特許第6274756号(P6274756)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6274756
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】脆性材料基板のローリングブレーク装置
(51)【国際特許分類】
   B28D 5/00 20060101AFI20180129BHJP
   B28D 1/22 20060101ALI20180129BHJP
   C03B 33/033 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
   B28D5/00 Z
   B28D1/22
   C03B33/033
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-127088(P2013-127088)
(22)【出願日】2013年6月18日
(65)【公開番号】特開2014-31002(P2014-31002A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2016年4月19日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0084653
(32)【優先日】2012年8月2日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】390000608
【氏名又は名称】三星ダイヤモンド工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】金 必鍾
【審査官】 石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−172612(JP,U)
【文献】 国際公開第2006/073098(WO,A1)
【文献】 特開昭59−120452(JP,A)
【文献】 実開昭64−057015(JP,U)
【文献】 特開2003−127096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 5/00
B28D 1/22
C03B 33/033
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面にスクライブラインが形成された脆性材料基板が載置される柔軟性安着パッドと、
該柔軟性安着パッドの一側端に設けられて、前記柔軟性安着パッドを引っ張ることで張力を付与する引っ張り部と、
前記柔軟性安着パッドを挟んで前記脆性材料基板と反対側に位置する押し付け移動ローリング部と、
該押し付け移動ローリング部を上下移動させる昇降部と、
を具備し、
前記押し付け移動ローリング部は、前記柔軟性安着パッドの下面に沿って移動し、
前記押し付け移動ローリング部と前記昇降部との間に前記脆性材料基板の下面と平行に設置された水平棚をさらに含み、
前記押し付け移動ローリング部は、前記水平棚上で前記柔軟性安着パッドの下面に沿って移動することを特徴とするローリングブレーク装置。
【請求項2】
前記押し付け移動ローリング部を前記脆性材料基板の面と平行な面内で回転させる回転部を有することを特徴とする請求項1に記載のローリングブレーク装置。
【請求項3】
前記柔軟性安着パッドは、メッシュ状の網の上にゴムパッドが重なって形成されたことを特徴とする請求項1に記載のローリングブレーク装置。
【請求項4】
前記柔軟性安着パッドは、粘着性ゴムであることを特徴とする請求項1に記載のローリングブレーク装置。
【請求項5】
前記押し付け移動ローリング部は、その長手方向の寸法が前記脆性材料基板の幅よりも大きく形成されることを特徴とする請求項1に記載のローリングブレーク装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローリングブレーク装置に関するものであって、特にスクライブラインが形成された脆性材料基板を容易に分断することができる脆性材料基板のローリングブレーク装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、脆性材料基板は大型で製造され、使用者は当該基板を所望の大きさに分断して用いる。このような大型の脆性材料基板を分断する従来の分断装置について、図1及び図2を参照して説明する。
【0003】
図1を参照すると、大型の脆性材料基板3を分断するためには、まず大型の脆性材料基板3の表面にカッターホイール4を使用してスクライブラインSを形成する。その後、脆性材料基板3の上下面が入れ変わるように吸着反転装置(不図示)を利用して180度反転させる。図2に示すように、スクライブラインSが形成された脆性材料基板3の面が底面を向くように反転させたら、スクライブラインSの裏側をスクライブラインSの形成方向に沿ってブレークバー8で加圧する。これにより、脆性材料基板3はスクライブラインSに沿って左右へ離れながら分断される。この時、脆性材料基板Sの下部側には、ブレークバー8で加圧するときに脆性材料基板3が下部側に押されながら緩衝されるようにクッションシート7が敷かれている。
【0004】
前記のようにスクライブラインSに沿って脆性材料基板3の上面をブレークバー8で加圧しながら押すと、脆性材料基板3は、クッションシート7に押し付けられながらスクライブラインSに沿って分断される。しかしながら、脆性材料基板3のスクライブラインSは敷かれているクッションシート7の面と接触しているため、スクライブラインSが形成された面と反対側の面をブレークバー8で加圧すると、スクライブラインSの形成された面がクッションシート7の面と接触し摩擦力が発生する。このことにより、分断後の脆性材料基板が左右に離れにくく、分離が容易にならないという問題がある。
