(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.ポリアミド系多層延伸フィルム
本発明のポリアミド系多層延伸フィルムは、少なくとも結晶性ポリエステル層、接着層及び脂肪族ポリアミド層を有するポリアミド系多層延伸フィルムであって、該結晶性ポリエステル層がポリエチレンテレフタレート50〜95重量%及びポリブチレンテレフタレート系樹脂5〜50重量%を含む層である、ことを特徴とする。
【0016】
以下、本発明のポリアミド系多層延伸フィルムの各構成について詳述する。
【0017】
(1) 結晶性ポリエステル層
結晶性ポリエステル層は、結晶性ポリエステルを主成分として含有し、ポリアミド系多層延伸フィルムに寸法安定性、高弾性、耐熱性等の機能を付与することができる。
【0018】
本発明のポリアミド系多層延伸フィルムでは、結晶性ポリエステル層はシール層がラミネートされる側(袋とした時の内表面側)であることが好ましい。ポリアミド系多層延伸フィルムの前記結晶性ポリエステル層にシール層をラミネートすることにより包装用フィルムを製造することができる。更に、包装用フィルムを袋状に成形し、前記シール層面同士をヒートシールして包装用袋を製造することができる。
【0019】
結晶性ポリエステル層は、
(A)成分:50〜95重量%のポリエチレンテレフタレート(PET)、及び
(B)成分:5〜50重量%のポリブチレンテレフタレート系樹脂を含む。
【0020】
本発明のポリアミド系多層延伸フィルムは、結晶性ポリエステル層が、ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレート系樹脂とを特定の割合で含むことから、従来知られている特徴を保持しつつ、更に優れたラミネート強度及びヒートシール強度を有することができる。
【0021】
ポリエチレンテレフタレート(PET)は、エチレングリコールとテレフタル酸の脱水縮合により作られ、エステル結合が連なっているポリエステルである。
【0022】
ポリブチレンテレフタレート系樹脂は、一般的なポリブチレンテレフタレート樹脂であり、少なくともテレフタル酸に由来する繰り返し単位と、少なくとも炭素原子数4のアルキレングリコール(1,4-ブタンジオール)に由来する繰り返し単位とを含む。つまり、ポリブチレンテレフタレート系樹脂は、ブチレンテレフタレート単位からなるホモポリブチレンテレフタレート(以下、単に「ポリブチレンテレフタレート(PBT)」とも言う)、及びブチレンテレフタレート単位を主成分として含有する共重合体を含む。
【0023】
ポリブチレンテレフタレート(PBT)は、テレフタル酸に由来する繰り返し単位と、1,4-ブタンジオールに由来する繰り返し単位とを有する。ポリブチレンテレフタレート(PBT)を使用することにより、結晶性ポリエステル層を軟らかくすることができる。
【0024】
ブチレンテレフタレート単位を主成分として含有する共重合体は、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、及びジオール成分として1,4-ブタンジオールを主成分とし、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分(イソフタル酸等)及び/又は1,4-ブタンジオール以外のジオール成分を含む。ブチレンテレフタレート単位の含有量は、90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましい。
【0025】
ブチレンテレフタレート単位を主成分として含有する共重合体において、ジカルボン酸成分を100モル%とした場合、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分(イソフタル酸等)の含有量は10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましい。テレフタル酸以外のジカルボン酸成分の含量が、10モル%以下であることにより、フィルムをより強靭にすることができる。
【0026】
ブチレンテレフタレート単位を主成分として含有する共重合体において、ジオール成分を100モル%とした場合、1,4-ブタンジオール以外のジオール成分の含有量は10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましい。
【0027】
ブチレンテレフタレート単位を主成分として含有する共重合体において、ジカルボン酸成分及びジオール成分の合計を100モル%とした場合、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分及び1,4-ブタンジオール以外のジオール成分の合計の含有量は10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましい。
【0028】
テレフタル酸以外のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、オクチルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、デカメチレンカルボン酸、これらの無水物及び低級アルキルエステル等を挙げることができる。これらのジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0029】
ポリアミド系多層延伸フィルムが優れたヒートシール強度を奏することから、イソフタル酸が最も好ましい。
【0030】
1,4-ブタンジオール以外のジオール成分としては、1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール)、1,2-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール類;2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール類等を挙げることができる。これらのジオール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0031】
