(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記特徴量演算部は、前記車列の前記交通信号機の設置場所への到達予定時刻と、前記車列の流量と、前記車列を構成する車両の数と、のうちの少なくとも一つを前記特徴量として算出する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の交通信号制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施形態に係る交通信号制御装置について説明する。本実施形態に係る交通信号制御装置は、車両の通行を許可したり、制限したりする交通信号機の信号表示の切り替えを制御する装置である。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る交通信号制御装置の適用環境の概要を示す図である。
図1において、2本の道路11、12が示されている。道路11、12は、それぞれ片側1車線の2車線道路である。道路11と道路12との各車線は、それぞれ車線11Aおよび車線11Bと、車線12Aおよび車線12Bとである。本例では、車線11A上を走行する車両は、矢印21に示すように、
図1の右から左へと進む。例えば、車線12A上を走行する車両は、矢印22に示すように、
図1の下から上へと進む。
【0016】
本例において、横方向に延びる道路11と縦方向に延びる道路12とが交差している。道路11と道路12との交差領域には、交差点30が存在する。交差点30には3つの表示態様を持つ交通信号機100が設置されている。交通信号機100の表示態様のうち、緑色(青信号)は、通行の許可を示す。赤色(赤信号)は、通行の不許可を示す。黄色(黄信号)は、青信号と赤信号との遷移状態を示し、間もなく通行が不許可となることを示す。
【0017】
交差点30には、交通信号機100A、100B、100C、100Dの4台の交通信号機が設置されている。すなわち、この一例において、交差点は、交通信号機の設置場所である。各交通信号機100A〜100Dは、交差点30に接続された道路の車線の上を走行する車両の通行を、表示する信号を切り替えることにより制御する。交差点30に設置された4台の交通信号機100A〜100Dの信号表示の切り替えは、交差点毎に同期して制御されている。例えば、道路12の車線12A上の車両の通行を制御する交通信号機100Aの信号表示は、道路11の車線12B上の車両の通行を制御する交通信号機100Cの信号表示と、同一の表示を行う。
【0018】
交通信号機100A、100Cの信号表示に対して、交通信号機100B、100Dは反対の信号表示を行う。例えば、交通信号機100Aが青信号のとき、交通信号機100Bは赤信号である。例えば、交通信号機100Bが青信号の時、交通信号機100Aは赤信号である。ただし、急な信号表示の切り替えによる事故を予防するため、黄信号が表示される時間や、4台の交通信号機100A〜100Dの全てが赤信号を表示する時間も存在する。また、例外的に交通信号機100A、100B、100Cが赤信号のときに、交通信号機100Dのみが青信号である状態や、交通信号機100A、100Cが赤信号のときに、交通信号機100B、100Dが右折(または左折)のみ許可する状態など、一時的に特殊な状態を取る時間も存在する。
【0019】
図1において、9台の車両40A〜Iが示されている。本例において、車両40A、40Bは、道路12上に存在し、交通信号機100Aが赤信号であるため、交差点30の手前で停車している。車両40C〜40Iは、道路11を走行している。これら車両の走行や停止といった情報は、車両検出システムによって検出される。車両検出システムは、交差点情報検出装置210と車両検出装置220とを備える。
図1において、4組の車両検出システムを構成する、交差点情報検出装置210Aおよび車両検出装置220A、交差点情報検出装置210Bおよび車両検出装置220B、交差点情報検出装置210Cおよび車両検出装置220C、交差点情報検出装置210Dおよび車両検出装置220Dが示されている。交差点情報検出装置210は、交差点の近傍に設置される。車両検出装置220は、交差点に接続する道路沿いの交差点から離れた地点に設置される。
【0020】
4組の車両検出システム各々は、交通信号機100と同様、道路の各車線と対応付けられている。これら4組の車両検出システム各々は、それぞれ同様の処理を行う。具体的には、交差点情報検出装置210は、例えば、
図1における車両40Aや40Bのように、交差点の手前で停止している車両や、交差点を通過した車両を検出する。車両検出装置220は、例えば、自装置近傍の車線上に車両の検出領域を持ち、
図1における車両40Hのように当該検出領域を通過する車両を検出する。
【0021】
交通信号制御装置300は、車両検出システムが検出した車両情報に基づいて交通信号機100の信号表示の切替時刻の制御を行う。
図1において、交通信号制御装置300は、4台の交通信号機100A〜100Dと、4台の交差点情報検出装置210A〜210Dと、4台の車両検出装置220A〜200Dと通信を行う。交通信号制御装置300は、車両検出システムが検出した車両情報から1台以上の車両の列である車列を検出する。交通信号制御装置300によって検出された車列は、
図1において、破線の枠線51、52、53、54により示されている。車列の検出方法の詳細は、後述する。
【0022】
交通信号制御装置300は、検出した車列の中から、交差点からの遠さ、車列に含まれる車両の数、流量などに基づいて、車列を選択する。ここで、「交差点からの遠さ」とは、距離が遠いという距離的な遠さに加えて、交差点到着までに時間を要するという時間的な遠さも含む。交通信号制御装置300は、選択した車列が交差点で極力停止しないように交通信号機100を制御する。また、交通信号制御装置300は、選択した車列よりも前に交差点に到着する他の車列に含まれる車両の赤信号による待ち時間や青信号による交差点の通過を考慮して、交通信号機100の信号表示の切替時刻を算出する。このように、交差点から遠い車列を選択し、選択した車列よりも前に交差点に到着する車両の待ち時間(損失)や通過台数(利得)を考慮して信号表示の切替時刻を算出することにより、交通信号制御装置300は、選択した車列を含む、広い範囲に含まれる車両を考慮して、交差点での待ち時間が少ない信号表示の切替時刻を算出することができる。その結果、交通信号制御装置300は、交差点で停止する車両の数や待ち時間を減らすことができる。例えば、交通信号制御装置300は、各車両の交差点での待ち時間の合計を小さくすることができる。また、例えば、交通信号制御装置300は、少数の車両のために大きな車列が停止する状態の発生確率を抑えることができる。従って、交通信号制御装置300は、道路全体の利用効率を向上させることができる。
