(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記チャンバ(3)内の圧力を、前記高真空度圧まで低下させる前に、少なくとも1つのガス種の、前記チャンバ(3)内の濃度変化をモニタする、予備的な大漏洩検出ステップ(ステップ102)を含んでいることを特徴とする、請求項1に記載の検出方法。
前記大漏洩検出ステップにおいて、前記密封製品を受容しているチャンバの雰囲気が、パージガスによって置き換えられ、前記密封製品に含まれているガス体の、前記パージガスと異なる少なくとも1つのガス種と同一のガス種の、前記チャンバ内の濃度変化がモニタされることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか1つに記載の検出方法。
【背景技術】
【0002】
ある種の製品は、その機能の保全のために、大気圧中または真空下で、ブリスタ包装材料、小袋、バイアル瓶、ビニール袋、薬品バッグ、または薬剤バッグなどの包装材料の中に密封される。
【0003】
密封が完全に耐漏洩性であることを確かめるために、密封製品の耐漏洩性が検査される。この検査は、乾性製品や液状製品、軟質製品や硬質製品、不透明な製品や透明な製品などの、様々なタイプの製品に対して、高感度で、その密封性を保証するものでなければならない。医薬品産業および農業食品産業においては、薬品および食品を、水分、空気、および細菌から保護することによって、薬品および食品の安定性を確保するために、この検査は不可欠である。
【0004】
密封製品の耐漏洩性を検査するための、いくつかの方法がある。しかしながら、これらの方法は、いくつかの欠点を有している。
【0005】
例えば「メチレンブルー」漏洩検査法が公知である。この方法においては、密封製品を、メチレンブルーで着色された着色溶液中に浸漬する。密封製品の目視検査によって、漏洩が存在すれば、サンプル内への着色溶液の浸入が検出され、したがって、包装材料内への漏洩を検出することができる。漏洩検出の感度は、およそ10
−2mbar・l/sである。この方法は、迅速かつ簡単に実行することができるが、その検査は破壊的であり、また感度も十分ではない。
【0006】
別の公知の一方法として、ヘリウム検査法がある。この方法においては、漏洩による、ヘリウムの通過を検出する必要がある。すなわち、この方法においては、分子サイズが小さいために、小さな漏洩口を、他の気体より容易に突き抜けるというヘリウムの性質が用いられる。
【0007】
このために、製品の密封前に、包装材料の内部は、ヘリウムから成るトレーサガスで制御可能に充填される。次に、サンプル周辺にトレーサガスが存在するか否かが、漏洩検出器を用いて検出される。サンプルは、真空状態の耐漏洩検査室内に配置される。または「スニファー(sniffer、ガス探知装置)」漏洩検出器が用いられる。後者の場合の測定は、大気圧中で実施される。大気中の自然のヘリウム濃度よりはるかに高く、完全に識別可能なヘリウム濃度が検出されなければならない。これらの方法は、一般に10
−8mbar・l/sより良好な、非常に高い測定感度を有している。
【0008】
しかしながら、検査後にも、サンプル内にヘリウムガスが充填されているから、そのサンプルを、包装ラインに直接戻すことはできない。さらに、この方法の実行は比較的複雑であり、かつ高価である。さらに、検査のために製品中に注入されていたヘリウムを除去した後でも、サンプルから付着ガスが抜け出るまでに、一定の待ち時間を必要とする。最後に、大きな漏洩口を有する損傷サンプルにおける検出中に、ヘリウムが、耐漏洩検査室内に流出する。したがって、損傷サンプルを取り出した後、以後の測定を誤らせる可能性のある、耐漏洩検査室内に存在する残留ヘリウムを除去する必要がある。
【0009】
検査して、損傷がないことが分かった密封製品が、商品として使用不可にならないようにする、別の方法がある。例えば波長可変ダイオードレーザを用いる吸収分光法によって、密封用の包装材料の耐漏洩性を検査する方法が公知である。発散レーザビームが、包装材料の対向し合う2つの面を透過して検出器上に集束される。サンプル中にためられている酸素、水分、および二酸化炭素などのガスが、包装材料を通して測定される。数日間(酸素のモニタリングの場合には5日間)の測定の後、測定されたガスの量が安定しているか、または変化しているかに応じて、ガスの増減(漏洩の存在を示している可能性が高い)の有無を高感度に検出することができる。しかしながら、検査期間が長いために、不良生産ラインの修復を迅速に行うことができない。また、高感度測定を実施するために、保存場所の使用が必要になる。さらに、この方法は、液状製品には適用されない。
【0010】
他の測定原理として、包装材料が軟質であることを要し、そのため、全てのタイプの密封製品に適用することができないものがある。例えば、真空中における包装材料の変形をモニタする、ある種の光学的な測定原理、またはひずみゲージを用いる測定原理が、これに該当する。しかしながら、これらの測定の較正は容易でないから、これらの測定の感度は限定されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
公知の方法のいくつかは破壊的であり、検査された密封製品は、商品として用いることができなくなる。また、公知の方法のいくつかは低感度であり、したがって、検出されない漏洩口が存在して、製品に損傷を与える場合がある。また、公知の方法のいくつかは、特定のタイプの製品だけに適用されるものであり、同一の測定方法で、全ての製品の耐漏洩性を検査することはできない。さらに、公知の方法のいくつかは、その実行に、あまりにも高額の費用を要する。
【0013】
産業界においては、完全性試験を、より厳しくし、体系化することを目指すのが現在の傾向である。製品および包装材料の各タイプに応じて、排除閾値は、10
