特許第6274667号(P6274667)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許62746672つのコンタクト部材間の電気的接続部における境界抵抗を改善する方法及び2つのコンタクト部材間に電気的接続部を有するコンポーネント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6274667
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】2つのコンタクト部材間の電気的接続部における境界抵抗を改善する方法及び2つのコンタクト部材間に電気的接続部を有するコンポーネント
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/18 20060101AFI20180129BHJP
   B23K 35/363 20060101ALI20180129BHJP
   H01R 13/03 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
   H01R4/18 A
   B23K35/363 Z
   H01R13/03 Z
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-524354(P2014-524354)
(86)(22)【出願日】2012年8月6日
(65)【公表番号】特表2014-525643(P2014-525643A)
(43)【公表日】2014年9月29日
(86)【国際出願番号】EP2012065329
(87)【国際公開番号】WO2013020947
(87)【国際公開日】20130214
【審査請求日】2015年7月9日
【審判番号】不服2017-1080(P2017-1080/J1)
【審判請求日】2017年1月25日
(31)【優先権主張番号】102011052499.1
(32)【優先日】2011年8月8日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501090342
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツンク
【氏名又は名称原語表記】TE Connectivity Germany GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(72)【発明者】
【氏名】ブリューメル ウベ
(72)【発明者】
【氏名】シュミット ヘルゲ
【合議体】
【審判長】 平田 信勝
【審判官】 中村 達之
【審判官】 滝谷 亮一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第5225066(US,A)
【文献】 特開2003−247083(JP,A)
【文献】 特開2010−69495(JP,A)
【文献】 特開平4−96981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R4/18
H01R43/048
B23K35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤ(1a)又は撚り線(1b)である第1のコンタクト部材(1)の少なくとも1つの接触面(3)と第2のコンタクト部材(2)の接触面(4)との間の塑性変形によって電気的接触部を生成する方法であって、
前記接触面(3,4)の少なくとも一方に化学的還元物質(6)が塗布され、
前記化学的還元物質が、一方の接触面の塑性変形状態において無加熱且つ圧力下で少なくとも部分的に破裂するサブミリメートルの球体にカプセル化されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記化学的還元物質(6)が酸であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸が有機酸であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記化学的還元物質がフラックス剤であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも2つのコンタクト部材(1,2)を含有し、各コンタクト部材が夫々少なくとも1つの接触面(3,4)を有し、少なくとも1つのコンタクト部材(1,2)が塑性変形されている電気コンポーネントであって、