【0023】
図2は、本実施形態に係る交通信号制御装置300を備える交通制御システム1の機能構成の一例を示す図である。交通制御システム1は、複数の交通信号機100と、複数の車両検出システム200と、交通信号制御装置300と、を有する。
【0024】
本例では、複数の交通信号機100各々を100A、100B、…とする。
図2では、交通信号機100Aおよび100Bを示し、以降は省略している。複数の交通信号機100各々は、信号表示部110を備える。信号表示部110は、交通信号制御装置300から受信する信号表示の状態を示す信号情報に基づいて信号表示を行う。信号情報は、例えば、上述の通り、青信号、黄信号、赤信号のいずれかを示す。
【0025】
本例では、複数の車両検出システム各々を200A、200B、…とする。
図2では、車両検出システム200Aおよび200Bを示し、以降は省略している。複数の車両検出システム200各々は、交差点情報検出装置210と、車両検出装置220と、を有する。これらの検出装置は、例えば、撮像装置を備え、画像を解析することにより、車両の通行や車両の数を検出する。また、例えば、放射する赤外線の遮断を検出することにより、車両の通行や車両の数を検出する。交差点情報検出装置210は、交通信号機100が赤信号のとき、交差点の手前で停止している車両の数を検出し、検出した停止車両数の情報と自システムの識別情報とを交通信号制御装置300に送信する。交差点情報検出装置210は、交差点を通過した車両を検出し、検出した通過車両の情報と自システムの識別情報とを交通信号制御装置300に送信する。車両検出装置220は、自装置の近傍の車線上を通行する車両を検出し、通行車両を検出した時刻を示す検出時刻情報と自システムの識別情報とを交通信号制御装置300に送信する。
【0026】
交通信号制御装置300は、送信部310と、受信部320と、記憶部330と、特徴量演算部340と、選択部350と、切替時間判定部360と、管理部370と、信号制御部380と、を備える。
【0027】
送信部310は、複数の交通信号機100各々と通信を行い、信号制御部380から入力される信号情報を、同じく信号制御部380から入力され、交通信号機100各々を示す識別情報である信号ID(IDentifier)に基づいて、交通信号機100各々に送信する。ここで、信号IDとは、交通信号機100各々を識別する識別情報の一例である。以後、識別情報を示す一例として信号IDを用いて説明する。
【0028】
受信部320は、複数の車両検出システム200各々と通信を行う。受信部320は、複数の交差点情報検出装置210各々から停止車両数の情報と送信元の車両検出システムの識別情報とを受信し、受信した停止車両数の情報と識別情報とを特徴量演算部340に出力する。受信部320は、複数の交差点情報検出装置210各々から交差点の通過車両の情報と送信元の車両検出システムの識別情報とを受信し、受信した通過車両の情報と識別情報とを特徴量演算部340に出力する。受信部320は、複数の車両検出装置220各々から通行車両の検出時刻情報と送信元の車両検出システムの識別情報とを受信し、受信した検出時刻情報と識別情報とを特徴量演算部340に出力する。
【0029】
記憶部330は、例えば、HDD(Hard Disc Drive;ハードディスク記憶装置)、SSD(Solid State Drive;半導体記憶装置)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory;書き換え可能不揮発性メモリ)、ROM(Read Only Memory)、またはRAM(Random Access Memory)などを備え、交通信号制御装置300の備えるCPU(Central Processing Unit;中央演算装置)が実行する各種プログラム(ファームウェアやアプリケーションプログラムなど)やCPUが行った各種の処理結果などを格納する。特徴量演算部340、選択部350、切替時間判定部360、管理部370、信号制御部380は、例えば、記憶部330に格納されたプログラムをCPUが実行することにより機能する。
【0030】
記憶部330は、交通信号機のデータを格納する交差点信号情報記憶部331と、車列のデータを格納する車列情報記憶部332と、を備える。また、記憶部330は、信号IDと、道路各々を示す道路IDと、車両検出システム各々の識別情報と、を対応付ける対応表を格納する。
図3は、交差点信号情報記憶部331に格納されるデータの一例を示す表である。表T1の各列には、左から信号ID、ステータス、信号待ち車両数、残り時間、青信号最短時間、青信号最長時間、黄信号時間が記録される。信号IDは、交通信号制御装置300に接続され、制御を受ける複数の交通信号機100各々の識別情報を示す。
【0031】
ステータスは、現在の交通信号機100の信号表示の態様を示す。ステータスには、例えば、青信号を示す青、黄信号を示す黄、赤信号を示す赤、がある。信号待ち車両数は、交通信号機100の信号表示により停車している車両の数を示す。信号待ち車両は、赤信号により増加し、青信号により減少する。残り時間は、ステータスが維持される残り時間を示す。すなわち、残り時間は信号表示の切り替えまでの時間を示す。表T1の例では、信号IDがtl
1の信号のステータスは赤であるが、時間u
1後にステータスが青に切り替わる。信号IDがtl
2の信号のステータスは青であるが、時間u
2後にステータスが黄に切り替わる。
【0032】
青信号最短時間は、青信号を維持する時間の下限の基準値を示す。上述のように交通信号制御装置300は、選択した車列を優先的に通行させるように交通信号機100の信号表示の切替時刻を動的に制御する。この動的な信号表示の制御において、青信号最短時間は、切替時刻の算出に使用される基準値の1つである。青信号最長時間は、青信号を維持する時間の上限の基準値を示す。青信号最短時間と同様に、青信号最長時間は、信号表示の切替時刻の算出に使用される基準値の1つである。黄信号時間は、黄信号の持続時間を示す。青信号最短時間、赤信号最長時間、黄信号時間は、例えば、交通信号機100が制御する道路の交通量の統計データなどに基づいて、予め設定される。
【0033】
図4は、車列情報記憶部332に格納されるデータの一例を示す表である。表T2の各列には、左から車列ID、道路ID、先頭車両交差点到達予定時刻、最後尾車両交差点到達予定時刻、車両数、流量、プラトーンフラグが記録されている。車列IDは、道路上に存在する車列各々の識別情報を示す。道路IDは、道路の車線各々の識別情報を示す。先頭車両交差点到達予定時刻は、車列を構成する車両のうちの先頭の車両が、交通信号機100の設置場所である交差点に到達する予定時刻を示す。最後尾車両交差点到達予定時刻は、車列を構成する車両のうちの最後尾の車両が、交通信号機100の設置場所である交差点に到達する予定時刻を示す。
