(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の保持手段による小扉の保持状態を解消させる第1の保持解消手段と、第2の保持手段による小扉の保持状態を解消させる第2の保持解消手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の開放装置付扉。
第1の保持手段による小扉の保持状態を解消させる第1の保持解消手段を備え、その第1の保持解消手段は、大扉の開放時に作動させることを特徴する請求項7に記載の開放装置付扉の使用方法。
第2の保持手段による小扉の保持状態を解消させる第2の保持解消手段を備え、その第2の保持解消手段は、大扉の閉鎖時に作動させることを特徴とする請求項7又は8に記載の開放装置付扉の使用方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本願発明は、第1に、室の内外に圧力差があり、室内側が負圧の状態であっても、扉自体を容易に、且つ、迅速に開けることができるようにすること、その場合に、第2に、安全に扉を開けることができるようにすること、第3に、非力な人であっても、扉自体を容易に開けることができるようにすること、第4に、地震や水害等の非常時の際に容易に脱出できるようにすること等を目的とした開放装置付扉を提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、大扉と、この大扉の開口部に設けられた小扉を備える扉において、前記扉は、小扉を第1の開放角度まで開放させる際の補助とするアシスト手段と、前記アシスト手段により、前記開放角度で開放された小扉をその状態で保持させる第1の保持手段と、前記開放角度よりも大きな角度の第2の開放角度まで開けられた小扉をその状態で保持させる第2の保持手段を備えることを特徴とする開放装置付扉とした(請求項1に記載の発明)。
【0009】
上記課題を解決するため、大扉と、この大扉の開口部に設けられた小扉を備える扉において、前記扉は、人力により小扉を開けることができる程度まで室内外の圧力差を減少させることができる第1の開放角度への小扉の開放を補助とするアシスト手段と、前記アシスト手段により、前記開放角度で開放された小扉をその状態で保持させる第1の保持手段と、人力により大扉を開けることができる程度まで室内外の圧力差を減少させることができる第2の開放角度まで開けられた小扉をその状態で保持させる第2の保持手段を備えることを特徴とする開放装置付扉とした(請求項2に記載の発明)。
【0010】
上記発明において、前記アシスト手段は、小さな力を大きな力に変える梃子部からなることを特徴とする開放装置付扉とした(請求項3に記載の発明)。
【0011】
上記発明において、前記梃子部は折り畳まれることを特徴とする開放装置付扉とした(請求項4に記載の発明)。
【0012】
上記発明において、第1の保持手段による小扉の保持状態を解消させる第1の保持解消手段と、第2の保持手段による小扉の保持状態を解消させる第2の保持解消手段を備えていることを特徴とする開放装置付扉とした(請求項5に記載の発明)。
【0013】
上記課題を解決するため、大扉と、この大扉の開口部に設けられた小扉を備える扉の使用方法において、第1の開放角度までアシスト手段を用いて小扉を開放させ、前記第1の開放角度で開放された小扉を第1の保持手段によりその状態を保持させ、引き続き、前記開放角度よりも大きな角度の第2の開放角度まで小扉を開放させ、前記第2の開放角度で開放された小扉を第2の保持手段によりその状態を保持することを特徴とする開放装置付扉の使用方法とした(請求項6に記載の発明)。
【0014】
上記課題を解決するため、大扉と、この大扉の開口部に設けられた小扉を備え、小扉を開けた後、大扉を開けるように構成されている扉の使用方法において、人力により小扉を開けることができる程度まで室内外の圧力差を減少させることができる第1の開放角度まで、アシスト手段を用いて小扉を開放させ、
前記第1の開放角度で開放された小扉を第1の保持手段によりその状態を保持させ、引き続き、人力により大扉を開けることができる程度まで室内外の圧力差を減少させることができる第2の開放角度まで小扉を開放させ、前記第2の開放角度で開放された小扉を第2の保持手段によりその状態を保持させ、その後、人力により大扉を開けることを特徴とする開放装置付扉の使用方法とした(請求項7に記載の発明)。
【0015】
