特許第6274809号(P6274809)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6274809薄膜蒸着用マスク組立体およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6274809
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】薄膜蒸着用マスク組立体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/04 20060101AFI20180129BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20180129BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
   C23C14/04 A
   H05B33/10
   H05B33/14 A
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-216761(P2013-216761)
(22)【出願日】2013年10月17日
(65)【公開番号】特開2014-114504(P2014-114504A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2016年10月5日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0142767
(32)【優先日】2012年12月10日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512187343
【氏名又は名称】三星ディスプレイ株式會社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Display Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】韓 政 ▲えん▼
【審査官】 山田 頼通
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−049575(JP,A)
【文献】 特開2004−006257(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/150699(WO,A1)
【文献】 特開2003−068454(JP,A)
【文献】 特開2005−353510(JP,A)
【文献】 特開2006−310183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
H01L 51/50
H05B 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有するフレーム本体と、フレーム本体上に少なくとも一方向に沿って移動可能に設けられる複数の移動部材とを備えたフレームと、
複数のパターン開口部を有し、引張力が加えられた状態で前記複数の移動部材に固定されるマスクと、を含み、
前記複数の移動部材それぞれは、マスク固定面を含むマスク固定部と、前記フレーム本体に固定され前記マスク固定部に接続されて前記マスク固定部の移動を制御する移動制御部と、を含み、
前記移動制御部は、移動ガイドを含む制御部本体と、前記フレーム本体に相対する前記マスク固定部の後面に固定された雌ねじ部と、前記制御部本体に設けられ、前記雌ねじ部に締結される調整ねじと、を含み、
前記マスク固定部は、前記制御部本体を収容する収容部と、前記移動ガイドに対応するガイド溝とを有することを特徴とするマスク組立体。
【請求項2】
前記マスクは、第1方向および第1方向と交差する第2方向に沿って引っ張られ、前記複数の移動部材に固定されることを特徴とする請求項1に記載のマスク組立体。
【請求項3】
前記フレーム本体は、前記第1方向に並ぶ一対の第1直線部と、前記第2方向に並ぶ一対の第2直線部とを含み、
前記複数の移動部材は、前記一対の第1直線部と前記一対の第2直線部それぞれにおいて複数個備えられ、移動方向と変位が独立に制御されることを特徴とする請求項2に記載のマスク組立体。
【請求項4】
前記複数の移動部材は、
前記一対の第1直線部に設けられ、前記第2方向に沿ってスライディングする複数の第1移動部材と、
前記一対の第2直線部に設けられ、前記第1方向に沿ってスライディングする複数の第2移動部材と、を含むことを特徴とする請求項3に記載のマスク組立体。
【請求項5】
前記複数の移動部材は、前記フレーム本体のコーナー側に設けられ、第3方向に沿ってスライディングする複数の第3移動部材を含むことを特徴とする請求項4に記載のマスク組立体。
【請求項6】
前記第1移動部材の前記調整ねじは前記第2方向に並び、
前記第2移動部材の前記調整ねじは前記第1方向に並び、