【0034】
車両数は、車列を構成する車両の数を示す。流量は、いわゆるflowである。具体的には、単位時間内に定点を通過する車列中の車両の数を示す。プラトーンフラグは、車列がプラトーンであるか否かを示す。本例において、プラトーンとは、道路の利用効率への負荷の高い車列を指す。プラトーンであるか否かの判定の詳細は、後述する。以下では、各行が記録する車列毎の情報を指して車列情報と呼ぶことがある。
【0035】
図2の説明に戻る。特徴量演算部340は、待ち車両数演算部341と、到達時刻算出部342と、車列情報演算部343と、流量算出部344と、車列判定部345と、を備える。特徴量演算部340は、交差点情報検出装置210や車両検出装置220が検出する車両情報に基づいて、車列に関する様々な特徴量を算出する。本例では、特徴量演算部340は、車両数、先頭車両交差点到達予定時刻、最後尾車両交差点到達予定時刻、流量などを特徴量として算出する。また、特徴量演算部340は、例えば、車列の移動速度や車列の交差点からの距離などを算出してよい。すなわち、この一例において、特徴量演算部340は、車道上の少なくとも1台以上の車両を含む車列から少なくとも1つの特徴量を算出する。
【0036】
待ち車両数演算部341は、受信部320から入力された停止車両数の情報に基づいて、信号待ち状態にある車両の数を演算する。待ち車両数演算部341は、算出した信号待ち車両数を、受信部320から入力された車両検出システム200の識別情報に応じた交通信号機100の信号IDに対応付け、交差点信号情報記憶部331に記憶させる。本例では、記憶部330が識別情報の対応表を格納するので、車両検出システム200の識別情報と、信号IDと、道路IDとは、相互に参照可能である。
【0037】
到達時刻算出部342は、受信部320から入力された検出時刻情報に基づいて、通行車両の交差点への到達予定時刻を算出する。すなわち、この一例において、特徴量演算部340が算出する少なくとも1つの特徴量とは、交通信号機100の設置場所である交差点への車列の到達予定時刻を含む。具体的な算出方法を示すと、例えば、到達時刻算出部342は、車両検出装置220と交差点との距離を、車両検出装置220の設置されている道路の法定速度で除算することで、車両が交差点に到達するまでに要する予定時間を算出する。到達時刻算出部342は、当該算出した時間を通行車両の検出時刻に加算することで、車両の交差点への到達予定時刻を算出する。到達時刻算出部342は、算出した通行車両の到達予定時刻の情報と受信部320から入力された車両検出システム200の識別情報に対応する道路の道路IDとを車列情報演算部343に出力する。
【0038】
車列情報演算部343は、到達時刻算出部342から入力された交差点への到達予定時刻に基づいて、当該車両を新しい車列とするか、別の車列に取り入れるかを演算する。具体的には、車列情報演算部343は、車列情報記憶部332を参照し、到達時刻算出部342から入力された道路IDを含む車列情報を抽出する。車列情報演算部343は、抽出した車列情報のうち最後尾車両交差点到達予定時刻が最も遅い車列の車列情報を取得する。車列情報演算部343は、到達時刻算出部342から入力された車両の交差点への到達予定時刻と、車列情報記憶部332から取得した車列情報の含む最後尾車両交差点到達予定時刻と、を比較し、車列情報記憶部332に記録されている車列と車両検出システム200によって新たに検出された車両とが接近しているか否かを判定する。接近の判定は、例えば、2つの到達予定時刻の差が予め設定された閾値以下か否かを判定することで行う。
【0039】
車列と車両とが接近していると判定した場合、車列情報演算部343は、検出された車両を当該車列の最後尾車両とする。車列情報演算部343は、到達時刻算出部342から入力された到達予定時刻を当該車列の車列情報の最後尾車両交差点到達予定時刻とする。車列情報演算部343は、当該車列情報の車両数に1を加算し、車列情報記憶部332に記憶させる。すなわち、この一例において、特徴量演算部340が算出する少なくとも1つの特徴量とは、車列を構成する車両の数を含む。
【0040】
車列と車両とが接近していないと判定した場合、車列情報演算部343は、検出された車両を新たな車列として、当該車列に対し新たな車列IDを割当て、車列情報記憶部332に当該車列IDを含む車列情報を記憶させる。車列情報演算部343は、到達時刻算出部342から入力された道路IDを、当該車列情報の道路IDとして、車列情報記憶部332に記憶させる。車列情報演算部343は、到達時刻算出部342から入力された到達予定時刻を、当該車列情報の先頭車両交差点到達予定時刻および最後尾車両交差点到達予定時刻として、車列情報記憶部332に記憶させる。車列情報演算部343は、当該車列情報の車両数を1とし、プラトーンフラグをFALSEとし、車列情報記憶部332に記憶させる。すなわち、この一例において、特徴量演算部340が算出する少なくとも1つの特徴量とは、車列を構成する車両の数を含む。
【0041】
車列情報演算部343は、受信部320から交差点の通過車両の情報を入力されると、車列情報記憶部332を参照し、受信部320から入力された車両検出システムの識別情報に応じた道路IDを含む車列情報を抽出する。車列情報記憶部332は、抽出された車列情報のうち、先頭車両交差点予想到達予定時刻の最も早い車列情報の車両数から1を減ずる。この減算により車両数が0になった場合は、当該車列情報を車列情報記憶部332が格納するデータから削除する。
【0042】
流量算出部344は、車列情報記憶部332が格納する車列情報の更新が車列情報演算部343により行われると、当該車列情報が示す車列の流量を算出する。すなわち、この一例において、特徴量演算部340が算出する少なくとも1つの特徴量とは、車列の流量を含む。具体的な流量の算出処理の一例を示すと、流量算出部344は、車列情報から最後尾車両交差点到達予定時刻、先頭車両交差点到達予定時刻、車両数を取得する。流量算出部344は、最後尾車両交差点到達予定時刻から先頭車両交差点到達予定時刻を減算し、車列が交差点に差し掛かってから通過し終えるまでにかかる時間を算出する。流量算出部344は、算出した時間で車両数を除算することにより車列の流量を算出する。流量算出部344は、算出した流量を車列情報記憶部332に記憶させる。
【0043】