上記発明において、第1の保持手段による小扉の保持状態を解消させる第1の保持解消手段を備え、その第1の保持解消手段は、大扉の開放時に作動させることを特徴する開放装置付扉の使用方法とした(請求項8に記載の発明)。
【0016】
上記発明において、第2の保持手段による小扉の保持状態を解消させる第2の保持解消手段を備え、その第2の保持解消手段は、大扉の閉鎖時に作動させることを特徴とする開放装置付扉の使用方法とした(請求項9に記載の発明)。
【0017】
前記アシスト手段は、小扉を人力で押して開放させるための補助となるもので、扉に物理的な力が作用する場合として、例えば室内外の圧力差の存在により扉の開放が難しい事態を解消させる。
前記アシスト手段により前記第1の開放角度で開放された小扉に対しては、その小扉を室内側に押し戻す外力が作用する場合に、第1の保持手段により対処する。
また、前記第2の開放角度で開放された小扉に対しても、その小扉を室内側に押し戻す外力が存在する場合もあることから、第2の保持手段を設ける。
小扉の第2の開放角度の開放により、大扉は人力により開けられる状態に至る。
前記扉が防火扉である場合には、第1の保持解消手段と第2の保持解消手段により、小扉を閉鎖状態に復帰させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本願発明によれば、アシスト手段により、室の内外に圧力差があり、室内側が負圧の状態であっても、扉自体を容易に、且つ、迅速に開けることができ、また第1の保持手段及び第2の保持手段により、安全に扉を開けることができる。またアシスト手段により、非力な人であっても、扉自体を容易に開けることができる。さらに、地震や水害等の非常時の際にアシスト手段、第1の保持手段及び第2の保持手段により、容易に脱出できる開放装置付扉を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る開放装置付扉(以下、単に扉と称する)の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
実施形態に係る扉Dは、建築物の階段室に臨む出入口に設けられる防火扉であって、
図1及び
図2のように、前記出入口の縦枠10Rに取り付けられる大扉1と、この大扉1に設けられる開口部11に取り付けられる小扉2を備え、アシスト手段3を用いて小扉2を開けた後(
図2(1)〜(2)参照)、人力により大扉1を開けて(
図2(3)参照)、室内にいる居住者等が室外に脱出できるようになっている。その後は、防火扉としての機能に復帰させるため、小扉2及び大扉1が閉鎖されるようになっている(
図2(4)参照)。
本書において、「人力」とは、約200N以下(近似値として約20キログラム重以下)の力を発揮できる人の力を想定し、例えば非力な女性の力でも開放できる防火扉を想定している。
【0021】
前記アシスト手段3は、人力により小扉2を開けることができる程度までに階段室と室内との室内外の圧力差を減少させる小扉2の第1の開放角度α1(後述の
図4(2)等参照)までの開放を補助するものである。前記扉Dは、このアシスト手段3により前記第1の開放角度α1で開放された小扉2を、その状態で保持させる第1の保持手段4と、人力により大扉1を開けることができる程度までに室内外の圧力差を減少させることができる小扉2の第2の開放角度α2(同
図4(2)等参照)までの開放を保持させる第2の保持手段5を備えている。
【0022】
即ち、第1の開放角度α1まで、アシスト手段3を用いて小扉2を開放させ、引き続き、第2の開放角度α2まで、人力により小扉2を開放させ、その後、人力により大扉1を開けることができるようにしている。
そして、前記アシスト手段3により第1の開放角度α1で開放された小扉2を第1の保持手段4で保持させ、第2開放角度α2で開放された小扉2を第2の保持手段5で保持させることにより、室の内外に圧力差があり、室内側が負圧の状態であっても、扉D自体を容易に、迅速に、且つ、安全に開けることができるようになっている。
【0023】
さらに、前記第2の保持手段5により小扉2が第2の開放角度α2で保持されている状態で、人力により大扉1が開けられた後、防火扉としての機能に復帰させるため、第1の保持手段4による小扉2の保持状態を解消させる第1の保持解消手段6と、第2の保持手段5による小扉2の保持状態を解消させる第2の保持解消手段7を備えている。
【0024】
前記大扉1は、
図1に図示するように、前記出入口の縦枠10Rに丁番12を介して外開き式に、且つ、ドアクローザー13により自閉可能に取り付けられている。
