【実施例】
【0048】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、セリアの担持量及び溶出率、貴金属担持量、並びにバリウム担持量は以下の方法により測定した。
【0049】
(1)セリア担持量及び貴金属担持量
触媒1gを濃硝酸と濃塩酸とを1:3の体積比で含有する混合液10ml中にに全量溶解し、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により各元素の含有量を求めた。この元素含有量に基づいて、AZT複合酸化物の質量をAl
2O
3とZrO
2とTiO
2の合計質量に換算して求め、また、セリアの質量をCeO
2の質量に換算して求め、AZT複合酸化物100質量部に対するセリア担持量を算出した。さらに、触媒担体(セリア担持AZT複合酸化物)の質量をAl
2O
3とZrO
2とTiO
2とCeO
2の合計質量に換算して求め、また、貴金属の質量をメタル換算で求め、触媒担体100質量部に対する貴金属担持量を算出した。
【0050】
(2)Ce溶出率
触媒1gを、濃硝酸と濃塩酸とを1:3の体積比で含有する混合液10ml中に添加して1時間静置した後、ろ過した。得られたろ液についてICP発光分析を行い、溶出した各元素の量を求めた。得られたCe溶出量を、前記(1)においてICP発光分析により求めた全量溶解時のCe含有量で除して、触媒中の全Ce量に対する溶出試験によって溶出したCe量の割合(Ce溶出率)を求めた。
【0051】
(3)バリウム担持量
酢酸バリウム水溶液の触媒への含浸量から触媒中のバリウム担持量を求めた。
【0052】
(調製例1)
硝酸アルミニウム・九水和物441.2gと18質量%のオキシ硝酸ジルコニル溶液233.3gと四塩化チタン65.4gとをイオン交換水2000mlに添加して撹拌し、さらに、30質量%の過酸化水素水154gを添加した。得られた水溶液を25質量%のアンモニア水456gで中和して共沈法により沈殿物を調製した。得られた沈殿物を溶媒(水)とともに2気圧下、120℃の雰囲気下に2時間保持して熟成させた。次いで、沈殿物を遠心分離によって回収した後、150℃で7時間仮焼し、その後、大気中、400℃で5時間焼成し、さらに、800℃で5時間焼成してAZT複合酸化物を得た。このAZT複合酸化物を湿式ボールミルを用いてメジアン径D50が22.5μmの粉末に粉砕した。
【0053】
このAZT複合酸化物粉末の組成は、ICP発光分析による各元素含有量から求めた質量比でAl
2O
3:ZrO
2:TiO
2=50:35:15であり、AZT複合酸化物100質量%に対するアルミナの含有量は50質量%であり、ジルコニアとチタニアの合計量に対するチタニアの割合は39.8mol%であった。また、AZT複合酸化物粉末の比表面積をBET法により求めたところ、112.5m
2/gであった。
【0054】
(実施例1)
調製例1で得られたAZT複合酸化物粉末にセリア前駆体溶液を含浸させ、その後、乾燥処理及び加熱処理を行い、AZT複合酸化物粉末の表面にセリアが担持された触媒担体(セリア担持AZT複合酸化物粉末)を調製した。具体的には、先ず、所定量の酢酸セリウムとその3.9倍当量のクエン酸とを所定量のイオン交換水に添加し、さらに25質量%のアンモニア水を添加して酢酸セリウムを溶解し、セリア前駆体溶液を調製した。このセリア前駆体溶液をAZT複合酸化物粉末に含浸させた。セリア前駆体溶液中のCe濃度は、前記AZT複合酸化物粉末100質量部にセリア前駆体溶液を含浸させた際に、セリアの担持量が0.7質量部となるように設定した。次に、セリア前駆体溶液含浸AZT複合酸化物粉末を110℃で乾燥し、さらに室温から500℃まで100℃/時間で昇温した後、500℃で2時間保持してAZT複合酸化物粉末の表面にセリアが担持された触媒担体(セリア担持AZT複合酸化物粉末)を得た。この触媒担体のBET比表面積は113.6m
2/gであった。
【0055】
