(54)【発明の名称】光導波路用感光性樹脂組成物および光導波路コア層形成用光硬化性フィルム、ならびにそれを用いた光導波路、光・電気伝送用混載フレキシブルプリント配線板
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材とその基材上にクラッド層が形成され、さらに上記クラッド層中に所定パターンで、光信号を伝搬するコア層が形成されてなる光導波路におけるコア層形成材料である請求項1〜3のいずれか一項に記載の光導波路用感光性樹脂組成物。
基材とその基材上にクラッド層が形成され、さらに上記クラッド層中に所定パターンで、光信号を伝搬するコア層が形成されてなる光導波路であって、上記コア層が、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光導波路用感光性樹脂組成物、または請求項5記載の光導波路コア層形成用光硬化性フィルムを硬化させることにより形成されてなることを特徴とする光導波路。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記技術課題を解消する方法としては、例えば、光硬化系の樹脂に代えて、熱硬化系樹脂や熱可塑性樹脂を用いることにより、光酸発生剤を使用しない配合系とすると、上記技術課題を回避することは可能となる。しかしながら、光導波路として、パターンデザインの自由度の維持等を考えた場合、従来のように光硬化系樹脂を用いた配合系とすることが好ましく、このような観点から、光硬化系樹脂を用いた配合系であり、かつ光損失の低減化を図ることのできるコア層形成材料が強く求められている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、光導波路形成用材料、特にコア層形成材料として、例えば、光導波路の伝搬光である波長850nmにおける低損失化を図ることのできる光導波路用感光性樹脂組成物および光導波路コア層形成用光硬化性フィルム、ならびにそれを用いた光導波路、光・電気伝送用混載フレキシブルプリント配線板の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、光硬化性樹脂および光重合開始剤を含有する光導波路用感光性樹脂組成物であって、
上記光硬化性樹脂が、下記の一般式(2)で表されるクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、および、下記の一般式(3)で表されるエポキシ樹脂の少なくとも一方であり、上記光重合開始剤が下記の一般式(1)で表される光酸発生剤である光導波路用感光性樹脂組成物を第1の要旨とする。
【化1】
【化2】
【化3】
【0008】
また、本発明は、上記第1の要旨である光導波路用感光性樹脂組成物をフィルム状に形成してなる光導波路コア層形成用光硬化性フィルムを第2の要旨とする。
【0009】
さらに、本発明は、基材とその基材上にクラッド層が形成され、さらに上記クラッド層中に所定パターンで、光信号を伝搬するコア層が形成されてなる光導波路であって、上記コア層が、上記第1の要旨の光導波路用感光性樹脂組成物、または上記第2の要旨の光導波路コア層形成用光硬化性フィルムを硬化させることにより形成されてなる光導波路を第3の要旨とする。
【0010】
そして、本発明は、上記第3の要旨の光導波路を備える光・電気伝送用混載フレキシブルプリント配線板を第4の要旨とする。
【0011】
本発明者は、高透明性を備えた、すなわち低損失化の実現可能な光導波路のコア層形成材料となる感光性樹脂組成物を得るために鋭意検討を重ねた。その結果、
特定の光硬化性樹脂を用い、かつ光重合開始剤として、上記一般式(1)で表される光酸発生剤を用いると、所期の目的が達成されることを見出し本発明に到達した。
【0012】
従来、一般的な光導波路コア層形成材料としては、光硬化によるパターニング性付与のために、光照射により酸発生感度を有する広いπ共役系骨格を有するトリフェニルスルフホニウム骨格を有する光酸発生剤が使用されている。しかしながら、このような骨格を有する光酸発生剤では短波長吸収の裾引きが長波長領域まで伸び、低損失化の妨げとなっていた。すなわち、硬化物の熱劣化(着色)の発生機構は、樹脂酸化劣化で生じるπ共役系拡張因子の発生に由来する。従来、光硬化性樹脂の配合設計において、光酸発生剤の選定指針は、パターニング性の観点から、露光波長365nmに対する感度を持たせた比較的広いπ共役系を持つカチオン骨格(例えば、トリフェニルスルホニウム塩系)を有する光酸発生剤が採用されてきた。しかし、この広いπ共役系骨格が酸発生後のカチオン残渣(死骸)の酸化劣化におけるπ共役系の拡張により着色しやすくなる要因であることから、好適には、ジフェニルヨードニウムカチオン系の光酸発生剤を用いることが高透明性(低損失)に関して有用であることを見出したのである。
