(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記亜鉛・アミジン錯体が、1種以上の亜鉛(II)ビスカルボキシレート1.0molと、1種以上の式(I)のアミジン少なくとも0.1molとを反応させることによって製造可能であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の被覆剤組成物。
前記被覆剤組成物が、少なくとも1種の亜鉛・アミジン錯体(D)を、前記亜鉛・アミジン錯体の金属含分が、それぞれ前記被覆剤組成物の結合剤含分に対して、35〜2000ppmとなる量で含有し、かつ/又は
前記被覆剤組成物が、少なくとも1種の芳香族カルボン鎖(S)を0.2〜15.0質量%含有し、前記質量%の記載はここでもそれぞれ、前記被覆剤組成物の結合剤含分に対するものである
ことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の被覆剤組成物。
当初から前記成分(B)に存在するイソシアネート基の10〜90mol%が、前記構造単位(II)及び/又は(III)に変換されていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の被覆剤組成物。
前記成分(B)のポリイソシアネート基礎物質が、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及び/又は4,4’−メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート、及び/又はこれらのイソシアヌレート三量体、及び/又はこれらのアロファネート二量体、及び/又はこれらのビウレット二量体、及び/又はこれらのウレトジオン二量体であることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の被覆剤組成物。
前記成分(B)において前記構造単位(II)の合計含分が、前記構造単位(II)と(III)の合計に対して9〜40mol%であり、前記構造単位(III)の合計含分が、前記構造単位(II)と(III)の合計に対して91〜60mol%であり、
当初から前記成分(B)に存在するイソシアネート基の31〜50mol%が、前記構造単位(II)及び(III)に変換されており、
前記成分(B)に当初から存在するイソシアネート基の26〜35mol%が、前記構造単位(III)に変換されている
ことを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の被覆剤組成物。
少なくとも1種のヒドロキシ基含有ポリアクリレート(A)、及び/又は少なくとも1種のヒドロキシ基含有ポリメタクリレート(A)を、それぞれ被覆剤組成物の結合剤含分に対して20〜80質量%含有し、かつ/又は
ポリイソシアネート基含有化合物(B)を、それぞれ被覆剤組成物の結合剤含分に対して5〜79質量%含有する
ことを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の被覆剤組成物。
事前に被覆された、又は被覆されていない基材に、顔料着色されたベースコート層を施与し、その後、請求項1から11までのいずれか1項に記載の被覆剤組成物から成る層を施与することを特徴とする、多段階被覆法。
顔料着色されたベースコート層の塗布後、施与されたベースコートをまず室温〜80℃の温度で乾燥させ、請求項1から11までのいずれか1項に記載の被覆剤組成物の塗布後、20〜80℃の温度で硬化させることを特徴とする、請求項12に記載の多段階被覆法。
少なくとも1つの顔料着色されたベースコート層と、当該ベースコート層に設けられた少なくとも1つのクリアコート層とから成る、効果及び/又は着色をもたらす多層コーティングにおいて、
前記クリアコート層が、請求項1から11までのいずれか1項に記載の被覆剤組成物から製造されていることを特徴とする、前記多層コーティング。
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種のポリヒドロキシ基含有化合物(A)、少なくとも1種のポリイソシアネート基含有化合物(B)、及び少なくとも1種の亜鉛・アミジン錯体ベースの触媒(D)を含有する、被覆剤組成物に関する。
【0002】
本発明の対象はさらに、前記被覆剤組成物を用いた多段階被覆法、並びに前記被覆剤組成物をクリアコート及び/又は顔料着色された塗料として用いる使用、及び/又は自動車修理塗装のため、及び/又は自動車部材、プラスチック基材、及び/又は業務用車両を被覆するための、前記被覆剤組成物の使用である。
【0003】
ポリウレタン被覆剤は通常、触媒を含有し、ここでは酸性化合物以外に、特に第三級アミン、及び/又は金属化合物(例えば様々なスズ化合物、特にジラウリン酸ジブチルスズとジブチルスズオキシド)が使用される。
【0004】
スズ含有触媒の使用は、多くのスズ化合物に毒性が内在するため、被覆剤においても避けるべきである。欧州委員会の「Working Group on Classification and Labelling」により、ジブチルスズオキシド(DBTO)とジラウリン酸ジブチルスズ(DBTL)は、相応して分類された。
【0005】
そこでインターネットアドレス「www.wernerblank.com」で入手可能な論文「Catalysis of the Isocyanate-Hydroxyl Reaction by Non-Tin Catalysts」(King Industries Inc.社のWerner J. Blank、Z.A. He、及びEd. T. Hesseil著)には、様々な金属塩と金属錯体をベースとする通常のスズ含有触媒(例えばジルコニウムキレート、アルミニウムキレート、及びビスマスカルボキシレート)の代替法が記載されている。
【0006】
DE 10 2008 061 329 A1、及びWO 09/135600から、金属含有触媒を可能な限り使用せずに、その代わりに触媒として、ポリウレタン被覆剤中でブロック化されたポリイソシアネートを脱ブロック化するために、1,3−置換イミダゾリウム塩を含有する被覆剤が公知である。
【0007】
WO04/029121は、pK範囲が2.8〜4.5の酸を添加することによって組成物の反応性が安定化されたポリウレタン組成物を記載しており、ここでこの酸は同時に、触媒として利用できる。ここで2.8〜4.5のpK範囲を有する酸としては例えば、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、フタル酸などが使用される。この組成物はさらなる触媒を含有しないのが好ましいが、さらにまた、通常の公知のポリウレタン触媒(例えば第三級アミン若しくはアミジン)、又は有機金属化合物(例えば特にスズ化合物)を使用することもできる。触媒としてアミンを使用する場合、アミンの種類と量は慎重に選択せねばならない。アミン触媒は、添加した有機酸の安定化作用を、部分的に打ち消してしまうことがあるからである。
【0008】
さらに米国特許US 7,485,729 B2、またその対応出願のWO06/022899、US 2006/0247341 A1、及びUS 2009/001 1 124 A1には、有機金属化合物、及びこの有機金属化合物を含有する被覆剤が記載されている。被覆剤としては、ヒドロキシ基含有ポリアクリレート、及び/又はポリエステル、及びウレトジオン基含有ポリイソシアネートをベースとする粉末塗料、ヒドロキシ基含有ポリアクリレート及び/又はポリエステル、及びブロック化されたポリイソシアネートをベースとする液体塗料、並びにエポキシ/カルボキシ成分、及び/又はエポキシ/無水物成分をベースとする溶剤含有被服剤が記載されている。触媒として使用される有機金属化合物は、他の金属アミジン錯体以外に、環状又は非環状の亜鉛ビスカルボキシレート−ビス−アミジン錯体(例えばZn(1,1,3,3−テトラメチルグアニジン)
2(2−エチルヘキサノエート)
2)である。
【0009】
さらにWO 2001/98393、WO08/74491、WO 08/74490、WO 08/74489、WO09/077181、及びWO 10/149236からは、少なくとも1種のヒドロキシ基含有化合物(A)、少なくとも1種のイソシアネート基及びシラン基含有化合物(B)、並びにシラン基の架橋に適した触媒を含有する被覆剤組成物が公知である。触媒としては、リン含有触媒、特にリンと窒素を含有する触媒が使用される。この被覆剤組成物には、従来のポリウレタン被覆剤と比べて、耐引掻性が明らかに改善されていると同時に、良好な耐候性を有するという利点がある。
【0010】
さらにEP-A-1 273 640には、ポリオール成分と、架橋剤成分を含有する2成分系被覆剤が記載されており、この架橋剤成分は、脂肪族及び/又は脂環式ポリイソシアネートから、又は重合、アロファネート結合、ビウレット結合、若しくはウレタン結合によって誘導されるポリイソシアネートから成り、ここでは当初から存在する遊離イソシアネート基の0.1〜95mol%が、ビスアルコキシシリルアミンと反応している。
【0011】