前記第1方向と前記第2方向は前記マスクの幅方向であることを特徴とする請求項4又は5に記載のマスク組立体。
【請求項7】
前記第3移動部材の前記調整ねじは前記第3方向に並び、
前記第3方向は前記マスクの幅方向であることを特徴とする請求項に記載のマスク組立体。
【請求項8】
開口部を有するフレーム本体と、フレーム本体上に少なくとも一方向に沿って移動可能に設けられる複数の移動部材とを備えたフレームと、
複数のパターン開口部を有し、引張力が加えられた状態で前記複数の移動部材に固定されるマスクと、を含み、
前記マスクは、第1方向および第1方向と交差する第2方向に沿って引っ張られ、前記複数の移動部材に固定され、
前記フレーム本体は、前記第1方向に並ぶ一対の第1直線部と、前記第2方向に並ぶ一対の第2直線部とを含み、
前記複数の移動部材は、前記一対の第1直線部と前記一対の第2直線部それぞれにおいて複数個備えられ、移動方向と変位が独立に制御され、
前記複数の移動部材それぞれは、
マスク固定面を含むマスク固定部と、
前記フレーム本体と前記マスク固定部との間に設けられ、前記マスク固定部を前記第1方向および前記第2方向に沿って移動させる第1移動制御部および第2移動制御部とを含み、
前記第1移動制御部は、前記フレーム本体に固定され、
前記第2移動制御部は、前記第1移動制御部と前記マスク固定部との間に位置し、
前記第1移動制御部と前記第2移動制御部との間に支持台が位置し、
前記第1移動制御部は、第1移動ガイドを含む第1制御部本体と、前記支持台の後面に固定された第1雌ねじ部と、第1制御部本体に設けられ、第1雌ねじ部に締結される第1調整ねじとを含み、
前記第2移動制御部は、第2移動ガイドを含む第2制御部本体と、前記マスク固定部の後面に固定された第2雌ねじ部と、第2制御部本体に設けられ、第2雌ねじ部に締結される第2調整ねじとを含むことを特徴とするマスク組立体。
【請求項9】
前記第1調整ねじは前記第2方向に並び、
前記第2調整ねじは前記第1方向に並び、
前記第1方向と前記第2方向は前記マスクの幅方向であることを特徴とする請求項に記載のマスク組立体。
【請求項10】
前記支持台は、前記第1制御部本体を収容する第1収容部と、前記第1移動ガイドに対応する第1ガイド溝とを有し、
前記マスク固定部は、前記第2制御部本体を収容する第2収容部と、前記第2移動ガイドに対応する第2ガイド溝とを有することを特徴とする請求項に記載のマスク組立体。
【請求項11】
フレーム本体と、フレーム本体上に少なくとも一方向に沿って移動可能に設けられた複数の移動部材とを含むフレームを用意するステップと、
マスクに引張力を加えた状態でマスクを前記複数の移動部材に固定させるステップと、
前記複数の移動部材の少なくとも1つの移動部材をスライディングし、前記マスクの引張力を調整するステップと、を含み、
前記複数の移動部材それぞれは、マスク固定面を含むマスク固定部と、前記フレーム本体に固定され前記マスク固定部に接続されて前記マスク固定部の移動を制御する移動制御部と、を有し、前記移動制御部は、移動ガイドを含む制御部本体と、前記フレーム本体に相対する前記マスク固定部の後面に固定された雌ねじ部と、前記制御部本体に設けられ、前記雌ねじ部に締結される調整ねじと、を有し、
前記マスク固定部は、前記制御部本体を収容する収容部と、前記移動ガイドに対応するガイド溝と、を有し、前記ガイド溝に沿って前記少なくとも1つの移動部材をスライディングし前記マスクの引張力を調整することを特徴とするマスク組立体の製造方法。
【請求項12】
前記フレーム本体は、4つの直線部を含み、
前記複数の移動部材は、前記4つの直線部それぞれにおいて複数個備えられ、移動方向と変位が独立に制御されることを特徴とする請求項11記載のマスク組立体の製造方法。
【請求項13】
前記複数の移動部材には、前記マスクの引張力による圧縮力が作用し、
前記複数の移動部材それぞれは、圧縮力が作用する一方向に沿ってスライディングし、前記マスクの引張力を調整することを特徴とする請求項12記載のマスク組立体の製造方法。
【請求項14】
前記複数の移動部材それぞれは、圧縮力が作用する方向と交差する方向に沿ってスライディングし、前記マスクに形成されたパターン開口部の位置を変更させることを特徴とする請求項13記載のマスク組立体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスク組立体に関するものであって、より詳細には、有機発光層または金属層などの薄膜蒸着工程に用いられるマスク組立体およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
平板表示装置として、液晶表示装置(LCD)と有機発光表示装置(OLED)が知られている。平板表示装置は、特定パターンの金属層を含み、有機発光表示装置の場合、画素ごとに特定パターンの有機発光層を形成している。金属層と有機発光層を形成する方法として、マスク組立体を用いた蒸着法が適用できる。