【0013】
本発明においては、光酸発生剤として上記一般式(1)で表されるジフェニルヨードニウムカチオン系の光酸発生剤を用いるため、露光波長365nmに対する感度は皆無であり、混線露光(ブロード光)が必要となるが、得られる硬化物は、従来から使用されているトリフェニルスルホニウム塩系光酸発生剤よりも着色しにくく、高透明性の付与(低損失)が可能となるのである。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明は、
前記一般式(2)で表されるクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、および、前記一般式(3)で表されるエポキシ樹脂の少なくとも一方を用い、かつ光重合開始剤として前記一般式(1)で表される光酸発生剤を含有する光導波路用感光性樹脂組成物である。このため、この光導波路用感光性樹脂組成物を用いて、例えば、光導波路のコア層を形成した場合、優れた高透明性(低損失)が得られることとなる。
【0015】
そして、上記光重合開始剤の含有量が特定の範囲であると、良好な光硬化性が得られるとともに、より一層優れたパターニング性および初期損失の要求物性が得られるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
つぎに、本発明の実施の形態について詳しく説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0017】
《光導波路用感光性樹脂組成物》
本発明の光導波路用感光性樹脂組成物(以下、単に「感光性樹脂組成物」という場合がある。)は、
特定の光重合性樹脂、および、特定の光重合開始剤を用いて得られるものである。本発明においては、上記特定の光重合開始剤として、後述の光酸発生剤を用いることを特徴とする。なお、本発明において、「液状」、あるいは「固形」とは、25℃の温度下において「液状」または「固形」状態を呈することを意味する。
以下、各種成分について順に説明する。
【0018】
<光重合性樹脂>
上記光重合性樹脂としては、従来から使用されている芳香族系樹脂等があげられる。そして、上記芳香族系樹脂としては、常温で固形を示すものを用いることが好ましい。
【0019】
上記芳香族系樹脂としては
、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フルオレン骨格含有エポキシ樹
脂があげられる。これらは単独でもしくは2
種併せて用いられる。
【0020】
上記クレゾールノボラック型エポキシ樹脂は、常温にて固体を呈するものであり
、下記の一般式(2)で表されるクレゾールノボラック型エポキシ樹脂があげられる。
【0022】
上記式(2)において、好ましくはRは全てメチル基である。
【0023】
上記一般式(2)で表されるクレゾールノボラック型エポキシ樹脂として、具体的には、YDCN−704A、YDCN−700−10、YDCN−700−7、YDCN−700−5(いずれも新日鉄住金化学社製)等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0024】
また、上記フルオレン骨格含有エポキシ樹脂としては、主鎖にフルオレン骨格を有する液状エポキシ樹脂があげられ、これは常温にて液状を呈するものであり
、下記の一般式(3)で表されるエポキシ樹脂があげられる。
【0026】
上記式(3)において、好ましくはR
1〜R
6は水素原子であり、具体的には、オグソールEG−200(大阪ガスケミカル社製)等があげられる。
【0027】
<特定の光重合開始剤>
上記特定の光重合開始剤は、感光性樹脂組成物に対して光照射による硬化性を付与するために用いられるものである。そして、本発明においては、上記特定の光重合開始剤として、下記の一般式(1)で表される光酸発生剤が用いられる。
【0029】
上記式(1)中、好ましくはR
1,R
2は炭素数1〜15のアルキル基であり、特に好ましくは炭素数10〜13のアルキル基を有する混合物である。具体的には、WPI−116(和光純薬工業社製)等のヨードニウム塩タイプの光重合開始剤があげられる。
【0030】
上記特定の光重合開始剤[一般式(1)で表される光酸発生剤]の含有量は、感光性樹脂組成物の樹脂成分(光重合性樹脂)100重量部に対して0.1〜3重量部に設定することが好ましく、より好ましくは0.5〜1重量部である。すなわち、特定の光重合開始剤の含有量が少なすぎると、満足のいく光照射(紫外線照射)による光硬化性が得られ難く、多すぎると、光感度が上がり、パターニングに際して形状異常をきたす傾向がみられる、および、初期損失の要求物性が悪化する傾向がみられる。
【0031】
