特許第6274941号(P6274941)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6274941
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】車両衝突警告システム
(51)【国際特許分類】
   B61L 23/00 20060101AFI20180129BHJP
   B61L 27/00 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
   B61L23/00 E
   B61L27/00 K
【請求項の数】9
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2014-64448(P2014-64448)
(22)【出願日】2014年3月26日
(65)【公開番号】特開2014-210570(P2014-210570A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2016年9月1日
(31)【優先権主張番号】特願2013-76131(P2013-76131)
(32)【優先日】2013年4月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100061745
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】寺田 博文
(72)【発明者】
【氏名】桂 寛
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 敏治
(72)【発明者】
【氏名】田村 昌弘
【審査官】 東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−251739(JP,A)
【文献】 特開2002−330502(JP,A)
【文献】 特開平06−119599(JP,A)
【文献】 特開2006−137277(JP,A)
【文献】 特開昭52−150310(JP,A)
【文献】 特開2003−063401(JP,A)
【文献】 特開平06−321099(JP,A)
【文献】 特開2001−341638(JP,A)
【文献】 特開昭54−029411(JP,A)
【文献】 特開平03−070673(JP,A)
【文献】 特開昭51−108404(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0296562(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 1/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工場内に敷設された軌道上を走行する第1の車両と第2の車両とが衝突する可能性を運行に携わるオペレータへ警告する車両衝突警告システムであって、
前記車両衝突警告システムは、
複数のメッシュに分割された軌道上において、2点のメッシュ間の距離が予め記録された「軌道情報D」と、
前記軌道上を走行する車両に関する情報が予め記録された「車両情報」とを備えていて、
前記軌道上を走行する第1の車両及び前記第2の車両の位置を示す「車両位置情報」を求める「車両位置情報検出手段」と、
前記「車両位置情報検出手段」が算出した「車両位置情報」と「軌道情報D」と「車両情報」とを基に、前記第1の車両と前記第2の車両とが衝突する可能性を判定する「衝突判定手段」と、
前記「衝突判定手段」が算出した車両衝突の可能性を、運行に携わるオペレータに警告として通達する「通達手段」と、を有し、
前記衝突判定手段は、
前記軌道情報Dと車両位置情報とから得られた前記第1の車両と第2の車両との間の距離が、前記第1の車両の車両情報に含まれる「車両に関する距離」と、前記第2の車両の車両情報に含まれる「車両に関する距離」と、を足し合わせた距離以下の場合に、「正面衝突の可能性あり」と判定し、
前記一のメッシュと当該一のメッシュの隣に連結されている他のメッシュとの連結状態が記録された「連結情報L」と、
前記連結情報Lを基に、軌道情報Dから前記連結状態が「分岐」又は「合流」とされた情報のみを抽出して得られた「斜め衝突判定用軌道情報E」と、を備えていて、
前記衝突判定手段は、前記斜め衝突判定用軌道情報Eと車両位置情報とから得られた前記第1の車両と第2の車両との間の距離が、前記第1の車両の車両情報に含まれる「車両に関する距離」と、前記第2の車両の車両情報に含まれる「車両に関する距離」と、を足し合わせた距離以下の場合に、「斜め衝突の可能性あり」と判定する
ことを特徴とする車両衝突警告システム。
【請求項2】
前記車両情報は、前記車両の全長、車両の制動距離の少なくとも一つ以上を有することを特徴とする請求項1に記載の車両衝突警告システム。
【請求項3】
前記車両位置情報検出手段は、前記車両に備えられたGPS及び/又はRFIDを用いて当該車両の位置を検出するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両衝突警告システム。
【請求項4】
前記軌道情報Dには、一のメッシュと他のメッシュとの間に存在する分岐点から当該一のメッシュ及び他のメッシュまでの距離である分岐点距離が予め記録されており、
前記衝突判定手段は、
前記軌道情報Dと車両位置情報とから得られた前記第1の車両に関する分岐点距離が、当該第1の車両の車両情報に含まれる「車両に関する距離」以下であって、且つ前記軌道情報と車両位置情報とから得られた前記第2の車両に関する分岐点距離が、当該第2の車両の車両情報に含まれる「車両に関する距離」以下である場合に、「斜め衝突の可能性あり」と判定することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の車両衝突警告システム。
【請求項5】
前記一のメッシュと当該一のメッシュの隣に連結されている他のメッシュとの連結状態が記録された「連結情報L」と、
前記連結情報Lを基に、軌道情報Dから前記連結状態が「終端」とされた情報のみを抽出して得られた「終端衝突判定用軌道情報F」と、を備えていて、
前記衝突判定手段は、前記終端衝突判定用軌道情報Fと車両位置情報とから得られた前記車両と終端との間の距離が、前記車両の車両情報に含まれる「車両に関する距離」以下の場合に、「終端衝突の可能性あり」と判定する
ことを特徴とする請求項に記載の車両衝突警告システム。
【請求項6】
前記軌道が交差している点であるクロス点と、前記クロス点に繋がるメッシュの情報が記録された「クロス情報C」と、
前記クロス情報Cを基に、軌道情報Dから前記クロス点に繋がるメッシュに対応する情報のみを抽出して得られた「クロス衝突判定用軌道情報G」と、を備えていて、
前記衝突判定手段は、前記クロス衝突判定用軌道情報Gと車両位置情報とから得られた前記第1の車両と第2の車両との間の距離が、前記第1の車両の車両情報に含まれる「車両に関する距離」と、前記第2の車両の車両情報に含まれる「車両に関する距離」と、を足し合わせた距離以下の場合に、「クロス衝突の可能性あり」と判定する
ことを特徴とする請求項に記載の車両衝突警告システム。
【請求項7】
前記軌道上において複数に分割されたメッシュの属性情報が記録された「メッシュ情報」と、
前記メッシュ情報から属性が「障害物」とされた情報のみを抽出して、当該抽出したメッシュMの属性情報と軌道情報Dとを基に作成された「障害物衝突判定用軌道情報H」と、を備えていて、
前記衝突判定手段は、前記障害物衝突判定用軌道情報Hと車両位置情報とから得られた前記車両と前記障害物との間の距離が、前記車両の車両情報に含まれる「車両に関する距離」以下の場合に、「障害物衝突の可能性あり」と判定する
ことを特徴とする請求項に記載の車両衝突警告システム。
【請求項8】
前記車両衝突警告システムは、コンピュータを備えており、
前記コンピュータ内には、前記車両位置情報検出手段と、前記衝突判定手段と、前記通達手段と、前記軌道情報及び車両情報が予め記録された記憶手段と、が設けられていることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の車両衝突警告システム。
【請求項9】
前記工場は製鉄所であって、前記車両は混銑車と当該混銑車に連結されている機関車であり、
前記車両の車両情報は、前記機関車と当該機関車に連結されている混銑車とを含む車両の全長であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の車両衝突警告システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場内に敷設された軌道上を走行する複数の車両に関し、車両同士が衝突する可能性のある情報を算出し、運行に携わるオペレータにその情報を通達することのできる車両衝突警告システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に工場では、原料や製品を搬送させたりするために、工場敷地内に軌道や道路が敷設され、その軌道や道路上を車両が自由自在に走行している。
例えば、製鉄所では、高炉から出銑した溶銑を転炉まで搬送するための軌道が敷地内に敷設されており、その軌道上を溶銑容器である混銑車(トピードカー)が走行している。混銑車は、高炉において溶銑を装入され、その後、装入された溶銑を転炉設備に移送するものとなっている。
【0003】
詳しくは、製鉄所の敷地内には、旅客鉄道車両が走行できる線路とほぼ同じ構成の軌道が敷設されている。その軌道は、ポイント(分岐点)を介して複数連結され、複数の混銑車が走行できるようになっている。複数の軌道は、高炉、予備精錬設備、転炉設備などを結んでおり、混銑車は装入された溶銑を各設備間で搬送できるようになっている。
混銑車は、自走できないため、機関車に連結されている。この機関車は、混銑車を牽引したり、混銑車を押したりして走行している。これら混銑車と機関車とが連結された車両には、運転オペレータが当該車両の先頭に乗車しており、この運転オペレータが車両を運転(操作)することで、混銑車を所定の場所に移動させている。加えて、製鉄所の敷地内に設けられた管制室には、軌道上の車両(混銑車)の配車を指示する管制オペレータが存在する。この管制オペレータは、効率的な混銑車の配備、運行指示の指令を出す。
【0004】
上記したような混銑車の運行は、運転オペレータ、管制オペレータなど運行に携わるオペレータ(運転オペレータMA、MB)の的確な判断により、安全且つ確実に実施されている。とはいえ、運転オペレータMA、MBによる運行には、人為的ミスに起因する事故(例えば、軌道上の車両同士の衝突)の発生の可能性が常に付きまとうこととなる。
車両同士の衝突を防ぐ技術としては、特許文献1に開示された旅客鉄道車両向けの技術が存在する。
【0005】
すなわち、特許文献1には、軌道に沿って複数設けられ、信号が発せられる無線位置標識から、前記軌道の起点からの軌道上を移動する列車の絶対位置を示す第1の絶対位置信号を検知する自列車位置検知手段と、他の全ての列車の絶対位置を示す第2の絶対位置信号を検知する他列車位置検知手段と、前記第1及び第2の絶対位置信号から、当該列車と他の列車との間の相対距離を算出する相対距離算出手段と、算出した前記相対距離により当該列車の進行方向に最も近接した位置にある他の列車を判別する判別手段と、判別した当該他の車両との前記相対距離に基づいて当該列車の速度制御を行う速度制御手段と、を備えた列車衝突防止装置を用い、特定の列車に対して他の全ての列車の各々からそれぞれの絶対位置情報を所定の通信手段を介して伝送し、当該特定の列車から前記全ての列車に対して前記通信手段を介して全ての列車の絶対位置情報を伝送し、各列車において、当該列車の絶対位置と他の列車の絶対位置とから当該列車と当該他の列車との間の相対距離を算出し、当該列車の進行方向に最も近接した位置にある他の列車を判別し、判別した当該他の車両との前記相対距離に基づいて速度制御を行い、軌道上を移動する列車の衝突事故を防止する技術が開示されている。
【0006】
また、車両(列車)同士の衝突を防ぐ技術として、特許文献2に開示された技術が存在する。
