【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の目的は、nMOSトランジスタおよびpMOSトランジスタを備えた二重仕事関数半導体デバイスを製造する方法を提供することである。
【0006】
この目的は、本開示に従って、第1の独立請求項の技術的特徴を示す方法を用いて達成される。
【0007】
本開示の他の目的は、関連したデバイスを提供することである。
【0008】
この目的は、本開示に従って、第2の独立請求項の技術的特徴を備えたデバイスを用いて達成される。
【0009】
本開示の第1態様によれば、例えば、nMOSトランジスタおよびpMOSトランジスタを備えた二重仕事関数半導体デバイスの製造方法が開示される。該方法は、下記のステップを含む。
・第1導電型のトランジスタを製作するための第1所定エリアおよび、第1導電型とは異なる第2導電型のトランジスタを製作するための第2所定エリアを備えた基板を用意するステップ。
・基板の上に、前記第1エリアおよび前記第2エリアの両方の上に延びる誘電体層を設けるステップ。
・第1仕事関数シフト元素(element)を含む第1金属層または第1金属層スタックを、前記誘電体層の上で、前記第1所定エリアに、例えば、前記第1所定エリアだけに、例えば、前記第1所定エリアで、前記第2所定エリアではない場所に、設けるステップ。
・第2仕事関数シフト元素(element)を含む第2金属層または第2金属層スタックを、前記第1金属層および前記誘電体層の上で、前記第1所定エリアおよび前記第2所定エリアにそれぞれ設けるステップ。
・第1仕事関数シフト元素および第2仕事関数シフト元素の誘電体層中への拡散を促進するためのアニール工程を行うステップ。
・前記第1金属層または第1金属層スタックおよび前記第2金属層または第2金属層スタックを除去するステップ。
・第3金属層または第3金属層スタックを、前記第1所定エリアおよび前記第2所定エリアに設けるステップ。
【0010】
該方法は、単一金属ゲートがNMOSおよびPMOSについて設けられ、この金属ゲートが追加の処理フローの際に固定されるという利点を提供する。これにより、典型的にはドライのゲートエッチング処理を許容するため、ゲート構造の画定が簡単になり、最終的には比較的低い複雑さでゲート構造を画定する。
【0011】
他の利点は、例えば、単一の最終ゲート高さがNMOSおよびPMOSについて達成され、再びゲート画定、例えば、ゲートエッチングの処理を緩和することである。
【0012】
基板は、例えば、シリコン基板、またはSiGe基板、好ましくは50%未満のGe濃度のもの、またはシリコン・オン・インシュレータ(SOI)基板にできる。基板の追加の例を詳細な説明にある。
【0013】
該方法は、好都合には、トランジスタデバイス、好ましくは、プレーナ型のものを製造するために使用できる。垂直型のトランジスタデバイス(例えば、FINFETデバイス等)の分野での応用も除外されない。
【0014】
第1導電型のトランジスタは、PMOSトランジスタまたはNMOSトランジスタでもよい。第2導電型のトランジスタは、それぞれNMOSトランジスタまたはPMOSトランジスタでもよい。第1導電型は、第2導電型と異なる(具体的には反対になる)。
【0015】
MOSFETデバイスにおいて、ゲートは、チャネルを導電性にする閾値電圧(Vt)を必要とする。相補型MOS(CMOS)プロセスが、nチャネルおよびpチャネル(各々NMOSおよびPMOS)トランジスタの両方を製造する。閾値電圧(Vt)は、実効仕事関数差(ΔWF
eff)と呼ばれるものによって影響される。閾値電圧(Vt)の値を確立するには、各NMOSおよびPMOSゲート材料(ゲートスタック)の実効仕事関数差、およびこれらの対応するチャネル領域が、チャネルプロセスおよびゲートプロセスを通じて独立に達成される。換言すると、ゲート誘電体(例えば、ホスト誘電体および可能性ある異なるキャップ層からなる)およびゲート電極(例えば、少なくとも1つの金属層からなる)の両方が、ゲートスタック(デバイス)の実効仕事関数(WF
eff)を決定する。さらに、ゲートプロセス自体は(異なるプロセス及び/又は適用される熱処理のシーケンス)は、ゲートスタック(デバイス)の実効仕事関数(WF
eff)に対して影響を有するであろう。
【0016】
ゲートスタック(デバイス)の実効仕事関数(WF
