特許第6274757号(P6274757)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6274757
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】開口部建材
(51)【国際特許分類】
   E06B 3/663 20060101AFI20180129BHJP
   E06B 3/24 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
   E06B3/663 F
   E06B3/663 B
   E06B3/663 K
   E06B3/24
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-130972(P2013-130972)
(22)【出願日】2013年6月21日
(65)【公開番号】特開2015-4241(P2015-4241A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2016年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136331
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 陽一
(72)【発明者】
【氏名】関 喜幸
(72)【発明者】
【氏名】谷口 則良
【審査官】 佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−108265(JP,A)
【文献】 実公昭48−044611(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 3/54−3/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
四周の枠と、複層ガラスと、各枠のガラス保持溝に取付けた補助部材とを備え、四周の枠の少なくとも1つの枠は、ガラス保持溝内にタッピングホールが設けてあり、補助部材をタッピングホールに係合して取付けてあり、複層ガラスは、一対のガラス間にスペーサーが配置してあると共に、スペーサーの外周側に充填されたシール材により補助部材と接着してあり、シール材がタッピングホールに係合して取付けた補助部材の外周側に回り込んで、補助部材と枠を接着してあることを特徴とする開口部建材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複層ガラスを用いる開口部建材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅やビルの窓ガラスには、断熱性や遮音性の向上のため、複層ガラスを用いることが多くなっている。従来のサッシは、複層ガラスをグレチャンを介して枠(框)のガラス保持溝に嵌め込んでいる(例えば、特許文献1参照。)。かかる従来のサッシにおいては、枠が変形しないように枠自体に剛性を持たせる必要があったり、グレチャンの周囲に水抜き用の空間を確保する必要があったため、枠の見付けを細くできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4606173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上に述べた実情に鑑み、枠を細くできる開口部建材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を達成するために請求項1記載の発明による開口部建材は、四周の枠と、複層ガラスと、各枠のガラス保持溝に取付けた補助部材とを備え、四周の枠の少なくとも1つの枠は、ガラス保持溝内にタッピングホールが設けてあり、補助部材をタッピングホールに係合して取付けてあり、複層ガラスは、一対のガラス間にスペーサーが配置してあると共に、スペーサーの外周側に充填されたシール材により補助部材と接着してあり、シール材がタッピングホールに係合して取付けた補助部材の外周側に回り込んで、補助部材と枠を接着してあることを特徴とする。ここで「枠」には、複層ガラスの周囲に設けられるあらゆる部材が含まれ、窓枠に限らず、障子の框、方立や無目等であってもよい。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明による開口部建材は、各枠のガラス保持溝に補助部材を取付け、複層ガラスは、スペーサーの外周側に充填されたシール材により補助部材と接着したことで、四周の枠と複層ガラスとがシール材で一体化され、これにより枠を細くすることができる。補助部材を枠のタッピングホールに係合して取付けることで、枠に補助部材のための固定部を別途設ける必要が無く、製造コストを削減できる。さらに、シール材がタッピングホールに係合して取付けた補助部材の外周側に回り込んで、補助部材と枠を接着してあることで、補助部材と枠の間からの雨水の浸入を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の開口部建材の一実施形態を示す縦断面図である。
