(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6274795
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】自動車用燃料タンク
(51)【国際特許分類】
B60K 15/03 20060101AFI20180129BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20180129BHJP
B29C 49/20 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
B60K15/03 A
F02M37/00 301J
B29C49/20
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-191580(P2013-191580)
(22)【出願日】2013年9月17日
(65)【公開番号】特開2015-58724(P2015-58724A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2016年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】308039414
【氏名又は名称】株式会社FTS
(74)【代理人】
【識別番号】100097076
【弁理士】
【氏名又は名称】糟谷 敬彦
(72)【発明者】
【氏名】岩田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】杉本 純一
(72)【発明者】
【氏名】國定 嵩
(72)【発明者】
【氏名】鷲山 泰之
【審査官】
米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−168022(JP,A)
【文献】
特開2008−75656(JP,A)
【文献】
米国特許第6138859(US,A)
【文献】
特開2013−142358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/03
B29C 49/20
F02M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロー成形で形成され、内部に内蔵部品を取付けられ、熱可塑性合成樹脂で形成された外壁を有する自動車用燃料タンクにおいて、
上記内蔵部品は、中央部に空間を有し、上記燃料タンクのタンク外壁の底側内面に沿って延設されリング状に形成されるとともに、リング状の部分は内部が中空状で外側面、上面及び内側面からなるように形成され、
上記内蔵部品は、上記内蔵部品の上記外側面、上面及び内側面に、上記燃料タンクの収縮又は膨張に応じて撓むことができる寸法変化吸収部を設け、
該寸法変化吸収部は、第1側面、第2側面及び底面から構成される断面コ字形に凹んだ吸収凹部が形成され、
上記外側面と上記内側面の上記第1側面は一方の先端から一部を切欠いた第1切欠部と、上記底面と連続する第1連結部が形成され、上記第2側面は他方の先端から一部を切欠いた第2切欠部と上記底面と連続する第2連結部が形成され、上記底面は上記第1連結部と上記第2連結部により上記第1側面と上記第2側面を屈曲して連結し、
上記上面の上側吸収凹部の外側面と内側面の両側は、上側凹部第1切欠部と上側吸収凹部第2切欠部が設けられて、上側吸収凹部の底面と外側吸収凹部の底面の連結部分に外側吸収凹部第4切欠部が形成されて、
上記上側吸収凹部第4切欠部により上記上側凹部第1切欠部と上側吸収凹部第2切欠部が連続して形成されたことを特徴とする自動車用燃料タンク。
【請求項2】
上記寸法変化吸収部は、上記自動車用燃料タンクの横方向の伸縮を吸収する部分に設けられた請求項1に記載の自動車用燃料タンク。
【請求項3】
上記寸法変化吸収部は、上記自動車用燃料タンクの縦方向の伸縮を吸収する部分に設けられた請求項1又は請求項2に記載の自動車用燃料タンク。
【請求項4】
上記内蔵部品は、合成樹脂で形成された請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の自動車用燃料タンク。
【請求項5】
上記内蔵部品の上記外側面又は内側面の少なくとも一部は、自動車走行時の上記燃料タンク内の燃料の移動方向に対して直交する方向に形成された請求項1乃至請求項4いずれか1項に記載の自動車用燃料タンク。