ブチレンテレフタレート単位を主成分として含有する共重合体としては、イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート(PBT/I)が好ましい。イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレートは、ジカルボン酸に由来成分がテレフタル酸及びイソフタル酸であり、ジオールに由来する成分が1,4-ブタンジオールである。全ジカルボン酸成分に対してイソフタル酸成分の含有率が10モル%以下であることが好ましい。全ジカルボン酸成分に対して、イソフタル酸成分の含有率が1〜10モル%であり、テレフタル酸成分の含有率99〜90モル%であることが好ましい。
【0032】
ポリブチレンテレフタレート系樹脂は、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分及び/又は1,4-ブタンジオール以外のジオール成分の含有量が上記範囲内であることにより、結晶性ポリエステル層は良好な耐熱性を保持することができ、生産性が良い。
【0033】
また、ブチレンテレフタレート単位を主成分として含有する共重合体は、ポリブチレンテレフタレートに対してポリアルキレンエーテルグリコール、脂肪族ポリエステル等が共重合されたブロック共重合体であってもよい。
【0034】
ブチレンテレフタレート単位を主成分として含有する共重合体において、共重合体全体を100重量%とした場合、ポリアルキレンエーテルグリコール、脂肪族ポリエステル等のブロックの含有量は20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましい。
【0035】
ポリアルキレンエーテルグリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2-及び/又は1,3-プロピレンエーテル)グリコール、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンエーテル)グリコール等を挙げることができる。
【0036】
ポリアルキレンエーテルグリコール、脂肪族ポリエステル等のブロックが上記範囲内であることにより、結晶性ポリエステル層は良好な耐熱性を保持することができ、生産性が良い。
【0037】
ポリブチレンテレフタレート系樹脂のガラス転移温度は、0℃以上、60℃以下が好ましい。ガラス転移温度が0℃以上であることにより、自然収縮率を小さくすることができる。また、ガラス転移温度が60℃以下であることにより、経時で低温収縮性を良好に保持することができる。ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)で測定することができる。
【0038】
ポリブチレンテレフタレート系樹脂は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)又はブチレンテレフタレート単位を主成分として含有する共重合体を夫々単独で使用しても良く、両者を併用しても良い。ポリブチレンテレフタレート(PBT)とブチレンテレフタレート単位を主成分として含有する共重合体)との組み合せ割合は特に制限されない。
【0039】
結晶性ポリエステル層では、(A)成分のポリエチレンテレフタレート(PET)の含有割合は、50〜95重量%であり、60〜95重量%程度が好ましく、70〜90重量%程度がより好ましく、75〜90重量%程度が更に好ましい。(B)成分のポリブチレンテレフタレート系樹脂の含有割合は、5〜50重量%であり、5〜40重量%程度が好ましく、10〜30重量%程度がより好ましく、10〜25重量%程度が更に好ましい。結晶性ポリエステル層では、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリブチレンテレフタレート系樹脂が前記含有量を満たすことにより、ポリアミド系多層延伸フィルムに寸法安定性、高弾性、耐熱性等の機能を付与することができると共に、ポリアミド系多層延伸フィルムにシール層をラミネートして包装用フィルムを作製し、次いで該包装用フィルムを用いて、前記シール層面同士をヒートシールして袋状に成形して包装用袋を作製する時に、優れたラミネート強度及びヒートシール強度を有することができる。また、前記範囲であると、均一なフィルムを良好に形成することができる。
【0040】
ポリエチレンテレフタレートとしては、例えば(株)ベルポリエステルプロダクツ社製のベルペットEFG6Cを用いることができる。ポリブチレンテレフタレートとしては、例えばポリプラスチックス(株)社製のジュラネックス300FPを用いることができる。イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレートとしては、例えばポリプラスチックス(株)社製のジュラネックス400LPを用いることができる。
【0041】
結晶性ポリエステル層には、前記ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート系樹脂以外の樹脂であって、これらの樹脂と相溶性のある樹脂を含有していても良い。
【0042】
その樹脂が結晶性ポリエステルである場合、ジカルボン酸として、例えば、o-フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、オクチルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、デカメチレンカルボン酸、これらの無水物及び低級アルキルエステル、5-スルホイソフタル酸、2-スルホイソフタル酸、4-スルホイソフタル酸、3-スルホフタル酸、5-スルホイソフタル酸ジアルキル、2-スルホイソフタル酸ジアルキル、4-スルホイソフタル酸ジアルキル、3-スルホイソフタル酸ジアルキル及びこれらのナトリウム塩、カリウム塩等のスルホン基含有ジカルボン酸等が挙げられる。また、ジオールとして、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール)、1,2-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール類;2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロへキシル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロへキシル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール類、1,3-ジヒドロキシブタンスルホン酸、1,4-ジヒドロキシブタンスルホン酸等のスルホン基含有ジオール等が挙げられる。
