特許第6274789号(P6274789)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6274789
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】チップ抵抗器
(51)【国際特許分類】
   H01C 7/00 20060101AFI20180129BHJP
   H01C 1/142 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
   H01C7/00 110
   H01C1/142
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-179339(P2013-179339)
(22)【出願日】2013年8月30日
(65)【公開番号】特開2015-50234(P2015-50234A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2016年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100115369
【弁理士】
【氏名又は名称】仙波 司
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100161274
【弁理士】
【氏名又は名称】土居 史明
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(72)【発明者】
【氏名】小川 真輔
(72)【発明者】
【氏名】豊永 誠
【審査官】 田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−277834(JP,A)
【文献】 特開2005−191402(JP,A)
【文献】 特開昭55−160403(JP,A)
【文献】 特開2007−194399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 7/00
H01C 1/142
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面とこの主面と反対側の裏面とを有し、第1の方向における第1端部と第2端部とを有する基材と、
前記主面に形成され、前記第1の方向における第1端部と第2端部とを有する抵抗体と、
前記主面に形成され、前記抵抗体の第1端部に接する第1内部電極と、
前記主面に形成され、前記抵抗体の第2端部に接する第2内部電極と、
前記裏面に形成され、前記基材の前記第1端部に至る第1裏面電極と、
前記第1裏面電極に対して離間して前記裏面に形成され、前記基材の前記第2端部に至る第2裏面電極と、
を備え、
前記第1内部電極は、前記抵抗体の第1端部の上位に重なる部分を備え、前記第2内部電極は、前記抵抗体の前記第2端部の上位に重なる部分を備え、
前記第1内部電極における前記抵抗体の第1部分の上位に重なる部分以外の部分の厚さは前記抵抗体の厚さより大であるとともに、前記第1内部電極における前記抵抗体の第1端部の上位に重なる部分の厚さは前記第1内部電極における前記抵抗体の第1部分の上位に重なる部分以外の部分の厚さより小であり、
前記第2内部電極における前記抵抗体の第2部分の上位に重なる部分以外の部分の厚さは前記抵抗体の厚さより大であるとともに、前記第2内部電極における前記抵抗体の第2端部の上位に重なる部分の厚さは前記第2内部電極における前記抵抗体の第2部分の上位に重なる部分以外の部分の厚さより小であり、
前記第1裏面電極および前記第2裏面電極の前記第1の方向における長さは、それぞれ、前記基材の前記第1の方向における長さの2/10〜3/10であり、かつ、前記第1内部電極および前記第2内部電極の前記第1の方向における長さより長い、チップ抵抗器。
【請求項2】
前記第1内部電極における前記抵抗体の第1端部の上位に重なる部分は、前記第1の方向における前記抵抗体の長さに対する1/14以下の長さで重な、前記第2内部電極における前記抵抗体の前記第2端部の上位に重なる部分は、前記第1の方向における前記抵抗体の長さに対する1/14以下の長さで重なる、請求項1に記載のチップ抵抗器。
