(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
演奏者が楽曲に合わせて右足で操作するための右足用ペダルと左足で操作するための左足用ペダルとが前記演奏者が座る座面の中心を基準に左右対称に配設され、且つ前記演奏者が楽曲に合わせて右手で打撃するための右手用打撃パッドと左手で打撃するための左手用打撃パッドとが前記座面の中心を基準に左右対称に配設された音楽療法支援装置であって、
前記楽曲における小節線のタイミングを少なくとも含むタイミング情報を取得する取得部と、
第1の検出部により検出された、前記右足用ペダルの操作タイミング、左足用ペダルの操作タイミング、右手用打撃パッドへの打撃タイミング、及び左手用打撃パッドへの打撃タイミングを、それぞれの演奏情報に変換する変換部と、
前記タイミング情報に対する前記それぞれの演奏情報のずれ量を算出するずれ量算出部と、
前記右足用ペダルの操作のずれ量と前記左足用ペダルの操作のずれ量との比較、及び/または前記右手用打撃パッドへの打撃のずれ量と前記左手用打撃パッドへの打撃のずれ量との比較により、前記演奏者の身体のバランスデータを算出する第1の算出部と、
を備えることを特徴とする音楽療法支援装置。
演奏者が楽曲に合わせて右足で操作するための右足用ペダルと左足で操作するための左足用ペダルとが前記演奏者が座る座面の中心を基準に左右対称に配設され、且つ前記演奏者が楽曲に合わせて右手で打撃するための右手用打撃パッドと左手で打撃するための左手用打撃パッドとが前記座面の中心を基準に左右対称に配設された音楽療法支援装置であって、
前記右足用ペダルの操作の強さ、前記左足用ペダルの操作の強さ、前記右手用打撃パッドへの打撃の強さ、及び前記左手用打撃パッドへの打撃の強さそれぞれを検出する第2の検出部と、
前記第2の検出部により検出された、前記右足用ペダルの操作の強さと前記左足用ペダルの操作の強さとの比較、及び/または、前記右手用打撃パッドへの強さと前記左手用打撃パッドへの打撃の強さとの比較により、前記演奏者の身体のバランスデータを算出する第2の算出部と、
を備えることを特徴とする音楽療法支援装置。
【背景技術】
【0002】
音楽を利用して身体機能の回復や心身のケア等を行う音楽療法が普及している。音楽療法に関しては、非特許文献1をはじめ、様々な書籍が出版されている。また、音楽療法には、音楽を聴く方法の他、カラオケを用いて歌唱する方法や、楽器を演奏する方法等がある。
【0003】
カラオケによる歌唱が健康維持、介護、ストレス解消に役立つことは広く知られている。たとえば、特許文献1には、カラオケを用いた歌唱によるカロリー消費量を算出し、歌唱者にカロリー消化効果として報知することにより、カロリー管理やダイエットなど健康維持努力を支援する技術が開示されている。
【0004】
また、楽器の種類(打楽器、管楽器、弦楽器等)により、音楽療法の観点からそれぞれ異なった特徴を持つことが知られている。
【0005】
特許文献2には、ハンドベルを用いた音楽療法において、複数のリハビリテーション対象者一人一人の演奏状態を詳細に自動的に記録し、リハビリテーションの進行具合を診断するための支援方法に関する技術が開示されている。特許文献3には、身体の動作機能を正常に発揮することが困難な状況にある者(身体障害者、痴呆症患者あるいは高齢者等)のためのリハビリテーションに有用な打楽器に関する技術が開示されている。
【0006】
更に、打楽器を用いる例としては、演奏技術の向上を目的とするのではなく、心や体の健康を目的としたトレーニングを行うドラム・スクール等も知られている。このようなトレーニングは、打楽器として市販されている電子ドラム・セット(たとえば、非特許文献2のURLを参照)を用いる。
【0007】
一方、楽器を演奏した結果を評価するシステムも従来から知られている。
【0008】