化学的還元物質が少なくともコンタクト部材の一部上に存在し、
前記化学的還元物質が、無加熱且つ圧力下で破裂するサブミリメートルの球体に埋め込まれていることを特徴とする電気コンポーネント。
【請求項6】
前記化学的還元物質が酸であることを特徴とする請求項5に記載の電気コンポーネント。
【請求項7】
前記化学的還元物質が有機酸であることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の電気コンポーネント。
【請求項8】
前記化学的還元物質がフラックス剤であることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載の電気コンポーネント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つのコンタクト部材間の電気的接続部、特に圧力接続部における境界抵抗(transition resistance)を改善する方法に関する。本発明は、更に、2つのコンタクト部材を備えるコンポーネントに関する。この2つのコンタクト部材間には電気的接続部が存在し、具体的には圧力接続部、特にワイヤと圧着コンタクトとの間の圧着接続部が存在する。
【背景技術】
【0002】
2つの導電性のコンタクト部材間の接続部、特に、少なくとも1つのコンタクト部材の塑性変形、例えば挟着(pinching)によって生じる接続部、例えばワイヤ又は撚り線と圧着部材との接続部は、経時的に非常に大きくなる境界抵抗を有する可能性がある。特にコンタクト部材が、例えば移動や引張/曲げ荷重等の機械的影響又は例えば常に変化する温度等の熱負荷を受け、及び/又は、ワイヤが小さな断面を有する及び/又は軟質材料からなる場合、この影響は益々顕著になる。境界抵抗が増加することにより、接続された電気回路はその機能を損なうか、故障する。
【0003】
本発明は、特に、引張荷重による数百回の冷熱サイクル後であっても境界抵抗が大きく増加しない、長期間安定した接続部を提供するものである。このような荷重は、例えば、自動車産業において標準試験として使用されるスローモーションベンディングテスト(SMBT)によってシミュレートされる。
【0004】
かかる2つのコンポーネント間に耐久性のある安定した電気的接続部を生成するために、半田接続部が使用されることが多い。しかし、この接続部の生成は、コンポーネントに熱負荷を与える。更に、多くの半田が重金属を含有し、従って環境汚染源となる。かかる半田接続部を生成するための作業費用も比較的大きい。
【0005】
米国特許第5,225,066号明細書は、ワイヤと圧着コンタクトとの間の長期間安定した電気的接続部を生成する方法を提示しており、このワイヤと圧着コンタクトの材料は異なる酸化還元電位を有していなければならない。ワイヤと圧着コンタクトとの間に電解質が導入された後、ある金属の電解質を介した他の金属への移動が開始され、ワイヤと圧着コンタクトの間に架橋する金属接続部が生じる。このためには、ワイヤ、圧着コンタクト、及び電解質が同時に接触していることが必要である。2つのコンタクト部材間の接続部は、類似又は同一の酸化還元電位を有する材料から、特に同一材料から生成されるが、結果的に、困難を伴ってのみ可能又は全く不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、特に、コンタクト部材が類似又は同一の酸化還元電位を有する材料からなる場合であっても、塑性変形によって、例えば圧着によって、物質的に係止する方式ではなく単にポジティブロック方式又は非ポジティブロック方式で接続される2つのコンタクト部材間に特に長期間安定した電気的接続部を生成することであり、熱負荷又は環境への危険性を取り除くことを意図する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、化学的還元物質がコンタクト部材の少なくとも1つの接触面に塗布される本発明に従って達成される。
【0008】
この手段により、接触面上に存在する酸化物層が減少し、導電性及び冷間圧接密度が増加する。
【0009】
先行技術に記載の方法とは対照的に、2つのコンタクト部材と化学的還元物質が同時に接触している必要はない。各コンタクト部材は個別に処理されることができる。
【0010】