最後に、未公開のPCT出願PCT/EP2012/052284、PCT/EP2012/051444、PCT/EP2012/051574、PCT/EP2012/054546、及び未公開の欧州特許出願番号第12152406.0には、少なくとも1種のポリヒドロキシ基含有化合物(A)、少なくとも1種のポリイソシアネート基含有化合物(B)、及び亜鉛・アミジン錯体をベースとする少なくとも1種の触媒(D)を含有し、さらに少なくとも1種の置換若しくは非置換のモノマー性芳香族カルボン酸(S)を含有する被覆剤が記載されており、前記カルボン酸(S)のカルボキシ基は、π電子系に共役している。
【0012】
課題
そこで本発明の課題は、非常に短い時間の後で良好な取り付け強度が保証される、すなわち、修理塗装及び業務用車両の塗装条件下でも迅速な硬化が保証される、つまり60℃で30分の硬化後に、第一の取り付け作業又はマスキングの取り外しが、被覆を損傷することなく行える被覆剤組成物、特に自動車修理塗装用、及び業務用車両被覆用の被覆剤組成物を提供することであった。しかしながらこの被覆剤組成物は同時に、室温で結合剤成分とイソシアネート成分との混合後に、少なくとも2時間という良好な作業時間(ポットライフ)を有するべきである。ここでポットライフとは、被覆剤組成物の粘度が、当初粘度の二倍の値に達する時間の長さであると理解される。被覆剤組成物はさらに、良好な完全硬化と充分な最終硬度を有する被覆につながるのが望ましい。この被覆剤組成物はさらに、硬化の前後で変色を示さないのが望ましい。自動車産業におけるクリアコートの分野では特に、系自体の色に対する要求度が高い。よって触媒はそれ自体が色を有してはならず、また通常の塗料成分によって、塗料の混和又は硬化の際、変色につながってはならない。
【0013】
触媒はさらに、被覆剤組成物の結合剤成分に、事前に添加することができる。しかしながら触媒を結合剤成分に前もって添加混合することによって、被覆剤組成物の貯蔵安定性が否定的な影響を受けることは無い。加えて、触媒は加水分解に対して敏感ではないのが望ましい。有機溶解系自体では通常、ヒドロキシ基濃度が高いことにより、貯蔵期間につれて触媒活性が減少し得るからである。特に自動車修理塗装の分野では、高温下でも貯蔵安定性が非常に高いことが、利点である。
【0014】
被覆剤組成物はさらに、高度の耐引掻性、特に引っ掻き負荷後の光沢度が高く、また高度の耐候安定性網目構造につながり、同時に高い耐酸性が保証される被覆につながることが望ましい。被覆及び塗装(特にクリアコート)はさらに、層厚が40μm超でも応力亀裂が生じることなく、製造できるのが望ましい。さらにまた、良好な光学的全体印象、いわゆる良好な外観が保証されるべきである。
【0015】
最後に、新規の被覆剤は、容易に、また非常に良好に再生可能であるのが望ましく、塗料塗布の間、環境的な問題が生じないのが望ましい。
【0016】
課題の解決
上記課題設定に鑑み、以下の成分(A)、(B)、及び(D):
(A)少なくとも1種のポリヒドロキシ基含有化合物(A)、
(B)遊離若しくはブロック化されたイソシアネート基を有する、少なくとも1種のポリイソシアネート基含有化合物(B)、及び
(D)亜鉛・アミジン錯体をベースとする少なくとも1種の触媒(D)、
を含有する非水性の被覆剤組成物が判明し、
前記触媒(D)は、1種以上の亜鉛(II)ビスカルボキシレートと、式(I):
【化1】
のアミジン、若しくは式(I)のアミジン2種以上の混合物との反応によって製造可能であり、
上記式中、R
5は水素であり、R
1、R
2、R
3、及びR
4はそれぞれ同一又は異なる基であり、ここでR
1及びR
3は水素であるか、又はアルキル基若しくはアリール基であり、R
2及びR
4はアルキル基若しくはアリール基であり、
前記成分(B)が、式(II):
【化2】
の構造単位を少なくとも1つ、及び/又は
式(III):
【化3】
の構造単位を少なくとも1つ有し、
前記式中、
Rはアルキル、シクロアルキル、アリール、又はアラルキルであり、ここで炭素鎖は隣接しない酸素基、硫黄基、又はNRa基によって中断されていてよく、ただしRaはアルキル、シクロアルキル、アリール、又はアラルキルであり、
R’は、水素、アルキル、又はシクロアルキルであり、ここで炭素鎖は隣接しない酸素基、硫黄基、又はNRa基によって中断されていてよく、ただしRaはアルキル、シクロアルキル、アリール、又はアラルキルであり、R’は好ましくは、エチル及び/又はメチルであり、
X、X’は、炭素数が1〜20の直鎖状及び/若しくは分枝鎖状のアルキレン基又はシクロアルキレン基であり、X、X’は好ましくは、炭素数が1〜4のアルキレン基であり、
R’’は、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はアラルキルであり、ここで炭素鎖は隣接しない酸素基、硫黄基、又はNRa基によって中断されていてよく、ただしRaはアルキル、シクロアルキル、アリール、又はアラルキルであり、R’’は好ましくは、アルキル基、特に炭素数が1〜6のアルキル基であり、
nは0〜2であり、mは0〜2であり、m+nは2であり、かつx、yは0〜2であり、
前記被覆剤組成物は、
(S)少なくとも1種の置換若しくは非置換のモノマー性芳香族カルボン酸(S)
を含有し、当該カルボン酸のカルボキシル基は、π電子系に対して共役している
ことを特徴とする。
【0017】
本発明の対象はさらに、前記被覆剤組成物を用いた多段階被覆法、並びに前記被覆剤組成物をクリアコート及び/又は顔料着色された塗料として用いる使用、及び/又は自動車ライン塗装のため、自動車修理塗装のため、及び/又は自動車部品、プラスチック基材、及び/又は業務用車両を被覆するための、前記塗装方法の使用である。
【0018】
意外なことに、前記被覆剤組成物が、自動車修理塗装用の条件下でも、良好な取り付け強度を非常に短い時間の後に保証する、すなわち、修理塗装条件下でも迅速な硬化を保証する、つまり、60℃での硬化後にできるだけ早く接着性でなくなることは、予見できなかった。この被覆剤組成物は同時に、室温で結合剤成分とイソシアネート成分との混合後に、少なくとも2時間という良好な作業時間(ポットライフ)を示す。ここでポットライフとは、被覆剤組成物の粘度が、当初粘度の二倍の値に達する時間の長さであると理解される。
【0019】
被覆剤組成物はさらに、良好な完全硬化と充分な最終硬度を有する被覆につながる。さらにこの触媒はそれ自体が色を有さず、また通常の塗料成分によって、塗料の混和又は硬化の際、変色につながらない。
【0020】
さらに、被覆剤組成物の結合剤成分は、触媒に事前に添加することができ、これによって被覆剤組成物の結合剤成分の貯蔵安定性が否定的な影響を受けることは無い。さらに、触媒は加水分解に対して敏感ではないため、有機溶解系自体では通常ヒドロキシ基濃度が高いことにより、貯蔵時間につれて触媒活性が減少することはなく、このことは特に、自動車修理塗装分野では利点となる。
【0021】
この被覆剤組成物はさらに、高度の耐引掻性、特に引掻負荷後に高度の光沢を有する被覆につながる。
【0022】
さらにこの被覆剤組成物は、高度の耐候安定性網目構造につながり、同時に被覆の高い耐酸性を保証する。被覆及び塗装(特にクリアコート)はさらに、層厚が40μm超でも応力亀裂が生じることなく、製造できる。さらにまた、良好な光学的全体印象、いわゆる良好な外観が保証される。
【0023】
最後に、新規の被覆剤組成物は、容易に、また非常に良好に再生可能であり、塗料塗布の間、環境的な問題が生じない。
【0024】
本発明の説明
本発明による被覆剤
本発明による被覆剤は特に、熱硬化性の被覆剤であり、つまり好ましくは、実質的に放射線硬化性の不飽和化合物を含有しない被覆剤、特に放射線硬化性の不飽和化合物を完全に含有しない被覆剤である。
【0025】
ポリヒドロキシ基含有化合物(A)
ポリヒドロキシ基含有化合物(A)としては、1分子当たりヒドロキシ基を少なくとも2個有し、かつオリゴマー及び/又はポリマーである当業者に公知のあらゆる化合物が使用できる。成分(A)としては、様々なオリゴマー及び/又はポリマーのポリオールの混合物も使用できる。
【0026】
好ましいオリゴマー及び/又はポリマーのポリオール(A)は、質量平均分子量Mwが、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン標準で測定して、500ドルトン超であり、好ましくは800〜100,000ドルトン、特に1,000〜50,000ドルトンである。
【0027】
特に好ましいのは、ポリエステルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリシロキサンポリオール、ポリアクリレートポリオール、及び/又はポリメタクリレートポリオール、並びにこれらの混合型ポリマーであり、以下では、ポリアクリレートポリオールと呼ぶ。
【0028】
ポリオールは好ましくは、OH数が30〜400mgKOH/g、特に100〜300mgKOH/gである。ヒドロキシ数(OH数)は、何mgの水酸化カリウムが、アセチル化の際に1gの物質と結合している酢酸の量に等しいかによって得られる。試料は無水酢酸・ピリジンによる測定の際に煮沸し、生じる酸を水酸化カリウム溶液で滴定する(DIN 53240-2)。純粋なポリ(メタ)アクリレートの場合、OH数は、使用するOH官能性モノマーに基づいて計算することによっても、充分正確に特定できる。