すなわち、特許文献2には、単線列車軌道上の列車間の衝突を防止する簡易列車衝突防止システムであって、少なくともGPS(Global PositioningSystem)からの信号に基づいて自列車の位置情報を取得する機能及び自立走行機構による移動距離に基づいて前記自列車の位置情報を取得する機能を持つカーナビゲーションと、MCA(Multi−Channel Access)を用いて前記カーナビゲーション
で取得した前記自列車の位置情報を少なくとも前後に位置する列車に通知する通信手段とを前記列車各々に有する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3492780号公報
【特許文献2】特開2003−48541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述した如く、複数の混銑車が存在し移動している製鉄所内の軌道上では、運転オペレータMA、MBの人為的なミスなどにより、2台以上の混銑車が同一の軌道内に進入してしまう可能性がある。この場合、混銑車の衝突事故の危険性が高まることになる。万が一、車両の衝突事故が発生してしまうと、工場内での製造工程が止まってしまい、日々の生産に大きな影響を与えてしまう虞がある。
【0009】
係る不都合を回避するために、運転オペレータMA、MBは注意を払っているのであるが、経験の浅い運転オペレータMA、MBの場合、軌道上における混銑車の位置の把握が不十分であったりして、事故回避が万全になされないこともある。
このような不都合を回避するために、特許文献1及び特許文献2の技術を適用することも考えられる。しかしながら、特許文献1は、旅客鉄道用向けの技術を開示するものであって、実現のためには、軌道上に複数敷設する信号標識や多くの車両情報を処理する大型のコンピュータなどの装置が必要であるばかりか、これらの装置は大規模であり導入に多く費用が掛かる。すなわち、製鉄所などの工場内敷地の軌道上を移動する混銑車に適用することができないという問題があった。
【0010】
また、特許文献2は、単線列車軌道上の列車間の衝突を防止する技術を開示するものであって、製鉄所内に分岐点(ポイント)を介して敷設された複数の軌道上を移動する混銑車同士の衝突を回避することができない。例えば、ある混銑車が軌道上の合流点(分岐点)を通過する際に、当該軌道上の合流点近傍を移動中の別の混銑車がこの合流点を経て、同一軌道に進入して衝突してしまう虞がある。このような衝突が発生すると、製鉄所などの工場内での製造工程が止まってしまい、日々の生産に大きな影響を与えてしまうようになる。
【0011】
すなわち、現状では、製鉄所内の混銑車の衝突を未然に防ぐための技術が開発されるにいたっておらず、運転オペレータMA、MBの経験に頼った人的作業に基づき、混銑車の衝突の防止が行われているのが実情である。運行に携わる全てのオペレータに、車両同士の衝突事故を未然に防ぐ注意を促すようなシステムの構築が急望されているのが実情である。
【0012】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、複数のメッシュに分割された軌道上のうち2点のメッシュ間の情報と、軌道上を走行する車両に関する情報と、車両の位置情報とから車両衝突の可能性を確実に判断し、運行に携わるオペレータに車両衝突の危険性を通達することのできる車両衝突警告システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を達成するため、本発明の車両衝突警告システムにおいては、以下の技術的手段を講じた。
本発明の車両衝突警告システムは、工場内に敷設された軌道上を走行する第1の車両と第2の車両とが衝突する可能性を運行に携わるオペレータへ警告する車両衝突警告システムであって、前記車両衝突警告システムは、複数のメッシュに分割された軌道上において、2点のメッシュ間の距離が予め記録された「軌道情報D」と、前記軌道上を走行する車両に関する情報が予め記録された「車両情報」とを備えていて、前記軌道上を走行する第1の車両及び前記第2の車両の位置を示す「車両位置情報」を求める「車両位置情報検出手段」と、前記「車両位置情報検出手段」が算出した「車両位置情報」と「軌道情報D」と「車両情報」とを基に、前記第1の車両と前記第2の車両とが衝突する可能性を判定する「衝突判定手段」と、前記「衝突判定手段」が算出した車両衝突の可能性を、運行に携わるオペレータに警告として通達する「通達手段」と、を有し、前記衝突判定手段は、前記軌道情報Dと車両位置情報とから得られた前記第1の車両と第2の車両との間の距離が、前記第1の車両の車両情報に含まれる「車両に関する距離」と、前記第2の車両の車両情報に含まれる「車両に関する距離」と、を足し合わせた距離以下の場合に、「正面衝突の可能性あり」と判定し、前記一のメッシュと当該一のメッシュの隣に連結されている他のメッシュとの連結状態が記録された「連結情報L」と、前記連結情報Lを基に、軌道情報Dから前記連結状態が「分岐」又は「合流」とされた情報のみを抽出して得られた「斜め衝突判定用軌道情報E」と、を備えていて、前記衝突判定手段は、前記斜め衝突判定用軌道情報Eと車両位置情報とから得られた前記第1の車両と第2の車両との間の距離が、前記第1の車両の車両情報に含まれる「車両に関する距離」と、前記第2の車両の車両情報に含まれる「車両に関する距離」と、を足し合わせた距離以下の場合に、「斜め衝突の可能性あり」と判定することを特徴とする。
【0014】
好ましくは、前記車両情報は、前記車両の全長、車両の制動距離の少なくとも一つ以上を有するとよい。
好ましくは、前記車両位置情報検出手段は、前記車両に備えられたGPS及び/又はRFIDを用いて当該車両の位置を検出するように構成されているとよい。
【0015】
好ましくは、前記軌道情報Dには、一のメッシュと他のメッシュとの間に存在する分岐点から当該一のメッシュ及び他のメッシュまでの距離である分岐点距離が予め記録されており、前記衝突判定手段は、前記軌道情報Dと車両位置情報とから得られた前記第1の車両に関する分岐点距離が、当該第1の車両の車両情報に含まれる「車両に関する距離」以下であって、且つ前記軌道情報と車両位置情報とから得られた前記第2の車両に関する分岐点距離が、当該第2の車両の車両情報に含まれる「車両に関する距離」以下である場合に、「斜め衝突の可能性あり」と判定するとよい。
【0017】
好ましくは、前記一のメッシュと当該一のメッシュの隣に連結されている他のメッシュとの連結状態が記録された「連結情報L」と、前記連結情報Lを基に、軌道情報Dから前記連結状態が「終端」とされた情報のみを抽出して得られた「終端衝突判定用軌道情報F」と、を備えていて、前記衝突判定手段は、前記終端衝突判定用軌道情報Fと車両位置情報とから得られた前記車両と終端との間の距離が、前記車両の車両情報に含まれる「車両に関する距離」以下の場合に、「終端衝突の可能性あり」と判定するとよい。
【0018】
好ましくは、前記軌道が交差している点であるクロス点と、前記クロス点に繋がるメッシュの情報が記録された「クロス情報C」と、前記クロス情報Cを基に、軌道情報Dから前記クロス点に繋がるメッシュに対応する情報のみを抽出して得られた「クロス衝突判定用軌道情報G」と、を備えていて、前記衝突判定手段は、前記クロス衝突判定用軌道情報Gと車両位置情報とから得られた前記第1の車両と第2の車両との間の距離が、前記第1の車両の車両情報に含まれる「車両に関する距離」と、前記第2の車両の車両情報に含まれる「車両に関する距離」と、を足し合わせた距離以下の場合に、「クロス衝突の可能性あり」と判定するとよい。
【0019】
好ましくは、前記軌道上において複数に分割されたメッシュの属性情報が記録された「メッシュ情報」と、前記メッシュ情報から属性が「障害物」とされた情報のみを抽出して、当該抽出したメッシュMの属性情報と軌道情報Dとを基に作成された「障害物衝突判定用軌道情報H」と、を備えていて、前記衝突判定手段は、前記障害物衝突判定用軌道情報Hと車両位置情報とから得られた前記車両と前記障害物との間の距離が、前記車両の車両情報に含まれる「車両に関する距離」以下の場合に、「障害物衝突の可能性あり」と判定するとよい。
【0020】
好ましくは、前記車両衝突警告システムは、コンピュータを備えており、前記コンピュータ内には、前記車両位置情報検出手段と、前記衝突判定手段と、前記通達手段と、前記軌道情報及び車両情報が予め記録された記憶手段と、が設けられているとよい。
好ましくは、前記工場は製鉄所であって、前記車両は混銑車と当該混銑車に連結されている機関車であり、前記車両の車両情報は、前記機関車と当該機関車に連結されている混銑車とを含む車両の全長であるとよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、複数のメッシュに分割された軌道上のうち2点のメッシュ間の情報と、軌道上を走行する車両に関する情報と、車両の位置情報とから車両衝突の可能性を確実に判断し、運行に携わるオペレータに車両衝突の危険性を通達することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】高炉から出銑した溶銑を転炉まで搬送する方法を概略的に示した図である。
図2】本発明の車両衝突警告システムを概略的に示した図である。
図3】製鉄所内における混銑車の軌道及び分岐点を模式的に示し、この軌道を複数のメッシュに分割した図である。
図4】軌道上のメッシュのうち、2点のメッシュ間の情報をまとめた図である。
図5】機関車と混銑車との連結状況及び車両情報の一例を示した図である。
図6】軌道上を移動する2台の混銑車が、正面衝突する可能性を例示的に示した図である。
図7】軌道上のメッシュと分岐点のうち、一のメッシュと当該一のメッシュに近接する分岐点との間の情報をまとめた図である。
図8】軌道上を移動する2台の混銑車が、同一軌道上に進入して衝突する可能性を例示的に示した図である。
図9】第2実施形態における製鉄所内の混銑車の軌道、分岐点及びクロス点を模式的に示し、この軌道を複数のメッシュに分割した図である。
図10】第2実施形態の車両衝突警告システムに備えられる連結情報をまとめた図である。
図11】第2実施形態の車両衝突警告システムに備えられる斜め衝突判定用軌道情報の作成方法を示した図である。
図12】第3実施形態の車両衝突警告システムに備えられる終端衝突判定用軌道情報の作成方法を示した図である。
図13】軌道上を移動する2台の混銑車が、クロス点を共有する軌道上に進入して当該クロス点で衝突する可能性を例示的に示した図である。
図14】第4実施形態の車両衝突警告システムに備えられるクロス衝突判定用軌道情報の作成方法を示した図である。
図15】第5実施形態の車両衝突警告システムに備えられる各メッシュの属性情報をまとめた図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る車両衝突警告システム1の実施の形態を、図を基に説明する。なお、本実施形態の説明、図面において示された数値は例示的なものであり、本発明はこの数値に限定されるものではない。
[第1実施形態]
本発明の車両衝突警告システム1は、工場内の線路などの軌道R上において様々な原料や製品を搬送するに際し、その搬送中の搬送用車両同士の衝突を未然に防ぐ作業を支援するものである。
【0024】
以下、実施形態として、製鉄所を想定しつつ、溶銑を高炉5から転炉設備6まで搬送する混銑車3(トピードカー)の車両衝突警告システム1について説明する。
図1に示すように、混銑車3は、高炉5から出た精錬処理前の溶銑を転炉設備6まで運搬する運搬車であり、予め敷設された線路によって構成される軌道R上を移動することで溶銑を搬送する。混銑車3は、まず高炉5で溶銑を受銑する。その後、混銑車3は除滓棟に移動して、溶銑上のスラグが取り除かれる。除滓後に、混銑車3は転炉設備6まで移動して、溶銑を取鍋に装入する。
【0025】
溶銑搬送を行う混銑車3は、樽形状であって内部に溶銑が装入される容器本体と、容器本体を支持すると共に、軌道R上を移動する台車とを備えて構成されている。容器本体と台車とが一体となった混銑車3は軌道R上を移動する。