−3〜10
−6mbar・l/sの範囲にある場合がある。したがって、このような産業においては、インライン検査に用いることができるように、非破壊的で、高測定感度の漏洩検査法が求められている。
【0014】
本発明は、非破壊的であり、高い測定感度を有する、密封製品の耐漏洩性を検査するための方法を提案することによって、上述の欠点を、少なくとも部分的に克服することを1つの目的としている。
【0015】
本発明は、種々のタイプの製品、特に乾性製品や液状製品、および全てのタイプの包装材料、特に光学的に透明な包装材料や不透明な包装材料、軟質包装材料や硬質包装材料に適用することができる方法を提供することを、さらなる1つの目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
これらの目的を達成するために、本発明は、次のステップを含むことを特徴とする、密封製品の耐漏洩性を検査するための方法を提供するものである。
− 空気、窒素、またはアルゴンの雰囲気中であらかじめ密封されている少なくとも1つの密封製品を、チャンバ内に配置するステップと、
− チャンバ内の圧力を、10
−1ミリバール未満の高真空度圧まで低下させ、チャンバ内を高真空に排気し続けながら、これらの少なくとも1つの密封製品に含まれているガス体中の、窒素、酸素、アルゴンのうちの少なくとも1つのガス種と同一のガス種のイオン化物の、チャンバ内の濃度変化を、発光分光分析法または質量分析法による分析を用いてモニタするために、チャンバ内のガスをイオン化させるステップ。
【0017】
低圧において、すなわち最大でも10
−1mbar未満の高真空度圧において、密封製品に漏洩がない場合には、チャンバ内に存在していた空気は排気され、したがって、残留雰囲気は、主として、壁面からのガス脱離に由来する水蒸気となる。したがって、密封製品に含まれているガスは、事実上、チャンバの雰囲気中に存在せず、チャンバは、主として、水蒸気を含むだけとなる。
【0018】
この検出方法は、密封製品が、保護される品物と包装材料との間に、ガス雰囲気を閉じ込められているという事実を用いている。したがって、このガス雰囲気中に含まれているガス種と同一のガス種の、チャンバ内における濃度変化をモニタし、その変化を、基準ガス種の、較正済みの濃度変化と比較することによって、密封製品からの漏洩の有無を特定することができる。
【0019】
発光分光分析法または質量分析法による分析を用いて、極めて微量のイオン化ガス種をリアルタイムで、すなわち従来技術のいくつかの検出方法の場合のように、排気時間と別に、モニタすべきガス分子の収集のための待ち時間を要することなく、検出することができる。したがって、漏洩検査に要する時間は短縮される。これは、密封製品を高真空中に置くことによって可能になる。高真空は、雰囲気空気と、密封製品に含まれている空気に由来する空気成分とを区別するために必須である。
【0020】
この検出方法は、チャンバ内の圧力を、高真空度圧まで低下させる前に、少なくとも1つのガス種の、チャンバ内の濃度変化をモニタする、予備的な大漏洩検出ステップを含んでいる場合がある。「大漏洩」という表現は、10
−2mbar・l/sを超過する流量の漏洩を意味している。
【0021】
予備的な大漏洩検出ステップを行うことによって、大漏洩の発生の際に、高真空度圧への圧力低下が生じており、その大漏洩によって、二次的に、密封製品の空洞内に含まれている全てのガスの排気が引き起こされ、したがって、大漏洩が検出されなくなるという事態が生じることを防ぐことができる。したがって、単純で低価格のガスセンサによって、大気圧中または低真空中において、およそ1ppmv(100万分の1体積分率)の検出感度で、密封製品からの大漏洩を検出することができる。
【0022】
予備的な大漏洩検出ステップの遂行中、チャンバ内の圧力を、大気雰囲気圧にしておくこともでき、またはガス混合物(密封製品中に含まれているガスとチャンバからのガス)の、ガスセンサに向かう拡散を促進するために、1mbarを超過する低真空度圧に低下させることもできる。
【0023】
さらに、予備的な大漏洩検出ステップにおいて、密封製品を受容しているチャンバ内の雰囲気をパージガスで置き換え、密封製品に含まれているガス体中の、パージガスと異なる少なくとも1つのガス種と同一のガス種の、チャンバ内における濃度変化をモニタすることができる。
【0024】
予備的な大漏洩検出ステップ、および高真空における検出ステップにおいて、モニタされるガス種は、窒素や酸素などの、空気を構成する典型的なガス種である場合がある。実際、医薬品産業や農業食品産業における密封製品などの多くの密封製品は、空気中で密封される。空気は、ほぼ78%の窒素と20%の酸素を含んでいるから、これらの2つのガス種は、密封製品からの漏洩が存在する場合に、チャンバ内で容易に識別可能である。
【0025】
いくつかの密封製品は、保護されるべき品物の酸化防止のために、特に食品産業において、包装小袋への無菌封止のために、窒素雰囲気中で密封される。この場合には、窒素の濃度変化をモニタすることによって、密封製品からの漏洩の有無を特定することができる。
【0026】
包装材料からの漏洩、または包装材料の破裂の際に、次の漏洩検査のためにチャンバを再度利用する前に、長時間、チャンバを排気しなければならない、従来技術の検査におけるヘリウムの場合と異なり、密封製品からの空気または窒素を、容易かつ迅速に、チャンバから排気することができるという利点がある。
【0027】
医薬品産業においては、いくつかの生物学的物質は、それらの劣化防止のために、アルゴンなどの不活性ガスを含む雰囲気中で密封される。特に、生体組織から抽出されたときに、水や酸素によって劣化する危険性を有するDNA(デオキシリボ核酸)の場合に、そのようにされる。さらに、食品産業において、特に肉の保存のために、アルゴン雰囲気中に密封される場合もある。
