【実施例1】
【0013】
図1ないし
図5は本発明の実施例1に係る車両のシート装置を説明するための図であり、本実施例において、前,後,左,右とはシート装置に着座して車両前方を見た状態での前,後,左,右を意味している。なお、
図1はスライド機構等の構造を外方から見易くするために車両走行時位置においてスライド機構をスライドさせた状態で描かれているが、実施例の車載状態では、車両走行時位置においてスライドさせることはできない。
【0014】
図において、1は福祉車両等に搭載されるシート装置を示している。このシート装置1は、乗員が着座するシートクッション2a及び乗員の背中を支持するシートバック2bからなるシート本体2を、車両前方に向く走行時位置Aとドア開口から車両外側方に向く昇降開始時位置Bとの間で回動可能に、かつ該昇降開始時位置Bと車外側方の乗降時位置Cとの間で進退可能に構成されている。
【0015】
前記シート装置1は、不図示のフロアパネル上に、車両前後方向にスライド可能に配設されたベース部材3上に搭載されている。該ベース部材3には、クロスローラベアリング(不図示)を介して回動プレート4が回動可能に支持されており、該回動プレート4は図示しない回動駆動機構により前記走行時位置Aと昇降開始時位置Bとの間で回動可能に駆動されるなお、11dは回動駆動機構の駆動用モータである。
【0016】
前記回動プレート4上にはベースフレーム5が固定されており、該ベースフレーム5により第1スライドフレーム6がスライド可能に支持され、さらに該第1スライドフレーム6により第2スライドフレーム7がスライド可能に支持されている。この第2スライドフレーム7にシートブラケット8が固定され、該シートブラケット8上に前記シート本体2が搭載されている。また前記シートブラケット8の前端部には足載部8aが支持されている。
【0017】
前記ベースフレーム5は、左,右側板5a,5aと、該左,右側板5a,5aの後端同士,前端部同士に架け渡して配置固定された後板5b,前板5cとを有し、全体として平面視矩形枠状をなしている。また、前記左,右側板5a,5aの上縁部にはガイドレール5d,5dが内向きコ字形状をなすように形成されている。
【0018】
前記第1スライドフレーム6は、左,右側板6a,6aと、該左,右側板6a,6aの前端部,後前端部同士を結合するように架け渡された前連結板6b,後連結板6cとを有し、平面視で矩形枠状をなしている。前記左,右側板6a,6aにはガイドレール6d,6dが内向きコ字形状をなすように形成されている。
【0019】
また前記第1スライドフレーム6の左,右側板6a,6aの、後半部には中央側に1組、後側に1組、計4個のガイドローラ6eが外向きに配置固定されており、前端部には1組、計2個のガイドローラ6fが内向きに配置固定されている。なお、6hは第1スライドフレーム6の前進端位置を規制するストッパであり、これはベースフレーム5のガイドレール5d内に固定されている。
【0020】
また前記左,右側板6a,6aの前端のガイドローラ6fと中央側のガイドローラ6eとの間には傾動支持フレーム9が架け渡して配置されている。該傾動支持フレーム9の左,右端板9a,9aにはそれぞれ2個、計4個の支持ローラ9bが固定されており、該支持ローラ9bは前記第1スライドフレーム6のガイドレール6dに係合し、該ガイドレール6d内を転動する。
【0021】
前記第2スライドフレーム7は、左,右フレーム7a,7aと、該左,右フレーム7a,7aの前端部間,後端部間に架け渡して配置固定された前連結部材7b,後連結部材7cとを有し、平面視矩形枠状をなしている。前記前,後連結部材7b,7cに前記シートブラケット8が結合されている。
【0022】
そして前記左,右フレーム7a,7aの後端部には、前記支持フレーム9の左,右端板9aに上方に突出するように形成された支持部9cが連結ピン9dにより相対的に傾動自在に連結されている。また前記左,右フレーム7a,7aにはガイドレール7dが外向コ字形状をなすように形成されており、該ガイドレール7d内に前記第1スライドフレーム6の先端部に配設されたガイドローラ6f,6fが係合され、該ガイドレール7d内を転動するようになっている。なお、6gは支持フレーム9ひいては第2スライドフレーム7の前進端位置を規制するストッパであり、これは第1スライドフレーム6のガイドレール6d内に固定されている。