【請求項6】
上記内蔵部品は、上記燃料タンクのタンク外壁の内面に融着して上記内蔵部品を取付ける取付部が複数設けられた請求項1乃至請求項5いずれか1項に記載の自動車用燃料タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性合成樹脂製の燃料タンクに関するものであり、特に、熱可塑性合成樹脂部材をブロー成形することにより外壁が形成され、内部に内蔵部品を有する燃料タンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用等の燃料タンクの構造としては、金属製のものが用いられていたが、近年、車両の軽量化や、錆が発生しないこと、所望の形状に成形しやすいことなどによって熱可塑性合成樹脂製のものが用いられるようになってきた。
熱可塑性合成樹脂製の自動車用燃料タンクの製造は、中空体を成形することの容易性からブロー成形方法が多く用いられてきた。ブロー成形方法では、溶融した熱可塑性合成樹脂部材のパリソンを円筒状にして上から押出して、そのパリソンを金型で挟みパリソン中に空気を吹き込み、自動車用燃料タンクを製造していた。
【0003】
図1に示すように、その燃料タンク101は、合成樹脂製のタンク外壁110を有しており、ブロー成形方法においても、燃料タンク101の内部にバルブ類や燃料の流動音を抑制するためのバッフルプレート等の内蔵部品120を設けることが求められている。
その内蔵部品120は、
図9に示すように、燃料タンク101のタンク外壁110の上下の伸縮を保持する複数の柱部材121と、その柱部材121を支えるとともに、燃料タンク101の横方向の収縮を支える梁部材122を有するものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
この場合は、柱部材121には燃料タンク101のタンク外壁110の内面に融着して内蔵部品210を取付ける取付部材130が複数設けられている。また、梁部材122には、自動車の走行時に燃料タンク101の内部の燃料が移動して異音を発生することを防止するバッフルプレート124も形成されている。
【0005】
燃料タンク101はブロー成形後に収縮し、さらに、使用時には燃料タンク101の内圧や、気温等により膨張や収縮をする。そのため、内蔵部品120の柱部材121と梁部材122には、燃料タンク101の収縮又は膨張に応じて撓むことができる寸法変化吸収部材123が設けられている。
【0006】
この寸法変化吸収部材123は、屈伸するように湾曲した断面が楕円形の形状をしている。この楕円形の寸法変化吸収部材123を形成するには、形状が複雑であるため、成形する金型の構造も複雑となり、製造に手間がかかりコストも増大していた。また、寸法変化吸収部材123を内蔵部品120とは物部材で形成し、その後組付けることも必要となり、手間がかかっていた。
【0007】
また、
図10と
図11に示すように、柱部材121又は梁部材122に寸法変化吸収部125として断面コ字形に凹んだ吸収凹部126を形成することも考えられている。吸収凹部126は、第1側面126a、第2側面126bと底面126cから構成されている。
図11のA−A断面図は、
図10のA−A線に沿った断面図であり、B−B断面図は、
図10のB−B線に沿った断面図であり、C−C断面図は、
図10のC−C線に沿った断面図である。
【0008】
この場合には、吸収凹部126は構造が単純であり、金型の構造も単純となり、製造も容易であるが、吸収凹部126に繰返し伸縮が加わると、第1側面126aと底面126cの連結部分、第2側面126bと底面126cの連結部分、及び第1側面126a又は第2側面126bと柱部材121又は梁部材122との連結部分に応力が集中し、繰返し疲労により吸収凹部126が破損する恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−132297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そのため、本発明は、燃料タンクが収縮又は膨張しても、繰返しの応力や歪を吸収することができる燃料タンクを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための請求項1の本発明は、ブロー成形で形成され、内部に内蔵部品を取付けられ、熱可塑性合成樹脂で形成された外壁を有する自動車用燃料タンクにおいて、