たとえば、特許文献4には、演奏の賑やかさを評価することができる電子打楽器や演奏評価装置に関する技術が開示されている。また、特許文献5には、画面表示された画像を見ながら楽曲再生に合わせてプレイヤーが打楽器を演奏し、演奏されたタイミングをその楽曲のリズムに応じて評価するタイミングゲーム装置に関する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、打楽器を用いて音楽療法を行う場合、その目的(身体機能の回復等)を考えると、身体の左右(右手と左手、右足と左足)で偏りのない動作を行うことができるようになることが理想である。
【0012】
一方、従来からある電子ドラム・セットは、楽曲のドラムパートを演奏するためのものである。よって、アコースティックドラムセット本来のドラムやシンバルの位置を模した構成となっている。たとえば、非特許文献2の電子ドラム・セットでは、パッドの配置は左右対称ではなく、ハイハット入力用パッドは左側にのみ配置されている。このような電子ドラム・セットでは、身体の左右で偏りのない動作を行うこと(偏りのない動作を行うためのトレーニングを行うこと)は困難である。
【0013】
また、音楽療法は、音楽的表現や演奏テクニックの向上を目的とするものではない。よって、打楽器を用いた音楽療法における評価データとしては、楽曲のドラムパート演奏としてのデータ(ドラムパートにあったタイミングでドラムが叩かれているか等)は必須ではない。寧ろ、音楽療法における評価データとしては、身体の左右の偏りを判断するためのデータ(身体のバランスデータ)が求められる。
【0014】
本発明の目的は、打楽器を用いた音楽療法を施しながら、身体の左右の偏りを判断するためのデータを取得することが可能な音楽療法支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、請求項1に係る音楽療法支援装置は、演奏者が楽曲に合わせて右足で操作するための右足用ペダルと左足で操作するための左足用ペダルとが前記演奏者が座る座面の中心を基準に左右対称に配設され、且つ前記演奏者が楽曲に合わせて右手で打撃するための右手用打撃パッドと左手で打撃するための左手用打撃パッドとが前記座面の中心を基準に左右対称に配設されている。音楽療法支援装置は、取得部と、変換部と、ずれ量算出部と、第1の算出部とを備える。取得部は、前記楽曲における小節線のタイミングを少なくとも含むタイミング情報を取得する。変換部は、第1の検出部により検出された、前記右足用ペダルの操作タイミング、左足用ペダルの操作タイミング、右手用打撃パッドへの打撃タイミング、及び左手用打撃パッドへの打撃タイミングを、それぞれの演奏情報に変換する。ずれ量算出部は、前記タイミング情報に対する前記それぞれの演奏情報のずれ量を算出する。第1の算出部は、前記右足用ペダルの操作のずれ量と前記左足用ペダルの操作のずれ量との比較、及び/または前記右手用打撃パッドへの打撃のずれ量と前記左手用打撃パッドへの打撃のずれ量との比較により、前記演奏者の身体のバランスデータを算出する。
【0016】
本発明の音楽療法支援装置によれば、打楽器を用いた音楽療法を施しながら、その操作タイミングに基づいて身体の左右の偏りを判断するためのデータ(身体のバランスデータ)を取得することができる。
【0017】
また、上記課題を解決するために、請求項2に係る音楽療法支援装置は、請求項1記載の音楽療法支援装置であって、第1の生成部と第1の出力部とを備える。第1の生成部は、前記演奏情報に基づいて楽音信号を生成する。第1の出力部は、前記楽曲の音声信号と前記楽音信号とを混合して放音する。
【0018】
この場合、演奏者は楽曲と自己の演奏とを合わせて聴きながら音楽療法を受けることができる。
【0019】