更に、類似の又は同一の酸化還元電位を有する材料で構成される、特に同一材料から構成される2つのコンタクト部材を接続することができる。
【0011】
本発明に従う解決策は、所望の通りに組み合わせることができ、それ自体が有利な以下の付加的な構成によって更に改善することができる。
【0012】
効果を制御するため、化学的還元物質は希釈されてもよい。これによりコストを削減することができる。更に、化学的還元物質又は溶媒に更なる効果を有するその他の物質を導入することができる。例えば、かかる添加剤は脱脂又は導電効果を有することができる。
【0013】
化学的還元物質の塗布は、様々な技術、例えば圧力、浸漬、噴射、又は塗装の技術を使用して行うことができる。特に、時間と材料が節約できるので接触面は選択的にのみ化学的還元物質によって処理されると有利である。
【0014】
化学的還元物質が接触面上に残り、化学的還元物質を除去する更なるステップを省いてもよい。それにより、消費される時間、作業及びコストを削減することができる。特に化学的還元物質が1つの接触面にのみ塗布され、これが接触ステップの前に行われる場合、前記消費は最小限に抑えられる。化学的還元物質が接続部に残っているので、接触面の新たな酸化、汚染、又は例えば水等の流体の侵入が防止される。しかしながら、やはり、多くの用途では、還元物質は接触工程の前に除去されると有利である。表面の中間酸化を防止するため、この場合、化学的還元物質を除去することと接触工程との間の期間をできる限り短くする、又は中間作業工程が無酸素雰囲気中で行われる必要がある。
【0015】
組立中の消費時間を減少するため、化学的還元物質の塗布は、接触工程、例えば挟着作業と同時に行われることができる。例えば、マイクロメータリングデバイスを使用して接触面の一方に化学的還元物質を塗布することができる。
【0016】
化学的還元物質は、コンタクト部材の生成中又は前の作業ステップにおいて既に塗布されていてもよい。例えば、ワイヤは予め化学的還元物質を含有していてもよく、或いは、化学的還元物質は、例えば圧着コンタクトの生成において使用されるパンチングオイルの中に含有されていてもよい。
【0017】
化学的還元物資は酸でもよい。酸により、コンタクト部材の接触面は、特に金属の場合、エッチングされて表面が粗くなり、それによって活性表面積が更に増加し、その結果、冷間圧接密度が更に増加する。更に、酸の中にはイオンが存在するので、化学的還元物質がアクティブ工程(active step)の後に接触面上に残っている場合であっても、接触面同士間の導電性が保証される。特に鉱酸は明らかな酸の特徴を有し、従って強力なエッチング効果と同時に高いイオン濃度をもたらす。
【0018】
本方法の有利な実施形態では、化学的還元物質として有機酸が使用される。これにより、有機酸が一般的に人体及び環境に対して非毒性であるという利点が得られる。更に、有機酸は大抵の場合弱酸性であり、接触面は、通常、金属からなるが、不必要に過剰に腐食されることが防止される。また、有機酸は、通常、ほとんど安全要件がなく、生成及び保存が単純である。特に、長鎖有機酸は匂いがなく大抵の場合クリーム状又はワックス状であるため、長鎖有機酸の使用は有利である。低酸強度との組み合わせにおけるこの稠度により、有機酸は、化学的還元物質を接続部に残そうとする用途では特に適したものとなる。かかる有機酸の例としては、パーム油酸、脂肪酸、ピメリン酸、アジピン酸、グルタル酸、マロン酸、及びバーンスタイン(Bernstein)酸がある。
【0019】
化学的還元物質は、還元効果を有する複数の官能基を有すると還元効果が増加するので特に有利である。
【0020】
化学的還元物質は、弱酸性又は弱アルカリ性、即ち、pH値が4.5乃至9.5の範囲内であってもよい。これにより、酸化物層に対する還元効果があっても、その下にある接触面は、通常、ほんの僅かに腐食されるだけであるという利点が得られる。その結果、比較的長く働いたとしても、例えば、化学的還元物質が接続部に残っていても、よく制御されることができる効果が生じる。
【0021】
本方法の有利な実施形態では、化学的還元物質はフラックス剤である。フラックス剤は電気機器又は電子機器において半田接続部を生成するものとして広く知られている。よって、既にその性質、特に様々な材料に対する耐性に関する広い知識が存在する。従って、フラックス剤の選択は、接続対象のコンタクト部材に対して調整することができる。かかるフラックス剤は、化学的還元物質に加えて、その他の物質を更に含有、又はその他の有利な性質を有してもよい。例えば、フラックス剤は脱脂効果を更に有してもよく、これによりコンタクト部材同士間の電気的接続部が更に改善される。しかしながら、半田接続部とは対照的に、接続しているコンタクト部材を後から更なる半田付けによって物質的に完全に接続することはない。特に接続箇所を加熱する必要がない。