内蔵部品は、中央部に空間を有し、燃料タンクのタンク外壁の底側内面に沿って延設されリング状に形成されるとともに、リング状の部分は内部が中空状で外側面、上面及び内側面からなるように形成され、
内蔵部品は、内蔵部品の外側面、上面及び内側面に、燃料タンクの収縮又は膨張に応じて撓むことができる寸法変化吸収部を設け、
寸法変化吸収部は、第1側面、第2側面及び底面から構成される断面コ字形に凹んだ吸収凹部が形成され、
外側面と内側面の第1側面は一方の先端から一部を切欠いた第1切欠部と、底面と連続する第1連結部が形成され、第2側面は他方の先端から一部を切欠いた第2切欠部と底面と連続する第2連結部が形成され、底面は第1連結部と第2連結部により第1側面と第2側面を屈曲して連結し、
上面の上側吸収凹部の外側面と内側面の両側は、上側凹部第1切欠部と上側吸収凹部第2切欠部が設けられて、上側吸収凹部の底面と外側吸収凹部の底面の連結部分に外側吸収凹部第4切欠部が形成されて、
上側吸収凹部第4切欠部により上側凹部第1切欠部と上側吸収凹部第2切欠部が連続して形成されたことを特徴とする自動車用燃料タンクである。
【0012】
請求項1の本発明では、熱可塑性合成樹脂で形成された外壁を有する自動車用燃料タンクにおいて、内蔵部品は、中央部に空間を有し、燃料タンクのタンク外壁の底側内面に沿って延設されリング状に形成されるとともに、リング状の部分は内部が中空状で外側面、上面及び内側面からなるように形成されている。このため、燃料タンクの外壁の底側内面に沿って内蔵部品を取付けることができ、燃料タンク内の空間を広く内蔵部品でカバーすることができ、燃料の揺れによる異音の発生を防止できる。さらに、内蔵部品は、中央部に空間を有し、リング状の部分は内部が中空状で外側面、上面及び内側面からなるため、重量を軽減することができ、車両の軽量化に貢献することができる。
【0013】
内蔵部品は、内蔵部品の外側面、上面及び
内側面に、燃料タンクの収縮又は膨張に応じて撓むことができる寸法変化吸収部を設けた。このため、合成樹脂製の自動車用燃料タンクが収縮又は膨張しても、寸法変化吸収部材が撓んでその変化を吸収して、燃料タンクと内蔵部品に歪や余分な応力がかかることがないので、燃料タンクと内蔵部品が剥離することがなく、燃料タンクの強度を維持することができる。また、寸法変化吸収部により、燃料タンクへの衝撃も吸収することができる。
【0014】
寸法変化吸収部は、第1側面、第2側面及び底面から構成される断面コ字形に凹んだ吸収凹部が形成される。このため、凹部形状の寸法変化吸収部の構造が単純であり、寸法変化吸収部を成形する金型の構造も簡単となり、内蔵部品を成形するときに、同時に同じ金型で成形することができ、製造が容易であり、コストも削減できる。
【0015】
外側面と内側面の第1側面は一方の先端から一部を切欠いた第1切欠部と、底面と連続する第1連結部が形成され、第2側面は他方の先端から一部を切欠いた第2切欠部と底面と連続する第2連結部が形成される。このため、
外側面と内側面の第1切欠部と第2切欠部の部分では寸法変化吸収部が撓むことができるとともに、第1切欠部と第2切欠部の形成は、金型の寸法変化吸収部を成形するキャビティーの部分に切欠部に対応する突部を形成することで成形することができ、製造が容易である。
【0016】
さらに、底面は第1連結部と第2連結部により第1側面と第2側面を屈曲して連結しているため、柔軟性が向上して、寸法変化吸収部が伸縮するときに、底面に対して、第1連結部と第2連結部が撓むことにより、第1側面と第2側面が大きく伸縮することができ、燃料タンクの伸縮を容易に吸収することができ、内蔵部品に大きな応力や歪が生ずることがなく、寸法変化吸収部が破損することがない。
【0017】
上面の上側吸収凹部の外側面と内側面の両側は、上側凹部第1切欠部と上側吸収凹部第2切欠部が設けられて、上側吸収凹部の底面と外側吸収凹部の底面の連結部分に外側吸収凹部第4切欠部が形成されて、
上側吸収凹部第4切欠部により上側凹部第1切欠部と上側吸収凹部第2切欠部が連続して形成された。このため、外側面、上面及び内側面に形成された寸法変化吸収部は、一体として伸縮することができ、燃料タンクの伸縮を確実に吸収して、燃料タンクと内蔵部品に大きな応力や歪が生ずることがなく、燃料タンクと内蔵部品が繰返し伸縮しても、寸法変化吸収部が破損することがない。
【0020】
