(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、海に面していない側が土砂等で埋め立てられた海岸構造物において、汚濁水が海へ流出することを抑制するために、遮水シートを用いる方法、鋼矢板や鋼管矢板と遮水材を用いる方法は、どちらも効果が十分ではない。また、前述したように、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震の大津波による大被害を受けて、海に面した海岸構造物には大津波に対する安全性が強く求められるようになってきている。
【0006】
本発明は、かかる状況に鑑みてなされたものであり、海に面していない側が土砂等で埋め立てられた海岸構造物に適用可能で、汚濁水が海へ流出することを抑制でき、かつ、大津波への安全性も確保された擁壁の構築に用いる擁壁ブロック、該擁壁ブロックを用いた擁壁および擁壁の構築方法を提供することを課題とするとともに、前記擁壁を用いた人工島を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の擁壁ブロック、擁壁および擁壁の構築方法、ならびに人工島により、前記課題を解決したものである。
【0008】
即ち、本発明に係る擁壁ブロックは、擁壁を構築し得る略直方体形状の擁壁ブロックであって、杭が挿通する、底面から上面まで貫通する2つの貫通孔を備えるとともに、該擁壁ブロックの少なくとも2つの側面に、1つの側面ごとに1つの凹部または1つの凸部を備え、前記凹部および前記凸部は、擁壁が形成された状態において水平面で切断したときの断面形状が前記擁壁ブロックの底面から上面まで同一形状であり、前記凸部の前記側面からの突出長さは前記凹部の深さよりも長く、かつ、前記凸部の最大幅は前記凹部の最大幅よりも小さく、前記凸部と前記凹部は略嵌合することができ、擁壁が形成された状態において前記擁壁ブロックを水平面で切断したときの略長方形断面の長辺の長さをA、前記凸部の前記側面からの突出長さから前記凹部の深さを減じた長さをBとしたとき、前記2つの貫通孔の中心の位置は、どちらも、前記略長方形断面の短辺から(A−B)/4の距離だけ離れた地点に位置し、さらに、前記凸部は該凸部が備えられている側面から該側面上の半円柱状の突起を該側面と直交する方向にさらに突出させた形状であり、前記凹部は該凹部が備えられている側面と直交する方向であって深さが浅くなる方向に該側面の半円柱状の溝を平行移動させた形状であり、かつ、前記凸部と前記凹部の形状は、前記凸部と前記凹部とを嵌合させて当接させたとすると、前記凸部と前記凹部との当接部位から離れるほど前記凸部と前記凹部との間の間隔が広くなるような形状であることを特徴とする擁壁ブロックである。
【0009】
ここで、擁壁ブロックの「底面」、「上面」、「側面」は、擁壁が形成された状態における該擁壁ブロックの配置状態を基準に決定するものとし、本明細書では以下同様とする。
【0010】
また、「凸部の最大幅」は、擁壁が形成された状態における擁壁ブロックを水平面で切断したときの断面における凸部の突出方向と直交する方向の凸部の最大幅のことであり、「凹部の最大幅」は、擁壁が形成された状態における擁壁ブロックを水平面で切断したときの断面における凹部の深さ方向と直交する方向の凹部の最大幅のことである。
【0011】
また、「貫通孔の中心の位置」とは、擁壁が形成された状態における擁壁ブロックを水平面で切断したときの断面における貫通孔の重心位置のことであり、本明細書では以下同様とする。
【0012】
また、「半円柱状」とは、円柱をその軸方向と平行な平面で(当該円柱の底面と下面の中心を通るように)半分に切断したときの立体形状のことである。
【0013】