【0028】
アルゴン雰囲気中での密封は、自動車産業においても用いられている。
【0029】
例えば消火タンクにおいて、いくつかの製品は、混合ガス、特にアルゴンと窒素との混合ガスの雰囲気中で密封される場合がある。
【0030】
したがって、モニタされるガス種は、アルゴンである場合がある。
【0031】
ヘリウムは、空気中に微量しか含まれておらず、したがって、空気を含んでいる密封製品から漏洩することができるヘリウムは、ごくわずかであり、ヘリウムは、密封製品からの漏洩の指標として用いられるガス種ではない。さらに、ヘリウムは、排気し難いために、変化をモニタしようとしている、対象ガスの濃度に対して大きな背景ノイズを与える場合がある。
【0032】
ガス体を含んでいる限り、種々のタイプの密封製品の耐漏洩性、具体的には乾性密封製品や液状密封製品、透明密封製品や不透明密封製品、軟質密封製品や硬質密封製品の耐漏洩性を検査するために、本発明の検出方法を実行することができる。
【0033】
したがって、従来技術によるいくつかの方法のように、製品にトレーサガスを充填するために、包装材料の穴あけおよび再封止を行うことも、トレーサガスで製品を密封することも必要ない。生産工程における製品の密封、耐漏洩性検査、および漏洩のない密封製品の販売の間に、特別の処理は必要ない。
【0034】
したがって、本発明の検出方法によって、包装材料も、その中身も損傷しないから、本発明の検出方法は非破壊的であり、したがって、密封製品を、直接に、すなわち特別の洗浄または他の処理を要することなく、包装ラインに戻すことができる。
【0035】
最後に、本発明の検出方法は、高真空における検出ステップにおいて、ほぼ10
−6mbar・l/sの高い測定感度を有している。
【0036】
ガス種が、発光分光分析法による分析を用いてモニタされる場合には、チャンバ内に存在するガス種のスペクトル中の、水蒸気特有のスペクトル線の強度に対する、モニタされているガス種のスペクトル線の強度、例えば窒素または酸素特有のスペクトル線の強度の比の変化をモニタすることができる。例えば水蒸気特有のスペクトル線の強度に対する、窒素特有のスペクトル線の強度の比の変化がモニタされる。当然ながら、強度の比の算出は、水蒸気以外のガス種を用いて行うこともできる。
【0037】
実際、チャンバの雰囲気は、密封製品とともに入ってきた空気中の水分に由来する水蒸気、または壁面からのガス脱離に由来する水蒸気を含んでいることが極めて多い。したがって、チャンバ内に存在するガス種のスペクトルには、常に、水蒸気特有のスペクトル線が含まれる。したがって、イオン化ガス検出器の光学窓が、例えばその汚染のために、処理ユニットに送信される信号(スペクトル線)の強度が失われるほどに、弱い光しか受けることができなかったとしても、スペクトル線の強度の比によって与えられる測定値は依然として有効であり、空気の分圧の変化を表すことは確実である。さらに、水蒸気特有のスペクトル線の強度に対する、空気特有のスペクトル線の強度の比をモニタすることによって、空気特有のスペクトル線の強度を正規化することができ、それによって、その比の変化が、実際に、空気の分圧の変化を表すことを保証することができる。
【0038】
さらに、漏洩の定量化のために、水蒸気特有のスペクトル線の強度に対する、空気特有のスペクトル線などの、モニタされているガス種のスペクトル線の強度の比を、チャンバ内の圧力の低下過程において、較正済みの複数の漏洩量に対して得られている、水蒸気特有のスペクトル線の強度に対する、モニタされているガス種のスペクトル線の強度の比と比較することができる。
【0039】
別の一態様によれば、密封製品は、測定中、冷却される。それによって、低圧における、密封製品の包装材料からのガス脱離が低減し、したがって、測定時間が短縮され、検査速度が上昇する。
【0040】
本発明は、さらに、次のものを備えている、密封製品の耐漏洩性を検査するための検出装置を提供するものである。
− 空気、窒素、またはアルゴンの雰囲気中で密封されている少なくとも1つの密封製品を受容するように構成されているチャンバと、
− 低真空ポンプと、チャンバの出口に連結されている入口を有するターボ分子真空ポンプとが互いに直列に連結されているポンプユニットと、
− チャンバに連結されている、ガスイオン化手段を有するイオン化ガス検出器と、
− ガス種の変化を表す信号を受けるように、イオン化ガス検出器に接続されている処理ユニット。
処理ユニットは、これらの少なくとも1つの密封製品に含まれているガス体中の、窒素、酸素、アルゴンのうちの少なくとも1つのガス種と同一のガス種のイオン化物の、チャンバ内の濃度変化をモニタし、密封製品からの漏洩の有無を特定するために、イオン化物の濃度変化を、基準ガス種の較正済みの濃度変化と比較するように構成されている。
【0041】
この検出装置は、チャンバに連結されている少なくとも1つの、較正済み漏洩部を備えている場合がある。較正済み漏洩部は、一時的に、2つの測定値間で、イオン化ガス検出器において生じ得るドリフトを補正するために用いることができる。
【0042】
本発明の第1の態様によれば、処理ユニットは、さらに、例えば1つ以上の較正済み漏洩部を用いて、較正済みの複数の漏洩量に対して、チャンバ内の圧力の低下中に得られている、イオン化ガス検出器の較正曲線(処理ユニットのメモリに記憶されている)と比較することによって、漏洩を定量化するように構成されている。
【0043】
測定は、発光分光分析法による分析を用いて行われる場合がある。この場合には、イオン化ガス検出器は、次のものを備えている。
・ チャンバと連通状態になることができるエンクロージャ、
・ エンクロージャの光学窓に連結されている発光分光分析計、および
・ エンクロージャの周囲に配置されて、イオン化ガス検出器のガスイオン化手段を形成しており、エンクロージャ内に存在するガス種に対応するプラズマを発生させることができるプラズマ発生装置。