【0003】
マスク組立体は、蒸着しようとする金属層または有機発光層と同じ形状のパターン開口部が形成されたマスクと、マスクを支持するフレームとから構成される。マスクが大面積化するにつれ、パターン開口部形成のためのエッチング誤差が大きくなり、自重によってマスクの中央部が垂れ下がる現象が生じ得るため、マスクは引張力が加えられた状態でフレームに溶接で固定される。
【0004】
しかし、フレームに固定されたマスクは、以降、引張力の調整が不可能であるため、マスクを引っ張らせ、これをフレームに溶接する工程に多くの時間と労力が消耗し、引張および溶接の過程で問題が発生したマスクは廃棄される。また、蒸着工程に用いられたマスクは、パターン開口部の均一度と画素位置精度(pixel position accuracy)が減少する現象が発生することがあり、このような問題が発生したマスクはフレームから分離された後廃棄される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国公開特許第10−2009−0110979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、マスクがフレームに固定された後、追加的にマスクの引張力を調整できるように構成され、廃棄されるマスクの数を減少させることができるマスク組立体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本記載の一実施形態にかかるマスク組立体は、i)開口部を有するフレーム本体と、フレーム本体上に少なくとも一方向に沿って移動可能に設けられる複数の移動部材とを備えたフレームと、ii)複数のパターン開口部を有し、引張力が加えられた状態で複数の移動部材に固定されるマスクとを含む。
【0008】
マスクは、第1方向および第1方向と交差する第2方向に沿って引っ張られ、複数の移動部材に固定できる。フレーム本体は、第1方向に並ぶ一対の第1直線部と、第2方向に並ぶ一対の第2直線部とを含むことができる。複数の移動部材は、一対の第1直線部と一対の第2直線部それぞれにおいて複数個備えられ、移動方向と変位が独立に制御できる。
【0009】
複数の移動部材は、一対の第1直線部に設けられ、第2方向に沿ってスライディングする複数の第1移動部材と、一対の第2直線部に設けられ、第1方向に沿ってスライディングする複数の第2移動部材とを含むことができる。複数の移動部材は、フレーム本体のコーナー側に設けられ、第3方向に沿ってスライディングする複数の第3移動部材を含むことができる。
【0010】
複数の移動部材それぞれは、マスク固定面を含むマスク固定部と、フレーム本体に固定され、マスク固定部に結合されてマスク固定部の移動を制御する移動制御部とを含むことができる。
【0011】
移動制御部は、移動ガイドを含む制御部本体と、フレーム本体に相対するマスク固定部の後面に固定された雌ねじ部と、制御部本体に設けられ、雌ねじ部に締結される調整ねじとを含むことができる。マスク固定部は、制御部本体を収容する収容部と、移動ガイドに対応するガイド溝とを有することができる。
【0012】
第1移動部材の調整ねじは第2方向に並び、第2移動部材の調整ねじは第1方向に並ぶことができる。第1方向と第2方向はマスクの幅方向であり得る。第3移動部材の調整ねじは第3方向に並ぶことができる。第3方向はマスクの幅方向であり得る。
【0013】
他方で、複数の移動部材それぞれは、マスク固定面を含むマスク固定部と、フレーム本体とマスク固定部との間に設けられ、マスク固定部を第1方向および第2方向に沿って移動させる第1移動制御部および第2移動制御部とを含むことができる。
【0014】
第1移動制御部は、フレーム本体に固定され、第2移動制御部は、第1移動制御部とマスク固定部との間に位置し、第1移動制御部と第2移動制御部との間に支持台が位置することができる。
【0015】
第1移動制御部は、第1移動ガイドを含む第1制御部本体と、支持台の後面に固定された第1雌ねじ部と、第1制御部本体に設けられ、第1雌ねじ部に締結される第1調整ねじとを含むことができる。第2移動制御部は、第2移動ガイドを含む第2制御部本体と、マスク固定部の後面に固定された第2雌ねじ部と、第2制御部本体に設けられ、第2雌ねじ部に締結される第2調整ねじとを含むことができる。
【0016】
第1調整ねじは第2方向に並び、第2調整ねじは第1方向に並ぶことができる。第1方向と第2方向はマスクの幅方向であり得る。支持台は、第1制御部本体を収容する第1収容部と、第1移動ガイドに対応する第1ガイド溝とを有することができる。マスク固定部は、第2制御部本体を収容する第2収容部と、第2移動ガイドに対応する第2ガイド溝とを有することができる。
【0017】