本発明に係る擁壁の第1の態様は、複数の杭と、前記杭に支持された複数の前記擁壁ブロックと、を備えた擁壁であって、複数の前記擁壁ブロックは該擁壁ブロックの前記貫通孔に前記杭が挿通されるように配置されるとともに、前記擁壁ブロックの前記凸部と別の前記擁壁ブロックの前記凹部とが略嵌合されて複数の前記擁壁ブロックが並んだ第1段目の擁壁ブロック列が形成され、略嵌合された前記凸部の少なくとも一部の部位と略嵌合された前記凹部の少なくとも一部の部位は当接し、当接した該部位は該擁壁ブロックの底面から上面まで連続的に連なっており、形成された前記第1段目の擁壁ブロック列の前記凸部と前記凹部とが略嵌合された部位の上に、第2段目の前記擁壁ブロックが、該擁壁ブロックの前記貫通孔に第1段目の擁壁ブロックの前記貫通孔を挿通した前記杭が挿通するように積まれるとともに、第2段目の前記擁壁ブロックの前記凸部と第2段目の別の前記擁壁ブロックの前記凹部とが略嵌合されて複数の前記擁壁ブロックが並んだ第2段目の擁壁ブロック列が形成され、該第2段目の擁壁ブロック列において略嵌合された前記凸部の少なくとも一部の部位と略嵌合された前記凹部の少なくとも一部の部位は当接し、当接した該部位は該擁壁ブロックの底面から上面まで連続的に連なっていることを特徴とする擁壁である。
【0014】
本発明に係る擁壁の第2の態様は、複数の杭と、前記杭に支持された複数の前記擁壁ブロックと、を備えた擁壁であって、複数の前記擁壁ブロックは該擁壁ブロックの前記貫通孔に前記杭が挿通されるように配置されるとともに、前記擁壁ブロックの前記凸部と別の前記擁壁ブロックの前記凹部とが略嵌合されて複数の前記擁壁ブロックが並んだ第1段目の擁壁ブロック列が形成され、略嵌合された前記凸部の少なくとも一部の部位と略嵌合された前記凹部の少なくとも一部の部位は当接し、当接した該部位は該擁壁ブロックの底面から上面まで連続的に連なっており、形成された前記第1段目の擁壁ブロック列の前記凸部と前記凹部とが略嵌合された部位の上に、第2段目の前記擁壁ブロックが、該擁壁ブロックの前記貫通孔に第1段目の擁壁ブロックの前記貫通孔を挿通した前記杭が挿通するように積まれるとともに、第2段目の前記擁壁ブロックの前記凸部と第2段目の別の前記擁壁ブロックの前記凹部とが略嵌合されて複数の前記擁壁ブロックが並んだ第2段目の擁壁ブロック列が形成され、該第2段目の擁壁ブロック列において略嵌合された前記凸部の少なくとも一部の部位と略嵌合された前記凹部の少なくとも一部の部位は当接し、当接した該部位は該擁壁ブロックの底面から上面まで連続的に連なっており、さらに、同様に第n段目(ただし、nは3以上の任意の整数)まで擁壁ブロック列が形成されるように前記擁壁ブロックが積まれたことを特徴とする擁壁である。
【0015】
本発明に係る擁壁の第1および第2の態様を、水域と陸域との間に構築してもよく、また、本発明に係る擁壁の第1および第2の態様において、隣り合う前記擁壁ブロックの側面の間隙にゴム製の部材を外部から視認可能な状態で取り付けてもよい。
【0016】
本発明に係る擁壁の構築方法の第1の態様は、複数の前記擁壁ブロックの前記貫通孔をそれぞれ別の杭に挿通するとともに、前記擁壁ブロックの前記凸部と別の前記擁壁ブロックの前記凹部とを略嵌合して複数の前記擁壁ブロックが並んだ第1段目の擁壁ブロック列を形成する工程と、形成した前記第1段目の擁壁ブロック列の前記凸部と前記凹部とが略嵌合された部位の上に、第2段目の前記擁壁ブロックを、該擁壁ブロックの前記貫通孔に第1段目の擁壁ブロックの前記貫通孔を挿通した前記杭が挿通するように積むとともに、第2段目の前記擁壁ブロックの前記凸部と第2段目の別の前記擁壁ブロックの前記凹部とを略嵌合して複数の前記擁壁ブロックが並んだ第2段目の擁壁ブロック列を形成する工程と、を有し、前記形成した第1段目の擁壁ブロック列および第2段目の擁壁ブロック列において、略嵌合した前記凸部の少なくとも一部の部位と略嵌合した前記凹部の少なくとも一部の部位が当接し、当接した該部位は該擁壁ブロックの底面から上面まで連続的に連なっていることを特徴とする擁壁の構築方法である。