次に、この触媒担体を、ジニトロジアンミン白金水溶液(Pt濃度:4.538質量%)をイオン交換水で希釈した水溶液に浸漬することによって前記触媒担体にPtを吸着させた。得られたPt吸着触媒担体を110℃で乾燥し、さらに室温から500℃まで100℃/時間で昇温した後、500℃で2時間保持して前記触媒担体の表面にPtが担持された排ガス浄化用触媒を得た。この排ガス浄化用触媒を圧粉して直径0.5〜1mmの破砕ペレットを得た。
【0056】
この排ガス浄化用触媒におけるAZT複合酸化物粉末100質量部に対するセリア担持量、AZT複合酸化物の比表面積あたりのセリア担持量、Ce溶出率、触媒担体100質量部に対するPt担持量、及びCeとPtのモル比(Ce/Pt)を表1に示す。
【0057】
(実施例2)
調製例1で得られたAZT複合酸化物粉末100質量部にセリア前駆体溶液を含浸させた際に、セリアの担持量が2.6質量部となるように、セリア前駆体溶液中のCe濃度を変更した以外は、実施例1と同様にして、セリア担持AZT複合酸化物粉末からなる触媒担体の表面にPtが担持された排ガス浄化用触媒を調製した。なお、触媒担体のBET比表面積は113.1m
2/gであった。得られた排ガス浄化用触媒の物性を表1に示す。
【0058】
(実施例3)
調製例1で得られたAZT複合酸化物粉末100質量部にセリア前駆体溶液を含浸させた際に、セリアの担持量が4.2質量部となるように、セリア前駆体溶液中のCe濃度を変更した以外は、実施例1と同様にして、セリア担持AZT複合酸化物粉末からなる触媒担体の表面にPtが担持された排ガス浄化用触媒を調製した。なお、触媒担体のBET比表面積は112m
2/gであった。得られた排ガス浄化用触媒の物性を表1に示す。
【0059】
(実施例4)
調製例1で得られたAZT複合酸化物粉末100質量部にセリア前駆体溶液を含浸させた際に、セリアの担持量が7.0質量部となるように、セリア前駆体溶液中のCe濃度を変更した以外は、実施例1と同様にして、セリア担持AZT複合酸化物粉末からなる触媒担体の表面にPtが担持された排ガス浄化用触媒を調製した。なお、触媒担体のBET比表面積は108.8m
2/gであった。得られた排ガス浄化用触媒の物性を表1に示す。
【0060】
(実施例5)
調製例1で得られたAZT複合酸化物粉末100質量部にセリア前駆体溶液を含浸させた際に、セリアの担持量が9.3質量部となるように、セリア前駆体溶液中のCe濃度を変更した以外は、実施例1と同様にして、セリア担持AZT複合酸化物粉末からなる触媒担体の表面にPtが担持された排ガス浄化用触媒を調製した。なお、触媒担体のBET比表面積は109.8m
2/gであった。得られた排ガス浄化用触媒の物性を表1に示す。
【0061】
(実施例6)
所定量の硝酸セリウムをイオン交換水に溶解した溶液をセリア前駆体溶液として使用した以外は、実施例3と同様にして、セリア担持AZT複合酸化物粉末からなる触媒担体の表面にPtが担持された排ガス浄化用触媒を調製した。なお、触媒担体のBET比表面積は115m
2/gであった。得られた排ガス浄化用触媒の物性を表1に示す。
【0062】
(実施例7)
ジニトロジアンミン白金水溶液の代わりに、ジニトロジアンミン白金水溶液(Pt濃度:4.538質量%)とジニトロジアンミンパラジウム水溶液(Pd濃度:4.5質量%)を使用した以外は、実施例3と同様にして、セリア担持AZT複合酸化物粉末からなる触媒担体の表面にPt及びPdが担持された排ガス浄化用触媒を調製した。なお、触媒担体のBET比表面積は112m
2/gであった。得られた排ガス浄化用触媒の物性を表1に示す。
【0063】
(比較例1)
AZT複合酸化物粉末の表面にセリアが担持された触媒担体の代わりに、調製例1で得られたAZT複合酸化物粉末を触媒担体として用いた以外は、実施例1と同様にして、AZT複合酸化物粉末の表面にPtが担持された触媒を調製した。得られた触媒の物性を表1に示す。
【0064】
(比較例2)
