(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記プレス処理では、前記プレス面の温度が第1目標温度になるように前記プレス面の温度調整を行い、かつ、前記板厚決定部材の温度が第2目標温度になるように前記板厚決定部材の温度調整を行い、前記プレス面の温度調整と前記板厚決定部材の温度調整とを、別々に行う、請求項1に記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
前記プレス面の温度調整は、前記型に設けられたプレス面用温度調整部が行い、前記板厚決定部材の温度調整は、前記板厚決定部材に設けられた板厚決定部材用温度調整部が行う、請求項2に記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
前記プレス処理では、前記一対の型によって成形されたガラスブランクの板厚に応じて、前記板厚決定部材の温度を調整する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
前記プレス処理は、溶融状態のガラスを切断してつくられた溶融ガラスの塊の落下方向に対する直交方向の両側から一対の型のプレス面で前記塊を挟み込む処理である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法。
【背景技術】
【0002】
近年の磁気記録媒体の記録密度の向上に伴い、磁気記録媒体の作製に用いる磁気ディスク用ガラス基板や磁気ディスク用ガラスブランクには、板厚偏差および平面度をより一層改善することが求められている。
磁気ディスク用ガラス基板となる磁気ディスク用ガラスブランクを作製する方式としては、代表的には、
(1)溶融ガラスの塊を一対のプレス成形型によりプレス成形するプレス成形工程を経て磁気ディスク用ガラスブランクを作製するプレス方式、及び
(2)フロート法、ダウンドロー法などによって形成されたシート状ガラスを円盤状に切断加工する工程を経て磁気ディスク用ガラスブランクを作製するシートガラス切断方式、
が知られている。
【0003】
プレス方式の一例として、溶融ガラスの塊をプレス用の下型で受けた後、プレス用の上型が溶融ガラスの塊を上方から下りてきて下型と上型とで上下方向から挟み込むことにより、溶融ガラスの塊をプレスしてガラスブランクを成形する垂直ダイレクトプレス方式、及び、落下中の溶融ガラス塊を、溶融ガラス塊の落下方向に対して交差する方向に対向配置された一対の型を水平方向から溶融ガラスの塊を挟み込むことにより溶融ガラスをプレスしてガラスブランクを成形する水平ダイレクトプレス方式が知られている(特許文献1、特許文献2)。
【0004】
水平ダイレクトプレス方式の一例(特許文献1)では、表面の平面度が高く、板厚が均一で、且つ表面粗さが良好なガラスブランクを得ることができる。
図5は、従来の水平プレス方式の一対の型100の構成を模式的に示す図である。一対の型100はプレス面構成部材101、板厚決定部材102、プレス面構成部材101と板厚決定部材102の基準面となる部材103、均熱部材104、及びヒータ105を備える。
プレス面構成部材101は、プレス面を構成する部材であって、溶融ガラスの塊を挟みプレスするプレス面106を備える。プレス面106は、成形されるガラスブランクの平面度に影響を与える部分である。プレス面106の温度がそれぞれの型で異なる場合、この温度差によって成形されるガラスブランクに反り等が発生し平面度が悪化する。したがって、プレス中、プレス面構成部材101は、ガラスブランクの平面度が悪化しないように、温度が目標温度になるように管理される。板厚決定部材102は、プレス面構成部材101を囲み、プレス面から一対の型の対向方向に向けて突出した部材であり、この突出高さに基づいて、ガラスブランクの板厚、あるいは板厚公差が定まる。
部材103は、プレス面構成部材101と板厚決定部材102の基準面となる部材である。
均熱部材104は、板厚決定部材102に設けられたヒータ105からの熱を均等に伝え板厚決定部材102の温度を均一にする。
【0005】
このような従来の型では、板厚決定部材102は、ヒータ105から均熱板104を介して熱をプレス面構成部材101に伝える。また、プレス面構成部材101にもプレス面構成部材101全体の温度を調整する図示されないヒータを備える場合もある。これにより、プレス面構成部材101の温度を、ガラスブランクを成形するのに適した温度に保持することができる。さらに、プレス面構成部材101と板厚決定部材102が部材103の同一平面状にある状態でプレス面構成部材101の近傍に板厚決定部材102を配置することによりプレス面構成部材101と板厚決定部材102の平行度は高精度に保持される。さらに、水平ダイレクトプレス方式において、板厚決定部材102は、プレス面構成部材101が移動してプレス圧力を変えるようなプレスをする場合、プレス面構成部材101がプレス方向に動作するときプレス面構成部材101が傾かないようガイドの役割を果たす。
この型を用いた水平ダイレクトプレス方式では、