また、上記課題を解決するために、請求項3に係る音楽療法支援装置は、演奏者が楽曲に合わせて右足で操作するための右足用ペダルと左足で操作するための左足用ペダルとが前記演奏者が座る座面の中心を基準に左右対称に配設され、且つ前記演奏者が楽曲に合わせて右手で打撃するための右手用打撃パッドと左手で打撃するための左手用打撃パッドとが前記座面の中心を基準に左右対称に配設されている。音楽療法支援装置は、第2の検出部と、第2の算出部とを備える。第2の検出部は、前記右足用ペダルの操作の強さ、前記左足用ペダルの操作の強さ、前記右手用打撃パッドへの打撃の強さ、及び前記左手用打撃パッドへの打撃の強さそれぞれを検出する。第2の算出部は、前記第2の検出部により検出された、前記右足用ペダルの操作の強さと前記左足用ペダルの操作の強さとの比較、及び/または、前記右手用打撃パッドへの強さと前記左手用打撃パッドへの打撃の強さとの比較により、前記演奏者の身体のバランスデータを算出する。
【0020】
本発明の音楽療法支援装置によれば、打楽器を用いた音楽療法を施しながら、その操作の強さに基づいて身体の左右の偏りを判断するためのデータ(身体のバランスデータ)を取得することができる。
【0021】
また、上記課題を解決するために、請求項4に係る音楽療法支援装置は、請求項3記載の音楽療法支援装置であって、第2の生成部と第2の出力部とを備える。第2の生成部は、前記第2の検出部により検出された強さに基づいて楽音信号を生成する。第2の出力部は、前記楽音信号を放音する。
【0022】
この場合、演奏者は自己の演奏を聴きながら音楽療法を受けることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、打楽器を用いた音楽療法を施しながら、身体の左右の偏りを判断するためのデータを取得することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<第1実施形態>
図1〜
図5を参照して第1実施形態に係る音楽療法支援装置1について説明する。
【0026】
==音楽療法支援装置の概要==
図1は、本実施形態に係る音楽療法支援装置1の外観を示す図である。音楽療法支援装置1は、台座2、座部3、支柱4、右足用ペダル5A、左足用ペダル5B、右手用打撃パッド6A、左手用打撃パッド6B、出力部7(ディスプレイ7A及びスピーカ7B)を含んで構成される。
【0027】
以下、右足用ペダル5A、左足用ペダル5B、右手用打撃パッド6A、左手用打撃パッド6Bの全部または一部を「打楽器」という場合がある。また、右足用ペダル5Aの操作、左足用ペダル5Bの操作、右手用打撃パッド6Aの打撃、左手用打撃パッド6Bの打撃の全部または一部を「(打楽器の)操作」という場合がある。
【0028】
座部3は台座2上に配置される。演奏者(リハビリテーションを行う患者等)は、座部3の座面3Aに座り、楽曲に合わせて打楽器を操作する。座部3は演奏者の身長に合わせて高さが可変である。座部3の位置は、台座2上で変更できるようにしてもよい。
【0029】
支柱4は、台座2上であって、座部3と対向する位置に配置される。支柱4は、右手用打撃パッド6A、左手用打撃パッド6B、及び出力部7を支える。支柱4は、座部3に合わせて高さが可変である。
【0030】
右足用ペダル5A及び左足用ペダル5Bは、台座2の上に配置される。右足用ペダル5Aは、演奏者が楽曲に合わせて右足で操作するためのものである。左足用ペダル5Bは、演奏者が楽曲に合わせて左足で操作するためのものである。右足用ペダル5Aと左足用ペダル5Bとは、座部3の座面3Aの中心(座部3に座った演奏者の中心)を基準として左右対称に配設されている。台座2上における各ペダルの位置は可変であってもよい。但し、各ペダルの位置を変えた場合であっても、右足用ペダル5Aと左足用ペダル5Bとが座面3Aの中心を基準として左右対称となっている必要がある。
【0031】