ジニトロジアンミン白金水溶液の代わりに、ジニトロジアンミン白金水溶液(Pt濃度:4.538質量%)とジニトロジアンミンパラジウム水溶液(Pd濃度:4.5質量%)を使用した以外は、比較例1と同様にして、調製例1で得られたAZT複合酸化物粉末の表面にPt及びPdが担持された触媒を調製した。得られた触媒の物性を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
表1に示した結果から明らかなように、AZT複合酸化物100質量部に対するセリア担持量が増加するにつれて、Ce溶出率が徐々に低下した。これは、セリア担持量が増加すると、セリアの分散度が低下することに対応しており、AZT複合酸化物の表面を改質するという観点から、セリア担持量には上限が存在することを意味している。すなわち、AZT複合酸化物表面において、セリア担持量の増加による効果を発現させつつ、高分散にセリアを担持させるためには、セリア担持量を適正な範囲に制御する必要があることがわかった。
【0067】
<熱耐久試験(1)>
得られた触媒2gを石英管に充填し、リーンガス〔O
2(7%)/NO(400ppm)/CO(0.01%)/C
3H
6(0.06%)/CO
2(11%)/H
2O(3%)/N
2(残部)〕とリッチガス〔NO(400ppm)/H
2(2%)/CO(6%)/C
3H
6(0.32%)/CO
2(11%)/H
2O(3%)/N
2(残部)〕とをリーン/リッチ=11分/1分の間隔で交互に切り替えながら500ml/分で流通させ、室温から750℃まで1時間かけて昇温した後、750℃で5時間保持し、その後、室温まで放冷した。
【0068】
<X線回折測定>
熱耐久試験(1)後の触媒について、粉末X線回折装置((株)リガク製「試料水平型多目的X線回折装置Ultima IV R285」)を用い、X線源:CuKα線(λ=0.154nm)、加速電圧:40kV、加速電流:40mAの条件で粉末X線回折(XRD)測定を行なった。得られたXRDパターンのPt(111)に由来する回折ピークの強度及びその半値幅より算出したPt粒子径を表2に示す。
【0069】
<触媒性能評価試験(1)>
熱耐久試験(1)後の触媒を固定床流通装置に設置した。触媒量は、比較例1の触媒については1gとし、その他の触媒(実施例1〜5)については、比較例1の触媒とPt量が等しくなる量とした。この触媒にモデルガス〔CO(800ppm)/O
2(10%)/CO
2(10%)/H
2O(3%)/N
2(残部)〕を5L/分で流通させながら20℃/分で昇温してCOが50%浄化された時点の触媒温度を測定した。その結果を表2に示す。
【0070】
一方、上記と同様に、熱耐久試験(1)後の触媒を固定床流通装置に設置した。この触媒に還元ガス〔H
2(1%)/CO
2(10%)/H
2O(3%)/N2(残部)〕を入りガス温度400℃で10分間流通させて還元前処理を行なった。この還元前処理後の触媒について、上記と同様にモデルガスを流通させながら昇温してCOが50%浄化された時点の触媒温度を測定した。その結果を表2に示す。
【0071】
<触媒性能評価試験(2)>
上記触媒性能評価試験(1)と同様に、熱耐久試験(1)後の触媒を固定床流通装置に設置した。この触媒に入りガス温度400℃、ガス流量5L/分で、O
2含有ガス〔O
2(1%)/N
2(残部)〕、N
2ガス、CO含有ガス〔CO(1%)/N
2(残部)〕、及びN
2ガスを、O
2含有ガス/N
2ガス/CO含有ガス/N
2ガス=60秒/20秒/60秒/20秒の間隔で繰り返し流通させ、CO導入時に生成するCO
2量を測定して酸素吸蔵量(OSC量)を算出した。その結果を表2に示す。
【0072】
【表2】
【0073】