【0017】
本発明に係る擁壁の構築方法の第2の態様は、予め構築した桟橋上に配置したクレーンにより、水底に杭を打ち込む工程と、複数の前記擁壁ブロックの前記貫通孔をそれぞれ別の前記杭に挿通するとともに、前記擁壁ブロックの前記凸部と別の前記擁壁ブロックの前記凹部とを略嵌合して複数の前記擁壁ブロックが並んだ第1段目の擁壁ブロック列を、前記クレーンを用いて形成する工程と、形成した前記第1段目の擁壁ブロック列の前記凸部と前記凹部とが略嵌合された部位の上に、第2段目の前記擁壁ブロックを、該擁壁ブロックの前記貫通孔に第1段目の擁壁ブロックの前記貫通孔を挿通した前記杭が挿通するように積むとともに、第2段目の前記擁壁ブロックの前記凸部と第2段目の別の前記擁壁ブロックの前記凹部とを略嵌合して複数の前記擁壁ブロックが並んだ第2段目の擁壁ブロック列を、前記クレーンを用いて形成する工程と、を有し、前記形成した第1段目の擁壁ブロック列および第2段目の擁壁ブロック列において、略嵌合した前記凸部の少なくとも一部の部位と略嵌合した前記凹部の少なくとも一部の部位が当接し、当接した該部位は該擁壁ブロックの底面から上面まで連続的に連なっていることを特徴とする擁壁の構築方法である。
【0018】
本発明に係る人工島は、前記擁壁が、海洋において、四角形状に閉じるように設けられており、四角形状に閉じるように設けられた前記擁壁の内側は土砂で埋められていることを特徴とする人工島である。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る擁壁ブロックを用いて構築した擁壁を海岸構造物に適用した場合、海に面していない側を土砂等で埋め立てても、汚濁水が海へ流出することを抑制することができる。また、大津波を受けても強固に抵抗することができ、大津波を受けても移動したり倒れたりすることを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0022】
(擁壁ブロックの構成)
図1は本発明の実施形態に係る擁壁ブロック10の平面図(擁壁として積み上げられた状態を上方から見た平面図)であり、
図2は擁壁ブロック10を
図1の矢視II−II方向から見た側面図である。なお、以下では、擁壁ブロック10の「鉛直方向」、「水平方向」、「側面」、「底面」、「上面」は、擁壁ブロック10が擁壁として積み上げられた配置状態を基準としてそれぞれの方向および面を判断するものとする。
【0023】
本実施形態に係る擁壁ブロック10は、2つの貫通孔12と、凹部14と、凸部16と、を備えてなり、直方体に2つの貫通孔12、凹部14、凸部16を設けた略直方体形状であり、鉄筋コンクリート製である。擁壁ブロック10の大きさの一例を示すと、
図1において、長辺の長さ(
図1におけるA)は例えば3.49mであり、短辺の長さ(
図1におけるC)は例えば1.75mであり、高さは例えば0.75mである。なお、これらの数値は一例であり、擁壁ブロック10の大きさに限定があるわけではない。
【0024】
2つの貫通孔12は、擁壁ブロック10の底面から上面まで貫通している。2つの貫通孔12は、擁壁ブロック10を積み上げて擁壁を構築する際、コンクリート杭50に挿通される。これにより、擁壁ブロック10はコンクリート杭50に連結されるとともに、積み上げられる擁壁ブロック10の位置決めがなされる。したがって、2つの貫通孔12は、擁壁ブロック10をコンクリート杭50に連結するとともに、積み上げられる擁壁ブロック10の位置決めをする役割を果たす。貫通孔12にコンクリート杭50が挿通された後、貫通孔12の内面とコンクリート杭50の外面との間隙にグラウト材を充填して、擁壁ブロック10とコンクリート杭50との一体化を行う。充填するグラウト材は特に限定されず、セメント(モルタル)系グラウト材、ガラス系グラウト材、合成樹脂系グラウト材等を用いることができるが、擁壁ブロック10を水中で積み上げて擁壁を構築する場合には水中コンクリートを用いる。