右手用打撃バッド6A及び左手用打撃パッド6Bは、支柱4から座部3側に延出している。各打撃パッドは、演奏者の手により、或いはスティック等を用いて間接的に打撃される打撃面を有する。各打撃パッドの直径はたとえば、約20cmである。右手用打撃パッド6Aは、演奏者が右手で打撃するためのものである。左手用打撃パッド6Bは、演奏者が左手で打撃するためのものである。右手用打撃パッド6Aと左手用打撃パッド6Bとは、支柱4に支えられた状態で、座部3の座面3Aの中心を基準として左右対称に配設されている。支柱4に対する各パッドの位置(高さ、角度)は可変であってもよい。但し、各パッドの位置を変えた場合であっても、右手用打撃パッド6Aと左手用打撃パッド6Bとが座面3Aの中心を基準として左右対称となっている必要がある。
【0032】
ここで、本実施形態における音楽療法支援装置1は、音楽表現を目的として構成されたものではない。すなわち、本実施形態における「楽曲に合わせて(打楽器を操作する)」とは、楽曲のドラムパートに合わせて演奏する場合に限られるものではない。「楽曲に合わせて(打楽器を操作する)」とは、楽曲が流れている状態で任意のタイミング(楽曲のドラムパートとは関係ないタイミング)で打楽器を操作する場合(楽曲をペースメーカとして利用する場合)を含む概念である。
【0033】
また、「左右対称に配設」とは、座面3Aの中心を基準として一対の打楽器(一対のペダル、一対の打撃パッド)が、完全に左右対称となるよう配設される場合以外に、右手及び左手(右足及び左足)の操作条件が等しくなる所定の範囲において配設される場合を含む。具体例として、「右手用打撃パッド6Aと左手用打撃パッド6Bが左右対称」とは、右手から右手用打撃パッド6Aまでの距離と左手から左手用打撃パッド6Bまでの距離とがほぼ等しく、且つ支柱4に対する右手用打撃パッド6Aの傾きと支柱4に対する左手用打撃パッド6Bの傾きがほぼ等しくなっている状態を含む。
【0034】
ディスプレイ7Aは、流れている楽曲の残り時間等、各種情報が表示される。なお、ディスプレイ7Aは、音楽療法支援装置1を操作するためのタッチパネル(操作部15。後述)として機能してもよい。スピーカ7Bは、楽曲等の音声信号に基づく音を放音する。
【0035】
==音楽療法支援装置のシステム構成==
図2は音楽療法支援装置1のシステム構成例を示す図である。本実施形態に係る音楽療法支援装置1は、上記構成の他、制御部11、音源モジュール12、記憶部13、外部音源14、操作部15、及び検出部16a〜16dを含む。各構成はインターフェース(図示なし)を介してバスBに接続されている。なお、本実施形態に係る音楽療法支援装置1としては、少なくとも右足用ペダル5A、左足用ペダル5B、右手用打撃パッド6A、左手用打撃パッド6B、及び制御部11を含んでいればよい。
【0036】
制御部11は、CPU11aおよびメモリ11bを備える。CPU11aは、メモリ11bに記憶された動作プログラムを実行することにより各種の制御機能を実現する。メモリ11bは、CPU11aにより実行されるプログラムを記憶したり、プログラムの実行時に各種情報を一時的に記憶したりする記憶装置である。
【0037】
音源モジュール12は、スピーカ7Bから放音するための楽音信号を生成する。具体的には、音源モジュール12は、打楽器等の操作タイミング(演奏情報(後述))に基づいた楽音信号を生成する。また、音源モジュール12は、音楽療法で使用している楽曲と楽音信号とを混合した信号を生成し、アンプ等(図示なし)で増幅してスピーカ7Bに入力する。スピーカ7Bはその信号に基づく音を放音する。音源モジュール12は、生成した楽音信号のみを増幅してスピーカ7Bに入力してもよい。音源モジュール12は、「第1の生成部」の一例である。また、音源モジュール12及びスピーカ7Bは、「第1の出力部」の一例である。
【0038】
記憶部13は、各種のデータを記憶する記憶装置(ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等)である。記憶部13は、たとえば、音楽療法に用いる楽曲のデータを記憶する。