【0005】
また、スクライブラインSの形成された面がクッションシート7の面と接触した状態でクッションシート7の方に押し付けられながら摩擦を起こしつつ分断されるため、分断面でチッピングが発生するという問題もある。
また、前記のような従来の分断装置では、脆性材料基板を分断するために吸着反転装置等を利用して基板を反転させなければならないため、吸着による基板面の汚染が起きやすいという問題点もある。
さらには、ブレークバー8でスクライブラインSの真裏を加圧しないとスクライブラインSに沿って正確に分断されないのであるが、脆性材料基板3の位置が若干ずれた状態でブレークバー8で加圧すると、スクライブラインSに沿って正確に分断されず、左右いずれかにずれた状態で分断されるという問題が発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述のような問題点を勘案して案出されたものであって、その目的は、スクライブラインが形成された脆性材料基板を容易に分断させ得る脆性材料基板のローリングブレーク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するために、本発明のローリングブレーク装置は、上面にスクライブラインが形成された脆性材料基板が載置される柔軟性安着パッドと、該柔軟性安着パッドの一側端に設けられて、前記柔軟性安着パッドを引っ張ることで張力を付与する引っ張り部と、前記柔軟性安着パッドを挟んで前記脆性材料基板と反対側に位置する押し付け移動ローリング部と、該押し付け移動ローリング部を上下移動させる昇降部とを具備する。
【0008】
前記押し付け移動ローリング部は、前記柔軟性安着パッドの下面に沿って移動する構成とすることができる。
【0009】
前記押し付け移動ローリング部と前記昇降部との間に前記脆性材料基板の下面と平行に設置された水平棚をさらに含み、前記押し付け移動ローリング部は、前記水平棚上で前記柔軟性安着パッドの下面に沿って移動する構成とすることができる。
【0010】
前記押し付け移動ローリング部を前記脆性材料基板の面と平行な面内で回転させる回転部を有する構成とすることができる。
【0011】
前記柔軟性安着パッドは、メッシュ状の網の上にゴムパッドが重なって形成されるか、粘着性ゴムで形成することができる。
【0012】
前記押し付け移動ローリング部は、その長手方向の寸法が前記脆性材料基板の幅よりも大きな構成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施例によると、脆性材料基板にスクライブラインを形成した後、当該脆性材料基板を裏返さずに済むため、基板面の汚染を防止することができる。
また、水平方向に移動する押し付け移動ローリング部を利用することにより、スクライブラインが形成された脆性材料基板を素早く容易に分断できると共に、スクライブラインの方向と押し付け移動ローリング部の位置が正確に一致していないときでも分断が可能になる。
また、押し付け移動ローリング部を上方に押し上げながら脆性材料基板の下面に沿って水平方向に移動させるため、脆性材料基板のスクライブラインを一ラインずつ順にブレークすることができる。
また、柔軟性安着パッドを粘着性ゴムで構成した場合は、脆性材料基板が粘着性ゴムパッドに貼り付くので、押し付け移動ローリング部による押し上げ時に脆性材料基板が柔軟性安着パッドから浮き上がることを防止することができ、分断力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、脆性材料基板を分断するためのスクライブラインを形成する装置を概略的に示す図面である。
図2図2は、図1の装置によってスクライブラインを形成した後、ブレークバーを利用して基板を分断する従来の分断装置を示す図面である。
図3図3は、本発明の一実施例による脆性材料基板のローリングブレーク装置を示す図面である。
図4図4は、本発明の一実施例による脆性材料基板のローリングブレーク装置を利用して脆性材料基板を分断する状態を示す図面である。
図5図5は、本発明の一実施例による脆性材料基板のローリングブレーク装置を利用して脆性材料基板を分断する状態をより具体的に示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の望ましい実施例をより詳しく説明する。なお、本発明の実施例において、従来技術の構成要素と同一または類似の構成要素については、同一の図面符号を使用することで、説明を省略する。
【0016】
本発明の一実施例による脆性材料基板のローリングブレーク装置は、図3に示すように、シリンダ等によって昇降が可能な昇降部26を具備しており、当該昇降部26の上部には回転部28が装着されている。
回転部28の上部には水平状態で平らに形成された水平棚22が取り付けられており、水平棚22上には水平方向に移動自在な押し付け移動ローリング部20が装着されている。
押し付け移動ローリング部20は、水平棚22上で駆動装置(不図示)によって転動可能なように設けられている。
【0017】
押し付け移動ローリング部20の上方には柔軟性安着パッド25が水平方向に延設されており、当該柔軟性安着パッド25の一側端には、柔軟性安着パッド25が常に水平状態を維持するように張力を与える引っ張り部30が装着されている。
引っ張り部30は、柔軟性安着パッド25の一側端に装着されて柔軟性安着パッド25を常に引いた状態で維持する錘や弾性体で構成することができる。むろん、柔軟性安着パッド25を常に引いた状態で維持することができれば他の手段であってもよい。
引っ張り部30は、脆性材料基板3が柔軟性安着パッド25上に載置された状態でも、柔軟性安着パッド25が脆性材料基板3の重さでたわむことなく水平状態を維持できるように、柔軟性安着パッド25に張力を付与する。