請求項2の本発明は、寸法変化吸収部は、自動車用燃料タンクの横方向の伸縮を吸収する部分に設けられた自動車用燃料タンクである。
【0021】
請求項2の本発明では、寸法変化吸収部は、自動車用燃料タンクの横方向の伸縮を吸収する部分に設けられたため、外気温や振動等で燃料タンクの全体が伸縮しても、内蔵部品がその伸縮に応じて伸縮することができ、内蔵部品と燃料タンクに大きな応力や歪が生ずることがない。
【0022】
請求項3の本発明は、寸法変化吸収部は、自動車用燃料タンクの縦方向の伸縮を吸収する部分に設けられた自動車用燃料タンクである。
【0023】
請求項3の本発明では、寸法変化吸収部は、自動車用燃料タンクの縦方向の伸縮を吸収する部分に設けられたため、燃料タンク内部の圧力が増減しても、燃料タンクの外壁の膨張と収縮に応じて、内蔵部品が伸縮することができ、内蔵部品と燃料タンクに大きな応力や歪が生ずることがない。
【0024】
請求項4の本発明は、内蔵部品は、合成樹脂で形成された自動車用燃料タンクである。
【0025】
請求項4の本発明では、内蔵部品は、合成樹脂で形成されたため、燃料タンク内に取付けられても、錆や不足が生じることがなく、軽いので燃料タンクの軽量化に貢献することができる。また、寸法変化吸収部等の成形についても、内蔵部品を成形する金型のキャビティーを寸法変化吸収部対応した形状に加工することにより、内蔵部品の成形と同時に形成することができる。
【0026】
請求項5の本発明は、内蔵部品の外側面又は内側面の少なくとも一部は、自動車走行時の燃料タンク内の燃料の移動方向に対して直交する方向に形成された自動車用燃料タンクである。
【0027】
請求項5の本発明では、内蔵部品の外側面又は内側面の少なくとも一部は、自動車走行時の燃料タンク内の燃料の移動方向に対して直交する方向に形成されたため、内蔵部品の側面に形成された外側面又は内側面の少なくとも一部によりバッフルプレートの役割を果たし、走行時に燃料タンク内の燃料が移動したり波打ったりしても、燃料の過度な動きを防止して、燃料タンク内部の燃料油の波うち音の発生を防止することができるとともに、異音の発生を防止できる。
【0028】
請求項6の本発明は、内蔵部品は、燃料タンクのタンク外壁の内面に融着して内蔵部品を取付ける取付部が複数設けられた自動車用燃料タンクである。
【0029】
請求項6の本発明では、内蔵部品は、燃料タンクのタンク外壁の内面に融着して内蔵部品を取付ける取付部が複数設けられた。このため、内蔵部品を取付部で燃料タンクの外壁の内面に融着して固定することができ、安定して取り付けることができ、内蔵部品により燃料タンクの外壁の強度を増加させることができる。
【発明の効果】
【0030】
外側面と内側面の第1側面は一方の先端から一部を切欠いた第1切欠部と、底面と連続する第1連結部が形成され、第2側面は他方の先端から一部を切欠いた第2切欠部と底面と連続する第2連結部が形成されるため、第1切欠部と第2切欠部の部分では寸法変化吸収部が撓むことができるとともに、第1切欠部と第2切欠部の形成は、金型の寸法変化吸収部を成形するキャビティーの部分に切欠部に対応する突部を形成することで成形することができ、製造が容易である。
【0031】
上面の外側面側に形成された切欠部は、外側面の第1切欠部又は第2切欠部と連続して形成され、上面の内側面側に形成された切欠部は、内側面の第1切欠部又は第2切欠部と連続して形成された。このため、外側面、上面及び内側面に形成された寸法変化吸収部は、一体として伸縮することができ、燃料タンクの伸縮を確実に吸収して、燃料タンクと内蔵部品に大きな応力や歪が生ずることがなく、燃料タンクと内蔵部品が繰返し伸縮しても、寸法変化吸収部が破損することがない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の実施の形態である燃料タンク斜視図である。
【
図2】本発明の燃料タンクの内部に取付けられる内蔵部品の斜視図である。
【
図3】本発明の燃料タンクの内部に取付けられる内蔵部品の寸法変化吸収部の拡大斜視図である。
【
図4】本発明の内蔵部品の外側面に形成された寸法変化吸収部の正面図である。
【
図5】本発明の内蔵部品の外側面に形成された寸法変化吸収部の断面図である。
【
図6】本発明の内蔵部品を燃料タンク内に設けるブロー成形において、ブロー成形金型を開いた状態の断面図である。
【
図7】本発明の内蔵部品を燃料タンク内に設けるブロー成形において、ブロー成形金型の押圧ピンをスライドさせた状態の断面図である。