【0029】
DIN-EN-ISO 1 1357-2準拠の示差走査熱量計(DSC)測定による、ポリオールのガラス転移温度は、好ましくは−150℃〜100℃、特に好ましくは−120℃〜80℃である。
【0030】
適切なポリエステルポリオールは例えば、EP-A-0 994 117、及びEP-A-1 273 640に記載されている。ポリウレタンポリオールは好適には、ポリエステルポリオールのプレポリマーと、適切なジイソシアネート若しくはポリイソシアネートとの反応によって製造され、それは例えば、EP-A-1 273 640に記載されている。適切なポリシロキサンポリオールは例えば、WO-A-01/09260に記載されており、ここに記載されたポリシロキサンポリオールは好適には、別のポリオール、特にガラス転移温度が比較的高いものと組み合わせて、使用できる。
【0031】
極めて特に好ましくは、成分(A)が、1種以上のポリアクリレートポリオール及び/又はポリメタクリレートポリオールを含有する。1種以上のポリアクリレートポリオール及び/又はポリメタクリレートポリオールとともに、さらなるオリゴマー及び/又はポリマーのポリヒドロキシ基含有化合物、例えばポリエステルポリオール、ポリウレタンポリオール、及びポリシロキサンポリオール、特にポリエステルポリオールが使用できる。
【0032】
本発明による極めて特に好ましいポリ(メタ)アクリレートポリオールは通常、コポリマーであり、好適には質量平均分子量Mwが、1,000〜20,000ドルトン、特に1,500〜10,000ドルトンである(それぞれ、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン標準で測定)。
【0033】
コポリマーのガラス転移温度は通常、−100〜100℃、特に−60℃〜20℃未満である(DIN-EN-ISO 1 1357-2により、DSCで測定)。
【0034】
ポリ(メタ)アクリレートポリオールは好ましくは、OH数が60〜300mgKOH/g、特に70〜200KOH/gであり、酸価が0〜30mgKOH/gである。
【0035】
ヒドロキシ数(OH数)は、先に規定の通りである(DIN 53240-2)。ここで酸価は、それぞれ1gの化合物を中和するために消費される水酸化カリウムのmg数によって得られる(DIN EN ISO 2114)。
【0036】
ヒドロキシ基含有モノマー構成単位として好ましくは、ヒドロキシアルキルアクリレート、及び/又はヒドロキシアルキルメタクリレート、例えば特に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルメタクリレート、及び特に4−ヒドロキシブチルアクリレート、及び/又は4−ヒドロキシブチルメタクリレートを使用する。
【0037】
さらなるモノマー構成単位としては、ポリ(メタ)アクリレートポリオールを、好ましくはアルキルアクリレート及び/又はアルキルメタクリレートを使用し、それは例えば好適にはエチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、アミルアクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、エチルヘキシルアクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、3,3,5−トリメチルヘキシルアクリレート、3,3,5−トリメチルヘキシルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルアクリレート又はラウリルメタクリレート、シクロアルキルアクリレート、及び/又はシクロアルキルメタクリレート、例えばシクロペンチルアクリレート、シクロペンチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、又は特にシクロヘキシルアクリレート、及び/又はシクロヘキシルメタクリレートである。
【0038】
ポリ(メタ)アクリレートポリオールのためのさらなるモノマー構成単位としては、ビニル芳香族炭化水素、例えばビニルトルエン、α−メチルスチレン、又は特にスチレン、アクリル酸若しくはメタクリル酸のアミド若しくはニトリル、ビニルエステル又はビニルエーテル、並びに二次的な量で特に、アクリル酸及び/又はメタクリル酸が使用できる。
【0039】
ヒドロキシ基含有化合物(C)
本発明による被覆剤組成物は任意で、ポリヒドロキシ基含有成分(A)の他にさらに、前記成分(A)とは異なるモノマーのヒドロキシ基含有化合物(C)を1種以上、含有することができる。この化合物(C)は好ましくは、それぞれ被覆剤組成物の結合剤含分に対して0〜20質量%、特に好ましくは0〜10質量%、極めて特に好ましくは1〜5質量%の割合を占める。
【0040】
ヒドロキシ基含有化合物(C)としては、低分子ポリオールを使用する。
【0041】
低分子ポリオール(C)としては例えば、ジオール、例えば好適にはエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、及び1,2−シクロヘキサンジメタノール、並びにポリオール、例えば好ましくはトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールヘキサン、1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリトリトール、並びにジペンタエリトリトールを使用する。このような低分子量ポリオールは好ましくは、ポリオール成分(A)の割合を下回る量で添加混合する。
【0042】
ポリイソシアネート基含有成分(B)
本発明により使用するのが好ましいイソシアネート基含有化合物(B)のための基礎物質として用いられるジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートは好ましくは、それ自体公知の置換若しくは非置換の芳香族、脂肪族、脂環式、及び/又は複素環式ポリイソシアネートである。好ましいポリイソシアネートの例は以下のものである:2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニレンジイソシアネート、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、1,12−ドデカンジイソシアネート、シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキシルジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,3−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,4−ジイソシアネート、ペルヒドロジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、4,4’−メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート(例えばDesmodur(登録商標)W、Bayer AG社製)、テトラメチルキシリルジイソシアネート(例えばTMXDI(登録商標)、American Cyanamid社製)、及び上記ポリイソシアネートの混合物。さらなる好ましいポリイソシアネートは、上記ジイソシアネートのイソシアヌレート三量体、及び/又は上記ジイソシアネートのアロファネート二量体、及び/又は上記ジイソシアネートのビウレット二量体、及び/又は上記ジイソシアネートのウレトジオン二量体である。
【0043】
本発明のさらなる好ましい態様においてポリイソシアネートは、ウレタン構造単位を有するポリイソシアネートプレポリマーであり、これはポリオールを、化学量論的に過剰の上記ポリイソシアネートと反応させることによって得られる。このようなポリイソシアネートプレポリマーは例えば、US-A-4,598,131に記載されている。
【0044】
成分(B)のための特に好ましいポリイソシアネート基礎物質は、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及び4,4’−メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート、及び/又はこれらのイソシアヌレート三量体、及び/又はこれらのアロファネート二量体、及び/又はこれらのビウレット二量体、及び/又はこれらのウレトジオン二量体である。
【0045】
成分(B)として使用されるポリイソシアネート、及び/又はそのイソシアヌレート三量体、及び/又はそのアロファネート二量体、及び/又はそのビウレット二量体、及び/又はそのウレトジオン二量体はさらに、式(II)の構造単位:
【化4】
を少なくとも1つ、及び/又は式(III)の構造単位:
【化5】
を少なくとも1つ有し、
前記式中、