【0018】
引っ張り部30が柔軟性安着パッド25の全幅を一定の力で引いたときに柔軟性安着パッド25の水平状態を維持するためには、柔軟性安着パッド25を、メッシュ状のゴム網で構成するか、メッシュ状の網の上にゴムパッドが一体となるように構成するのが望ましい。
また、柔軟性安着パッド25は、脆性材料基板3が載置された時に固定力を発生させるため、付着性の良い粘着ゴム等を利用することもできる。
【0019】
上述のように構成された本実施例によるローリングブレーク装置で基板が分断される過程を具体的に説明する。
【0020】
まず、図3に示すように、スクライブ工程によりスクライブラインSが上面に形成された脆性材料基板3が柔軟性安着パッド25上に載置される。
柔軟性安着パッド25上に脆性材料基板3が載置される時に、柔軟性安着パッド25はたわむことなく水平状態が維持される。すなわち、柔軟性安着パッド25は、その一側端が引っ張り部30によって常に脆性材料基板3の重さより大きい力で引かれているため、脆性材料基板3の重さによって柔軟性安着パッド25の中央部位が下方にたわむことが防止される。
【0021】
柔軟性安着パッド25上に脆性材料基板3が載置されると、昇降部26が駆動装置(不図示)によって上昇する。
昇降部26が上昇すると押し付け移動ローリング部20も上昇することになり、これにより、脆性材料基板3が載置された状態で水平状態を維持している柔軟性安着パッド25の下面の一部分も、押し付け移動ローリング部20によって一定の高さだけ上昇する。
【0022】
押し付け移動ローリング部20が柔軟性安着パッド25の下面に当接しながら柔軟性安着パッド25を上方(図3でのY方向)に押し上げると、柔軟性安着パッド25上に載置されている脆性材料基板3も同時に上方へ変位する。
すなわち、図4に示すように、柔軟性安着パッド25が押し付け移動ローリング部20によってY軸上の一定の高さまで押し上げられると、柔軟性安着パッド25上に載置されている脆性材料基板3も上方へ持ち上げられるようになる。
この時に、押し付け移動ローリング部20の上昇高さだけ脆性材料基板3の上面に形成されているスクライブラインSの高さが変位すると、スクライブラインSを開く方向に引張応力が発生し、これによりスクライブラインSに形成されたクラックが徐々に下側に伸びて脆性材料基板3が分断される。
【0023】
また、図5に示すように、脆性材料基板3のスクライブラインSが押し付け移動ローリング部20の押し付け力によって左右に離れる時に、脆性材料基板3の自重によってスクライブラインS上に印加される引張応力が加重されるため、クラックの進行速度がさらに加速され、脆性材料基板3をさらに容易に分断することができる。
【0024】
また、図4に示すように、押し付け移動ローリング部20が水平方向(図4でのX方向)に移動しながら脆性材料基板3のスクライブラインSが形成されている位置を経由する度に、押し付け移動ローリング部20は、脆性材料基板3のスクライブラインSを上方に持ち上げる形態になるため、スクライブラインSが形成された部位ごとにクラックが進行しながら順に分断される。
【0025】
脆性材料基板3が載置されている柔軟性安着パッド25の表面は、一般的なゴムで形成することもでき、脆性材料基板3が柔軟性安着パッド25の表面に付着して引張応力による分断力がさらに増加されるように、吸着性ゴムまたは粘着性ゴム等で形成することもできる。
【0026】
これに関してさらに具体的に説明すると、柔軟性安着パッド25が粘着性ゴムで形成された場合、脆性材料基板3が柔軟性安着パッド25に貼り付くので、図5に示す円内の拡大図における脆性材料基板3の折れ曲がりの角度が急峻になり、脆性材料基板3のスクライブラインSに加えられる力がさらに付加され、その分さらにクラックの進行を助けるようになる。
【0027】
一方、前述のように、押し付け移動ローリング部20は、脆性材料基板3の下面に沿ってX方向に移動しながら、X軸及びY軸に垂直の方向(以下、Z方向という)に形成された脆性材料基板3のスクライブラインSをブレークした後、昇降部26の下降動作により下降して元の位置に復帰する。
そして、Z方向に形成されたスクライブラインSに沿った分断作業が完了された後、X方向に形成されたスクライブラインに沿った分断作業を連続して実施するために、回転部28を利用して押し付け移動ローリング部20の向きが90度回転される。
その後、押し付け移動ローリング部20は、昇降部26によって再びY方向に上昇されて、今度はZ方向に移動しながら脆性材料基板3のX方向に形成されたスクライブラインSを順にブレークする。
【0028】
本実施例では、押し付け移動ローリング部20が水平棚22上で移動するように構成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、押し付け移動ローリング部20が回転部28上で水平方向に移動するように構成することもできる。また、押し付け移動ローリング部20は、図示は省略するが、両端にレール等を敷いて移動させるか、その他の駆動装置等を装着して移動させることもできる。
【0029】
また、本実施例による押し付け移動ローリング部20によると、脆性材料基板3のスクライブラインSが形成された面とは反対側の面、すなわち脆性材料基板3の裏面の側で長尺のローラが転動しながら当該裏面を上方に押し上げるため、押し付け移動ローリング部20とスクライブラインSと間で若干のずれ等が発生しても、スクライブラインSに沿って正確に分断することができる。
【符号の説明】
【0030】
S スクライブライン
3 脆性材料基板
20 押し付け移動ローリング部
25 柔軟性安着パッド
26 昇降部
28 回転部
30 引っ張り部
図1
図2
図3
図4
図5