【0044】
別の一態様によれば、測定は、質量分析法による分析を用いて行われる場合がある。この場合には、イオン化ガス検出器は質量分析計である。
【0045】
検出装置は、特に、十分な機械的強度を有していない軟質包装材料が用いられている場合に、密封製品が真空中に置かれたときに、その変形が低く抑えられるように、密封製品を保持するための保持手段を備えている場合がある。この保持手段は、測定時間の短縮のために、冷却手段を有していることが好ましい。
【0046】
測定時間を短縮する別の一方法として、チャンバに、低温トラップなどの冷却トラップを設けることによって、チャンバ内に存在する水蒸気を制限する場合がある。
【0047】
検出装置は、さらに、密封製品の耐漏洩性を検査するための予備的な大漏洩検出ステップにおいて、またチャンバ内を真空状態にした後で、チャンバ内を大気圧に戻す際に、チャンバ内にパージガスを注入することができるパージガス注入手段を備えている場合がある。
【0048】
検出装置は、さらに、予備的な大漏洩検出ステップにおいて、チャンバ内の酸素の濃度変化をモニタするための酸素ガスセンサなどのガスセンサを備えている場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0050】
添付図面を参照して、例示的で非限定的な以下の説明を読むことによって、本発明の他の特徴および利点が明らかになると思う。
【0051】
図において、同等の構成要素には同一の符号を付してある。本発明による方法を遂行する各ステップには、100からの番号を付してある。
【0052】
図1は、密封製品2の耐漏洩性を検査するための検出装置1を示している。
【0053】
密封製品2は、ブリスタ包装材料(
図3)、小袋、バイアル瓶、ビニール袋、または薬品バッグや薬剤バッグなどで密封された、例えば医薬品または食品である。密封製品2は、バイオ産業や自動車産業で生じた製品である場合もある。
【0054】
これらの密封製品の内部には、例えば湿気、空気、または細菌から保護される少なくとも1つの品物(医薬品または食料品など)が含まれている。保護される品物は、液体の形態を呈している場合もあるし、固体の形態を呈している場合もある。この品物は、密封用の包装材料内に包装されている。損傷を伴わずに密封することによって、包装材料内との連絡は不可能になり、いかなるガスも、包装材料内に入ることも、包装材料から出ることもできなくなる。
【0055】
密封製品2は、保護される品物と包装材料との間に、空気などのガス体を有している。密封製品2のガス体として封じ込められるガスのいくつの他の例について、後に言及する。密封製品2に含まれているガス体の圧力は、一定である。この圧力は、包装の種類に応じて、大気圧である場合もあるし、「真空」パックの場合のように大気圧より低い圧力である場合もある。
【0056】
図2aに示すように、検出装置1は、検査される少なくとも1つの密封製品2を受容するように構成されているチャンバ3と、遮断弁5aを有する導管5を介して、チャンバ3に流体連通するポンプユニット4と、チャンバ3に流体連通するイオン化ガス検出器7と、ガスセンサ25と、イオン化ガス検出器7から、チャンバ3内のガス種の濃度変化を表す信号を受け取るために、イオン化ガス検出器7に接続されている処理ユニット8とを備えている。
【0057】
検出装置1は、密封製品2の耐漏洩性を検査するために、またチャンバ3内を真空状態にした後で、チャンバ3内を大気圧に戻すために、チャンバ3内にパージガスを導入することができるパージガス導入手段6を備えている。
【0058】
検出装置1は、さらに、チャンバ3に連結された少なくとも1つの、較正済み漏洩部を備えている場合がある。「較正済み漏洩部」という表現は、特性が既知である漏洩部を意味している。較正済み漏洩部は、予備較正ステップにおいて用いることができるし、また一時的に、2つの測定値の間で、イオン化ガス検出器7において生じ得るドリフトを補正するために用いることができる。そのようなことを行うために、既知の流量で試験ガスを注入して、イオン化ガス検出器7を較正することができる。例示的な一実施形態によれば、検出装置1は、検出しようとする試験ガスのガス種の分配器、例えばガスシリンダ、およびそれらのガス種の流量を制御する制御手段に連結されている。
【0059】
図1に示すように、検出装置1は、さらに、特に、十分な機械的強度を有していない軟質包装材料が用いられている場合に、密封製品2が真空中に置かれたときに、その変形が低く抑えられるように、密封製品2を保持するための保持手段13を備えている場合がある。
【0060】
この保持手段13は、冷却手段を有していることが好ましい。この冷却手段は、例えば水冷用の螺旋管またはペルチェ素子を有している。
【0061】
冷却手段を用いることによって、密封製品2の包装材料の温度を、例えば20℃未満(例えば10℃)に低下するように制御することができる。したがって、測定中、密封製品2を冷却していることができる。それによって、低圧における、密封製品2の包装材料からのガス脱離が低減し、したがって、測定時間が短縮され、検査速度が上昇する。
【0062】
図2aに概略的に示されているように、測定時間を短縮する別の一方法として、チャンバ3内に、低温トラップなどの冷却トラップ14を設けることによって、チャンバ3内に存在する水蒸気を制限する場合がある。
【0063】
チャンバ3は、真空状態に保たれるように好適に構成されている。ポンプユニット4は、低真空ポンプ4bおよびターボ分子真空ポンプ4aを備えており、チャンバ3内を、10
−1mbar未満、例えばおよそ10
−5mbarの限界真空度の圧力まで、高真空に到達させるのに好適であるように構成されている。
【0064】
低真空ポンプ4bとターボ分子真空ポンプ4aとは、互いに直列に連結されており、ターボ分子真空ポンプ4aの入口が、チャンバ3の出口に連結されている。