【請求項3】
前記第1内部電極は、前記基材の第1端部まで至っており、その前記抵抗体の第1端部に重なる部分以外の長さは、前記第1の方向における前記基材の長さの1/16以下であり、前記第2内部電極は、前記基材の第2端部まで至っており、その前記抵抗体の第2端部に重なる部分以外の長さは、前記基材の長さの1/16以下である、請求項1に記載のチップ抵抗器。
【請求項4】
前記第1の方向と直交する第2の方向における前記抵抗体の幅は、前記主面の前記第2の方向における幅の1/2〜9/10である、請求項3に記載のチップ抵抗器。
【請求項5】
前記抵抗体は、アンダーコートで覆われている、請求項1ないし4のいずれかに記載のチップ抵抗器。
【請求項6】
前記アンダーコートは、オーバーコートで覆われている、請求項5に記載のチップ抵抗器。
【請求項7】
前記第1内部電極は前記オーバーコートに接する第1下地電極で覆われ、前記第2内部電極は前記オーバーコートに接する第2下地電極で覆われている、請求項6に記載のチップ抵抗器。
【請求項8】
前記基材の前記第1の方向における第1側面には、前記第1下地電極が形成され、前記基材の前記第1の方向における第2側面には、前記第2下地電極が形成されている、請求項7に記載のチップ抵抗器。
【請求項9】
前記第1裏面電極は、前記第1下地電極に導通しており、前記第2裏面電極は、前記第2下地電極に導通している、請求項8に記載のチップ抵抗器。
【請求項10】
前記第1下地電極および前記第1裏面電極は、第1メッキ電極で一連に覆われており、前記第2下地電極および前記第2裏面電極は、第2メッキ電極で一連に覆われている、請求項9に記載のチップ抵抗器。
【請求項11】
前記基材の前記第1の方向における長さは1.0〜3.2mmであり、前記基材の前記第1の方向と直交する第2の方向における幅は0.5〜2.5mmである、請求項1ないし10のいずれかに記載のチップ抵抗器。
【請求項12】
前記抵抗体は、トリミング溝を有している、請求項11に記載のチップ抵抗器。
【請求項13】
前記トリミング溝は、前記抵抗体の前記第2の方向における端縁に設定した始点から、当該始点に対して前記第1の方向および前記第2の方向に変位する中間点まで延びる主部分と、当該中間点から、前記主部分の前記中間点付近に対して前記始点の位置する方向に折れ曲がって終点まで延びる付加部分と、を有する、請求項12に記載のチップ抵抗器。
【請求項14】
前記付加部分は、前記主部分に対して90°以下の角度で折れ曲がって延びる、請求項13に記載のチップ抵抗器。
【請求項15】
前記主部分は、前記始点から前記第2の方向に延びる第1部分と、当該第1部分の端部から前記第1の方向に延びる第2部分と、を有するL字状をしている、請求項13または14に記載のチップ抵抗器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ抵抗器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から知られているチップ抵抗器には、たとえば特許文献1に示されたものがある。同文献に記載されたチップ抵抗器は、チップ状をした絶縁基板の上面において互いに離間した上面電極と、これらの上面電極間を跨ぐように形成された抵抗体とを有する。上面電極は、絶縁基板上に直接形成された内部電極と、この内部電極を覆うように形成された補助電極とで構成されている。抵抗体は、その両端部が上記内部電極上に重なるようにして、その大部分が絶縁基板の上面に直接接触するようにして形成されている。すなわち、抵抗体は、内部電極を形成した後に形成される。抵抗体は、アンダーコートおよびオーバーコートによって多重に覆われる。絶縁基板の側面および底面には、上面電極と導通する側面電極および下面電極が形成されている。上面電極、側面電極および下面電極は、金属メッキ層によって覆われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−245218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、チップ抵抗器の分野では、小サイズ化がますます要求されるとともに、耐サージ特性の向上が要求されることがある。一般に、チップを小型化するほど、耐サージ特性は悪化する。これは、チップを小型化するほど、抵抗体の容量が小さくならざるをえないからであると考えられる。上記した特許文献1に記載された構造をもつチップ抵抗器では、小サイズ化した場合における耐サージ特性の向上についての配慮は存在しない。