【0043】
結晶性ポリエステルと相溶性のある樹脂として、非晶性ポリエステルを使用することも可能である。非晶性ポリエステルとはJIS K 7121に基づく示差走査熱量測定において融解熱量が観察されないポリエステルである。このような特性を有するポリエステルであれば特に限定されないが、具体例として、ジカルボン酸に由来する成分がテレフタル酸、ジオールに由来する成分がエチレングリコール(20〜80モル%)及びシクロヘキサンジメタノール(80〜20モル%)であるポリエステル;ジカルボン酸に由来する成分としてテレフタル酸(20〜80モル%)及びイソフタル酸(80〜20モル%)、ジオールに由来する成分としてエチレングリコールからなるポリエステルが好適である。
【0044】
結晶性ポリエステル層を最外層(袋とした時の外表面側)として用いる場合、必要に応じて滑剤を含有していても良い。滑剤としては、最外層である結晶性ポリエステル層表面の動摩擦係数を低下させ得るものであれば特に限定はないが、例えば、無機フィラー粒子、ビスアミド化合物、それらの混合物等が挙げられる。
【0045】
また、結晶性ポリエステル層に、必要に応じて、公知の無機又は有機添加剤等を適宜配合することができる。無機又は有機添加剤としては、アンチブロッキング剤、核剤、撥水剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、顔料、染料等を適宜配合することができる。
【0046】
(2) 脂肪族ポリアミド層
脂肪族ポリアミド層は、ポリアミド系多層延伸フィルムに耐屈曲性等の機能を付与することができる。
【0047】
脂肪族ポリアミド層は、主成分として脂肪族ポリアミドを含有する。
【0048】
脂肪族ポリアミドとしては、脂肪族ナイロン及びその共重合体が挙げられる。
【0049】
具体的には、ポリカプラミド(ナイロン-6)、ポリ-ω-アミノヘプタン酸(ナイロン-7)、ポリ-ω-アミノノナン酸(ナイロン-9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン-11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン-12)、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン-2,6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン-4,6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン-6,6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン-6,10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン-6,12)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン-8,6)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン-10,8)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン-6/12)、カプロラクタム/ω-アミノノナン酸共重合体(ナイロン-6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン-6/6,6)、ラウリルラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン-12/6,6)、エチレンジアミンアジパミド/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン-2,6/6,6)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン-6,6/6,10)、エチレンアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン-6/6,6/6,10)等を例示でき、これらのうち、2種以上の脂肪族ポリアミドを混合しても良い。好ましい脂肪族ポリアミドとしては、ナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン-6/6,6(ナイロン6とナイロン6,6の共重合体)が挙げられ、より好ましくはナイロン-6、ナイロン-6/6,6であり、更に好ましくはナイロン-6である。
【0050】
2種以上の脂肪族ポリアミドとしてはナイロン-6とナイロン-6/6,6の組み合わせ(重量比で50:50〜95:5程度)が好ましい。
【0051】
ナイロン-6としては、例えば宇部興産(株)社製のUBEナイロン1022FD17を用いることができる。
【0052】
脂肪族ポリアミド層は、上記ポリアミド系樹脂からなるものであっても良いが、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、前記脂肪族ポリアミド以外の他のポリアミド成分、公知の耐屈曲性改良剤、無機又は有機添加剤等を配合することができる。
【0053】
耐屈曲性改良剤としては、ポリオレフィン類、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー等が挙げられ、0.5〜10重量%程度の範囲で適宜配合することができる。
【0054】
