特許第6274948号(P6274948)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6274948金型清掃用樹脂組成物及びそれを用いる金型清掃方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6274948
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】金型清掃用樹脂組成物及びそれを用いる金型清掃方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/72 20060101AFI20180129BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20180129BHJP
   C11D 3/26 20060101ALI20180129BHJP
   C11D 3/04 20060101ALI20180129BHJP
   B08B 3/08 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
   B29C33/72
   C11D3/37
   C11D3/26
   C11D3/04
   B08B3/08 Z
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-77613(P2014-77613)
(22)【出願日】2014年4月4日
(65)【公開番号】特開2015-199204(P2015-199204A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2017年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福西 陽一
(72)【発明者】
【氏名】吉村 勝則
(72)【発明者】
【氏名】野村 弘明
【審査官】 ▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−020416(JP,A)
【文献】 特開2001−089795(JP,A)
【文献】 特開2013−216093(JP,A)
【文献】 特開平10−036560(JP,A)
【文献】 特開平10−043573(JP,A)
【文献】 特開平02−020538(JP,A)
【文献】 特開2012−214653(JP,A)
【文献】 特表2007−506853(JP,A)
【文献】 特開2002−137232(JP,A)
【文献】 特開2014−226783(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0263342(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00−33/76
C11D 1/00−19/00
B08B 3/00− 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成ゴムと、
アルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物からなる群より選ばれる化合物と、
尿素誘導体と、
炭素数が14以上30以下である一価のアルコールと、
加硫剤と、
を含有する金型清掃用樹脂組成物。
【請求項2】
前記アルコールは、飽和アルコールである請求項1に記載の金型清掃用樹脂組成物。
【請求項3】
前記アルコールは、1-テトラデカノール、1-ヘキサデカノール、1-オクタデカノール、1-エイコサノール、1-ドコサノール、1-テトラコサノール、1-ヘキサコサノール、1-オクタコサノール及び1-トリアコンタノールからなる群より選ばれるアルコールである請求項2に記載の金型清掃用樹脂組成物。
【請求項4】
前記合成ゴムは、エチレン−プロピレンゴム及びブタジエンゴムを含む請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の金型清掃用樹脂組成物。
【請求項5】
前記尿素誘導体は、1,3−ジメチル尿素及びモノメチル尿素からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1から4のいずれか1項に記載の金型清掃用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の金型清掃用樹脂組成物を用いる金型清掃方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型清掃用樹脂組成物及びそれを用いる金型清掃方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂と金型とを用いて、集積回路素子等の封止成形物を成形する場合、長時間成形を繰り返すと成形金型の内部表面が汚れてくる。そのまま連続して成形を続けると、封止成形物の表面が汚れたり、封止成形物が金型に付着したりして成形作業に支障をきたすため、成形金型を定期的に清掃する必要がある。
【0003】
成形金型の清掃方法の一つとして、金型清掃用樹脂組成物を使用する方法が提案されている。
特許文献1には合成ゴム及び合成樹脂の少なくとも一方と、アルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物の少なくとも一方と、有機溶剤と、を含有してなる金型清掃用樹脂組成物が提案されている。この樹脂組成物は、有機溶剤として、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類等を用いている。
また、特許文献2には合成ゴムと、アルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物からなる群より選ばれる化合物と、シリカと、加硫剤と、を含有し、水分の含有率が、0.20質量%以上3.50質量%以下である金型清掃用樹脂組成物が提案されている。この樹脂組成物は、水分の含有率を特定の範囲にすることで、経時による加硫剤の劣化を抑制することができ、かつ金型の清掃性能が改善されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−20416号公報
【特許文献2】国際出願番号PCT/JP2014/051543
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のアルカリ金属塩等を含む金型清掃用樹脂組成物は、製造後長期間、たとえば6ヶ月が経過すると、金型清掃用樹脂組成物が含む有機溶剤等がブリードすることで、洗浄剤が金型清掃用樹脂組成物中で十分に分散できず、清掃作業時に成形金型の内部表面の汚れを除去しきれない。そのため、金型清掃用樹脂組成物の保存安定性に改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上記のような事情に鑑みなされたものであり、清掃性能と保存安定性とが共に優れる金型清掃用樹脂組成物及びそれを用いる金型清掃方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を達成するための具体的手段は、以下のとおりである。
[1]合成ゴムと、
アルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物からなる群より選ばれる化合物と、
尿素誘導体と、
炭素数が14以上30以下である一価のアルコールと、
加硫剤と、
を含有する金型清掃用樹脂組成物である。
【0008】
[2]前記アルコールは、飽和アルコールである[1]に記載の金型清掃用樹脂組成物である。
【0009】
[3]前記アルコールは、1-テトラデカノール、1-ヘキサデカノール、1-オクタデカノール、1-エイコサノール、1-ドコサノール、1-テトラコサノール、1-ヘキサコサノール、1-オクタコサノール及び1-トリアコンタノールからなる群より選ばれるアルコールである[2]に記載の金型清掃用樹脂組成物である。