【0023】
前記ガイドローラ6fは、
図4に示すように、左,右側板6aに圧入されたローラ軸6iと、該ローラ軸6iに嵌合装着され、ねじ6kで固定されたベアリング6jとで構成されている。なお、他のローラも同じ構造である。
【0024】
前記ベースフレーム5、第1スライドフレーム6及び第2スライドフレーム7は、前述のように、回動駆動機構により前記走行時位置Aと昇降開始時位置Bとの間で回動するように駆動される。なお10は、前記ベースフレーム5を前記走行時位置Aにロックするロック機構である。
【0025】
また前記第1スライドフレーム6及び第2スライドフレーム7は、スライド駆動機構11により前記ベースフレーム5に対して前記昇降開始時位置Bと乗降時位置Cとの間でスライドするように駆動される。このスライド駆動機構11は、前記第1スライドフレーム11の基端部に配設された駆動スプロケット11aと前端部に配設された従動スプロケット1bとにチェーン11cを巻回し、該チェーン11cの1つの中途部分をベースフレーム5側に固定し、他の中途部分を第2スライドフレーム7側に固定し、前記駆動スプロケット11aを第1スライドフレーム6に固定されたモータ(図示せず)により回転駆動するように構成されている。
【0026】
そして前記第1スライドフレーム6の前連結板6bの左,右端部には、前記第2スライドフレーム7の、スライド方向と直交する横方向への移動を規制する規制板12,12が配設されている。この規制板12は、支持辺部12aと取付辺部12bとからなるL字形状をなし、帯板状の金属プレートで構成されている。
【0027】
前記取付辺部12bは、前記前連結板6b上に載置され、前記横方向の長軸を有する長孔12eに挿入されたボルト12cを前記前連結板6bのねじ孔に締め込むことにより該前連結板6bに固定されている。なお、12fは前記従動スプロケット11bを支持するプレートであり、該プレート12fはカラー12gにより前記前連結板6bに間隔を開けて固定されている。
【0028】
前記支持辺部12aは、前記前連結板6bに形成された切欠部6mを通って下方に向けられており、その下端部には樹脂製のスライダ12dがねじ12hで締め付け固定されている。そして前記スライダ12dは前記第2スライドフレーム7の左,右フレーム7a,7aの内面に摺接しており、これにより該第2スライドフレーム7の横方向への移動を規制している。
【0029】
本実施例1に係る車両のシート装置1では、前記モータ11dにより駆動スプロケット11aを回転駆動することにより、ガイドローラ6eがガイドレール5d内を転動することで第1スライドフレーム6がベースフレーム5に対して相対移動し、支持ローラ9bがガイドレール6d内を転動すると共に、ガイドローラ6fがガイドレール7d内を転動することで第2スライドフレーム7が第1スライドフレーム6に対して相対移動する。
【0030】
この場合、前記支持フレーム9は第2スライドフレーム7と共にスライドする。そのため第2スライドフレーム7は、支持フレーム9の連結ピン9dとガイドローラ6fとを結ぶ直線がなす角度に傾動し、これによりシート本体2は第2スライドフレーム7が車外側方にスライドするほど低くなり、乗降し易い高さ位置となる。
【0031】
また第2スライドフレーム7は、左,右の規制板12のスライダ12dが左,右フレーム7a,7aの内面に摺接することによりの横方向(左右方向)位置が規制された状態でスライドする。そのため第2スライドフレーム7ひいてはシート本体2を横揺れを防止して安定してスライドさせることができる。また車両走行時の振動がガイドローラ6fやガイドレール7dに伝わってもがたつくことがないので、振動による異音の発生を防止できる。
【0032】
また前記規制板12の横方向位置を調整する場合は、外方からボルト12cを緩めて規制板12を横方向に移動させることにより容易確実に調整することができ、スライドフレーム等の分解を必要とすることもない。
【0033】
なお、前記実施例1では、第2スライドフレーム7の横方向位置を規制したが、第1スライドフレーム6の横方向位置を規制しても良く、第1,第2スライドフレーム6,7の両方の横方向位置を調整すればさらに良い。