製鉄所の敷地内に敷設された軌道Rは、旅客鉄道用車両が走行できる線路とほぼ同じ構成であり、左右一対のレールを備えている。この軌道Rは、分岐点P(ポイント)を介して複数連結され、高炉5、予備精錬設備、転炉設備6などを結んでいる。各設備間を結んだ複数の軌道Rは、複雑に入り組んで敷設されている。軌道R上のポイントの切り替えによって、混銑車3が各設備に向かって走行できるようになっている。
【0026】
なお、混銑車3は、自走できないため、動力装置を有する機関車2に連結されている(以下、混銑車3と機関車2とが連結されたものを車両4とする)。混銑車3は、機関車2に牽引されたり、推進されたりして軌道R上を走行している。なお、第1実施形態を説明する上で、軌道Rを上り線と下り線とに区別する。ある軌道Rを、混銑車3が一方から他方へ移動することもあれば、他方から一方へ移動することもある。つまり、混銑車3は、機関車2により牽引されるようにして移動することもあれば、機関車2に押されながら移動する状況になることもある。
【0027】
軌道R上を走行する車両4の先頭には、当該車両4の操縦・運転を行う運行オペレータMBが乗務している。この運行オペレータMBが車両4を運転(操作)することで、混銑車3を所定の場所に移動させている。なお、機関車2が混銑車3の後方に連結された場合、運行オペレータMBは混銑車3の先頭から遠隔操作で機関車2を運転する。一方で、製鉄所の敷地内に設けられた管制室7には、車両4の配車を指示する管制オペレータMAが存在する。この管制オペレータMAは、効率的な車両4の配備、運行指示の指令を出す。
【0028】
とはいえ、運行オペレータMBや管制オペレータMA(両者を併せて、運転オペレータMA、MBと呼ぶこともある)による運行管理には、人為的ミスに起因する事故(例えば、車両4同士の衝突)の発生の可能性がある。そこで、本願発明の車両衝突警告システム1を用いることで、工場内に敷設された軌道R上を走行する複数の車両4に関し、車両4同士が衝突する可能性のある状況を検出し、運行に携わる運転オペレータMA,MBにその情報を通達することで、車両4(混銑車3)の安全な運行に資することができるようになる。
【0029】
以下、本願発明の車両衝突警告システム1について、説明を行う。
図2に示すように、本実施形態に係る車両衝突警告システム1は、管制室7内に設置されたコンピュータ8(サーバ)と、このコンピュータ8で算出された「車両衝突の可能性」を表示する表示器14(表示モニタ)が備えられている。
図2に示すように、表示モニタ14には、製鉄所内の軌道路線図(例えば、図4に示すような図)が表示されている。その軌道路線図には、軌道R上の全てのポイント(分岐点)と、そのポイントPの間の軌道Rとが表示されている。また、軌道R上を複数に分割したメッシュMも軌道路線図に表示されている。
【0030】
さらに、表示モニタ14には、軌道R上を走行する全ての車両4(混銑車3)の現在位置、運行方向が表示され、管制オペレータMAは、表示モニタ14の表示を見ながら車両4に関し配車の指令を出すことができるようになっている。加えて、この表示モニタ14には、車両4同士の衝突、すなわち「車両衝突の可能性」に対する警告が表示されるようになっている。管制オペレータMAは、表示モニタ14を目視することで、「車両衝突の可能性」を知ることができ、車両4の移動を止める指示などを運行オペレータMBに対して通達するなどの適切な対応を取ることが可能となる。
【0031】
この表示モニタ14と同内容を表示するモニタ(運行支援モニタ15)が、車両4の先頭、すなわち混銑車3乃至は混銑車3を牽引する機関車2の運転席に設けられることは好ましい。この場合、運行オペレータMBが運行支援モニタ15を目視することで、車両衝突の可能性を知ることができ、車両4の移動を止めるなどの適切な対応を取ることができる。
【0032】
管制室7内に設置された表示モニタ14における「車両衝突の可能性」の警告は、衝突する可能性の高い車両4から順に警告を出すようにするとよい。例えば、表示モニタ14上で、衝突する可能性が高い車両4の表示を赤色に点灯又は点滅(警告)させて、その後乃至はほぼ同時に、衝突する可能性が低い車両4の表示を黄色に点灯又は点滅表示(注意)をさせるとよい。また、衝突の可能性がない車両4の表示については、緑色に点灯(安
全)させるとよい。表示モニタ14による表示と併せて、ブザーなどの警告器による音での通達や、警告灯による光での通達を行うとよい。音、光による通達だけでもよい。
【0033】
ところで、「車両衝突の可能性」を正確に算出するためには、管制室7に配備されたコンピュータ8が全ての車両4の現在位置を確実に把握する必要がある。そこで、軌道R上を走行する全ての車両4(例えば、機関車2)には、GPS及び/又はRFIDを用いて当該車両4の位置や速度を検出する測位検出装置13が搭載されている。検出された車両4の位置や速度の情報は、無線LANなどの無線通信手段を用いて管制室7のコンピュータ8に転送されている。転送された車両4の位置や速度の情報は、管制室7に設けられたコンピュータ8内の記憶手段12に記憶される。
【0034】
管制室7内のコンピュータ8には、記憶手段12の他に、車両位置情報検出手段9と、衝突判定手段10と、通達手段11とが備えられ、車両位置情報検出手段9と衝突判定手段10により「車両衝突の可能性」を算出し、通達手段11を用いて運転オペレータMA、MBに通知するようになっている。コンピュータ8内に備えられたこれらの手段9、10、11、12は、ソフトウェアで実現されている。
【0035】
管制室7内のコンピュータ8において、「車両衝突の可能性」を算出するには、まずコンピュータ8に備えられた車両位置情報検出手段9を用いて、車両4の「車両位置情報」を算出する。「車両位置情報」とは、軌道上を走行する第1の車両4a及び第2の車両4bの位置を示すものである。
次に、車両位置情報検出手段9で算出された「車両位置情報」と、予めコンピュータ8内に記憶された「軌道情報D」及び「車両情報」とを基に、衝突判定手段10において、軌道R上を移動する第1の車両4aと第2の車両4bとが衝突する可能性を判定する。なお、「軌道情報D」は、複数のメッシュMに分割された軌道R上において、2点のメッシュM間の距離がオフラインで計算され記録されたものであり、「車両情報」は、軌道R上を走行する車両に関する情報が予め記録されたものである(詳細は後述)。
【0036】
このような情報を用いて、衝突判定手段10は、「軌道情報D」から得られた第1の車両4aと第2の車両4bとの間の距離が、第1の車両4aの「車両情報」と第2の車両4bの「車両情報」とを足し合わせた距離以下の場合、「車両衝突の可能性あり」と判定する。なぜ、衝突判定手段10がこのような処理を行うかといえば、通常、車両4の衝突を考える場合、2台の車両4が同位置に存在したときに「衝突」と考える。しかしながら、現実には、車両4は所定の長さを有しており、その長さの領域に対応する部分が重なった際には、衝突が発生することになる。また、車両4は瞬時には止まることができず、ブレーキ制動距離と言われる距離が必要である。したがって、この距離以内に存在する2台の車両4は同位置に存在しなくても、衝突の可能性があることになるからである。
【0037】
衝突判定手段10で判定された「車両衝突の可能性」は、通達手段11を用いて、モニタ(表示モニタ14や運行支援モニタ15)に表示され、全ての運転オペレータMA,MBに通達、警告するようにしている。
表示モニタ14や運行支援モニタ15を運転オペレータMA、MBが目視することで、仮に、運転オペレータMA、MBが経験の浅いものであったとしても、軌道R上における車両4の位置の把握、衝突の可能性を的確に判断でき、運転オペレータMA、MBに事故回避の通達を的確に指示できるようになる。
【0038】
以下、「車両位置情報」、「車両情報」、「軌道情報D」について、詳細に説明すると共に、衝突判定手段10での判定処理の詳細について述べる。
まず、車両が走行する軌道に関する情報である「軌道情報D」について、詳細に説明する。
図3には、製鉄所敷地内の一部の軌道Rを模式的に表現した軌道路線図が示されている。この軌道路線図は、管制室7内の表示モニタ14や車両4内に配備された運行支援モニタ15に表示されるものである。
【0039】
図3(a)に示すように、軌道路線図には、軌道Rが線分で示され、軌道Rと軌道Rの交差点乃至は分岐点、すなわち、ポイントP(軌道ポイント)が丸印で示されている。一のポイントPと他のポイントPとで挟まれた軌道Rは、ゾーンZと考えることもできる。
本実施形態の場合、ポイントはP1、P2・・・と表示され、ゾーンはZ(1)、Z(2)・・・と表示されている。また、車両4はV1、V2と表示されている。また、ポイントPの名称やゾーンZの名称も表示され、加えて、運行中の車両4の位置も四角印で示されるようになっている。なお、紙面の右側を軌道Rの上り線とし、左側を軌道Rの下り線とする。
【0040】
ところで、ポイントPにはゾーンZが必ず接している。ゾーンZに接しているポイントPの切り替えによって、車両4が、高炉5、予備精錬設備、転炉設備6などの各設備に向かって走行できるようになっている。しかし、ポイントPの切り替えをしても、ゾーンZを走行する車両4は、自由に方向転換することができない。例えば、図3(a)で、ゾーンZ(19)からゾーンZ(3)に向かって走行している第2の車両4bは、ポイントP9でゾーンZ(18)に進入することができない。つまり、車両4が方向転換をするには、2つのゾーンに挟まれる角度が鈍角(90°より大きい角度)である必要がある。
【0041】
次に、図3(b)に示すように、図3(a)の軌道路線図に示された軌道Rを複数のメッシュMに分割する。本実施形態の場合、メッシュはM(1)、M(2)・・・ と表示されている。なお、メッシュに対する番号(M(N)のN)の付し方は任意であり、順番に付与してもよく、適宜メッシュに番号を付してもよい。本実施形態の場合、メッシュMは、軌道路線図の線分を短い線を用いて10mごとに分割している。このメッシュMは、車両4の現在位置を詳細に示すものであって、製鉄所敷地内の軌道R上を走行する全ての車両4の現在位置を容易に把握できるようになっている。また、これらメッシュMは、「車両情報」に示された車両4ごとのメッシュM情報を参照できるようになっている。つまり、図3(b)を用いて、進行方向に対しての車両4の制動距離を把握することができるようになっている。
【0042】
また、軌道R上のメッシュM(9)の位置に第1の車両4a(V1)が通過しており、メッシュM(6)の位置に第2の車両4b(V2)が通過していることが示されている。それらの情報を、コンピュータ8に備えられた車両位置情報検出手段9を用いて、「車両位置情報」として算出する。
図4には、複数のメッシュMに分割された軌道R上において、2点のメッシュM間の軌道Rの距離が予め記録された(オフラインで求められた)「軌道情報D」が示されている。例えば、軌道R上のメッシュM(9)とメッシュM(6)との距離が、24メッシュ(240m)である場合、図4中のメッシュM(9)とメッシュM(6)とが交差する欄に「24」と記す。このように、「軌道情報D」には、2点のメッシュM間の距離が複数記されるようになっている。このような「軌道情報D」は、進行方向で車両4が通過可能な場合と通過不可能の場合があるため、オフラインで進行方向が上りである場合と進行方向が下りである場合とに分けて作成されている。
【0043】
例えば、図3(b)に示すゾーンZ(1)の上りにおいては、ゾーンZ(1)を走行中の車両がゾーンZ(2),ゾーンZ(3),ゾーンZ(4)のいずれかに進入可能である。また、ゾーンZ(1)の下りにおいては、ゾーンZ(1)を走行中の車両4がゾーンZ(7),ゾーンZ(8)のいずれかに進入可能である。このような情報を踏まえ、「軌道情報D」は少なくとも2種類以上作成される。つまり、「起動情報」は、2点のメッシュM間の距離の情報であるとともに、あるゾーンZ上を走行する車両4が次にどのゾーンZに侵入することが可能かを示す道のりの情報でもある。
【0044】
上記した「軌道情報D」は、コンピュータ8内の記憶手段12に予め記録され、後述する衝突判定手段10に用いられるようになっている。
次に、車両4に関しての「車両情報」について、詳細に説明する。
「車両情報」は、車両4の全長、車両4の制動距離、車両4の重量(溶銑の有無)など車両4に関する情報のうち、少なくとも一つ以上を有するものである。