表2に示した結果から明らかなように、セリア担持量が増加するにつれて、Pt(111)に由来する回折ピークの強度が弱くなり、また、前記回折ピークの半値幅から算出したPt粒子径が小さくなった(実施例1〜5)。このことから、AZT複合酸化物粉末の表面に高分散に担持されているセリアのアンカー効果によって貴金属(Pt)の粒成長が抑制されたことがわかった。すなわち、Pt粒成長を抑制するという観点から、Pt担持量に見合う適正な量のセリアを担持させる必要があることがわかった。また、セリア前駆体の種類を変更した場合(実施例3及び実施例6)でも、セリアを含まない触媒担体を用いた場合(比較例1)に比べてPtの粒子径が小さくなり、セリアの添加により貴金属(Pt)の粒成長が抑制されることがわかった。さらに、貴金属としてPtとPdを担持した場合でも、AZT複合酸化物粉末の表面にセリアが担持された触媒担体を用いた場合(実施例7)には、セリアを含まない触媒担体を用いた場合(比較例2)に比べてPt及びPdの粒子径が小さくなり、セリアの添加により貴金属(Pt及びPd)の粒成長が抑制されることがわかった。
【0074】
また、熱耐久試験(1)直後のCO50%浄化温度は、セリア担持量が増加するにつれて低くなり(実施例1〜5、比較例1)、貴金属の粒成長が抑制されたことによって触媒活性の劣化が抑制されることがわかった。さらに、還元前処理後のCO50%浄化温度は、熱耐久試験(1)直後のCO50%浄化温度に比べて低くなり(実施例1〜5、比較例1)、還元前処理によって触媒活性が向上することがわかった。これは、還元前処理によって活性サイトである貴金属がメタル化したことによると考えられる。
【0075】
一方、セリア担持量が増加すると、OSC量が増加しており(実施例1〜5、比較例1)、貴金属をメタル化するために還元剤を投入する必要があることがわかった。リーンバーン雰囲気下に晒された触媒において、貴金属等の活性種を十分にメタル化するためには還元剤を投入する必要があるが、還元剤の投入は燃費の低下を招くおそれがある。このため、触媒の耐久性の向上と燃費悪化の抑制を両立させるためには適切なセリア担持量を選択する必要があることがわかった。ただし、実施例5で得られたOSC量は、それが排ガス浄化用触媒中のセリアに全て起因したものであると仮定しても、理論上得られるはずのOSC量の約1/4であり、CO導入後10秒間のOSC量は約1/10であった。
【0076】
(調製例2)
調製例1で得られたAZT複合酸化物粉末を硝酸ロジウム水溶液(Rh濃度:2.75質量%)に浸漬して前記AZT複合酸化物粉末にRhを吸着させた。得られたRh吸着AZT複合酸化物粉末を110℃で乾燥し、さらに室温から500℃まで100℃/時間で昇温した後、500℃で2時間保持して前記AZT複合酸化物粉末の表面にRhが担持した触媒(Rh担持AZT複合酸化物粉末)を得た。この触媒におけるRh担持量は、前記AZT複合酸化物粉末100質量部に対して1質量部であった。
【0077】
(実施例8)
熱耐久試験(1)後の実施例1の排ガス浄化用触媒(Pt担持セリア含有AZT複合酸化物粉末)と調製例2で得られた触媒(Rh担持AZT複合酸化物粉末)との混合物に酢酸バリウム水溶液を含浸させ、その後、乾燥処理及び加熱処理を行い、前記Pt担持セリア含有AZT複合酸化物粉末及び前記Rh担持AZT複合酸化物粉末の表面にNOx吸蔵材としてのバリウムを担持させたNOx吸蔵還元型触媒(以下、「NSR(NOx−Storage and Reduction)触媒」と略す)を調製した。具体的には、先ず、熱耐久試験(1)後の実施例1の排ガス浄化用触媒3.03gと調製例2で得られた触媒0.43gとを粉末混合し、得られた混合物に0.85gの酢酸バリウムを含む酢酸バリウム水溶液を含浸させた。その後、110℃で乾燥処理を行い、さらに室温から500℃まで100℃/時間で昇温した後、500℃で2時間保持してNSR触媒を得た。このNSR触媒を圧粉して直径0.5〜1mmの破砕ペレットを得た。このNSR触媒におけるBa担持量は、熱耐久試験(1)後の実施例1の排ガス浄化用触媒と調製例2で得られた触媒との混合物100gに対して0.096molであった。
【0078】
(実施例9)
熱耐久試験(1)後の実施例1の排ガス浄化用触媒の代わりに熱耐久試験(1)後の実施例3の排ガス浄化用触媒3.15g(実施例8とPt担持量が等しい触媒量)を使用した以外は実施例8と同様にして、NSR触媒を調製した。このNSR触媒におけるBa担持量は、熱耐久試験(1)後の実施例3の排ガス浄化用触媒と調製例2で得られた触媒との混合物100gに対して0.093molであった。