【0010】
[4]前記合成ゴムは、エチレン−プロピレンゴム及びブタジエンゴムを含む[1]から[3]のいずれかひとつに記載の金型清掃用樹脂組成物である。
【0011】
[5]前記尿素誘導体は、1,3−ジメチル尿素及びモノメチル尿素からなる群から選ばれる少なくとも1種である[1]から[4]のいずれかひとつに記載の金型清掃用樹脂組成物である。
【0012】
[6][1]から[5]のいずれかひとつに記載の金型清掃用樹脂組成物を用いる金型清掃方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、清掃性能と保存安定性とが共に優れる金型清掃用樹脂組成物及びそれを用いる金型清掃方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0015】
本明細書において、金型清掃用樹脂組成物を単に樹脂組成物と称することがある。
「金型内部表面の全面」とは、成形金型により成形される封止成形物などの被成形物と接する領域の全面を意味する。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。また、組成物中の各成分の量は、特に断らない限り、各成分に複数の種類の物質が含まれる場合に複数の種類の物質を合計した量で表す。
【0016】
本発明の金型清掃用樹脂組成物は、たとえば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、及びポリイミド樹脂からなる群から選ばれる封止成形物(硬化性樹脂組成物)の成形工程で発生する金型表面の汚れを取り除くことができる。
【0017】
(金型清掃用樹脂組成物)
本発明の金型清掃用樹脂組成物は、合成ゴムと、アルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物からなる群より選ばれる化合物(以下、「アルカリ金属塩等」と称することがある。)と、尿素誘導体と、炭素数が14以上30以下である一価のアルコール(以下、「特定のアルコール」と称することがある。)と、加硫剤と、を含有する金型清掃用樹脂組成物である。
本発明の樹脂組成物は、アルカリ金属塩等と、尿素誘導体と、特定のアルコールと、加硫剤とを含むことで、清掃性能と保存安定性とが共に優れる効果を奏する。
【0018】
(合成ゴム)
本発明の金型清掃用樹脂組成物は、ゴム成分として合成ゴムの少なくとも1種を含む。
合成ゴムは、特に限定されるものではなく、金型清掃用樹脂組成物に通常用いられる合成ゴムの中から適宜選択することができる。合成ゴムは、いわゆる未加硫ゴムであり、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルゴム(NBR)、エチレン−プロピレンゴム(EPR)等のエチレン−α−オレフィンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)等を挙げることができる。これらは1種単独で又は2種以上を併せて用いることができる。これら未加硫ゴムは、金型内において加硫されて加硫ゴムとなる。
なお、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルゴム(NBR)、エチレン−プロピレンゴム(EPR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)等は、それぞれの合成ゴムの分子構造中にエチレン由来の構造又はジエン由来の構造等の非極性の部位を有する。
【0019】
本発明の樹脂組成物に用いることができる合成ゴムは、金型清掃に際して、汚染性が少なく、加硫時の臭気が少ないため、エチレン−プロピレンゴム及びブタジエンゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、エチレン−プロピレンゴムの少なくとも1種及びブタジエンゴムの少なくとも1種の混合物であることがより好ましい。
【0020】
本明細書において、「エチレン−プロピレンゴム」との語は、通常のエチレン−プロピレンゴム(EPM)と、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)との双方を含む趣旨で用いられ、エチレン−プロピレンゴム及びエチレン−プロピレン−ジエンゴムの少なくとも1種を意味する。
【0021】
本発明の樹脂組成物に用いることができるエチレン−プロピレンゴムは、エチレンと少なくともプロピレンを含むα−オレフィンとの共重合割合が、モル比でエチレン/α−オレフィン=55/45〜83/17であることが好ましく、55/45〜61/39であることがより好ましく、55/45〜59/41であることが更に好ましい。
α−オレフィンは、プロピレンの他に、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等を挙げることができる。
【0022】
本発明の樹脂組成物に用いることができるエチレン−プロピレンゴムにおけるエチレン/α−オレフィン比は、樹脂組成物について、H−NMR(プロトン核磁気共鳴)スペクトルをHの共鳴周波数:500MHzで測定することにより算出することができる。なお、金型清掃用樹脂組成物から、HPLC(高速液体クロマトグラフ)を用いて常法によりエチレン−プロピレンゴムを単離し、単離したエチレン−プロピレンゴムについて、上記と同様にしてH−NMRスペクトルを測定することで、より明確にエチレン/α−オレフィン比を算出することもできる。
【0023】
本明細書において、「エチレン−プロピレン−ジエンゴム」とは、エチレンと、少なくともプロピレンを含むα−オレフィンと、非共役二重結合を2つ有する環状物又は非環状物であるジエンモノマーとからなるターポリマーを意味する。
【0024】
ジエンモノマーは、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン、1,11−ドデカジエン、1,13−テトラデカジエン、1,15−ヘキサデカジエン、1,17−オクタデカジエン、1,19−イコサジエン、3,6−ジメチル−1,7−オクタジエン、4,5−ジメチル−1,7−オクタジエン、5−メチル−1,8−ノナジエン、ジシクロペンタジエン、1,5−シクロオクタジエン、1,7−シクロドデカジエン、1,5,9−シクロドデカトリエン、1,4−シクロヘプタジエン、1,4−シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン、メチレンノルボルネン、2−メチルペンタジエン−1,4、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、メチル−テトラヒドロインデン、1,4−ヘキサジエン等を挙げることができる。
【0025】
本発明の樹脂組成物に用いることができるエチレン−プロピレン−ジエンゴムにおけるジエン成分に由来する構成単位の含有率は、エチレン−プロピレン−ジエンゴムの総質量に対して、6.5質量%〜9.5質量%であることが好ましく、7.0質量%〜9.0質量%であることがより好ましく、7.5質量%〜8.5質量%であることが更に好ましい。また、前記エチレン−プロピレン−ジエンゴムのヨウ素価は、12〜22であることが好ましく、14〜18であることがより好ましい。
【0026】
このようなターポリマー中の各モノマーの共重合割合は、エチレンが30モル%〜80モル%、ジエンモノマーが0.1モル%〜2モル%で、残りがα−オレフィンである場合が好ましく、中でも、エチレンが30モル%〜60モル%である場合がより好ましい。
【0027】
本発明の樹脂組成物に用いることができるエチレン−プロピレンゴムのムーニー粘度ML1+4(100℃)は、特に限定されるものではないが、清掃性能が向上するため、5〜70であることが好ましく、5〜50であることがより好ましい。ムーニー粘度は、JIS K 6300−1「未加硫ゴム−物理特性−第1部:ムーニー粘度計による粘度及びスコーチタイムの求め方」に準拠して測定される。