【
図8】本発明の内蔵部品を燃料タンク内に設けるブロー成形において、ブロー成形金型を閉じた状態の断面図である。
【
図9】従来の燃料タンクの内蔵部品の斜視図である。
【
図10】従来の他の内蔵部品の寸法変化吸収部の正面図である。
【
図11】従来の他の内蔵部品の寸法変化吸収部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施の形態である自動車用の燃料タンク1について、
図1〜
図8に基づき説明する。
本発明の実施の形態では、燃料タンク1は、
図1に示すように、その燃料タンク1に燃料ポンプ(図示せず)等を出し入れするためにポンプユニット取付孔4が上面に形成されている。また、燃料タンク1の側面又は上面には、インレットパイプ(図示せず)から燃料を注入する燃料注入孔5が形成されている。
【0034】
また、燃料タンク1の周囲には外周リブ2が全周に亘り形成されており、外周リブ2のコーナー部等の所定箇所には、数箇所に亘り取付用孔3が形成され、取付用孔3と車体をボルト締めすることにより、燃料タンク1を車体に取付けている。
さらに、燃料タンク1の上面には、内部の燃料蒸気を回収するホース等を接続する各所の取付孔6が形成されている。
【0035】
本実施の形態において、燃料タンク1は、ブロー成形で形成され、そのタンク外壁10は、外側から順に表皮層、外部本体層、外部接着剤層、バリヤ層、内部接着剤層及び内部本体層から形成されている。
ブロー成形においては、上記の6層から構成されるパリソンが使用される。6層以上の層構成を有するパリソンや、単層又は5層以下の層を有するパリソンを使用することもできる。また、表皮層は外部本体層に再生部材や、フィラー等を混入する場合に使用されるが、表皮層を省略することもできる。
【0036】
多層のパリソンの場合は、表皮層、外部本体層は、耐衝撃性が大きく、燃料油に対しても剛性が維持される熱可塑性合成樹脂から形成され、高密度ポリエチレン(HDPE)から形成されることが好ましい。外部本体層が、無機フィラーを含有した場合には、外部本体層の表面を覆うため、表皮層が使用され、表面に無機フィラーが出ることがなく、表面を円滑にすることができる。
【0037】
燃料タンク1の内部には、例えば、
図2に示す内蔵部品20が取付けられている。内蔵部品20の取付け方法については後述する。
まず、
図2に基づき、本発明の実施の形態の内蔵部品20について説明する。内蔵部品20は、燃料タンク1のタンク外壁の内面に融着して、上下を支える複数の取付部30が設けられている。
【0038】
取付部30の燃料タンク1の外壁の内面に当接する先端部分には、取付部当接面31が取付けられている。本実施の形態では、取付部当接面31は取付部30と一体に形成されているが、取付部30の先端に取付部30とは別体で形成してもよい。
内蔵部品20の上面21に形成された取付部当接面31は、ブロー成形時に燃料タンク1のタンク外壁10の上側壁を形成するパリソン8の内面に溶着して、内蔵部品20を燃料タンク1の内部に取付けることができる。また、内蔵部品20の下がエアに向けて形成された取付部当接面31は、タンク外壁10の底壁側に溶着される。
【0039】
内蔵部品20は、ポリアセタール、高密度ポリエチレン(HDPE)等の耐燃料油性の熱可塑性合成樹脂で形成することができる。これにより燃料タンク1の強度を向上させることができるとともに、燃料タンク1の内部に取付けられても、燃料油による膨潤等で剛性が低下することがない。
【0040】
本実施の形態の内蔵部品20は、
図2に示すように、内蔵部品20は、中央部が空間を有して、略四角形状に周囲が連続したリング状に形成されている。なお、本件発明においては、
図2に示す形態のほか、
図9に示すような、柱部材を梁部材で連結した内蔵部品20を使用することもできる。この場合には、後述する寸法変化吸収部25は、柱部材と梁部材のいずれか、または両方に設けることができる。
【0041】
本実施の形態の内蔵部品20のリング状の部分は、上側の面が略平面上に形成された上面21と、上面21から外周に略直角に垂下された外側面22と、上面21から中央部の空間側に略直角に垂下された内側面23とからなる形状に形成され、上面21、外側面22と内側面23に囲まれた内部は、下側面がない中空状に形成されている。その内蔵部品20の長辺側の両側には寸法変化吸収部25が形成されている。寸法変化吸収部25の詳細については後述する。このため、内蔵部品20は全体として、重量を軽くすることができ、車両の軽量化に貢献できるとともに、柔軟に変形することができる。上面21、外側面22と内側面23は、燃料タンク1のコーナー部や短辺側では、一部が幅が狭く形成されている。