なお、「14」は大扉1の開閉時の握手としてのレバーハンドルである。
また、前記開口部11は、大扉1の略中央に設けられているが、その位置に限定されるものでもなく、本発明の効果を奏する範囲内で大扉1の上又は下框寄り、右又は左框寄りでもよい。
【0025】
前記小扉2は、前記大扉1の開口部11を開放することで、扉Dの室内外の圧力差を減少させて、大扉1の開放を容易にするものである。
前記小扉2は、
図1に図示するように、前記大扉1に対してオートパワーヒンジ20を介して外開き式に、且つ、自閉可能に取り付けられている。
なお、「21」は指挟み防止金具であり、防火扉としての機能に復帰させるために小扉2を閉鎖させる(
図2(4)参照)際に、圧力差により小扉2が急激に閉じて居住者等の指が挟み込まれることを防止するものである。本実施形態では、コンシールドタイプのドアクローザーを使用している。
【0026】
前記小扉2の縦框22には、小扉2を施錠するためのラッチ23が取り付けられている。
そのラッチ23に対応するラッチ受34は、後述のようにアシスト手段3に組み込まれている。
【0027】
前記大扉1と前記小扉2の面積比は、1:約0.4になっている。
かかる構成において、前記第1の開放角度α1及び第2の開放角度α2、即ち、それぞれ大扉1と小扉2により形成する具体的な角度の値は、約15度と約30度となっている。
このような数値は、
図3に示した実験結果の表及びその結果をグラフ化した
図4(1)に示されている。
図3の表は、実験装置の圧力チャンバーに前記扉Dと同様な構成の試験体を設置して、その内外の圧力差を500Paに調整し、小扉2の開放角度に応じて、大扉1及び小扉2の開放に必要な力(開放力)Nを測定したものである。
その測定結果に基づき、小扉2の開放角度(横軸)と、小扉2及び大扉1に対する開放力(左縦軸)並びにチャンバー内圧力(右縦軸)との関係を
図4(1)のグラフに示した。
【0028】
図4(1)に示されるように、小扉2の開放角度が0度において、アシスト手段3を構成するアシストハンドル33(後述)により開放力110Nが加えられて、開放され始める。開放角度が15度において、開放力155Nとなっている。重量に近似させると約15重量キログラムとなって、アシスト手段3を用いることにより容易に小扉2を開放させることができる。
開放角度が15度〜30度の間は、開放力155N〜開放力150N(近似値:約16重量キログラム〜約15重量キログラム)となっており、アシスト手段3を用いることなく、人力により容易に小扉2を開放させることができる。
小扉2の開放角度が30度のときに、大扉1の開放力は181N(近似値:約18重量キログラム)となって、人力により容易に大扉1を開放させることができる。
【0029】
前記小扉2の開放角度を決定する客観的な基準として、小扉2の「開口面積」という概念を導入し、
図4(2)を参照しつつ、説明する。
即ち、小扉2の開口面積=a×h+b×2と定義する。
ここで「a」は開放状態の小扉2の縦框22と開口部11の縦辺11Lの開口寸法を、「h」は小扉2の有効開口高さを、「b×2」は開放状態の小扉2と大扉1により形成される三角形の上下の面積を、それぞれ意味する。
また、「H」は大扉1の有効開口高さを、「W」は大扉1の有効開口幅を、「w」は小扉2の有効開口幅を、それぞれ意味する。
ここで、H=2.1m、W=1m、h=1.7m、w=0.5mとして、開放角度が15度のとき、a=0.125m、b=0.02m
2となり、小扉2の開口面積は0.25m
2に、開放角度が30度のとき、a=0.266m、b=0.06m
2となり、小扉2の開口面積は0.57m
2になる。これらの値が前記小扉2、アシスト手段3等の扉Dを構成する場合の基準となり得る。
なお、上記開口面積は、
図3の表中に、(開口面積)として表示されている。
【0030】
前記アシスト手段3は、
図5(1)〜(3)のように、小さな力で大きな力を生成する梃子部30により構成されている。
【0031】
前記梃子部30は、前記開口部11の縦辺11Lに固定されるガイドプレート31と、このガイドプレート31に軸32を介して回動可能に取り付けられるアシストハンドル33と、このアシストハンドル33の回動に連動して、前記ラッチ23の施錠及び解錠を制御するラッチ受34を備えている。
【0032】
前記アシストハンドル33は、
図5(2)のように、前記軸32の先端側の蹴出アーム330と、その後端側の把持アーム331からなる。前記軸32が支点となって梃子の機能が発揮されるようになっており、前記軸32を中心とする蹴出アーム330と把持アーム331の長さ比は、約1対2となっている。