【0005】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、小サイズ化した場合において耐サージ特性を向上することができるチップ抵抗器を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面によると、主面とこの主面と反対側の裏面とを有し、第1の方向における第1端部と第2端部とを有する基材と、前記主面に形成され、前記第1の方向における第1端部と第2端部とを有する抵抗体と、前記主面に形成され、前記抵抗体の第1端部に接する第1内部電極と、前記主面に形成され、前記抵抗体の第2端部に接する第2内部電極と、前記裏面に形成され、前記基材の前記第1端部に至る第1裏面電極と、前記第1裏面電極に対して離間して前記裏面に形成され、前記基材の前記第2端部に至る第2裏面電極と、を備え、前記第1裏面電極および前記第2裏面電極の前記第1の方向における長さは、それぞれ、前記基材の前記第1の方向における長さの2/10〜3/10であり、かつ、前記第1内部電極および前記第2内部電極の前記第1の方向における長さより長い、チップ抵抗器が提供される。
【0007】
好ましくは、前記第1内部電極は、前記抵抗体の第1端部の上位に前記第1の方向における前記抵抗体の長さに対する1/14以下の長さで重なる部分を備え、前記第2内部電極は、前記抵抗体の前記第2端部の上位に前記第1の方向における前記抵抗体の長さに対する1/14以下の長さで重なる部分を備える。
【0008】
好ましくは、前記第1内部電極は、前記基材の第1端部まで至っており、その前記抵抗体の第1端部に重なる部分以外の長さは、前記第1の方向における前記基材の長さの1/16以下であり、前記第2内部電極は、前記基材の第2端部まで至っており、その前記抵抗体の第2端部に重なる部分以外の長さは、前記基材の長さの1/16以下である。
【0009】
好ましくは、前記第1の方向と直交する第2の方向における前記抵抗体の幅は、前記主面の前記第2の方向における幅の1/2〜9/10である。
【0010】
好ましくは、前記抵抗体は、アンダーコートで覆われている。
【0011】
好ましくは、前記アンダーコートは、オーバーコートで覆われている。
【0012】
好ましくは、前記第1内部電極は前記オーバーコートに接する第1下地電極で覆われ、前記第2内部電極は前記オーバーコートに接する第2下地電極で覆われている。
【0013】
好ましくは、前記基材の前記第1の方向における第1側面には、前記第1下地電極が形成され、前記基材の前記第1の方向における第2側面には、前記第2下地電極が形成されている。
【0014】
好ましくは、前記第1裏面電極は、前記第1下地電極に導通しており、前記第2裏面電極は、前記第2下地電極に導通している。
【0015】
好ましくは、前記第1下地電極および前記第1裏面電極は、第1メッキ電極で一連に覆われており、前記第2下地電極および前記第2裏面電極は、第2メッキ電極で一連に覆われている。
【0016】
好ましくは、前記基材の前記第1の方向における長さは1.0〜3.2mmであり、前記基材の前記第1の方向と直交する第2の方向における幅は0.5〜2.5mmである。
【0017】
好ましくは、前記抵抗体は、トリミング溝を有している。
【0018】
好ましくは、前記トリミング溝は、前記抵抗体の前記第2の方向における端縁に設定した始点から、当該始点に対して前記第1の方向および前記第2の方向に変位する中間点まで延びる主部分と、当該中間点から、前記主部分の前記中間点付近に対して前記始点の位置する方向に折れ曲がって終点まで延びる付加部分と、を有する。
【0019】
好ましくは、前記付加部分は、前記主部分に対して90°以下の角度で折れ曲がって延びる。
【0020】