図2】同開口部建材の横断面図である。
図3】同開口部建材の外障子の室内側正面図である。
図4】外障子の組立て方を示す室内側正面図である。
図5】(a)(b)は外障子の組立て手順を示す縦断面図である。
図6】(a)(b)は外障子の組立て手順を示す横断面図である。
図7】竪框と横框の接合部を示す分解斜視図である。
図8】上框部の縦断面図であって、複層ガラスの空気層の厚みを変更する場合を示す。
図9】上框と複層ガラスとの接着状態の他の例を示す縦断面図であって、(a)はシール材の量を多くした場合、(b)はシール材の量を少なくした場合を示す。
図10】複層ガラスをグレチャンで框のガラス保持溝に保持した場合の開口部建材の縦断面図である。
図11】同開口部建材の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1,2は、本発明の開口部建材の一実施形態であって、住宅の窓開口部に設置される引違いサッシに適用した場合を示している。本サッシは、躯体開口部に取付けたサッシ枠11と、サッシ枠11内に引違い状に開閉自在に収めた外障子12a及び内障子12bを備えている。
【0009】
サッシ枠11は、上枠13と下枠14と左右の竪枠15,15とを枠組みして構成してある。上枠13と下枠14には、外障子12aと内障子12bをそれぞれ案内する外レール16aと内レール16bが、内周側に突出して形成されている。上枠13と下枠14と竪枠15の室内側の内周部には、樹脂製のアングル17が設けてある。
【0010】
外障子12aと内障子12bは、図1,2に示すように、スペーサー9を挟んで2枚のガラス8,8を室内外方向に間隔をおいて保持した複層ガラス5を、アルミニウム合金の押出形材よりなる上下の横框1,2と左右の竪框3,4とで四周枠組みして構成してある。2枚のガラス8,8の間には、約18mmの空気層18が形成されている。スペーサー9は、ステンレスの薄い板をロールフォーミングにより筒状に形成してあり、4本のスペーサー9を矩形に枠組みしてガラス8,8間に配置し、ガラス8,8の内側面に一次シール19で接着してある。スペーサー9の内部には乾燥剤が入れられ、スペーサー9の内周側面には多数の通気孔(図示省略)が形成してあり、これによりガラス間の空気層18が乾燥した状態に保たれる。
【0011】
横框1,2は、図1に示すように、室外側と室内側に対向して設けた一対の見付壁20a,20bと見込み壁21とで内周側が開口したガラス保持溝22が形成され、ガラス保持溝22に複層ガラス5の上下端部を呑み込ませてある。見込み壁21には、室内外方向の中間部にタッピングホール23が内周側に開口して設けてある。
ガラス保持溝22の底部には、横框補助部材6が横框1,2の長手方向に沿って取付けてある。横框補助部材6は、内周側に向かって幅狭となった台形状の中空部24と、中空部24の外周側に突設した係合部25とを有しており、係合部25をタッピングホール23内に係合して取付けてあり、タッピングホール23の開口縁が中空部24の外周側面に当接することで、傾きが規制されている。中空部24は、スペーサー9の外周側に離間し、且つガラス8,8間の隙間に位置している。
スペーサー9の外周側のガラス保持溝22内の隙間には二次シール10が充填してあり、この二次シール10によりガラス8,8を横框1,2及び横框補助部材6と接着し、横框1,2と複層ガラス5を一体化している。
【0012】
竪框3,4は、図2に示すように、室外側と室内側に対向して設けた一対の見付壁26a,26bと見込み壁27とで内周側が開口したガラス保持溝22が形成され、ガラス保持溝22に複層ガラス5の側端部を呑み込ませてある。見込み壁27には、室外側と室内側の2か所にアリ溝28が内周側に開口して設けてある。
ガラス保持溝22の底部には、竪框補助部材7が竪框3,4の長手方向に沿って取付けてある。竪框補助部材7は、見込み壁27に沿って配置される板状部29と、内周側に向かって幅狭となった台形状の中空部30と、板状部29の外周側に突設した係合部31とを有しており、係合部31を見込み壁27のアリ溝28に係合して取付けてある。中空部30は、スペーサー9の外周側に離間し、且つガラス8,8間の隙間に挿入されている。