【0045】
図5には、軌道R上を移動する機関車2と混銑車3の連結状況が示されている。この図から明らかなように、機関車2は混銑車3を牽引したり、混銑車3の後側から推進したりして、混銑車3を移動させている。本実施形態の説明では、機関車2の全長を約10mとし、混銑車3の全長を約27mとする。また、晴天時における機関車2のブレーキ制動距
離を50mとする。なお、天候・温度などの気象条件によって、機関車2のブレーキ制動距離は変動するものとする。例えば、雨天時の場合、機関車2のブレーキ制動距離を80mとする。
【0046】
図5(a)には、1台の機関車2が2台の混銑車3を牽引している様子が示されており、これら車両4の全長が約64mとなっている。そこで、図5(a)の車両4は、「車両情報」として、6メッシュ乃至は7メッシュといった情報を保有することとなる(10m=1メッシュ)。
また、図5(a)の機関車2のブレーキ制動距離が、晴天時の場合50m、雨天時の場合、80mであるとすると、図5(a)の車両4は、「車両情報」として、5メッシュ乃至は8メッシュといった情報を保有することとなる。
【0047】
車両4の正面衝突を考える場合、機関車2のブレーキ制動距離が重要であり、「車両情報」の5メッシュ(晴天時)、8メッシュ(雨天時)が重要となる。車両の追突を考える場合、車両4の長さが重要であり、「車両情報」の6メッシュ乃至は7メッシュに着目する。
つまり、図5(a)のような車両4の正面衝突の危険性を考える場合、車両4の位置だけでなく、機関車2のブレーキ制動距離の5メッシュ、8メッシュを合わせて考慮する必要がある。また、図5(a)のような車両4の背面衝突(追突)の危険性を考える場合、車両4の位置だけでなく、車両4の長さである6メッシュ乃至は7メッシュを考える必要がある。より安全を期すれば、機関車2のブレーキ制動距離の5メッシュ、8メッシュも同時に考慮する必要がある。
【0048】
図5(b)には、1台の機関車2が1台の混銑車3を押している様子を示されており、これら車両4の全長が約37mとなっている。そこで、図5(b)の車両4は、「車両情報」として、3メッシュ乃至は4メッシュといった情報を保有することとなる。
また、図5(b)の車両4のブレーキ制動距離が50m(晴天時)であるとすると、図5(b)の車両4は、「車両情報」として、ブレーキ制動距離の5メッシュに混銑車3の長さである3メッシュ乃至は4メッシュを足し合わせた8メッシュ乃至は9メッシュといった情報を保有することとなる。
【0049】
一方、図5(b)の車両4のブレーキ制動距離が80m(雨天時)であるとすると、図5(b)の車両4は、「車両情報」として、ブレーキ制動距離の8メッシュに混銑車3の長さである3メッシュ乃至は4メッシュを足し合わせた11メッシュ乃至は12メッシュといった情報を保有することとなる。
ここで、図5(b)のような車両4の正面衝突の危険性を考える場合、車両4の位置だけでなく、機関車2のブレーキ制動距離の5メッシュ、8メッシュと、混銑車3の長さである3メッシュ乃至は4メッシュを合わせて考慮する必要がある。また、図5(b)のような車両4の背面衝突(追突)の危険性を考える場合、車両4の位置だけ考慮する必要がある。なお、図5(b)のような車両4の場合、運行オペレータMBが先頭の混銑車3に乗車することがある。そのとき、運行オペレータMBは、遠隔操作で機関車2を運転するようになっている。
【0050】
上記した「車両情報」は、コンピュータ8内の記憶手段12に予め記録され、後述する衝突判定手段10に用いられるようになっている。
次に、軌道R上を走行する車両4の位置を示す「車両位置情報」について、詳細に説明する。
図3には、軌道路線図において、軌道R上を第1の車両4a及び第2の車両4bがゾーンを走行中であることが「車両位置情報」として示されている。
【0051】
図3(b)において、第1の車両4a(V1)はゾーンZ(1)をポイントP5へ向けて(上り線方向)走行しており、第2の車両4b(V2)はゾーンZ(19)をポイントP9へ向けて(下り線方向)走行している。これら第1の車両4a、第2の車両4bの走行状況を表示するにあたっては、第1の車両4a、第2の車両4bには、GPS及び/又はRFIDタグを利用した測位検出装置13が搭載され、第1の車両4a、第2の車両4bの位置や速度を検出している。検出された第1の車両4a、第2の車両4bの位置や速
度の情報は、無線通信手段を用いて管制室7に設けられたコンピュータ8に転送され、記憶手段12に記憶される。
【0052】
記憶手段12に記憶された第1の車両4a、第2の車両4bの走行情報を基に、車両位置情報検出手段9は、第1の車両4a、第2の車両4bに対する「車両位置情報」を求める。第1の車両4aの「車両位置情報」は、「メッシュM(9)に存在しポイントP5(上り線方向)へ向かいつつ、現在ゾーンZ(1)を通過中である。ポイントP5においての第1の車両4aは、ゾーンZ(2)、ゾーンZ(3)、ゾーンZ(4)へ行くことが可能である」とされる。
【0053】
同様に、第2の車両4bの「車両位置情報」は、「メッシュM(6)に存在しポイントP9(下り線方向)へ向かいつつ、現在ゾーンZ(19)を通過中である。ポイントP9を通過後は、ゾーンZ(3)へ行くことが可能である」とされる。
以上得られた、「車両位置情報」が表示モニタ14の軌道路線図上に表示されると、それを見た管制室7の管制オペレータMAは、軌道R上を走行する車両4に対して、的確な運行指示(配車指示)を運行オペレータMBに行うことができる。
【0054】
以上のようにして得られた「車両位置情報」などを基に、管制室7内のコンピュータ8における衝突判定手段10では、軌道R上を走行する車両4同士が衝突する可能性を算出し、運行オペレータMBへ警告する処理が行われる。係る「車両衝突の可能性」の判定処理について、事例を挙げて説明する。
衝突判定手段10は、予め記録された「軌道情報D」と、車両位置情報検出手段9で検出された「車両位置情報」と、から得られた第1の車両4aと第2の車両4bとの間の距離が、第1の車両4aの「車両情報」に含まれる「車両に関する距離」と、第2の車両4bの「車両情報」に含まれる「車両に関する距離」と、を足し合わせた距離以下の場合に、「車両衝突の可能性あり」と判定するものである。
【0055】
なお、本実施形態では、晴天時の場合とし、図5(a)に示すように、車両4は1台の機関車2が2台の混銑車3を牽引するものとする。ゆえに、車両4の全長は64mとされ、この「車両情報」として6〜7メッシュとされている。また、機関車2の制動距離は50mとされ、この「車両情報」として5メッシュとされている。
[事例1−1]
図3には、軌道路線図において、2台の車両4a、車両4bがゾーンを走行中であることが示されており、図6には、軌道R上を走行する車両4同士が正面衝突する可能性を模式的に示されている。
【0056】
コンピュータ9に備えられた衝突判定手段10は、予め記憶手段12に記録された「軌道情報D」と、同様に予め記憶手段12に記録された第1の車両4a及び第2の車両4bの「車両情報」と、車両位置情報検出手段9で検出された(リアルタイムで求められた)軌道R上を走行する第1の車両4a及び第2の車両4bの「車両位置情報」とを基に、軌道R上を走行する第1の車両4aと第2の車両4bとが衝突する可能性を判定する。
【0057】
詳しくは、図3図4を参照するに、車両位置情報検出手段9により検出された第1の車両4a(V1)の「車両位置情報」(メッシュM(9))及び第2の車両4b(V2)の「車両位置情報」(メッシュM(6))と、予め記録された「軌道情報D」とから、ゾーンZ(1)上のメッシュM(9)とゾーンZ(19)上のメッシュM(6)との間の距離が24メッシュ(240m)であることがわかる。
【0058】
そして、車両位置情報検出手段9が算出した「車両位置情報」と、予め記録された「軌道情報D」及び「車両情報」とを基に、第1の車両4aと第2の車両4bとが衝突する可能性を判定する。
図6(a)に示すように、予め記憶手段12に記録された「軌道情報D」と、車両位置情報検出手段9で検出された(リアルタイムで求められた)「車両位置情報」と、から得られた第1の車両4a(メッシュM(9))と第2の車両4b(メッシュM(6))との間の距離が24メッシュであり、第1の車両4aの「車両情報」(晴天時・正面衝突の場合、ブレーキ制動距離=5メッシュ)と第2の車両4bの「車両情報」(晴天時・正面衝突の場合、ブレーキ制動距離=5メッシュ)とを足し合わせた距離(10メッシュ)であ
る。この場合、2点のメッシュ間の距離が、2台の車両4a、車両4bの「車両情報」を足し合わせた距離以上であることがわかる(24メッシュ>10メッシュ)。つまり、2台の車両4a、車両4bは、遠く離れた位置にあることを示し、言い換えれば、車両4同士の正面衝突の可能性が低いことがわかる(衝突なし)。
【0059】
この結果により、衝突判定手段10は、第1の車両4aと第2の車両4bとが衝突する可能性が低いことを、通達手段11を通じて管制オペレータMA及び運行オペレータMBに通達する。
次に、第1の車両4a及び、第2の車両4bがこのまま前方に進行すると、第1の車両4a及び第2の車両4bはゾーンZ(3)に進入することを考える。例えば、第1の車両4aがゾーンZ(3)上のメッシュM(11)に到達し(上り線方向)、第2の車両4bがゾーンZ(19)上のメッシュM(2)に到達する(下り線方向)場合を考える。
【0060】
衝突判定手段10は、車両位置情報検出手段9により検出された第1の車両4a(V1)の「車両位置情報」(メッシュM(9))及び、第2の車両4b(V2)の「車両位置情報」(メッシュM(6))により、第1の車両4a及び第2の車両4bが、ともにゾーンZ(3)に進入し、正面衝突する可能性があることを認識する。例えば、第1の車両4aがゾーンZ(3)上のメッシュM(11)に到達し、第2の車両4bがゾーンZ(19)上のメッシュM(2)に到達すると考えると、予め記録された「軌道情報D」により、メッシュM(11)とメッシュM(2)との間の距離が9メッシュ(90m)であることがわかる。
【0061】
また、「軌道情報D」から、第1の車両4aが通過するポイントP5には、ゾーンZ(2)、ゾーンZ(3)、ゾーンZ(4)の3つのゾーンが接続され、第2の車両4bが通過するポイントP9には、ゾーンZ(3)、ゾーンZ(18)の2つのゾーンが接続されていることがわかる。しかし、ポイントP9においては、Z(19)とZ(18)とは鋭角に接続されており、第2の車両4bはゾーンZ(19)からゾーンZ(18)に進行することはできない。つまり、第2の車両4bはゾーンZ(3)に直進するのみである。
【0062】
そして、衝突判定手段10は、第1の車両4aと第2の車両4bとが衝突する可能性を判定する。
図3図6(b)に示すように、予め記憶手段12に記録された「軌道情報」と車両位置情報検出手段9で検出された(リアルタイムで求められた)「車両位置情報」と、から得られた第1の車両4a(メッシュM(11))と第2の車両4b(メッシュM(2))との間の距離が9メッシュであり、第1の車両4aの「車両情報」(晴天時・正面衝突の場合、ブレーキ制動距離=5メッシュ)と第2の車両4bの「車両情報」(晴天時・正面衝突の場合、ブレーキ制動距離=5メッシュ)とを足し合わせた距離(10メッシュ)である。この場合、2点のメッシュM間の距離が、2台の車両4a、車両4bの「車両情報」を足し合わせた距離以下であることがわかる(9メッシュ<10メッシュ)。つまり、2台の車両4a、車両4bがゾーンZ(3)に進入すると、車両4同士の正面衝突の可能性があることがわかる。
【0063】
この結果により、衝突判定手段10は、第1の車両4aと第2の車両4bとが衝突することを回避する指示を、通達手段11を通じて管制オペレータMA及び運行オペレータMBに通達する。また、必要であれば警告器を介して、警告音や警告光を発するようにする。これにより、運行に携わる運転オペレータMA、MBは、衝突の可能性を確認し、衝突事故を回避する動作を行うことができる。
【0064】
なお、雨天時においての車両4同士の正面衝突の回避については、機関車2のブレーキ制動距離を考慮する必要がある。この場合、機関車2のブレーキ制動距離は、80mであって、8メッシュとするとよい。これにより、雨天時の車両4の正面衝突の可能性を確実に検知することが可能となる。