図5に示すように、ガラスブランクの板厚は対向する一対の型のプレス面構成部材101のプレス面106から一対の型の対向方向に突出する板厚決定部材102の突出高さT1−t1,T2−t2により決定される。つまりG=(T1−t1)+(T2−t2)となる。ここで、一対の型の温度範囲は、ガラスのガラス転移点以上屈服点未満であることが望ましいので、実際のガラスブランクの板厚は対向する板厚決定部材の全長T1,T2に熱膨張分を加えた値からプレス面構成部材101の全長t1,t2に熱膨張分を加えた値を引いた値となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の水平ダイレクトプレス方式及び垂直ダイレクトプレス方式では一対の型を構成する部材全体を加熱することが多く、型を構成する部材の温度がほぼ同じ温度となっている。具体的には、従来の水平ダイレクトプレス方式の一対の型の構成では、ガラスブランクを成形する温度(成形温度)までプレス面構成部材101を加熱するとき、プレス面構成部材101の外側に配置されたヒータ105から熱が伝えられる。特に、上記特許文献2では、熱を板厚決定部材102に均一に伝えるために、均熱部材104が板厚決定部材102に接触するように設けられる。これにより、プレス面構成部材101と板厚決定部材102の温度はほぼ同じ温度となる。
したがって、従来の型の構成では、プレス面構成部材101と板厚決定部材102の温度がほぼ同じになるため、板厚決定部材102の温度変更が磁気ディスク用ガラスブランクの成形に適した型の温度域であるガラス転移点(Tg)以上屈服点未満に限定されるという不都合が生じる。このため、ガラスブランクの板厚の調整範囲も制限される。
所定の板厚のガラスブランクを得るために板厚決定部材101の熱膨張量を制御するとき、ヒータ105の加熱温度を変えると、ガラスブランクの平面度はこの加熱温度の影響を受け、平面度が所定の範囲内に維持できなくなる。一方、ガラスブランクの平面度を調整するために、対向する一対の型のプレス面の温度を変えると板厚決定部材102の温度も同時に変化する。その結果、板厚決定部材102の熱膨張量に変化が生じ、ガラスブランク101の板厚が変化する。ガラスブランクの平面度と板厚の変化は、一定の範囲の平面度と板厚を有する磁気ディスク用ガラス基板を大量に製造する場合、研削や研磨の取代量を板厚に応じて変える必要が生じ、さらには、平面度の悪化による不合格品が多数ロット単位で発生する可能性がある点で好ましくない。
【0008】
また、過剰な熱を型に与えて型を部分的に加熱する場合、加熱する部分以外の温度を所望の温度に低下させるためには水冷など冷却機構を付加することが考えられる。しかしながら、これらの加熱方式や冷却機構を組み合わせても、型の部材毎に温度を高精度に調整するといったことは困難であるいといった問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、溶融ガラスの塊をプレスしてガラスブランクを成形するとき、一対の型の温度が温度分布を持つように、プレス面を構成する部材及び板厚決定部材の温度を自在に調整することができる磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法
、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法
、及びガラスブランク成形型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題を解決するために、本願発明者は、ガラスブランクをプレス成形する型について種々検討した結果、ガラスブランクの板厚を決定する、プレス面から突出した板厚決定部材の温度と、ガラスブランクの平面度に影響を与えるプレス面の温度とが自在に調整できることが重要であることを知見した。すなわち、板厚決定部材とプレス面を構成する部材との間の熱移動を抑制することが、ガラスブランクの板厚を一定に揃えつつ、ガラスブランクの平面度を向上させる点で好ましいことを知見した。この知見により、本願発明者は以下の発明を相当した。
【0011】
本発明の一態様は、磁気ディスク用ガラス基板に加工される磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法である。当該製造方法は、
ガラスを対向する一対の型のプレス面に挟み込むことにより、ガラスブランクを成形するプレス処理を有し、
前記プレス処理では、前記プレス面から前記一対の型の対向方向に突出する突出高さを有するように前記一対の型の少なくとも一方の前記プレス面の外周に設けられ、前記突出高さに基づいて前記ガラスブランクの板厚を定める板厚決定部材と前記プレス面を構成する部材との間の熱伝導を、
前記プレス面を囲み前記プレス面を構成する前記部材と接触するように前記板厚決定部材と前記プレス面を構成する部材との間に設けられた熱伝導抑制部材により抑制して、前記プレス面の温度調整を
し、
前記熱伝導抑制部材は、前記プレス面を構成する部材に比べて熱伝導率が低い。
【0012】
その際、前記プレス処理では、前記プレス面の温度が第1目標温度になるように前記プレス面の温度調整を行い、かつ、前記板厚決定部材の温度が第2目標温度になるように前記板厚決定部材の温度調整を行い、前記プレス面の温度調整と前記板厚決定部材の温度調整とを、別々に行うことが好ましい。
【0013】
また、前記プレス面の温度調整は、前記型に設けられたプレス面用温度調整部が行い、前記板厚決定部材の温度調整は、前記板厚決定部材に設けられた板厚決定部材用温度調整部が行うことが好ましい。
【0014】
前記第2目標温度は、前記第1目標温度に比べて低いことが好ましい。
【0015】
