(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6275138
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】リチウム含有材料の処理
(51)【国際特許分類】
C22B 26/12 20060101AFI20180129BHJP
C01D 15/02 20060101ALI20180129BHJP
C01D 15/08 20060101ALI20180129BHJP
C22B 3/10 20060101ALI20180129BHJP
C22B 3/42 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
C22B26/12
C01D15/02
C01D15/08
C22B3/10
C22B3/42
【請求項の数】20
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-526829(P2015-526829)
(86)(22)【出願日】2013年8月1日
(65)【公表番号】特表2015-531826(P2015-531826A)
(43)【公表日】2015年11月5日
(86)【国際出願番号】AU2013000857
(87)【国際公開番号】WO2014026217
(87)【国際公開日】20140220
【審査請求日】2016年3月23日
(31)【優先権主張番号】2012903483
(32)【優先日】2012年8月13日
(33)【優先権主張国】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】316002394
【氏名又は名称】リード アドバンスド マテリアルズ プロプライエタリー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ,ヤテンドラ
【審査官】
池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第02803518(US,A)
【文献】
特表2011−518257(JP,A)
【文献】
特開昭52−119498(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/082444(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/133165(WO,A1)
【文献】
特開2009−269810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00−61/00
C01D 15/00−15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム含有材料の処理のためのプロセスであって、
(i)リチウム含有材料を浸出ステップに通すステップであって、前記浸出ステップは、第1の浸出ステージと第2の浸出ステージとを有し、前記リチウム含有材料は、塩酸により浸出され、含浸浸出溶液が生成され、
前記第1の浸出ステージは、その後の第1の厚肉化ステージと組み合わされ、前記第2の浸出ステージは、その後の第2の厚肉化ステージと組み合わされる、ステップと、
(ii)前記含浸浸出溶液を加水熱分解させるステップであって、これにより、AlおよびFeの塩化物が不溶性の酸化物に変換され除去され、残りの塩酸が回収され、前記浸出ステップ(i)に再利用される、ステップと、
(iii)前記ステップ(ii)からの前記含浸浸出溶液を、不純物除去ステップに通し、これにより、塩化リチウム溶液を提供するステップと、
(iv)ステップ(iii)の前記塩化リチウム溶液を、電解ステップに通すステップであって、塩化リチウムおよび添加水のみが消費され、これにより、水酸化リチウム溶液、塩素、および水素のみが生成される、ステップと、
(v)前記電解ステップ(iv)において生成された塩素および水素を結合させ、塩酸を生成するステップであって、前記塩酸は、前記浸出ステップ(i)に利用される、ステップと、
(vi)加圧二酸化炭素を通過させることにより、前記ステップ(iv)で生成された水酸化リチウム溶液を炭酸処理するステップであって、これにより、炭酸リチウム沈殿物が生成される、ステップと、
を有し、
前記リチウム含有材料は、α−リシア輝石鉱または鉱石濃縮物であり、
当該プロセスは、さらに、第1のステップを有し、該第1のステップでは、前記α−リシア輝石鉱または鉱石濃縮物が焼成され、β−リシア輝石が生成される、プロセス。
【請求項2】
前記不純物除去ステップ(iii)は、塩化リチウムが飽和するまで、前記含浸浸出溶液を濃縮させる、濃縮ステップを有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記ステップ(iv)で生成された水酸化リチウム溶液の一部は、水分の蒸発により、水酸化リチウム一水和物結晶にされる、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記ステップ(iii)の不純物除去ステップは、