【0033】
前記蹴出アーム330は、その先端部に、小扉2の縦框22に対向する方向に突出する車部332が取り付けられ、前記小扉2を開放する際に、前記アシストハンドル33がスムーズに小扉2を押出せるようにしている。
【0034】
前記把持アーム331は、前部331fとその前部331fに軸着されている後部331bからなり、それぞれに化粧板35が固定されている。そして
図6(1)に示すように、前記後部331bの化粧板35の先端が前部331fに当接して、梃子の機能を発揮させていると共に、その軸331pを中心にしてその後部331bが前部331fに対して折り曲げられる。
【0035】
前記把持アーム331の前部331fには、
図5(2)のように前記軸32の下方に、係合孔333が形成されている。
この係合孔333は、小扉2を約15度まで開放させるように前記アシストハンドル33を回動させる場合に、前記第1の保持手段4としてのストッパー40(後述)の先端部42を没入させるものである。
その結果、
図6(2)のように、前記蹴出アーム330が前記小扉2を保持し、小扉2が負圧により室内側に引き寄せられることを防止する。従って、人力により安全に小扉2をさらに外側に押し出せるようになっている。
また前記把持アーム331の前部331fには、
図5(2)のように前記蹴出アーム330に対して室内側に延べ出される延出部36が形成され、その延出部36に、前記ラッチ受け34に連動させる軸36pが形成されている。
【0036】
前記ラッチ受け34は、
図7のように、前記軸36pを取り付ける長孔341を備え、且つ、前記軸36pの回転運動を上下運動に変換させるスライド片340と、このスライド片340に形成されると共に、前記ラッチ23が係合するラッチ受孔342と、前記スライド片340を常時、下方に付勢するラッチ受け本体に内蔵されたスプリング343からなる。
【0037】
前記化粧板35は、前記大扉1の室内側に臨んでおり、その室内面を構成するようになっている。
なお、前記ガイドプレート31の室外側は、前記蹴出アーム330が臨む長孔311(
図5(1)参照)が形成され、平常時には、前記長孔311は、前記小扉2の縦框22に形成されている薄板片24(
図6(2)参照)によりカバーされている。
また、
図5(1)のように、前記ガイドプレート31には、前記把持アーム331の下方に操作者の指先等が入るスペース37が形成され、そのスペース37は、平常時にはカバー38で覆われ、そのカバー38には、前記アシストハンドル33の操作方法を報知するシール39等が貼られている。
【0038】
前記第1の保持手段4は、
図5(1)及び
図8に図示されているように、本体41内に内蔵されているバネ等を介して、出没可能で、且つ、突出方向に常時付勢される先端部42を備えたストッパー40からなる。
このストッパー40は、前記先端部42を突出方向に押圧する押圧部43を備えており、これが第1の保持解消手段6を構成するようになっている。
そして、平常時において、前記先端部42が前記アシストハンドル33の側面に臨み、且つ当接し、本体41内に押し込まれた状態で、また、前記押圧部43が前記出入口の縦枠10Lに取り付けられた縦枠受15に当接し、本体41内に押し込まれた状態で、前記本体41が前記大扉1に固定されている。
【0039】
前記第2の保持手段5は、
図9(1)及び(2)に図示されているように、前記開口部11の上辺11Uに固定されているレール50と、このレール50内をスライドするスライダー51と、そのスライダー51に一端が固定され、他端が前記小扉2の上框25に固定されるアーム52からなる。
前記スライダー51は、小扉2が約30度に開放された時に、前記レール50に形成された孔500(
図12参照)に係合される係合ボタン54が組み込まれたスライダー係合部53を備えている(
図13参照)。
そして、平常時において、前記レール50の一端側にスライダー51が静止し、スライダー係合部53に設けられ、且つ、常時上方に付勢されている係合ボタン54は、レール50に当接して、押し込められ、前記アーム52は、前記レール50の下方において、前記レール50に略平行に位置されている。
【0040】
第2の保持解消手段7は、
図9(1)及び(2)並びに
図10及び
図11のように、先端部71が前記孔500の上方に位置し、他端に押圧部72を備えた復帰用ストッパー70と、大扉1の閉鎖時に、前記押圧部72を押込むように作用させる出入口の上枠10Uに取り付けられた上枠受73からなる。