スペーサー9の外周側のガラス保持溝22内の隙間には二次シール10が充填してあり、この二次シール10によりガラス8,8を竪框補助部材7と接着し、竪框3,4と複層ガラス5を一体化している。
【0013】
横框1,2と竪框3,4とは、図3,7に示すように、横框1,2の長手方向端部を竪框3,4のガラス保持溝22内に呑み込ませ、横框1,2の長手方向端面を竪框3,4の見込み壁27に当接し、側方から挿入したネジ32を横框1,2のタッピングホール23に捩じ込むことで固定されている。横框補助部材6は、横框1,2のほぼ全長にわたって配置されており、竪框補助部材7は竪框3,4と横框1,2を接合するのに邪魔にならないように、竪框3,4の全長よりも短くしてある。両補助部材6,7は、アルミニウム合金の押出形材を切断するだけで形成でき、加工が容易である。
【0014】
次に、障子12a,12bの組立て方を説明する。まず、ガラス8,8間にスペーサー9を一次シール19で接着して配置する。その後、スペーサー9の外周側のガラス8,8間に二次シール10を塗布する(図5(a)、図6(a)参照)。一方、横框1,2と竪框3,4には、ガラス保持溝22の底部に横框補助部材6と竪框補助部材7をそれぞれ予め取付けておく。横框補助部材6と竪框補助部材7の取付けは、横框1,2と竪框3,4の小口から長手方向にスライド係合させて行う。竪框補助部材7を取付ける際、予め竪框3,4の下部でアリ溝28をマイナスドライバー等の工具で潰しておき、竪框補助部材7を竪框3,4の上方から係合取付し、その後に竪框3,4の上部でアリ溝28を潰すことで、竪框補助部材7を所定の高さ位置に位置決めできる。その後、二次シール10が固まらないうちに、図4図5(a),図6(a)に示すように、ガラス8,8の周囲から横框1,2と竪框3,4を押し付ける。すると、図5(b),図6(b)に示すように、二次シール10が竪横框補助部材6,7の台形状の中空部24,30に押されて中空部24,30の周囲に回り込み、ガラス8,8が横框1,2及び竪横框補助部材6,7と二次シール10で接着され、複層ガラス5が竪横框1,2,3,4と一体化される。その後、竪框3,4の側方より挿入したネジ32を横框1,2のタッピングホール23に捩じ込んで締付け、竪横框1,2,3,4を固定する。
【0015】
以上に述べたように本サッシの障子12a,12bは、四周の框1,2,3,4のガラス保持溝22に框補助部材6,7をそれぞれ取付け、複層ガラス5は、スペーサー9の外周側に充填された二次シール10により横框1,2及び竪横の框補助部材6,7と接着したことで、四周の框1,2,3,4と複層ガラス5とが二次シール10で一体化している。これにより、框1,2,3,4自体にそれほど剛性を持たせる必要がなくなり、またガラス保持溝22内に排水用の空間を設ける必要もないため、框1,2,3,4を細くすることができる(特に、框1,2,3,4の見付寸法を小さくすることができる。)。また、スペーサー9の外周側に充填された二次シール10により、雨水が室内側に浸入するのを阻止できるので、水密性も優れている。また、二次シール10がガラス8,8を框補助部材6,7と接着すると共に、横框1,2(特に下框2)とも接着していることで、水密性が一層向上している。さらに本障子12a,12bは、グレチャンを介在させないことで、ガラス8,8の外側面と框1,2,3,4の見付け面との間の段差を小さくでき、障子12a,12bの室外側面と室内側面がほぼフラットになり、ガラス8,8と框1,2,3,4との間にゴム質の部材が露出することもないため、框1,2,3,4を細くできることと相まって、意匠性を向上できる。さらに、グレチャンを介在させないことで、框1,2,3,4の見込み寸法を抑えつつガラス間の空気層18の厚みを大きくすることができ、これにより断熱性能が向上する。
さらに本障子12a,12bは、ガラス8,8間のスペーサー9の外周側に二次シール10を塗布し、横框1,2と竪框3,4に予め横框補助部材6と竪框補助部材7を取付けておき、横框1,2と竪框3,4をガラス8,8の周囲から押し付けて接着することで、障子12a,12bの組立が容易に行え、しかも二次シール10を框補助部材6,7の周囲に回り込ませることで、接着力を高められる。框補助部材6,7に台形状の中空部24,30を設けたことで、框補助部材6,7の周囲への二次シール10の回り込みを促進し、接着力を高めることができる。各框1,2,3,4に框補助部材6,7を予め取付けることで、横框1,2と竪框3,4とをインロウ結合(横框1,2の端部を竪框3,4のガラス保持溝22に呑み込ませて結合)することができる。また、障子12a,12bの組立を複層ガラス5の製作と連続して行うことで、製作コストや輸送コストを削減できる。横框1,2のタッピングホール23に横框補助部材6を係合して取付けることで、横框1,2に横框補助部材6のための係合部を別途設ける必要が無く、合理的である。