[事例1−2]
次に、車両4が図5(b)のように連結されている場合における車両4同士の背面衝突、すなわち追突について、説明する。
【0065】
コンピュータ9に備えられた衝突判定手段10は、予め記憶手段12に記録された「軌
道情報D」と、同様に予め記憶手段12に記録された第1の車両4a及び第2の車両4bの「車両情報」と、リアルタイムで検出した軌道R上を走行する第1の車両4a及び第2の車両4bの「車両位置情報」とを基に、軌道R上を走行する第1の車両4aと第2の車両4bとが背面衝突(追突)する可能性を判定する。
【0066】
メッシュM(9)に存在する第1の車両4aがこのまま前方(上り線方向)に進行すると、上り線方向にむけて走行する第2の車両4bに追突する可能性を考える。例えば、第1の車両4aがメッシュM(9)に存在していて、第2の車両4bがメッシュM(11)に存在している場合を考える。
まず、予め記録された「軌道情報D」により、メッシュM(9)とメッシュM(11)との間の距離が9メッシュ(90m)であることがわかる。また、その「軌道情報D」から、第1の車両4aが通過するポイントP5には、ゾーンZ(2)、ゾーンZ(3)、ゾーンZ(4)の3つのゾーンが接続され、第2の車両4bが通過するポイントP9には、ゾーンZ(3)、ゾーンZ(18)の2つのゾーンが接続されていることがわかる。
【0067】
次に、衝突判定手段10は、第1の車両4aと第2の車両4bとが衝突する可能性を判定する。
図3に示すように、予め記憶手段12に記録された「軌道情報D」と、車両位置情報検出手段9で検出された(リアルタイムで求められた)「車両位置情報」と、から得られた第1の車両4a(メッシュM(9))と第2の車両4b(メッシュM(12))との間の距離が7メッシュであり、第1の車両4aの「車両情報」(晴天時・背面衝突の場合、ブレーキ制動距離+1台の混銑車3の長さ=5メッシュ+3メッシュ=8メッシュ)と第2の車両4bの「車両情報」(晴天時・背面衝突の場合、同方向に向けて走行しているため、0メッシュ)とを足し合わせた距離(8メッシュ)である。この場合、2点のメッシュ間の距離が、2台の車両4a、車両4bの「車両情報」を足し合わせた距離以下であることがわかる(7メッシュ<8メッシュ)。つまり、第1の車両4aがゾーンZ(3)上において、第2の車両4bに背面衝突(追突)する可能性があることがわかる。
【0068】
この結果により、衝突判定手段10は、第1の車両4aと第2の車両4bとが追突することを回避する指示を、通達手段11を通じて、管制オペレータMA及び運行オペレータMBに通達する。
なお、雨天時の追突の場合、機関車2のブレーキ制動距離は、80mであって、8メッシュとするとよい。これにより、雨天時の車両4の追突の可能性を確実に検知することが可能となる。
[事例2]
次に、ゾーンを走行している第1の車両4aに対して、別のゾーンの第2の車両4bが合流して衝突する可能性、すなわち、第1の車両4aの側方に対して第2の車両4bが斜め方向から衝突する(以下、「斜め衝突」と呼ぶ。)可能性ついて、説明する。
【0069】
図7には、「斜め衝突」を判定するための「軌道情報D」が示されており、図3([事例1−1][事例1−2]における軌道情報D)に対応するものとなっている。
すなわち、図7には、図3に示されている複数のメッシュMに分割された軌道路線図において、一のメッシュMと他のメッシュMとの間に存在するポイントP(分岐点)から当該一のメッシュ及び他のメッシュまでの距離である分岐点距離が予め記録された(オフラインで求められた)「軌道情報D」が示されている。つまり、「斜め衝突」に関する「軌道情報D」は、一のメッシュMと当該一のメッシュMに近接するポイントP(分岐点)の間の距離である分岐点距離が予め記録されている。
【0070】
例えば、ゾーンZ(11)上のメッシュM(4)とこのメッシュM(4)に最も近い分岐点P8との距離が、7メッシュ(70m)ある場合、図7中のメッシュM(4)とメッシュM(5)とが交差する欄に「7」と記す。また、ゾーンZ(10)上のメッシュM(5)とこのメッシュM(5)に最も近いポイントP8との距離が、2メッシュ(20m)ある場合、図7中のメッシュM(4)とメッシュM(5)とが交差する欄に「2」と記す。つまり、図7中のメッシュM(4)とメッシュM(5)とが交差する欄には、(7、2)が示されるようになる。
【0071】
このように、「軌道情報D」には、一のメッシュと当該一のメッシュに最も近い(近接)ポイントP(分岐点)の間の距離が複数記されるようになっている。このような「軌道情報D」は、2台の車両4の進行方向とその逆方向ごとそれぞれに分けて、4種類作成されている。例えば、第1の車両4aの進行方向が上りである場合の「軌道情報D」と、進行方向が下りである場合の「軌道情報D」とに分けて作成される。また、第1の車両4bの進行方向が上りである場合の「軌道情報D」と、進行方向が下りである場合の「軌道情報D」とに分けて作成される。
【0072】
この「軌道情報D」は、コンピュータ8内の記憶手段12に予め記録され、衝突判定手段10に用いられるようになっている。
次に、軌道R上を走行する車両4の位置を示す「車両位置情報」について、詳細に説明する。
図3に示すような軌道路線図には、軌道R上を第1の車両4a及び第2の車両4bがゾーンを走行中であることがリアルタイムで検出された(オンラインで求められた)「車両位置情報」が示されている。
【0073】
例えば、第1の車両4a(V1)はゾーンZ(11)上のメッシュM(4)を通過し、第2の車両4b(V2)はゾーンZ(10)上のメッシュM(5)の位置を通過しているとする(図8参照)。それらの情報を、コンピュータ8に備えられた車両位置情報検出手段9を用いて、「車両位置情報」として算出される
例えば、図8において、第1の車両4a(V1)はゾーンZ(11)上をポイントP8へ向けて走行しており、第2の車両4b(V2)はゾーンZ(10)上をポイントP8へ向けて走行している。これら第1の車両4a、第1の車両4bの走行状況を表示するにあたっては、第1の車両4a、第1の車両4bには、GPS及び/又はRFIDタグを利用した測位検出装置13が搭載され、第1の車両4a、第1の車両4bの位置や速度を検出している。検出された第1の車両4a、第1の車両4bの位置や速度の情報は、無線通信手段を用いて管制室7に設けられたコンピュータ8に転送され、記憶手段12に記憶される。
【0074】
記憶手段12に記憶された第1の車両4a、第1の車両4bの走行情報を基に、車両位置情報検出手段9は、車両4a、車両4bに対する「車両位置情報」を求める。第1の車両4aの「車両位置情報」は、「メッシュM(4)に存在しポイントP8(下り線方向)へ向かいつつ、現在ゾーンZ(11)を通過中である。ポイントP8においての第1の車両4aは、ゾーンZ(9)のみ行くことが可能である」とされる。
【0075】
同様に、第2の車両4bの「車両位置情報」は、「メッシュM(5)に存在しポイントP8(下り線方向)へ向かいつつ、現在ゾーンZ(10)を通過中である。ポイントP8を通過後は、ゾーンZ(9)のみ行くことが可能である」とされる。
以上のようにして得られた「車両位置情報」などを基に、管制室7内のコンピュータ8における衝突判定手段10では、軌道R上を走行する車両4同士が「斜め衝突」する可能性を算出し、運行オペレータMBへ警告する処理が行われる。係る車両衝突の可能性の判定処理について、事例を挙げて説明する。
【0076】
衝突判定手段10は、予め記録された「軌道情報D」と車両位置情報検出手段9で検出された(リアルタイムで求められた)「車両位置情報」とから得られた第1の車両4aに関する分岐点距離が、当該第1の車両4aの「車両情報」に含まれる「車両に関する距離」以下であって、且つ「軌道情報D」と「車両位置情報」とから得られた第2の車両4bに関する分岐点距離が、当該第2の車両4bの「車両情報」に含まれる「車両に関する距離」以下である場合に、「斜め衝突の可能性あり」と判定するものである。
【0077】
図8には、軌道R上を走行する車両4同士が「斜め衝突」する可能性を模式的に示されており、第1の車両4a及び第2の車両4bは、ともに下り線方向に向かって走行している。なお、図8では、2台の車両4は1台の機関車2が1台の混銑車3を牽引するものとする。なお、気象条件を晴天時として説明する。
まず、「斜め衝突」の危険性がない場合について説明する。
【0078】
まず、車両位置情報検出手段9により検出された第1の車両4a(V1)の「車両位置
情報」(メッシュM(4))と、予め記録された「軌道情報D」とから、ゾーンZ(11)の一方端にあるポイントP8との間の距離が7メッシュ(70m)であることがわかる。また、車両位置情報検出手段9により検出された第2の車両4b(V2)の「車両位置情報」(メッシュM(5))と、予め記録された「軌道情報D」とから、ゾーンZ(10)の一方端にあるポイントP8との間の距離が2メッシュ(20m)であることがわかる。
【0079】
そして、衝突判定手段10は、車両位置情報検出手段9が算出した「車両位置情報」と、予め記録された「軌道情報D」及び「車両情報」とを基に、第1の車両4aと第2の車両5bとが「斜め衝突」する可能性を判定する。
図8(a)に示すように、予め記憶手段12に記録された「軌道情報D」と、車両位置情報検出手段9で検出された(リアルタイムで求められた)「車両位置情報」と、から得られた第1の車両4a(メッシュM(4))に関する分岐点距離(メッシュM(4)とP8との距離)が、7メッシュであり、予め記憶手段12に記録された第1の車両4aの「車両情報」(混銑車3は空の状態の状態であり、ブレーキ制動距離は50mである。)は5メッシュである。この場合、第1の車両4a(メッシュM(4))に関するポイントP(分岐点)の距離が、第1の車両4aの「車両情報」(5メッシュ)以上であることがわかり(7メッシュ>5メッシュ)、現状況下では、第1の車両4aがポイントP8を超えて、ゾーンZ(9)へ侵入しないことがわかる。
【0080】
同様に、予め記憶手段12に記録された「軌道情報D」と、車両位置情報検出手段9で検出された(リアルタイムで求められた)「車両位置情報」とから得られた第2の車両4b(メッシュM(5))に関する分岐点距離(メッシュM(5)とP8との距離)が、2メッシュである。
ここで、メッシュM(5)における第2の車両4bの「車両情報」は、ブレーキ制動距離(5メッシュ)と、第2の車両4bの全長(4メッシュ)とを足し合わせてし、9メッシュとする。この場合、第1の車両4b(メッシュM(5))に関する分岐点の距離が、第1の車両4bの「車両情報」(9メッシュ)以下であることがわかり(2メッシュ<9メッシュ)、現状況下では、第2の車両4bがポイントP8を超えて、ゾーンZ(9)へ侵入することがわかるが、前述のように、第1の車両4aがポイントP8を超えて、ゾーンZ(9)へ侵入しないため、第1の車両4aが第1の車両4bに対して、「斜め衝突」する可能性が低いことがわかる(衝突なし)。
【0081】
次に、「斜め衝突」の可能性大の場合について説明する。
図8(b)に示すように、メッシュM(4)に存在する第1の車両4aがこのまま前方(下り線方向)に進行すると、ゾーンZ(9)に向けて(下り線方向)走行する第2の車両4bの側方に衝突する可能性を考える。ここで、第2の車両4bはメッシュM(5)に存在するとする。
【0082】
まず、車両位置情報検出手段9により検出された第1の車両4a(V1)の「車両位置情報」(メッシュM(4))と、予め記録された「軌道情報D」とから、ゾーンZ(11)の一方端にあるポイントP8との間の距離が7メッシュ(70m)であることがわかる。また、車両位置情報検出手段9により検出された第2の車両4b(V2)の「車両位置情報」(メッシュM(5))と、予め記録された「軌道情報D」とから、ゾーンZ(10)の一方端にあるポイントP8との間の距離が2メッシュ(20m)であることがわかる。
【0083】
そして、衝突判定手段10は、車両位置情報検出手段9が算出した「車両位置情報」と、予め記録された「軌道情報D」及び「車両情報」とを基に、第1の車両4aと第2の車両5bとが「斜め衝突」する可能性を判定する。