また、前記プレス処理では、前記一対の型によって成形されたガラスブランクの板厚に応じて、前記板厚決定部材の温度を調整することが好ましい。
【0016】
前記一対の型を第1の一対の型というとき、前記プレス処理では、前記第1の一対の型の他に、さらに第2の一対の型を用いてガラスブランクを成形する。このとき、前記プレス処理では、前記第2の一対の型のプレス面の温度が第3目標温度になるように温度調整をするプレス面の温度調整と、前記プレス面から前記一対の型の対向方向に突出するように、前記プレス面の外周に設けられ、前記突出高さに基づいて前記ガラスブランクの板厚を定める板厚決定部材の温度が第4目標温度になるように温度調整する板厚決定部材の温度調整とを別々に行う。このような場合、前記第1の一対の型で成形されたガラスブランクの板厚と前記第2の一対の型で成形されたガラスブランクの板厚が揃うように、前記第2目標温度と前記第4目標温度が別々に決定されることが好ましい。
このとき、前記第2目標温度と前記第4目標温度は互いに異なる温度であることが好ましい。
【0018】
また、前記プレス処理は、
溶融状態のガラスを切断してつくられた溶融ガラスの塊の落下方向に対する直交方向の両側から一対の型のプレス面で前記塊を挟み込む処理であることが好ましい。
【0019】
本発明の別の態様は、前記磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法にて成形されたガラスブランクに対して研削及び研磨の少なくとも一方を行い磁気ディスク用ガラス基板とする磁気ディスク用ガラス基板の製造方法である。
本発明のさらに別の一態様は、ガラスブランク成形型である。当該ガラスブランク成形型は、ガラスブランクを成形するためのプレス処理用の一対の型であって、前記一対の型は、ガラスを挟みこむプレス面と、前記プレス面の少なくとも一方の外周に設けられ、前記プレス面から突出した突出高さを有し、前記突出高さに基づいて前記ガラスブランクの板厚を定める板厚決定部材と、前記板厚決定部材と前記プレス面を構成する部材との間の熱伝導を抑制する
、前記プレス面を構成する前記部材と接触するように設けられた熱伝導抑制部材と、を有する。
前記熱伝導抑制部材は、前記プレス面を構成する部材に比べて熱伝導率が低い。
【発明の効果】
【0020】
上述の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法
、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法
、及びガラスブランク成形型によれば、プレス面及び板厚決定部材の温度を自在に調整することができる。このため、ガラスブランクの板厚を調整するための板厚決定部材の突出量を熱膨張により自在に変えることができ、また、ガラスブランクの平面度に影響を与えるプレス面の温度も自在に変えることができるので、ガラスブランクの品質を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法
、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法
、及びガラスブランク成形型について詳細に説明する。
【0023】
[磁気ディスク用ガラス基板]
以下、本実施形態で作製される磁気ディスク用ガラス基板について説明する。
本実施形態における磁気ディスク用ガラス基板は、円環状の薄板のガラス基板である。磁気ディスク用ガラス基板のサイズは問わないが、磁気ディスク用ガラス基板は、例えば、公称直径2.5インチの磁気ディスク用ガラス基板として好適である。公称直径2.5インチの磁気ディスク用ガラス基板の場合、例えば、外径が65mm、中心穴の径が20mm、板厚が0.6〜1.0mmである。実施形態で作製される磁気ディスク用ガラス基板の主表面の平面度は例えば4μm以下であり、主表面の表面粗さ(算術平均粗さRa)は例えば0.2nm以下である。
【0024】
本実施形態における磁気ディスク用ガラス基板の材料として、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ボロシリケートガラスなどを用いることができる。特に、化学強化を施すことができ、また主表面の平面度及び基板の強度において優れた磁気ディスク用ガラス基板を作製することができるという点で、アルミノシリケートガラスを好適に用いることができる。
【0025】
本実施形態の磁気ディスク用ガラス基板の組成を限定するものではないが、本実施形態のガラス基板は好ましくは、酸化物基準に換算し、モル%表示で、SiO
2を50〜75%、Al
2O
3を1〜15%、Li
2O、Na
2O及びK
2Oから選択される少なくとも1種の成分を合計で5〜35%、MgO、CaO、SrO、BaO及びZnOから選択される少なくとも1種の成分を合計で0〜20%、ならびにZrO
2、TiO
2、La
2O
3、Y
2O
3、Ta
2O
5、Nb
2O
5及びHfO
2から選択される少なくとも1種の成分を合計で0〜10%、有する組成からなるアルミノシリケートガラスである。
【0026】
[磁気ディスク用ガラス基板の製造方法]
次に、
図1を参照して、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法のフローを説明する。
図1は、本実施形態の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法のフローの一例を示す図である。