例えば、最後尾車両交差点到達予定時刻が12時00分00秒であり、先頭車両交差点到達予定時刻11時59分00秒であり、車両数が25台である場合を例に取る。この場合、車列が交差点に差し掛かってから通過し終えるまでにかかる時間は、12時00分00秒と11時59分10秒との差の50秒である。そして、流量は、車両数の25台を50秒により除算した商の0.5台/秒となる。例えば、車列を構成する車両と車両との間隔が広ければ、流量は小さくなり、車両と車両との間隔が狭ければ、流量は大きくなる。また、例えば、車列を構成する車両の移動速度が早ければ流量は大きくなり、車両の移動速度が遅ければ流量は小さくなる。
【0044】
車列判定部345は、車列情報記憶部332が格納する車列情報の更新が車列情報演算部343により行われると、当該車列情報が示す車列がプラトーンか否かを判定する。本実施形態では、一例として、プラトーンか否かの判定を、車両数と流量とに基づいて行う。具体的には、車列の車両数が閾値を超えており、かつ、流量が閾値より小さい場合、当該車列をプラトーンであると判定する。車列をプラトーンであると判定した場合、車列判定部345は、車列情報記憶部332が格納する当該車列の車列情報のプラトーンフラグをTRUEにする。車列判定部345は、新たにプラトーンが検出されたことを選択部350に通知する。車列がプラトーンではないと判定した場合、車列判定部345は、車列情報記憶部332が格納する当該車列の車列情報のプラトーンフラグを更新しない。
【0045】
選択部350は、車列判定部345によって新たにプラトーンが検出されると、車列情報記憶部332を参照し、プラトーンフラグがTRUEである車列情報を抽出する。選択部350は、抽出した車列情報が示す車列のうち優先的に交差点を通過させる車列(優先車列)を、特徴量演算部340が算出した特徴量に基づいて選択する。すなわち、この一例において、選択部350は、特徴量演算部340が算出した特徴量に基づいて、車列のうちの1つを選択する。本実施形態において、選択部350は、車列のうち、交通信号機100の設置場所である交差点から最も遠い車列を選択する。ここでは、選択部350は、時間的に遠い、交差点までの到達予定時刻が最も遅い車列を選択する。別の選択方法として、選択部350は、例えば、位置が遠い、交差点までの距離が最も離れている車列を選択してもよい。選択部350は、選択した優先車列の車列情報を切替時間判定部360に出力する。
【0046】
切替時間判定部360は、特徴量演算部340が算出した特徴量に基づいて、交差点において、選択部350が選択した車列の待ち時間が少なくなるように、信号表示の切替時刻を算出する。切替時刻の算出方法には、例えば、先行技術文献の非特許文献1に記載のPBE(Platoon-Based Extension)アルゴリズムやPBS(Platoon-Based Squeezing)アルゴリズムを適用することができる。これらのアルゴリズムでは、複数のタイミング毎に、当該タイミングで交通信号機の信号表示を切り替えた場合の、車道上で発生しうる車列の待ち時間が算出され、複数のタイミングのうち、待ち時間の少ないタイミングが判定される。切替時間判定部360は、判定結果のタイミングに基づく信号表示の切替時刻を管理部370に出力する。ここで、タイミングとは、時刻であってもよいし、時間であってもよい。また、待ち時間は、例えば、赤信号により停車する車両各々の待ち時間の合計である。また、待ち時間は、青信号により交差点を通過する車両の数が考慮されたものであってもよい。例えば、待ち時間は、車両の停車時間の合計から、交差点を通過する車両の数に基づく時間を減算したものであってもよい。
【0047】
管理部370は、交差点信号情報記憶部331の格納するデータを監視し、更新を行う。例えば、管理部370は、1秒経過する毎に、信号表示の切り替えまでの残り時間を1秒ずつ減ずる。管理部370は、切替時間判定部360から入力された信号表示の切替時刻に基づいて、交差点信号情報記憶部331が格納するデータのうち、例えば、残り時間の項目やステータスの項目を更新する。管理部370は、信号表示の切り替えまでの残り時間が0になったときは、ステータスを次の状態に遷移させ、残り時間を予め定められた値に設定し直すとともに、当該ステータスを示す状態情報と信号IDとを対応付けて信号制御部380に出力する。例えば、ステータスが青の信号の残り時間が0になった場合、管理部370は、当該ステータスを黄に遷移させ、黄信号を示す状態情報と信号IDとを対応付けて信号制御部380に出力する。そして、管理部370は、黄信号時間に設定されている時間を残り時間として設定する。
【0048】
信号制御部380は、管理部370から入力された状態情報に基づいて信号情報を生成する。信号制御部380は、生成した信号情報と信号IDとを送信部310に出力する。ここで、管理部370から状態情報が入力されるタイミングは、切替時間判定部360による判定結果のタイミングに基づいている。すなわち、この一例において、信号制御部380は、切替時間判定部360による判定結果に基づいて、交通信号機100の信号表示を切り替えるための制御信号を生成する。また、当該タイミングは、交差点において、選択部350が選択した車列の待ち時間が少なくなるように算出されている。すなわち、この一例において、信号制御部380は、交差点において、選択部350が選択した車列の待ち時間が少なくなるように交通信号機の信号表示を切り替えるための制御信号を生成する。
【0049】
図5は、交通信号制御装置300による車列の判定処理の流れの一例を示す図である。まず、受信部320は、複数の車両検出装置220各々から通行車両の検出時刻情報と送信元の車両検出システムの識別情報とを受信し、受信した検出時刻情報と識別情報とを特徴量演算部340に出力する。(ステップS101)。次に、到達時刻算出部342は、受信部320から入力された検出時刻情報に基づいて、通行車両の交差点への到達予定時刻を算出する(ステップS102)。次に、到達時刻算出部342は、算出した通行車両の到達予定時刻の情報と、受信部320から入力された車両検出システム200の識別情報に対応する道路の道路IDと、を車列情報演算部343に出力する。
【0050】
次に、車列情報演算部343は、車列情報記憶部332を参照し、到達時刻算出部342から入力された道路IDを含む車列情報を抽出する。次に、車列情報演算部343は、抽出した車列情報のうち最後尾車両交差点到達予定時刻が最も遅い車列情報を取得する(ステップS103)。当該車列情報が示す車列は、新たに検出された車両を除き、道路上の最後尾に位置する車列である。次に、車列情報演算部343は、到達時刻算出部342から入力された検出車両の到達予定時刻と、車列情報記憶部332から取得した車列情報の最後尾車両交差点到達予定時刻と、を比較し、車列情報記憶部332に記録されている車列と車両検出システム200によって新たに検出された車両とが接近しているか否かを判定する(ステップS104)。