【0022】
特に化学的還元物質が接触面に残る場合に電気的接続部を確保するために、化学的還元物質は同時に導電性であると有利である。例えば、イオン又はその他の自由電荷担体を含有する、又は更なる導電性粒子が化学的還元物質中に埋め込まれる。例えば、酸又は電解質は特に適していると思われる。自由電荷担体のイオンは、酸化物層との反応のみによって生成されてもよい。
【0023】
本方法の有利な実施形態によれば、化学的還元物質は、クリームのような又はワックスのような稠度を有する。これにより、化学的還元物質の塗布が容易になり、化学的還元物質が、残りの処理中に接触面に残留し、滴り落ちたり蒸発したりすることがないことが保証される。特に、化学的還元物質の塗布と接続工程との間の期間が比較的長い場合、結果的に、接触面上に未だ十分な化学的還元物質があることが保証される。稠度は、例えば長鎖又は分枝化学構造による、化学的還元物質の固有の性質であってもよく、或いは、稠度を増大又は低下する物質の添加によって得られるものであってもよい。例えば、増粘剤又は溶媒を添加することができる。製造仕様により、稠度が硬い方が望ましい場合もある。化学的還元物質は、例えば化学的還元物質の塗布を又は除去を容易にする液体状であることが望ましい場合もある。
【0024】
本方法の特に有利な実施形態では、化学的還元物質は、圧力下で破裂するサブミリメートル又はサブマイクロメートルの球体にカプセル化してもよい。その結果、化学的還元物質は挟着作業中に初めて出現し、従って接触面上でのみ作用するという状態を得ることができる。また、それにより、無駄になる化学的還元物質の量が最小限になることが保証される。
【0025】
境界抵抗を改善するために、他の方法として、或いはそれに加えて、プラズマビームクリーニングによってコンタクト部材の少なくとも1つの接触面を洗浄又は活性化することができる。
【0026】
本発明は有利な実施形態及び図面を参照して以下により詳細に説明される。記述される実施形態は考え得る実施形態を構成するに過ぎないが、これらの実施形態において、上述したような個々の特徴は互いに独立して実施されることも省略されることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明に従って構成された方法の概略的な斜視図である。
図2】本発明に従う方法を使用して処理されたコンポーネントの概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に従う方法は、まず図1を参照して説明される。第1のコンタクト部材1は、本例ではワイヤ1aとして図示されているが、その接触面3の領域内において、本例では圧着部材2aとして図示されている第2のコンタクト部材2に対して、第1のコンタクト部材1の接触面3を第2のコンタクト部材2の接触面4に接続させることによって、電気的に接続させることを意図している。第1のコンタクト部材1は、接触面3に加えて、他の絶縁領域5を有する。第1のコンタクト部材1と第2のコンタクト部材2との間の電気的接続部は、第1のコンタクト部材の接触面3が第2のコンタクト部材の接触面4内に配置され、次に第2のコンタクト部材の接触面4が塑性変形例えば挟着によって第1のコンタクト部材3の接触面周囲に曲げられることによって生成される。本発明によれば、化学的還元剤は接触面3,4の少なくとも一方に塗布される。これは特に接触の前又は接触を行う間に行われることができる。
【0029】
化学的還元物質6は、様々な技術を使用して塗布される。例えば、化学的還元物質6は、圧力、浸漬、噴射又は塗装の技術によって接触面3,4の一方に塗布される。
【0030】
時間及び材料の消費を低く抑え、小さな表面だけを処理するため、これらの技術は接触面3,4の一方の部分領域(part-regions)上にのみ選択的に使用されてもよい。
【0031】