Al、Fe、Mg、およびMnの水酸化物の沈殿のためのpHの上昇、
Caの除去のための炭酸リチウム沈殿化、ならびに
NaおよびKの除去のための分離結晶化
の1または2以上を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記NaおよびKの除去のための分離結晶化は、前記濃縮ステップの直後に実施される、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記不純物除去ステップは、さらに、イオン交換ステップを有する、請求項4または5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記イオン交換ステップは、カルシウム、マグネシウム、および前記含浸浸出溶液中に残留する他の多価カチオンの全てを実質的に除去する、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記多価カチオンは、10ppm未満のレベルまで除去される、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記多価カチオンは、1ppm未満のレベルまで除去される、請求項7または8に記載のプロセス。
【請求項10】
蒸発/結晶化の際に、前記水酸化リチウム溶液から蒸発される水は、再圧縮され、メークアップ蒸気と組み合わされ、蒸発/結晶化に利用される、請求項3乃至9のいずれか一つに記載のプロセス。
【請求項11】
前記蒸発/結晶化のステップでは、真空蒸発結晶化装置が利用される、請求項3乃至10のいずれか一つに記載のプロセス。
【請求項12】
前記β−リシア輝石は、前記ステップ(i)の前に、冷却されミル処理される、請求項1乃至11のいずれか一つに記載のプロセス。
【請求項13】
前記β−リシア輝石は、300μm未満までミル処理される、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記β−リシア輝石は、75μmのP80までミル処理される、請求項12または13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記ステップ(iii)は、加熱温度で行われる、請求項1乃至14のいずれか一つに記載のプロセス。
【請求項16】
前記浸出ステップに用いられる前記塩酸溶液は、20wt%のHClである、請求項1乃至15のいずれか一つに記載のプロセス。
【請求項17】
前記浸出ステップの加熱温度は、前記浸出ステップに使用される前記塩酸溶液の沸点である、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記浸出ステップは、大気圧で実施される、請求項1乃至17のいずれか一つに記載のプロセス。
【請求項19】
前記浸出ステップは、塩素処理炉内で、108℃で6から10時間の滞留時間にわたって実施される、請求項1乃至18のいずれか一つに記載のプロセス。
【請求項20】
前記浸出ステップは、8時間の滞留時間にわたって実施される、請求項19に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、リチウム含有材料の処理に関する。
【0002】
特に、本発明は、リチウム含有材料の処理、および水酸化リチウムと炭酸リチウムの生成のためのプロセスに関する。このプロセスは、リシア輝石鉱もしくは濃縮物、またはブライン(brine:塩水、かん水)から得られる、塩化リチウム水溶液の電解を利用する。ある態様では、本発明のプロセスは、高純度またはバッテリグレードの水酸化リチウムおよび炭酸リチウム生成物を提供するために提供される。
【0003】
本発明のプロセスは、さらに、塩酸生成物を提供することもできる。さらに、ある態様では、本発明のプロセスは、貴金属含有混合金属酸化物(MMO)電極を利用し、プロセスの電気化学的部分の効率を高めることができる。
【背景技術】
【0004】
通常、リチウム含有鉱石またはその濃縮物から炭酸リチウムを生成するための既知のプロセスでは、α−リシア輝石鉱または濃縮物の熱処理が利用される。この熱処理は、「か焼」と称され、α−リシア輝石を、酸により溶解可能なβ−リシア輝石に変換する。β−リシア輝石が酸に溶解されるステップは、キルン炉内で生じ、溶解性のリチウム塩が生成される。リチウム塩は、該リチウム塩が純化される1または2以上のタンクを通過する。浸出された原料リチウム塩は、次に、スラリのpHが調整されるステップを通過し、これにより、鉄およびマグネシウムを含むある不純物が沈殿され易くなる。従って、純化されたリチウム塩は、ソーダ灰で処理され、炭酸リチウムが生成される。炭酸リチウムは、消石灰でさらに処理され、水酸化リチウムが生成される。
【0005】