なお、本発明においては、上記一般式(1)で表される光酸発生剤のみを用いることが特に好ましい態様であるが、上記一般式(1)で表される光酸発生剤以外に、本発明の効果を阻害しない範囲において、従来から使用されている光酸発生剤を併用することもできる。このような光酸発生剤としては、例えば、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、p−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、p−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−クロルフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4−クロルフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジフェニルスルフォニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−(ジフェニルスルフォニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−Fe−ヘキサフルオロホスフェート等があげられる。従来から使用されている光酸発生剤を併用する場合の光重合開始剤全体の含有量は、上述の一般式(1)で表される光酸発生剤を用いた含有量に準ずる。
【0032】
本発明の感光性樹脂組成物には、上記光重合性樹脂と、上記特定の光重合開始剤以外に、必要に応じて、例えば、接着性を高めるためにシラン系あるいはチタン系のカップリング剤、オレフィン系オリゴマーやノルボルネン系ポリマー等のシクロオレフィン系オリゴマーやポリマー、合成ゴム、シリコーン化合物等の密着付与剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤やリン系酸化防止剤等の各種酸化防止剤、アントラセン・チオキサントン系増感剤等の増感剤、レベリング剤、消泡剤等があげられる。これら添加剤は、本発明における効果を阻害しない範囲内にて適宜に配合される。これらは単独でまたは2種類以上併用して用いることができる。
【0033】
上記酸化防止剤の配合量は、感光性樹脂組成物の樹脂成分(光重合性樹脂)100重量部に対して3重量部未満に設定することが好ましく、特に好ましくは0.5〜1重量部以下である。すなわち、酸化防止剤の含有量が多すぎると、初期損失の要求物性が悪化する傾向がみられる。
【0034】
本発明の感光性樹脂組成物は、上記光重合性樹脂および特定の光重合開始剤、さらには必要に応じて他の添加剤を、所定の配合割合にして撹拌混合することにより調製することができる。さらに、本発明の感光性樹脂組成物を塗工用ワニスとして調製するために、加熱下(例えば、60〜90℃程度)、有機溶剤に撹拌溶解させてもよい。上記有機溶剤の使用量は、適宜調整されるものであるが、例えば、感光性樹脂組成物の樹脂成分(光重合性樹脂)100重量部に対して20〜80重量部に設定することが好ましく、特に好ましくは30〜50重量部である。すなわち、有機溶剤の使用量が少なすぎると、塗工用ワニスとして調製した際に高粘度となり塗工性が低下する傾向がみられ、有機溶剤の使用量が多すぎると、塗工用ワニスを用いて厚膜に塗工形成することが困難となる傾向がみられる。
【0035】
上記塗工用ワニスを調製する際に用いられる有機溶剤としては、例えば、乳酸エチル、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、エチルラクテート、2−ブタノン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジグライム、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールメチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラメチルフラン、ジメトキシエタン等があげられる。これら有機溶剤は、単独でまたは2種類以上併用し、塗工に好適な粘度となるように、例えば、上記範囲内において所定量用いられる。
【0036】
《光導波路》
つぎに、本発明の感光性樹脂組成物をコア層の形成材料として用いてなる光導波路について説明する。
【0037】
本発明により得られる光導波路は、例えば、基材と、その基材上に、所定パターンで形成されたクラッド層(アンダークラッド層)と、上記クラッド層上に、光信号を伝搬する、所定パターンで形成されたコア層と、さらに、上記コア層上に形成されたクラッド層(オーバークラッド層)の構成からなる。そして、本発明により得られる光導波路では、上記コア層が、前述の感光性樹脂組成物によって形成されてなることが特徴である。また、上記アンダークラッド層形成材料およびオーバークラッド層形成材料に関しては、同じ成分組成からなるクラッド層形成用樹脂組成物を用いてもよいし、異なる成分組成の樹脂組成物を用いてもよい。なお、本発明により得られる光導波路において、上記クラッド層は、コア層よりも屈折率が小さくなるよう形成する必要がある。