【0028】
本発明の樹脂組成物がエチレン−プロピレンゴムを含有する場合、前記エチレン−プロピレンゴムの含有率は、清掃性能が向上するため、樹脂組成物の総質量に対して、10質量%〜50質量%であることが好ましく、20質量%〜40質量%であることがより好ましい。エチレン−プロピレンゴムは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0029】
本発明の樹脂組成物は、ブタジエンゴムの少なくとも1種を含むことが好ましい。ブタジエンゴムは、特に限定されるものではなく、金型清掃用樹脂組成物に通常用いられるブタジエンゴムから適宜選択することができる。ブタジエンゴムは、清掃性能が向上するため、シス1,4結合の含有率が90質量%以上であるハイシス構造を有し、ムーニー粘度ML1+4(100℃)が20〜60であるブタジエンゴムが好ましく、シス1,4結合の含有率が90質量%以上であるハイシス構造を有し、ムーニー粘度ML1+4(100℃)が30〜45であるブタジエンゴムがより好ましい。ブタジエンゴムは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0030】
本発明の樹脂組成物は、成形金型の内部表面の汚れを取り除く際、樹脂組成物の硬度を適切に保つことが可能であり、かつ、成形金型内部の細部まで樹脂組成物が適切に充填できるため、上記のようなエチレン−プロピレンゴムとブタジエンゴムとを含有することが好ましい。
また、樹脂組成物の強度を保つことができ、樹脂組成物が脆くならず、汚れを除去した後、樹脂組成物の成形金型からの離型作業を容易に行なうことができるため、本発明の樹脂組成物は、上記のようなエチレン−プロピレンゴムとブタジエンゴムとを含有することが好ましい。
【0031】
本発明の樹脂組成物がエチレン−プロピレンゴムとブタジエンゴムとを含有する場合、ブタジエンゴムの含有量に対するエチレン−プロピレンゴムの含有量の質量比(エチレン−プロピレンゴム/ブタジエンゴム)は、清掃性能が向上するため、20/80〜90/10であることが好ましく、30/70〜80/20であることがより好ましい。
ブタジエンゴムの含有量に対するエチレン−プロピレンゴムの含有量の質量比が、20/80以上であると、金型離型性が良好であり、かつ、加硫後の成形物の柔軟性も維持されるため好ましい。また、ブタジエンゴムの含有量に対するエチレン−プロピレンゴムの含有量の質量比が、90/10以下であると、良好な金型離型性が維持され、清掃作業時間が長くならないため好ましい。
【0032】
前記ブタジエンゴムの含有量に対するエチレン−プロピレンゴムの含有量の質量比は、樹脂組成物について、H−NMR(プロトン核磁気共鳴)スペクトルをHの共鳴周波数:500MHzで測定することにより算出することができる。
【0033】
本発明の樹脂組成物に用いることができる合成ゴムは、加硫硬化した後の伸び率が40%〜800%であるものが好ましく、100%〜300%であるものがより好ましい。合成ゴムの加硫硬化した後の伸び率が40%以上であると、加硫後の成形性が維持され、清掃性能が向上するため好ましい。
前記合成ゴムは、加硫硬化した後の引張強度が3MPa〜10MPaであるものが好ましく、5MPa〜8MPaであるものがより好ましい。合成ゴムの加硫硬化した後の引張強度が3MPa以上であると、チッピングの発生が低減されるため好ましい。
前記合成ゴムは、加硫硬化した後のゴム硬度(デュロメータ硬さ)がA60〜95であるものが好ましく、A70〜90であるものがより好ましい。合成ゴムの加硫硬化した後のゴム硬度が上記範囲内にあると、チッピング及びボイドの発生頻度も低いため好ましい。
【0034】
本発明の樹脂組成物は、ゴム成分として合成ゴムであるエチレン−プロピレンゴム及びブタジエンゴムを含むことが特定アルコールとの相溶性が優れるため好ましいが、これら以外に、天然ゴム、ウレタンゴム、ニトリルゴム、シリコーンゴム等のその他のゴム成分を含有していてもよい。
【0035】
本発明の樹脂組成物に用いることができる合成ゴムの含有量は、樹脂組成物に含有される全成分中に、質量基準で、20質量%〜90質量%であることが好ましく、30質量%〜80質量%であることがより好ましく、40質量%〜70質量%であることが更に好ましい。
【0036】
(アルカリ金属塩等)
本発明の金型清掃用樹脂組成物は、アルカリ金属塩等を洗浄剤として含む。
前記アルカリ金属塩等におけるアルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等を挙げることができる。これらの中でもアルカリ金属は、清掃性能が向上するため、リチウム、ナトリウム、及びカリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、ナトリウム及びカリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0037】
本発明の樹脂組成物に用いることができるアルカリ金属塩は、前記アルカリ金属の、ケイ酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、メタリン酸塩、次リン酸塩、亜リン酸(ホスホン酸)塩、次亜リン酸(ホスフィン酸)塩、ピロリン酸塩、トリメタリン酸塩、テトラメタリン酸塩、ピロ亜リン酸、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、塩酸塩等の無機酸塩;アクリル酸塩、アジピン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、アミノ安息香酸塩、アルギン酸塩、安息香酸塩、オレイン酸塩、ギ酸塩、クエン酸塩、グリコール酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、ケイ皮酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、サリチル酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩、トルエンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、乳酸塩、尿酸塩、ハロゲン置換酢酸塩、フタル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、マロン酸塩、酪酸塩、リンゴ酸塩等の有機酸塩を挙げることができる。これらの中でもアルカリ金属塩は、清掃性能が向上するため、リン酸塩、炭酸塩、及びケイ酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0038】
本発明の樹脂組成物に用いることができるアルカリ金属塩が多価酸の塩の場合、アルカリ金属塩は、部分的にアルカリ金属の塩となったものであってもよい。たとえば、アルカリ金属塩が3価のリン酸塩の場合、1つのアルカリ金属と2つの水素を有する第一塩、2つのアルカリ金属と1個の水素を有する第二塩、又は3つのアルカリ金属を有する第三塩のいずれであってもよい。また、アルカリ金属塩は、酸性塩、アルカリ性塩、又は中性塩のいずれであってもよい。金型に対する腐食性を抑制できるため、アルカリ金属塩は、アルカリ性塩又は中性塩であることが好ましい。これらアルカリ金属塩は、水和物を用いてもよい。
【0039】
本発明の樹脂組成物に用いることができるアルカリ金属水酸化物は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等を挙げることができる。これらのアルカリ水酸化物は、水和物を用いてもよい。
【0040】
本発明に好適に用いることができるアルカリ金属塩等は、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
本発明においては、これらアルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物を1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0041】