【0079】
(実施例10)
熱耐久試験(1)後の実施例1の排ガス浄化用触媒の代わりに熱耐久試験(1)後の実施例4の排ガス浄化用触媒3.22g(実施例8とPt担持量が等しい触媒量)を使用した以外は実施例8と同様にして、NSR触媒を調製した。このNSR触媒におけるBa担持量は、熱耐久試験(1)後の実施例4の排ガス浄化用触媒と調製例2で得られた触媒との混合物100gに対して0.091molであった。
【0080】
(実施例11)
熱耐久試験(1)後の実施例1の排ガス浄化用触媒の代わりに熱耐久試験(1)後の実施例5の排ガス浄化用触媒3.29g(実施例8とPt担持量が等しい触媒量)を使用した以外は実施例8と同様にして、NSR触媒を調製した。このNSR触媒におけるBa担持量は、熱耐久試験(1)後の実施例5の排ガス浄化用触媒と調製例2で得られた触媒との混合物100gに対して0.089molであった。
【0081】
(比較例3)
熱耐久試験(1)後の実施例1の排ガス浄化用触媒の代わりに熱耐久試験(1)後の比較例1の触媒3g(実施例8とPt担持量が等しい触媒量)を使用した以外は実施例8と同様にして、NSR触媒を調製した。このNSR触媒におけるBa担持量は、熱耐久試験(1)後の比較例1の触媒と調製例2で得られた触媒との混合物100gに対して0.097molであった。
【0082】
<触媒性能評価試験(3)>
NSR触媒を固定床流通装置に設置した。触媒量は、比較例3のNSR触媒については1gとし、その他のNSR触媒(実施例8〜11)については、比較例3のNSR触媒とPt量及びBa量が等しくなる量とした。このNSR触媒に入りガス温度300℃又は400℃で、リーンモデルガス〔NO(400ppm)/C
3H
6(100ppmC)/O
2(5.5%)/CO
2(10%)/H
2O(5%)/N
2(残部)〕とリッチモデルガス〔NO(400ppm)/CO(3%)/H
2(1%)/C
3H
6(500ppmC)/CO
2(10%)/H
2O(5%)/N
2(残部)〕とをリーン/リッチ=60秒/3秒の間隔で交互に切り替えながら5L/分で流通させ、この切り替えを10サイクル実施し、入りガス及び出ガスのNOx濃度を測定して、後半3サイクルの平均NOx転化率を求めた。その結果を表3に示す。
【0083】
<触媒性能評価試験(4)>
前記リーンモデルガス及び前記リッチモデルガスにそれぞれ37ppmのSO
2を共存させたリーンモデルガスとリッチモデルガスとを、前記触媒性能評価試験(3)に引き続いて、リーン/リッチ=60秒/3秒の間隔で交互に切り替えながら前記NSR触媒に400℃、5L/分で流通させ、この切り替えを40サイクル実施し、入りガス中及び出ガス中のNOx濃度を測定して、最終サイクルにおけるNOx転化率を求めた。その結果を表3に示す。また、入りガス及び出ガスのSO
2濃度を測定してNSR触媒への硫黄付着量を求めた。
【0084】
<触媒性能評価試験(5)>
前記触媒性能評価試験(4)に引き続いて、前記NSR触媒に入りガス温度600℃でSO
2を含まないモデルガス〔CO(1300ppm)/H
2(900ppm)/C
3H
6(100ppmC)/CO
2(10%)/H
2O(5%)/N
2(残部)〕を5L/分で流通させて弱リッチ雰囲気を形成し、10分間の硫黄脱離処理を行なった。このとき、出ガス中のSO
2濃度を経時的に測定し、硫黄脱離量及び硫黄脱離ピーク時間を求めた。この硫黄脱離量と前記触媒性能評価試験(4)で求めたNSR触媒への硫黄付着量とから前記硫黄脱離処理後のNSR触媒中の硫黄残存量を算出し、比較例3のNSR触媒における硫黄残存量に対する実施例8〜11のNSR触媒における硫黄残存量の割合を求めた。これらの結果を表3に示す。
【0085】
【表3】
【0086】
表3に示した結果から明らかなように、硫黄非共存下、入りガス温度が300℃及び400℃のいずれの場合においても、セリア担持量が増加するにつれて、より高いNOx転化性能を示した。これは、セリアの添加により貴金属(Pt)の粒成長が抑制され、リーン時のNOx吸蔵能が維持されたためと考えられる。