【0038】
本発明において、光導波路は、例えば、つぎのような工程を経由することにより製造することができる。すなわち、基材を準備し、その基材上に、クラッド層形成材料である感光性樹脂組成物からなる感光性ワニスを塗工する。このワニス塗工面に対して紫外線等の光照射を行ない、さらに必要に応じて加熱処理を行なうことにより感光性ワニスを硬化させる。このようにしてアンダークラッド層(クラッド層の下方部分)を形成する。
【0039】
ついで、上記アンダークラッド層上に、本発明の感光性樹脂組成物を有機溶剤に溶解させてなるコア層形成材料(感光性ワニス)を塗工することによりコア形成用の未硬化層を形成する。このとき、上記コア層形成材料(感光性ワニス)を塗工した後、有機溶剤を加熱乾燥して除去することにより未硬化の光導波路コア層形成用光硬化性フィルムとなるフィルム形状に形成されることとなる。そして、このコア形成用未硬化層面上に、所定パターン(光導波路パターン)を露光させるためのフォトマスクを配設し、このフォトマスクを介して紫外線等の光照射を行ない、さらに必要に応じて加熱処理を行なう。その後、上記コア形成用未硬化層の未露光部分を、現像液を用いて溶解除去することにより、所定パターンのコア層を形成する。
【0040】
つぎに、上記コア層上に、上述のクラッド層形成材料である感光性樹脂組成物からなる感光性ワニスを塗工した後、紫外線照射等の光照射を行ない、さらに必要に応じて加熱処理を行なうことにより、オーバークラッド層(クラッド層の上方部分)を形成する。このような工程を経由することにより、目的とする光導波路を製造することができる。
【0041】
上記基材材料としては、例えば、シリコンウェハ、金属製基板、高分子フィルム、ガラス基板等があげられる。そして、上記金属製基板としては、SUS等のステンレス板等があげられる。また、上記高分子フィルムとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリイミドフィルム等があげられる。そして、その厚みは、通常、10μm〜3mmの範囲内に設定される。
【0042】
上記光照射では、具体的には紫外線照射が行なわれる。上記紫外線照射での紫外線の光源としては、例えば、低圧水銀灯,高圧水銀灯,超高圧水銀灯等があげられる。また、紫外線の照射量は、通常、10〜20000mJ/cm
2、好ましくは100〜15000mJ/cm
2、より好ましくは500〜10000mJ/cm
2程度があげられる。
【0043】
上記紫外線照射による露光後、光反応による硬化を完結させるためにさらに加熱処理を施してもよい。上記加熱処理条件としては、通常、80〜250℃、好ましくは、100〜150℃にて、10秒〜2時間、好ましくは、5分〜1時間の範囲内で行なわれる。
【0044】
また、上記クラッド層形成材料としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フッ素化エポキシ樹脂、エポキシ変性シリコーン樹脂等の各種液状エポキシ樹脂、固形エポキシ樹脂、さらには、前述の各種光酸発生剤を適宜含有する樹脂組成物があげられ、コア層形成材料と比較して適宜、低屈折率となる配合設計が行われる。さらに、必要に応じてクラッド層形成材料をワニスとして調製し塗工するため、塗工に好適な粘度が得られるように従来公知の各種有機溶剤、また、上記コア層形成材料を用いた光導波路としての機能を低下させない程度の各種添加剤(酸化防止剤、密着付与剤、レベリング剤、UV吸収剤)を適量用いてもよい。
【0045】
上記ワニス調製用に用いられる有機溶剤としては、前述と同様、例えば、乳酸エチル、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、エチルラクテート、2−ブタノン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジグライム、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールメチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラメチルフラン、ジメトキシエタン等があげられる。これら有機溶剤は、単独でまたは2種類以上併用して、塗布に好適な粘度が得られるように、適量用いられる。
【0046】