本発明の樹脂組成物に用いることができるアルカリ金属塩等の含有量は、合成ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上5質量部以下であることがより好ましく、1質量部以上4質量部以下であることが更に好ましい。0.1質量部以上であれば、金型の清掃性能が優れるため好ましく、また、10質量部以下であれば、樹脂組成物の保存安定性が優れるため好ましい。
【0042】
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、アルカリ金属塩等に加えて、その他の洗浄剤を含んでいてもよい。その他の洗浄剤は、特に限定されるものではなく、金型清掃用樹脂組成物に通常用いられる洗浄剤から適宜選択することができる。その他の洗浄剤は、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、金属石鹸等を挙げることができる。
【0043】
本発明の樹脂組成物がその他の洗浄剤を含有する場合、その含有量は、合成ゴム100質量部に対して、5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましい。その他の洗浄剤の含有量の下限値は、特に限定されるものではないが、合成ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましい。
【0044】
(尿素誘導体)
本発明の金型清掃用樹脂組成物は、尿素誘導体を含む。
本明細書において、尿素誘導体とは、尿素分子が有する水素原子が置換基で置換されている化合物を意味する。
本発明者は、本発明の樹脂組成物が含む尿素誘導体が、樹脂組成物が含むアルカリ金属塩等の洗浄剤を分散する有機溶剤としての機能と、樹脂組成物の洗浄剤としての機能とを有し、また樹脂組成物の保存時に特定のアルコール等の有機溶剤がブリードすることを抑制していると考えている。
【0045】
本発明の樹脂組成物に用いることができる尿素誘導体の融点は、樹脂組成物の調製時の作業性が良好でかつ成形金型の内部表面の汚れを取り除く際に有機溶剤及び洗浄剤として機能するために、70℃以上であることが好ましく、70℃以上200℃以下であることが好ましく、90℃以上150℃以下であることがさらに好ましい。尿素誘導体の融点が70℃以上、すなわち常温(25℃)で固体であると、樹脂組成物の調製時、樹脂組成物への分散がより容易に制御できるため好ましい。
【0046】
また、本発明の樹脂組成物に用いることができる尿素誘導体の沸点は、90℃以上であることが好ましく、150℃以上350℃以下であることがより好ましく、180℃以上300℃以下であることがさらに好ましい。尿素誘導体の沸点が90℃以上であると、樹脂組成物は、熱的安定性が十分に得られ、また、優れた保存安定性を示すことができる。
【0047】
本発明の樹脂組成物に用いることができる尿素誘導体は、ウレイド基の窒素原子上に炭素数1〜15のアルキル基を有する化合物であることが好ましく、ウレイド基の窒素原子上に炭素数1〜15のアルキル基を1〜3個有する化合物であることがより好ましく、ウレイド基の窒素原子上に炭素数1〜3のアルキル基を1又は2個有する化合物であることがさらに好ましい。なお、前記尿素誘導体が有するアルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状であってもよい。
【0048】
本発明の樹脂組成物に用いることができる尿素誘導体の具体例は、モノメチル尿素(融点93℃、沸点240℃)、モノエチル尿素(融点90℃、沸点136℃)、1,1−ジメチル尿素(融点183℃、沸点>185℃)、1,3−ジメチル尿素(融点102℃、沸点268℃)、1,1−ジエチル尿素(融点71℃)、1,3−ジエチル尿素(融点113℃、沸点268℃)等を挙げることができる。中でも清掃性能が良好であるため、モノメチル尿素及び1,3−ジメチル尿素からなる群より選ばれる少なくとも1種の尿素誘導体であることが好ましい。
本発明においては、これらの尿素誘導体を1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0049】
本発明の樹脂組成物に特に好適に用いることができる尿素誘導体であるモノメチル尿素及び1,3-ジメチル尿素は、融点がそれぞれ93℃及び102℃であり、常温では固体である。洗浄剤及び有機溶剤が常温で固体の化合物であると、樹脂組成物の調製時に洗浄成分の樹脂組成物への分散が容易に制御でき、また樹脂組成物の保存時に経時による有機溶剤等のブリードが抑制できるため好ましい。
【0050】
なお、本明細書において「有機溶剤」は、常温で液体である有機化合物に加えて、成形金型の内部表面の汚れを取り除く際の通常の金型温度である160℃〜190℃の温度範囲で液体である有機化合物も包含する。
【0051】
本発明の樹脂組成物に用いることができる尿素誘導体の含有量は、合成ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上5質量部以下であることがより好ましく、1質量部以上4質量部以下であることが更に好ましい。0.1質量部以上であれば、金型の清掃性能が優れるため好ましく、また、10質量部以下であれば、樹脂組成物の保存安定性が優れるため好ましい。
【0052】
(特定のアルコール)
本発明の金型清掃用樹脂組成物は、炭素数が14以上30以下である一価のアルコールを有機溶剤として含む。
本発明の樹脂組成物が含むことができる特定のアルコールは、樹脂組成物が含むアルカリ金属塩等の洗浄剤を分散する有機溶剤として主に機能する。
【0053】
本発明の樹脂組成物は、特定のアルコールを含むため清掃性能と保存安定性とが共に優れる。
本発明の樹脂組成物が含むことができるアルカリ金属塩等が特定アルコールの水酸基へ作用し、樹脂組成物中で均一に分散する。特定のアルコールが有機溶剤として機能することで、樹脂組成物は優れた清掃性能を示す。
また、本発明の樹脂組成物が含むことができる合成ゴムがたとえばエチレン−プロピレンゴム及びブタジエンゴム等エチレン由来の構造又はジエン由来の構造等の非極性の部位をもつ場合、特定アルコールが非極性の部位を有しかつ一価のアルコールであるため、樹脂組成物中で合成ゴムと特定アルコールとが相溶し、樹脂組成物中で均一に分散する。
このように樹脂組成物中で合成ゴムとアルカリ金属塩とが特定アルコールの作用で均一に分散することで樹脂組成物を調製してからたとえば6ヶ月など長期間経過しても有機溶剤等のブリード(染み出し)を抑制することができるため、樹脂組成物は優れた保存安定性を示す。
金型清掃用樹脂組成物がポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等の多価アルコール類又は多価アルコールアルキルエーテル類を含む場合、樹脂組成物中で合成ゴムとこれらのアルコールとの相溶性が劣るため、樹脂組成物の製造後長期間、たとえば6ヶ月、が経過すると、これらのアルコールが樹脂組成物からブリードするおそれがある。
【0054】
また、本発明の樹脂組成物が含むことができる特定のアルコールは、洗浄助剤つまり洗浄剤の作用を補助する機能も有する。
成形金型の内部表面の汚れは、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、及びポリイミド樹脂などの封止成形物と、封止成形物が含む離型剤等の各種添加剤とに由来する。封止成形物が含む離型剤等は、一般にポリオレフィンワックスなど非極性である。
また、本発明の樹脂組成物が含むアルカリ金属塩等は極性であり、また、特定のアルコールは非極性の部位をもつ。
成形金型の清掃において、本発明の樹脂成形物を成形した際、樹脂成形物が含むアルカリ金属塩等が封止成形物などの極性の汚れに作用するとともに、樹脂成形物が含む特定アルコールが非極性の汚れにも作用する。