【0051】
車列と車両とが接近していないと判定した場合(ステップS104;NO)、車列情報演算部343は、検出された車両を新たな車列とし、当該車両に対して新たな車列の車列IDを割当て、車列情報記憶部332に当該車列IDを含む車列情報を記憶させる(ステップS105)。次に、車列情報演算部343は、到達時刻算出部342から入力された道路IDを、当該車列情報の道路IDとして、車列情報記憶部332に記憶させる。次に、車列情報演算部343は、到達時刻算出部342から入力された到達予定時刻を、当該車列情報の先頭車両交差点到達予定時刻および最後尾車両交差点到達予定時刻として、車列情報記憶部332に記憶させる。そして、車列情報演算部343は、当該新しく作成した車列情報の車両数を1とし、車列情報記憶部332に記憶させる。その後、処理を終了する。
【0052】
車列と車両とが接近していると判定した場合(ステップS104;YES)、車列情報演算部343は、検出された車両を当該車両の最後尾車両とする(ステップS106)。次に、車列情報演算部343は、到達時刻算出部342から入力された到達予定時刻を車列情報の最後尾車両交差点到達予定時刻とする。そして、車列情報演算部343は、当該車列情報の車両数に1を加算し、車列情報記憶部332に記憶させる。次に、車列判定部345は、ステップS106において、車列情報が更新された車列がプラトーンか否かを判定する(ステップS107)。プラトーンではないと判定した場合(ステップS107;NO)、処理を終了する。プラトーンであると判定した場合(ステップS107;YES)、車列判定部345は、車列情報記憶部332が格納する当該車列の車列情報のプラトーンフラグをTRUEにする(ステップS108)。次に、車列判定部345は、新たにプラトーンが検出されたことを選択部350に通知する(ステップS109)。その後、処理を終了する。
【0053】
以上により、交通信号制御装置300は、道路上に新たに車両が検出された場合、当該車両が1台から構成される車列か、すでに検出された車列の一部か、を判定することができる。また、当該車両を含む車列について、特徴量演算部340が算出した特徴量に基づいて、当該車列が道路の利用効率への負荷の高いプラトーンであるか否かを判定することができる。
【0054】
図6は、交通信号制御装置300による交通信号制御処理の流れの一例を示す図である。まず、選択部350は、車列判定部345によって新たにプラトーンが検出されると、車列情報記憶部332を参照し、プラトーンフラグがTRUEである車列情報を抽出する(ステップS201)。次に、選択部350は、抽出した車列情報が示す車列のうち、時間的に遠い、交差点までの到達予定時刻が最も遅い車列を優先車列として選択する(ステップS202)。次に、選択部350は、選択した優先車列の車列情報を切替時間判定部360に出力する。
【0055】
次に、切替時間判定部360は、交差点信号情報記憶部331を参照し、優先車列が存在する道路の交通を制御する交通信号機の信号表示が青信号か否かを判定する(ステップS203)。青信号の場合(ステップS203;YES)、切替時間判定部360は、PBEアルゴリズムにより信号表示の切替時刻を算出し(ステップS204)、算出した時刻を管理部370に出力する。青信号でない場合(ステップS203;NO)、切替時間判定部360は、PBSアルゴリズムにより信号表示の切替時刻を算出し(ステップS205)、算出した時刻を管理部370に出力する。次に、管理部370は、切替時間判定部360から入力された信号表示の切替時刻に基づいて、交差点信号情報記憶部331の格納するデータのうち、信号表示の切り替えまでの残り時間等の項目を更新する。
【0056】
次に、当該データの示す信号表示の切替時刻までの残り時間が0になった場合、管理部370は、ステータスを次の状態に遷移させ、残り時間を予め定められた値に設定し直す。そして、当該ステータスを示す状態情報と信号IDとを対応付けて信号制御部380に出力する。次に、信号制御部380は、管理部370から入力された状態情報に基づいて信号情報を生成する。信号制御部380は、生成した信号情報と信号IDとを送信部310に出力する。そして、送信部310は、信号制御部380から入力される信号情報を、同じく信号制御部380から入力される信号IDに基づいて、交通信号機100各々に送信する(ステップS206)。
【0057】
以下、
図7と
図8とを用いて、切替時間判定部360による信号表示の切替時刻算出処理の流れを説明する。上述の通り、本実施形態ではPBEアルゴリズムとPBSアルゴリズムにより信号表示の切替時刻を算出する。これらのアルゴリズムは既に公知となっているものであり、以下では説明を簡略化して示す。
【0058】
優先車列の存在する道路の交通信号機100が青信号のときに採用されるPBEアルゴリズムの基本戦略は2つある。第1の戦略は、直ちに信号表示を切り替え、それまで赤信号となっていた道路で停車していた車両を通過させる。そして、優先車列が交差点に到達する前に信号表示を再度切り替え、当該優先車列を通過させる。第2の戦略は、信号表示を切り替えず、優先車列が通過するのを待つ。
【0059】
図7は、交通信号制御装置300のPBEアルゴリズムによる信号表示の切替時刻算出処理の流れの一例を示す図である。まず、切替時間判定部360は、選択部350によって選択された車列が存在する道路を制御し、青信号を示している交通信号機100に対して反対の制御を受けている交通信号機100であって、赤信号を示している交通信号機100により交差点に停車している赤信号待ち車列の車両数を、交差点信号情報記憶部331から取得する。次に、切替時間判定部360は、取得した赤信号待ち車列の車両数に基づいて、赤信号待ち車列が交差点の通過に要する予定時間t
1を算出する(ステップS301)。
【0060】
次に、切替時間判定部360は、車列情報記憶部332を参照し、優先車列が存在する道路において、交差点と当該車列との間に存在する車両の数を算出する(ステップS302)。次に、切替時間判定部360は、ステップS302において算出された車両が交差点の手前で停車した場合を仮定し、優先車列が、当該停車中の車列と接触するまでの時間t
2を、優先車列の先頭車両交差点到達予定時刻に基づいて算出する(ステップS303)。
【0061】
次に、切替時間判定部360は、時間t
1が時間t
2よりも大きいか否かを判定する(ステップS304)。時間t
1が時間t
2よりも大きくない場合(つまり、時間t
2が時間t
1以下の場合)(ステップS304;NO)、上述の第1の戦略を採用する。切替時間判定部360は、管理部370に現在の時刻を信号切替時刻として出力する(ステップS305)。そして、切替時間判定部360は、管理部370に現在の時刻から時間t