【0025】
なお、擁壁ブロック10においては、貫通孔12の周囲を囲むように円形状に加工された鉄筋(図示せず)が鉛直方向に配置されており、貫通孔12の周囲は該円形状の鉄筋により補強されている。
【0026】
凹部14は擁壁ブロック10の短辺側面18の中央部に設けられた略半円柱状の溝(蒲鉾形状の溝)であり、擁壁が形成された状態において擁壁ブロック10を水平面で切断したときの断面形状は擁壁ブロック10の底面から上面まで略半円形の同一形状であり、凹部14は断面形状が略半円形の同一形状のまま擁壁ブロック10の底面から上面まで連なっている。ここで、「短辺側面18の中央部に設けられた」とは、擁壁が形成された状態において凹部14を短辺側面18と直交する方向から見たとき、凹部14を形成する半円柱の中心軸が短辺側面18を2等分する鉛直線と一致する配置状態のことをいう。なお、本実施形態では凹部14の位置は擁壁ブロック10の短辺側面18の中央部に位置しているが、凹部14の位置は擁壁ブロック10の短辺側面18の中央部に必ずしも位置しなくてもよく、擁壁ブロック10の短辺側面18の中央部から短辺側面18と平行な方向に平行移動した位置にずれていてもよい。
【0027】
また、凹部14の形状は、正確には
図1に示すように、半径R
1の半円柱の溝を距離d
1だけ短辺側面18から短辺側面18と直交する方向に外側に平行移動させた形状であり、凹部14の深さは半径R
1から距離d
1を減じた長さ(R
1−d
1)である。
【0028】
凸部16は擁壁ブロック10の短辺側面20の中央部に設けられた略半円柱状の突起(蒲鉾形状の突起)であり、擁壁が形成された状態において擁壁ブロック10を水平面で切断したときの断面形状は擁壁ブロック10の底面から上面まで略半円形の同一形状であり、凸部16は断面形状が略半円形の同一形状のまま擁壁ブロック10の底面から上面まで連なっている。ここで、「短辺側面20の中央部に設けられた」とは、凸部16を短辺側面20と直交する方向から見たとき、凸部16を形成する半円柱の中心軸が短辺側面20を2等分する鉛直線と一致する配置状態のことをいう。なお、本実施形態では凸部16の位置は擁壁ブロック10の短辺側面20の中央部に位置しているが、凸部16の位置は擁壁ブロック10の短辺側面20の中央部に必ずしも位置しなくてもよく、擁壁ブロック10の短辺側面20の中央部から短辺側面20と平行な方向に平行移動した位置にずれていてもよい。
【0029】
また、凸部16の形状は、正確には
図1に示すように、半径R
2の半円柱の突起を距離d
2だけ短辺側面20から短辺側面20と直交する方向に外側にさらに突出させた形状であり、凸部16の突出長さは半径R
2に距離d
2を加えた長さ(R
2+d
2)である。
【0030】
凹部14の半円柱の半径R
1は凸部16の半円柱の半径R
2よりも大きく、凹部14の最大幅(擁壁が形成された状態における擁壁ブロック10を水平面で切断したときの断面における凹部14の深さ方向と直交する方向の凹部14の最大幅)は凸部16の最大幅(擁壁が形成された状態における擁壁ブロック10を水平面で切断したときの断面における凸部16の突出方向と直交する方向の凸部16の最大幅)よりも大きくなっている。このため、凸部16は凹部14に略嵌合できるようになっている。
【0031】
一方、凸部16の突出長さ(R
2+d
2)は凹部14の深さ(R
1−d
1)よりも長く、凸部16の先端部が凹部14の最深部に当接した状態において、凸部16の後端部は凹部14の中に入り込んでおらず、
図3(凸部16を凹部14に略嵌合させて擁壁ブロック10を一列に並べた状態を上方から見た平面図)に示すように、一方の擁壁ブロック10の凸部16の先端部が他方の擁壁ブロック10の凹部14の最深部に当接した状態において、当該2つの擁壁ブロック10の側面の間には幅B(=(R