【0087】
また、硫黄共存下においても、セリア担持量が増加するにつれて、NOx転化率がより高くなり、より高い耐硫黄被毒性を示すことがわかった。これは、セリアの添加により貴金属(Pt)の粒成長が抑制され、貴金属(Pt)近傍のNOx吸蔵能が維持されたためと考えられる。
【0088】
さらに、セリアを含まないNSR触媒を用いた場合(比較例3)に比べて、セリアが担持された本発明のNSR触媒を用いた場合(実施例8〜11)には、600℃での硫黄脱離処理によって、NSR触媒中の硫黄残存量を低減できることがわかった。セリアが担持された本発明のNSR触媒(実施例8〜11)は、耐硫黄被毒性に優れているだけでなく、リッチ雰囲気に制御することによって硫黄被毒回復しやすい触媒であることがわかった。一方、セリア担持量が増加すると、硫黄脱離ピーク時間が遅れることがわかった。これは、NSR触媒のOSC性能により還元剤が無駄に消費されるためであり、硫黄被毒回復制御の観点では、セリア担持量を少なくすることが好ましいことがわかった。
【0089】
(実施例12)
調製例1で得られたAZT複合酸化物粉末100質量部にセリア前駆体溶液を含浸させた際に、セリアの担持量が5.0質量部となるように、セリア前駆体溶液中のCe濃度を変更した以外は、実施例1と同様にして、セリア担持AZT複合酸化物粉末からなる触媒担体の表面にPtが担持された排ガス浄化用触媒を調製した。得られた排ガス浄化用触媒のPt担持量は前記触媒担体100質量部に対して1.09質量部であり、CeとPtのモル比(Ce/Pt)は5.0であった。
【0090】
また、調製例1で得られたAZT複合酸化物粉末100質量部にセリア前駆体溶液を含浸させた際に、セリアの担持量が5.0質量部となるように、セリア前駆体溶液中のCe濃度を変更し、ジニトロジアンミン白金水溶液の代わりにジニトロジアンミンパラジウム水溶液(Pd濃度:4.5質量%)を使用した以外は、実施例1と同様にして、セリア担持AZT複合酸化物粉末からなる触媒担体の表面にPdが担持された排ガス浄化用触媒を調製した。得られた排ガス浄化用触媒のPd担持量は前記触媒担体100質量部に対して0.82質量部であり、CeとPdのモル比(Ce/Pd)は3.6であった。
【0091】
前記Ptが担持された排ガス浄化用触媒61gと前記Pdが担持された排ガス浄化用触媒30.5gと調製例2で得られた触媒13gとアルミナゾル10gとをイオン交換水に添加してスラリーを調製し、形成される触媒層の割合が8g/Lとなるように、前記スラリーを35ccのモノリス基材にコートし、250℃で乾燥して、9質量%の割合でアルミナを含む触媒層を形成した。その後、前記触媒層を担持した基材に酢酸バリウム水溶液を含浸させ、110℃で乾燥して、0.2mol/Lの割合でバリウムが担持されたNSR触媒テストピースを得た。
【0092】
(比較例4)
調製例1で得られたAZT複合酸化物粉末100質量部に対するPtとPdの合計担持量が1.0質量部となるように、ジニトロジアンミン白金水溶液とジニトロジアンミンパラジウム水溶液を含浸させた以外は、比較例2と同様にして、前記AZT複合酸化物粉末の表面にPt及びPdが担持された触媒(Pt−Pd担持AZT複合酸化物粉末)を調製した。
【0093】
実施例12で調製したPtが担持された排ガス浄化用触媒及びPdが担持された排ガス浄化用触媒の代わりに、前記Pt−Pd担持AZT複合酸化物粉末を91.5g使用して、PtとPdの合計担持量及びPtとPdとの比率を実施例12と等しくした以外は、実施例12と同様にして、バリウムが担持されたNSR触媒テストピースを得た。
【0094】
(比較例5)
調製例1で得られたAZT複合酸化物粉末100質量部にセリア前駆体溶液を含浸させた際に、セリアの担持量が15.0質量部となるように、セリア前駆体溶液中のCe濃度を変更し、触媒担体100質量部に対するPtとPdの合計担持量が1.0質量部となるように、ジニトロジアンミン白金水溶液とジニトロジアンミンパラジウム水溶液を含浸させた以外は、実施例7と同様にして、セリア担持AZT複合酸化物粉末からなる触媒担体の表面にPt及びPdが担持された触媒(Pt−Pd担持セリア含有AZT複合酸化物粉末)を調製した。得られた触媒のCeとPt及びPdとのモル比(Ce/〔Pt+Pd〕)は12.7であった。