【0016】
図8(a),(b)は、複層ガラス5の空気層18の厚みが異なる場合の実施形態を示している。同図に示すように、共通の框1,2,3,4を使用しながら框補助部材6,7を変更することで、複層ガラス5の空気層18の厚みの違いに対応できる。
【0017】
図9(a),(b)は、スペーサー9の外周側に充填する二次シール10の量を変化させた場合の実施形態を示している。図9(a)は二次シール10の量を多くした場合で、二次シール10が框1の見込み壁21まで隙間なく充填され、またガラス8,8の小口と見込み壁21の隙間にまで二次シール10が充填されている。これにより、水密性、気密性が、さらに向上する。同様に、二次シール10の量を多くすることで、竪框3,4を二次シール10でガラス8,8と直接接着することもできる。
図9(b)は二次シール10の量を少なくした場合で、二次シール10はガラス8,8と框補助部材6とを直接接着し、ガラス8,8と框1とは間接的に接着している。この場合でも、室外側からガラス保持溝22内に浸入した雨水はタッピングホール23により堰き止められるため、水密性を確保できる。このように二次シール10は、ガラス8,8を少なくとも框補助部材6と直接接着していればよく、框1とは框補助部材6を介して間接的に接着したものでもよい。もっとも二次シール10は、框補助部材6の台形状の中空部24が押し付けられることで中空部24の周囲に回り込むため、実際には二次シール10の外周側の縁は図5(b)に示すようにフラットにはならず、波打つような形となって部分的に框1と接着されることもある。四周の框1,2,3,4のうち、下框2のみを二次シール10でガラス8,8と接着させ、他の三方の框1,3,4には二次シール10が接着しない(補助部材6,7とだけ接着)ものとすることもできる。
【0018】
図10,11は、複層ガラス5をグレチャン33で框1,2,3,4のガラス保持溝22に保持した場合の実施形態を示している。横框1,2及び竪框3,4は、これまでに説明した図1,2の実施形態のものと同一のものを使用している。横框1,2と竪框3,4には、横框補助部材6と竪框補助部材7を取付けないで、通常の複層ガラスを組み込んだ障子と同様に、複層ガラス5の周囲をグレチャン33を介して框1,2,3,4のガラス保持溝22に嵌め込んで保持している。このように複層ガラス5をグレチャン33で框1,2,3,4のガラス保持溝22に保持する場合も、先の実施形態と同様に、横框1,2と竪框3,4とをインロウ結合している。グレチャン33は、従前のものを使用してもよいが、材質や厚みを調節したり、ガラス保持溝22の見付壁20a,20b,26a,26bの先端部34との引っ掛かりを強くするなどして、框1,2,3,4から外れ難くしたものを使用することが好ましい。框1,2,3,4自体は先の実施形態のものと共通のため、框1,2,3,4が細く意匠性が良い。
【0019】
図1,2に示すように、複層ガラス5を框1,2,3,4とシール材(二次シール10)で接着する場合は、障子12a,12bを組み立てた状態で工場から出荷することになるが、図10,11に示すように、複層ガラス5をグレチャン33で框1,2,3,4のガラス保持溝22に保持する場合は、複層ガラス5と組立前の框1,2,3,4とをサッシ業者の工場や施工現場等へと搬入し、そこで障子12a,12bを組み立てるいわゆるノックダウン方式に対応できる。すなわち本サッシの障子12a,12bは、框1,2,3,4を共通化しながら、框補助部材6,7を取付けるか取付けないかを選択することにより、複層ガラス5の取付け方を選択でき、組立完成品での出荷とノックダウン方式の何れにも対応できる。
【0020】
本発明は以上に述べた実施形態に限定されない。障子は、引違い状に開閉するものに限らず、回動ないしすべり出して開閉するものや、サッシ枠に固定した嵌め殺し障子であってもよい。枠は、複層ガラスの周囲を枠組みするものであればよく、実施形態のような竪框と横框に限らず、竪枠、横枠、方立、無目等であってもよい。枠や補助部材の断面形状は、適宜変更することができる。補助部材は、ガラス保持溝の見付け壁に取付けることもできる。ガラスは、3枚以上とすることもできる。本発明の開口部建材は、建物の窓に限らず、電車等の乗り物の窓等に用いることもできる。
【符号の説明】
【0021】
1,2 横框(枠)
3,4 竪框(枠)
5 複層ガラス
6 横框補助部材(補助部材)
7 竪框補助部材(補助部材)
8 ガラス
9 スペーサー
10 二次シール(シール材)
22 ガラス保持溝
33 グレチャン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11