通常、ブラインからの炭酸リチウムおよび水酸化リチウムの生成用のプロセスは、存在する不純物を低減するための一連のステップを通過する前に、蒸発計を使用し、そこに含まれる塩の濃度を高めるステップを有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の従来のプロセスは、含浸浸出溶液中に残留する不純物の除去が比較的非効率であり、その結果、比較的純度の低い水酸化リチウムおよび炭酸リチウムが生成される。これは、特に、高品質またはバッテリグレードの水酸化リチウムおよび炭酸リチウムの生成物を生成したいときに問題となる。
【0007】
本発明のプロセスは、従来のプロセスに関する前述の問題の1または2以上を実質的に解決し、または少なくともこれの有益な代替法を提供することを目的とする。
【0008】
前述の背景技術の記載は、本発明の理解を助けるためのものに過ぎない。この記載は、言及されるいかなる材料も、出願の優先日段階において共通の一般知識の一部である(あった)ことを承認または自認するものではない。
【0009】
明細書および特許請求の範囲の全体を通して、文章がそうでないことを要求していない限り、「有する」という単語、または「有し」のようなその変化形は、言及された数、または数の群を含むことを意味するものの、いかなる他の数、または数の群も排斥するものでもないことが理解される。
【0010】
「バッテリグレードの炭酸リチウム」と言う用語は、純度が約99.5%以上の生成物を意味する。同様に、「バッテリグレードの水酸化リチウム」と言う用語は、純度が約99%以上の生成物を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、リチウム含有材料の処理のためのプロセスであって、
(i)前記リチウム含有材料から、プロセス溶液を準備するステップと、
(ii)ステップ(i)からのプロセス溶液を、一連の不純物除去ステップに通し、これにより、実質的に純化された塩化リチウム溶液を提供するステップと、
(iii)前記ステップ(ii)の純化された塩化リチウム溶液を、電解ステップに通し、これにより、水酸化リチウム溶液を生成するステップと、
(iv)前記ステップ(iii)で生成された水酸化リチウム溶液に、加圧二酸化炭素を通過させることにより、前記溶液を炭酸処理するステップであって、これにより、炭酸リチウム沈殿物が生成されるステップと、
を有
し、
前記リチウム含有材料は、α−リシア輝石鉱または鉱石濃縮物であり、
当該プロセスは、さらに、第1のステップを有し、該第1のステップでは、前記α−リシア輝石鉱または鉱石濃縮物が焼成され、β−リシア輝石が生成される、プロセスが提供される。
【0012】
本発明のある態様では、前記ステップ(i)のプロセス溶液は、含浸浸出溶液の形態で準備される。好ましくは、前記含浸浸出溶液は、リチウム含有材料を浸出ステップに通すことにより形成され、前記材料は、塩酸により浸出される。
【0013】
好ましくは、前記不純物除去ステップ(ii)は、さらに、塩化リチウムがほぼ飽和するまで、前記含浸浸出溶液を濃縮させる、濃縮ステップを有する。
【0014】
前記ステップ(iii)で生成された水酸化リチウム溶液は、水分の蒸発により厚くされ、水酸化リチウム一水和物結晶が提供されても良い。
【0015】
本発明のさらに別の態様では、前記ステップ(iii)で生成される水酸化リウム溶液の第1の部分は、蒸発/結晶化により厚くされ、水酸化リチウム一水和物結晶が提供され、
第2の部分は、前記溶液に加圧二酸化炭素を通すことにより炭酸化され、これにより、炭酸リチウム沈殿物が生成する。
【0016】
好ましくは、前記ステップ(ii)の不純物除去ステップは、
AlおよびFeの塩化物の加水熱分解(hydropyrolysis)、
Al、Fe、Mg、およびMnの水酸化物の沈殿のためのpHの上昇、
Caの除去のための炭酸リチウム沈殿化、ならびに
NaおよびKの除去のための分離結晶化
の1または2以上を有する。
【0017】
また、好ましくは、前記NaおよびKの除去のための分離結晶化は、前記濃縮ステップの直後に実施される。
【0018】
前記不純物除去ステップは、さらに、イオン交換ステップを有することが好ましい。好ましくは、前記イオン交換ステップは、カルシウム、マグネシウム、および前記プロセス溶液中に残留する他の多価カチオンの全てを実質的に除去する。また、好ましくは、前記多価カチオンは、約10ppm未満のレベルまで除去される。
【0019】
また、好ましくは、蒸発/結晶化の際に、前記溶液から蒸発される水は、再圧縮され、メークアップ蒸気と組み合わされ、蒸発/結晶化に利用される。前記蒸発/結晶化のステップでは、真空蒸発結晶化装置が利用されることが好ましい。
【0020】
好ましくは、前記β−リシア輝石は、前記浸出ステップの前に、冷却されミル処理される。前記β−リシア輝石は、約300μm未満までミル処理されることが好ましい。また、前記β−リシア輝石は、約75μmのP
80までミル処理されることが好ましい。
【0021】
好ましくは、浸出ステップは、加熱温度で行われる。
【0022】
前記浸出ステップに用いられる前記塩酸溶液は、約20wt%のHClであることが好ましい。
【0023】