無機又は有機添加剤としては、アンチブロッキング剤、核剤、撥水剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤等が挙げられる。例えば、アンチブロッキング剤であれば、シリカ、タルク、カオリン等を、100〜5000ppm程度の範囲で適宜配合することができる。
【0055】
他のポリアミド成分として、芳香族ポリアミドを使用することができる。例えば、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン等の芳香族ジアミンと、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸又はその誘導体との重縮合反応で得られる結晶性芳香族ポリアミドが挙げられる。好ましくは、ポリメタキシレンアジパミド(MXD-ナイロン)等の結晶性芳香族ポリアミドである。具体例としては、S-6007、S-6011(いずれも三菱ガス化学(株)製)が例示される。
【0056】
他のポリアミド成分として、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンとテレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸又はその誘導体との重縮合反応で得られる非晶性芳香族ポリアミド(アモルファスナイロン)を使用することができる。好ましくはヘキサメチレンジアミン-テレフタル酸-ヘキサメチレンジアミン-イソフタル酸の共重合体等である。具体例としては、シーラーPA(三井・デュポンポリケミカル(株)製)等が例示される。
【0057】
好ましい脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドの組み合わせとしては、ナイロン-6とMXD-ナイロンの組み合わせ、ナイロン-6と非晶性芳香族ポリアミド(アモルファスナイロン)の組み合わせが挙げられる。
【0058】
脂肪族ポリアミド層は脂肪族ポリアミド(特にナイロン-6)を主成分として含有する。脂肪族ポリアミド層の脂肪族ポリアミドの含有量は、80〜100重量%が好ましく、83〜95重量%がより好ましく、85〜90重量%が更に好ましい。脂肪族ポリアミド層の芳香族ポリアミドの含有量は、0〜20重量%が好ましく、5〜17重量%がより好ましく、10〜15重量%が更に好ましい。
【0059】
(3) 接着層
本発明のポリアミド系多層延伸フィルムは、少なくとも結晶性ポリエステル層、接着層及び脂肪族ポリアミド層を有する。
【0060】
ポリアミド系多層延伸フィルムでは、前記結晶性ポリエステル層、接着層及び前記脂肪族ポリアミド層が、この順で積層されてなる構成が好ましい。但し、本発明のポリアミド系多層延伸フィルムでは、前記各層間に追加的な層が含まれることを排除しない。
【0061】
本発明のポリアミド系多層延伸フィルムでは、前記結晶性ポリエステル層と前記脂肪族ポリアミド層との間に接着層が形成されることにより、両層の接着後の層間強度を飛躍的に向上させることができる。この時、結晶性ポリエステル層、接着層及び脂肪族ポリアミド層が、この順で積層されてなる構成となる。また、接着層は、良好な接着性を有しており、本発明のポリアミド系多層延伸フィルムを、例えばボイル処理やレトルト処理等の高温水との接触が想定される食品包装用フィルムに好適に用いることができる。
【0062】
接着層としては、特に限定されず、例えば、不飽和カルボン酸又はその誘導体でグラフト変性された酸変性樹脂を用いることができる。不飽和カルボン酸又はその誘導体でグラフト変性された酸変性樹脂としては、例えば、変性ポリオレフィン、変性スチレン系エラストマー、変性ポリエステルエラストマー等が挙げられる。
【0063】
変性ポリオレフィンは、公知の製法で得られ、不飽和カルボン酸又はその誘導体とポリオレフィンとをラジカル発生剤の存在下で加熱混合して得られる。
【0064】
不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸、その酸無水物、そのエステル又はその金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩)等が例示できる。ポリオレフィンとしては、オレフィン類の単独重合体、相互共重合体、他の共重合可能なモノマー(例えば、他のビニル系モノマー)との共重合体を例示できる。ポリエチレン(例えば低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等)、ポリプロピレン、ポリブテン、これらの相互共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等を例示できる。
【0065】
変性ポリオレフィンとしては、無水マレイン酸変性ポリオレフィンが好ましい。無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂(例えば、三井化学(株)アドマーSF731、SE800等や三菱化学(株)モディック)を使用することができる。
【0066】
変性スチレン系エラストマーは、公知の製法で得られ、不飽和カルボン酸又はその誘導体とスチレン系エラストマーとをラジカル発生剤の存在下で加熱混合して得られる。
【0067】
不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、例えば、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸、その酸無水物、そのエステル又はその金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩)等が例示できる。スチレン系エラストマーは、スチレン―ブタジエン共重合体の水素添加物やスチレン-イソプレン共重合体の水素添加物等を例示できる。
【0068】
変性スチレン系エラストマーとして、無水マレイン酸で変性したスチレン−ブタジエン共重合体水素添加物が好ましい。無水マレイン酸で変性したスチレン−ブタジエン共重合体水素添加物(例えば、クレイトンポリマー製クレイトンFG1901や旭化成ケミカルズ製タフテックM1913等)を使用することができる。
【0069】