【0065】
チャンバ3は、検査される1つ以上の密封製品2を受容することができる体積を有するが、密封製品2の取り付け/取り外しのために、チャンバ3内が大気圧になったときに、チャンバ3の表面へのガス吸着が可能な限り制限されるように、それらの検査される1つ以上の密封製品2の占める体積の寸法よりわずかに大きい寸法を有するように構成されている。したがって、背景ノイズを増加させ得る、低圧における、チャンバ3の壁面からのガス脱離が制限される。さらに、チャンバ3の体積が、密封製品2の体積よりほんのわずか大きいだけであるために、チャンバ3内の圧力を、より迅速に低下させることができ、したがって、応答時間および測定感度を改善することができる。測定のための体積は、チャンバ3の体積から、密封製品2の体積を差し引いた体積である。
【0066】
ガスセンサ25は、大気圧中または低真空中において、およそ1ppmv(100万分の1体積分率)の検出感度で酸素濃度を測定することができる、例えば二酸化ジルコニウムを主成分とする、例えば酸素センサである。このガスセンサは単純で低価格であり、密封製品2の大漏洩を検出することができる。
【0067】
イオン化ガス検出器7は、実際には、大気圧中での、密封製品2の、チャンバ3内への取り付け中、またはチャンバ3内からの取り外し中、低圧に維持されるように、ポンプユニット4とチャンバ3とを連結している導管5に連結されている場合がある。
【0068】
図2aに示す第1の例示的な実施形態によれば、イオン化ガス検出器7は、チャンバ3内における、少なくとも1つのガス種の濃度変化を測定するように構成されている質量分析計である。
【0069】
この質量分析計は、1つのイオン化源、少なくとも1つの分析器、および1つの取得手段を有している。
【0070】
イオン化源は、チャンバ3からの、測定対象のガスをイオン化するように構成されており、イオン化ガス検出器7のガスイオン化手段を形成している。
【0071】
分析器は、m/z比(またはm/q比)にしたがって、発生したイオンを識別する。mは質量であり、zは価数であり、qは電荷である。分析器は、例えば双曲面断面または円柱断面の4つの平行電極から成る四重極を有する四重極質量分析器である。
【0072】
取得手段は、イオン数を計測し、信号を増幅する。したがって、検出されたイオンのm/z比を、それらのイオンの相対存在量の関数として表す質量スペクトルが得られる。
【0073】
図2bおよび
図4に示す別の例示的な一実施形態によれば、イオン化ガス検出器7は、発光分光分析計9、チャンバ3と流体連通状態になることができるエンクロージャ10、およびプラズマ発生装置11を備えている。プラズマ発生装置11は、チャンバ3からエンクロージャ10内に入ってくる、測定対象であるガスをイオン化するように構成されており、イオン化ガス検出器7のガスイオン化手段を形成している。
【0074】
発光分光分析法においては、荷電分子(イオン)が、自らの放出光の波長の関数として識別される。スペクトル(またはスペクトルライン)のピークの振幅は、分子断片の相対存在量に対応する。
【0075】
例示的な一実施形態によれば、プラズマ発生装置11は、プラズマ源、および直流電圧発生器15を有している。
【0076】
図4によりよく示してあるように、円筒形状のエンクロージャ10は、真空に耐える導電性材料(例えばステンレス鋼などの)で作られた壁16によって画定されている。エンクロージャ10は、その開放端を導管5に連結されている。したがって、チャンバ3の内部を真空状態にするためにチャンバ3に連結されているポンプユニット4によって、円筒形状のエンクロージャ10の内部も真空状態にすることができる。チャンバ3内に存在するガス種の分析を可能にするために、このエンクロージャ10の内部で、プラズマが発生させられる。
【0077】
プラズマ源は、直流電圧発生器15の正極および負極にそれぞれ接続されているアノード17(+極)およびカソード18(−極)を有している。カソード18は、円筒形状のエンクロージャ10を画定している壁16、およびいくつかの孔のあいたディスク19を有している。ワイヤ状のアノード17は、カソード18の中心に配置されており、カソード18のディスク19の表面上に配置されている、ガス脱離率の低い誘電体材料(例えばセラミックなど)から成る支持体20によって、カソード18から絶縁されている。
【0078】
直流電圧発生器15は、アノード17(正に帯電)とカソード18(負に帯電)との間に、およそ3000ボルトの高電位差を印加する。それによって、プラズマ源の軸200に対して直交する方向に、強い電界(E)21が発生する。この電界21によって、カソード18からアノード17に向かう電子流が発生して加速され、チャンバ3から来るガス分子を励起してイオン化するために、プラズマが生成される。有用なプラズマを得るために、電界21に加えて、およそ100mTの一定強度の磁界(B)22が、電界21に直交し、かつ軸200に平行な所定の方向に印加される。磁界21は、円筒形状のエンクロージャ11を囲んでいる少なくとも1つの円環状の永久磁石23によって生じる。磁界22を電界21と組み合わせることによって、ガス分子のプラズマへの励起を非常に強化することができる。したがって、アノード17と幾何学的に円筒状のカソード18との間の一定の電界21と、アノード17およびカソード18の表面に平行で、かつ電界21に直交する一定の磁界22との組み合わせが、プラズマ源として作用する。
【0079】
エンクロージャ10内に存在するガス種から生成されたプラズマは、励起しているガス分子の下方遷移(脱励起)に起因する光を放出する。
【0080】