図8(b)に示すように、予め記憶手段12に記録された「軌道情報D」と、車両位置情報検出手段9で検出された(リアルタイムで求められた)「車両位置情報」と、から得られた第1の車両4a(メッシュM(4))に関する分岐点距離(メッシュM(4)とP8との距離)が、7メッシュであり、予め記憶手段12に記録された第1の車両4aの「車両情報」(例えば、混銑車3が満の状態であり、ブレーキ制動距離は90mである。)
は9メッシュである。この場合、第1の車両4a(メッシュM(4))に関する分岐点の距離が、第1の車両4aの「車両情報」(9メッシュ)以下であることがわかり(7メッシュ<9メッシュ)、第1の車両4aが分岐点(P8)を超えて、ゾーンZ(9)へ侵入することがわかる。
【0084】
同様に、予め記憶手段12に記録された「軌道情報D」と、車両位置情報検出手段9で検出された(リアルタイムで求められた)「車両位置情報」とから得られた第2の車両4b(メッシュM(5))に関する分岐点距離(メッシュM(5)とP8との距離)が、2メッシュであり、予め記憶手段12に記録された第2の車両4bの「車両情報」(ブレーキ制動距離、車両4bの全長)は9メッシュである。この場合、第1の車両4b(メッシュM(5))に関する分岐点の距離が、第2の車両4bの「車両情報」(9メッシュ)以下であることがわかり(2メッシュ<9メッシュ)、第2の車両4bがポイントP8を超えて、ゾーンZ(9)へ侵入することが明らかとなる。以上より、第1の車両4aの「車両情報」(9メッシュ)と第2の車両4bの「車両情報」(9メッシュ)とが、ゾーンZ(9)上において、重複するようになっている。つまり、第1の車両4aが第1の車両4bに対して、「斜め衝突」する可能性が高いことがわかる(衝突あり)。
【0085】
この結果により、衝突判定手段10は、第1の車両4aが第2の車両4bに対して「斜め衝突」することを回避する指示を、通達手段11を通じて管制オペレータMA及び運行オペレータMBに通達する。また、必要であれば警告器を介して、警告音や警告光を発するようにする。それにより、運転オペレータMA、MBは、衝突の可能性を確認し、「斜め衝突」を回避する動作を行うことができる。
【0086】
なお、雨天時の「斜め衝突」の場合、機関車2のブレーキ制動距離は、80mであって、8メッシュとするとよい。これにより、雨天時の車両4の追突の可能性を確実に検知することが可能となる。
以上の事例より、本実施形態の車両衝突警告システム1は、複数のメッシュMに分割された各軌道Rの情報及び各ポイントP(分岐点)に対する情報をモニタに示しておき、そのモニタに車両4の位置情報を表示させることで、「車両衝突の可能性」の判断を容易にすることができる。
【0087】
すなわち、コンピュータ7によって、「軌道情報D」と「車両情報」と「車両位置情報」の3つの情報から「車両衝突の可能性」を確実に判定することができる。また、管制オペレータMAは、「車両衝突の可能性」が表示された表示モニタ14を目視することで、車両4を運行している運行オペレータMBに「車両衝突の可能性」を確実に通達することができ、この車両4の安全運行を支援するものとなっている。
[第2実施形態]
次に、本発明に係る車両衝突警告システム1における第2実施形態について、図に基づき説明する。
【0088】
図9は、第2実施形態における製鉄所内の車両4(機関車2と混銑車3)の軌道R、分岐点P及びクロス点C1を模式的に示し、この軌道Rを複数のメッシュMに分割した図である。図9は、図3に示す軌道Rとは若干異なるものの、第2実施形態を説明するために最適な軌道路線図である。
図10は、第2実施形態の車両衝突警告システム1に備えられる連結情報Lをまとめた図であり、図11は、第2実施形態の車両衝突警告システム1に備えられる斜め衝突判定用軌道情報Eの作成方法を示した図である。
【0089】
図10図11に示すように、第2実施形態に係る車両衝突警告システム1の構成は、車両4の「斜め衝突」の可能性を確実に検出するものであって、この点で第1実施形態と大きく異なっている。なお、本実施形態でいう「斜め衝突」とは、第1の車両4aの側方に対して第2の車両4bが斜め方向から衝突することである。詳しくは、軌道R上のあるメッシュMが、分岐点Pを介して別のメッシュMに合流するように連結されていて、その分岐点Pの先にはメッシュMが1つ連結されている軌道Rにおいて、あるメッシュMを走行している第1の車両4aに対して、別のメッシュMを走行している第2の車両4bが合流して衝突し、2台の車両4が先にある1つの分岐点Pを取り合うような状況での衝突を
いう。
【0090】
具体的には、第2実施形態の車両衝突警告システム1は、軌道R上を走行する2台の車両4が正面衝突(追突も含む)する可能性を判定する際に用いられる「正面衝突判定用軌道情報D」(軌道情報D)に加えて、一のメッシュMと当該一のメッシュMの隣に連結されている他のメッシュMとの連結状態が記録された「連結情報L」と、連結情報Lを基に、軌道情報Dから連結状態が「分岐」又は「合流」とされた情報のみを抽出して得られた「斜め衝突判定用軌道情報E」と、を備えている。すなわち、第2実施形態の車両衝突警告システム1は、軌道R上を走行する2台の車両4が衝突する可能性を判定する際に用いられる情報が第1実施形態と大きく異なっている。
【0091】
なお、第2実施形態に係る車両衝突警告システム1のそれ以外の部分は、第1実施形態のシステム1(図2参照)と略同じである。例えば、車両情報が、車両4の全長、車両4の制動距離、車両4の重量(溶銑の有無)の少なくとも一つ以上を有していたり、車両位置情報検出手段9が、車両4に備えられたGPS及び/又はRFIDを用いて当該車両4の位置を検出するように構成されていたりする部分が、第1実施形態のシステム1と略同じである。したがって、第1実施形態のシステム1と略同じ部分についての詳細な説明は、繰返さない。
【0092】
また、第2実施形態のシステム1を説明する上で、軌道Rを上り線(+方向)と下り線(−方向)とに区別する(図9参照)。ある軌道Rを、車両4が一方(上り線側)から他方(下り線側)へ移動することもあれば、他方(下り線側)から一方(上り線側)へ移動することもある。つまり、車両4は、混銑車3が機関車2により牽引されるようにして移動することもあれば、混銑車3が機関車2に押されながら移動する状況になることもある。なお、軌道R上を走行する車両4(混銑車3及び機関車2)は、その場で車両自身が反転して走行することはない。
【0093】
第2実施形態の特徴である「斜め衝突判定用軌道情報E」(斜め衝突判定用マトリックスE)を作成するにあたっては、まず「連結情報L」を作成する。
図10に示すように、軌道Rを複数分割したメッシュMの連結情報L及び各メッシュMの長さをまとめたものを作成する。
メッシュMの連結情報Lは、軌道R上の一のメッシュMと、その一のメッシュMに隣り合う他のメッシュMとが、どのように連結されているかなどの情報をまとめたもの(斜め衝突用マトリックスEを作成するための入力情報)であり、各メッシュMのおける上り線側の連結に関する情報L(+)と、各メッシュMのおける下り線側の連結に関する情報L(−)とに分けて作成される。
【0094】
まず、各メッシュMのおける上り線側の連結情報L(+)を作成する。
図9を見てみると、例えば、メッシュM2の上り線側の延長線上には、メッシュM3が一直線に連結されている。また、メッシュM2の上り線側の右側には、メッシュM40が上り線方向に向かって分岐(略45°方向)するように連結されている。それ故、メッシュM2の上り線側の連結情報L(+)を図10の中央のように記載する。
【0095】
図10に示すように、上り線側の連結に関する情報L(+)には、メッシュM2の延長線方向(0方向)の欄にメッシュM3が記載され、メッシュM2の右方向の欄にメッシュM40が記載され、メッシュM2の属性の欄に「分岐」の情報が記載されている。
また、図9を見てみると、メッシュM6の上り線側の延長線上においては、メッシュM7が一直線に連結されていて、そのメッシュM6とメッシュM7が一直線に連結されているところにメッシュM43が合流するように連結されている。それ故、メッシュM6の上り線側の連結情報L(+)を図10の中央のように記載する。
【0096】
図10に示すように、上り線側の連結情報L(+)には、メッシュM6の延長線方向(0方向)の欄にメッシュM7が記載され、メッシュM6の属性の欄に「合流」の情報が記載されている。
このような手順で、各メッシュMのおける上り線側の全ての連結情報L(+)を作成する。続いて、同様な手順で、メッシュMの下り線側の連結情報L(−)を作成する。
【0097】
図9を見てみると、例えば、メッシュM7の下り線側の延長線上には、メッシュM6が
一直線に連結されている。また、メッシュM7の下り線側の左側には、メッシュM43が分岐(略45°方向)するように連結されている。それ故、メッシュM7の下り線側の連結情報L(−)を図10の右側のように記載する。
図10に示すように、下り線側の連結情報L(−)には、メッシュM7の延長線方向(0方向)の欄にメッシュM6が記載され、メッシュM7の左方向の欄にメッシュM43が記載され、メッシュM7の属性の欄に「分岐」の情報が記載されている。
【0098】
また、図9を見てみると、メッシュM9の下り線側の延長線上においては、メッシュM8が一直線に連結されていて、そのメッシュM9とメッシュM8が一直線に連結されているところにメッシュM44が合流するように連結されている。それ故、メッシュM9の下り線側の連結情報L(−)を図10の右側のように記載する。
図10に示すように、下り線側の連結に関する情報L(−)には、メッシュM9の延長線方向(0方向)の欄にメッシュM8が記載され、メッシュM9の属性の欄に「合流」の情報が記載されている。
【0099】
このような手順を繰り返して、各メッシュMのおける下り線側の連結情報L(−)を作成する。
ここで、斜め衝突判定用マトリックスEを求める際に用いる「正面衝突判定用軌道情報D」(正面衝突判定用マトリックスD)について、説明する。
図11に示すように、正面衝突判定用マトリックスDは、第1実施形態で述べた軌道情報Dと略同じであり、図9に示されている複数のメッシュMに分割された軌道路線図において、着目したメッシュMがあるメッシュMに対していくつ離れているかを数値として示したものである。また、正面衝突判定用マトリックスDは、各メッシュMの分割に関する上り線側のマトリックスD(+)と、各メッシュMの分割に関する下り線側のマトリックスD(−)とに分けて作成される。
【0100】
上り線側の正面衝突判定用マトリックスD(+)には、例えば、メッシュM1から上り線方向を向いてメッシュM2を見ると、メッシュM2がメッシュM1に隣接しているので、数値「1」が記載されている(図11参照)。また、メッシュM1から上り線方向を向いてメッシュM5を見ると、メッシュM5はメッシュM1から4メッシュ離れているので、数値「4」が記載されている。このように、正面衝突判定用マトリックスDには、複数のメッシュMに分割された軌道路線図において、着目したメッシュMがあるメッシュMに対していくつ離れているかを数値として示している。
【0101】
なお、着目したメッシュM自身の欄には数値0が記載されている。また、着目したメッシュMとあるメッシュMとが関連性がない(車両4が走行できない軌道R)場合、空欄とされている。例えば、メッシュM1から上り線方向を向いてメッシュM16を見ると、メッシュM41からメッシュM16へは鋭角(90°以下)に曲がっていて、メッシュM41を走行する車両4はメッシュM16に向かって走行できないため、メッシュM16に対応するマトリックスDのメッシュM1の欄は、空欄とされている。
【0102】
なお、下り線側の正面衝突判定用マトリックスD(−)は、メッシュMから下り線方向をみて、各メッシュMの距離の情報を作成したものであり、上り線側の正面衝突判定用マトリックスD(+)と略同様の手順で作成されている。
そして、作成した上下線の連結情報Lを基に、予め記録された正面衝突判定用マトリックスDから連結状態が「分岐」又は「合流」とされた情報のみを抽出して得られた斜め衝突判定用マトリックスEを作成する。
【0103】