図1に示すように、先ず、一対の主表面を有する板状の磁気ディスク用ガラス基板の素材となるガラスブランクの成形処理が行われる(ステップS10)。次に、成形されたガラスブランクをスクライブして、円環状のガラス基板を作製する(ステップS20)。次に、スクライブされたガラス基板に対して形状加工(チャンファリング加工)を行う(ステップS30)。次に、ガラス基板の端面研磨を行う(ステップS40)。次に、ガラス基板の主表面に精研削を施した(ステップS50)後、第1研磨を施す(ステップS60)。次に、第1研磨後のガラス基板に対して化学強化を施す(ステップS70)。次に、化学強化されたガラス基板に対して第2研磨を施す(ステップS80)。以上の処理を経て、磁気ディスク用ガラス基板が得られる。なお、本実施形態では、ステップS20〜70の処理は必ずしもこの順番に行われる必要はなく、また、これらの処理のいずれかは場合によっては行われなくてもよい。例えば、精研削(ステップS50)は必要に応じて行わなくてもよい。
以下、各工程について、詳細に説明する。
【0027】
(a)プレス成形(ステップS10)
プレス成形(ステップS10)では、プレス成形により、円形状のガラスブランクを得る。プレス成形の方法は、水平ダイレクトプレス方式あるいは垂直ダイレクトプレス方式を含む。
図2は、水平ダイレクトプレス方式の型の一例を説明する図である。
図3は、
図2に示す型を用いてプレス成形をするときの型が溶融ガラス塊Gを挟む直前の状態を示す図である。
【0028】
水平ダイレクトプレス方式は、
図3に示すように、落下中の溶融ガラス塊Gを、溶融ガラス塊Gの落下方向に対して交差する方向に対向配置された一対の型121,122を水平方向から溶融ガラス塊Gを挟み込むことにより溶融ガラス塊Gをプレスしてガラスブランクを成形する方式である。すなわち、溶融ガラス塊Gの落下方向に対する直交方向の両側から一対の型のプレス面121a,122aで溶融ガラス塊Gを挟み込みプレスする方式である。溶融ガラス塊Gからガラスブランク(以降では、ガラスブランクも符号Gを用いる)を成形するとき、プレス面121a,122aから対向する型の方向(対向方向)に突出した板厚設定部121b,122b同士が接触する。これにより、プレス面121aとプレス面122aとの間に一定距離Dを有する隙間が形成され、この隙間がガラスブランクGの板厚を定める。このとき、溶融ガラス塊Gを一対の型121,122のプレス面121a,122aに挟み込むことによりプレス面121a,122aに沿って拡がる溶融ガラス塊Gの先端がプレス面121a,122aの端に到達しないように溶融ガラス塊Gはプレスされる。
【0029】
垂直ダイレクトプレス方式は、溶融ガラス塊Gをプレス用の下型で受けた後、プレス用の上型が溶融ガラスの塊を上方から下りてきて下型と上型とで上下方向から挟み込むことにより、溶融ガラス塊Gをプレスしてガラスブランクを成形する方式である。溶融ガラス塊GからガラスブランクGを成形するとき、プレス面から対向する型の方向(対向方向)に突出した板厚決定部材同士が接触する。これにより、プレス面の間に一定の距離の隙間が形成され、この隙間がガラスブランクGの板厚を定める。このとき、溶融ガラス塊Gを一対の型のプレス面に挟み込むことによりプレス面に沿って拡がる溶融ガラス塊Gの先端がプレス面の端に到達しないように溶融ガラス塊Gはプレスされる。
このようなプレス成形及びプレス成形に用いる型については後述する。
【0030】
(b)スクライブ(ステップS20)
次に、スクライブ処理について説明する。プレス成形の後、スクライブ処理では、成形されたガラスブランクGに対してスクライブが行われる。
ここでスクライブとは、成形されたガラスブランクGを所定のサイズのリング形状とするために、ガラスブランクGの表面に超鋼合金製あるいはダイヤモンド粒子からなるスクライバにより2つの同心円(内側同心円および外側同心円)状の切断線(線状のキズ)を設けることをいう。2つの同心円の形状にスクライブされたガラスブランクGは、部分的に加熱され、ガラスブランクGの熱膨張の差異により、外側同心円の外側部分および内側同心円の内側部分が除去される。これにより、円環状のガラス基板が得られる。
なお、ガラスブランクに対してコアドリル等を用いて円孔を形成することにより円環状のガラス基板を得ることもできる。
【0031】
(c)形状加工(ステップS30)
次に、形状加工について説明する。形状加工では、スクライブ後のガラス基板の端部に対するチャンファリング加工(外周端部および内周端部の面取り加工)を含む。チャンファリング加工は、スクライブ後のガラス基板の外周端部および内周端部において、主表面と、主表面と垂直な側壁部との間で、ダイヤモンド砥石により面取りを施す形状加工である。面取り角度は、主表面に対して例えば40〜50度である。
【0032】
(d)端面研磨(ステップS40)
次に、形状加工後のガラス基板の端面研磨が行われる。
端面研磨では、ガラス基板の内周端面及び外周端面をブラシ研磨により鏡面仕上げを行う。このとき、酸化セリウム等の微粒子を遊離砥粒として含むスラリーが用いられる。端面研磨を行うことにより、ガラス基板の端面での塵等が付着した汚染、ダメージあるいはキズ等の損傷の除去を行うことにより、サーマルアスペリティの発生の防止や、ナトリウムやカリウム等のコロージョンの原因となるイオン析出の発生を防止することができる。