2+d
2)−(R
1−d
1)=R
2−R
1+d
1+d
2)の隙間が生じている。また、前述したように、凹部14は断面形状が
略半円形の同一形状のまま擁壁ブロック10の底面から上面まで連なっており、凸部16は断面形状が略半円形の同一形状のまま擁壁ブロック10の底面から上面まで連なっている。このため、凸部16の先端部と凹部14の最深部とが当接した当接部位は擁壁ブロック10の底面から上面まで連続的に連なっている。
【0032】
また、
図3に示すように、擁壁ブロック10の2つの貫通孔12の中心間の距離は(A+B)/2であり、また、凸部16を凹部14に略嵌合させて擁壁ブロック10を一列に並べたとき、隣り合う擁壁ブロック10同士の隣り合う貫通孔12の中心間の距離が(A+B)/2となるような位置に貫通孔12は設けられている。したがって、貫通孔12の中心から短辺側面18、20までの距離X(
図1参照)は、X={A−(A+B)/2}/2=(A−B)/4である。
【0033】
貫通孔12の配置位置に合わせて、貫通孔12が挿通するコンクリート杭50も、隣り合うコンクリート杭50の中心間の距離が(A+B)/2となるような位置に設ける。コンクリート杭50は、十分な支持力が得られる深さまで地中に打ち込む。
【0034】
図3に示すように擁壁ブロック10を一列に並べたとき、隣り合う貫通孔12の中心間の距離はいずれも(A+B)/2であり、隣り合うコンクリート杭50の中心間の距離も(A+B)/2であり、さらに、擁壁ブロック10において、2つの貫通孔12の中心間の距離も(A+B)/2であるので、
図4(擁壁ブロック10を用いて構築した擁壁30の一部を示す側面図)に示すように、コンクリート杭50に挿通させつつ、第1段目の擁壁ブロック10の凸部16と凹部14とが略嵌合した略嵌合部位22の上に第2段目の擁壁ブロック10を積むことができる。また、コンクリート杭50に挿通させつつ、第2段目の擁壁ブロック10の凸部16と凹部14とが略嵌合した略嵌合部位24の上に第3段目の擁壁ブロック10を積むことができる。さらに、コンクリート杭50に挿通させつつ、第m段目の擁壁ブロック10の凸部16と凹部14とが略嵌合した略嵌合部位の上に第m+1段目の擁壁ブロック10を積むことができる。本実施形態では、このように段数が変わるごとに(A+B)/2ずつ配置位置をずらして擁壁ブロック10を積んで、擁壁30を構築することができる。
【0035】
即ち、上下方向に隣り合う、擁壁30を構成する擁壁ブロック10は、お互いに半重ね(ハーフラップ)の配置状態となる。このため、各段の擁壁ブロック列の平坦度を向上させやすくなる。各段の擁壁ブロック列の平坦度を向上させることにより、上下方向に隣り合う擁壁ブロックの間の隙間を減じることができる。
【0036】
次に、擁壁ブロック10の凸部16と凹部14とが略嵌合した部位の密着度が高くなるメカニズムについて説明する。
【0037】
図5は擁壁ブロック10の凸部16と凹部14とが略嵌合した部位の拡大図である。この略嵌合した部位では、凸部16の先端部が凹部14の最深部に当接している。凸部16と凹部14との間に小石等の介在物52があったとしても、凸部16と凹部14との当接部位54は鉛直方向に線状になっており、かつ、凸部16と凹部14との間の間隔は当接部位54である凸部16の先端部から離れるほど間隔が広くなっているため、凸部16と凹部14との間に小石等の介在物52があったとしても、
図5に示すように該介在物52は凸部16と凹部14との当接部位54からはじき出される。このため、凸部16の先端部と凹部14の最深部との当接(当接部位54における当接)は密着したものになる。
【0038】
一方、平面同士が当接した場合には当接部位は面となるため、小石等の介在物があった場合に当接部位からはじき出されず、当該平面同士の間には隙間が生じてしまう。
【0039】