詳しくは、軌道R上を走行する任意の2台の車両4が衝突(接触)する場所は、正面衝突(追突を含む)を除けば、軌道R(メッシュM)が合流する場所(分岐点P)になるため、その合流(分岐)の属性情報が含まれたメッシュMを全て抽出する。
図9に示すように、第2実施形態の軌道Rの下り線方向では、車両4の斜め衝突の可能性(2台の車両4が分岐点Pを取り合う可能性)があるのは、○印で示された8個のメッシュMとなる。
【0104】
ここで、この合流の属性情報が含まれたメッシュMを正しく抽出するためには、進行方向とは逆の連結情報Lを取得する。
例えば、下り線方向に移動する車両4の衝突を判定するに際しては、メッシュM3の連結情報Lを取得する場合、下り線側とは逆(進行方向とは逆)の上り線側の連結情報L(+)のメッシュM2を参照する(図10参照)。そうすることで、合流の属性情報が含まれたメッシュM3の連結情報Lを正しく抽出することができる。このようにして、斜め衝突の可能性がある8個のメッシュMの連結情報Lを正しく抽出する。
【0105】
図11に示すように、上り線側の連結情報L(+)を参照した連結情報Lを基に、正面衝突判定用マトリックスD(+)から、車両4の斜め衝突の可能性がある8個のメッシュMに対応するデータをそれぞれ抽出して、下り線側の斜め衝突判定用マトリックスE(−)を作成する。同様に、上り線側の連結情報L(−)を参照した連結情報Lを基に、下り線側の正面衝突判定用マトリックスD(−)から、車両4の斜め衝突の可能性がある全てのメッシュMに対応するデータをそれぞれ抽出して、上り線側の斜め衝突判定用マトリックスE(+)を作成する。
【0106】
なお、下り線側の斜め衝突判定用マトリックスE(−)は、メッシュMから下り線方向をみて、各メッシュMの距離の情報を作成したものであり、上り線側の斜め衝突判定用マトリックスE(+)と略同様の手順で作成される。
そして、連結情報Lと正面衝突判定用マトリックスDと斜め衝突判定用マトリックスEとを備えた第2実施形態のシステム1は、衝突判定手段10にて、斜め衝突判定用マトリックスEと車両位置情報とから得られた第1の車両4aと第2の車両4bとの間の距離が、第1の車両4aの車両情報に含まれる「車両4aに関する距離」と、第2の車両4bの車両情報に含まれる「車両4bに関する距離」と、を足し合わせた距離以下の場合に、「斜め衝突の可能性あり」と判定する。
【0107】
このように、第2実施形態のシステム1は、連結情報Lを基に、正面衝突判定用マトリックスDからから連結状態が「分岐」・「合流」とされた情報のみを抽出して得られた「斜め衝突判定用マトリックスE」と、「車両情報」と、「車両位置情報」と、の3つの情報、言い換えれば「グラフ理論の適用とGPS及び/又はRFID導入の利点を最大化する離散値モデルの構築」により、「斜め衝突の可能性」を確実に判定することができる。
【0108】
なお、第2実施形態で用いる斜め衝突判定用マトリックスEには、斜め衝突する可能性のデータが複数備えられているが、それらのデータの中には明らかに斜め衝突する可能性よりも正面衝突する可能性のほうが高いデータが含まれていることがある。
この問題を解消するために、斜め衝突よりも正面衝突する可能性が高いデータを削除するための削除マトリックスZを作成し、作成した削除マトリックスZを斜め衝突判定用マトリックスEに作用させたマトリックスE’を用いて、衝突判定を行うようにするとよい。
[第3実施形態]
次に、本発明に係る車両衝突警告システム1における第3実施形態について、図に基づき説明する。
【0109】
第3実施形態に係る車両衝突警告システム1の構成は、車両4の「終端衝突」の可能性を検出するものであって、この点で第2実施形態と大きく異なっている。なお、「終端衝突」とは、一のメッシュMの一方側の先が何も連結されていない軌道Rの端部や、一のメッシュMの一方側が車両4の脱線を防ぐ車止めが配備されている軌道Rの端部や、大きな障害物など何らかの理由で車両4が通過できないようになっている軌道Rなどを含む軌道Rの終端において、一のメッシュM上を走行している車両4が、その軌道Rの終端に進入して脱線したり、車止めや障害物などに衝突することをいう。
【0110】
具体的には、第3実施形態の車両衝突警告システム1は、「正面衝突判定用マトリックスD」(軌道情報D)と、「連結情報L」と、「斜め衝突判定用マトリックスE」とに加えて、連結情報Lを基に、正面衝突判定用マトリックスDから連結状態が「終端」とされた情報のみを抽出して得られた「終端衝突判定用軌道情報F」(終端衝突判定用マトリックスF)と、を備えている。すなわち、第3実施形態の車両衝突警告システム1は、軌道R上を走行する車両4が軌道Rの端部(終端)に進入して、車両4が脱線したり、車両4が軌道Rの端部に配備された障害物などに衝突する可能性を判定する際に用いられる情報
が加えられている点が、第2実施形態と大きく異なっている。
【0111】
なお、第3実施形態に係る車両衝突警告システム1のそれ以外の部分は、第2実施形態のシステム1と略同じである。したがって、第2実施形態のシステム1と略同じ部分についての詳細な説明は、繰返さない。
図12に示すように、第3実施形態の特徴である「終端衝突判定用軌道情報F」(終端衝突判定用マトリックスF)を作成するにあたっては、第2実施形態で作成した「連結情報L」からメッシュMの「終端」の属性情報が含まれたメッシュMを全て抽出する。
【0112】
例えば、車両4が下り線方向(−方向)に移動する場合を考える。図10の中央に記された上り線側の連結情報L(+)から、メッシュM13、メッシュM26などの終端の情報を抽出する。抽出した各メッシュMの終端の情報を基に、正面衝突判定用マトリックスD(−)から、車両4の終端衝突の可能性があるメッシュMのデータをそれぞれ抽出して、上り線側の終端衝突判定用マトリックスF(+)を作成する。
【0113】
一方、図10の右側に記された下り線側の連結情報L(−)から、メッシュM1、メッシュM14、メッシュM27などの終端の情報を抽出する。抽出した各メッシュMの終端の情報を基に、正面衝突判定用マトリックスD(+)から、車両4の終端衝突の可能性があるメッシュMのデータをそれぞれ抽出して、下り線側の終端衝突判定用マトリックスF(−)を作成する。
【0114】
なお、下り線側の終端衝突判定用マトリックスF(−)は、メッシュMから下り線方向をみて、各メッシュMの距離の情報を作成したものであり、上り線側の終端衝突判定用マトリックスF(+)と略同様の手順で作成される。
そして、このように正面衝突判定用マトリックスDと連結情報Lと斜め衝突判定用マトリックスEとに加えて、終端衝突判定用マトリックスFを備えた第3実施形態のシステム1は、衝突判定手段10にて、終端衝突判定用マトリックスFと車両位置情報とから得られた第1の車両4aと終端との間の距離が、第1の車両4aの車両情報に含まれる「車両4aに関する距離」以下の場合に、「終端衝突の可能性あり」と判定する。
【0115】
このように、第3実施形態のシステム1は、連結情報Lを基に、正面衝突判定用マトリックスDからから連結状態が「終端」とされた情報のみを抽出して得られた「終端衝突判定用マトリックスF」と、「車両情報」と、「車両位置情報」と、の3つの情報、言い換えれば「グラフ理論の適用とGPS及び/又はRFID導入の利点を最大化する離散値モデルの構築」により、「終端衝突の可能性」を確実に判定することができる。
[第4実施形態]
次に、本発明に係る車両衝突警告システム1における第4実施形態について、図に基づき説明する。
【0116】
第4実施形態に係る車両衝突警告システム1の構成は、車両4の「クロス衝突」の可能性を検出するものであって、この点で第1実施形態〜第3実施形態のいずれとも大きく異なっている。
まず、本実施形態で検出する「クロス衝突」について説明する。
「クロス衝突」とは、軌道R上を移動する2台の車両4が、「クロス点C1」を共有する「クロス軌道」上に進入してそのクロス点C1で衝突することである。
【0117】
詳しくは、図13に示すように、クロス点C1は、2つの軌道R(一の軌道R、他の軌道R)が交差するクロス軌道での交差点Pのことである。このクロス点C1では、一の軌道Rを走行している車両4は、クロス点C1を通過後、必ず一の軌道R上を走行する。他の軌道Rを走行している車両4は、クロス点C1を通過後、必ず他の軌道R上を走行する。
【0118】
このようなクロス点C1を介して連結されたクロス軌道において、そのクロス軌道に進入した2台の車両4がクロス点C1で衝突、つまり2台の車両4がクロス点C1を取り合うような状況での衝突が、「クロス衝突」である。
この「クロス衝突」には、以下に挙げる2つのパターンが存在する。
図13(a)は、異なった方向を向いて同一軌道R上を走行している2台の車両4が、分岐点Pで軌道Rを変更してその先にあるクロス点C1で衝突する「クロス衝突」の第1
パターンを示している。
【0119】
この「クロス衝突」の第1パターンとは、例えば、第1の車両4aが上り線方向のメッシュM11を走行し、第2の車両4bが下り線方向のメッシュM13を走行しているときに、2台の車両4が車両衝突警告システム1(オペレータMA,MB)から「正面衝突の可能性あり」の警告を受けて、分岐点Pで走行する方向を変えて衝突回避の行動をとった場合(実線の矢印)、第1の車両4aがメッシュM46に進入すると共に、第2の車両4bがメッシュM60に進入して2台の車両4が共にクロス点C1に向かって走行し、そのクロス点C1で2台の車両4が「クロス衝突」する状況にあることである。なお、「クロス衝突」の第1パターンは、図13(a)に示す破線の矢印の状況も含む。
【0120】
図13(b)は、同じ方向を向いているが、別の平行軌道R上を走行している2台の車両4が、分岐点Pで軌道Rを変更してその先にあるクロス点C1で衝突する「クロス衝突」の第2パターンを示している。
この「クロス衝突」の第2パターンとは、例えば、第1の車両4aが上り線方向のメッシュM11を走行し、第2の車両4bが上り線方向のメッシュM24を走行しているときに、何らかの理由で2台の車両4が分岐点Pで軌道Rを変更した場合(実線の矢印)、第1の車両4aがメッシュM46に進入すると共に、第2の車両4bがメッシュM59に進入して2台の車両4が共にクロス点C1に向かって走行し、そのクロス点C1で2台の車両4が「クロス衝突」する状況にあることである。なお、「クロス衝突」の第2パターンは、図13(b)に示す破線の矢印の状況も含む。
【0121】
このような「クロス衝突」を回避するために作成される「クロス衝突判定用軌道情報G」が備えられた第4実施形態の車両衝突警告システム1の構成について、詳細に説明する。
具体的には、第4実施形態の車両衝突警告システム1は、軌道Rが交差している点であるクロス点C1及びそのクロス点C1に繋がるメッシュMの情報が記録された「クロス情報C」と、そのクロス情報Cを基に、正面衝突判定用マトリックスDからクロス点C1に繋がるメッシュMに対応する情報のみを抽出して得られた「クロス衝突判定用軌道情報G」と、を備えている。
【0122】
まず、クロス衝突判定用マトリックスGを作成する際に用いられる「クロス情報C」は、前述したように、クロス点C1及びそのクロス点C1に繋がるメッシュMの情報を有する。このクロス情報Cは、以下の手順で作成される。
図13に示すように、クロス軌道を4つの象限(1)〜(4)に分割する。
第1象限(1)では、クロス点C1にメッシュM46が連結されている。また、第2象限(2)では、クロス点C1にメッシュM47が連結されている。第3象限(3)では、クロス点C1にメッシュM59が連結されている。第4象限(4)では、クロス点C1にメッシュM60が連結されている。この情報を基に、クロス情報Cを図14の上側のように作成する。図14の上側に示されるクロス情報Cはマトリックス形式とされ、行が象限を示し、列が全クロス点Cxを示している。
【0123】
上記手順を、全てのクロス点Cxに適用し、全クロス点Cxに対するクロス情報Cを作成する。なお、クロス情報Cは、連結情報Lに入っていてもよい。
そして、図14に示すように、作成したクロス情報Cを基に、正面衝突判定用マトリックスDから連結状態が「クロス点C1」とされた情報のみを抽出して得られたクロス衝突判定用マトリックスGを作成する。
【0124】