eff)は、ゲート誘電体材料、ゲート電極材料の選択、および実施するゲートプロセスによってチューニング(調整/変更/シフト)可能なパラメータである。これに対してゲート電極(金属ゲート電極または電極層または金属制御電極とも称される)の仕事関数(WF)は、材料の固有の性質である。一般に、ある材料(即ち、金属層)の仕事関数は、初期において電子がフェルミ準位にある場合、材料中の電子を材料原子の外側に真空へ脱出させるのに要するエネルギーの測定基準(単位は電子ボルト(eV))である。ゲート電極の仕事関数は、材料の堆積状態(as-deposited)の仕事関数または固有の仕事関数と称することもある。
【0017】
好ましい実施形態によれば、仕事関数(仕事関数シフト元素)は、実効仕事関数(実効仕事関数シフト元素)である。シリコン基板での実効仕事関数は、トランジスタデバイスに用いられるのと同じゲート電極、高誘電率(high-k)ゲート誘電体、ドープしたSi基板を用いて集積した、金属−絶縁体−シリコンキャパシタデバイスから抽出される実効仕事関数でもよい。シリコン基板での実効仕事関数を計算するには、キャパシタデバイスの平坦なバンド電圧が、好ましくは、文献("Characterization of Ultra-Thin Oxides Using Electrical C-V and I-V Measurements.", J. R. Hauser and K. Ahmed, International conference on Characterization and Metrology for ULSI Technology, 1998, pp. 235-239)に記載されているようなC−Vベースの方法を用いて抽出される。該文献は、参照によりここに組み込まれる。好ましくは、実効仕事関数は、下記の式を用いて計算される。但し、誘電体中のゼロ電荷を想定している。
【0018】
【数1】
【0019】
ここで、φ
doped Siは、ドープしたSi基板のフェルミ準位である。
【0020】
N型シフト元素は、高誘電率(high-k)ゲート誘電体スタックへの拡散またはこれを通る拡散によって、ゲートスタックの実効仕事関数をシリコン(または半導体基板)伝導帯エッジに向けてシフトできる追加の元素でもよい。
【0021】
P型シフト元素は、高誘電率(high-k)ゲート誘電体スタックへの拡散またはこれを通る拡散によって、ゲートスタックの実効仕事関数をシリコン(または半導体基板)価電子帯エッジに向けてシフトできる追加の元素でもよい。
【0022】
好ましい実施形態によれば、該方法は、第2仕事関数シフト元素を含む第2金属層または第2金属層スタックを堆積する前に、第1仕事関数シフト元素の誘電体層中への拡散を促進するための独立したアニール工程を含む。
【0023】
これは、シフト元素の誘電体層中への拡散を促進するための最終のアニール工程が、第1仕事関数シフト元素の誘電体層中への拡散を促進するのに不充分である場合、後者のプロセスは独立して制御または最適化できるという利点を提供する。
【0024】
好ましい実施形態によれば、アニール工程は、第2仕事関数シフト元素の誘電体層中への第1所定エリアでの拡散を提供しないものである。
【0025】
これは、第2仕事関数シフト元素が第1所定エリアにおける第1金属層または第1金属層スタックを通って第1所定エリアにおける誘電体層中へ拡散する可能性が制御または回避できるという利点を提供する。
【0026】
好ましい実施形態によれば、該方法は、第1および第2金属層または第1もしくは第2金属層スタックを堆積する前に、エッチング停止層、好ましくは、ウェットエッチング停止層を誘電体層の上に設けるステップをさらに含む。エッチング停止層は、第1金属層または第1金属層スタック及び/又は第2金属層または第2金属層スタックをエッチングするためのエッチャントによってエッチングされないものであり、エッチング停止層は、それを通過する第1仕事関数シフト元素および第1仕事関数シフト元素の拡散を許容するものである。
【0027】
好ましい実施形態によれば、エッチング停止層は、誘電体を完全に被覆できる。エッチング停止層は、第1所定エリアおよび第2所定エリアを完全に被覆できる。エッチング停止層は、誘電体を完全に隠蔽できる。
【0028】