本記載の一実施形態にかかるマスク組立体の製造方法は、i)フレーム本体と、フレーム本体上に少なくとも一方向に沿って移動可能に設けられた複数の移動部材とを含むフレームを用意するステップと、ii)マスクに引張力を加えた状態でマスクを複数の移動部材に固定させるステップと、iii)複数の移動部材の少なくとも1つの移動部材をスライディングし、マスクの引張力を調整するステップとを含む。
【0018】
フレーム本体は、4つの直線部を含み、複数の移動部材は、4つの直線部それぞれにおいて複数個備えられ、移動方向と変位が独立に制御できる。
【0019】
複数の移動部材には、マスクの引張力による圧縮力が作用し、複数の移動部材それぞれは、圧縮力が作用する一方向に沿ってスライディングし、マスクの引張力を調整することができる。複数の移動部材それぞれは、圧縮力が作用する方向と交差する方向に沿ってスライディングし、マスクに形成されたパターン開口部の位置を変更させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のマスク組立体は、溶接過程で問題が発生したマスクと、蒸着工程に用いられた後、パターン開口部の均一度と画素位置精度が減少したマスクとに対して引張力を調整し、良品として修理することができる。したがって、廃棄されるマスクの数を減らして製造費用を低減し、マスクの入れ替えにかかる時間を短縮して蒸着器の連続稼働時間を増加させることにより、製品の生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態にかかるマスク組立体の分解斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態にかかるマスク組立体の平面図である。
図3図1のA部分を示す拡大図である。
図4図3に示したマスク固定部と移動部材の断面図である。
図5】本発明の第2実施形態にかかるマスク組立体の平面図である。
図6図5に示した移動部材の斜視図である。
図7図6に示した第1移動部材と支持台の断面図である。
図8図6に示した第2移動部材とマスク固定部の断面図である。
図9】本発明の一実施形態にかかるマスク組立体の製造方法を示す工程フローチャートである。
図10図9に示した第2ステップのマスク組立体を示す断面図である。
図11図9に示した第3ステップのマスク組立体を示す断面図である。
図12図9に示した第3ステップのマスク組立体を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付した図面を参考にして、本発明の実施形態について、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。本発明は、種々の異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0023】
明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは、特に反対となる記載がない限り、他の構成要素をさらに包含できることを意味する。また、明細書全体において、層、膜、領域、板などの部分が他の部分「上に」または「の上に」あるとする時、これは、他の部分の「真上に」ある場合のみならず、その中間にさらに他の部分がある場合も含む。さらに、「〜上に」または「〜の上に」とは、対象部分の上または下に位置することを意味し、必ずしも重力方向を基準として上側に位置することを意味しない。
【0024】
図1図2はそれぞれ、本発明の第1実施形態にかかるマスク組立体の分解斜視図と結合状態平面図である。
【0025】
図1図2を参照すれば、第1実施形態のマスク組立体100は、複数のパターン開口部15を形成するマスク10と、複数のパターン開口部15を露出させる開口部21を形成し、マスク10を支持するフレーム20とを含む。フレーム20は、フレーム本体22と、フレーム本体22に設けられた複数の移動部材30とを含み、マスク10は、複数の移動部材30に溶接で固定される。
【0026】
マスク10は、四角形の薄い金属板材で形成され、複数のパターン開口部15が形成されている。複数のパターン開口部15は、複数の微細開口部からなり、それぞれの微細開口部は、蒸着しようとする薄膜と同じ形状に形成される。したがって、蒸着工程において、蒸着物質は、パターン開口部15を通過して基板(図示せず)上に蒸着され、所望する形状の薄膜(金属層または有機発光層など)を形成する。
【0027】
1つのパターン開口部15は、1つの平板表示装置(例えば、有機発光表示装置)に対応することができる。この場合、1つのマスク組立体100を用いた単一工程で複数の平板表示装置に相当するパターンを同時に蒸着することができる。つまり、マスク組立体100は、1つのマザー基板に対応し、マザー基板上に複数の平板表示装置に相当するパターンを同時に形成することができる。
【0028】
マスク10は、2つの幅方向に沿って引っ張られる。図1図2では、マスクの横幅方向を第1方向として表し、縦幅方向を第2方向として表わしている。本実施形態では、第1方向と第2方向とは直交する。マスク10を引っ張らせるために、マスク10の4つの周縁それぞれにクランプ装置(図示せず)が設置され得る。