前記復帰用ストッパー70は、大扉1に固定され、その平常時において、レール50の孔500の上方に前記先端部71が位置し、前記押圧部72が大扉1の上框16から上方に突出した状態にあり、さらに、前記押圧部72が上枠受73の回転板730に対向する位置にある。
【0041】
以上のように構成された扉Dの動作例について、
図14A及び
図14B等を参照しつつ説明する。
前記扉Dは、平常時においては、小扉2は前記ラッチ23により大扉1に施錠されており、扉Dの開閉は大扉1のレバーハンドル14を介して行われる。
また、前記ガイドプレート31の室内側は、アシストハンドル33の化粧板35が大扉の室内側面を形成するようになっているので、誤作動を防ぐことができるようになっている(
図14A(1))。
【0042】
前記扉Dの非常時の動作例として、前記扉Dが設けられた室の機械排煙が作動して、それによって生じる圧力差により、人力では大扉1を開けることが困難な状態を想定する。
この場合には、室内側のアシストハンドル33のカバー38を除去し、その下部を指で摘み上げ、把持アーム331を手前方向に引き上げる。
その動作により、前記アシストハンドル33の蹴出アーム330の車部332が小扉2を押し開き、第1の開放角度α1の約15度まで、小扉2が開放される(
図14A(2))。その結果、人力により小扉2を開ける事が出来る程度に室内外の圧力差を減少させることができることとなる。
【0043】
前記把持アーム331が引き上げられ、回動を開始する過程で、前記ラッチ受け34が上方にスライドし、前記ラッチ23との施錠が解かれる。さらに前記把持アーム331が引き上げられ、開放角度が約15度に近づくと、前記ストッパー40の先端部42が、前記アシストハンドル33の係合孔333に入り込み、アシストハンドル33の回動が停止される。
なお、前記アシストハンドル33は前記軸331pを中心に後部331bが折り畳まれる。
よって、それ以降の小扉2の開放動作を安全に行うことができる。
【0044】
また、前記小扉2の開放動作の過程で、前記アーム52が前記レール50内のスライダー51をスライドさせることとなる(
図14A(2))。
小扉2を約30度まで開放させた時点で、スライダー51に設けられているスライダー係合部53の係合ボタン54が、前記レール50の孔500に入り込み、小扉2の開放が停止される(
図14A(3))。その結果、小扉2が圧力差により、急激に閉鎖されることが防止されて安全性が確保され、また人力により大扉1を開けることができる程度に室内外の圧力差を減少させることができ、大扉1のレバーハンドル14等を把持して、脱出することができる(
図14A(4)〜
図14B(5))。
【0045】
前記大扉1が開けられた時点で、前記ストッパー40の押圧部43が前記縦枠受15による圧着から開放されて、外側に突出すると、前記先端部42も追随して本体41内に押し戻される。その結果、前記先端部42とアシストハンドル33の係合孔333との係合が解除され、アシストハンドル33の把持アーム331がその自重により前記軸32を中心に下方に回動すると共に、蹴出アーム330も前記軸32を中心に上方に回動し、ガイドプレート31に収容される(
図14A(4))。
よって、大扉1の開放動作の容易性が図られると共に、アシストハンドル33により脱出動作が妨げられることはない(
図14B(5))。
【0046】
また、上述のようにアシストハンドル33が平常時の位置に復帰した場合、前記ラッチ受け34は、アシストハンドル33の回動及び前記ラッチ受け34に設けられているスプリング343により、下方にスライドされ、そのラッチ受孔342が前記ラッチ23を受けいれる位置に復帰される。
さらに、大扉1の開放時に、前記復帰用ストッパー70の押圧部72により、室外側に押し出された上枠受け73の回転板730は、押圧部72との当接が解除された時点でバネ等により初期位置に復帰し、大扉1の閉鎖動作に備えている(
図14A(4)〜
図14B(5))。
【0047】
前記大扉1が約5度程度まで閉鎖されると(
図14B(6))、前記押圧部72が前記回転板730に当接し、復帰用ストッパー70内に押し込まれる。その結果、前記先端部71が押出されて、前記レール50の孔500に入り込み、係合ボタン54を押圧して、レール50とスライダー係合部53の係合を解除させる。
その結果、前記オートパワーヒンジ20の自閉作用により、小扉2のアーム52がレール50に導かれ、小扉2が閉鎖を開始する(