Rはアルキル、シクロアルキル、アリール、又はアラルキルであり、ここで炭素鎖は隣接しない酸素基、硫黄基、又はNRa基によって中断されていてよく、ただしRaはアルキル、シクロアルキル、アリール、又はアラルキルであり、
R’は、水素、アルキル、又はシクロアルキルであり、ここで炭素鎖は隣接しない酸素基、硫黄基、又はNRa基によって中断されていてよく、ただしRaはアルキル、シクロアルキル、アリール、又はアラルキルであり、R’は好ましくは、エチル及び/又はメチルであり、
X、X’は、炭素数が1〜20の直鎖状及び/若しくは分枝鎖状のアルキレン基又はシクロアルキレン基であり、X、X’は好ましくは、炭素数が1〜4のアルキレン基であり、
R’’は、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はアラルキルであり、ここで炭素鎖は隣接しない酸素基、硫黄基、又はNRa基によって中断されていてよく、ただしRaはアルキル、シクロアルキル、アリール、又はアラルキルであり、R’’は好ましくは、アルキル基、特に炭素数が1〜6のアルキル基であり、
nは0〜2であり、mは0〜2であり、m+nは2であり、かつx、yは0〜2である。
【0046】
好ましいそれぞれのアルキル基(OR’)は、同一であるか、又は異なっていてよいが、基の構造にとって重要なのは、その構造が、加水分解性のシラン基の反応性にどの程度影響を与えるかということである。R’は好ましくはアルキル基であり、特に炭素数が1〜6のアルキル基である。特に好ましいのは、シラン基の反応性を向上させる、すなわち良好な脱離基である基R’である。メトキシ基はエトキシ基より好ましく、またプロポキシ基よりも好ましい。よって特に好ましくは、R’はエチル及び/又はメチルであり、特にメチルである。
【0047】
さらに、有機官能性シランの反応性はまた、シラン官能性と、変性すべき構成要素との反応に役立つ有機官能基との間にあるスペーサーX、X’の長さに著しい影響を受けることがある。その例としては例えばα−シランが挙げられ(Wacker社から入手可能)、このシランでは、「γ−」シランの場合に存在するプロピレン基の代わりに、メチレン基がケイ素原子と、官能基との間にある。
【0048】
本発明により使用されるのが好ましい構造単位(II)及び/又は(III)で官能化された成分(B)は特に、
・ポリイソシアネート、及び/又はそのイソシアヌレート三量体、及び/又はそのアロファネート二量体、及び/又はそのビウレット二量体、及び/又はそのウレトジオン二量体と、
・少なくとも1つの式(IIa)の化合物:
【化6】
及び/又は
・少なくとも1つの式(IIIa)の化合物:
【化7】
とを反応させることによって得られ、前記式中、変項は前述の意味を有する。
【0049】
本発明に従って特に使用するのが好ましい、構造単位(II)及び(III)で官能化された成分(B)は特に好ましくは、ポリイソシアネート、及び/又はそのイソシアヌレート三量体、及び/又はそのアロファネート二量体、及び/又はそのビウレット二量体、及び/又はそのウレトジオン二量体と、少なくとも1つの式(IIa)の化合物及び少なくとも1つの式(IIIa)の化合物との反応によって得られ、ここで前記式中、変項は前述の意味を有する。
【0050】
本発明による好ましい化合物(IIIa)は、ビス(2−エチルトリメトキシシリル)アミン、ビス(3−プロピルトリメトキシシリル)アミン、ビス(4−ブチルトリメトキシシリル)アミン、ビス(2−エチルトリエトキシシリル)アミン、ビス(3−プロピルトリエトキシシリル)アミン、及び/又はビス(4−ブチルトリエトキシシリル)アミンである。極めて特に好ましいのは、ビス(3−プロピルトリメトキシシリル)アミンである。このようなアミノシランは例えば、DEGUSSA社のDYNASYLAN(登録商標)、又はOSI社のSilquest(登録商標)という市販名で得られる。
【0051】
本発明による好ましい化合物(IIa)は、N−(2−(トリメトキシシリル)エチル)−アルキルアミン、N−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)アルキルアミン、N−(4−(トリメトキシシリル)ブチル)アルキルアミン、N−(2−(トリエトキシシリル)エチル)アルキルアミン、N−(3−(トリエトキシシリル)プロピル)アルキルアミン、及び/又はN−(4−(トリエトキシシリル)ブチル)アルキルアミンである。極めて特に好ましいのは、N−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)ブチルアミンである。このようなアミノシランは例えば、DEGUSSA社のDYNASYLAN(登録商標)、又はOSI社のSilquest(登録商標)という市販名で得られる。
【0052】
成分(B)において好ましくは、当初から存在するイソシアネート基の10〜90mol%、好ましくは20〜80mol%、特に好ましくは30mol%超〜70mol%未満、極めて特に好ましくは31〜50mol%が、構造単位(II)及び/又は(III)に変換されている。
【0053】
成分(B)における構造単位(II)の含分は、それぞれ構造単位(II)と(III)の合計に対して、好ましくは5〜70mol%、特に好ましくは8〜50mol%、極めて特に好ましくは9〜40質量%であり、成分(B)における構造単位(III)の合計含分は、それぞれ構造単位(II)と(III)の合計に対して、好ましくは95〜30mol%、特に好ましくは92〜50mol%、極めて特に好ましくは91〜60mol%である。
【0054】
さらに特に好ましくは、ポリイソシアネート成分(B)において、当初から存在するイソシアネート基の25mol%超〜36mol%未満、好ましくは26〜35mol%が、ビスシラン構造単位(III)に変換されている。
【0055】
極めて特に好ましい被覆剤組成物は、以下のような場合に得られる:
・成分(B)中で構造単位(II)の合計含分が、構造単位(II)と(III)の合計に対して9〜40mol%であり、構造単位(III)の合計含分が、構造単位(II)と(III)の合計に対して91〜60mol%であり、かつ
・当初から成分(B)に存在するイソシアネート基の31〜50mol%が、構造単位(II)及び(III)に変換されており、かつ
・成分(B)に当初から存在するイソシアネート基の26〜35mol%が、構造単位(III)に変換されている。
【0056】
化合物(IIa)及び/又は(IIIa)を有するイソシアネート基含有化合物(B)の反応は好適には、不活性ガス雰囲気下、最大100℃、好ましくは最大60℃の温度で行う。
【0057】
イソシアネート基含有化合物Bの遊離イソシアネート基は、ブロックされた形でも使用できる。これは本発明による被覆剤を、一成分系として使用する場合に好ましい。ブロック化のためには原則的に、脱ブロック化温度が充分に低い、ポリイソシアネートのブロック化に使用可能なあらゆるブロック化剤が使用できる。このようなブロック化剤は、当業者に慣用である。例えばEP-A-0 626 888、及びEP-A-0 692 007に記載されているブロック化剤を用いるのが好ましい。
【0058】
触媒(D)
被覆剤組成物は、亜鉛・アミジン錯体をベースとする少なくとも1種の触媒(D)を含有し、当該触媒(D)は、1種以上の亜鉛(II)ビスカルボキシレートと、式(I):
【化8】
のアミジン、若しくは式(I)のアミジン2種以上の混合物との反応によって製造可能であり、
上記式中、R
5は水素であり、R
1、R
2、R
3、及びR
4はそれぞれ同一又は異なる基であり、ここでR
1及びR
3は水素であるか、又はアルキル基若しくはアリール基であり、R
2及びR
4はアルキル基若しくはアリール基である。
【0059】
亜鉛・アミジン錯体は好ましくは、1.0モルの1種以上の亜鉛(II)ビスカルボキシレートと、少なくとも0.1mol、好ましくは1.0〜4.0mol、特に好ましくは1.5〜3.0mol、極めて特に好ましくは2.0〜3.0molの式(I)のアミジンとを反応させることによって製造可能であるか、又は1.0モルの1種以上の亜鉛(II)ビスカルボキシレートと、少なくとも0.1モル、好ましくは1.0〜4.0mol、特に好ましくは1.5mol〜3.0mol、極めて特に好ましくは2.0〜3.0molの2種以上の式(I)のアミジンの混合物とを反応させることによって製造可能である。
【0060】
触媒(D)は特に好ましくは、1.0molの亜鉛(II)ビスカルボキシレートと、少なくとも0.1mol、好ましくは1.0〜4.0mol、特に好ましくは1.5〜3.0mol、極めて特に好ましくは2.0〜3.0molの式(I)のアミジンとの反応によって製造できる。
【0061】
基R
2及びR
4は好ましくは、同一又は異なって非環状、直鎖状、又は分枝鎖状のアルキル基、及び/又は同一又は異なってアリール基である。好ましくは、基R
1及びR
3は水素であるか、同一又は異なって非環状、直鎖状、又は分枝鎖状のアルキル基、及び/又は同一又は異なってアリール基である。アルキル基はそれぞれ任意で、エステル、エーテル、エーテルエステル、及びケトンとして存在していてよい。アリール基は、脂肪族のエステル、エーテル、エーテルエステル、及びケトンによって置換されていてよく、又は芳香族エステル、エーテル、エーテルエステル、及びケトンとして存在していてよい。