【0095】
実施例12で調製したPtが担持された排ガス浄化用触媒及びPdが担持された排ガス浄化用触媒の代わりに、前記Pt−Pd担持セリア含有AZT複合酸化物粉末91.5gを使用して、PtとPdの合計担持量及びPtとPdとの比率を実施例12と等しくした以外は、実施例12と同様にして、バリウムが担持されたNSR触媒テストピースを得た。
【0096】
(比較例6)
前記AZT複合酸化物粉末の代わりに、アルミナとジルコニア−チタニア複合酸化物(チタニア含有量:30mol%、以下、「ZT複合酸化物」と略す)との混合粉末(アルミナ:ZT複合酸化物(質量比)=50:50)を使用し、この混合粉末100質量部にセリア前駆体溶液を含浸させた際に、セリアの担持量が5.3質量部となるように、セリア前駆体溶液中のCe濃度を変更し、触媒担体100質量部に対するPtとPdの合計担持量が1.0質量部となるように、ジニトロジアンミン白金水溶液とジニトロジアンミンパラジウム水溶液を含浸させた以外は、実施例7と同様にして、セリア担持混合粉末からなる触媒担体の表面にPt及びPdが担持された触媒(Pt−Pd担持セリア含有混合粉末)を調製した。得られた触媒のCeとPt及びPdとのモル比(Ce/〔Pt+Pd〕)は4.4であった。
【0097】
実施例12で調製したPtが担持された排ガス浄化用触媒及びPdが担持された排ガス浄化用触媒の代わりに、前記Pt−Pd担持セリア含有混合粉末91.5gを使用して、PtとPdの合計担持量及びPtとPdとの比率を実施例12と等しくした以外は、実施例12と同様にして、バリウムが担持されたNSR触媒テストピースを得た。
【0098】
<熱耐久試験(2)>
得られたNSR触媒テストピース1個を石英管に詰め、熱耐久試験(1)と同一組成のリーンガスとリッチガスとをリーン/リッチ=110秒/10秒の間隔交互に切り替えながら11L/分で流通させた以外は、前記熱耐久試験(1)と同様にして、熱耐久試験を行なった。
【0099】
<触媒性能評価試験(6)>
熱耐久試験(2)後のNSR触媒テストピース1個を固定床流通装置に設置した。このNSR触媒に入りガス温度400℃で、リーンモデルガス〔NO(400ppm)/SO
2(60ppm)/C
3H
6(100ppmC)/O
2(5.5%)/CO
2(10%)/H
2O(5%)/N
2(残部)〕とリッチモデルガス〔NO(400ppm)/SO
2(60ppm)/CO(6%)/H
2(2%)/C
3H
6(500ppmC)/CO
2(10%)/H
2O(5%)/N
2(残部)〕とをリーン/リッチ=60秒/3秒の間隔で交互に切り替えながら15L/分で流通させ、この切り替えを40サイクル実施した。
【0100】
<触媒性能評価試験(7)>
前記触媒性能評価試験(6)に引き続いて、前記NSR触媒に入りガス温度600℃でモデルガス〔CO(1300ppm)/H
2(900ppm)/C
3H
6(100ppmC)/CO
2(10%)/H
2O(5%)/N
2(残部)〕を30L/分で流通させて弱リッチ雰囲気を形成し、10分間の硫黄脱離処理を行なった。
【0101】
前記触媒性能評価試験(6)及び(7)を4回繰り返し、触媒性能評価試験(6)の各回の1サイクル目と40サイクル目において、入りガス及び出ガスのNOx濃度を測定して硫黄共存下でのNOx転化率を算出した。また、前記触媒性能評価試験(6)において、入りガス及び出ガスのS濃度を測定してNSR触媒への硫黄付着量を求め、さらに、前記触媒性能評価試験(7)の硫黄脱離処理中に、出ガス中のS濃度を経時的に測定して硫黄脱離量を求め、この硫黄脱離量と前記NSR触媒への硫黄付着量とから前記硫黄脱離処理後のNSR触媒中の硫黄残存量を算出した。これらの結果を表4に示す。なお、NSR触媒中の硫黄残存量は、4回目の硫黄脱離処理後の結果を示した。
