分間の硫黄脱離処理を行なった。このとき、出ガス中のSO濃度を経時的に測定し、硫黄脱離量及び硫黄脱離ピーク時間を求めた。この硫黄脱離量と前記触媒性能評価試験(4)で求めたNSR触媒への硫黄付着量とから前記硫黄脱離処理後のNSR触媒中の硫黄残存量を算出し、比較例3のNSR触媒における硫黄残存量に対する実施例8〜11のNSR触媒における硫黄残存量の割合を求めた。これらの結果を表3に示す。
【0085】
【表3】
【0086】
表3に示した結果から明らかなように、硫黄非共存下、入りガス温度が300℃及び400℃のいずれの場合においても、セリア担持量が増加するにつれて、より高いNOx転化性能を示した。これは、セリアの添加により貴金属(Pt)の粒成長が抑制され、リーン時のNOx吸蔵能が維持されたためと考えられる。
【0087】
また、硫黄共存下においても、セリア担持量が増加するにつれて、NOx転化率がより高くなり、より高い耐硫黄被毒性を示すことがわかった。これは、セリアの添加により貴金属(Pt)の粒成長が抑制され、貴金属(Pt)近傍のNOx吸蔵能が維持されたためと考えられる。
【0088】
さらに、セリアを含まないNSR触媒を用いた場合(比較例3)に比べて、セリアが担持された本発明のNSR触媒を用いた場合(実施例8〜11)には、600℃での硫黄脱離処理によって、NSR触媒中の硫黄残存量を低減できることがわかった。セリアが担持された本発明のNSR触媒(実施例8〜11)は、耐硫黄被毒性に優れているだけでなく、リッチ雰囲気に制御することによって硫黄被毒回復しやすい触媒であることがわかった。一方、セリア担持量が増加すると、硫黄脱離ピーク時間が遅れることがわかった。これは、NSR触媒のOSC性能により還元剤が無駄に消費されるためであり、硫黄被毒回復制御の観点では、セリア担持量を少なくすることが好ましいことがわかった。
【0089】
(実施例12)
調製例1で得られたAZT複合酸化物粉末100質量部にセリア前駆体溶液を含浸させた際に、セリアの担持量が5.0質量部となるように、セリア前駆体溶液中のCe濃度を変更した以外は、実施例1と同様にして、セリア担持AZT複合酸化物粉末からなる触媒担体の表面にPtが担持された排ガス浄化用触媒を調製した。得られた排ガス浄化用触媒のPt担持量は前記触媒担体100質量部に対して1.09質量部であり、CeとPtのモル比(Ce/Pt)は5.0であった。
【0090】
また、調製例1で得られたAZT複合酸化物粉末100質量部にセリア前駆体溶液を含浸させた際に、セリアの担持量が5.0質量部となるように、セリア前駆体溶液中のCe濃度を変更し、ジニトロジアンミン白金水溶液の代わりにジニトロジアンミンパラジウム水溶液(Pd濃度:4.5質量%)を使用した以外は、実施例1と同様にして、セリア担持AZT複合酸化物粉末からなる触媒担体の表面にPdが担持された排ガス浄化用触媒を調製した。得られた排ガス浄化用触媒のPd担持量は前記触媒担体100質量部に対して0.82質量部であり、CeとPdのモル比(Ce/Pd)は3.6であった。
【0091】
前記Ptが担持された排ガス浄化用触媒61gと前記Pdが担持された排ガス浄化用触媒30.5gと調製例2で得られた触媒13gとアルミナゾル10gとをイオン交換水に添加してスラリーを調製し、形成される触媒層の割合が8g/Lとなるように、前記スラリーを35ccのモノリス基材にコートし、250℃で乾燥して、9質量%の割合でアルミナを含む触媒層を形成した。その後、前記触媒層を担持した基材に酢酸バリウム水溶液を含浸させ、110℃で乾燥して、0.2mol/Lの割合でバリウムが担持されたNSR触媒テストピースを得た。
【0092】
(比較例4)
調製例1で得られたAZT複合酸化物粉末100質量部に対するPtとPdの合計担持量が1.0質量部となるように、ジニトロジアンミン白金水溶液とジニトロジアンミンパラジウム水溶液を含浸させた以外は、比較例2と同様にして、前記AZT複合酸化物粉末の表面にPt及びPdが担持された触媒(Pt−Pd担持AZT複合酸化物粉末)を調製した。
【0093】
実施例12で調製したPtが担持された排ガス浄化用触媒及びPdが担持された排ガス浄化用触媒の代わりに、前記Pt−Pd担持AZT複合酸化物粉末を91.5g使用して、PtとPdの合計担持量及びPtとPdとの比率を実施例12と等しくした以外は、実施例12と同様にして、バリウムが担持されたNSR触媒テストピースを得た。
【0094】
(比較例5)