【0062】
特に好ましくは基R
1、R
2、R
3、及びR
4はそれぞれ、同一又は異なって非環状の脂肪族基であり、これらの基R
1、R
2、R
3、及びR
4は極めて特に好ましくは、炭素数が1〜4である。基R
1、R
2、R
3、及びR
4は特に好ましくは、メチル基である。
【0063】
好ましい亜鉛・アミジン錯体(D)はさらに、亜鉛・アミジン錯体(D)のカルボキシレート基が、アルキル基中に炭素原子を1〜12個有する、直鎖状及び/又は分枝鎖状、置換又は非置換の脂肪族モノカルボン酸のカルボキシレート基、及び/又はアリール基中に炭素原子を6〜12個有する、置換又は非置換の芳香族モノカルボン酸のカルボキシレート基から成る群から選択されているものである。カルボキシレート基によって、使用する塗料成分への、生成錯体の溶解性がほぼ決まる。よって極めて特に好ましくは、本発明による被覆剤において、1.0モルの亜鉛(II)ビス(2−エチルヘキサノエート)と、2.0〜3.0molのアミジン(I)とを反応させることによって得られる、亜鉛・アミジン錯体を使用する。
【0064】
特に好ましいのは、成分(D)として、Zn(1,1,3,3−テトラメチルグアニジン)
a(アセテート)
2、Zn(1,1,3,3−テトラメチルグアニジン)
a(ホルミエート)
2、Zn(1,1,3,3−テトラメチルグアニジン)
a(ベンゾエート)
2、Zn(1,1,3,3−テトラメチルグアニジン)
a(2−エチルヘキサノエート)
2、Zn(1,1,3,3−テトラメチルグアニジン)
a(オクトエート)
2、Zn(1,1,3,3−テトラメチルグアニジン)
a(ネオデカノエート)
2、Zn(1,3−ジフェニルグアニジン)
a(ホルミエート)
2、Zn(1,3−ジフェニルグアニジン)
a(アセテート)
2、Zn(1,3−ジフェニルグアニジン)
a(ベンゾエート)
2、Zn(1,3−ジフェニルグアニジン)
a(2−エチルヘキサノエート)
2、Zn(1,3−ジフェニルグアニジン)
a(オクトエート)
2、及び/又はZn(1,3−ジフェニルグアニジン)
a(ネオデカノエート)
2を、好ましくはZn(1,1,3,3−テトラメチルグアニジン)
a(2−エチルヘキサノエート)
2、及び/又はZn(1,1,3,3−テトラメチルグアニジン)
a(オクトエート)
2、及び/又はZn(1,1,3,3−テトラメチルグアニジン)
a(ネオデカノエート)
2、及び/又はZn(1,3−ジフェニルグアニジン)
a(2−エチルヘキサノエート)
2、及び/又はZn(1,3−ジフェニルグアニジン)
a(オクトエート)
2を含有し、ここでそれぞれ、aは特に好ましくは1.0〜4.0であり、極めて特に好ましくは、2.0〜3.0である。極めて特に好ましいのは、成分(D)としてZn(1,1,3,3−テトラメチルグアニジン)
a(2−エチルヘキサノエート)
2、及び/又はZn(1,1,3,3−テトラメチルグアニジン)
a(オクトエート)
2、及び/又はZn(1,1,3,3−テトラメチルグアニジン)
a(ネオデカノノエート)
2を含有する被覆剤組成物であり、ここでそれぞれ特に好ましくは、aが1.0〜4.0であり、極めて特に好ましくは、aが2.0〜3.0である。
【0065】
1種以上の亜鉛(II)ビスカルボキシレートと、1種以上のアミジン(I)との反応は通常、非極性溶剤中で行われる。ここで溶剤として用いられるのは特に、亜鉛(II)ビスカルボキシレート及び亜鉛・アミジンの充分な溶解性を可能にし、かつ被覆剤中で化合物(A)、(B)、(D)、(S)、及び任意の(C)に対して化学的に不活性であり、また被覆剤の硬化に際しても、(A)、任意の(C)、(B)、(D)、及び(S)と反応しない溶剤である。このような溶剤の例は、脂肪族及び/又は芳香族の炭化水素(例えばトルエン、キシレン、ソルベントナフサ、Solvesso 100、又はHydrosol(登録商標)(ARAL社))、ケトン(例えばアセトン、メチルエチルケトン、又はメチルアミルケトン)、エステル(例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、又はエチルヘキシルプロピオネート)、エーテル、又は上記溶剤の混合物である。非極性溶剤又は溶剤混合物は好ましくは、水含分が溶剤に対して最大1質量%、特に好ましくは最大0.5質量%である。
【0066】
1種以上の亜鉛(II)ビスカルボキシレートと、1種以上のアミジン(I)との反応はまた、ポリヒドロキシ基含有成分(A)中、及び/又は成分(C)として記載した低分子アルコール中、任意で更なる溶剤(例えば特に先に記載した溶剤(L))との混合物中で、行うことができる。
【0067】
また、1種以上の亜鉛(II)ビスカルボキシレートと、1種以上のアミジン(I)との反応は、塗料成分(K−I)(いわゆる「結合剤成分」)の混合物全体中で行うことができ、当該混合物は、ヒドロキシ基含有化合物(A)、及び任意で(C)、任意で溶剤、及び任意で1種以上の下記塗料添加剤(F)を含有するものである。
【0068】
1種以上の亜鉛(II)ビスカルボキシレートと、1種以上のアミジン(I)との反応は通常、室温で、又はやや高温〜最大100℃の温度で行われる。ここで通常、亜鉛(II)ビスカルボキシレートは、溶剤中に、及び/又はヒドロキシ基含有化合物(A)及び/又は(C)中に(先に記載のように)装入し、アミジン化合物(任意で、上記溶剤に溶解させたもの)をゆっくりと滴加する。熱の発生がおさまるのを待ち、それからこの混合物をさらに2時間、少なくとも60℃で撹拌する。
【0069】
さらに、被覆剤組成物が二成分系の被覆剤組成物である場合には特に、活性触媒化合物(D)をその場で(in-situ)製造することができる。このためには、1種以上のアミジンの相応する量を、ヒドロキシ基含有結合剤(A)及び任意で(C)を含有する塗料成分(K−I)に溶解させ、亜鉛(II)ビスカルボキシレートの相応する量を、ポリイソシアネート基含有化合物(B)を含有する塗料成分(K−II)に溶解させる。塗布前に2つの塗料成分を混合する際には、亜鉛・アミジン錯体がその場で(in-situ)被覆剤組成物中に形成される。
【0070】
モノマーの芳香族カルボン酸(S)
さらに本発明で重要なのは、被覆剤組成物が、少なくとも1種の置換若しくは非置換のモノマー性芳香族カルボン酸(S)を含有し、当該カルボン酸のカルボキシル基がπ電子系に対して共役していることである。ここでカルボキシ基の数は変えることができ、このカルボン酸は好ましくは、カルボキシ基を1つ有する。置換又は非置換のモノマーの芳香族カルボン酸は、分子量が500g/mol未満、特に好ましくは300g/mol未満である。pK値が2〜5である置換又は非置換のモノマーの芳香族カルボン酸を使用するのが好ましい。pK値とは、半当量点におけるpH値に相当し、ここで溶解媒体は好適には水である。酸について水中におけるpK値の記載が不可能な場合、媒体として好適にはDMSOを選択するか、又は酸が溶解性の他の適切な媒体を選択する。
【0071】
適切なモノマーの芳香族モノカルボン酸及びポリカルボン酸は、相応するアルキル及びアリールで置換された芳香族のモノカルボン酸及びポリカルボン酸であり、また相応するヒドロキシ基含有芳香族モノカルボン酸及びポリカルボン酸(例えばフタル酸とテレフタル酸)、アルキル及び/又はアリールで置換されたフタル酸及びテレフタル酸、安息香酸、及びアルキル及び/又はアリールで置換された安息香酸、他の官能基を有する芳香族カルボン酸(例えばサリチル酸とアセチルサリチル酸)、アルキル及び/又はアリールで置換されたサリチル酸又はその異性体、多核芳香族カルボン酸(例えばナフタリンカルボン酸の異性体とその誘導体)である。
【0072】
被覆剤組成物は好ましくは、モノマーの芳香族カルボン酸(S)として、安息香酸、t−ブチル安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、及び/又はアセチルサリチル酸を、特に好ましくは安息香酸を含有する。
【0073】
成分(A)、(B)、任意の(C)、(D)、及び(S)の組み合わせ、並びに被覆剤組成物のさらなる成分
1成分系の被覆剤組成物の場合、遊離イソシアネート基がブロック化剤によってブロックされているポリイソシアネート含有化合物(B)を選択する。イソシアネート基は例えば、置換されたピラゾール、特にアルキル置換されたピラゾール(例えば3−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、4−ニトロ−3,5−ジメチルピラゾール、4−ブロモ−3,5−ジメチルピラゾールなど)でブロックできる。特に好ましくは、成分(B)のイソシアネート基を3,5−ジメチルピラゾールでブロックする。
【0074】
本発明による特に好ましい2成分系(2K)の被覆剤組成物の場合、被覆剤の適用直前に、ポリヒドロキシ基含有化合物(A)を含有する塗料成分、並びに以下に記載するさらなる成分と、ポリイソシアネート基含有化合物(B)、及び任意で以下に記載するさらなる成分を含有するさらなる塗料成分とを、それ自体公知の方法で混合し、ここで通常、化合物(A)を含有する塗料成分は、触媒(D)、並びに溶剤の一部を含有する。