本発明の樹脂組成物は、極性及び非極性のいずれの汚れに対しても膨潤させるなど作用することができるため、優れた清掃性能を示す。
【0055】
前記特定のアルコールにおける非極性の部位とは、特定のアルコールの分子構造における炭化水素基に由来する部位を指す。たとえば炭素数が18の特定のアルコールである1-オクタデカノール[CH(CH17OH]の非極性の部位は、オクタデシル基[CH(CH17-]である。
【0056】
本発明の樹脂組成物に用いることができる特定のアルコールの炭素数は14以上30以下である。炭素数が14以上であるため、本発明の樹脂組成物は、合成ゴムと特定アルコールとの相溶性が優れ、合成ゴムと特定アルコールとが均一に分散することで優れた保存安定性を示す。また、炭素数が30以下であるため、本発明の樹脂組成物は、アルカリ金属塩等が特定アルコールの水酸基へ作用しやすくなり、アルカリ金属塩等と特定アルコールとが均一に分散し、優れた保存安定性を示す。
【0057】
本発明の樹脂組成物に用いることができる特定のアルコールの沸点は、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、180℃以上であることがさらに好ましい。特定のアルコールの沸点が100℃以上であると、熱的安定性が十分に得られ、また、優れた保存安定性を示すことができる。
【0058】
本発明の樹脂組成物に用いることができる特定のアルコールの融点は、25℃以上であることが好ましく、30℃以上160℃以下であることがより好ましく、35℃以上100℃以下であることがさらに好ましい。特定のアルコールの融点が25℃以上、すなわち常温(25℃)で固体であると、樹脂組成物の調製時、樹脂組成物への分散がより容易に制御でき、また樹脂組成物の保存時に経時による有機溶剤等のブリードが抑制できるため好ましい。
【0059】
本発明の樹脂組成物に用いることができる特定のアルコールは、飽和アルコール、すなわち分子構造中に二重結合又は三重結合を有さないアルコールであることが、融点が25℃以上となるため好ましい。
たとえば炭素数が18のアルコール同士で比較した場合、直鎖飽和アルコールである1-オクタデカノールの融点は56℃〜59℃であるのに対し、直鎖不飽和アルコールであるオレイルアルコールの融点は0℃〜5℃である。
【0060】
本発明の樹脂組成物に用いることができる特定のアルコールは、直鎖アルコールであることが、融点が25℃以上となるため好ましい。
たとえば炭素数が16のアルコール同士で比較した場合、直鎖アルコールである1-ヘキサデカノールの融点は49℃〜51℃であるのに対し、分岐アルコールである2-ヘキシル-1-デカノールの融点は−21℃〜−15℃である。
【0061】
本発明の樹脂組成物に用いることができる特定のアルコールが第一級アルコールであれば、アルカリ金属塩等の特定アルコールの水酸基への作用が適正な範囲となり、合成ゴムとアルカリ金属塩とが均一に分散するため好ましい。
【0062】
本発明の樹脂組成物に用いることができる特定のアルコールは、炭素数が14の1-テトラデカノール(融点35℃〜39℃、沸点289℃)、炭素数が16の1-ヘキサデカノール(融点49℃〜51℃、沸点344℃)、炭素数が18の1-オクタデカノール(融点56℃〜59℃、沸点210℃/15mmHg)、炭素数が20の1-エイコサノール(融点64℃〜66℃、沸点190℃/1.3mmHg)、炭素数が22の1-ドコサノール(融点65℃〜72℃)、炭素数が24の1-テトラコサノール(融点75℃〜77℃)、炭素数が26の1-ヘキサコサノール(融点78℃〜80℃)、炭素数が28の1-オクタコサノール(融点81℃〜83℃)及び炭素数が30の1-トリアコンタノール(融点86℃〜87℃)等を挙げることができる。
本発明においては、これら特定のアルコールを1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0063】
本発明の樹脂組成物に用いることができる特定のアルコールの含有量は、合成ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上5質量部以下であることがより好ましく、1質量部以上4質量部以下であることが更に好ましい。0.1質量部以上であれば、金型の清掃性能が優れるため好ましく、また、10質量部以下であれば、樹脂組成物の保存安定性が優れるため好ましい。
【0064】
(加硫剤)
本発明の金型清掃用樹脂組成物は、加硫剤の少なくとも1種を含む。
本発明の樹脂組成物に用いることができる加硫剤は、合成ゴムを架橋可能なものであればよく、硫黄分子を化合物中に含んでいなくともよい。
なお、本明細書において加硫とは、硫黄を添加して合成ゴムを架橋すること及び過酸化物を用いて合成ゴムを架橋することの両方を包含する概念である。
【0065】
本発明の樹脂組成物に用いることができる加硫剤は、硫黄、一塩化硫黄、セレン、テルル、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、一酸化鉛、含硫黄有機化合物、ジチオカルバミン酸塩、オキシム類、テトラクロロ−p−ベンゾキノン、ジニトロソ化合物、変性フェノール樹脂、ポリアミン、過酸化物等を挙げることができる。これらの中でも、本発明の樹脂組成物に用いることができる加硫剤は、過酸化物が好ましい。また、前記過酸化物は、有機過酸化物でも無機過酸化物でもよいが、有機過酸化物がより好ましい。前記有機過酸化物によれば、硫黄を含む加硫剤を用いた際に起こり易い清掃時の金型の腐食作用がなく、短時間で離型に必要な未加硫ゴムの架橋を進めることができ、更に架橋が適切に進行するため、清掃後の樹脂組成物を容易に金型から除去することができる。
【0066】
前記有機過酸化物は、2価の過酸化物構造(−O−O−)を少なくとも1つと、炭化水素基を少なくとも1つとを有していればよい。
前記過酸化物は、1分間半減期温度が、100℃〜190℃であるものが好ましい。1分間半減期温度が190℃より高いと金型清掃時の成形時間が過剰に長くなる。また、金型清掃時に金型温度を上げられない場合、樹脂組成物が十分に加硫せずに脆くなることで、清掃の作業性が低下する傾向がある。1分間半減期温度が100℃未満であると、樹脂組成物の製造時、及び混練加工時に加硫が進行するため、金型清掃時に、樹脂組成物が金型の形状に十分に追随できなくなる傾向がある。
また、前記過酸化物の1分間半減期温度は、140℃〜190℃であることがより好ましく、145℃〜180℃であることが更に好ましい。
【0067】
過酸化物の1分間半減期温度とは、1分間で過酸化物の濃度が初期値の半分に減少する温度をいう。
具体的には、1分間半減期温度は以下のようにして求めることができる。まず、過酸化物をある一定温度(T)で熱分解させた際、過酸化物の初期濃度をa、また、過酸化物の分解量をxとし、時間(t)とlna/(a−x)の関係をプロットし、得られた直線の傾き定数kを求める。温度(T)における半減期は、その定義である式 k(t1/2)=ln2に、先に求めたkを代入することで求めることができる。さらに、同様の手順を繰り返すことで異なる温度毎に、その温度での半減期(t1/2)をそれぞれ求め、得られたln(t1/2)と1/Tとをプロットする。
このようにして得られた直線を外挿することで、このプロットした図から半減期(t1/2)が1分間である温度、すなわち1分間半減期温度を求めることができる。
【0068】