変性ポリエステルエラストマー(変性TPEE)は、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーが、不飽和カルボン酸又はその誘導体により変性されたものである。
【0070】
ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有率が58〜73重量%程度である飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーを、ラジカル発生剤の存在下、不飽和カルボン酸又はその誘導体により変性処理して得られる変性ポリエステル系エラストマーであることが好ましい。不飽和カルボン酸又はその誘導体のグラフト反応及び末端付加反応により反応性基が導入されるため、多種の樹脂との化学結合性、水素結合性が向上する。
【0071】
飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有するソフトセグメントと、ポリエステルを含有するハードセグメントとからなるブロック共重合体であり、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有量が、該ポリエステル系エラストマー中の58〜73重量%程度であることが好ましい。ソフトセグメントを構成するポリアルキレンエーテルグリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2及び1,3-プロピレンエーテル)グリコール、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンエーテル)グリコール等が挙げられる。ポリアルキレンエーテルグリコールとしては、数平均分子量が400〜6000程度が好ましい。
【0072】
不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸、その酸無水物、そのエステル又はその金属塩等が挙げられる。
【0073】
ラジカル発生剤としては、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の過酸化物、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等のアゾ化合物が例示される。
【0074】
変性ポリエステルエラストマー中の各成分の好ましい配合割合は、飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマー100重量部に対して、不飽和カルボン酸又はその誘導体が0.01〜30重量部程度、ラジカル発生剤が0.001〜3重量部程度が好ましい。
【0075】
変性TPEEの調製方法は、特開2002-155135号公報等に記載される通りに実施することができる。得られる変性ポリエステル系エラストマーのMFR(JIS K7210準拠、230℃、2.16kg)は、40〜300(g/10分)程度が好ましい。三菱化学(株)社製のプリマロイAP-IF203(三菱化学(株))を用いることができる。
【0076】
(4) その他の層
本発明のポリアミド系多層延伸フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲で、ガスバリア層を含んでいても良い。ガスバリア層とは酸素、窒素、二酸化炭素等のガスの透過性が低い層である。具体例として、エチレン-ビニルアルコール系共重合体や芳香族ポリアミド等が挙げられる。ガスバリア層が含まれることにより、ガスバリア性が飛躍的に向上する。
【0077】
エチレン-ビニルアルコール系共重合体とは、エチレン-酢酸ビニル共重合体のケン化によって得られるものである。エチレン-ビニルアルコール系共重合体のエチレン含有量は20〜70モル%が好ましく、25〜50モル%がより好ましい。エチレン含有量が20モル%を下回ると、熱安定性が悪く成形性が悪くなり、押出溶融成形においてゲル等の異物が発生し易くなったり、延伸成形においてフィルムが破れ易くなったりする傾向がある。エチレン含有量が70モル%を上回ると、十分なガスバリア性を得られなくなる傾向がある。
【0078】
また、エチレン-ビニルアルコール系共重合体において、ガスバリア性が著しく低下しないような公知の他の成分が共重合されていたり、ブレンドされていたりしても良い。また、エチレン-ビニルアルコール系共重合体は組成が異なるエチレン-ビニルアルコール系共重合体をブレンドしているものであっても良い。
【0079】
エチレン-ビニルアルコール系共重合体の市販品としては、「エバール」((株)クラレ製)、「ソアノール」(日本合成化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0080】
芳香族ポリアミドとしては、例えば、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン等の芳香族ジアミンと、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸又はその誘導体との重縮合反応で得られる結晶性芳香族ポリアミドが挙げられる。好ましくは、ポリメタキシレンアジパミド(MXD-ナイロン)等の結晶性芳香族ポリアミドである。具体例としては、S6007、S6011(何れも三菱ガス化学(株)製)が例示される。
【0081】
ガスバリア層には、さらに本発明の効果に悪影響を与えない範囲で、脂肪族アミド、変性エチレン酢酸ビニル共重合体、メタクリル酸共重合体アイオノマー等の他の成分を含有していてもよい。ガスバリア層に他の成分を含有する場合、この成分の含有量は、通常、エチレン-ビニルアルコール系共重合体や芳香族ポリアミド100重量部に対して、15重量部程度以下が好ましく、1〜7.5重量部程度がより好ましい。
【0082】
(5)層構成
本発明のポリアミド系多層延伸フィルムは、少なくとも結晶性ポリエステル層、接着層及び脂肪族ポリアミド層を有する。
【0083】