また、好ましくは、前記浸出ステップの加熱温度は、前記浸出ステップに使用される前記塩酸溶液のほぼ沸点である。
【0024】
前記浸出ステップは、大気圧で実施されることが好ましい。
【0025】
本発明のある形態では、前記浸出ステップは、塩素処理炉内で、約108℃で約6から10時間の滞留時間にわたって実施される。好ましくは、前記滞留時間は、約8時間である。
【0026】
以下、ある実施例および添付図面を参照して、一例としての本発明のプロセスについて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第1の実施例によるリチウム含有材料の処理のためのプロセスを示した、概略的なフローチャートである。リチウム含有材料は、α−リシア輝石濃縮物である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1には、本発明の第1の実施例によるリチウム含有材料の処理のためのプロセス10が示されている。この実施例では、リチウム含有材料は、α−リシア輝石濃縮物の形態で提供される。
【0029】
プロセス10で実施される全てのユニットオペレーションは、フルプロセス機器および制御で、連続的に作動するように構成される。
【0030】
α−リシア輝石濃縮物12は、焼成ステップを通り、焼成炉14において約1050℃から1100℃の間の温度で焼成され、α−リシア輝石が、浸出可能なβ−リシア輝石に変換される。焼成器からのオフガスは、既存の環境排出制限を満たすように構成された、サイクロン(図示されていない)および静電沈降分離装置(図示されていない)を介して誘導される。得られる高温焼成物は、冷却器16を通り、間接的に約80℃まで冷却される。次に、これは、例えば密閉回路ボールミル18のようなミル内で、300μm未満まで、例えば、約75μmのP
80までドライミル処理される。
【0031】
サージビン(図示されていない)に貯蔵後、ミル処理されたβ−リシア輝石は、スラリーステップにおいて、20wt%塩酸の化学量論比から少なくとも40〜300%過剰な状態で混合される。スラリーステップは、浸出ステップ、例えば浸出回路(circuit)22に供給され、これは、第1の浸出ステージ24と、第2の浸出ステージ26とを有する。
【0032】
浸出ステップは、連続浸出タンクにおいて、約6から12時間、例えば約8時間にわたって、約108℃で実施され、この温度は、スラリーステップにおいて添加される塩酸浸出溶液の沸点である。浸出回路22には、パルプ密度が約40%のものが使用され、これにより、浸出濃度が最大となり、浸出中の塩化リチウムの溶解限度を超えないようになる。オフガスは、湿式スクラバ(図示されていない)で清浄化される。浸出ステップ22は、残留スラリー、および例えば含浸浸出溶液のようなプロセス溶液を生成する。β−リシア輝石中のリチウムおよびアルミノシリケートは、他の不純物とともに溶液中に浸出し、含浸浸出液体中にサブ飽和濃度の塩化リチウムが得られる。
【0033】
浸出回路22からの含浸浸出溶液は、厚肉化回路28を通過する。厚肉化回路28は、浸出回路22のステージ24および26と整列された、好ましくは2つのステージ28aおよび28bを有する。厚肉化回路28からのオーバーフローは、約300℃で作動する加水熱分解ステップ30に誘導される。ここで、含浸浸出溶液中に存在するAlおよびFeの塩化物は、それぞれ、不溶性酸化物32に変換される。いかなる残留HClも、HCl除去ステップ34で回収される。
【0034】
加水熱分解ステップ30を用いて回収された前述のAlおよびFeに加えて、残留する溶解性鉄、アルミニウム、およびマグネシウムの大部分が、一連の不純物除去ステップを介して、浸出液体から除去される。これは、
図1の不純物除去ステップ36により、広い意味で示されている。不純物除去ステップ36は、さらに、pH調整ステップ38を有し、LiOHが追加され、pHは約9まで上昇する。ステップ38の生成物は、ベルトフィルタ42を通過し、ここから、Al、Fe、Mn、およびMg含有沈殿物が回収される。不純物除去ステップ36は、さらに、カルシウム沈殿ステップ44を有し、炭酸ナトリウム(ソーダ灰)または炭酸リチウム46の追加により、別のベルトフィルタ50から、カルシウム含有沈殿物48が生成される。
【0035】
第2の厚肉化ステップ28bの濃厚剤アンダーフロー生成物52は、廃棄56および次の処分58を通過する前に、乾燥ステップ54を通過する。
【0036】
ベルトフィルタ50の液体生成物は、大部分がLiCl溶液であるが、これは、濃縮ステップ60を通過した後、分別結晶化ステップ62を通過する。濃縮ステップ60では、LiCl溶液は、飽和点の近くまで、例えば35から40wt%のLiClまで濃縮され、サブゼロ温度まで冷却される。その後の分別結晶化ステップ62では、フィルタ処理により、NaおよびKの不純物64が、それぞれ、NaClおよびKCl結晶として、大幅に除去される。
【0037】