【0042】
上面21には、上述の取付部30が複数個形成されているとともに、凹んだ上面孔部24が複数個形成されている。上面孔部24の底には取付部30と取付部当接面31を形成することができる。この取付部当接面31は、タンク外壁10の下側内面と融着して内蔵部品20を燃料タンク1のタンク内部に取付けることができる。これにより、燃料タンク1の内圧の変化により、タンク外壁10が膨張や伸縮しても、タンク外壁10を保持することができる。
この取付部30に後述する寸法変化吸収部25を形成することができる。
【0043】
外側面22と内側面23は、内蔵部品20の長辺側において、長手方向に長く形成されている。このため、外側面22と内側面23は、自動車走行時の燃料タンク1内の燃料の移動方向に対して直交する方向に形成されたため、外側面22と内側面23により走行時に燃料タンク1内の燃料が移動したり波打ったりしても、燃料の過度な動きを防止して、燃料タンク1内部の燃料油の波うち音の発生を防止することができるとともに、異音の発生を防止できる。
【0044】
寸法変化吸収部25は、
図2と
図3に示すように、上面21に形成された上側吸収凹部26と、外側面22に形成された外側吸収凹部27と、内側面23に形成された内側吸収凹部28とから構成されている。上側吸収凹部26、外側吸収凹部27及び内側吸収凹部28は連続して形成されている。上側吸収凹部26、外側吸収凹部27及び内側吸収凹部28は、いずれか1個所のみ設けて、他の部分は切欠きを設けないで凹部のみ形成することができるが、3箇所の吸収凹部を連続して設けると、柔軟性が向上して、燃料タンク1の伸縮をより吸収することができる。
【0045】
まず、外側吸収凹部27について
図3〜
図5に基づいて説明する。
外側吸収凹部27は、外側吸収凹部第1側面27a、外側吸収凹部第2側面27b及び外側吸収凹部底面27cから構成される断面コ字形に凹んで形成される。このため、外側吸収凹部27の構造が単純であり、外側吸収凹部27を成形する金型の構造も簡単となる。そのため、内蔵部品20を成形するときに、外側吸収凹部27も同時に同じ金型で成形することができ、製造が容易であり、コストも削減できる。
【0046】
外側吸収凹部27の外側吸収凹部第1側面27aは、一方の先端から、
図3及び
図4では下方から上方に向かって一部を切欠いた外側吸収凹部第1切欠部27dが形成される。外側吸収凹部第1切欠部27dが切欠かれていない残りの外側吸収凹部第1側面27aの部分は、外側吸収凹部底面27cと外側吸収凹部第1側面27aを連続する外側吸収凹部第1連結部27hが形成される。
【0047】
外側吸収凹部27の外側吸収凹部第2側面27bは、他方の先端から、
図3及び
図4では上方から下方に向かって一部を切欠いた外側吸収凹部第2切欠部27eが形成される。外側吸収凹部第2切欠部27eが切欠かれていない残りの外側吸収凹部第2側面27bの部分は、外側吸収凹部底面27cと外側吸収凹部第2側面27bを連続する外側吸収凹部第2連結部27jが形成される。
【0048】
このため、外側吸収凹部27では、外側吸収凹部底面27cは外側吸収凹部第1連結部27hと外側吸収凹部第2連結部27jにより外側吸収凹部第1側面27aと外側吸収凹部第2側面27bを屈曲して連結しているため、柔軟性が向上して、外側吸収凹部27が伸縮するときに、外側吸収凹部底面27cに対して、外側吸収凹部第1側面27aと外側吸収凹部第2側面27bが大きく伸縮することができ、燃料タンク1の伸縮を容易に吸収することができ、内蔵部品20に大きな応力や歪が生ずることがない。
【0049】
外側吸収凹部第1連結部27hと外側吸収凹部第2連結部27jの外側吸収凹部底面27cとの連結部分の幅(
図4にXで示す。)は、外側吸収凹部底面27cの幅の1/4〜1/2であることが好ましい。この場合には、寸法変化吸収部25が伸縮するときに、外側吸収凹部第1連結部27hと外側吸収凹部第2連結部27jは、充分な強度と柔軟性を有する。
【0050】