調製例1で得られたAZT複合酸化物粉末100質量部にセリア前駆体溶液を含浸させた際に、セリアの担持量が15.0質量部となるように、セリア前駆体溶液中のCe濃度を変更し、触媒担体100質量部に対するPtとPdの合計担持量が1.0質量部となるように、ジニトロジアンミン白金水溶液とジニトロジアンミンパラジウム水溶液を含浸させた以外は、実施例7と同様にして、セリア担持AZT複合酸化物粉末からなる触媒担体の表面にPt及びPdが担持された触媒(Pt−Pd担持セリア含有AZT複合酸化物粉末)を調製した。得られた触媒のCeとPt及びPdとのモル比(Ce/〔Pt+Pd〕)は12.7であった。
【0095】
実施例12で調製したPtが担持された排ガス浄化用触媒及びPdが担持された排ガス浄化用触媒の代わりに、前記Pt−Pd担持セリア含有AZT複合酸化物粉末91.5gを使用して、PtとPdの合計担持量及びPtとPdとの比率を実施例12と等しくした以外は、実施例12と同様にして、バリウムが担持されたNSR触媒テストピースを得た。
【0096】
(比較例6)
前記AZT複合酸化物粉末の代わりに、アルミナとジルコニア−チタニア複合酸化物(チタニア含有量:30mol%、以下、「ZT複合酸化物」と略す)との混合粉末(アルミナ:ZT複合酸化物(質量比)=50:50)を使用し、この混合粉末100質量部にセリア前駆体溶液を含浸させた際に、セリアの担持量が5.3質量部となるように、セリア前駆体溶液中のCe濃度を変更し、触媒担体100質量部に対するPtとPdの合計担持量が1.0質量部となるように、ジニトロジアンミン白金水溶液とジニトロジアンミンパラジウム水溶液を含浸させた以外は、実施例7と同様にして、セリア担持混合粉末からなる触媒担体の表面にPt及びPdが担持された触媒(Pt−Pd担持セリア含有混合粉末)を調製した。得られた触媒のCeとPt及びPdとのモル比(Ce/〔Pt+Pd〕)は4.4であった。
【0097】
実施例12で調製したPtが担持された排ガス浄化用触媒及びPdが担持された排ガス浄化用触媒の代わりに、前記Pt−Pd担持セリア含有混合粉末91.5gを使用して、PtとPdの合計担持量及びPtとPdとの比率を実施例12と等しくした以外は、実施例12と同様にして、バリウムが担持されたNSR触媒テストピースを得た。
【0098】
<熱耐久試験(2)>
得られたNSR触媒テストピース1個を石英管に詰め、熱耐久試験(1)と同一組成のリーンガスとリッチガスとをリーン/リッチ=110秒/10秒の間隔交互に切り替えながら11L/分で流通させた以外は、前記熱耐久試験(1)と同様にして、熱耐久試験を行なった。
【0099】
<触媒性能評価試験(6)>
熱耐久試験(2)後のNSR触媒テストピース1個を固定床流通装置に設置した。このNSR触媒に入りガス温度400℃で、リーンモデルガス〔NO(400ppm)/SO(60ppm)/C(100ppmC)/O(5.5%)/CO(10%)/HO(5%)/N(残部)〕とリッチモデルガス〔NO(400ppm)/SO(60ppm)/CO(6%)/H(2%)/C(500ppmC)/CO(10%)/HO(5%)/N(残部)〕とをリーン/リッチ=60秒/3秒の間隔で交互に切り替えながら15L/分で流通させ、この切り替えを40サイクル実施した。
【0100】
<触媒性能評価試験(7)>
前記触媒性能評価試験(6)に引き続いて、前記NSR触媒に入りガス温度600℃でモデルガス〔CO(1300ppm)/H(900ppm)/C(100ppmC)/CO(10%)/HO(5%)/N(残部)〕を30L/分で流通させて弱リッチ雰囲気を形成し、10分間の硫黄脱離処理を行なった。
【0101】
前記触媒性能評価試験(6)及び(7)を4回繰り返し、触媒性能評価試験(6)の各回の1サイクル目と40サイクル目において、入りガス及び出ガスのNOx濃度を測定して硫黄共存下でのNOx転化率を算出した。また、前記触媒性能評価試験(6)において、入りガス及び出ガスのS濃度を測定してNSR触媒への硫黄付着量を求め、さらに、前記触媒性能評価試験(7)の硫黄脱離処理中に、出ガス中のS濃度を経時的に測定して硫黄脱離量を求め、この硫黄脱離量と前記NSR触媒への硫黄付着量とから前記硫黄脱離処理後のNSR触媒中の硫黄残存量を算出した。これらの結果を表4に示す。なお、NSR触媒中の硫黄残存量は、4回目の硫黄脱離処理後の結果を示した。
【0102】
【表4】
【0103】