【0039】
外部音源14は、CD等の外部メディアから音楽療法に用いる楽曲(楽曲の音声信号)を入力するための装置である。
【0040】
操作部15は、音楽療法支援装置1に対する指示入力を行うためのものである。操作部15は、たとえば、装置本体に設けられたスイッチや、リモコン、ディスプレイ7Aに表示されるタッチパネルである。制御部11は、操作部15からの指示入力(入力信号)に基づいて、音楽療法支援装置1の各種動作(音楽療法の開始や停止等)を実行する。また、音楽療法に使用する楽曲は、操作部15により、複数の候補の中から任意に選択することが可能である。
【0041】
検出部16aは、右足用ペダル5Aに設けられ、その操作タイミングを検出する。検出部16bは、左足用ペダル5Bに設けられ、その操作タイミングを検出する。検出部16cは、右手用打撃パッド6Aに設けられ、その打撃タイミングを検出する。検出部16dは、左手用打撃パッド6Bに設けられ、その打撃タイミングを検出する。操作タイミングは、楽曲に合わせて時系列に検出される。検出部16a〜16dは、検出した信号をバスBに出力し、この信号は制御部11(変換部111。後述)に入力される。検出部16a〜16dは、振動センサや感圧センサを用いることができる。検出部16a〜16dは、「第1の検出部」の一例である。
【0042】
==音楽療法支援装置の機能ブロック==
図3は音楽療法支援装置1の機能ブロックを示す図である。操作部15から音楽療法を開始する旨の指示入力があった場合、CPU11aがメモリ11bに記憶されている所定の動作プログラムを読み出して実行することにより、制御部11は、取得部110、変換部111、ずれ量算出部112、第1の算出部113として機能する。
【0043】
取得部110は、楽曲における小節線のタイミングを少なくとも含むタイミング情報を取得する。
【0044】
本実施形態におけるタイミング情報は、小節線のタイミング(位置)及び拍頭のタイミング(位置)の情報を含む。取得部110は、楽曲のデータ(楽曲の音声信号)を解析し、その楽曲の小節線のタイミング及び拍頭のタイミングを抽出し、時系列のデータ(タイミング情報)として取得する。小節線のタイミング及び拍頭のタイミングを抽出するには特開2007−052394号公報に開示の技術など、拍子と小節線位置を検出するための公知の技術を用いることができる。
【0045】
具体例として、取得部110は、拍子(4分の4拍子)、小節線のタイミング(0秒、2秒・・・・32秒)を検出し、テンポは楽曲を通して一定(120)であることを検出したとする。この場合、拍頭のタイミングは小節毎に0.5秒、1秒、1.5秒、2秒であり、楽曲の長さは16小節で32秒となる。
【0046】
図4左欄は、取得したタイミング情報を[小節−拍−TPQN]のデータとして示した例である。TPQN(Tick Per Quarter Note)は、1拍の長さを所定の数(ここでは、120(0〜119))で区切ったものである。本実施形態においては、1拍の長さをTPQN:120で設定している(TPQNは000が基準値)。たとえば、タイミング情報[000−01−000]は、1小節2拍目のタイミング(TPQNは基準値の000)を示す。
【0047】
なお、記憶部13は、タイミング情報を予め有する楽曲データ(MIDIデータ)を記憶していてもよい。この場合、取得部110は、選択された楽曲データを読み出すだけでタイミング情報を取得することができる。また、TPQNは、240や480といった値で設定してもよい。
【0048】
変換部111は、検出部16aにより検出された右足用ペダル5Aの操作タイミング、検出部16bにより検出された左足用ペダル5Bの操作タイミング、検出部16cにより検出された右手用打撃パッド6Aへの打撃タイミング、及び検出部16dにより検出された左手用打撃パッド6Bへの打撃タイミングを、それぞれの演奏情報に変換する。演奏情報とは、演奏者が打楽器を操作したタイミングを示す情報である。