なお、前述したように、凸部16の先端部と凹部14の最深部とが当接した当接部位54は擁壁ブロック10の底面から上面まで連続的に連なっているので、該当接部位54によって2分された凸部16と凹部14との間の隙間56、58は擁壁ブロック10の底面から上面まで連結している箇所はなく、土砂等が隙間56と隙間58との間を行き来することは困難である。
【0040】
以上説明した擁壁ブロック10は、凹部14、凸部16をそれぞれ短辺側面18、20に設けたが、
図6に示す擁壁ブロック32のように、短辺側面18、20の両方に凹部14を設けてもよく、また、
図7に示す擁壁ブロック34のように、短辺側面18、20の両方に凸部16を設けてもよい。
【0041】
また、短辺側面と長辺側面に1つずつ凹部14または凸部16を設けてもよく、この場合の例を
図8に示す。
図8に示す擁壁ブロック36は、短辺側面20に凹部14を設け、長辺側面38に凸部16を設けたが、短辺側面20と長辺側面38の両方に凹部14を設けてもよく、また短辺側面20と長辺側面38の両方に凸部16を設けてもよい。短辺側面と長辺側面に1つずつ凹部14または凸部16を設けた擁壁ブロックはコーナー部に好適に配置することができる。
【0042】
(擁壁の構築手順)
次に、擁壁ブロック10、32、34、36等(以下、擁壁ブロック10等と記す。)を用いて構築する擁壁30の構築手順の一例について説明する。
【0043】
まず、擁壁30を構築する場所に玉砂利を敷設する。敷設する玉砂利層の高さは例えば10cm程度を目安にする。敷設する玉砂利層の幅は、擁壁30の構築に用いる擁壁ブロック10の短辺の長さよりも80cm程度長くする。例えば、短辺の長さが175cmの擁壁ブロック10を用いる場合、敷設する玉砂利層の幅は例えば250cm程度とする。玉砂利を敷くことにより、第1段目の擁壁ブロック10等の平坦度を向上させることができる。
【0044】
玉砂利の敷設後、コンクリート杭50を、(A+B)/2の間隔を設けた所定の位置において、十分な支持力が得られる深さまで地中に打ち込む。海底にコンクリート杭50を打ち込む場合は、クレーン船により海上から打ち込んでもよい。
【0045】
そして、クレーンを用いて擁壁ブロック10等を持ち上げ、貫通孔12にコンクリート杭50を挿通させて、擁壁ブロック10等を所定の位置に設置し、擁壁ブロック10等の貫通孔12の中心がコンクリート杭50の中心と一致するように第1段目の擁壁ブロック10等を配置する。また、擁壁ブロック10等の凸部16と凹部14とが略嵌合するように配置する。なお、擁壁ブロック10等の貫通孔12の中心がコンクリート杭50の中心と一致することが好ましいが、厳密に一致することまでは求める必要はない。
【0046】
第1段目の擁壁ブロック10等の設置が完了し、第1段目の擁壁ブロック列の構築が完了したら、第2段目の擁壁ブロック10等を第1段目の擁壁ブロック列の上に積んでいく。第2段目の擁壁ブロック10等の設置においても、第1段目の擁壁ブロック10等の設置の場合と同様に、クレーンを用いて擁壁ブロック10等を持ち上げ、貫通孔12にコンクリート杭50を挿通させて、擁壁ブロック10等を所定の位置に設置し、擁壁ブロック10等の貫通孔12の中心がコンクリート杭50の中心と一致するように第2段目の擁壁ブロック10等を配置する。また、擁壁ブロック10等の凸部16と凹部14とが略嵌合するように配置する。ただし、第1段目の擁壁ブロック10等の凸部16と凹部14とが略嵌合した部位の上に第2段目の擁壁ブロック10を積んでいき、
図4に示すような半重ね(ハーフラップ)の配置状態となるように積んでいく。なお、擁壁ブロック10等の貫通孔12の中心がコンクリート杭50の中心と一致することが好ましいが、厳密に一致することまでは求める必要はない。
【0047】
以降は同様の手順を繰り返し、必要な段数に達するまで擁壁ブロック10等を設置する。
【0048】