また、本発明のポリアミド系多層延伸フィルムは、前記結晶性ポリエステル層、接着層及び脂肪族ポリアミド層が、この順で積層されていても良い。このとき、ポリアミド系多層延伸フィルムの両外面に、前記結晶性ポリエステル層が設けられていても良い。また、結晶性ポリエステル層を2層以上設けることも可能である(例えば、後述の実施例の態様)。また、脂肪族ポリアミド層を2層以上設けることも可能である(例えば、後述の実施例の態様)。その他にも、ガスバリア層等を、必要に応じて設けることもできる。
【0084】
具体的な層構成として、
結晶性ポリエステル層/接着層/脂肪族ポリアミド層、
結晶性ポリエステル層/接着層/脂肪族ポリアミド層/接着層/結晶性ポリエステル層、
結晶性ポリエステル層/接着層/脂肪族ポリアミド層/ガスバリア層/脂肪族ポリアミド層、
結晶性ポリエステル層/接着層/脂肪族ポリアミド層/ガスバリア層/脂肪族ポリアミド層/接着層/結晶性ポリエステル層、
等が挙げられる。
【0085】
上記層構成の中で、結晶性ポリエステル層/接着層/脂肪族ポリアミド層/接着層/結晶性ポリエステル層、結晶性ポリエステル層/接着層/脂肪族ポリアミド層/ガスバリア層/脂肪族ポリアミド層/接着層/結晶性ポリエステル層の層構成は、表裏方向で対称な層構成を有するため、フィルムのカールを抑制することができる。
【0086】
各層の厚さ
本発明のポリアミド系多層延伸フィルムの総膜厚(シール層の厚みは除く)は、用途に合わせて適宜設定することができる。総膜厚は、特に限定されないが、8〜40μm程度が好ましく、12〜25μm程度がより好ましい。かかる範囲では、フィルムの生産性、販売単価が良好となる点で好ましい。
【0087】
結晶性ポリエステル層(結晶性ポリエステル層を複数有する場合は、結晶性ポリエステル層の合計の厚みを意味する)の膜厚は、2μm程度以上が好ましく、3〜20μm程度がより好ましく、4〜15μm程度が更に好ましい。結晶性ポリエステル層の厚みが2μm以上であることにより、熱寸法安定性等の優れた機能が本発明の多層フィルムに付与され得る。
【0088】
脂肪族ポリアミド層(脂肪族ポリアミド層を複数有する場合は、脂肪族ポリアミド層の合計の厚みを意味する)は、2μm程度以上が好ましく、3〜20μm程度がより好ましく、4〜15μm程度が更に好ましい。脂肪族ポリアミド層の厚みが2μm以上であることにより、耐屈曲性に優れた多層フィルムとなる。
【0089】
接着層(接着層を複数有する場合は、接着層の合計の厚みを意味する)は、0.5μm程度以上が好ましく、1〜5μm程度がより好ましい、1〜2.5μm程度が更に好ましい。接着層の厚みが0.5μm以上であることにより、膜厚のコントロールがし易く、上記結晶性ポリエステル層と脂肪族ポリアミド層との間の層間強度を飛躍的に向上させることができ、生産コストを抑えることができる。
【0090】
ポリアミド系多層延伸フィルムの総膜厚に対する結晶性ポリエステル層の膜厚比率は、15〜40%程度が好ましく、20〜35%程度が好ましくい。総膜厚に対する結晶性ポリエステル層の膜厚比率を15〜40%とすることにより、高弾性で、優れた耐屈曲性及び吸湿寸法安定性を有するポリアミド系多層延伸フィルムとすることができる。
【0091】
ポリアミド系多層延伸フィルムの総膜厚に対する脂肪族ポリアミド層の膜厚比率は、50〜85%程度が好ましく、60〜80%程度が好ましい。総膜厚に対する脂肪族ポリアミド層の膜厚比率を50〜85%とすることにより、高弾性で、優れた耐屈曲性及び吸湿寸法安定性を有するポリアミド系多層延伸フィルムとすることができる。
【0092】
具体的な層構成として、
結晶性ポリエステル層(2〜10μm程度)/接着層(0.5〜2μm程度)/脂肪族ポリアミド層(4〜10μm程度)、
結晶性ポリエステル層(2〜10μm程度)/接着層(0.5〜2μm程度)/脂肪族ポリアミド層(4〜10μm程度)/接着層(0.5〜2μm程度)/結晶性ポリエステル層(2〜10μm程度)、
結晶性ポリエステル層(2〜10μm程度)/接着層(0.5〜2μm程度)/脂肪族ポリアミド層(4〜10μm程度)/ガスバリア層(1〜10μm程度)/脂肪族ポリアミド層(4〜10μm程度)、
結晶性ポリエステル層(2〜10μm程度)/接着層(0.5〜2μm程度)/脂肪族ポリアミド層(4〜10μm程度)/ガスバリア層(1〜10μm程度)/脂肪族ポリアミド層(4〜10μm程度)/接着層(0.5〜2μm程度)/結晶性ポリエステル層(2〜10μm程度)、
等が挙げられる。
【0093】
本発明のポリアミド系多層延伸フィルムでは、各層厚みを上記の範囲にすることにより、強靱性、ガスバリア性、寸法安定性、保香性、防湿性、耐ピンホール性等に加えて、優れたヒートシール強度を有することができる。
【0094】
2.ポリアミド系多層延伸フィルムの製造方法
本発明のポリアミド系多層延伸フィルムは、例えば、上記各層の順になるように、Tダイスより冷却水が循環するチルロール上に共押出せしめることにより、フラット状の多層フィルムを製造することができる。得られたフィルムは、延伸処理することにより、多層延伸フィルムとなる。延伸処理としては、縦延伸及び/又は横延伸を行なうことができる。
縦延伸及び横延伸を、同時延伸又は逐次延伸で行なうことができる。例えば、50〜100℃のロール延伸機により2.5〜4.5倍に縦延伸することができる。また、50〜150℃の雰囲気のテンター延伸機により2.5〜5倍に横延伸することができる。引き続いて同テンターにより100〜240℃雰囲気中で熱処理して得ることができる。
【0095】
本発明のポリアミド系多層延伸フィルムは、同時二軸延伸、逐次二軸延しても良く、得られた多層延伸フィルムは、必要ならばその両表面又は片表面にコロナ放電処理を施すこともできる。
【0096】
コロナ放電処理としては、例えば、接地された金属ロールと、それに数ミリの間隔で置かれたナイフ状の電極の間に数千ボルトの高電圧かけてコロナ放電を発生させる方法が挙げられる。この放電中の電極とロールとの間を高速でフィルムを通過させる。この時にフィルムの表面はコロナ放電処理され、接着剤、インク、塗料などに対する親和性が向上するする。ここで、放電電流を制御することにより処理の程度が設定できる。コロナ放電処理後の表面のぬれ張力は、JIS K 6768の方法に従い測定した値が46mN/m以上、より好ましくは50mN/m以上である。
【0097】