【0049】
図5は、
図4に示すタイミング情報の1小節目([000−00−000]から[001−00−000]までの間隔)における打楽器の操作タイミングの例を示した図である。
図5における白丸は、理想的な操作タイミング(TPQN[000])を示す。
図5における黒丸は、実際の操作タイミングを示す。
【0050】
この例では、「拍頭で打楽器を操作し、且つ各ペダルは左右交互に操作し、各パッドは1拍おきに左右同時に打撃する」という予め指示されたパターンに基づいて演奏者が演奏した結果を示す。すなわち、1拍目([00])及び3拍目([02])では、左足用ペダル5B、右手用打撃パッド6A及び左手用打撃パッド6Bを操作する。2拍目([01])及び4拍目([03])では、右足用ペダル5Aのみ操作する。
【0051】
変換部111は、あるタイミングでペダルや打撃パッドが操作されると、そのタイミングを演奏情報に変換する。たとえば、操作タイミングX(
図5参照)で右足用ペダル5Aが操作されたとする。この場合、変換部111は、検出部16aが検出した操作タイミングXを時系列のタイミング情報に照らし合わせ、その操作タイミングXが含まれる小節の位置[000]及び拍の位置[03]を特定し、且つ当該拍におけるTPQN[+16]を求める。変換部111は、これらの値を右足用ペダル5Aの演奏情報[000−03−016]として変換する。
【0052】
操作タイミングを検出する時間(本実施形態ではTPQN)はある範囲(検出範囲)に設定されることが望ましい。たとえば、検出範囲は、拍毎にTPQN[000]を基準として±30の範囲が設定される(
図5の一点鎖線)。この場合、変換部111は、その範囲に含まれる打楽器の操作タイミングのみを演奏情報に変換する。変換部111は、TPQN[000]の基準からの遅れは、プラスの値とし、基準からの進み(たとえば、本来は2拍で操作すべきものが、突っ込んで1拍の終わりで操作されたこと)はマイナスの値とする。なお、
図5においては、上記範囲(TPQN±30)に含まれない操作タイミングを×印で示している。
【0053】
変換部111は、上記の処理を演奏開始から演奏終了まで繰り返すことにより、
図4右欄に示すような打楽器毎の時系列の演奏情報を取得する。なお、
図4右欄のうち、空欄は、打楽器が操作されなかったことを示す。
図4右欄のうち、斜線は、打楽器の操作はなされたが、設定されたTPQNの範囲に含まれなかったことを示す(対応する打楽器の操作がなかったものとして扱う)。
【0054】
なお、上記例では、左足用ペダル5Bの操作と同時に楽曲の再生がスタートするよう設定されている。従って、左足用ペダル5Bの操作の演奏情報は[000−00−000](タイミング情報との誤差無し)となる。また、変換部111は、打楽器毎に少なくとも一つの演奏情報を求めることでよい。すなわち、操作タイミングの検出は打楽器毎に少なくとも一回おこなわれればよい。
【0055】
ずれ量算出部112は、タイミング情報に対する演奏情報のずれ量を算出する。本実施形態において、ずれ量算出部112は、タイミング情報の拍毎にTPQN[000]を基準とし、ある拍(ある拍の検出範囲)に含まれる各打楽器の操作タイミングがTPQNでどれだけずれているかを求める。
【0056】
たとえば、ずれ量算出部112は、タイミング情報[000−02−000]及びその検出範囲に含まれる左足用ペダル5Bの演奏情報[000−02−020]を参照することで、左足用ペダル5Bの操作はTPQNで+020だけずれていると判断し、ずれ量として「+20(遅れ)」を算出する。同様に、ずれ量算出部112は、タイミング情報[000−02−000]及びその検出範囲に含まれる右手用打撃パッド6Aの演奏情報[000−01−110]を参照することで、右手用打撃バッド6Aの打撃はTPQNで−010だけずれていると判断し、ずれ量として「−10(進み)」を算出する。