表4に示したNOx転化率の結果から明らかなように、AZT複合酸化物の表面に所定量のセリアが担持されたNSR触媒(実施例12)は、2回目以降の触媒性能評価試験(6)の1サイクル目(硫黄脱離処理直後)のNOx処理において、NOx転化率がほぼ一定であり、安定したNOx転化性能を発揮することがわかった。このことから、本発明の排ガス浄化用触媒にNOx吸蔵材を担持した本発明のNOx吸蔵還元型触媒は、硫黄脱離処理により触媒性能が容易に回復することがわかった。また、2回目以降の触媒性能評価試験(6)の硫黄共存下での40サイクル目のNOx処理においても、NOx転化率はほぼ一定であり、本発明のNSR触媒は、繰り返し使用による劣化が抑制されていることがわかった。
【0104】
これに対して、セリアを含まないNSR触媒(比較例4)は、2回目以降の触媒性能評価試験(6)の1サイクル目(硫黄脱離処理直後)及び硫黄共存下での40サイクル目のいずれのNOx処理においても、NOx転化率が徐々に低下することがわかった。このことから、比較例4のNSR触媒は、実施例12の本発明のNSR触媒に比べて、耐硫黄被毒性に劣っていることがわかった。
【0105】
また、AZT複合酸化物の表面に過剰量のセリアが担持されたNSR触媒(比較例5)は、3回目以降の触媒性能評価試験(6)の1サイクル目(硫黄脱離処理直後)のNOx処理において、実施例12のNSR触媒と同等のNOx転化性能を発揮したが、触媒性能評価試験(7)において潤沢な還元剤を流通させて硫黄脱離処理を行なっても、実施例12のNSR触媒以上には、触媒性能は回復しなかった。このことから、比較例5のNSR触媒は、セリアの担持量に上限があることに加え、燃費悪化の点で、実施例12の本発明のNSR触媒に比べて、NOx吸蔵還元型触媒としての性能に劣っていることがわかった。
【0106】
さらに、アルミナとZT複合酸化物との混合粉末の表面に所定量のセリアが担持されたNSR触媒(比較例6)は、2回目以降の触媒性能評価試験(6)の1サイクル目(硫黄脱離処理直後)及び硫黄共存下での40サイクル目のいずれのNOx処理においても、NOx転化率が徐々に低下することがわかった。このことから、比較例6のNSR触媒は、実施例12の本発明のNSR触媒に比べて、耐硫黄被毒性に劣っていることがわかった。
【0107】
また、AZT複合酸化物の表面に所定量のセリアが担持されたNSR触媒(実施例12)は、4回目の触媒性能評価試験(6)の硫黄共存下での40サイクル目のNOx処理において、セリアを含まないNSR触媒(比較例4)、AZT複合酸化物の表面に過剰量のセリアが担持されたNSR触媒(比較例5)、及びアルミナとZT複合酸化物との混合粉末の表面に所定量のセリアが担持されたNSR触媒(比較例6)に比べて、高いNOx転化性能を発揮することがわかった。このことから、本発明の排ガス浄化用触媒にNOx吸蔵材を担持した本発明のNOx吸蔵還元型触媒は耐硫黄被毒性に優れていることがわかった。
【0108】
さらに、表4に示した硫黄残存量の結果から明らかなように、セリアが担持されたNSR触媒(実施例12、比較例5及び6)は、セリアを含まないNSR触媒(比較例4)に比べて、触媒性能評価試験(6)及び(7)を4回繰り返した後の硫黄残存量が少なくなることがわかった。これは、セリアによってPt粒成長が抑制され、活性サイトが多く維持され、容易に硫黄の脱離が起こったためと考えられる。また、比較例6のNSR触媒は、ほぼ同等量のセリアが担持された実施例12のNSR触媒に比べて、触媒性能評価試験(6)及び(7)を4回繰り返した後の硫黄残存量が多くなることがわかった。これは、混合粉末中のアルミナにおいて、硫黄被毒が十分に抑制されなかったためと考えられる。
【0109】
以上の結果から、本発明の排ガス浄化用触媒にNOx吸蔵材を担持した本発明のNOx吸蔵還元型触媒は、比較例4〜6のNOx吸蔵還元型触媒に比べて、耐熱性、耐硫黄被毒性に優れていることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0110】
以上説明したように、本発明によれば、高い耐熱性及び耐硫黄被毒性を有し、高温や硫黄に晒された場合でも、高い触媒活性を示す排ガス浄化用触媒を得ることが可能となる。
【0111】
したがって、本発明の排ガス浄化用触媒にNOx吸蔵材を担持させた触媒は、耐熱性、耐硫黄被毒性、及びNOx転化性能に優れているため、自動車の内燃機関等から排出される、窒素化合物及び硫黄酸化物を含有する排ガスを浄化するためのNOx吸蔵還元型触媒などとして有用である。