クロス点C1に連結されている各メッシュMのデータを、クロス情報Cを基に取得する。例えば、車両4が上り線方向(+方向)に移動する場合を考える。車両4が進行する方向に関するメッシュM46のデータを取得するには、進行方向とは逆の正面衝突判定用マトリックスD(−)から、クロス点C1を介して隣に連結されているメッシュM47のデータを抽出する。また、進行方向の正面衝突判定用マトリックスD(+)から、メッシュM46のデータを抽出する。
【0125】
そして、進行方向とは逆のメッシュM47のデータをクロス衝突判定用マトリックスGにおけるメッシュM46のデータとし、進行方向のメッシュM46のデータをクロス衝突
判定用マトリックスGにおけるメッシュM47のデータとして、クロス衝突判定用マトリックスGを作成する。
そして、クロス情報Cとクロス衝突判定用マトリックスGとを備えた第4実施形態のシステム1は、衝突判定手段10にて、クロス衝突判定用マトリックスGと車両位置情報とから得られた第1の車両4aと第2の車両4bとの間の距離が、第1の車両4aの車両情報に含まれる「車両4aに関する距離」と、第2の車両4bの車両情報に含まれる「車両4bに関する距離」と、を足し合わせた距離以下の場合に、「クロス衝突の可能性あり」と判定する。
【0126】
このように、第4実施形態のシステム1は、クロス情報Cを基に、正面衝突判定用マトリックスDからから連結状態が「クロス」とされた情報のみを抽出して得られた「クロス衝突判定用マトリックスG」と、「車両情報」と、「車両位置情報」と、の3つの情報、言い換えれば「グラフ理論の適用とGPS及び/又はRFID導入の利点を最大化する離散値モデルの構築」により、「クロス衝突の可能性」を確実に判定することができる。
[第5実施形態]
次に、本発明に係る車両衝突警告システム1における第5実施形態について、図に基づき説明する。
【0127】
第5実施形態に係る車両衝突警告システム1は、軌道R上を走行する車両4が、軌道R上の「障害物」に衝突する可能性を検出するものであって、この点が第1実施形態〜第4実施形態のいずれとも大きく異なっている。
第5実施形態のおける「障害物」には、「狭軌道」、「閉軌道」、「OOS軌道(Out Of Service)」などがある。
【0128】
まず、本実施形態のおける「狭軌道」について、説明する。
「狭軌道」とは、軌道Rは敷設されているが、何らかの理由で、一部乃至は全ての車両4の通過が不可能又は制限されている軌道Rのことをいう。
例えば、製鉄工場内において、大型の建屋が当該軌道Rに隣接しすると共に、張り出すように建っているとする。このように軌道Rに建屋が張り出していると、幅の広い車両4(大型のトピードカーなど)が進入した際に、その幅広の車両4が大型の建屋に接触して走行不能となる虞がある。
【0129】
すなわち、上記した状況となっている軌道R、乃至は軌道R上のエリアが「狭軌道」である。ただし、この「狭軌道」は、車幅が狭い車両4(通常型乃至は小型のトピードカーなど)の場合、進入(走行)が可能となっている。なお、本実施形態でいう「狭軌道」は、軌道Rを構成するレールの幅が狭いことを意味するものではない。
次に、本実施形態のおける「閉軌道」について、説明する。
【0130】
「閉軌道」とは、軌道Rは敷設されているが、何らかの理由で、全ての車両4の通過が不可能となっている軌道Rのことをいう。
例えば、製鉄工場内の軌道Rの途中に、トピードカー4(車両)内の溶銑に対して処理を行う建屋(溶銑処理建屋)が設置されていて、通常、その処理建屋内に溶銑が装入されたトピードカー4が進入可能とされている。ところが、建屋の出入口に設けられたシャッターが、何らかの理由で軌道Rを横切るように閉じている場合、その処理建屋が設置されている軌道R上を走行するトピードカー4が、処理建屋のシャッターに衝突して走行不能となる虞がある。
【0131】
すなわち、上記した状況となっている軌道R、乃至は軌道R上のエリアが「閉軌道」である。
次に、本実施形態のおける「OOS軌道」について、説明する。
「OOS軌道」とは、全ての車両4の通過が可能となっている軌道Rではあるが、何らかの理由で、本発明の車両衝突警告システム1が提供されていない軌道Rのことをいう。
【0132】
例えば、製鉄工場内に、一の方向を向いて並列的に敷設された複数の軌道Rに対して、一の方向とは別の方向を向いて並列的に敷設された複数の軌道Rが横切る(乗り越える)ように敷設された「複数の軌道Rが複雑に交差したエリア」が存在しているとする。通常、その複数の軌道Rが複雑に交差したエリアでは、一の方向乃至は別の方向を向いた軌道
R上を走行する車両4は、そのまま一の方向乃至は別の方向を向いた軌道R上を走行するようになっている。つまり、複数の軌道Rが複雑に交差したエリアでは、一の方向乃至は別の方向を向いた軌道R上を走行する車両4は、別の方向乃至は一の方向を向いた軌道Rに変更して走行することができないようになっている。
【0133】
ところが、このような複数の軌道Rが複雑に交差したエリアでは、本システム1内で実行される衝突検知処理の計算負荷が多大になり、検知処理や警報を発する処理が遅延したり、最悪の場合、所定時間内に終了しなくなったりする虞がある。
そこで、このような軌道R、乃至は軌道R上のエリアに対しては、本発明の車両衝突警告システム1を停止するようにし、「OOS軌道」としている。
【0134】
このOOS軌道は、本システム1が作動していないため、車両4同士が衝突する虞があるものの、その場合、自動列車停止装置(ATS:Automatic Train Stop)の設置や車両4を監視する監視員が配備され、車両4の衝突を回避することができるようになっている。
このような「狭軌道」、「閉軌道」、「OOS軌道」などの「障害物」と車両4とが衝突することを回避するために作成される「メッシュ情報」が備えられた第5実施形態の車両衝突警告システム1について、説明する。
【0135】
図15は、第5実施形態の車両衝突警告システム1に備えられる各メッシュMの属性情報をまとめた図である。
第5実施形態の車両衝突警告システム1は、軌道R上において複数に分割されたメッシュM(軌道R)の属性情報が記録された「メッシュ情報」と、そのメッシュ情報から属性が「狭軌道」、「閉軌道」、「OOS軌道」とされた情報をそれぞれ抽出して、その抽出したメッシュMの属性情報と軌道情報Dとを基に作成された「障害物衝突判定用軌道情報H」と、を備えている。
【0136】
図15に示すように、軌道R上の各メッシュMの長さ、並びに各メッシュMの属性(「狭軌道」、「閉軌道」、「OOS軌道」)をまとめたものを作成する。
図15に示す如く、メッシュM102〜メッシュM116の属性の欄には「OOS軌道」を示す印が記載されていて、メッシュM102〜メッシュM116の7つのメッシュMが連結される範囲内は「OOS軌道」とされていることがわかる。
【0137】
また、メッシュM120とメッシュM121、及び、メッシュM125とメッシュM126の属性の欄には「狭軌道」を示す印が記載されていて、メッシュM120とメッシュM121の2つのメッシュMが連結される範囲内、及びメッシュM126とメッシュM127の2つのメッシュMが連結される範囲内は「狭軌道」とされていることがわかる。
また、図15に示す如く、メッシュM118、及びメッシュM129の属性の欄には「閉軌道」を示す印が記載されていて、メッシュM118とメッシュM129の2つのメッシュMは「閉軌道」とされていることがわかる。
【0138】
次に、車両4と障害物とが衝突する可能性を判定する際に用いる「障害物衝突判定用軌道情報」を作成する。
第5実施形態の「障害物衝突判定用軌道情報」を作成するにあたっては、 図15に示す「メッシュ情報」の中から、メッシュMの属性情報(障害物の属性)が含まれたメッシュMを全て抽出する。抽出したメッシュMを属性情報ごとに分けて、障害物衝突判定用軌道情報を作成する。例えば、OOS軌道の属性を有するメッシュM全てをまとめて記録し、狭軌道の属性を有するメッシュM全てをまとめて記録し、閉軌道の属性を有するメッシュM全てをまとめて記録する。
【0139】
そして、障害物衝突判定用軌道情報を備えた第5実施形態のシステムは、衝突判定手段10にて、「メッシュ情報」から属性が「障害物」とされた情報を抽出して作成された「障害物衝突判定用軌道情報」を用いつつ、この「障害物衝突判定用軌道情報」と車両位置情報とから得られた車両4と障害物との間の距離が、車両4の車両情報に含まれる「車両4に関する距離」以下の場合に、「障害物衝突の可能性あり」と判定する。
【0140】
このように、第5実施形態のシステム1は、各メッシュMの属性情報から、「障害物」とされたメッシュMの属性情報を抽出して得られた「障害物衝突判定用軌道情報」と、「
車両情報」と、「車両位置情報」と、の3つの情報により、「障害物衝突の可能性」を確実に判定することができる。
このように、車両4が衝突する可能性を判定するにあたっては、第1実施形態〜第4実施形態に示すシステム1を用いて車両4の衝突判定(正面衝突、斜め衝突、終端衝突、クロス衝突)を順に行ったあとで、第5実施形態のシステム1を用いて車両4の「障害物衝突」の判定を行うとよい。
【0141】
以上のように、本発明の車両衝突警告システム1を用いることで、複数のメッシュMに分割された軌道R上のうち2点のメッシュM間の情報及び2点のメッシュM間の情報と、軌道R上を走行する車両4に関する情報と、車両4の位置情報とを用いることで、車両衝突の可能性を確実に判断し、運行に携わるオペレータMA、MBに車両衝突の危険性を通達することが可能となる。
【0142】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
例えば、第1実施形態〜第5実施形態では、各メッシュMに対応するマトリックスD,E,F,Gの作成方法についてそれぞれ説明したが、各メッシュMの情報に、そのメッシュMの長さ(メートル単位)を加えた連結情報Lを作成し、その連結情報Lを基に、マトリックスD,E,F,Gを作成してもよい。
【0143】
また、2台の車両4が衝突する可能性に関して、軌道R上の複数の経路で生じる場合、最短距離で衝突する可能性だけ、先に提示してもよい。
例えば、図9に示すように、上り線方向に向かってメッシュM1を走行する第1の車両(A)4aと、下り線方向に向かってメッシュM24を走行する第2の車両(B)4bとが正面衝突する可能性を示す場合、(a)の[距離:11メッシュ(102m)]、(b)の[距離:11メッシュ(108m)]、(c)の[距離:13メッシュ(122m)]、の3パターンが抽出されることとなる。その3つのパターンのうち、最短距離の(a)の[距離:11メッシュ(102m)]を先に示せばよい。なお、残りの2パターンは、2台の車両4の距離が衝突する可能性に近づいたときに示すようにすればよい。
【0144】
また、第5実施形態においては、メッシュMに軌道Rの属性情報を付与したが、ゾーンZに軌道Rの属性情報を付与してもよい。また、メッシュMとゾーンZとにそれぞれ軌道Rの属性情報を付与してもよい。
また、第5実施形態における「障害物」は、「狭軌道」、「閉軌道」、「OOS軌道」として説明したが、走行レールの保全作業などで軌道Rが走行不可とされるような工事情報を加えてもよい。
【0145】
また、軌道R上に信号機が配備されている場合、この信号機を「障害物」とみなし、第5実施形態における技術により、本発明のシステム1からオペレータMA、MBに対して信号を見るように警報を発するようにしてもよい。
例えば、本発明の車両衝突警告システム1は、整備された道路上を走行する運搬車(トラック等)に対しても適用することが可能である。
【0146】
また、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【符号の説明】
【0147】
1 車両衝突警告システム
2 機関車
3 混銑車(トピードカー)
4 車両
4a 第1の車両
4b 第2の車両
5 高炉
6 転炉設備
7 管制室
8 コンピュータ(サーバ)
9 車両位置情報検出手段
10 衝突判定手段
11 通達手段
12 記憶手段
13 測位検出装置
14 表示器(表示モニタ)
15 運行支援モニタ
MA 管制オペレータ
MB 運行オペレータ
M メッシュ
P 分岐点、交差点(ポイント)
C1 クロス点
R 軌道
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15