【0057】
ずれ量の算出には様々な手法がある。たとえば、ずれ量算出部112は、拍毎に求めたずれ量を「遅れ」(プラスの値)と「進み」(マイナスの値)に分け、打楽器毎にずれ量の遅れ平均と進み平均を算出してもよい。遅れ平均及び進み平均のいずれか一方の平均のみを求めることでもよい。また、ずれ量は、平均値でなく分散値等の代表値でよい。代表値を求める際には、楽曲全体を通して得られたずれ量から求めてもよいし、ある小節におけるずれ量のみを用いてもよい。また、ずれ量算出部112は、複数の操作タイミングのずれ量を算出する必要はなく、打楽器毎に少なくとも一つの操作タイミングのずれ量を算出することでよい。
【0058】
第1の算出部113は、右足用ペダル5Aの操作のずれ量と左足用ペダル5Bの操作のずれ量との比較、及び/または右手用打撃パッド6Aへの打撃のずれ量と左手用打撃パッド6Bへの打撃のずれ量との比較により、演奏者の身体のバランスデータを算出する。
【0059】
バランスデータは、身体機能(身体機能の回復度合い)に関するデータであり、身体の左右の偏りを示すデータ(値)である。たとえば、第1の算出部113は、左足用ペダル5Bの遅れ平均βに対する右足用ペダル5Aの遅れ平均αの比率(バランスデータ)を求めることにより、いずれの足が遅れているか(反応が鈍いか)を判断するための情報を得ることができる。一方、遅れ平均αと遅れ平均βの比率が1の場合、身体の左右の偏りはない(体の左右のバランスが取れている)と判断できる。なお、ずれ量の比較は比率を求めることに限られない。たとえば、遅れ平均αと遅れ平均βの差分を取ることでもよい。
【0060】
算出された値はディスプレイ7Aに表示される。或いは、出力部7としてプリンタを含む場合には印刷して出力されてもよい。更に出力部7として通信手段を含む場合には、無線(有線)通信により外部の装置(たとえば、病院のサーバ等)にバランスデータを送信することもできる。
【0061】
このように本実施形態の音楽療法支援装置1は、打楽器を操作することにより、身体を動かしたり、ストレスを発散する等の音楽療法を施すことができる。更に、音楽療法支援装置1は、打楽器の操作に基づいて、相対する打楽器同士のタイミングのずれを比較する。すなわち、音楽療法支援装置1は、楽曲データ(レファレンス)に対する各打楽器の操作タイミングのずれを比較するものではない。よって、音楽療法を施しながら、身体の左右の偏りを判断するためのより正確なデータ(バランスデータ)を取得することができる。
【0062】
更に、このバランスデータに基づいて所定の操作パターン(遅れが小さくなるようなパターン)を作成することも可能である。音楽療法支援装置1を用い、このパターンを演奏者に実行させることにより、身体の左右バランスの改善(身体機能の回復)に役立てることができる。
【0063】
<第2実施形態>
次に、
図6を参照して第2実施形態に係る音楽療法支援装置1について説明する。第2実施形態は、打楽器の操作タイミングの代わりに打楽器を操作する際の強さを用いてバランスデータを算出する例について述べる。第1実施形態と同様の構成については詳細な説明を省略する。なお、本実施形態に係る音楽療法支援装置1としては、少なくとも右足用ペダル5A、左足用ペダル5B、右手用打撃パッド6A、左手用打撃パッド6B、制御部11、及び検出部16a〜16dを含んでいればよい。
【0064】
図6は音楽療法支援装置1の機能ブロックを示す図である。CPU11aがメモリ11bに記憶されている動作プログラムを読み出して実行することにより、制御部11は、第2の算出部114として機能する。
【0065】
