特許第6274661号(P6274661)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東レエンジニアリング株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6274661-乾燥装置 図000002
  • 特許6274661-乾燥装置 図000003
  • 特許6274661-乾燥装置 図000004
  • 特許6274661-乾燥装置 図000005
  • 特許6274661-乾燥装置 図000006
  • 特許6274661-乾燥装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6274661
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】乾燥装置
(51)【国際特許分類】
   F26B 13/10 20060101AFI20180129BHJP
   F26B 3/30 20060101ALI20180129BHJP
   B05C 9/14 20060101ALI20180129BHJP
   B05C 13/02 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
   F26B13/10 A
   F26B3/30
   B05C9/14
   B05C13/02
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-71564(P2014-71564)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-194278(P2015-194278A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2017年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岸谷 征典
【審査官】 西田 侑以
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−094605(JP,A)
【文献】 特開平05−297557(JP,A)
【文献】 米国特許第04231164(US,A)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒を含む塗料が塗布されたウエブ状の基材を搬送しながら前記塗料を乾燥させる乾燥装置であって、
基材保持用の複数のガイドロールと、
複数のガイドロール毎に、前記基材と接触していない外周面に、赤外線を照射する赤外線照射装置を備え、
赤外線を照射されたガイドロールが、基材の反塗膜面を加熱することを特徴とする乾燥装置。
【請求項2】
請求項1に記載の乾燥装置であって、
個々の赤外線照射手段の照射出力を制御する制御手段を備え、
ガイドロールの表面温度を測定する温度測定手段を備え、
個々のガイドロールの表面温度が所定の温度となるように、個々のガイドロールに対応する赤外線照射手段の照射出力を制御することを特徴とする乾燥装置。
【請求項3】
請求項2に記載の乾燥装置であって、
前記基材の搬送方向に沿って、上流側のガイドロールより下流側のガイドロールの表面温度を上げるよう、前記制御手段が個々の赤外船照射手段の照射出力を制御することを特徴とする乾燥装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の乾燥装置であって、
真空排気機構を備え、
基材の塗布面側に対して、反塗布面側の圧力を下げることを特徴とする乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエブ状の基材に塗布された塗料を乾燥させるための乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルム等のウエブ状基材の表面に種々の機能を付与する方法の一つとして、溶液コーティングがよく知られている。溶液コーティングは、溶媒を含む塗料を基材表面に均一に塗布した後に、溶媒分を蒸発させて塗膜を形成するものである。溶液コーティング溶液に関連する主な装置としては、塗料を均一に塗布するための塗布装置と、溶媒分を迅速かつ均一に蒸発させるための乾燥装置があり、それぞれの要素技術開発が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−340479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乾燥装置に関しては、従来より熱風乾燥、赤外線ヒータ、ロール加熱が良く知られており、それぞれが長所・短所を有している。図4に示す熱風乾燥においては、加熱温度を一定にし易いという長所がある一方で、大きな容積が必要となり加熱効率が低いという短所がある。また、熱風を塗料に吹き付けることから、溶媒分の多い乾燥初期の段階においては、塗布膜表面に風紋が発生する懸念がある。この熱風乾燥の欠点を解消したものとして、図5に示す赤外線ヒータ9による乾燥がある。赤外線ヒータ9による乾燥では、図5のように基材2を直接加熱することから加熱効率は良く、塗膜表面に風紋が発生する懸念もない。ただし、赤外線輻射による基材2の直接加熱であるため、加熱温度を一定に制御することが難しい。また、図6に示すロール加熱による乾燥は、温度制御した加熱ロール11を用いるため加熱温度は一定に制御され、基材2を加熱ロール11に巻き付ければ、加熱効率も高くできる。しかし、図6のように加熱されると、基材が加熱ロール11表面上で熱伸縮するため、加熱ロール11表面との擦れにより基材表面にキズが発生する懸念がある。なお、特許文献1において、熱風乾燥と赤外線ヒータを組み合わせた例が示されているが、これは熱風乾燥の風速を下げ、その分の加熱能力を赤外線ヒータで補おうとしたものであり、塗布膜表面の風紋発生を抑える効果はあるものの加熱効率の改善を目的としたものではない。
【0005】
本発明は、上記のような従来の乾燥装置においては困難であった、高い熱効率、加熱温度制御性を両立し、なおかつウエブ状基材および塗布膜の品質に悪影響を及ぼさない乾燥装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、溶媒を含む塗料が塗布されたウエブ状の基材を搬送しながら前記塗料を乾燥させる乾燥装置であって、基材保持用の複数のガイドロールと、複数のガイドロール毎に、前記基材と接触していない外周面に、赤外線を照射する赤外線照射装置を備え、赤外線を照射されたガイドロールが、基材の反塗膜面を加熱することを特徴とする乾燥装置である。
【0007】