【0033】
(e)精研削(ステップS50)
精研削では、例えば固定砥粒による研削が行われる。この場合、周知の遊星歯車機構を備えた両面研削装置を用いて、ガラス基板の主表面に対して研削加工を行う。具体的には、ガラスブランクGから生成されたガラス基板の外周側端面を、両面研削装置の保持部材に設けられた保持孔内に保持しながらガラス基板の両側の主表面の研削を行う。精研削は、研削による取代量が、例えば数μm〜100μm程度の加工処理である。両面研削装置は、上下一対の定盤(上定盤および下定盤)を有しており、上定盤及び下定盤の間にガラス基板が狭持される。上定盤及び下定盤のガラス基板に対向する面には、固定砥粒が設けられている。そして、上定盤または下定盤のいずれか一方、または、双方を移動操作させることで、ガラス基板と各定盤とを相対的に移動させることにより、このガラス基板の両主表面を研削することができる。
【0034】
(f)第1研磨(ステップS60)
次に、研削のガラス基板の主表面に第1研磨が施される。具体的には、ガラス基板の外周側端面を、両面研磨装置の保持部材に設けられた保持孔内に保持しながらガラス基板の両側の主表面の研磨が行われる。第1研磨は、例えば固定砥粒による研削を行った場合に主表面に残留したキズや歪みの除去、あるいは微小な表面凹凸の調整を目的とする加工処理である。
【0035】
(g)化学強化工程(ステップS70)
次に、ガラス基板は化学強化される。化学強化液として、例えば硝酸カリウムと硫酸ナトリウムの混合液等を用いることができる。化学強化工程では、ガラス基板を化学強化液中に、浸漬する。
ガラス基板を化学強化液に浸漬することによって、ガラス基板の表層にあるガラス組成中のリチウムイオン及びナトリウムイオンが、化学強化液中のイオン半径が相対的に大きいナトリウムイオン及びカリウムイオンにそれぞれ置換されることで表層部分に圧縮応力層が形成され、ガラス基板が強化される。なお、化学強化処理されたガラス基板は洗浄される。例えば、硫酸で洗浄された後に、純水等で洗浄される。
【0036】
(h)第2研磨(最終研磨)(ステップS80)
次に、化学強化後のガラス基板に第2研磨が施される。第2研磨は、主表面の鏡面研磨を目的とする。
第2研磨を実施することは必ずしも必須ではないが、ガラス基板の主表面の表面凹凸のレベルをさらに良好なものとすることができる点で実施することが好ましい。なお、第2研磨後(第2研磨を省略する場合には第1研磨後)のガラス基板の板厚は、ガラスブランクの板厚の90%以上となることが好ましい。
【0037】
[プレス成形及び型の詳細説明]
次に、ステップS10のプレス成形及び型について詳細に説明する。プレス成形では、
図2に示すように、溶融ガラス塊Gを一対の型121,122のプレス面121a,122aに挟み込むことによりプレス面121a,122aに沿って拡がる溶融ガラス塊Gの先端がプレス面121a,122aの端に到達しないように溶融ガラス塊Gをプレスすることにより、ガラスブランクGを成形する。このようなプレス成形は、水平ダイレクトプレス方式及び垂直ダイレクトプレス方式にも適用される。
このとき、プレス処理では、プレス面121a,122aから一対の型121,122の対向方向に突出するようにプレス面121a,122aの外周に設けられ、突出高さに基づいてガラスブランクGの板厚を定める板厚決定部材121b,122bとプレス面121a,122aとの間の熱伝導を抑制した状態で、プレス面121a,122aの温度調整が行われる。このとき、プレス面121a,122aの温度が第1目標温度になるように温度調整するプレス面の温度調整と、板厚決定部材121b,122bの温度が第2目標温度になるように温度調整する板厚決定部材の温度調整とを別々に行うことが、好ましい。
【0038】
このようなプレス成形に用いる型121,122は、互いに同一の構造を有する。型121,122は、プレス面構成部材121d,122dと板厚決定部材121b,122bを有している。
プレス面構成部材121d,122dは、プレス面を構成する円柱状の部材であり、溶融ガラス塊Gをプレス成形するための面(プレス面)121a,122aを有する。板厚決定部材121b,122bは、プレス面構成部材121d,122dの側面全面を覆うように形成され、プレス面121a,122aの外周に設けられる。板厚決定部材121bは、プレス面121a,122aから、対向する型122,121の側それぞれに向けて突出している。この突出部分の突出高さに基づいて、ガラスブランクの板厚が定まる。
型121,122は、プレス成形時にかかる荷重に耐えうるという観点から、例えば、超硬合金や、ダクタイル鋳鉄(FCD:Ferrum Casting Ductile)、SKD(Steel Kogu Dice)等から構成されていることが好ましい。さらに、軟鋼(SS41等)に対して、めっき等の金属コーティングを施したものから構成してもよい。特に、板厚設定部121b,122bは、プレス成形時に型122,121に当接する部分であるため、プレス成形時にかかる荷重が型121,122の他の部分と比べて大きい。このため、板厚設定部121b,122bは、プレス成型に耐えうる硬度が必要であることから、例えば、超硬合金や、FCD、SKD等のように、ビッカース硬さが1000HV以上の材料で形成されている、ことが好ましい。
【0039】