図14B(7))。
よって、小扉2が大扉1の閉鎖時まで、約30度の開放角度を維持していることからも、安全かつ確実に、人力により大扉1を開放させることができるようになっている。
【0048】
大扉1が閉鎖した時点で、平常時位置に復帰しているラッチ受け34の受孔342にラッチ23が入り込み、小扉2が施錠される。
【0049】
なお、大扉1が一端閉鎖された場合、再び、前記アシストハンドル33の回動動作から再開される。
【0050】
以上のように構成される扉Dの作用効果は、次の通りである。
(イ) 室内外の圧力差により人力では小扉2を開けることが困難な場合であっても、前記アシストハンドル33を用いることにより、人力により小扉2を開ける事が出来る程度に室内外の圧力差を減少させることができる。
(ロ) 前記ストッパー40の先端部42が、前記アシストハンドル33の係合孔333に入り込み、アシストハンドル33の回動が停止されると共に、蹴出アーム330が小扉2を第1の開放角度α1で保持するので、それ以降の小扉2の開放動作を安全に行うことができる。
(ハ) また前記アシストハンドル33は前記軸331pを中心に後部331bが折り畳まれることから、それ以降の小扉2の開放動作を安全に行うことができる。
(ニ) 小扉2を第2の開放角度α2まで開放させた時点で、スライダー51に設けられているスライダー係合部53の係合ボタン54が、前記レール50の孔500に入り込み、小扉2の開放が停止されるので、小扉2が圧力差により急激に閉鎖されることが防止されて安全性が確保される。
(ホ) 第2の開放角度α2まで小扉2が開放されるので、人力により大扉1を開けることができる程度に室内外の圧力差を減少させることができる。
(へ) 前記大扉1が開けられた時点で、前記ストッパー40の先端部42とアシストハンドル33の係合孔333との係合が解除され、アシストハンドル33がガイドプレート31に収容されるので、大扉1の開放動作の容易性が図られると共に、アシストハンドル33により脱出動作が妨げられることはない
(ト) 小扉2が大扉1の閉鎖時まで、小扉2の約30度の開放角度が維持されるので、安全かつ確実に、人力により大扉1を開放させることができる。
【0051】
以上の実施形態では、本発明に係る開放装置付扉は防火扉として具体化されているが、その具体化は、防火扉に限定されることなく、地震や水害等の非常時に対応できる非常扉としても具体化することができる。例えば前記小扉2は、室内外の圧力差を減少させて大扉1の開放を容易にするものであったが、前記アシストハンドル33を操作して、その小扉2から脱出できるようにしてもよい。
この場合には、第1の保持解消手段6と第2の保持解消手段7は、必須のものではない。
【0052】
以上により構成される本発明に係る扉の使用例は、次の通りである。
前記アシストハンドル33を用いて第1の開放角度α1まで小扉2を開放させる。
前記第1の開放角度α1で開放された小扉2を第1の保持手段4としてのストッパー40によりその状態を保持させる。
引き続き、居住者等が小扉2から室外に脱出することができる第2の開放角度α2まで小扉2を人力により開放させる。
前記第2の開放角度α2で開放された小扉2を第2の保持手段5としての前記スライダー係合部53によりその状態を保持させる。
なお、この場合の第1の開放角度α1と第2の開放角度α2は、それぞれ約15°と約30°に限定されない。
【0053】
このように扉Dの使用方法によれば、上記扉Dの作用効果(イ)〜(ト)と共に、これらに加え、次のような作用効果を奏する。
(チ) 地震や水害等により非常扉等が開けられない事態を、アシストハンドル33の操作により居住者等が小扉2から脱出することでき、非力な女性でも使用することができることから、不特定多数の人々が出入りする建築物に適した非常扉となっている。
特に水害時において、水位が小扉2の下部に達する前であれば、水圧を受けずに子扉2を開放できる。また、水位が子扉2の下部に達した状態でも、アシストハンドル33の操作により、非力な女性でも水圧に抗して子扉2を開放できる。
【0054】
本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではない。前記アシスト手段3、第1及び第2の保持手段4,5、第1及び第2の保持解消手段6,7は、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において、通常の知識を有する者により可能である。