【0029】
フレーム20は、中央に開口部21が形成された四角枠形状のフレーム本体22と、マスク10に相対するフレーム本体22の一面に設けられた複数の移動部材30とを有して構成される。マスク10は、フレーム本体22の代わりに、複数の移動部材30に溶接で固定される。
【0030】
フレーム本体22は、第1方向に並ぶ一対の第1直線部23と、第2方向に並ぶ一対の第2直線部24とを含む。マスク10の形状に応じて、第1直線部23が第2直線部24より長い長さに形成できる。マスク10に形成された複数のパターン開口部15は、フレーム本体22の開口部21に対応して位置する。
【0031】
引張力が加えられたマスク10が複数の移動部材30に固定されることにより、フレーム本体22には、マスク10の引張方向(第1方向および第2方向)に沿って圧縮力が作用する。したがって、フレーム本体22は、圧縮力による変形が生じないように剛性の大きい金属材料、例えば、ステンレス鋼などの金属で製作できる。
【0032】
複数の移動部材30は、一対の第1直線部23と一対の第2直線部24それぞれにおいて複数個備えられ、フレーム本体22上で一方向に沿って移動可能に設けられる。
【0033】
具体的には、複数の移動部材30は、一対の第1直線部23それぞれに設けられる複数の第1移動部材31と、一対の第2直線部24それぞれに設けられる複数の第2移動部材32とを含む。複数の第1移動部材31には、マスク10の引張力によって第2方向に沿って圧縮力が作用し、複数の第2移動部材32には、マスク10の引張力によって第1方向に沿って圧縮力が作用する。
【0034】
複数の第1移動部材31は、圧縮力が作用する第2方向に沿ってフレーム本体22上に移動可能に設けられ、第2方向に沿ったマスク10の引張力を調整する機能を果たす。複数の第2移動部材32は、圧縮力が作用する第1方向に沿ってフレーム本体22上に移動可能に設けられ、第1方向に沿ったマスク10の引張力を調整する機能を果たす。
【0035】
この時、複数の第1移動部材31と複数の第2移動部材32それぞれは、後述する移動制御部によって移動方向と変位が独立に制御される。したがって、マスク組立体100は、マスク10を複数の移動部材30に固定させた後、マスク10の複数部位にそれぞれ異なる変形を加えることができる。つまり、引張力の調整が必要なマスク10の特定部位に対して所望の方向と所望の変位でマスクを動かし、位置に応じてマスク10の引張力を細かく調整することができる。
【0036】
図3は、図1のA部分を示す拡大図であり、図4は、図3に示したマスク固定部と移動部材の断面図である。
【0037】
図3図4を参照すれば、第1移動部材31は、マスク固定面341を含むマスク固定部34と、フレーム本体22とマスク固定部34との間に設けられ、マスク固定部34の移動方向と変位を制御する移動制御部35とを含む。移動制御部35は、フレーム本体22に固定され、マスク固定部34が移動制御部35上で第2方向に沿ってスライディング(摺動)する。マスク固定部34には、移動制御部35を収容する収容部342が形成される。
【0038】
移動制御部35は、一対の移動ガイド361を含む制御部本体36と、フレーム本体22に向かったマスク固定部34の後面に固定された雌ねじ部37と、制御部本体36に設けられ、雌ねじ部37に締結される調整ねじ38とを含む。
【0039】
一対の移動ガイド361と調整ねじ38はいずれも第2方向に並び、マスク固定部34の収容部342には、一対の移動ガイド361に対応するガイド溝343が形成される。調整ねじ38は、作業者の手作業によって操作されるか、あるいは図示しない外部動力源に結合され、回転方向と回転量が自動的に調整可能である。
【0040】
調整ねじ38が一方向に回転すると、調整ねじ38に締結された雌ねじ部37と、雌ねじ部37に固定されたマスク固定部34とが第2方向に沿ってスライディングする。この時、移動ガイド361とガイド溝343がマスク固定部34の移動をガイドする。マスク固定部34の移動量は、調整ねじ38の回転量に比例する。調整ねじ38の回転方向と回転量に応じて、マスク固定部34の移動方向と変位を精密に制御することができる。
【0041】
移動制御部35の構成は前述した例に限定されず、フレーム本体22上でマスク固定部34を移動させると共に、移動方向と変位を調整できる構成であればすべて適用可能である。
【0042】
再び図1図2を参照すれば、第2移動部材32は、調整ねじと一対の移動ガイドが第1方向に沿って配置され、スライディング方向が第1方向であることを除き、前述した第1移動部材31と同一の構造を有する。
【0043】