【0102】
【表4】
【0103】
表4に示したNOx転化率の結果から明らかなように、AZT複合酸化物の表面に所定量のセリアが担持されたNSR触媒(実施例12)は、2回目以降の触媒性能評価試験(6)の1サイクル目(硫黄脱離処理直後)のNOx処理において、NOx転化率がほぼ一定であり、安定したNOx転化性能を発揮することがわかった。このことから、本発明の排ガス浄化用触媒にNOx吸蔵材を担持した本発明のNOx吸蔵還元型触媒は、硫黄脱離処理により触媒性能が容易に回復することがわかった。また、2回目以降の触媒性能評価試験(6)の硫黄共存下での40サイクル目のNOx処理においても、NOx転化率はほぼ一定であり、本発明のNSR触媒は、繰り返し使用による劣化が抑制されていることがわかった。
【0104】
これに対して、セリアを含まないNSR触媒(比較例4)は、2回目以降の触媒性能評価試験(6)の1サイクル目(硫黄脱離処理直後)及び硫黄共存下での40サイクル目のいずれのNOx処理においても、NOx転化率が徐々に低下することがわかった。このことから、比較例4のNSR触媒は、実施例12の本発明のNSR触媒に比べて、耐硫黄被毒性に劣っていることがわかった。
【0105】
また、AZT複合酸化物の表面に過剰量のセリアが担持されたNSR触媒(比較例5)は、3回目以降の触媒性能評価試験(6)の1サイクル目(硫黄脱離処理直後)のNOx処理において、実施例12のNSR触媒と同等のNOx転化性能を発揮したが、触媒性能評価試験(7)において潤沢な還元剤を流通させて硫黄脱離処理を行なっても、実施例12のNSR触媒以上には、触媒性能は回復しなかった。このことから、比較例5のNSR触媒は、セリアの担持量に上限があることに加え、燃費悪化の点で、実施例12の本発明のNSR触媒に比べて、NOx吸蔵還元型触媒としての性能に劣っていることがわかった。
【0106】
さらに、アルミナとZT複合酸化物との混合粉末の表面に所定量のセリアが担持されたNSR触媒(比較例6)は、2回目以降の触媒性能評価試験(6)の1サイクル目(硫黄脱離処理直後)及び硫黄共存下での40サイクル目のいずれのNOx処理においても、NOx転化率が徐々に低下することがわかった。このことから、比較例6のNSR触媒は、実施例12の本発明のNSR触媒に比べて、耐硫黄被毒性に劣っていることがわかった。
【0107】
また、AZT複合酸化物の表面に所定量のセリアが担持されたNSR触媒(実施例12)は、4回目の触媒性能評価試験(6)の硫黄共存下での40サイクル目のNOx処理において、セリアを含まないNSR触媒(比較例4)、AZT複合酸化物の表面に過剰量のセリアが担持されたNSR触媒(比較例5)、及びアルミナとZT複合酸化物との混合粉末の表面に所定量のセリアが担持されたNSR触媒(比較例6)に比べて、高いNOx転化性能を発揮することがわかった。このことから、本発明の排ガス浄化用触媒にNOx吸蔵材を担持した本発明のNOx吸蔵還元型触媒は耐硫黄被毒性に優れていることがわかった。
【0108】
さらに、表4に示した硫黄残存量の結果から明らかなように、セリアが担持されたNSR触媒(実施例12、比較例5及び6)は、セリアを含まないNSR触媒(比較例4)に比べて、触媒性能評価試験(6)及び(7)を4回繰り返した後の硫黄残存量が少なくなることがわかった。これは、セリアによってPt粒成長が抑制され、活性サイトが多く維持され、容易に硫黄の脱離が起こったためと考えられる。また、比較例6のNSR触媒は、ほぼ同等量のセリアが担持された実施例12のNSR触媒に比べて、触媒性能評価試験(6)及び(7)を4回繰り返した後の硫黄残存量が多くなることがわかった。これは、混合粉末中のアルミナにおいて、硫黄被毒が十分に抑制されなかったためと考えられる。
【0109】
以上の結果から、本発明の排ガス浄化用触媒にNOx吸蔵材を担持した本発明のNOx吸蔵還元型触媒は、比較例4〜6のNOx吸蔵還元型触媒に比べて、耐熱性、耐硫黄被毒性に優れていることがわかった。