【0075】
ポリヒドロキシ成分(A)は、適切な溶剤中に存在していてよい。適切な溶剤は、ポリヒドロキシ成分の充分な溶解性を可能にする溶剤である。このような溶剤の例は、前述の溶剤(L)である。
【0076】
ポリオール(A)、及び任意で(C)、及びポリイソシアネート(B)の質量割合は好適には、ポリヒドロキシ基含有化合物(A)及び任意の(C)のヒドロキシ基対成分(B)のイソシアネート基のモル当量比が、1:0.9から1:1.5、好適には1:0.9から1:1.1、特に好ましくは1:0.95から1:1.05となるように選択する。
【0077】
特に好ましくは、少なくとも1種のポリヒドロキシ基含有化合物(A)、特に少なくとも1種のポリヒドロキシ基含有ポリアクリレート、及び/又は少なくとも1種のポリヒドロキシ基含有ポリメタクリレート(A)を、それぞれ被覆剤組成物の結合剤含分に対して20〜80質量%、好ましくは30〜70質量%含有する、本発明による被覆剤組成物を使用する。
【0078】
同様に好ましくは、ポリイソシアネート基含有化合物(B)を、それぞれ被覆剤組成物の結合剤含分に対して5〜79質量%、好ましくは25〜69質量%含有する、本発明による被覆剤組成物を使用する。
【0079】
さらに本発明による被覆剤組成物は好ましくは、少なくとも1種の亜鉛・アミジン錯体(D)を、亜鉛・アミジン錯体の金属含分が、それぞれ被覆剤組成物の結合剤含分に対して、35〜2000ppm、好ましくは35〜1000ppm、特に好ましくは100〜1000ppmとなる量で含有する。
【0080】
さらに本発明による被覆剤組成物は好ましくは、少なくとも1種の芳香族カルボン酸(S)を、0.2〜15.0質量%、好ましくは0.5〜8.0質量%、特に好ましくは0.5〜5.0質量%含有し、ここで前記質量%の記載はそれぞれ、被覆剤組成物の結合剤含分に対するものである。
【0081】
結合剤含分はそれぞれ、テトラヒドロフラン(THF)に溶解性である、架橋前の被覆剤組成物の割合であると理解されるべきである。このために少量の試料(P)を秤量し、50〜100倍量のTHFに溶解させ、不溶性の成分を濾別し、THFを揮発させ、続いて先にTHFに溶解させた成分の固体を、60分間、130℃で乾燥させ、デシケーターで冷却し、それから再度、秤量することによって測定する。残渣が、試料(P)の結合剤含分に相当する。
【0082】
本発明による被覆剤組成物は好ましくは非水性被覆剤であり、溶剤を含有することができるか、又は溶剤不含系として調製できる。適切な溶剤の例は、前述の溶剤(L)である。1種以上の溶剤は、本発明による被覆剤組成物において好ましくは、被覆剤組成物の固体含分が、少なくとも50質量%、特に好ましくは少なくとも60質量%となる量で使用する。
【0083】
本発明による被覆剤組成物はさらに、1種以上のアミノプラスト樹脂、及び/又は1種以上のトリス(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジン(E)を、それぞれ被覆剤組成物の結合剤含分に対して0〜30質量%、好ましくは0〜15質量%含有することができる。
【0084】
適切なトリス(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジンの例は、US-A-4 939 213、US-A- 5 084 541、及びEP-A-0 624 577に記載されている。
【0085】
適切なアミノプラスト樹脂(E)の例は、塗料産業の分野で通常使用されるあらゆるアミノプラスト樹脂であり、この際にアミノプラスト樹脂の反応性によって、生成する被覆剤の特性が制御できる。これはアルデヒド、特にホルムアルデヒドからの縮合生成物であり、その例は尿素、メラミン、グアナミン、及びベンゾグアナミンである。アミノプラスト樹脂は、アルコール基、好適にはメチロール基を含有し、前記アミノプラスト樹脂は、通常は一部、好ましくは完全にアルコールでエーテル化されている。特に、低級アルコールでエーテル化されたアミノプラスト樹脂を使用する。好ましくは、メタノール及び/又はエタノール及び/又はブタノールでエーテル化されたアミノプラスト樹脂、例えばCymel(登録商標)、Resimene(登録商標)、Maprenal(登録商標)、及びLuwipal(登録商標)という名称で市販の製品を使用する。
【0086】
アミノプラスト樹脂(E)は以前から知られている化合物であり、その詳細は例えば、米国特許出願2005/0182189 A1の1頁、段落[0014]〜4頁の段落[0028]に記載されている。
【0087】
さらに、本発明による結合剤混合物、又は本発明による被覆剤組成物は、少なくとも1つの通常の公知の塗料添加剤(F)を有効量で、すなわち、それぞれ被覆剤組成物の結合剤含分に対して、好適には最大30質量%、特に好ましくは最大25質量%、特に最大20質量%含有する。
【0088】
適切な塗料添加剤(F)の例は、以下のものである:
・特に紫外線吸収剤、
・特に光安定剤、例えばHALS化合物、ベンゾトリアゾール、又はオキサラニリド、
・ラジカル捕捉剤、
・スリップ剤、
・重合阻害剤、
・消泡剤、
・成分(A)及び(C)とは異なる反応性希釈剤、特にまずさらなる成分又は水との反応によって反応性になる反応性希釈剤、例えばIncozol(登録商標)、又はアスパラギン酸エステル、
・成分(A)及び(C)とは異なる架橋剤、例えばシロキサン、フッ素含有化合物、カルボン酸半エステル、リン酸エステル、ポリアクリル酸、及びこれらのコポリマー、又はポリウレタン、
・接着性改善剤、
・均展剤、
・塗膜形成助剤、例えばセルロース誘導体、
・充填材、例えば二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、又は酸化ジルコニウムベースのナノ粒子(さらなる例は、Roempp Lexikon "Lacke und Druckfarben" Georg Thieme Verlag, Stuttgart, 1998, p.250〜252を参照)、
・成分(A)及び(C)とは異なるレオロジー制御添加剤、例えば特許文献のWO 94/22968、EP-A-0 276 501、EP-A-0 249 201、又はWO 97/12945から公知の添加剤、架橋されたポリマーのマイクロ粒子、例えばEP-A-0 008 127に開示のもの、無機の層状珪酸塩、例えばアルミニウム・マグネシウムのケイ酸塩、モンモリロナイト型のナトリウム・マグネシウムの層状珪酸塩とナトリウム・マグネシウム・フッ素・リチウムの層状珪酸塩、ケイ酸、例えばAerosil(登録商標)、又はイオン性及び/又は会合作用基を有する合成ポリマー、例えばポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリビニルピロリドン、スチレンと無水マレイン酸のコポリマー、又はエチレンと無水マレイン酸とのコポリマー、及びこれらの誘導体、又は疎水性に変性されたエトキシ化ウレタン又はポリアクリレート、
・難燃剤。
【0089】
特に好ましい被覆剤組成物は、
・少なくとも1種のポリヒドロキシ基含有ポリアクリレート(A)及び/又は少なくとも1種のポリヒドロキシ基含有ポリメタクリレートを、被覆剤組成物の結合剤含分に対して30〜70質量%、
・ポリイソシアネート基含有化合物(B)を、被覆剤組成物の結合剤含分に対して25〜69質量%、
・ヒドロキシ基含有成分(C)を、被覆剤組成物の結合剤含分に対して0〜10質量%、
・少なくとも1種の芳香族カルボン酸(S)を、被覆剤組成物の結合剤含分に対して0.5〜5.0質量%、
・1種以上のアミノプラスト樹脂、及び/又は1種以上のトリス(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジン(E)を、被覆剤組成物の結合剤含分に対して0〜15質量%、
・通常の公知の塗料添加剤(F)を少なくとも1種、被覆剤組成物の結合剤含分に対して0〜20質量%、及び
・少なくとも1種の亜鉛・アミジン錯体(D)を、亜鉛・アミジン錯体の金属含分が、それぞれ被覆剤組成物の結合剤含分に対して、100〜1000ppmとなる量で
含有するものである。
【0090】
本発明のさらなる態様において、本発明による結合剤混合物及び/又は本発明による被覆剤組成物はさらに、顔料及び/又は充填材を含有することができ、顔料着色されたトップコート及び/又は顔料着色されたアンダーコート又はサーフェイサを製造するため、特に顔料着色されたトップコートを製造するために使用できる。このために使用される顔料及び/又は充填剤は、当業者に公知である。顔料は通常、顔料対結合剤の比が、それぞれ被覆剤組成物の結合剤含分に対して0.05:1から1.5:1となる量で使用する。
【0091】
本発明による被覆剤から製造される本発明による被覆はまた、既に硬化された電着塗装、サーフェイサ塗装、ベースコート塗装、又は通常の公知のクリアコート塗装に対する接着性が優れているため、自動車ライン塗装(OEM)における使用に加えて、自動車修理塗装のため、及び/又は自動車部材の被覆のため、及び/又は業務用車両の被覆のために優れて適している。
【0092】