円筒形状のエンクロージャ10は、透明なポートホール24などの光学窓を有している。光学窓を通過した光は、例えば集光系によって集光され、光ファイバ12を介して集光系に光学的に結合されている発光分光分析計(EOS)9によってスペクトル分析される。光ファイバ12は、集光系から発光分光分析計9に光を伝送する。発光分光分析計9は、エンクロージャ10内に存在するガス種特有のスペクトル線を導出する。このようにして得られたスペクトル線の波長は、チャンバ3内に存在するガス種を特定するために用いられる。
【0081】
このようなイオン化ガス検出器は、例えば本出願人の出願になる特許文献1に開示されている。
【0082】
動作時に検出装置1において実施される、密封製品2の耐漏洩性を検査するための検出方法100は、次のステップを含んでいる(
図5)。
【0083】
最初のステップ101において、空気、窒素、またはアルゴンの雰囲気中で予め密封された少なくとも1つの密封製品2が、チャンバ3内に配置される。この最初のステップ101は、チャンバ3の外部の雰囲気の圧力、例えば大気圧において実施される。
【0084】
予備的な大漏洩検出ステップ102において、チャンバ3内の少なくとも1つのガス種の濃度変化がモニタされる。
【0085】
例えば空気以外の雰囲気中(アルゴンまたは窒素などの雰囲気中)で予め密封された密封製品の場合には、チャンバ3の少なくとも1つのガス種(酸素など)の、チャンバ3内における濃度変化がモニタされる。
【0086】
大漏洩が存在すると、密封製品2に含まれているガス体が、チャンバ3内に侵入し、それによって、チャンバ3内に存在する空気中のガス種(酸素などの)の濃度が低下する。したがって、チャンバ3内の酸素濃度が低下すると、それは、大漏洩が存在することを意味する。
【0087】
別の一例によれば、密封製品2を受容しているチャンバ3内の雰囲気は、窒素またはアルゴンなどのパージガスと置き換えられ、密封製品2に含まれているガス体の、パージガスと異なる少なくとも1つのガス種(酸素など)と同一のガス種の、チャンバ3内における濃度変化がモニタされる。
【0088】
予備的な大漏洩検出ステップを行うことによって、大漏洩の発生の際に、高真空度圧への圧力低下が生じており、その大漏洩によって、密封製品2の空洞内に含まれている全てのガスの排気が2次的に引き起こされ、したがって、大漏洩が検出されなくなるという事態が生じることを防ぐことができる。
【0089】
予備的な大漏洩検出ステップ102の遂行中、チャンバ3内の圧力を、大気雰囲気圧にしておくこともできるし、またはガス混合物(密封製品から漏洩されたガスとチャンバ3からのガス)の、ガスセンサ25に向かう拡散を促進するために、1mbarを超過する低真空度圧に低下させることもできる。
【0090】
大漏洩が検出されなかった場合には、次に、高真空における第2検出ステップ103において、チャンバ3と、継続的に真空状態を維持しているポンプユニット4とが連通させられ、チャンバ3内の圧力が、最大でも10
−1mbar未満の高真空度圧まで低下させられる。
【0091】
チャンバ3内を高真空に排気し続けることによって、チャンバ3内の圧力が高真空度圧、例えば10
−2mbar未満に達したときに、発光分光分析法または質量分析法による分析を用いて、密封製品に含まれているガス体中の、窒素、酸素、アルゴンのうちの少なくとも1つのガス種と同一のガス種のイオン化物の、チャンバ内の濃度変化をモニタするために、チャンバ3内のガスがイオン化され、密封製品からの漏洩が存在するか否かを判定するために、それらのガス種の濃度変化が、基準ガス種の較正済みの濃度変化と比較される(第2検出ステップ103)。
【0092】
低圧において漏洩が存在しなかった場合には、チャンバ3内に存在していた空気が排気され、したがって、残留雰囲気は、主として、壁面からのガス脱離に起因する水蒸気となる。したがって、密封製品2に含まれているガス種と同一のガス種は、原理的に、チャンバ3の雰囲気中には存在しない。チャンバ3は、主として、水蒸気を含むだけである。
【0093】
高真空における第2検出ステップ103、および予備的な大漏洩検出ステップ102において、密封製品2は、保護されている品物と包装材料との間に、ガス雰囲気(ガス体)を閉じ込められているという事実が用いられている。このガス体のガス種と同一のガス種の、チャンバ内における濃度変化をモニタし、次いで、その濃度変化と、基準ガス種の、較正済みの濃度変化とを比較することによって、密封製品2からの漏洩の有無を特定することができる。
【0094】
発光分光分析法または質量分析法を用いた分析によって、極めて微量のイオン化ガス種をリアルタイムで、すなわち従来技術のいくつかの検出方法の場合のように、排気時間と別に、モニタすべきガス分子の収集のための待ち時間を要することなく、検出することができる。したがって、漏洩検査に要する時間が短縮される。これは、密封製品2を高真空中に置くことによって可能になる。高真空は、雰囲気空気と、密封製品2に含まれている空気に由来する空気成分とを区別するために必須である。
【0095】
高真空における第2検出ステップ103、および予備的な大漏洩検出ステップ102において、モニタされるガス種は、窒素や酸素などの、空気を構成する典型的なガス種である場合がある。実際、医薬品産業や農業食品産業における密封製品などの多くの密封製品は、空気中で密封される。空気は、ほぼ78%の窒素と20%の酸素とを含んでいるから、これらの2つのガス種は、密封製品2からの漏洩が存在する場合に、チャンバ3内で容易に識別可能である。
【0096】
いくつかの密封製品は、保護されるべき品物の酸化防止のために、特に食品産業において、とりわけ包装小袋への無菌封止のために、窒素雰囲気中で密封される。このような場合には、窒素の濃度変化をモニタすることによって、密封製品からの漏洩の有無を特定することができる。
【0097】