これは、誘電体(典型的には、高誘電率(high-k)、即ち、高い誘電定数のもの)が、デバイスの追加プロセスの際、ウェットおよびプラズマ処理への露出から常に保護されるという利点を提供する。そうしなければ、こうしたプロセスによって影響を受けて、その結果、最終ゲートスタックの最終の電気特性に影響を与えるであろう。
【0029】
好ましい実施形態によれば、エッチング停止層は、TaN,TaまたはTa
2O
3またはTaO(Taの空気酸化によって形成されるTa亜酸化物)、TiNのいずれか、あるいはこれらの組合せを含む。
【0030】
好ましい実施形態によれば、エッチング停止層は、TaN層およびTaOまたはTa
2O
3層を含む二重層(bilayer)として、あるいはTiN層およびTaOまたはTa
2O
3層を含む二重層として埋め込まれる。
【0031】
エッチング停止層は、好ましくは、第1所定エリアおよび第2所定エリアにおいて同じ構成を有する。
【0032】
好ましい実施形態によれば、第1金属層または第1金属層スタック、あるいは第2金属層または第2金属層スタックは、TiN/Mg/TiN、またはMg/TiN,La,La
2O
3、またはTiN/La/TiNを含む。
【0033】
好ましい実施形態によれば、第2金属層または第2金属層スタック、あるいは第1金属層または第1金属層スタックは、アルミニウムを含む。それは、例えば、Al、Al酸化物、Alドープシリコン酸化物を含んでもよい。
【0034】
好ましい実施形態によれば、第1金属層または第1金属層スタック、あるいは第2金属層または第2金属層スタックは、TiN層で覆われ、またはTiN/Al/TiNを含む三重層(trilayer)で覆われたアルミニウム酸化物を含む。
【0035】
上記を明確化するため、第1型および第2型のシフト元素を誘電体層の個々のエリアに導入するために個々の金属層または金属層スタックを設ける順序は、交代可能であることは、当業者に理解されよう。例えば、TiN/Mg/TiN,またはMg/TiN,La,La
2O
3またはTiN/La/TiNを含む金属層または金属層スタックを最初に設けてもよい。この層はパターン化できる。その後、アルミニウムを含む第2金属層または層スタックを設けてもよい。代替として、第1金属層または金属層スタックは、Alを含む層でもよい。この層はパターン化できる。次に、TiN/Mg/TiN,またはMg/TiN,La,La
2O
3,またはTiN/La/TiNを含む第2金属層または第2金属層スタックを設けてもよい。
【0036】
誘電体層に対する個々の層の最終的な位置決めは、誘電体層の個々のエリアの導電型を決定することになる。
【0037】
好ましい実施形態によれば、エッチング停止層は、0.5nm〜20nm、または1nm〜10nm、または2nm〜10nmの厚さを有する。エッチング停止層は、一定の厚さのものでもよい。エッチング停止層は、平坦な上側表面を有してもよい。
【0038】
好ましい実施形態によれば、基板は、第1所定エリアを第2所定エリアから電気的に絶縁する絶縁エリアを備える。該方法は、絶縁領域の上方のある場所にエッチング停止層および第3金属層または第3金属層スタックが存在する場合、誘電体層の一部を除去するステップをさらに含んでもよい。
【0039】
絶縁エリアは、例えば、シリコン酸化物を含むエリアでもよく、このエリアを含んでもよい。それは、例えば、当業者にSTI(Shallow Trench Isolation)として知られているエリアを構成してもよい。
【0040】
好ましい実施形態によれば、誘電体層は、高誘電率(high-k)誘電体(即ち、SiO
2の基準値(3.9)よりかなり大きい比誘電定数、好ましくは2倍〜10倍大きい)を含む。高誘電率(high-k)誘電体は、典型的には、HfO
2,HfSiO酸化物,HfSiN,ZrO
2,またはドープしたHf金属酸化物を含む。誘電体層は、例えば、HfO
2,HfSiO酸化物,HfSiN,ZrO
2,またはドープしたHf金属酸化物からなるグループから選択される単一の誘電体材料または複数の誘電体材料を含んでもよい。誘電体層は、均質(homogeneous)でもよい。これは、誘電体層が、第1所定エリアおよび第2所定エリアにおいて同じ構成でもよいことを意味する。好ましい実施形態によれば、誘電体層は、下地基板の主面、例えば、前面を完全に被覆してもよい。
【0041】
好ましい実施形態によれば、誘電体層は、0.5nm〜5nm、または1nm〜3nmの厚さを有する。誘電体層は、一定の厚さのものでもよい。誘電体層は、平坦な上側表面を有してもよい。