板厚決定部材121b,122bの外側には、ヒータ121e,122eが設けられている。プレス面構成部材121d,122dには、ヒータ121f,122fが、プレス面構成部材121d,122dに内蔵されている。これらのヒータ121e,122e及びヒータ121f,122fは、図示されない制御装置に接続され、板厚決定部材121b,122b及びプレス面121a,122aを含むプレス面構成部材122d,122dの温度を調整する温度調整部として機能する。板厚決定部材121b,122b及びプレス面構成部材121d,122dを冷却する場合は、ヒータ121e,122e,121f,122fに代えて冷却装置が設けられてもよい。また、ヒータの代わりに電磁誘導加熱源等の公知の温度調整素子が用いられてもよい。
このように、本実施形態では、プレス面121a,122aの温度調整と板厚決定部材121b,122bの温度調整は、それぞれ別々の温度調整部により行われることが、プレス面121a,122aの温度と板厚決定部材121b,122bの温度を自在に調整する上で好ましい。
【0040】
このような型121,122において、上述したように板厚決定部材121b,122bとプレス面121a,122aとの間の熱伝導を抑制するのは、板厚決定部材121b,122bのプレス面121a,122aの突出高さを調整する一方、プレス面121a,122aの温度を自在に調整するためである。上記突出高さは、板厚決定部材121b,122bの温度に起因した熱膨張により変化する。この突出高さがプレス面121a,122aの温度の影響を受けて変化すると、ガラスブランクGの板厚も変化する。一方、板厚決定部材121b,122の突出高さを調整するために温度を変更し、この変更した温度がプレス面121a,122aの温度に変化を与えると、プレス面121a,122aの間で温度差が生じ易く、ガラスブランクGの平面度が悪化し易くなる。このため、板厚決定部材121b,122bとプレス面121a,122aとの間の熱伝導は抑制される。板厚決定部材121b,122bとプレス面121a,122aとの間の熱伝導の抑制のために、板厚決定部材121b,122bとプレス面構成部材121d,122dとの間にプレス面121a,122aを囲むように熱伝導抑制部材を設けることが好ましい。熱伝導抑制部材として、プレス面121a,122aを構成するプレス面構成部材121d,122dに比べて熱伝導率が低い部材を用いられることが好ましい。ここで、熱伝導抑制部材としては、常温(20℃)における熱伝導率が0.01〜0.3W/m・Kの材料を用いることが好ましい。また、熱伝導抑制部材としては、例えばイソウール(登録商標)などのセラミックファイバーや、ガラス繊維やポリエステル繊維で補強されたシリカエアロゲルなどのエアロゲルを用いることができる。
図2には、プレス面121a,122aを構成するプレス面構成部材121d,122dに比べて熱伝導率の低い断熱部材121c,122cが、プレス面121a,122aを構成するプレス面構成部材121d,122dと板厚決定部材121b,122bとの間にプレス部材121d,122dを囲むように設けられている。
本実施形態では、プレス面構成部材121d,122dに比べて熱伝導率の低い断熱部材121c,122cが用いられるが、断熱部材121c,122cに制限されない。例えば、プレス面構成部材121d,122dと板厚決定部材121c,122cとの間に空気層が設けられてもよい。空気層は、プレス面構成部材121d,122dに比べて熱伝導率が低いので、プレス面構成部材121d,122dと板厚決定部材121c,122cとの間の熱伝導を抑制する。
【0041】
プレス面121a,122aを構成する板厚決定部材121b,122bの外周には、板厚決定部材121b,122bの温度を調整するためのヒータ121e,122eが設けられている。板厚決定部材121b,122bを冷却する場合は、ヒータ121e,122eに代えて冷却デバイスが設けられてもよい。また、図示されないが、プレス面構成部材121d,122dの温度を自在に調整するための複数の熱源が設けられている。熱源には例えば電熱ヒータや電磁誘導加熱源等が用いられる。このように、本実施形態では、プレス面121a,122aの温度調整と板厚決定部材121b,122bの温度調整は、それぞれ別々の温度調整部により別々に行われることが、プレス面121a,122aの温度と板厚決定部材121b,122bの温度を自在に調整する上で好ましい。この場合、プレス面121a,122aの温度が第1目標温度になるようにプレス面121a,122aの温度が調整され、かつ、板厚決定部材121d,122dの温度が第2目標温度になるように板厚決定部材121d,122dの温度が調整される。このとき、プレス面構成部材121d,122dと板厚決定部材121c,122cとの間の熱伝導が抑制されているので、第2目標温度は、第1目標温度に比べて低く設定することができる。これにより、板厚決定部材121d,122dの温度を自在に調整できるので、板厚決定部材121d,122dの熱膨張による突出高さを細かく調整でき、ガラスブランクの板厚を調整することができる。
【0042】