好ましくは、前記主部分は、前記始点から前記第2の方向に延びる第1部分と、当該第1部分の端部から前記第1の方向に延びる第2部分と、を有するL字状をしている。
【0021】
本発明の第2側面によると、主面を有し、第1の方向における第1端部と第2端部とを有する基材と、前記主面に形成され、前記第1の方向における第1端部と第2端部とを有する抵抗体と、前記主面に形成され、前記抵抗体の第1端部に接する第1内部電極と、前記主面に形成され、前記抵抗体の第2端部に接する第2内部電極と、前記抵抗体に形成されたトリミング溝と、を備え、前記トリミング溝は、前記第1の方向と直交する第2の方向における前記抵抗体の端縁に設定した始点から、当該始点に対して前記第1の方向および前記第2の方向に変位する中間点まで延びる主部分と、当該中間点から、前記主部分の前記中間点付近に対して前記始点の位置する方向に折れ曲がって終点まで延びる付加部分と、を有する、チップ抵抗器が提供される。
【0022】
好ましくは、前記基材の前記第1の方向における長さは1.0〜3.2mmであり、前記基材の前記第2の方向における幅は0.5〜2.5mmである。
【0023】
好ましくは、前記付加部分は、前記主部分に対して90°以下の角度で折れ曲がって延びる。
【0024】
好ましくは、前記主部分は、前記始点から前記第2の方向に延びる第1部分と、当該第1部分の端部から前記第1の方向に延びる第2部分と、を有するL字状をしている。
【0025】
好ましくは、前記抵抗体は、アンダーコートで覆われている。
【0026】
好ましくは、前記アンダーコートは、オーバーコートで覆われている。
【0027】
好ましくは、前記第1内部電極は前記オーバーコートに接する第1下地電極で覆われ、前記第2内部電極は前記オーバーコートに接する第2下地電極で覆われている。
【0028】
好ましくは、前記基材の前記第1の方向における第1側面には、前記第1下地電極が形成され、前記基材の前記第1の方向における第2側面には、前記第2下地電極が形成されている。
【0029】
好ましくは、前記基材の前記主面と反対側の面には、前記第1側面電極に導通する第1裏面電極、および、前記第2側面電極に導通する第2裏面電極が形成されている。
【0030】
好ましくは、前記第1下地電極、前記第1側面電極および前記第1裏面電極は、第1メッキ電極で一連に覆われており、前記第2下地電極、前記第2側面電極および前記第2裏面電極は、第2メッキ電極で一連に覆われている。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施形態にかかるチップ抵抗器の平面図(一部透視化)である。
図2図1のII−II線に沿う断面図である。
図3図1から第1メッキ電極と第2メッキ電極とを省略した平面図(一部透視化)である。
図4図3から第1下地電極と第2下地電極とアンダーコートとオーバーコートとを省略した平面図(一部透視化)である。
図5図1に示したチップ抵抗器の底面図(一部透視化)である。
図6図1に示したチップ抵抗器の正面図である。
図7図1に示したチップ抵抗器の背面図である。
図8図1に示したチップ抵抗器の左側面図(一部透視化)である。
図9図1に示したチップ抵抗器の右側面図(一部透視化)である。
図10図2に示したチップ抵抗器の部分拡大断面図である。
図11図2に示したチップ抵抗器の部分拡大断面図である。
図12】本発明の実施形態の変形例にかかるチップ抵抗器の平面図(一部構成省略)である。
図13】本発明の実施形態の変形例にかかるチップ抵抗器の平面図(一部構成省略)である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、本発明の実施形態にかかるチップ抵抗器の平面図(一部透視化)である。図2は、図1のII−II線に沿う断面図である。
【0033】
これらの図に示すチップ抵抗器100は、基材1と、第1電極部2と、第2電極部3と、抵抗体4と、アンダーコート5と、オーバーコート6と、を備える。図1の横方向における基材1の寸法は、たとえば、1.0〜3.2mm程度であり、同図の縦方向におけるチ基材1の寸法は、たとえば、0.5〜2.5mm程度であり、図2の縦方向における基材1の寸法は、たとえば、0.2〜0.5mm程度である。
【0034】