本発明の樹脂組成物に用いることができる有機過酸化物は、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t‐ブチルパーオキシネオデカノエート、ビス(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)ペルオキシド、2,5−ジメチル-2,5-ビス(2−エチルヘキシルパーオキシ)ヘキサン、ビス(4−メチルベンゾイル)パーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシブチレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ヘキシパーオキシイソプロピルノモカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート、n‐ブチル‐4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキシド、ビス‐t‐ブチルパーオキシド、及び1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイドからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン及びn‐ブチル‐4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレートからなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0069】
本発明の樹脂組成物に用いることができる加硫剤は、金型清掃用樹脂組成物の設計に合わせて、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0070】
本発明の樹脂組成物に用いることができる加硫剤の含有量は、合成ゴム100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、1質量部以上10質量部以下であることがより好ましく、2質量部以上8質量部以下であることが更に好ましい。樹脂組成物中の加硫剤の含有量が、合成ゴム100質量部に対して1質量部以上であると、加硫が十分に進み、樹脂組成物が清掃時に金型へ貼りつくことを防ぐことができ、清掃作業性をより向上させることができる。20質量部以下であると、清掃後の樹脂組成物が脆くなることを防ぐことができ、成形金型からの清掃後の樹脂組成物の除去作業を容易にすることができる。
【0071】
本発明の金型清掃用樹脂組成物は、加硫剤の他に、加硫助剤を含有することもできる。
加硫助剤は、アクリル酸モノマー、硫黄、酸化亜鉛等を挙げることができる。特に、加硫剤として過酸化物を用いる場合には、加硫助剤として硫黄又は酸化亜鉛を使用することができる。
【0072】
本発明の金型清掃用樹脂組成物は、加硫促進剤を含有することもできる。
加硫促進剤は、グアニジン系、アルデヒド−アミン系、アルデヒド−アンモニア系、チアゾール系等を挙げることができる。
グアニジン系加硫促進剤は、ジフェニルグアニジン、トリフェニルグアニジン等を挙げることができる。
アルデヒド−アミン系加硫促進剤は、ホルムアルデヒド−パラトルイジン縮合物、アセトアルデヒド−アニリン縮合物等を挙げることができる。
チアゾール系加硫促進剤は、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド等を挙げることができる。
【0073】
また、本発明の金型清掃用樹脂組成物は、加硫促進剤の他に、加硫促進助剤を含有することもできる。加硫促進助剤は、マグネシア、リサージ、石灰等を挙げることができる。
本発明の樹脂組成物に用いることができる加硫助剤、加硫促進剤、又は加硫促進助剤の種類及び量は、樹脂組成物の設計に合わせて適宜選択することができる。
【0074】
(他の成分)
本発明の金型清掃用樹脂組成物は、必要に応じて、水、保水材、充填剤、尿素誘導体又は特定のアルコール以外の有機溶剤、滑剤、離型剤、その他添加剤等の他の成分を含有していてもよい。
【0075】
樹脂組成物の調製時に配合する各種原材料の分散性を向上させ、また成形金型の清掃時に清掃性能がより向上するため、本発明の金型清掃用樹脂組成物は水を含むことが好ましい。樹脂組成物の製造時に添加した水であっても、樹脂組成物を構成する材料に含まれる水であってもよい。本発明の樹脂組成物が含むことができる水は、清掃性能及び保存安定性を向上させるため、無機充填剤等の樹脂組成物を構成する材料に含まれる水であることが好ましい。
【0076】
本発明の樹脂組成物に用いることができる水の含有率は、清掃性能及び保存安定性が向上するため、樹脂組成物の総質量に対して、0.50質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上8.0質量%以下であることがより好ましく、1.5質量%以上5.0質量%以下であることが更に好ましい。
本発明の樹脂組成物における水の含有量は、カールフィッシャー法で測定することができる。具体的には、三菱化学株式会社製のカールフィッシャー水分計CA−100及び水分気化装置VA−100を用いて、水分気化−電量滴定法により測定することができる。なお、気化するための温度は、180℃とする。
【0077】
本発明の樹脂組成物において、水の含有量に対するアルカリ金属塩等の含有量の質量比(アルカリ金属塩等の含有量/水の含有量)は、清掃性能及び保存安定性が向上するため、1/10以上5/1以下であることが好ましく、2/10以上3/1以下であることがより好ましく、3/10以上3/2以下であることが更に好ましい。
【0078】
本発明の金型清掃用樹脂組成物は保水材を含んでもよい。
本発明の樹脂組成物に用いることができる保水材は、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂、イソブチレン−無水マレイン酸系樹脂及びポリアルキレンオキサイド系樹脂等を挙げることができる。
本発明の樹脂組成物において、水の含有量に対する保水材の含有量の質量比(保水材の含有量/水の含有量)は、清掃性能及び保存安定性が向上するため、1/100以上1/1以下であることが好ましく、1/50以上1/2以下であることがより好ましく、1/30以上1/3以下であることが更に好ましい。
【0079】
本発明の金型清掃用樹脂組成物は、充填剤の少なくとも1種を含有することが好ましい。樹脂組成物が充填剤を含有していると、金型清掃時の加圧時により充分に圧力がかかるため、金型の隅々まで樹脂組成物を行き渡らせることができ、成形金型の内部表面の汚れをより効率的に除去することができる。
本発明の樹脂組成物に用いることができる充填剤は、有機充填剤及び無機充填剤のいずれであってもよいが、金型を摩耗させることなく成形金型の内部表面の汚れを除去することができるため、無機充填剤がより好ましい。
【0080】
本発明の樹脂組成物に用いることができる無機充填剤は、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化チタン等を挙げることができる。これらの無機充填剤の中でも、金型を摩耗させることなく成形金型の内部表面の汚れを除去する適切な硬度を有するため、シリカ、炭酸カルシウム及び酸化チタンが好ましく、更に取り扱いが容易で、物理的な研磨効果により洗浄性能が優れるため、シリカが最も好ましい。
【0081】
本発明の樹脂組成物に用いることができるシリカは、特に限定されるものではなく、含水非晶質シリカ、無水非晶質シリカ、結晶性シリカ等を挙げることができ、市販品の中から適宜選択することができる。また、シリカは、湿式シリカであっても、乾式シリカであってもよい。
【0082】
本発明の樹脂組成物に用いることができるシリカの市販品の具体例は、ニップシールAQ、ニップシールLP、ニップシールNA、ニップシールVN3(以上、東ソー・シリカ株式会社製)等を挙げることができる。
【0083】
本発明の樹脂組成物に用いることができるシリカの嵩密度は、金型清掃用樹脂組成物の調製時の作業性が改善できるため、30g/l以上300g/l以下であることが好ましく、100g/l以上300g/l以下であることがより好ましい。なお、シリカの嵩密度は、JIS K5105−18に準拠して測定される。
【0084】
本発明の金型清掃用樹脂組成物がシリカを含有する場合、その含有量は、清掃性能及び保存安定性が向上するため、合成ゴム100質量部に対して、10質量部以上60質量部以下であることが好ましく、15質量部以上50質量部以下であることがより好ましく、20質量部以上45質量部以下であることが更に好ましい。
【0085】