2経過後の時刻を、次の信号切替時刻として再度出力する(ステップS306)。上述のステップS305、S306における、交差点信号情報記憶部331の格納するデータ内容の更新を表T1を用いてより具体的に説明する。例えば、表T1に示す例の場合、信号IDがtl
1の交通信号機のステータスは「赤」である。第1の戦略を採用する場合、管理部370は、信号IDがtl
1の交通信号機のステータスを「赤」から「青」に切り替える。また、管理部370は、例えば、信号IDがtl
1の交通信号機の残り時間u
1と青信号最長時間G
1maxとを「t
2−t
1−Y」により算出される時間とする。これにより、優先車列の存在しない車道を制御する交通信号機であって、赤信号を表示している交通信号機の信号表示は直ちに青信号に変更される。そしてその後、優先車列が交差点に到着する前に、優先車列が存在する車道を制御する交通信号機の信号表示を青信号とすることができる。
【0062】
時間t
1が時間t
2よりも大きい場合(ステップS304;YES)、切替時間判定部360は、信号表示を切り替えず、優先車列を通過させた場合に、優先車列が存在していない道路側で発生する待ち時間を損失として算出する(つまり、第2の戦略を取った場合の損失を算出する)(ステップS307)。次に、切替時間判定部360は、信号表示を切り替えず、優先車列を通過させることによって、優先車列が存在する道路側で解消される待ち時間を利得として算出する(つまり、第2の戦略を取った場合の利得を算出する)(ステップS308)。すなわち、この一例において、切替時間判定部360は、第1の戦略と第2の戦略との複数のタイミング毎に、当該タイミングで交通信号機100の信号制御を切り替えた場合、車道上で発生しうる車列の待ち時間を算出する。
【0063】
次に、切替時間判定部360は、ステップS307およびS308において算出された損失に比して利得が大きいか否かを判定する(つまり、第2の戦略を取った場合の損失と利得を比較する)(ステップS309)。すなわち、この一例において、切替時間判定部360は、複数のタイミングの内、待ち時間の少ないタイミングを判定する。利得が損失よりも大きくない場合(つまり、第2の戦略を取った場合の損失が利得以上の場合)(ステップS309;NO)、上述の第1の戦略を採用し、ステップS305に遷移する。利得が損失よりも大きい場合(ステップS309;YES)、上述の第2の戦略を採用する。切替時間判定部360は、次の信号切替時刻を優先車列の最後尾車両交差点到達予定時刻とし、管理部370に出力する(ステップS310)。そして、処理を終了する。
【0064】
優先車列の存在する道路の交通信号機100が赤信号のときに採用されるPBSアルゴリズムの基本戦略(第3の戦略)は、優先車列が交差点で停車している車列に合流するタイミングで、信号表示を青信号に切り替え、優先車列を通過させることである。この第3の戦略により、速度の速い、大きな車列を作ることができるため、結果として、道路全体における待ち時間を低減することができる。しかしながら、信号表示を過度に短い時間で切り替えることは、交通の安全性確保の観点から望ましくない。また、同一の信号表示を過度に長時間持続させることは、渋滞の原因になりうる。従って、本例では、これらの例に該当しない場合、第3の戦略を採用し、該当する場合、既に設定されている信号表示の切替時刻を更新しないこととする。
【0065】
以下、交通信号機の青信号を保持する時間の長さが時間G
minに設定されている場合を例として、第3の戦略について説明する。
図8は、交通信号制御装置300のPBSアルゴリズムによる信号表示の切替時刻算出処理の流れの例を示す図である。まず、切替時間判定部360は、車列情報記憶部332を参照し、交差点と優先車列との間に存在する車両の数を算出する(ステップS401)。次に、切替時間判定部360は、ステップS401において算出された車両が交差点の手前で停車した場合を仮定し、当該車列が交差点の通過に要する予定時間t
3を算出する(ステップS402)。
【0066】
次に、切替時間判定部360は、優先車列の先頭車両交差点到達予定時刻から時間t
3を減算することで、優先車列が前方車両に合流するまでの時間t
4を算出する(ステップS403)。次に、切替時間判定部360は、交差点信号情報記憶部331を参照し、優先車列の存在していない道路を制御する交通信号機100であって、青信号を表示している交通信号機100の、信号表示の切替までの残り時間uと青信号最短時間G
minとを取得する。次に、切替時間判定部360は、ステップS403において算出された時間t
4が、時間u以上か否かを判定する(ステップS404)。時間t
4が時間u以上ではない場合(つまり、時間t
4が時間u未満の場合)(ステップS404;NO)、切替時間判定部360は、第3の戦略を採用せず、処理を終了する。
【0067】
時間t
4が時間u以上の場合(ステップS404;YES)、切替時間判定部360は、時間t
4が時間G
min未満か否かを判定する(ステップS405)。時間t
4が時間G
min未満の場合(ステップS405;YES)、上述の第3の戦略を採用する。切替時間判定部360は、信号表示の切替時刻を現在の時刻から時間t
4後とし、管理部370に出力する(ステップS406)。その後、処理を終了する。時間t
4が時間G
min未満ではない場合(つまり、時間t
4が時間G
min以上の場合)(ステップS405;NO)、切替時間判定部360は、上述の第3の戦略を採用せず、処理を終了する。
【0068】
以下、
図9、
図10、
図11、
図12を用いて、交通信号制御装置300を仮想環境において模擬したシミュレーション実験について説明する。比較対象は、非特許文献1に係る交通信号制御装置であり、当該交通信号制御装置は、交通信号機の信号表示の切替時刻の算出について、本実施形態に係る交通信号制御装置300と同様の制御を行う。ただし、非特許文献1に係る車両検出装置は、プラトーンを検出する度に当該検出されたプラトーンを優先的に通行させるが、本実施形態に係る交通信号制御装置300は、上述のように、これまでに検出されたプラトーンのうちの最も遠い車列を優先車列として選択し、優先的に通行させる。
【0069】