化学的還元物質の塗布は、挟着接続部の生成と共に1つの作業工程において実行されてもよい。これは、化学的還元物質6がこの接続部に残留することを意図する場合に有利である。永久に塗布されるかかる化学的還元物質は、接触面3,4の一方がコンポーネントの寿命の期間中に再び酸化することを防止する、又は挟着接続部に生じる空洞が汚染されることを防止する。その結果、良好で永続的な導電性を有する接続部が保証される。化学的還元物質6がこの接続部に残留することを意図しない場合、化学的還元物質は、アクティブ工程の後に速やかに除去されることができる。特に化学的還元物質6が1つのコンタクト部材1,2のみに塗布されることにより、かかる洗浄作業が容易になる。例えば、両コンタクト部材1,2は、接続工程の前に化学的還元物質6が塗布されることができ、完成したコンポーネントが化学的還元物質6を含有しないようにコンタクト部材1,2からはその後に化学的還元物質6を除去することができる。
【0032】
化学的還元物質6として酸を用いることができることが好ましい。酸化物層の化学的還元に加えて、これらの酸は接触面3,4をエッチングし、それにより表面が粗くなり、冷間圧接密度が更に増加する。更に、酸は自由電荷担体、例えばイオンを提供し、それにより2つの接触面3,4間の導電性が保証される。
【0033】
本方法の特に有利な実施形態では、化学的還元物質6として有機酸が使用される。有機酸は、より毒性が低くより低い酸強度を有するので、大抵の場合人体及び環境に対してより害が少ない。有機酸は自然に発生する場合が多いので、エネルギー集約的及びコスト集約的な生産が不要である。更に、有機酸はより容易に処理して保存することができることが多い。
【0034】
有機酸は、大抵の場合、あまり腐食的影響を与えないため、金属は保護されたまま金属上の薄い酸化物層のみが減少する。それにより、有機酸を使用する際、特に有機酸が接続箇所に永久に残留する場合、酸の効果の選択的な制御が可能である。かかる有機酸の例としては、パーム油酸、脂肪酸、ピメリン酸、アジピン酸、グルタル酸、マロン酸、及びバーンスタイン酸がある。特に、これらの酸の混合物を使用することも可能である。
【0035】
本方法の特に有利な実施形態では、長鎖有機酸が使用される。より短い有機酸とは対照的に、長鎖有機酸は無臭であり、その長鎖構造によりクリーム状又はワックス状であり、それにより、接続箇所において処理すること及び長く保持することが容易になる。
【0036】
化学的還元物質6は様々な凝集状態が考えられる。例えば、化学的還元物質6は流体でもよく、それにより、浸漬技術による塗布及びその後の接続箇所からの除去が可能になる。しかし、特定の生成方法によっては、化学的還元物質6は固体形状であることが有利な場合がある。特に、化学的還元物質6はクリーム状又はワックス状にすることもでき、それにより、化学的還元物質6が接触面3,4に付着したまま残り、滴り落ちたり蒸発したりすることがないため、処理が容易になる可能性がある。化学的還元物質6が永久に接続箇所に残留する場合、この稠度によって永続的な接触が保証される。この所望の稠度を得るために、化学的還元物質6には更なる物質を添加してもよく、例えば、増粘剤や溶媒によって稠度を増大させたり低下させたりする。
【0037】
既定の効果のため又は材料を節約するため、化学的還元物質は希釈されてもよい。更なる効果を得るためには、化学的還元物質又は溶媒に、その他の作用を及ぼすその他の物質を添加してもよい。例えば、これらの添加物は、上述のように、自由電荷担体を提供することによって導電性を更に増大してもよく、或いは脱脂効果を有するものでもよい。
【0038】
化学的還元物質6の効果は、複数の化学的還元官能基からなる物質が使用されることによって更に増大されてもよい。例えば、多塩基酸を使用することができる。
【0039】
コンタクト部材1,2は金属から構成される場合が多いので、化学的還元物質6は弱酸性又はアルカリ性である、即ち、4.5乃至9.5のpH値を有すると有利である。これにより、これらの金属が化学的還元物質によって腐食されることが防止される。
【0040】
本方法の有利な実施形態では、化学的還元物質6はフラックス剤である。フラックス剤は電気機器又は電子機器において既に普及しているので、その性質、特に様々な金属との相互作用はよく知られている。様々な材料及び材料の組み合わせに対して、及び様々な適用分野に対して、多種多様なフラックス剤が存在する。このように、フラックス剤は使用する材料及び計画された用途に対応することができる。フラックス剤は他の製造工程において使用されることも多いので、更なる化学的還元剤を使用する必要がない。これにより、材料の使用、保存コスト及び作業の複雑性が軽減される。
【0041】