本発明の金型清掃用樹脂組成物が、シリカ以外の充填剤を含有する場合、その含有量は、合成ゴム100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、3質量部以上8質量部以下であることがより好ましい。
本発明の樹脂組成物が充填剤を含有する場合、充填剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0086】
(有機溶剤)
本発明の金型清掃用樹脂組成物は、尿素誘導体及び特定のアルコールに加えて有機溶剤の少なくとも1種を含有していてもよい。
本発明の樹脂組成物に用いることができる有機溶剤は、特に限定されるものではなく、金型清掃用樹脂組成物に通常用いられる有機溶剤から適宜選択することができる。有機溶剤は、具体的には、多価アルコール溶剤;アミド溶剤;ケトン溶剤;エーテル溶剤等を挙げることができる。
本発明の樹脂組成物が尿素誘導体及び特定のアルコール以外の有機溶剤を含有する場合、前記有機溶剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0087】
(滑剤)
本発明の金型清掃用樹脂組成物は、滑剤の少なくとも1種を含有していてもよい。金型清掃用樹脂組成物は、滑剤を含有することにより、調製時の混練において配合剤の分散性が向上する。
本発明の樹脂組成物に用いることができる滑剤は、金属石鹸系滑剤、脂肪酸エステル系滑剤、脂肪酸系滑剤、アミド系滑剤、炭化水素系滑剤、アニオン系界面活性剤等を挙げることができる。
本発明の樹脂組成物に用いることができる金属石鹸系滑剤は、ステアリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム等を挙げることができる。
本発明の樹脂組成物に用いることができる脂肪酸エステル系滑剤は、ブチルステアレート、ブチルラウレート、ステアリルステアレート等を挙げることができる。
本発明の樹脂組成物に用いることができる脂肪酸系滑剤は、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸等を挙げることができる。
【0088】
本発明の樹脂組成物に用いることができるアミド系滑剤は、エチレンビスステアロアミド、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド等を挙げることができる。
本発明の樹脂組成物に用いることができる炭化水素系滑剤は、流動パラフィン、パラフィンワックス、合成ポリエチレンワックス等を挙げることができる。
これらの中でも、滑剤は、加工時の混練において配合剤の分散を良好にすることができるため、ステアリン酸、ベヘン酸及びモンタン酸が好ましく、ステアリン酸がより好ましい。
本発明の樹脂組成物が滑剤を含有する場合、滑剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0089】
本発明の金型清掃用樹脂組成物が滑剤を含有する場合、その含有量は、樹脂組成物に含有される全成分中に、質量基準で、0.1質量%〜20質量%であることが好ましく、0.3質量%〜15質量%であることがより好ましい。また、前記滑剤の含有量は、合成ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。
【0090】
(離型剤)
本発明の金型清掃用樹脂組成物は、離型剤の少なくとも1種を含有していてもよい。樹脂組成物が離型剤を含有していると、成形後の金型からの離型性が優れたものとなり、清掃時の作業性が向上する。
本発明の樹脂組成物に用いることができる離型剤は、金属石鹸系離型剤、脂肪酸エステル系離型剤、合成ワックス、脂肪酸アミド系離型剤等を挙げることができる。
本発明の樹脂組成物に用いることができる金属石鹸系離型剤は、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛等を挙げることができる。
本発明の樹脂組成物に用いることができる脂肪酸エステル系離型剤、合成ワックス、及び脂肪酸アミド系離型剤は、リコワックスOP(モンタン酸部分ケン化エステル、クラリアントジャパン株式会社製)、ロキシオールG−78(高分子複合エステル、エメリーオレオケミカルズジャパン株式会社製)、リコルブH−4(変性炭化水素、クラリアントジャパン株式会社製)、ロキシオールVPN881(鉱油系合成ワックス、エメリーオレオケミカルズジャパン株式会社製)、脂肪酸アマイドS(脂肪酸アミド、花王株式会社製)、カオーワックスEB−P(脂肪酸アミド、花王株式会社製)、アルフローHT−50(脂肪酸アミド、日油株式会社製)等の市販品を用いることができる。
本発明の樹脂組成物に用いることができる離型剤の種類及び量は、樹脂組成物の設計に合わせて適宜選択することができる。
本発明の樹脂組成物が離型剤を含有する場合、離型剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0091】
(その他添加剤)
その他添加剤は、可塑剤、粘着付与剤、発泡剤、カップリング剤、スコーチ防止剤、着色剤等の公知の添加剤を挙げることができる。これらは目的等に応じて適宜選択される。
【0092】
(金型清掃用樹脂組成物の調製方法)
本発明の金型清掃用樹脂組成物の調製方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用することができる。
本発明の金型清掃用樹脂組成物は、たとえば、以下の方法により調製することができる。
合成ゴムと、アルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物からなる群より選ばれる化合物と、尿素誘導体と、特定のアルコールと、加硫剤と、必要に応じて、水と、各種添加剤と、をジャケット付き加圧型ニーダー、バンバリーミキサー、ロールミキサー等を用いて混練し、混練物を得る。得られた混練物の形状は、使用する金型により、適宜選択するとよい。たとえば、シート状に成形する場合には、得られた混練物を加圧ロールに通して成形する。シート状に成形する場合、シートの厚みは、特に限定されるものではないが、たとえば3mm〜10mmの範囲にするとよい。
【0093】
本発明の金型清掃用樹脂組成物の調製方法においては、合成ゴムと、アルカリ金属塩等と、尿素誘導体と、特定のアルコールと、加硫剤と、を一括して混合してもよい。また、予めアルカリ金属塩等を水に溶解させた水溶液と、その他の構成成分とを混合してもよい。
【0094】
(用途)
本発明の金型清掃用樹脂組成物は、成形金型の汚れを清掃するために用いることができる。成形金型の種類は、特に限定されるものではない。成形金型は、光学部材封止用金型、半導体材料封止用金型、ゴム成形金型等を挙げることができる。具体的には、発光ダイオード(LED)用の封止金型、半導体パッケージ用の封止金型、ゴムパッキン成形金型、熱硬化性樹脂部品成形金型等を挙げることができる。本発明の樹脂組成物を用いて汚れを清掃する成形金型は、LED用の封止金型、半導体パッケージ封止金型等が好ましい。
【0095】
成形金型により成形される樹脂(以下、「清掃対象樹脂」と称することもある。)の種類は、特に制限されるものではなく、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂及びポリイミド等を挙げることができる。
【0096】
金型清掃用樹脂組成物を用いる金型清掃方法は、トランスファータイプと、コンプレッションタイプとに大別されるが、本発明の金型清掃用樹脂組成物は、トランスファータイプ及びコンプレッションタイプのいずれの清掃方法にも適用することができる。作業性を向上し清掃作業時間を短縮できるため、コンプレッションタイプへの適用がより好ましい。
【0097】
本発明の金型清掃用樹脂組成物は、樹脂組成物を付与した金型を、清掃対象樹脂の成形温度に応じた温度に加熱して、使用すればよい。成形温度は、清掃対象樹脂の種類に応じて適宜選択される。たとえば、清掃対象樹脂がエポキシ樹脂である場合には、約170℃に金型を加熱すればよい。