なお、上記基材上における、各層の形成材料を用いての塗工方法としては、例えば、スピンコーター、コーター、円コーター、バーコーター等の塗工による方法や、スクリーン印刷、スペーサを用いてギャップを形成し、そのなかに毛細管現象により注入する方法、マルチコーター等の塗工機によりR−to−R(ロール・トゥ・ロール)で連続的に塗工する方法等を用いることができる。また、上記光導波路は、上記基材を剥離除去することにより、フィルム状光導波路とすることも可能である。
【0047】
このようにして得られた光導波路は、例えば、光・電気伝送用混載フレキシブルプリント配線板用の光導波路として用いることができる。
【実施例】
【0048】
つぎに、本発明を実施例に基づいて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
【0049】
[実施例1]
下記のようにしてコア層形成材料となる感光性ワニスを調製した。
【0050】
<コア層形成材料の調製>
遮光条件下にて、クレゾールノボラック型多官能エポキシ樹脂(YDCN−700−10、新日鉄住金化学社製)100部、光酸発生剤(WPI−116、和光純薬工業社製:式(1)中、R
1,R
2は炭素数10〜13のアルキル基の混合物)1部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(Songnox1010、共同薬品社製)0.5部、リン系酸化防止剤(HCA、三光社製)0.5部を、乳酸エチル40部に混合し、85℃加熱下にて撹拌完溶させ、その後室温(25℃)まで冷却した後、直径1.0μmのメンブランフィルタを用い加熱加圧濾過を行なうことにより、コア層形成材料となる感光性ワニスを調製した。
【0051】
[
参考例1]
コア層形成材料である感光性ワニスの調製において、芳香族樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコート1002、三菱化学社製)100部を用いた。それ以外は実施例1と同様にしてコア層形成材料となる感光性ワニスを調製した。
となる感光性ワニスを調製した。
【0052】
[実施例
2]
コア層形成材料である感光性ワニスの調製において、芳香族樹脂としてフルオレン骨格含有エポキシ樹脂(オグソールEG−200、大阪ガスケミカル社製)100部を用い、乳酸エチルの配合量を30部とした。それ以外は実施例1と同様にしてコア層形成材料となる感光性ワニスを調製した。
【0053】
[
参考例2]
コア層形成材料である感光性ワニスの調製において、芳香族樹脂として液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(JER828、三菱化学社製)100部を用い、乳酸エチルの配合量を20部とした。それ以外は実施例1と同様にしてコア層形成材料となる感光性ワニスを調製した。
【0054】
[
参考例3]
コア層形成材料である感光性ワニスの調製において、芳香族樹脂として、クレゾールノボラック型多官能エポキシ樹脂(YDCN−700−10、新日鉄住金化学社製)50部およびビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコート1002、三菱化学社製)50部の併用系を用いた。それ以外は実施例1と同様にしてコア層形成材料となる感光性ワニスを調製した。
【0055】
[実施例
3]
コア層形成材料である感光性ワニスの調製において、芳香族樹脂として、クレゾールノボラック型多官能エポキシ樹脂(YDCN−700−10、新日鉄住金化学社製)50部および固形のエポキシ樹脂(オグソールEG−200、大阪ガスケミカル社製)50部の併用系を用いた。それ以外は実施例1と同様にしてコア層形成材料となる感光性ワニスを調製した。
【0056】
[実施例
4、
5]
コア層形成材料である感光性ワニスの調製において、光酸発生剤の配合量をそれぞれ0.1部(実施例
4)、3部(実施例
5)に変えた。それ以外は実施例1と同様にしてコア層形成材料となる感光性ワニスを調製した。
【0057】
[比較例1]
コア層形成材料である感光性ワニスの調製において、光酸発生剤(WPI−116、和光純薬工業社製)に代えて光酸発生剤(SP−170、アデカ社製)を用いた。それ以外は実施例1と同様にしてコア層形成材料となる感光性ワニスを調製した。
【0058】
[比較例2]
コア層形成材料である感光性ワニスの調製において、光酸発生剤(WPI−116、和光純薬工業社製)に代えて光酸発生剤(SP−170、アデカ社製)を用いた。それ以外は
参考例1と同様にしてコア層形成材料となる感光性ワニスを調製した。
【0059】
[比較例3]
コア層形成材料である感光性ワニスの調製において、光酸発生剤(WPI−116、和光純薬工業社製)に代えて光酸発生剤(SP−170、アデカ社製)を用いた。それ以外は実施例