また、シール層を設ける場合、上記製法により得られた多層延伸フィルムの内層側に、上述のシール性を有する樹脂フィルムを、公知の方法を採用して、ラミネートすることにより行う。
【0098】
3.包装用フィルム及び包装用袋
本発明のポリアミド系多層延伸フィルムは、上記の特徴を有しているため、包装用フィルムとして好適に用いられる。ポリアミド系多層延伸フィルムでは、結晶性ポリエステル層はシール層がラミネートされる側(袋とした時の内表面側)であることが好ましい。ポリアミド系多層延伸フィルムの前記結晶性ポリエステル層に、シール層をラミネートすることにより、包装用フィルムを製造することができる。
【0099】
シール層としては、シール性を有する樹脂フィルムであればよく、例えば、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)、CPP(無延伸ポリプロピレン)、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)等のポリオレフィンから構成される層を採用することができる。
【0100】
具体的な層構成として、
シール層/結晶性ポリエステル層/接着層/脂肪族ポリアミド層、
シール層/結晶性ポリエステル層/接着層/脂肪族ポリアミド層/接着層/結晶性ポリエステル層、
シール層/結晶性ポリエステル層/接着層/脂肪族ポリアミド層/ガスバリア層/脂肪族ポリアミド層、
シール層/結晶性ポリエステル層/接着層/脂肪族ポリアミド層/ガスバリア層/脂肪族ポリアミド層/接着層/結晶性ポリエステル層、
等が挙げられる。
【0101】
更に、2枚の前記包装用フィルムの各シール層面同士をヒートシールして、袋状に成形して包装用袋を製造することができる。ヒートシールする方法は公知の方法を採用することができる。
【0102】
得られた包装用袋に内容物を充填して包装物を得ることができる。包装する内容物の種類に限定は無い。特に、スープ、蒟蒻、漬物等の水物系の食品;餅、ウィンナー、調味料等の重量のある食品;詰め替え用のシャンプー、リンス、ボディソープ、洗剤等の重量のある液体等を包装することが可能である。米、氷等の袋の容積が大きいものの包装;醤油、酢等の臭気のきついものの包装に、本発明の効果が顕著に発揮される。
【0103】
包装用袋の形態としては、例えば、3方シール形、封筒形、カゼット形、平底形等の袋状形態、スタンディングパウチ、スパウトパウチ、詰替えパウチ等が例示される。
【0104】
4.ポリアミド系多層延伸フィルム、包装用フィルム及び包装用袋の特徴
本発明のポリアミド系多層延伸フィルムは、ポリアミド系フィルムの従来知られている優れた強靱性、ガスバリア性、寸法安定性、保香性、防湿性、耐ピンホール性等の特徴を保持しつつ、ポリアミド系多層延伸フィルムにシール層をラミネートして包装用フィルムを作製し、次いで該包装用フィルム(2枚)を用いて、前記シール層面同士をヒートシールして袋状に成形して包装用袋を作製する時に、優れたラミネート強度及びヒートシール強度を有することができる。
【0105】
(1) ラミネート強度
本発明のポリアミド系多層延伸フィルムは、優れたラミネート強度を有している。
【0106】
ポリアミド系多層延伸フィルムの結晶性ポリエステル層側に、シール層を張り合わせたラミネートフィルムを用いる。幅10mmのラミネートフィルム試験片を、23℃×65%RHの条件下、引張速度200mm/minで、ポリアミド系多層延伸フィルムとシール層との境界面でT字剥離する。
【0107】
このT字剥離試験により、ポリアミド系多層延伸フィルムとシール層との間のラミネート強度を測定する。この場合の剥離強度(N/10mm)は、3 N/10mm程度以上が好ましく、4 N/mm程度以上がより好ましい。
【0108】
(2) ヒートシール強度
本発明のポリアミド系多層延伸フィルムは、優れたヒートシール強度を有している。
【0109】
ポリアミド系多層延伸フィルムの結晶性ポリエステル層側に、シール層を張り合わせたラミネートフィルムを用いる。幅10mmでラミネートフィルム試験片を、シール層同士をヒートシールした後、23℃×65%RHの条件下、引張速度200mm/minで、一方のシール層と他方のシール層との境界面でT字剥離する。
【0110】
このT字剥離試験により、一方のシール層と他方のシール層との間のヒートシール強度を測定する。この場合の剥離強度(N/10mm)は、20 N/10mm程度以上が好ましく、25 N/mm程度以上がより好ましく、30 N/mm程度以上が更に好ましい。
【実施例】
【0111】
以下、実施例を挙げて、本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0112】
実施例1〜4
結晶性ポリエステル層としてポリエチレンテレフタレート((株)ベルポリエステルプロダクツ社製ベルペットEFG6C)及びポリブチレンテレフタレート(ポリプラスチックス(株)社製のジュラネックス300FP)を用いた。結晶性ポリエステル層中のポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートとの配合割合は、表1に示す通りである。
【0113】
脂肪族ポリアミド層としてナイロン-6(宇部興産(株)社製のUBEナイロン1022FD17)を用いた。
【0114】
接着層として、変性ポリエステルエラストマー(三菱化学(株)社製のプリマロイAP-IF203)を用いた。
【0115】
各層を構成する樹脂を、結晶性ポリエステル層/接着層/脂肪族ポリアミド層の順序になるように、Tダイスより冷却水が循環するチルロール上に共押出しせしめて、フラット状のポリアミド系多層フィルムを得た。このポリアミド系多層フィルムルムを、65℃のロール延伸機により2.7倍に縦延伸し、次いで110℃の雰囲気のテンター延伸機により4.0倍に横延伸した。更に同テンターにより210℃の雰囲気中で熱処理して厚さ15μmのポリアミド系多層延伸フィルムを得た。各層の厚み及び厚み比率は、下記表1に示す通りである。
【0116】
実施例5
結晶性ポリエステル層としてポリエチレンテレフタレート((株)ベルポリエステルプロダクツ社製ベルペットEFG6C)及びイソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート(ポリプラスチックス(株)社製のジュラネックス400LP)を用いた。脂肪族ポリアミド層、接着層は実施例1等と同様である。