また、非特許文献1に係る交通信号制御装置に接続される車両検出装置は、交差点から等距離の位置に設置され、本実施形態に係る交通信号制御装置300に接続される車両検出装置220は、交差点からの距離が異なる位置に設置される。非特許文献1では、交差点からの距離が異なる位置に車両検出装置が設置されることを想定していない。仮に、交差点からの距離が異なる位置に車両検出装置が設置される場合、非特許文献1に係る交通信号制御装置は、プラトーンを検出する度に検出したプラトーンを優先的に通行させるため、道路間で不公平が発生する。例えば、交差点から遠い位置でプラトーンが検出されても、その後、交差点から近い位置に設置された検出装置によりプラトーンが検出された場合には、制御情報が上書きされてしまう。これにより、遠い距離に検出装置が設置されている道路では、効果的な制御が行えない。従って、一般的に、交差点からの等距離の位置に車両検出装置が設置される場合に比して、車両の待ち時間が増大し、結果が悪くなる。
【0070】
図9は、シミュレーションの条件設定の一例を説明するための図である。
図9において、円は交差点を示す。円に包含されるアルファベットA〜Oは交差点の識別情報を示す。
図9において、矢印は道路と道路上の車両の進行方向とを示す。当該矢印近傍の数字r1〜r20は、道路IDを示す。
図9の矢印で示すように、本例において、道路全体はL字型に交差点を接続し、車両は、右から左へ、或いは上から下へと進行する。道路r1〜r4は道路の長さがXメートルであり、法定速度が60km/hである。その他の道路は、道路の長さが200メートルであり、法定速度が40km/hである。交差点Eからは、交差点Dに進行する車両が平均5秒間隔で発生し、車両の発生間隔は指数分布に従う。交差点F、G、H、M、N、O各々からは、交差点B、C、D、I、J、K各々に進行する車両が平均50秒間隔で発生し、車両の発生間隔は指数分布に従う。
【0071】
非特許文献1に係る交通信号制御装置に接続される車両検出装置は全ての道路において交差点の上流150メートルの位置に設置される。本実施形態に係る交通信号制御装置300に接続される車両検出装置220は、道路r1〜r4については、交差点の上流X×0.75メートルの位置に設置される。その他の道路については、当該車両検出装置220は、交差点の上流150メートルの位置に設置される。
【0072】
図10は、交通信号制御装置300の効果を確認するためのシミュレーションの条件設定の一例を説明するための別図である。交差点A〜Dおよび交差点I〜Kは、車両の流出先として2つの道路が接続されており、車両はそれぞれの道路へ一定の確率で分岐して進む。
図10は、当該分岐確率を示す表である。表T3の各列は、左から流入元道路ID、流入先道路ID、分岐確率を示す。流入元道路IDは、
図9において説明した道路のうち、交差点に対して車両が進入する道路の道路IDを示す。流入先道路IDは、
図9において説明した道路のうち、交差点から車両が脱する道路の道路IDを示す。分岐確率は、流入元道路から流出先道路へと進行する確率を示す。
【0073】
例えば、交差点Dには流入元道路として道路r4と道路r7とが接続され、流出先道路として道路r3と道路r10とが接続されている。表T3を参照すると、流入元道路が道路r4である場合、交差点Dを通過する車両が道路r3に進行する確率は0.8であり、道路r10に進行する確率は0.2である。同様に、流入元道路が道路r7である場合、交差点Dを通過する車両が道路r3に進行する確率は0.5であり、道路r10に進行する確率は0.5である。
【0074】
本シミュレーションにおいて、変数は、道路r1〜r4の長さであり、当該道路長を示すXの値を変更したときの交差点Aにおける平均待ち時間を評価した。平均待ち時間は、交差点Aの流入元道路である道路r1と道路r11とで車両が停止した時間を、交差点Aを通過した車両数で除算することで算出した。
図11は、シミュレーションの実験結果の一例を示すグラフである。
図12は、シミュレーションの実験結果の数値例を示す表である。
【0075】
図11に示すグラフG1は、
図12に示す表T4をグラフ化して示したものである。
図11において、グラフG1の縦軸は平均待ち時間を示す。グラフG1の横軸は、道路長Xの設定値を示す。グラフG1および表T4において、非特許文献1に係る交通信号制御装置を適用した場合、幹線道路の長さに関わらず6秒程度の平均待ち時間が発生している。グラフG1および表T4において、本実施形態に係る交通信号制御装置300を適用した場合、道路長Xが200のときは、6秒程度の平均待ち時間が発生しているが、道路長Xが400、600、800、1000のときは、平均待ち時間が3−4秒程度に短縮されている。以上のシミュレーション実験により、本実施形態に係る交通信号制御装置300により、車両の平均待ち時間が大幅に短縮され、道路の利用効率が向上することが示された。
【0076】
以上のように、本実施形態に係る交通信号制御装置300は、交通信号機100の制御を行う。交通信号制御装置300は、特徴量演算部340と、選択部350と、切替時間判定部360と、を備える。特徴量演算部340は、車道上の少なくとも1台以上の車両を含む車列から特徴量を算出する。選択部350は、特徴量演算部340が算出した特徴量に基づいて、車列のうちの1つを選択する。信号制御部380は、特徴量演算部340が算出した特徴量に基づいて、交通信号機100の設置場所において、選択部350が選択した車列の待ち時間が少なくなるように交通信号機100の信号表示を切り替えるための制御信号を生成する。
【0077】
これにより、交通信号制御装置300は、交差点から遠い車列を選択し、その車列よりも前に交差点に到着する車両の待ち時間や通過台数に基づいて、選択した車列が交差点で極力止まることのない信号表示の切替時刻を算出することで、当該車列を優先的に通行させる。その結果、交通信号制御装置300は、当該車列を速やかに通過させ、道路全体の利用効率を向上させることができる。従って、交通信号制御装置300は、同一の交通網における通行可能な車両数を増加させることができ、例えば、交通需要が増加した場合であっても、新たな道路を敷設するコストを抑えることができる。また、交通信号制御装置300により渋滞が緩和されるため、輸送、移動に係るエネルギー効率を向上させることができ、例えば、二酸化炭素などの有害物質の排出を抑制することができる。
【0078】
また、実際の道路における交差点間の間隔は統一されておらず、検出装置を交差点から等距離に設置することは難しい。しかしながら、本実施形態に係る交通信号制御装置300は、特徴量演算部340が算出する特徴量に基づいて、車列のうちの1つを選択するため、道路上を通行する車両を検出する車両検出装置220を、例えば、交差点から等距離に設置しなくてもよい。交通信号制御装置300は、様々な道路に適用することが可能であり、より広範囲の交通網の交通容量を増加させることができる。
【0079】