図3は、図1から第1メッキ電極と第2メッキ電極とを省略した平面図(一部透視化)である。図4は、図3から第1下地電極と第2下地電極とアンダーコートとオーバーコートとを省略した平面図(一部透視化)である。図5は、図1に示したチップ抵抗器の底面図(一部透視化)である。図6は、図1に示したチップ抵抗器の正面図である。図7は、図1に示したチップ抵抗器の背面図である。図8は、図1に示したチップ抵抗器の左側面図(一部透視化)である。図9は、図1に示したチップ抵抗器の右側面図(一部透視化)である。
【0035】
基材1は直方体状である。基材1は絶縁材料よりなる。このような絶縁材料としてはアルミナなどのセラミックが挙げられる。基材1は、主面11と、裏面12と、第1側面13と、第2側面14と、第3側面15と、第4側面16と、を有する。主面11、裏面12、第1側面13、第2側面14、第3側面15、第4側面16はいずれも平坦である。
【0036】
主面11および裏面12は互いに反対側を向く。第1側面13と第2側面14と第3側面15と第4側面16とはいずれも、主面11および裏面12につながっている。第1側面13および第2側面14は、第1の方向(X1−X2方向)において互いに反対側を向く。第3側面15および第4側面16は、第1の方向と直交する第2の方向(Y1方向)において互いに反対側を向く。
【0037】
図1図2図11図12に示すように、第1電極部2は、第1内部電極21と、第1下地電極22と、第1裏面電極23と、第1メッキ電極27と、を含む。第1電極部2は、基材1における第1の方向(X1−X2方向)の一方(X2)側に形成されている。
【0038】
第1内部電極21は基材1の主面11に形成されている。第1内部電極21は主面11における、第1の方向(X1−X2方向)の一方(X2)側の領域に形成されている。本実施形態において第1内部電極21は、主面11と第1側面13との境界に至っている。第1内部電極21は、第1側面13と面一の端面を有する。第1内部電極21を構成する材料は、たとえば銀系メタルグレーズが挙げられる。本実施形態においては、第1内部電極21は、印刷および焼成によって、たとえば10〜30μmの厚みに形成される。
【0039】
第1下地電極22は基材1の第1側面13に形成されている。本実施形態においては、第1下地電極22は第1側面13の全面を覆っている。第1下地電極22を構成する材料は、たとえば、NiやCrが挙げられる。本実施形態においては、第1下地電極22はスパッタによって形成される。そのため、第1下地電極22の厚さは非常に薄い。スパッタによって形成される第1下地電極22の厚さは、たとえば、20〜200nmである。本実施形態とは異なり、第1下地電極22が印刷によって形成されていてもよい。第1下地電極22は第1内部電極21に接している。これにより、第1下地電極22は第1内部電極21に導通している。なお、第1下地電極22は、スパッタにより形成する場合、第1内部電極21、この第1内部電極21の一部を覆う後述するオーバーコート6の一部、基材1の第1側面13、および第1裏面電極23の表面を一連に覆うように形成するのがよい。こうして形成された第1下地電極22は、第1メッキ電極27を形成するための下地層となる。
【0040】
第1裏面電極23は基材1の裏面12に形成されている。第1裏面電極23は、裏面12における、第1の方向(X1−X2方向)の一方(X2)側の領域に形成されている。第1裏面電極23は裏面12と第1側面13との境界に至っている。本実施形態において、第1裏面電極23を構成する材料は、たとえば、銀系メタルグレーズが挙げられる。本実施形態においては、第1裏面電極21は、印刷および焼成によって形成される。第1裏面電極23は第1下地電極22に接している。これにより、第1裏面電極23は第1下地電極22に導通している。したがって、第1裏面電極23と第1下地電極22と第1内部電極21とは互いに導通している。
【0041】
第1メッキ電極27については後述する。
【0042】
図1図2図11図12に示すように、第2電極部3は、第2内部電極31と、第2下地電極32と、第2裏面電極33と、第2メッキ電極37と、を含む。第2電極部3は、基材1における第1の方向(X1−X2方向)の他方(X1)側に形成されている。