なお、海底に擁壁ブロック10等を設置する場合、予め桟橋を構築して該桟橋上にクレーンを配置し、該クレーンを用いて擁壁ブロック10等を設置してもよい。
【0049】
擁壁ブロック10等の設置が完了したら、貫通孔12の内面とコンクリート杭50の外面との間隙にグラウト材を充填して、擁壁ブロック10とコンクリート杭50との一体化を行う。充填するグラウト材は特に限定されず、セメント(モルタル)系グラウト材、ガラス系グラウト材、合成樹脂系グラウト材等を用いることができるが、擁壁ブロック10を海中で積み上げて擁壁を構築する場合には水中コンクリートを用いる。
【0050】
また、グラウト材の充填は、必要な段数の擁壁ブロック10等の設置が完了した後に行ってもよいが、所定の段数の擁壁ブロック10等の設置が完了した段階で適宜行い、複数回に分けて充填を行ってもよい。
【0051】
充填したグラウト材の硬化が完了し、擁壁ブロック10等とコンクリート杭50との一体化が完了したら、擁壁30の完成である。
【0052】
擁壁30の完成後、必要に応じて、擁壁30の海に面していない側を土砂等で埋め立てる。
【0053】
擁壁30の海に面していない側を土砂等で埋め立てた後、擁壁ブロック10等の間の隙間から汚濁水が外部へ流出していることを万一発見したら、
図9に示すようなゴム板のワッパ40を、ダイバーに依頼して、
図10に示すように擁壁ブロック10等の間の隙間に叩き込む。
【0054】
ゴム板のワッパ40は、具体的には例えば、厚さ3mm程度のゴム板を40mm×750mm(擁壁ブロック10等の高さが750mmの場合)に切断して軽く折り曲げて、膨らみ部42の厚さYが15mm程度(隣り合う擁壁ブロック10等の隙間が10mmの場合)になるようにホッチキス44で止める。ワッパ40の幅Zの長さは20mm弱である。
【0055】
本実施形態の擁壁ブロックを用いて擁壁30を構築した場合、前述したように、2つの擁壁ブロック10の側面の間には幅B(=(R
2+d
2)−(R
1−d
1)=R
2−R
1+d
1+d
2)の隙間が生じている。したがって、この幅Bの隙間にゴム板のワッパ40を叩き込むことが可能になっており、汚濁水が外部へ流出することを抑制する効果をさらに向上させることができる。
【0056】
以上、本実施形態の擁壁ブロックの構成および擁壁の構築手順について説明したが、構築する海岸構造物の種類に応じて、擁壁30を2列に設けたり、四角形状に閉じるように設けてもよい。
【0057】
例えば、
図11に示すように、2列の擁壁60、62(外周の擁壁を擁壁60、内周の擁壁62とし、内周の擁壁62の高さを外周の擁壁60の高さよりも高くする。擁壁60、62自体の構成は擁壁30の構成と同様である。)を四角形状に閉じるように設け、外周の擁壁60と内周の擁壁62との間を土砂で埋めるとともに、内周の擁壁62の内側を土砂で埋めることにより、滑走路64と船着き場66を有する人工島70を海上に構築することも可能である。
【0058】
(本実施形態の効果)
擁壁ブロック10等を用いて構築した擁壁30、60、62は、先に
図5を用いて説明したように、凸部16が凹部14に略嵌合するが、凸部16の先端部と凹部14の最深部との当接は密着したものになる。また、凸部16の先端部と凹部14の最深部とが当接した当接部位は擁壁ブロック10の底面から上面まで連続的に連なっている。
【0059】
このため、擁壁30の海に面していない側を土砂等で埋め立てたり、外周の擁壁60と内周の擁壁62との間を土砂で埋めるとともに、内周の擁壁62の内側を土砂で埋め立てても、汚濁水が海へ流出することを抑制することができる。
【0060】
また、擁壁30、60、62は、十分な支持力が得られる深さまで地中に打ち込まれたコンクリート杭50と一体化しているので、大津波を受けても強固に抵抗することができ、大津波を受けても擁壁30、60、62が移動したり倒れたりすることを防止できる。