また、本実施形態に係る交通信号制御装置300の選択部350は、車列のうち、交通信号機100の設置場所から最も遠い車列を選択する。また、信号制御部380は、選択部350が選択した車列および当該車列に比して交通信号機の設置場所に近い車列の特徴量に基づいて、制御信号を生成する。これにより、切替時間判定部360は、例えば、当該車列よりも交差点側に存在する車列の待ち時間を計算に入れて、信号表示の切替時刻を算出することができる。従って、道路の利用効率をさらに向上させることができる。
【0080】
また、本実施形態に係る交通信号制御装置300の特徴量演算部340は、車列の交通信号機100の設置場所への到達予定時刻と、車列の流量と、車列を構成する車両の数と、のうちの少なくとも一つを特徴量として算出する。これにより、選択部350は、例えば、交差点から最も遠い車列をより正確に選択することができる。また、選択部350は、車列そのもの道路への負荷をより正確に判定し、選択を行うことができる。従って、道路の利用効率をさらに向上させることができる。
【0081】
また、本実施形態に係る交通信号制御装置300は、複数のタイミング毎に、当該タイミングで交通信号機の信号制御を切り替えた場合、車道上で発生しうる車列の待ち時間を算出し、複数のタイミングのうち、待ち時間の少ないタイミングを判定する切替時間判定部を備える。また、信号制御部380は、切替時間判定部360による判定結果に基づいて、交通信号機の信号表示を切り替えるための制御信号を生成する。これにより、交通信号制御装置300は、選択部350が選択した優先車列を優先的に交差点を通過させつつ、その他の車列の待ち時間が少なくなるようなタイミングで交通信号機100の信号表示を切り替えることができる。従って、道路の利用効率をさらに向上させることができる。
【0082】
なお、交通信号制御装置300によって制御される交通信号機100の設置場所は交差点でなくてもよい。例えば、車道上に歩行者横断用の交通信号機100が設置されている環境に、交通信号制御装置300を適用してもよい。また、交差点は、十字路でなくてもよく、T字路や5つ以上の道路が接続される交差点であってもよい。
【0083】
なお、上述の説明において、車列判定部345は、車両検出装置によって検出された車両の交差点到着時刻と車列の最後尾車両交差点到達予定時刻とを比較することにより、車列と車両とが接近しているか否かを判定した。車列判定部345は、例えば、車両各々の検出時刻を記憶部330に記憶しておき、それぞれを比較することにより、車列に車両が接近しているか否かを判定してもよい。
【0084】
なお、選択部350が行う車列の選択は、上述した到達予定時刻や距離以外の特徴量に基づいてもよい。選択部350は、例えば、最も車両数の最も大きな車列を選択してよい。また、選択部350は、例えば、流量の最も小さい車列を選択してよい。また、選択部350は、最も移動速度の遅い車列を選択してよい。また、選択部350は、例えば、これら複数の特徴量それぞれを重み付けするなどし、複数の特徴量に基づいて車両の選択を行ってもよい。
【0085】
なお、上述では、信号表示の切替時刻の算出は、公知の技術に基づいているため説明を簡略化したが、より正確な切替時刻を算出するために、公知の技術を幅広く利用して信号表示の切替時刻を算出してよい。切替時間判定部360は、例えば、停車している車両が動き出すまでの時間の損失や信号表示の切り替えに伴う時間の損失などに基づいて信号表示の切替時刻の算出してよい。また、切替時間判定部360、例えば、
図8のステップS404における判定において、時間uが時間G
minよりも大きい場合は、時間t
4が時間G
min以上か否かを判定してもよい。また、切替時間判定部360は、例えば、
図8のステップS405における判定において、交差点信号情報記憶部331から黄信号時間Yを取得し、例えば、時間t
4が、時間G
minに時間Yの2倍を加算した時間(G
min+2×Y)未満か否かを判定してもよい。
【0086】
なお、切替時間判定部360は、例えば、損失と利得とに基づいて信号表示の切替時刻の判定を行ってよい。ここでいう、損失とは、例えば、赤信号により停車する車両各々の待ち時間の合計値などの統計量、赤信号により停車する車両の数であり、また、これらに基づく値である。また、利得とは、例えば、青信号により交差点で停止する必要のなくなった車両について解消された待ち時間の合計値などの統計量、交差点を通過する車両の数であり、また、これらに基づく値である。また、切替時間判定部360は、上述した損失や利得のいずれかに基づいて信号表示の切替時刻の判定を行ってもよい。
【0087】
なお、信号表示の切替時刻の制御は、従来手法を併用してよい。例えば、プラトーンが検出されない場合は、交通量の統計データに基づく静的な制御を行ってよい。また、制御の態様は上述したものに限られず、例えば、優先車列の車両数が非常に大きく、全体を通過させるには時間が掛かり過ぎる場合などは、交差点信号情報記憶部331に記憶される青信号最大時間に基づいて信号表示を切り替えるなどしてもよい。
【0088】
なお、車両検出装置220は、車両の速度を検出し、交通信号制御装置300は当該車両の速度を処理に利用してよい。例えば、到達時刻算出部342は、車両検出装置と交差点との距離を、車両の速度で除算することにより、交差点への到達予定時刻を算出してよい。また、待ち車両数演算部341は、当該到達予定時刻に基づいて、赤信号で停車している車両の数の予想値を算出してよい。また、特徴量演算部340は、検出された車両の速度に基づいて、例えば、車列を構成する車両の平均速度など、車列の速度を算出してもよい。そして、選択部350は、特徴量演算部340が算出した車列の速度に基づいて、速度の遅い車列などを選択してもよい。
【0089】
なお、上述した実施形態における交通信号制御装置300の一部、例えば、特徴量演算部340、選択部350、および切替時間判定部360をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、交通信号制御装置300に内蔵されたコンピュータシステムであって、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0090】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0091】
また、上述した実施形態における交通信号制御装置300の一部、または全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい。交通信号制御装置300の各機能ブロックは個別にプロセッサ化してもよいし、一部、または全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。
【0092】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。