外側吸収凹部底面27cの幅の1/4が未満である場合には、外側吸収凹部第1連結部27hと外側吸収凹部第2連結部27jの剛性が不足して、耐久性が低下する恐れがあり、外側吸収凹部底面27cの幅の1/2を超える場合には、外側吸収凹部第1連結部27hと外側吸収凹部第2連結部27jの剛性が大きすぎて、寸法変化吸収部25が伸縮し難くなり、応力の吸収性が低下する。
【0051】
同様に上側吸収凹部26について
図3〜
図5に基づいて説明する。
上側吸収凹部26は、上側吸収凹部第1側面26a、上側吸収凹部第2側面26b及び上側吸収凹部底面26cから構成される断面コ字形に凹んで形成される。このため、外側吸収凹部27と同様に、上側吸収凹部26の構造が単純であり、上側吸収凹部26を成形する金型の構造も簡単となる。そのため、内蔵部品20を成形するときに、上側吸収凹部26も外側吸収凹部27と一緒に同時に同じ金型で成形することができ、製造が容易であり、コストも削減できる。
【0052】
上側吸収凹部26の上側吸収凹部第1側面26aは、その両側で切欠かれて、外側面22側では、外側吸収凹部第3切欠部27fと連続する上側凹部第1切欠部26dが設けられて、上側吸収凹部第2側面26bは、同様にその両側で切欠かれて、外側面22側では、上側吸収凹部第2切欠部26eが設けられている。
上側吸収凹部底面26cと外側吸収凹部底面27cの連結部分が切欠かれて外側吸収凹部第4切欠部27gが形成される。外側面22側の外側吸収凹部第3切欠部27fと上側吸収凹部第2切欠部26eは、外側吸収凹部第4切欠部27gで連結されている。
【0053】
そのため、上側吸収凹部26においても、上側吸収凹部26が伸縮するときに、上側吸収凹部底面26cに対して、上側吸収凹部第1側面26aと上側吸収凹部第2側面26bが大きく伸縮することができ、燃料タンク1の伸縮を容易に吸収することができ、内蔵部品20に大きな応力や歪が生ずることがない。
【0054】
さらに、内側吸収凹部28においても、両側の側面と底面は内側面23との連結部と上面21との連結部及び上側吸収凹部26との連結部分は同様に切欠かれている。
このため、寸法変化吸収部25は、上面21、外側面22及び内側面23の部分が全体として伸縮することができ、燃料タンク1の伸縮を容易に吸収することができ、内蔵部品20に大きな応力や歪が生ずることがない。
【0055】
次に、ブロー成形による本件発明の燃料タンク1の製造方法を、
図6〜
図8に基づき説明する。
まず、
図6に示すように、内蔵部品20を支持棒41に保持して、ブロー成形金型40が開いた内部に位置させる。その後、パリソン8を下降させて、内蔵部品20をパリソン8の内部に位置させる。
【0056】
そして、
図7に示すように、第1ピンチ板43をスライドさせて、パリソン8の下端を支持棒41とともに挟持する。それとともに、ブロー成形金型40に設けられた複数の押圧ピン42をスライドさせて、パリソン8を内蔵部品20に取付けられた取付部30と押圧ピン42で挟むように押圧する。
【0057】
そうすると、パリソン8の内面はまだ溶融状態にあるため、上述のように、取付部30の取付部当接面31がパリソン8と当接し、取付部当接面31とパリソン8が融着することができる。このとき、内蔵部品20は、支持棒41により保持されているので、取付部30と内蔵部品20は、燃料タンク1のタンク外壁10の所定の位置に確実に取付けられることができる。
【0058】
その後、
図8に示すように、支持棒41を下降させてブロー成形金型40から抜き、第2ピンチ板44をスライドさせてパリソン8を閉じるとともに、ブロー成形金型40を閉じて、スライドカッター46でパリソン8を切断する。ブロー成形金型40を閉じるときには、押圧ピン42は、そのままパリソン8を押圧続ける。これにより、内蔵部品20を所定位置に保持し続けることができる。
【0059】
そして、エアノズル45からパリソン8の内部に空気を吹き込み、パリソン8の外面をブロー成形金型40に押圧して、燃料タンク1を形成する。このとき、押圧ピン42の先端面とブロー成形金型40のキャビティー内面とは同一平面になることができる。
その後、ブロー成形金型40を開き、燃料タンク1を取出す。
【符号の説明】
【0060】
1 燃料タンク
8 パリソン
10 外壁
20 内蔵部品
21 上面
22 外側面
23 内側面
26 上側吸収凹部
27 外側吸収凹部
27a 外側吸収凹部第1側面
27b 外側吸収凹部第2側面
27c 外側吸収凹部底面
27d 外側吸収凹部第1切欠部
27e 外側吸収凹部第1切欠部
28 内側吸収凹部