特に化学的還元物質6が接続部に残留することを意図する場合、化学的還元物質6は導電性であると有利である。これにより、接触面3,4が直接接触していない箇所での電気的接続も保証される。このように、コンタクト部材1,2間の導電性が更に改善される。
【0042】
本方法の特に有利な実施形態では、化学的還元物質6は、例えば挟着又は圧着中に発生する圧力下で破裂するサブミリメートル又はサブマイクロメートルの球体の中にカプセル化する。このカプセル化により、活性成分は接触面にのみ作用し、それにより、その他のコンポーネントへの負荷が低く抑えられ、材料の不必要な使用を防止する。それにより、例えばその他の反応相手との化学的還元物質6のその他の反応又は劣化の促進も防止される。
【0043】
化学的還元物質は前の処理工程において接触面3,4の一方に既に塗布されていると特に有利である。これは、例えば化学的還元物質がコンタクト部材1,2の生成において使用されるパンチングオイルに含有されることによって行われる。
【0044】
図2は、本発明に従う方法を使用して生成された2つのコンタクト部材間の接続部の断面図である。第1のコンタクト部材1は撚り線1bによって形成され、本例では圧着部材2aとしての第2のコンタクト部材2によって包囲されている。第2のコンタクト部材2は力によって塑性変形されており、第1のコンタクト部材1を締め付ける。撚り線1bの個別のワイヤ1aも塑性変形され、ワイヤ3のほとんどの接触面がポジティブロック又は非ポジティブロック方式で第2のコンタクト部材4の接触面に当接するようにしている。本発明に従う方法を先に使用することにより、第1のコンタクト部材1の接触面と第2のコンタクト部材4の接触面が本発明に従う方法によって活性化され互いに対してより良好に接着するため、第1のコンタクト部材1の接触面と第2のコンタクト部材4の接触面との境界面における冷間圧接密度が増大する。第1のコンタクト部材1と第2のコンタクト部材2との間のより強い接続に加えて、第1のコンタクト部材1の2本のワイヤ1a間の接続も改善することができる。特に全撚り線1bが本発明に従う方法を用いて処理される場合、第1のコンタクト部材の第1の接触面3'と第2の接触面3''との接続も改善される。時間及び材料を省くため、本発明に従う方法を使用して撚り線1bの外側のみを処理することもできる。
【0045】
個々のワイヤ1aの塑性変形にかかわらず撚り線1bに空洞7が残るので、撚り線1bはかかる個所から空気中の酸素の浸透により再び酸化する可能性がある。本例では夾雑物又は流体が浸潤する可能性もある。これを防止するため、本方法の特に有利な構成では、接続工程の前にコンタクト部材1,2の一方にクリーム状の稠度の化学的還元物質6が塗布され、その後挟着によって2つのコンタクト部材1,2が互いに対して接続される。クリーム状の稠度により、化学的還元物質6はこれらの空洞7に導入され、永久に残留し、それにより酸化、汚染及び流体の浸潤からの保護が保証される。ごく僅かに腐食性の物質を使用することにより、酸化物層のみが腐食され、コンタクト部材を構成する金属は腐食されないことを保証することができる。
【0046】
塗布の作業工程を省くために、化学的還元物質はその他の作業ステップにおいてコンタクト部材1,2の一方の接触面3,4に既に塗布されていてもよい。例えば、化学的還元物質6は、圧着コンタクトを薄板から打ち抜くために使用されるパンチングオイル内に含有される。特に、化学的還元物質はコンタクト部材の一方の製造中に既に塗布されていてもよい。
【0047】
化学的還元物質6が挟着工程中に接触面3,4のみに作用することができるように、本発明に従う方法の特に有利な実施形態では、化学的還元物質6は、機械的圧力を受けてのみ破裂して内部に含有された化学的還元物質6を添加するサブミリメートル又はサブマイクロメートルの球体に含有される。カプセル化により、化学的還元物質6がアクティブ工程の前に任意のその他の方法で反応することが更に防止される。
【0048】
境界抵抗を改善する上述の方法の代わりに、又はこの境界抵抗を更に改善するために、接触面の少なくとも一方がプラズマビーム洗浄によって洗浄されて活性化されることができる。
【0049】
図2は、本発明に従う方法を使用して製造されたコンポーネント8の概略的な断面図でもある。本例では、2つのコンタクト部材1,2間の接触面3,4上又は空洞7に化学的還元物質6が存在する。特に、化学的還元物質6内には有機酸、フラックス剤、又はサブミリメートル又はサブマイクロメートルの球体が含有されてもよい。
図1
図2