したがって、包装材料からの漏洩、または包装材料の破裂の際に、次の漏洩検査のためにチャンバ3を再度利用する前に、長時間、チャンバ3を排気しなければならない、従来技術の検査におけるヘリウムの場合と異なり、密封製品からの空気または窒素を、容易かつ迅速に、チャンバ3から排気することができる。
【0098】
さらに、発光分光分析法を用いてガス種がモニタされる場合には、この窒素は、解釈が容易な光スペクトルを発生させるという利点を有する。また、窒素は容易に励起されて、プラズマになる。
【0099】
医薬品産業においては、いくつかの生物学的物質は、それらの劣化防止のために、アルゴンなどの不活性ガスを含む雰囲気中で密封される。特に、生体組織から抽出されたときに、水や酸素によって劣化する危険性を有するDNA(デオキシリボ核酸)の場合に、そのようにされる。さらに、食品産業において、特に肉の保存のために、アルゴン雰囲気中での密封が用いられる場合もある。
【0100】
アルゴン雰囲気中での密封は、自動車産業においても用いられている。
【0101】
例えば消火タンクにおいて、いくつかの製品は、混合ガス、特にアルゴンと窒素との混合ガスの雰囲気中で密封される場合がある。
【0102】
したがって、モニタされるガス種は、アルゴンである場合がある。
【0103】
ヘリウムは、空気中に微量しか含まれておらず、したがって、空気を含んでいる密封製品から漏洩するヘリウムは、ごくわずかであるから、ヘリウムは、密封製品からの漏洩の指標として用いられるガス種ではない。さらに、ヘリウムは、排気し難いために、変化をモニタしようとしている、対象ガスの濃度に対して大きな背景ノイズを与える場合がある。
【0104】
第1の例示的な実施例によれば、チャンバ3内の圧力が、限界真空度圧まで低下させられる。すなわち、排気が最大になり、いかなるガスも、チャンバ3、および導管5とポンプユニット4とを有する排気ライン内に入ってこない。したがって、損傷のある密封製品2に含まれているガス体に由来する、チャンバ3内のガスはあまり薄められないから、この測定の感度は、特に高い。
【0105】
図6aおよび
図6bのグラフは、発光分光分析法を用いた測定を介して、密封製品に含まれている空気中に存在するガス種と同一のガス種の、チャンバ3内の濃度変化をモニタすることによって遂行される、密封製品の包装材料に対する漏洩検査の一例を示している。
【0106】
図6aのグラフは、損傷のない密封製品2を受容しているチャンバ3内の、限界真空度圧までの圧力の低下変化を示している。
【0107】
この例においては、モニタされているガス種は、窒素である。例えば390nmの、窒素のスペクトル線がモニタされている。
【0108】
図6aにおいては、ポンプによる排気開始から、ほぼ200秒後に、チャンバ3内に存在していた窒素が完全に排気され、したがって、モニタされている、窒素特有のスペクトル線の強度が実質的にゼロになること、すなわち、ほぼ背景ノイズの強度に等しくなることが観察される。したがって、残留雰囲気は、主として、壁面からのガス脱離によって生じる水蒸気から成っている。
【0109】
このグラフには、さらに、水蒸気特有のスペクトル線として、656nmの水素のスペクトル線、および309nmのOH分子のスペクトル線の強度の変化が示されている。水蒸気特有のスペクトル線は、1つ以上の水素原子からなる、H
2またはHなどのガス種のスペクトル線、1つ以上の酸素原子(この酸素原子は、おそらく、水蒸気プラズマ中で生成される生成物である)からなる、O
2などのガス種のスペクトル線、および1つ以上の水素原子と酸素原子とからなる、H
2OまたはOHなどのガス種のスペクトル線である。
【0110】
ポンプによる排気が十分行われた後でも、水素およびOH特有のスペクトル線の強度は高いままである。これは、残留雰囲気が、主として、水蒸気から成っていることを示している。
【0111】
したがって、空気は、チャンバ3の雰囲気中に存在しない。したがって、モニタすべきガス種(この例においては、空気を構成しているガス種)の継続的なモニタリング、およびその結果と、較正済みの濃度変化との比較によって、密封製品2からの漏洩の有無を特定することができる。
【0112】
図6aに示す例において、真空引きの開始から125秒後、または3×10
−4mbarのチャンバ3内の圧力における、390nmの、窒素特有のスペクトル線の強度に対してあらかじめ定められた閾値S0は、例えば200(任意単位)である。
【0113】
損傷のある密封製品を受容しているチャンバ3の、限界真空度圧までの圧力の低下変化を示している
図6bにおいて、窒素特有のスペクトル線の強度は、上述のあらかじめ定められた閾値S0を超過していることが観察される。これは、この密封製品からの漏洩が存在することを示している。
【0114】
したがって、この例によれば、窒素などの、モニタされているガス種の濃度変化が、漏洩が存在しない場合の、基準となる、このガス種(この例においては窒素)の較正済みの濃度変化(
図6a)と比較される。
【0115】
発光分光分析法を用いる測定の一実施例によれば、モニタリングの対象の複数のガス種のスペクトル線、例えば空気特有のスペクトル線と、チャンバ3から脱離する水蒸気特有のスペクトル線との強度の比の変化が、モニタされる。当然ながら、スペクトル線の強度の比は、水蒸気以外のガス種を用いて算出される場合もある。
【0116】
実際、チャンバ3の雰囲気は、水蒸気を含んでいることが極めて多い。すなわち、チャンバ3は、高圧においては、密封製品2とともに入ってきた空気中の水分に由来する水蒸気を含んでおり、低圧においては、壁面からのガス脱離に由来する水蒸気を含んでいる。したがって、チャンバ3内に存在するガス種のスペクトルには、HまたはOH特有のスペクトル線などの、水蒸気特有のスペクトル線が含まれることが多い。したがって、イオン化ガス検出器7のエンクロージャ10の光学窓が、例えばその汚染のために、処理ユニット8に送信される信号(スペクトル線)の強度が失われるほどに、弱い光しか受けることができなかったとしても、スペクトル線の強度の比の変化によって与えられる測定値は依然として有効であり、空気の分圧の変化を表すことは確実である。さらに、水蒸気特有のスペクトル線の強度に対する、空気特有のスペクトル線の強度の比をモニタすることによって、空気特有のスペクトル線の強度を正規化することができ、それによって、その比の変化が、実際に、空気の分圧の変化を表すことを保証することができる。