本発明による被覆剤組成物の適用は、通常の塗布手法、例えば噴霧、ブレード塗布、刷毛塗り、流しがけ、浸漬、含浸、滴下、又はローラ塗布によって行うことができる。ここで被覆すべき基材は、それ自体が静止していてよく、この場合、塗布装置又は塗布機器が動く。一方でまた、被覆すべき基材(特にコイル)が動いてもよく、この際には適用装置が、基材に対して静止しているか、又は適切に動く。
【0093】
好適には噴霧塗布法を適用し、それは例えば圧縮空気噴霧、エアレス噴霧、高回転、静電塗装(ESTA)であり、任意で加熱噴霧塗布(例えばホットエア加熱噴霧)と組み合わせてもよい。
【0094】
適用された本発明による被覆剤の硬化は、一定の静置時間後に行うことができる。この静置時間によって例えば、塗装層の均展と脱気、又は揮発成分(例えば溶剤)の揮発につながる。完全な架橋が早すぎるなど、塗料層に何らかの損傷又は変化を起こさない限り、静置時間は、高温の適用により、及び/又は空気中の湿分を減少させることにより、補助及び/又は短縮できる。
【0095】
被覆剤の熱による硬化について、手法的に特筆すべき点は無いが、通常の公知の手法(例えば空気循環炉における加熱、又は赤外線ランプによる照射)で行う。この際、熱による硬化を、段階的に行うこともできる。別の好ましい硬化手法は、近赤外線(NIR照射)による硬化である。
【0096】
熱による硬化は有利には、20〜200℃の温度で、1分から10時間にわたって行い、この際により低い温度、またより長い硬化時間も適用できる。ここで自動車修理塗装のため、及びプラスチック部材の塗装のため、並びに業務用車両の塗装のためには通常、好ましくは20〜80℃、特に20〜60℃という比較的低温が適用される。
【0097】
本発明による被覆剤組成物は、装飾、保護、及び/又は効果をもたらす被覆として、また移動手段(特に乗用車両、例えば自転車、自動二輪車、バス、貨物自動車、又は乗用車)のボディの塗装、又はこれらの部品の塗装として、内部領域及び外部領域における建築物の塗装として、家具、窓、及びドアの塗装として、プラスチック成形部材(特にCDと窓)の塗装として、工業的な小型部品、コイル、コンテナ、及び包装の塗装として、白物家電の塗装として、シートの塗装として、光学的、電気的、及び機械的な部材の塗装として、また中空ガラス及び日用品の塗装として、極めて適している。
【0098】
よって本発明による被覆剤組成物は例えば、事前に被覆された、又は被覆されていない基板に施与することができ、ここで本発明による被覆剤は、顔料着色されていても、顔料着色されていなくてもよい。特に本発明による被覆剤組成物及び塗装は、特にクリアコート塗装において、技術的及び美観的に特に要求度が高い自動車ライン塗装(OEM)分野において、また乗用車(特にハイクラスの乗用車)のボディ用プラスチック部材を被覆するため、例えばルーフ、後部ハッチ、ボンネット、フェンダー、バンパー、スポイラー、ドアシル、保護バー、横側の内張りなどを製造するため、また自動車修理塗装において、また業務用車両の塗装、例えば輸送用車両、チェーン可動式建築用車両(例えばクレーン車両、ブルドーザ、及びコンクリートミキサー車)、乗合自動車、軌道車両、水上車両、航空機器、並びに農業用機械(例えばトラクタ、コンバイン)、及びこれらの部品の塗装において使用される。
【0099】
プラスチック部材は通常、ASA、ポリカーボネート、ASAとポリカーボネートとのブレンド、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、又は耐衝撃性に変性されたポリメタクリレートから、特にASAとポリカーボネートとのブレンドから成り、好ましくはポリカーボネート割合が40%超、特に50%超のものを使用する。
【0100】
ここでASAとは一般的に、耐衝撃性に変性されたスチレン/アクリロニトリルのポリマーであると理解され、このポリマーは、ポリアルキルアクリレートゴムに、ビニル芳香族化合物(特にスチレン)、及びシアン化ビニル(特にアクリロニトリル)をグラフトさせたポリマーが、特にスチレンとアクリロニトリルとから成るコポリマーマトリックス中に存在するものであると理解される。
【0101】
本発明による被覆剤組成物は特に好ましくは、多段階の被覆法で使用し、特に事前に被覆された、又は被覆されていない基材に、まず顔料着色されたベースコート層を塗布し、その後、本発明による被覆剤組成物を有する層を塗布する方法で使用する。よって本発明の対象はまた、少なくとも1つの顔料着色されたベースコート層と、このベースコート層に配置された少なくとも1つのクリアコート層とから成る、効果及び/又は着色をもたらす多層塗装系であり、その特徴は、前記クリアコート層が、本発明による被覆剤組成物から製造されていることである。
【0102】
水で希釈可能なベースコートも、有機溶剤ベースのベースコートも使用できる。適切なベースコートは例えば、EP-A-0 692 007、及びこの文献の第3コラム、50行目以降に挙げられた文献に記載されている。施与されたベースコートをまず乾燥させるのが好ましい。これはつまり、ベースコート塗膜から揮発段階において、有機溶剤又は水の少なくとも1部を取り去るということである。この乾燥は好適には、室温〜80℃の温度で行う。乾燥後に、本発明による被覆剤組成物を施与する。続いて第二層の塗装を、好ましくは自動車ライン塗装で適用される条件下、20〜200℃の温度で1分〜最大10時間焼き付け、ここで自動車修理塗装で適用される温度(一般的に20〜80℃、特に20〜60℃)、またより長い硬化時間も適用できる。
【0103】
本発明のさらなる好ましい実施態様では、本発明による被覆剤組成物を、プラスチック基材(特にプラスチック製部品)を被覆するための、透明なクリアコートとして使用する。プラスチック製部品は好ましくは同様に、多段階被覆法で被覆し、事前に被覆された、若しくは被覆されていない基材に、又は後続の被覆の接着性を改善させるため事前に処理された基材(例えば基材の火炎処理、コロナ処理、若しくはプラズマ処理)にまず、顔料着色されたベースコート層を塗布し、その後、本発明による被覆剤組成物を有する層を塗布する。
【0104】
実施例
・ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)
ゲル透過クロマトグラフィーは40℃で、高圧液体クロマトグラフィーポンプと、屈折率検知器により行った。溶離剤としてテトラヒドロフランを、1ml/分の溶離速度で使用した。較正は、ポリスチレン標準で行った。数平均分子量Mn、質量平均分子量Mw、及びMpを測定し、ここで高分子指数Mpは、Mp=Mw/Mnという式で算出した。
【0105】
・ヒドロキシ数
ヒドロキシ数は、使用するOH官能性成分の割合によって算出し、固体樹脂1gあたりのKOHをmgで記載する。
【0106】
・固体の測定
試料約1gを、ブリキ製蓋に秤量する。酢酸ブチル約3mlを添加後、この試料を乾燥機で60分間、130℃で乾燥させ、デシケーターで冷却し、それから秤量する。残渣が、固体割合に相当する。
【0107】
・結合剤含分の測定
結合剤含分はそれぞれ、テトラヒドロフラン(THF)に溶解性である、架橋前の被覆剤組成物の割合であると理解されるべきである。このために少量の試料(P)を秤量し、50〜100倍量のTHFに溶解させ、不溶性の成分を濾別し、THFを揮発させ、続いて先にTHFに溶解させた成分の固体を60分間、130℃で乾燥させ、デシケーターで冷却し、それから再度、秤量することによって測定する。残渣が、試料(P)の結合剤含分に相当する。
【0108】
・Zaponタック試験(ZTT)による、非接着性
厚さ約0.5mm、幅2.5cm、長さ約11cmのアルミニウムストリップを、2.5×2.5cmの面ができるよう、110°の角度で曲げる。板の長い側はさらに2.5cm、約15°で、板が、正方形の面で中心に位置づけられた5gの質量によって、ちょうどバランスを保つように曲げる。ZTTにより接着性を測定後、曲げた板を塗膜上に置き、30秒間、100gの質量をかける。この重しを取り除いた後、板の角度が5秒以内に変われば、塗料は接着性が無いとみなされる。この試験は15分間隔を空けて繰り返す。試験に入る前に塗膜の接着性を、触って質的に判断する。高温で試験する場合、試験片は試験開始から冷却のため10分間、室温に置く。Zaponタック試験による非接着性の測定は、被覆を30分、60℃で硬化させた後に行い、試験片を10分間、室温に置いた後に試験を開始し、非接着性の測定はZaponタック試験により、室温で被覆を保存時に測定する。
【0109】
・押圧試験
塗膜は、100μmのブレードで、ガラス板に引く。15分間60℃で乾燥後、又は30分60℃で乾燥後、10分以内に炉から取り出し、ガラス板を市販の実験室用秤にのせる。親指の圧力で、塗膜に20秒間、2kgの負荷を掛ける。この試験を10分ごとに繰り返す。塗膜が明らかにまだ柔らかい又は接着性である場合、塗膜が充分に非接着性になるまで、またその硬度が充分になるまで待つ。試験の評価は、24時間貯蔵した後に行う。このために塗料表面を、界面活性剤水溶液(市販の洗剤)と柔らかい布で洗浄し、脂肪残渣を除去する。常に、標準物質に対して測定する。塗膜に指による押圧の跡が見られなければ、塗料は大丈夫であるとみなされる。この試験は、修理塗装の取り付け強度のための基準となる。すなわち塗膜が強制的な乾燥後に取り付け強度に達するのが早ければ早いほど、修理されたボディへの取り付け作業(及び/又は取り付け部の取り外し作業)を早く始めることができる。