複数の移動部材30は、フレーム本体22のコーナー側(角部)に位置し、第3方向に沿ってスライディングする少なくとも1つの第3移動部材33を含むことができる。第3方向は、マスク10の対角方向であって、第1方向および第2方向の両方に対して所定の角度を有する。第3移動部材33は、調整ねじと一対の移動ガイドが第3方向に沿って配置され、スライディング方向が第3方向であることを除き、前述した第1移動部材31と同一の構造を有する。
【0044】
したがって、本実施形態のマスク組立体100は、溶接過程で問題が発生したマスク10と、蒸着工程に用いられた後、パターン開口部15の均一度と画素位置精度が減少したマスク10とに対して引張力を調整して修理することができる。その結果、廃棄されるマスクの数を減らして製造費用を低減し、マスクの入れ替えにかかる時間を短縮して蒸着器の連続稼働時間を増加させることにより、製品の生産性を向上させることができる。
【0045】
図5は、本発明の第2実施形態にかかるマスク組立体の平面図である。
【0046】
図5を参照すれば、第2実施形態のマスク組立体200は、複数の移動部材40が第1方向および第2方向に沿ってスライディングすることを除き、前述した第1実施形態のマスク組立体と類似の構成からなる。第1実施形態と同一の部材については同一の図面符号を用い、以下では、第1実施形態と異なる構成について主に説明する。
【0047】
第1実施形態において、複数の移動部材は、スライディング方向に沿って第1移動部材と第2移動部材および第3移動部材に区分されたが、第2実施形態において、複数の移動部材40は、同じ構成の移動制御部を備え、一方向ではなく、両方向(第1方向と第2方向)に沿ってスライディングする。
【0048】
図6は、図5に示した移動部材の斜視図であり、図7は、図6に示した第1移動部材と支持台の断面図であり、図8は、図6に示した第2移動部材とマスク固定部の断面図である。図6ないし図8では、フレーム201の第2直線部24に設けられた移動部材40を例として示した。
【0049】
図6ないし図8を参照すれば、移動部材40は、マスク固定面411を含むマスク固定部41と、フレーム本体22とマスク固定部41との間に設けられる第1移動制御部42および第2移動制御部43とを含む。第1移動制御部42は、第2移動制御部43の下に位置し、第1移動制御部42と第2移動制御部43との間に第2移動制御部43を支持する支持台44が位置する。
【0050】
第1移動制御部42は、フレーム本体22に固定され、支持台44とその上に設けられた第2移動制御部43およびマスク固定部41が第1移動制御部42によって第1方向に沿ってスライディングする。支持台44には、第1移動制御部42を収容する第1収容部441が形成される。
【0051】
第1移動制御部42は、一対の第1移動ガイド455を含む第1制御部本体451と、第1制御部本体451に相対する支持台44の後面に固定された第1雌ねじ部461と、第1制御部本体451に設けられ、第1雌ねじ部461に締結される第1調整ねじ471とを含む。第1移動ガイド455と第1調整ねじ471は第1方向に並び、第1収容部441には、第1移動ガイド455に対応する第1ガイド溝442が形成される。
【0052】
第2移動制御部43は、支持台44に固定され、マスク固定部41が第2移動制御部43によって第2方向に沿ってスライディングする。マスク固定部41の後面には、第2移動制御部43を収容する第2収容部412が形成される。
【0053】
第2移動制御部43は、一対の第2移動ガイド456を含む第2制御部本体452と、第2制御部本体452に相対するマスク固定部41の後面に固定された第2雌ねじ部462と、第2制御部本体452に設けられ、第2雌ねじ部462に締結される第2調整ねじ472とを含む。第2移動ガイド456と第2調整ねじ472は第2方向に並び、マスク固定部41の第2収容部412には、第2移動ガイド456に対応する第2ガイド溝413が形成される。
【0054】
第1調整ねじ471が一方向に回転すると、第1調整ねじ471に締結された第1雌ねじ部461および第1雌ねじ部461に固定された支持台44と第2移動制御部43およびマスク固定部41が第1方向に沿ってスライディングする。第1調整ねじ471の回転方向と回転量に応じて、第1方向に沿ったマスク固定部41の移動方向と変位を精密に制御することができる。
【0055】
第2調整ねじ472が一方向に回転すると、第2調整ねじ472に締結された第2雌ねじ部462および第2雌ねじ部462に固定されたマスク固定部41が第2方向に沿ってスライディングする。第2調整ねじ472の回転方向と回転量に応じて、第2方向に沿ったマスク固定部41の移動方向と変位を精密に制御することができる。
【0056】
再び図5図6を参照すれば、フレーム201の第1直線部23に設けられた移動部材40の場合、第1移動制御部42によって支持台44と第2移動制御部43およびマスク固定部41が第2方向に沿ってスライディングし、第2移動制御部43によってマスク固定部41が第1方向に沿ってスライディングする。
【0057】