【0117】
したがって、この場合には、窒素などの、モニタされているガス種のスペクトル線の強度の変化が、水蒸気特有のスペクトル線の強度に対する、このガス種(この場合には窒素)のスペクトル線の強度の比の、漏洩が存在しない場合の、または漏洩速度に応じた較正済みの変化と比較される。
【0118】
第4のステップ104において、モニタされているガス種のスペクトル線、例えば空気特有のスペクトル線と、水蒸気特有のスペクトル線との強度の比が、漏洩量の定量化のために、処理ユニット8のメモリに記憶されている較正曲線と比較される。
【0119】
較正曲線は、例えば検出方法100と同じ条件で作成される。較正曲線は、検出装置1のチャンバ3内の種々の圧力において、較正済みの種々の漏洩量でモニタされたガス種のスペクトル線、例えば空気特有のスペクトル線と、水蒸気特有のスペクトル線との強度の比との間の対応を可能にする。すなわち、較正曲線を用いることによって、イオン化ガス検出器7によって得られた信号を、定量化された漏洩値(mbar・l/sの単位の)に対応させることができる。
【0120】
図7は、イオン化ガス検出器の較正曲線の一例を示している。
【0121】
較正曲線は、さらに、チャンバ3内の圧力が、時間経過とともに低下することを示している。チャンバ3の壁面からのガス脱離速度は、限界真空度圧に至るまでのチャンバ3内の圧力に依存する。時間経過とともに、ガス脱離および圧力は低下し、したがって、チャンバ3内の水蒸気の割合も低下し、その結果、イオン化ガス検出器7の検出感度は上昇する。
【0122】
したがって、チャンバ3内の圧力、または密封製品2の真空中滞留時間と、ガス種の各々に特有のスペクトル線間の強度の比との値を与えると、チャンバ3の壁面からの空気のガス脱離速度に関係なく、較正曲線から、定量化された漏洩値が求められる。
【0123】
密封製品の包装材料に対する漏洩検査の結果のいくつかの例を、
図8のグラフに示す。
【0124】
これらの例においては、390nmの、窒素特有のスペクトル線の強度と、656nmの、水素特有のスペクトル線の強度との比の変化がモニタされている。
【0125】
予備検査において、チャンバ3内の圧力が、およそ5×10
−5mbarの限界真空度圧まで下げられ、チャンバ3内の背景ノイズのレベルが測定された(曲線A)。低圧においては、チャンバ3内に存在していた窒素が排気されており、したがって、チャンバ3内の残留雰囲気は、主として、チャンバ3の壁面からのガス脱離によって生じる水蒸気から成っている。窒素特有のスペクトル線が、スペクトル中に存在しないから、窒素と水素との各々に特有のスペクトル線の強度の比は、実質的に0である。
【0126】
次に、漏洩口を有していない密封製品2が、チャンバ3内に配置され、チャンバ3内の圧力が、限界真空度圧まで低下させられた(曲線B)。窒素と水素との各々に特有のスペクトル線の強度の比は、密封製品2の外面からの窒素のガス脱離によって、わずかに上昇するだけである。したがって、この比は、背景ノイズを表している。
【0127】
次に、損傷のある2つの密封製品2(第2および第3の密封製品)が検査された。
【0128】
スペクトル線の強度の比の経時的増加は、第2および第3の密封製品に漏洩口が存在していることを示している(曲線CおよびD)。密封製品2中に存在する空気が、チャンバ3内に侵入し、その結果、チャンバ3内の空気のガス種の濃度は、漏洩のないときのチャンバ3内の空気のガス種の濃度より高くなる。
【0129】
図8のグラフにおいては、さらに、第3の密封製品からの漏洩(曲線D)が、第2の密封製品からの漏洩(曲線C)より大きいことが観察される。当然ながら、漏洩が大きいほど、スペクトル線の強度の比は、より急激に上昇する。
【0130】
さらに、スペクトル線の強度の比の信号は、測定時間にわたって一定ではないことが観察される。当然ながら、圧力が低下するにつれて、チャンバ3の壁面からのガス脱離は減少する。水素特有のスペクトル線の強度に対する、窒素特有のスペクトル線の強度の比の変化を、検出装置1のチャンバ3内の種々の圧力において、較正済みの複数の漏洩量に対して得られている、スペクトル線の強度の比の較正曲線と比較することによって、漏洩速度の定量化において、チャンバ3の壁面からのガス脱離の影響を考慮する必要がなくなる。
【0131】
この比較によれば、第2の密封製品(曲線C)は、ほぼ5.2×10
−5mbar・l/sの漏洩速度を有しており、第3の密封製品(曲線D)は、ほぼ10
−4mbar・l/sの、より大きな漏洩速度を有している。
【0132】
したがって、ガス体を含んでいる限り、種々のタイプの密封製品の耐漏洩性、具体的には乾性密封製品や液状密封製品、透明密封製品や不透明密封製品、軟質密封製品や硬質密封製品の耐漏洩性を検査するために、検出方法100を実行することができる。
【0133】
したがって、従来技術によるいくつかの方法のように、製品にトレーサガスを充填するために、包装材料の穴あけおよび再封止を行うことも、トレーサガスで製品を密封することも必要ない。製造工程における製品の密封、耐漏洩性検査、および漏洩のない密封製品の販売の間に、特別の処理は必要ない。
【0134】
したがって、検出方法100によって、包装材料も、その中身も損傷しないから、検出方法100は非破壊的であり、密封製品2を、直接に、すなわち特別の洗浄または他の処理を要することなく、包装ラインに戻すことができる。さらに、検出方法100の測定精度は、良好である。