【0098】
(金型清掃用樹脂組成物の保存)
本発明の金型清掃用樹脂組成物は、光の照射による劣化や樹脂組成物が含む各種揮発成分の拡散を防ぐため、チャック付きのアルミニウム蒸着処理ポリエチレン製袋に密閉し保存することが好ましい。
【0099】
(金型清掃方法)
本発明の金型清掃方法は、既述の本発明の金型清掃用樹脂組成物を、成形金型の内部表面に付与する工程(以下、「付与工程」ともいう。)と、金型清掃用樹脂組成物が付与された金型を加熱する工程(以下、「加熱工程」ともいう。)とを有する。金型清掃方法は、必要に応じてその他の工程を有していてもよい。
【0100】
(付与工程)
付与工程は、本発明の金型清掃用樹脂組成物を成形金型の内部表面に付与する工程である。本発明の樹脂組成物を、成形金型の内部表面に付与する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用することができる。本発明の樹脂組成物の成形金型の内部表面への付与は、シート状に成形した本発明の樹脂組成物を圧縮成形する方法、トランスファー成形する方法等の公知の方法によって行なうことができる。
本発明の樹脂組成物を成形金型の内部表面に付与する際には、成形金型のキャビティ部分の一部の表面を覆うように付与しても、全部の表面を覆うように付与してもよいが、全部の表面を覆うように樹脂組成物を付与することが好ましい。
【0101】
(加熱工程)
加熱工程は、金型内部表面に付与した本発明の金型清掃用樹脂組成物を加熱する工程である。
加熱方法及び加熱条件(温度、時間、回数等)は、特に限定されるものではなく、清掃対象樹脂の種類、及び本発明の樹脂組成物の種類に応じて、公知の方法及び条件を適宜選択することができる。
【0102】
加熱工程においては、たとえば、工程が簡便になるため、清掃対象樹脂を金型で成形する際の温度と同様の方法及び同等の温度で、金型清掃用樹脂組成物を加熱することが好ましい。これにより、金型清掃のために金型を加熱又は冷却する必要がなく、金型清掃後、速やかに金型成形を行なうことができる。
加熱工程における温度は、160℃〜190℃であることが好ましく、170℃〜180℃であることがより好ましい。
【0103】
加熱時間は、金型清掃用樹脂組成物が、充分に加硫し、かつ、成形金型の内部表面全体に均一に行き渡れば、特に限定されるものではないが、150秒〜500秒であることが好ましく、180秒〜360秒であることがより好ましい。
【0104】
付与工程及び加熱工程は、複数回繰り返してもよい。付与工程及び加熱工程の繰り返し回数(以下、「ショット数」ともいう)は、1回〜7回が好ましく、1回〜2回がより好ましい。なお、本発明の樹脂組成物によれば、少ない繰り返し回数で金型から汚れを除去することができる。
【0105】
(その他の工程)
本発明の金型清掃方法は、必要に応じてその他の工程を設けてもよい。その他の工程は、予熱工程、予備加圧工程等を挙げることができる。
【実施例】
【0106】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。但し、本発明は、その主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0107】
(実施例1)
・金型清掃用樹脂組成物の調製
実施例1にかかる金型清掃用樹脂組成物を、以下の手順で作製した。3000mlのジャケット付き加圧型ニーダー中に、エチレン−プロピレンゴム(商品名EPT 4021H、三井化学株式会社製、エチレン:プロピレンの組成比=55:45、ムーニー粘度ML1+4(100℃)24、ジエン含有率8.1%、ヨウ素価22)を40部と、ブタジエンゴム(商品名BR01、JSR株式会社製、ムーニー粘度ML1+4(100℃)45、比重0.9、シス1,4結合含有率95%)を60部と、を添加し、冷却しながら約3分間加圧混練した。混練生地がパン生地状になり、混練生地の温度が約80℃となった。
次いで、アルカリ金属塩としてリン酸三カリウム(和光純薬株式会社製)を2部と、尿素誘導体として1,3-ジメチル尿素(東京化成工業株式会社製)を3部と、特定のアルコールとして炭素数が14の一価アルコールである1-テトラデカノール(東京化成工業株式会社製)を3部と、離型剤として高分子複合エステル(商品名LOXIOL G78、エメリーオレオケミカルズジャパン株式会社製)を1部、ステアリン酸亜鉛(商品名Zn−St GF200、日本油脂株式会社製)を1部、及び変性炭化水素ワックス(商品名Licolub H4、クラリアントジャパン株式会社製)を0.5部と、充填剤として非晶質シリカ(商品名ニップシールLP、東ソー・シリカ株式会社製)を30部と、酸化チタン(商品名CR−80、石原産業株式会社製)を5部と、を加えて約3分間混練した。最後に、加硫剤として2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(商品名パーヘキサ25B−40、日油株式会社製、1分間半減期温度179.8℃)6部を加えて引続き約1分間混練した。この間の混練物温度は100℃を超えないように調節した。得られた混練物は、速やかに加圧ロールに通し、シート状に加工すると共に25℃以下に冷却し、厚さ7mmのシート状にして、実施例1の金型清掃用樹脂組成物を得た。
実施例1の金型清掃用樹脂組成物について、カールフィッシャー水分計を用いて水の含有量を測定したところ、樹脂組成物の総質量に対して0.23質量%であった。
【0108】
(清掃性能評価)
市販のビフェニル系エポキシ樹脂成形材料(商品名EME−G700、住友ベークライト株式会社製)を用い、先端に超硬合金製のチップが付いたプランジャーを備えたQFP28×28(6ポット−12キャビティ)の金型で500ショットの成形を行い、成形金型の内部表面の汚れを形成した。この内部表面に汚れを有する成形金型を用いて、上記で得られた金型清掃用樹脂組成物について繰り返しコンプレッション成形を行い、成形金型の内部表面の汚れが除去できるまでに要した成形回数(ショット数)により、清掃性能を評価した。なお、汚れの除去状態は目視により判定した。
【0109】
(保存安定性評価)
上記で得られた金型清掃用樹脂組成物を、23℃の環境下で6ヶ月放置した後、上記清掃性能評価で行った試験と同様にして清掃性能を評価した。なお、金型清掃用樹脂組成物は、水分量の低下と光の照射による劣化とを防ぐため、チャック付きのアルミニウム蒸着処理ポリエチレン製袋に密閉し保存した。
保存後の金型清掃用樹脂組成物を、まず目視し、有機溶剤等のブリードの有無を確認後、上記の清掃性能評価と同様の手順で清掃性能を評価することで樹脂組成物の保存安定性を評価した。
なお、チャック付きのアルミニウム蒸着処理ポリエチレン製袋に密閉し保存後の実施例1の金型清掃用樹脂組成物について、カールフィッシャー水分計を用いて水の含有量を測定したところ、樹脂組成物の総質量に対して0.23質量%であった。
【0110】
(実施例2〜6、比較例1〜5)
実施例1の金型清掃用樹脂組成物の作製において、配合成分を表1に記載したようにそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜6及び比較例1〜5の金型清掃用樹脂組成物を得た。清掃性能評価及び保存安定性評価の評価結果を表1に示す。
なお、表1中、「−」は未配合であることを示す。
【0111】
【表1】
【0112】
表1の結果より、本発明の金型清掃用樹脂組成物は、優れた清掃性能を有していることが明らかとなった。また、本発明の樹脂組成物では、長期間保存しても優れた清掃性能が維持されており、保存安定性が優れることも明らかとなった。
一方、各比較例の金型清掃用樹脂組成物は、清掃性能及び保存安定性のいずれかの性能が実施例の樹脂組成物より劣った。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明の金型清掃用樹脂組成物は、清掃性能と保存安定性とが共に優れるため、エポキシ樹脂等の封止成形物の成形工程で発生する金型表面の汚れを取り除くために好適に用いることができる。