【0043】
第2内部電極31は基材1の主面11に形成されている。第2内部電極31は主面11における、第1の方向(X1−X2方向)の他方(X1)側の領域に形成されている。本実施形態において第2内部電極31は、主面11と第2側面14との境界に至っている。第2内部電極31は、第2側面14と面一の端面を有する。第2内部電極31を構成する材料は、第1内部電極21と同様に、たとえば銀系メタルグレーズが挙げられる。本実施形態においては、第2内部電極は、第1内部電極21と同様に、印刷および焼成によって、たとえば10〜30μmの厚みに形成される。
【0044】
第2下地電極32は基材1の第2側面14に形成されている。本実施形態においては、第2下地電極32は第2側面14の全面を覆っている。第2下地電極32を構成する材料は、たとえば、NiやCrが挙げられる。本実施形態においては、第2下地電極32は第1下地電極22と同様にスパッタによって形成される。スパッタによって形成される第2下地電極32の厚さは、たとえば、20〜200nmである。本実施形態とは異なり、第2下地電極32が印刷によって形成されていてもよい。第2下地電極32は第2内部電極31に接している。これにより、第2下地電極32は第2内部電極31に導通している。なお、第2下地電極32は、スパッタにより形成する場合、第2内部電極31、この第2内部電極31の一部を覆う後述するオーバーコート6の一部、基材1の第2側面14、および第2裏面電極33の表面を一連に覆うように形成するのがよい。こうして形成された第2下地電極32は、第2メッキ電極37を形成するための下地層となる。
【0045】
第2裏面電極33は基材1の裏面12に形成されている。第2裏面電極33は、裏面12における、第1の方向(X1−X2方向)の他方(X1)側の領域に形成されている。第2裏面電極33は裏面12と第2側面14との境界に至っている。本実施形態において、第2裏面電極33を構成する材料は、第1裏面電極23と同様、たとえば、銀系メタルグレーズが挙げられる。本実施形態においては、第2裏面電極33は、第1裏面電極23と同様、印刷および焼成によって形成される。第2裏面電極33は第2下地電極32に接している。これにより、第2裏面電極33は第2下地電極32に導通している。したがって、第2裏面電極33と第2下地電極32と第2内部電極31とは互いに導通している。
【0046】
第2メッキ電極37については後述する。
【0047】
抵抗体4は基材1の主面11に形成されている。抵抗体4は、第1の方向(X1−X2方向)方向について、その一方(X2)側の第1端部41と、他方(X1)側の第2端部42とを有している。図10および図11に示すように、抵抗体4は、その第1端部41が第1内部電極21の下層にもぐりこむようにして、その第2端部42が第2内部電極31の下層にもぐりこむようにして、第1内部電極21および第2内部電極31に接している。すなわち、抵抗体4は第1内部電極21および第2内部電極31に先立って主面11上に形成される。これにより、抵抗体4は、第1内部電極21および第2内部電極31に電気的に導通している。抵抗体4は、たとえば酸化ルテニウム等の抵抗材料よりなり、たとえば印刷および焼成により、10〜30μmの厚みに形成される。
【0048】
本実施形態においては、抵抗体4の第1の方向(X1−X2方向)についての実効長L3を可能な限り長くし、第2の方向(Y1方向)についての幅W2を、可能な限り広くする。具体的には、第1内部電極21および第2内部電極31における抵抗体4に重ならない部分の長さL4を、基材1の第1の方向についての長さL1の1/64〜1/16の範囲、より好ましくは1/20〜1/16の範囲とし、第1内部電極21および第2内部電極31における抵抗体4に重なる部分の長さL5を、抵抗体の長さL2の1/14以下、より好ましくは1/60以下とし(図2図10図11)、抵抗体4の幅W2を、基材1の幅W1の1/2〜9/10の範囲、より好ましくは3/5〜4/5の範囲とする(図4)。一方、第1裏面電極23および第2裏面電極33は、実装基板に対する電気的導通を確実にするため、第1の方向(X1−X2方向)についての長さL6を十分な長さ、たとえば、基材1の第1の方向についての長さL1の2/10〜3/10の範囲とする必要がある。