なお、プレス処理の際、一対の型121a,122aによって成形されたガラスブランクの板厚に応じて、板厚決定部材121b,122bに設定された目標温度を変更するように板厚決定部材121b,122bの温度調整のフィードバック制御を行うことが好ましい。この場合、図示されない制御装置が、成形されたガラスブランクの板厚の計測結果に基づいて、ガラスブランクの板厚が目標とする板厚になるように板厚決定部材121b,122bの目標温度を再設定し、この再設定された目標温度になるようにヒータ121e,122eの加熱を制御するとよい。例えば、型121,122の使用履歴によって、板厚決定部材121b,122bは摩耗し、突出高さが低くなる。このため、型121,122を使用するにしたがって、型121,122でつくられるガラスブランクの板厚は薄くなる場合がある。このような場合に、ガラスブランクの板厚を一定にするために、設定された目標温度を変更することができる。
【0043】
図5に示す従来の型を複数組用いてガラスブランクを作製したとき、複数の型の寸法が冷間状態で互いに同じであっても、ガラスブランクの平面度が所定の平面度になるようにプレス面121a,122aの温度を高くすると、プレス面121a,122aのプレス成形時の温度が異なるという現象が生じる。複数の型の間でプレス面の温度が異なると従来の型構成では、板厚決定部材の温度も変化するので、複数の型間で板厚のばらつきが大きくなり易い。
図2,3に示すような型の構成にするとプレス面121a,122aのプレス成形時の温度が複数の型の間で異なっていても、板厚決定部材121b、122bの温度を揃えることが可能となる。この結果、複数の型ので、ガラスブランクの板厚のばらつきを抑制することができる。
すなわち、プレス処理を、第1の一対の型と第2の一対の型を用いて行う場合、第1の一対の型では、第1の一対の型のプレス面の温度が第1目標温度になるように温度調整をするプレス面の温度調整と、板厚決定部材の温度が第2目標温度になるように温度調整する板厚決定部材の温度調整とが別々に行われる。一方、第2の一対の型では、第2の一対の型のプレス面の温度が第3目標温度になるように温度調整をするプレス面の温度調整と、板厚決定部材の温度が第4目標温度になるように温度調整する板厚決定部材の温度調整とが別々に行われる。
このとき、第2目標温度と第4目標温度が別々に決定されることが、第1の一対の型で成形されたガラスブランクの板厚と第2の一対の型で成形されたガラスブランクの板厚を容易に揃えることができる点で、好ましい。ガラスブランクの板厚が、型の間で異なる場合、上記第2目標温度と上記第4目標温度は互いに異なる温度に定められる。
【0044】
このように、板厚決定部材121b,122bとプレス面121a,122aとの間の熱伝導を抑制するので、板厚決定部材121b,122bの温度の調整の範囲が、大気の雰囲気温度である略30℃からガラスの屈服点未満の温度までの広い範囲に広がる。なお、板厚決定部材121b,122bとプレス面121a,122aとの間の熱伝導を抑制しない従来の型の場合、プレス面構成部材121d,122dと板厚決定部材121b,122bの温度が略同じ温度である。この点でも、本実施形態はプレス成形をする上で好ましい。
【0045】
本実施形態では、板厚決定部材121b,122bの温度を、プレス面構成部材121d,122dと同じ温度まで加熱することがなくなったので、板厚決定部材121b,122bの温度をプレス面構成部材121d,122dと比べて低く定めることができる。つまり、板厚決定部材121d,122dの突出高さが熱膨張により変化することを考慮する必要がなくなる。この結果、板厚決定部材121b、122bの突出高さを型の加工時の状態のまま使用することが可能となり、ガラスブランクGの板厚偏差を小さく維持することができる。
板厚決定部材121b,122bの温度をプレス面構成部材121d,122dと同じ温度まで加熱していた従来の型では、ガラスの種類によっては板厚決定部材121b,122bの熱処理温度を超えてしまうことがあった。板厚決定部材121b,122bの温度が板厚決定部材の熱処理温度を超えてしまうと、板厚決定部材121b,122bの硬度が下がり、この結果プレスにより板厚決定部材121b,122b自体が塑性変形を起こすという問題があった。しかし、本実施形態では、板厚決定部材121b,122bの温度をプレス面構成部材121d,122dと同じ温度まであげることはないので、上記熱処理の低下の問題はなくなる。
【0046】
従来、板厚決定部材121b,122bの材料として、ガラスブランクの成形温度で縦弾性係数(ヤング率)が高いことが求められていたが、本実施形態では板厚決定部材121b,122bの温度は、熱伝導の抑制によりプレス面121a,122aの温度まで上がらないので、板厚決定部材121b,122bの材料として、高温下でのヤング率が高い材料を用いるといった制約が無くなる。このため、板厚決定部材121b,122bに用いる材料の選択幅が広がる。
【0047】
[型の変形例]
図4は、本実施形態の他の形態の型であって、垂直ダイレクトプレス方式に用いる型の一例を示す図である。
図4に示す型200は、下型221と上型222を有する。
下型221は、プレス面221aと板厚決定部材221bを有する。板厚決定部材221bは、先端部221fと断熱部材221cとを有する。先端部221fは温度調整部として機能する図示されないヒータを内蔵する。上型222もプレス面222aと板厚決定部材222bを有する。板厚決定部材222bは、先端部222fと断熱部材222cとを有する。先端部222fは温度調整部として機能する図示されないヒータを内蔵する。