【0117】
実施例1と同様にして、ポリアミド系多層延伸フィルムを製造した。結晶性ポリエステル層中のポリエチレンテレフタレートとイソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレートとの配合割合、各層の厚みは、表1に示す通りである。
【0118】
実施例6及び7
実施例5と同じ樹脂成分を用いて、結晶性ポリエステル層/接着層/脂肪族ポリアミド層/接着層/結晶性ポリエステル層の順序になるように、実施例1と同様にして、ポリアミド系多層延伸フィルムを製造した。
【0119】
ポリアミド系多層延伸フィルムの層構成、結晶性ポリエステル層中のポリエチレンテレフタレートとイソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレートとの配合割合、各層の厚みは、表1に示す通りである。
【0120】
比較例1〜3
結晶性ポリエステル層としてポリエチレンテレフタレートのみを用いた。脂肪族ポリアミド層、接着層は実施例1等と同様である。
【0121】
実施例1と同様にして、ポリアミド系多層延伸フィルムを製造した。ポリアミド系多層延伸フィルムの層構成、各層の厚みは、表1に示す通りである。
【0122】
使用樹脂
ポリエステル樹脂1(PEs1):ポリエチレンテレフタレート
(株)ベルポリエステルプロダクツ社製のベルペットEFG6C
ポリエステル樹脂2(PEs2):ポリブチレンテレフタレート
ポリプラスチックス(株)社製のジュラネックス300FP
ポリエステル樹脂3(PEs3):イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート
ポリプラスチックス(株)社製のジュラネックス400LP
ポリアミド樹脂(PA):ナイロン-6
宇部興産(株)社製のUBEナイロン1022FD17
接着樹脂(Ad):変性ポリエステルエラストマー
三菱化学(株)社製のプリマロイAP-IF203
【0123】
【表1】
【0124】
試験例
実施例及び比較例において得られたポリアミド系多層延伸フィルムについて、下記のラミネート強度及びヒートシール強度を評価した。
【0125】
(1) ラミネート強度
ポリアミド系多層延伸フィルムの結晶性ポリエステル層側に、グラビアロールコーターにて、接着剤(東洋インキ(株)製 主剤:TM-250HV、硬化剤:CAT-RT86、主剤:硬化剤:酢酸エチル=15:2:30(重量比))を乾燥塗布量が3.0g/m
2-dryとなるように塗布した。次いで、60℃の熱風で乾燥した後、シーラント(シール層、東セロ(株)T.U.X FC-S 50μm)を張り合わせ、40℃のニップロールにて圧着した。40℃で48時間エージングを行い、ラミネートフィルムを得た。
【0126】
幅10mmのラミネートフィルム試験片を、23℃×65%RHの条件下、引張速度200mm/minで、ポリアミド系多層延伸フィルムとシール層との境界面でT字剥離した。このT字剥離試験により、ポリアミド系多層延伸フィルムとシール層との間のラミネート強度を測定した。尚、剥離時に結晶性ポリエステル層が材料破壊を起こしたものについては測定不可とした。
【0127】
(2) ヒートシール強度
前記ラミネート強度で調製したラミネートフィルムと同様のラミネートフィルムを用いて、一方のラミネートフィルムのシール層と他方のラミネートフィルムのシール層とのシーラント面同士を、200℃の温度にて0.26MPaの圧力で1秒間ヒートシールした。
【0128】
シーラント面同士をヒートシールした後の幅10mmでラミネートフィルム試験片を、23℃×65%RHの条件下、引張速度200mm/minで、一方のシール層と他方のシール層との境界面でT字剥離した。このT字剥離試験により、一方のシール層と他方のシール層との間のヒートシール強度を測定した。
【0129】
結果を表2に示す。
【0130】
【表2】
【0131】
実施例のポリアミド系多層延伸フィルム(本発明の態様)は、優れたラミネート強度及びヒートシール強度を有していた。ラミネート強度(剥離強度(N/10mm))は、4 N/10mm以上であった。ヒートシール強度(剥離強度(N/10mm)は、30 N/10mm以上であった。
【0132】
これに対し、比較例のポリアミド系多層延伸フィルムは、ラミネート強度の測定時、いずれも、剥離時に結晶性ポリエステル層が材料破壊を起こした。具体的には、剥離時に結晶性ポリエステル層に亀裂が生じ、その亀裂が結晶性ポリエステル層と接着層の層間へ伝播し、層間で剥離した。その結果、ラミネート強度を測定できなかった。
【0133】
また、比較例のポリアミド系多層延伸フィルムは、ヒートシール強度は、前記実施例に比べて劣っていた。具体的には、剥離時に結晶性ポリエステル層に亀裂が生じ、その亀裂が結晶性ポリエステル層と接着層の層間へ伝播し、層間で剥離した。その結果、ヒートシール強度は不十分な値となった。
【0134】
以上の結果より、少なくとも結晶性ポリエステル層、接着層及び脂肪族ポリアミド層を有するポリアミド系多層延伸フィルムでは、該結晶性ポリエステル層に含まれる結晶性ポリエステルが、(A)50〜95重量%のポリエチレンテレフタレート(PET)、並びに(B)5〜50重量%のポリブチレンテレフタレート系樹脂(ポリブチレンテレフタレート(PBT)、イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート(PBT/I)等)を含むことから、優れたラミネート強度及びヒートシール強度を有していることが確認された。
【0135】
産業上の利用可能性
本発明のポリアミド系フィルムは、ポリアミド系フィルムの従来知られている特徴を保持しつつ、更に優れたヒートシール強度を有する。
【0136】
本発明のポリアミド系フィルムは、十分なヒートシール強度を有することから、シール層側のポリエステル層が材料破壊を起こさない。そのため、本発明のポリアミド系フィルムを詰替えパウチ、レトルトパウチ等に用いると、落下等の衝撃に対して破壊されることがない。