その結果、第1内部電極21および第2内部電極31の第1の方向(X1−X2方向)についての長さ(L4+L5)に注目すると、この長さ(L4+L5)は、第1裏面電極23および第2裏面電極の長さL6に対して十分に短くなる。たとえば、基材1の第1の方向(X1−X2)についての長さL1が1.6mm、基材1の第2の方向(Y1方向)についての幅W2を0.8mmとした場合、上記L6はたとえば0.32mmであるのに対し、上記L4は0.1mm程度、上記L5は0.1mm程度、L4+L5は0.2mm程度となる。
【0049】
図1図3に示すように、抵抗体4の上層には、抵抗体をその全長および全幅にわたって覆うアンダーコート5が形成される。アンダーコート5の第1の方向(X1−X2方向)の両端部は、第1内部電極21および第2内部電極31の上面の一部に接し、第2の方向(Y1方向)の両端部は、主面11に接している。アンダーコート5はガラス系の材料よりなる。このようなガラス系の材料としては、ホウケイ酸鉛系ガラスが挙げられる。アンダーコート5は、たとえば、印刷および焼成によって、たとえば5〜50μmの厚みに形成される。
【0050】
図1図2等に示すように、抵抗体4には、アンダーコート5の形成後、このアンダーコート5の外部からレーザーを照射することにより、抵抗値調整のためのトリミング溝43が形成されるが、これについては後述する。
【0051】
図1図2図10図11に示すように、アンダーコート5の上層には、このアンダーコート5を覆うオーバーコート6が形成される。このオーバーコート6の第1の方向(X1−X2方向)の両端部は、第1内部電極21および第2内部電極31の上面の一部に接し、第2の方向(Y1方向)の両端部は、主面11に接するとともに、主面11の第2の方向(Y1方向)における両端に至っている。オーバーコート6は絶縁材料よりなり、このような絶縁材料としてはエポキシ樹脂が挙げられる。オーバーコート6は、たとえば、印刷・乾燥によって形成される。
【0052】
第1メッキ電極27は、第1内部電極21、第1下地電極22および第1裏面電極23とともに第1電極部2を形成する。第1メッキ電極27は、図10に示すように、下地層として、第1内部電極21におけるオーバーコート6に覆われていない露出部と、基材1の第1側面13ないし第1裏面電極を一連に覆うようにスパッタにより形成した第1下地電極22と、に対して1回もしくは複数回のメッキ処理を施すことにより形成される。第1メッキ電極27は、Cu、Au、Ni、およびSnの少なくともいずれかよりなる。第1メッキ電極27の厚さは、たとえば、6〜15μmである。
【0053】
第2メッキ電極37は、第2内部電極31、第2下地電極32および第2裏面電極33とともに第2電極部3を形成する。第2メッキ電極37は、図11に示すように、下地層として、第2内部電極31におけるオーバーコート6に覆われていない露出部と、基材1の第2側面14ないし第2裏面電極33を一連に覆うようにスパッタにより形成した第2下地電極32と、に対して1回もしくは複数回のメッキ処理を施すことにより形成される。第2メッキ電極37は、Cu、Au、Ni、およびSnの少なくともいずれかよりなる。第2メッキ電極37の厚さは、たとえば、6〜15μmである。
【0054】
トリミング溝43は、チップ抵抗器100の抵抗値を決定するために、第1および第2電極部3、3間の抵抗値をモニターしつつ、アンダーコート5の外部からレーザー光を照射することにより抵抗体5を焼き切った溝を、レーザースポットを所定方向に移動させながら形成することにより形成される。
【0055】
トリミング溝43は、図4に示すように、抵抗体4における第2の方向(Y1)方向の端縁の適所に設定した始点433から、当該始点433に対して第1の方向(X1−X2方向)、および、第2の方向(Y1の方向)に変位する中間点434まで延びる主部分431と、この中間点434から、始点433の位置する方向に折れ曲がって終点435まで延びる付加部分432と、からなっている。トリミング溝43の幅は、たとえば15〜40μmである。
【0056】