また、本実施形態における検出部16aは、右足用ペダル5Aに設けられ、その操作の強さを検出する。検出部16bは、左足用ペダル5Bに設けられ、その操作の強さを検出する。検出部16cは、右手用打撃パッド6Aに設けられ、その打撃の強さを検出する。検出部16dは、左手用打撃パッド6Bに設けられ、その打撃の強さを検出する。検出部16a〜16dは、検出した信号をバスBに出力し、この信号は制御部11(第2の算出部114)に入力される。本実施形態における検出部16a〜16dは、「第2の検出部」の一例である。
【0066】
強さの検出は、打楽器毎に少なくとも一回行えばよい。或いは、ある楽曲を放音し、その楽曲が終わるまでに行われた複数回の操作それぞれの強さを検出してもよい。
【0067】
第2の算出部114は、右足用ペダルの操作の強さと左足用ペダルの操作の強さとの比較、及び/または、右手用打撃パッドへの強さと左手用打撃パッドへの打撃の強さとの比較により、演奏者の身体のバランスデータを算出する。比較する強さは、検出部16a〜16dで検出された値を用いる。
【0068】
たとえば、第2の算出部114は、ある楽曲が終わるまでに検出された打楽器の操作の強さを打楽器毎に平均し、相対する打楽器同士(右足用ペダルと左足用ペダル、右手用打撃パッドと左手用打撃パッド)の平均を比較することで、バランスデータを算出する。
【0069】
第2の算出部114で算出するバランスデータとしては、たとえば、右手用打撃パッド6Aへの打撃の強さの平均γに対する左手用打撃パッド6Bへの打撃の強さの平均δの比率である。この比率を求めることにより、いずれの手の打撃が弱いかを判断するための情報を得ることができる。なお、強さの比較は比率を求めることに限られない。たとえば、強さの平均γと強さの平均δの差分を取ることでもよい。また、強さは、平均値でなく、分散値等の代表値でよい。
【0070】
このバランスデータに基づいて、所定の操作パターン(たとえば、左手用打撃パッド6Bへの打撃の強さが大きくなるように意識させるパターン)を作成することも可能である。音楽療法支援装置1を用いてそのパターンを演奏させることにより、左右バランスの改善(身体機能の回復)に役立てることもできる。音楽療法支援装置1を用い、このパターンを演奏者に実行させることにより、身体の左右バランスの改善(身体機能の回復)に役立てることができる。
【0071】
なお、本実施形態における音源モジュール12は、検出部16a〜16dにより検出された強さに基づいて楽音信号を生成し、アンプ等(図示なし)で増幅してスピーカ7Bに入力する。出力部7(スピーカ7B)は、入力された楽音信号に基づく音を放音する。この場合、音楽モジュール12は、「第2の生成部」の一例である。スピーカ7Bは、「第2の出力部」の一例である。
【0072】
<その他>
上記実施形態においては、足用ペダル及び打撃パッドが一対ずつ設けられている例で説明したが、足用ペダルや打撃パッドは複数対あってもよい。この場合、ずれ量(或いは強さ)は、相対する打楽器同士(たとえば、左右対称になっている足用ペダル同士)で比較することが望ましい。
【0073】
また、第1実施形態と第2実施形態の構成を組み合わせることも可能である。すなわち、操作タイミングのずれ量と強さ別々に求め、総合的な評価を行ってもよい。この場合、タイミング情報を参照することで、強さを比較する範囲として、一小節等、所定の期間を設定することができる。
【0074】
上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定するものではない。たとえば、音楽療法支援装置1は、身体機能の回復の目的だけでなく、脳のトレーニング等にも利用することができる。また、上記の構成は、適宜組み合わせて実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。それらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。