【0110】
時間はそれぞれ分で記載されており、これは15分、60℃での乾燥後、又は30分、60℃での乾燥後、続いて試験片を10分間室温に置いた後、押圧試験における痕跡が見えなくなるまでの時間である。
【0111】
・乾燥時間計
寸法が280mm×25mmのガラス板に、100μmのボックス型ブレードで塗料を引く。Byk社の乾燥時間計を用いて、室温(20〜23℃)、空気中の相対湿度40〜60%で、針を規定の速度で塗膜に引く。この際に3つの異なる段階、また合計長さ(段階1+段階2+段階3の合計)を評価する。
・段階1:針の軌跡は、再び埋まる。
・段階2:針の軌跡は、塗膜に深い溝を残す。
・段階3:針は塗膜の表面のみを傷付ける。
【0112】
評価は常に、標準物質に対して行う。
【0113】
傷の軌跡の合計長さ(cm)、段階1、段階2、及び段階3の後の傷の軌跡の長さ(cm)が、それぞれ記載されている。
【0114】
・ポットライフ
このためには、室温における塗装試料の粘度をDIN4フォード粘度カップで測定する。試料をまず、DIN4カップ内で19〜20秒のフォード粘度に調整する。その後、適切な時間間隔で、粘度上昇を測定する。試料の粘度が初期粘度の二倍になると、ポットライフは限界に達している。記載されているのはそれぞれ、DIN4フォード粘度カップにおいて室温で測定された、被覆剤組成物の粘度である(製造直後、製造の1時間後、2時間後、3時間後、及び4時間後)。
【0115】
・振り子硬度
塗膜の硬度は、Koenigによる振り子衝撃試験で、DIN 53157に従い測定する。振り子衝撃力が記載されている。振り子硬度の測定は、被覆を1日、3日、又は7日間、室温に置いた後に行った。振り子硬度の測定は被覆を30分、60℃に置き、続いて被覆を1日、3日、又は7日間、室温で貯蔵した後に行った。
【0116】
・ミルベース
ソルベントナフサ(登録商標)/エトキシエチルプロピオネート/メチルイソブチルケトン(20:46:34)中で62%のスチレン含有ポリアクリレート(分子量:Mnで1600〜2200、Mwで4000〜5000、測定した酸価:12〜16mg/KOH/g、算出したOH数(OHZ):約130mgKOH/g(固体樹脂)、60質量%の酢酸ブチル溶液中での粘度:200〜400mPa・s(回転式粘度計の3アーム型Brookfield CAP 2000、1000rpmで測定))86.4g、メチルイソブチルケトン6.4g、紫外線安定剤とHALS安定剤から成る市販の光安定剤混合物2.2g、及びポリアクリレートベースの市販の均展剤0.15gを撹拌して、均質に混合する。この混合物に、記載されている場合には、相応する触媒を撹拌しながら添加混合する。安息香酸を用いる場合、これを撹拌しながら、固体としてミルベース混合物に溶かす。粘度を調整するために再度、メチルイソブチルケトン1.0部、及び酢酸ブチル2.80部を添加する。
【0117】
・硬化剤溶液
WO 2009/077180に従って以下の処方により、NCO基の反応度が約32〜35%の硬化剤を製造する。
【0118】
マグネチックスターラ、内部温度計、及び滴下漏斗を備える三首フラスコ(250ml)に、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネートをベースとする三量体化されたイソシアネート(FK100%:ドイツ国Leverkusen在、Bayer社製のDesmodur(登録商標)N 3600)51.6g、酢酸ブチル13.6g、及びトリエチルオルトホルミエート2.4gから成る混合物を装入する。窒素ブランケット下、滴下漏斗によってビス[3−トリメトキシシリルプロピル]アミン(ドイツ国Rheinfelden在、EVONIK社製のDynasylan(登録商標)1124)26.4g、及びN−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ブチルアミン(ドイツ国Rheinfelden在、EVONIK社製のDynasylan(登録商標)1189)2.0gを、ゆっくりと滴加する。この反応は、発熱性である。添加速度は、内部温度が最大値の60℃を超えないように選択する。それから滴下漏斗によって、酢酸ブチルをさらに4g加える。さらに4時間、イソシアネート含分の滴定による測定(DIN EN ISO 11909準拠)により、固体物質に対してNCOが8.3〜8.8%という一定の値が得られるまで、60℃に保つ。
【0119】
Dynasylan(登録商標)1124対Dynasylan(登録商標)1189のモル比は、10:1である。
【0120】
・本発明による触媒の製造
亜鉛−2−エチルヘキサノエートを、以下に記載の量で、酢酸ブチルに装入する。それから1,1,3,3−テトラメチルグアニジンを、ゆっくりと滴加する。発熱性反応がおさまった後、もう一度さらに20分、室温で撹拌する。
【表1】
【0121】
・比較触媒(VK1)
WO 2009/077180に従って、DABCOベースの触媒を、以下のように製造した:
1位:1,4−ジアザビシクロ(2.2.2)オクタン 11.78g(0.105mol)、
2位:ビス(2−エチルヘキシル)ホスフェート 32.24g(0.100mol)
3位:メチルイソブチルケトン 10.00g
4位:酢酸エチル 20.00g。
【0122】
還流冷却器と撹拌機を備える三首フラスコ(100ml)に、1位、3位、及び4位を、窒素ブランケット下で装入する。約45℃で4位をゆっくりと滴加し、この際に温度を最大50℃に維持する。さらに40℃で3時間撹拌後、溶剤混合物を回転式エバポレータで除去する。それからこの残渣を、イソプロパノールで回収する。触媒VK1の50質量%溶液が得られる。
【0123】
この混合物に、相応する触媒を撹拌下で添加混合する。安息香酸を用いる場合、これを撹拌しながら、事前に固体としてミルベース混合物に溶かす。粘度を調整するために再度、メチルイソブチルケトン1.0部、及び酢酸ブチル2.80部を添加する。
【0124】
・試験の実施:
さらなる成分(例えば安息香酸と触媒溶液)を、ミルベース中に溶かす。軽く撹拌した後に、透明な溶液が得られる。試験を実施するため、ミルベースを装入し、硬化剤を添加する。この溶液を、撹拌により均質化する。
【0125】
粘度測定のため、メチルイソブチルケトンと酢酸ブチルとの混合物(1:3)を添加することによって、記載の粘度に調整する。ガラスに引くためには、粘度調節は行わない。
【0126】
乾燥試験を行うため、ガラス板に塗膜を100μmのボックス型ブレードで引き、30〜35μmの塗膜厚を得る。振り子硬度を測るため、ガラス板に塗膜を注ぎ、塗膜硬度をKoenigにより測定する前に、引いた塗膜の割れ目での層厚を測定する(DIN 50933)。乾燥時間計を用いた試験のため、試料を同様に100μmのボックス型ブレードで適切なガラスストリップに長さ約300mm、幅約25mmで引く。これによって、30〜35μmの層厚が得られる。
【0127】
・比較例V1及びV2
まず、比較例V1及びV2の被覆剤を、それぞれ同量のリンベース触媒(WO09/077180に記載のもの)により製造したのだが、比較例1では安息香酸ありで、比較例V2では安息香酸無しで製造した。比較例V1及びV2の被覆剤の組成、並びに生成する被覆の試験結果は、表1に記載されている。
【表2】
【0128】
・実施例1及び2、並びに比較例V3及びV4
まず実施例1及び2の被覆剤を、それぞれ同量の亜鉛・アミジン錯体により製造したのだが、本発明による触媒K1(実施例1)及びK2(実施例2)で異なる触媒により製造した。さらに比較例V3及びV4の被覆剤組成物を製造したのだが、これらは安息香酸を含有しない点でのみ、本発明による実施例B1及びB2と異なる。実施例1及びV2の被覆剤の組成、比較例V3及びV4の被覆剤の組成、並びに生成する被覆の試験結果は、表2に記載されている。
【表3】
【0129】
・実施例3〜5
実施例3〜5の被覆剤は、それぞれ同量の亜鉛・アミジン錯体により製造したのだが、安息香酸の量が異なる。実施例3〜5の被覆剤の組成、並びに生成する被覆の試験結果は、表3に記載されている。
【表4】
【0130】
・実施例6及び7、並びに比較例V5及びV6
まず実施例6及び7の被覆剤を、それぞれ同量の亜鉛・アミジン錯体により製造したのだが、本発明による触媒K3(実施例6)と、K4(実施例7)で異なる触媒により製造した。さらに比較例V5及びV6の被覆剤組成物を製造したのだが、これらは安息香酸を含有しない点でのみ、本発明による実施例B6及びB7と異なる。実施例6及び7の被覆剤の組成、比較例V5及びV6の被覆剤の組成、並びに生成する被覆の試験結果は、表4に記載されている。
【表5】
【0131】
・試験結果の考察
これらの試験結果により、亜鉛とアミジンの錯体が、上記ハイブリッド硬化剤によるOHアクリレートの架橋を、効果的に促進させることが分かる。特に効果的なのは、カルボキシレート基がπ電子系に共役しているカルボン酸(例えば安息香酸)と組み合わされた、亜鉛・アミジン錯体である。