本実施形態においては、主部分431は、始点433から第2の方向(Y1の方向)に直線的に延びる第1部分4311と、この第1部分4311の端部から直角に折れ曲がって第1の方向(X1−X2の方向)に直線状に延びる第2部分4312とを有するL字状をしている。この主部分4311の形態は、トリミング溝43としての一般的な形態であるが、第1部分4311の長さによって、抵抗値の大まかな調整がなされ、第2部分4312によって抵抗値の微調整がなされる。
【0057】
付加部分432は、主部分431の先端、すなわち、中間点434付近に対して90°ないし、90°を下回る、たとえば、80°以下の角度で折れ曲がるようにして形成される。
【0058】
なお、主部分431の形態としては、図4に示したようなL字状に限らず、図12に示すように、曲線状となっていてもよいし、図13に示すように、第1部分4311に対して第2部分4312が90°以下の角度で折れ曲がっていてもよい。すなわち、始点433から中間点434までの経路は問われない。
【0059】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0060】
本実施形態のチップ抵抗器100においては、抵抗体4に接する第1内部電極21および第2内部電極31は、抵抗体4を基材1の主面11の平坦面に形成した後に、一部がこの抵抗体4の両端部の上面にそれぞれ重なるようにして形成することができる。このように、抵抗体4はそのすべてが平坦な主面11に形成されることから、抵抗体4の形成長さや位置の管理をより精密に行うことができ、主面11の大きさの範囲内において、可能なかぎり大面積の抵抗体4の形成を品位よく達成することができる。併せて、第1内部電極21および第2内部電極31の抵抗体4の上位に重なる部分の長さL5を、意図的に短縮しており、これらのことにより、小サイズ化するための基材1の主面11上において、抵抗体4の実効長L3を拡張することができる。
【0061】
本実施形態のチップ抵抗器100においては、抵抗体4に形成するトリミング溝43の形態を、主部分431の先端(中間点434)に対して始点433の位置する方向に折れ曲がって延びる付加部分432を設けた形態を採用している。トリミング溝43の終点435からは、マイクロクラックが発生することが避けられず、このマイクロクラックは、図4に示したように、トリミング溝43の終点435からその前方に扇形に広がるように発生する傾向がある。このようなマイクロクラックが抵抗体4上の電流経路に及ぶと、抵抗値の変動や耐サージ特性の悪化につながる。本実施形態のチップ抵抗器100においては、上記したように、トリミング溝43は、抵抗値の調整を司る主部分431に加え、付加部分432を設け、しかも、主部分431に対してこの付加部分432が向く方向は、主部分431の先端に対して90°ないし、90°を下回る、たとえば80°以下の鋭角をなしている。したがって、この付加部分432の先端からマイクロクラックが発生したとしても、これが抵抗体4上の電流経路に及ぶ可能性は著しく低くなる。
【0062】
このように、本実施形態のチップ抵抗器100においては、小サイズ化された基材1の主面11上で抵抗体4の有効長さを延長することができること、トリミング溝43の終端から発生するマイクロクラックが抵抗体4上の電流経路に及ぶ可能性を著しく低めていること、とが相乗して、耐サージ特性を向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0063】
100 チップ抵抗器
1 基材
11 主面
12 裏面
13 第1側面
14 第2側面
15 第3側面
16 第4側面
2 第1電極部
21 第1内部電極
22 第1下地電極
23 第1裏面電極
27 第1メッキ電極
3 第2電極部
31 第2内部電極
32 第2下地電極
33 第2裏面電極
37 第2メッキ電極
4 抵抗体
41 第1端部
42 第2端部
43 トリミング溝
431 主部分
4311 第1部分
4312 第2部分
432 付加部分
433 始点
434 中間点
435 終点
5 アンダーコート
6 オーバーコート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13