前述の不純物が実質的に全て除去されると、塩化リチウム溶液は、イオン交換ステップ66を通過する。このステップは、イオン交換(IX)コラム68を有し、これにより、実質的に全ての残留カルシウム、マグネシウム、および他の多価カチオンが、約10ppm未満のレベル、例えば1ppmのレベルまで除去される。
【0038】
次に、別の純化された塩化リチウム溶液は、90℃で熱処理され、電解ステップ70に供給される。これは、多数の電解装置を有し、例えば6から20の電解装置を有する。ここで、塩化リチウムおよび水が消費されて、水酸化リチウム、塩素、および水素が生成される。
【0039】
電解装置を通過した後、薄いまたは消耗した塩化リチウム溶液は、溶解塩素ガスを含む。浸出回路22の直前に、この薄い塩化リチウム溶液がスラリーステップにリサイクルされる前に、2つのステージにおいて、溶解塩素が除去される。第1のステージでは、塩化リチウム溶液に塩酸が添加され、pHが5未満に低下し、溶液からある量の塩素ガスが生じるようになる。その後、残りの溶解塩素ガスは、空気ストリップ溶液(図示されていない)により、除去される。
【0040】
副生成物として生成される塩素および水素は、HClを生成するために組み合わされ、これは、スラリーステップおよび浸出回路22で使用される。
【0041】
電解ステップ70で得られた水酸化リチウム溶液は、まず、保持タンク72を通過し、ここから、
図1に示すように、(i)揮発および結晶化され、水酸化リチウムの一水和物結晶が形成され、または(ii)炭酸化ステップに送られて炭酸リチウムに変化する。
【0042】
これらのオプションの最初の場合、溶液中の水酸化リチウムは、例えば、約80℃の温度、および約45kPaの圧力で作動する真空蒸発結晶化装置80(オスロタイプ)において、結晶化される。滞在時間は、約60分であり、これにより、粗い結晶生成物が得られる。得られた水蒸気は、再圧縮され、メイクアップスチームと組み合わされ、結晶化装置80用の加熱媒体として使用される。
【0043】
水酸化リチウム結晶は、冷水(図示されていない)で洗浄され、99%の洗浄効率が得られる。得られた洗浄溶液は、前述のように、浸出回路22にリサイクルされる。遠心分離装置からの固体は、約120℃で作動する間接炉または乾燥機82に供給され、結晶が乾燥される。結晶生成物は、バッテリグレードのLiOH・H
2Oであり、これは空気圧で生成物ビン84に運搬され、これが最終的に、梱包ステーション(図示されていない)に運搬された際に、被覆付きスクリューコンベヤ86で50℃に冷却される。
【0044】
前述の第2のオプションでは、炭酸リチウムは、塩化リチウム溶液の炭酸化により生成される。ここでは、炭酸化容器90内で、水酸化リチウムの溶液を介して、圧縮二酸化炭素ガス88が通過し、炭酸リチウムが沈殿する。このスラリーは、フィルタ94により、洗浄器/遠心分離器92に供給され、その後、洗浄水は、残留水酸化リチウム溶液とともに、または母液体とともに、電解装置70にリサイクルされる。未乾燥の炭酸リチウム結晶は、乾燥機96に供給される。ここでは、ホット空気が使用され、結晶が乾燥される。媒体加圧空気を使用して、空気が加熱される。乾燥後、バッテリグレードの炭酸リチウムは、貯蔵ビン98に通す前に、顧客に必要な粒子サイズに微細化され、その後梱包される(図示されていない)。
【0045】
プロセスを通じて復水(condensate)は、高温プロセス水、冷却プロセス水、および冷却水用のメークアップ水として利用される。プロセスが復水に戻らない場合、全体として正の水バランスが生じ、約1/10のプロセス水が、下水システム(図示されていない)に放出される。
【0046】
タンタライトおよびアルミナも、本発明のプロセスを用いて回収することができると想定される。厚肉化ステップからのフィルタケーキは、タンタライト回収プラント(図示されていない)に排出される。タンタライト回収プラントからの放出物は、ベルトフィルタに供給され、水分が除去され、この水は、タンタライト回収プラントに戻る。フィルタは、洗浄処理を使用せず、19m
2のろ過面積を有する。ベルトフィルタからのフィルタケーキは、直火炉内で乾燥される。乾燥アルミナシリケートは、覆い付きスクリューコンベヤで50℃まで冷却され、その後、発送前に、空気圧で貯蔵ビンに搬送される。
【0047】
本発明の第2の実施例では、リチウム含有材料は、リチウム含有ブラインの形態で提供される。ブラインは、本発明の第1の実施例において示したような、焼成ステップ、冷却ステップ、ミル処理ステップ、および浸出ステップが必要ではないが、プロセスの残留物は、前述の第1の実施例と実質的に同等であることが想定される。
【0048】
前述のように、本発明のプロセスでは、α−リシア輝石鉱もしくは濃縮物から、またはリチウム含有ブラインから、高純度またはバッテリグレードの水酸化リチウムおよび炭酸リチウム生成物が得られるプロセスが提供され、さらに塩化水素ガス生成物の生成も可能となる。
【0049】
当業者には明らかである変更および改変は、本発明の範囲に属する。例えば、本発明の範囲から逸脱しないで、浸出回路22は、単一の浸出ステージ/動作のみを有しても良いことが想定される。