先端部221f,222fは、断熱部材221c,222cに対して積層するように設けられ、先端部221fと先端部222fが互いに対向するように設けられている。プレス成形時、先端部221fと先端部222fが当接する。したがって、先端部221f,222fと断熱部材221c,222cの積層部材は、プレス面221a,222aを囲み、プレス面221a,222aに対して突出するように設けられている。したがって、先端部221f,222fと断熱部材221c,222cの積層部材のプレス面221a,222aからの突出高さが板厚を決定する距離となる。
上型222には、プレス面構成部材222dを囲むようにスリーブ222gが設けられている。このスリーブ222gの表面に、板厚決定部材222b部材が設けられて固定されている。スリーブ222gの外側には、温度調整部として機能するヒータ222eが設けられ、スリーブ222gを介してプレス面構成部材222dの温度を調整することができる。また、プレス面構成部材222dの内部に、必要に応じて水冷等を利用した冷却機構が設けられ、プレス面構成部材222dの温度を調整してもよい。
【0048】
下型221には、プレス面221aを有する金属製の本体部材221dの表面に、先端部221fと断熱部材221cの積層部材である板厚決定部材221bが設けられて固定されている。
下型221の側面を取り巻くように、温度調整部として機能する加熱装置221eが設けられている。加熱装置221eは、例えば、高周波磁場を形成し、金属製の本体部材221dが磁場による誘導電流で発熱するようになっている。すなわち加熱装置221eは、本体部材221dを加熱する加熱装置となっている。したがって、下型221のプレス面221aは、加熱装置221eにより自在に温度調整される。
一方、先端部221fのスリーブ22gとの接続部分、及び先端部222fの本体部材221dとの接続部分には、熱伝導抑制部材である断熱部材221c,222cが設けられている。これにより、先端部221f,222fと、スリーブ22g及び本体部材221dとの間の熱伝導は抑制される。したがって、先端部221f,222fの温度は、スリーブ22b及び本体部材221dの温度とは別に自在に調整され得る。したがって、
図4に示す型100においても、
図2に示す型と同様に、先端部221f,222fのプレス面121a,122aからの突出高さを調整する一方、プレス面221a,222aの温度を自在に調整することができる。
この型100においても、
図2に示す型と同様に、プレス成形時、溶融ガラス塊Gを、一対の型221,222のプレス面221a,222aに挟み込むことにより、プレス面221a,222aに沿って拡がる溶融ガラス塊Gの先端がプレス面221a,222aの端に到達しないようにプレス成形される。
【0049】
本実施形態及び変形例の型は、いずれも一対の型のそれぞれに板厚決定部材を有するが、一対の型のうちいずれか一方のみに板厚決定部材を有してもよい。この場合、この板厚決定部材の突出高さによってガラスブランクの厚さが定められる。このような型であっても、本実施形態及び変形例と同様の作用及び効果を発揮する。
【0050】
[実験例]
本実施形態で用いる
図2に示す型121,122を用いて1000枚のガラスブランクを作製した。また、
図5に示す一対の型100を用いて1000枚のガラスブランクを作製した。作製したガラスブランクは、その周上の異なる4箇所の位置における板厚をマイクロメータを用いて計測し、その平均値を1つのガラスブランクの板厚とし、合計2000枚のガラスブランクの板厚を調べた。いずれのガラスブランクも、目標の板厚を0.745mmとした。
【0051】
プレス成形に用いる型において、本実施形態の型121,122の断熱部材121c,122cには、セラミックファイバーを用いた。型100と、型121,122の板厚決定部材102,121c,122cには、熱膨張率が12.8×10
-6[℃
-1]のSKD61の鋼材を用いた。板厚決定部材102,121c,122cの厚さは50mmとした。本実施形態の型121,122では、プレス面構成部材121d,122dと板厚決定部材121b,122bとの間に断熱部材121c,122cを設けたため、板厚決定部材121c,122cの温度を30〜600℃の範囲で自由に制御できた。これに対し、
図5に示す型100では、板厚決定部材102の温度を450〜600℃の範囲しか調整することはできなかった。したがって、板厚決定部材102では、熱膨張による板厚の制御幅は0.096mmとなり、板厚決定部材121b、122bでは、熱膨張による板厚の制御幅は0.365mmとなった。
板厚の計測結果については、型100で成形されたガラスブランクの板厚の変動幅は0.015mmであったが、型121,122で成形されたガラスブランクの板厚の変動幅は0.005mm以下であった。これより、板厚決定部材121b,122bとプレス面121a,122aとの間の熱伝導を抑制した状態で温度を調整してプレス成形をした場合、作製したガラスブランクの板厚の変動幅は小さいことがわかる。
【0052】
以上、本発明の磁気ディスク用ガラスブランクの製造方法
、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法
、及びガラスブランク成形型について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態及び実施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。