2と同様にしてコア層形成材料となる感光性ワニスを調製した。
【0060】
[比較例4]
コア層形成材料である感光性ワニスの調製において、光酸発生剤(WPI−116、和光純薬工業社製)に代えて光酸発生剤(SP−170、アデカ社製)を用いた。それ以外は
参考例2と同様にしてコア層形成材料となる感光性ワニスを調製した。
【0061】
このようにして得られた各コア層形成材料である感光性ワニスを用いて、損失評価(材料損失)を下記に示す方法に従って測定・評価した。これらの結果をコア層形成材料の配合組成とともに後記の表1および表2に併せて示す。
【0062】
[損失評価(材料損失)]
酸化膜付きのシリコン基板(厚み約500μm)上に、スピンコート法により上記実施例
、参考例および比較例にて得られた感光性ワニスを厚み5〜10μm程度となるように塗工した。ついで、ホットプレート上にてプリベーク(100℃×5分間)した後、混線(ブロード光)にて5000mJ(波長365nm積算)の露光を行ない、後加熱(120℃×5分間)を行なうことにより薄膜を形成した。つぎに、上記薄膜中に波長850nmの光をプリズムカップリングにより入射させ、上記薄膜中を伝搬させた。そして、伝搬長を変えて、その長さにおける光強度を光計測システム(オプティカルマルチパワーメーターQ8221、アドバンテスト社製)にて測定し、伝搬長に対する光損失をプロットし、直線近似を行ない、その直線の傾きから各感光性ワニスにおける材料損失を算出し、下記の基準に基づき評価した(プリズムカップラー法)。
○:材料損失が0.04dB/cm以下であった。
×:材料損失が0.04dB/cmを超える結果となった。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
上記結果から、
光硬化性樹脂として、前記一般式(2)で表されるクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、および、前記一般式(3)で表されるエポキシ樹脂の少なくとも一方を用い、光酸発生剤として、前記一般式(1)で表される特定の光酸発生剤を用いた感光性樹脂組成物(実施例品)は、損失評価(材料損失)に関して良好な評価結果が得られた。
【0066】
これに対して、光酸発生剤が従来のものを用いた感光性樹脂組成物(比較例品)は、損失評価(材料損失)に関して劣る評価結果が得られた。
【0067】
[光導波路の作製]
つぎに、上記実施例のコア層形成材料となる感光性ワニスを用いて光導波路を作製した。まず、光導波路の作製に先立って、クラッド層形成材料である感光性ワニスを調製した。
<クラッド層形成材料の調製>
遮光条件下にて、液状二官能フッ化アルキルエポキシ樹脂(H022、東ソーエフテック社製)50部、液状二官能脂環式エポキシ樹脂(セロキサイド2021P、ダイセル社製)50部、光酸発生剤(アデカオプトマーSP−170、アデカ社製)4.0部、リン系酸化防止剤(HCA、三光社製)0.54部、シランカップリング剤(KBM−403、信越シリコーン社製)1部を混合し80℃加熱下にて撹拌完溶させ、その後室温(25℃)まで冷却した後、直径1.0μmのメンブランフィルタを用いて加熱加圧濾過を行なうことにより、クラッド層形成材料となる感光性ワニスを調製した。
【0068】
《光導波路の作製》
<アンダークラッド層の作製>
スピンコーターを用いて、上記クラッド層形成材料である感光性ワニスを厚み約500μmのシリコンウェハ上に塗工した後、混線(ブロード光)にて5000mJ(波長365nm積算)の露光を行なった。その後、130℃×10分間の後加熱を行なうことによりアンダークラッド層(厚み20μm)を作製した。
【0069】
<コア層の作製>
形成されたアンダークラッド層上に、スピンコーターを用いて、コア層形成材料である感光性ワニス(実施例1品)を塗工した後、ホットプレート上にて有機溶剤(乳酸エチル)を乾燥させる(130℃×5分間)ことにより、未硬化フィルム状態の未硬化層を形成した。形成された未硬化層に対して、混線(ブロード光)にて9000mJ(波長365nm積算)のマスクパターン露光〔パターン幅/パターン間隔(L/S)=50μm/200μm〕を行ない、後加熱(140℃×5分間)を行なった。その後、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)中にて現像(25℃×3分間)を行ない、水洗し、ホットプレート上にて水分を乾燥(120℃×5分間)させることにより、所定パターンのコア層(厚み55μm)を作製した。
【0070】
このようにしてシリコンウェハ上に、アンダークラッド層が形成され、このアンダークラッド層上に所定パターンのコア層が形成された光導波路を作製した。作製された光導波路は、上記製造工程において問題も生じず良好なものであった。