第2実施形態のマスク組立体200は、マスク10をフレーム201に固定させた後、マスク10の引張方向およびこれと交差する方向のすべてに対してマスク10の周縁を動かすことができる。したがって、引張力の調整が必要なマスク10の特定部位に対して所望の方向と変位でマスク10を動かし、マスク10の引張力を調整することができ、引張方向と交差する方向にマスク10を動かし、パターン開口部15(図1参照)の位置を調整することができる。
【0058】
次に、マスク組立体の製造方法について説明する。
【0059】
図9は、本発明の一実施形態にかかるマスク組立体の製造方法を示す工程フローチャートである。
【0060】
図9を参照すれば、マスク組立体の製造方法は、フレーム本体と、複数の移動部材とから構成されたフレームを用意する第1ステップS10と、マスクに引張力を加えた状態でマスクを複数の移動部材に固定させる第2ステップS20と、複数の移動部材の少なくとも1つの移動部材をスライディングし、マスクの引張力を調整する第3ステップS30とを含む。
【0061】
第1実施形態のマスク組立体において、複数の移動部材は、マスクの引張方向に沿ってスライディングし、マスクの引張力を調整することができる。第2実施形態のマスク組立体において、複数の移動部材は、マスクの引張方向およびこれと交差する方向に沿ってスライディングし、マスクの引張力を調整すると共に、パターン開口部の位置も調整することができる。
【0062】
図10は、図9に示した第2ステップのマスク組立体を示す断面図である。図10では、第1実施形態のマスク組立体を例として示した。
【0063】
図2図10を参照すれば、マスク10は、第1方向と第2方向に沿って引張力が加えられた状態で複数の移動部材30に溶接で固定される。この時、マスク10は、フレーム本体22ではなく、複数の移動部材30に固定されているため、フレーム20に固定された後、引張力の調整が可能である。つまり、マスク10は、フレーム20に固定された直後に引張力が調整され得、蒸着工程に複数回用いられた後に引張力が調整され得る。
【0064】
図11図12は、図9に示した第3ステップのマスク組立体を示す断面図である。図11図12では、第1実施形態のマスク組立体を例として示した。
【0065】
図11を参照すれば、マスク10の引張力を向上させる必要がある場合、調整ねじを操作し、第1移動部材31を開口部21の中央から遠くなるようにスライディングする。すると、マスク10の端部が第1移動部材31に沿って動き、第2方向に沿った引張力が向上する。
【0066】
図12を参照すれば、マスク10の引張力を低下させる必要がある場合、調整ねじを操作し、第1移動部材31を開口部21の中央に向かってスライディングする。すると、マスク10の端部が第1移動部材31に沿って動き、第2方向に沿った引張力が低下する。図11図12に示した両場合とも、第1移動部材31の変位に応じて、引張力の強さを適切に調整することができる。
【0067】
一方、図11図12では、マスク10の両側端部に位置する2つの第1移動部材31が同じ変位で同時に動く場合を例として示したが、1つの第1移動部材31のみを動かしてもよく、2つの第1移動部材31が共に動く場合、2つの第1移動部材31の変位は互いに異なり得る。
【0068】
再び図2を参照すれば、第1移動部材31と同様に、第2移動部材32のスライディングを調整し、第1方向に沿ったマスク10の引張力を向上または低下させることができる。そして、第3移動部材33のスライディングを調整し、第3方向に沿ったマスク10の引張力を向上または低下させることができる。
【0069】
この時、複数の移動部材30それぞれは、移動方向と変位が独立に制御されるため、引張力の調整が必要なマスク10の特定部位に対して所望の方向と変位でマスク10を動かし、マスク10の引張力を位置に応じて細かく調整することができる。
【0070】
図5を参照すれば、第2実施形態のマスク組立体200では、複数の移動部材40それぞれが第1方向と第2方向に沿ってスライディングする。したがって、マスク10の引張方向に沿って移動部材40をスライディングし、マスク10の引張力を調整することができ、引張方向と交差する方向に沿って移動部材40をスライディングし、パターン開口部15(図1参照)の位置を調整することができる。
【0071】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明および添付した図面の範囲内で多様に変形して実施可能であり、これも本発明の範囲に属することは当然である。
【符号の説明】
【0072】
100、200 マスク組立体、
10 マスク、
15 パターン開口部、
20,201 フレーム、
21 開口部、
22 フレーム本体、
30,40 移動部材、
31,32,33 第1、第2、第3移動部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12