この装置では、複数のガイドロールがウエブ状の基材に接触するため、基材をロールに巻き付けなくとも、効率よく加熱することが出来る。また、ガイドロールは外部から加熱するため、ヒータを内臓する必要がなく、小径ロール化が可能で、ウエブ走行方向に多数配置することも可能になる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の乾燥装置であって、個々の赤外線照射手段の照射出力を制御する制御手段を備え、ガイドロールの表面温度を測定する温度測定手段を備え、個々のガイドロールの表面温度が所定の温度となるように、個々のガイドロールに対応する赤外線照射手段の照射出力を制御することを特徴とする乾燥装置である。
【0009】
この装置では、個々のガイドロールの温度制御により、ウエブ状の基材の加熱温度をガイドロール毎に設定して制御することが可能である。これにより、請求項3に記載の発明のように、前記基材の搬送方向に沿って、上流側のガイドロールより下流側のガイドロールの表面温度を上げるよう、前記制御手段が個々の赤外船照射手段の照射出力を制御することを特徴とする乾燥装置も実現し、ウエブ状の基材の搬送方向に沿って、徐々に加熱温度を上げるようなことも可能となる。
【0010】
請求項に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の乾燥装置であって、真空排気機構を備え、基材の塗布面側に対して、反塗布面側の圧力を下げることを特徴とする乾燥装置である。
【0011】
この装置を用いれば、ガイドロール間のウエブ状基材に、塗布面側から差圧が加わることになる。このため、ウエブ状の基材と各ガイドロールとの接触面積が増して、加熱効率を向上させることが出来る。
【発明の効果】
【0012】
高い熱効率、加熱温度制御性を両立し、なおかつウエブ状基材および塗布膜の品質に悪影響を及ぼさない乾燥を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態の乾燥装置を説明する図である。
図2】本発明の一実施形態における温度制御系を説明する図である。
図3】本発明の別の実施形態の乾燥装置を説明する図である。
図4】公知の熱風乾燥装置を説明する図である。
図5】公知の赤外線ヒータによる乾燥装置を説明する図である。
図6】公知のロール加熱による乾燥装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態である乾燥装置1の概略構成を示す図である。図1において、ウエブ状の基材2が左から右に搬送される構成となっており、図の左側においてウエブ状の基材2の上面には図示しない塗布装置により、塗料が塗布されている。ここで、塗料は、有機溶剤や水等を溶媒として、樹脂成分等が溶け込んだ溶液塗料であって、塗布装置としては溶液塗料の種類に応じて選ばれるが、スリットダイコータやロールコータが一般的に用いられる。
【0016】
ウエブ状の基材2の材質は、用途に応じて選ばれるが、耐溶媒性があって、乾燥工程での熱に耐える特性を有している必要がある。具体的には、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂等のプラスチックフィルム、カーボンペーパー等の複合材料、金属箔がウエブ状の基材2となる。
【0017】
乾燥装置1の主な構成要素は、複数のガイドロール3と、各ガイドロールに赤外線を照射する赤外線照射装置4である。図1においては、ウエブ状の基材2の搬送方向に沿って、ガイドロール31、32、33、34、35があって、各ガイドロールに赤外線を照射するための手段として、赤外線照射装置41、42、43、44、45が配置されている。ここで、ガイドロールおよび赤外線照射装置がそれぞれ5つ配置されているが、この数は5に限定されるものではなく、これより少なくても多くても良い。なお、図におけるガイドロール、赤外線装置を限定しない場合は、ガイドロール3、赤外線照射装置4と表記する。
【0018】
ガイドロール3の素材としては、耐熱性および表面の平滑性の観点から金属が適し、表面に防食メッキを施すことが望ましいが、更に赤外線を吸収しやすいような着色を施してもよい。また、赤外線照射装置4としては、特に種類を限定するものではないが、ガイドロール3に効率的かつ均一に赤外線を照射して加熱できるものを選定する必要がある。
【0019】
図1の乾燥装置1では、ガイドロール3による接触加熱により、基材に効率よく熱を伝えることが出来る。また、基材2は、個々のガイドロール3で急激に昇温されることはないので、熱変形し難く、ガイドロール3に巻き付いてもいないので、ガイドロール3表面との擦れによってキズが発生することはない。
【0020】
ここで、図2のように、赤外線照射手段4の照射出力を制御手段6で制御可能にして、ガイドロール3の表面温度を温度測定手段3Tにより測定して制御手段6に入力する構成とすれば、ガイドロール3の表面温度が所定の温度になるように制御することが可能である。特に、ガイドロール3が小径であれば、応答の早い温度制御が出来る。
また、個々のガイドロール3毎に表面温度の制御が出来ることから、乾燥の前段階(ウエブ搬送方向の上流側)から徐々に(ウエブ搬送方向の下流側に向けて)ガイドロール3の温度を上げて行くようなことも可能になる。ウエブ状の基材2を搬送方向に沿って徐々に加熱することにより、溶媒分の突沸を抑えることも可能になる。
【0021】
なお、この実施形態の乾燥装置を、ウエブ状の基材2の予備加熱のみに使用しても良い。例えば、予備加熱で溶媒分を蒸発させ、塗布膜の熱硬化に必要な加熱を従来の乾燥装置で行うような場合である。この場合、予備加熱段階での溶媒分の蒸発によって、塗布膜の粘度が上昇していることから、その後の加熱を熱風乾燥機で行っても塗膜に風紋を生じることはない。
【0022】
更に、本発明の別の実施形態である乾燥装置100の概略構成を図3に示すが、乾燥装置100では装置筐体7とウエブ状の基材2によって閉じた空間が形成できるようになっている。そこで、装置筐体7に真空排気口7Vを設けて、装置筐体7内を図示しない真空ポンプおよび真空排気口7Vからなる真空排気機構で減圧すれば、ガイドロール3間のウエブ状の基材2に、塗布面側から差圧が加わる。このため、ウエブ状の基材2と各ガイドロール31、32、33、34、35との接触面積が増して、加熱効率が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0023】
ウエブ状の基材に塗布された塗料の乾燥を、高い熱効率、加熱温度制御性を両立し、なおかつ基材および塗布膜の品質に悪影響を及ぼさないで行うことが出来ることから、ウェブコーティング装置全般に利用可能である。
【符号の説明】
【0024】
1、100 乾燥装置
2 ウエブ状の基材
3(31、32、33、34、35) ガイドロール
3T 温度測定手段
4(41、42、43、44、45) 赤外線照射装置
6 制御手段
7 装置筐体
7V 真空排気口
図1
図2
図3
図4
図5
図6